説明

ガラスセラミックス基板及びその製造方法、並びに配線基板

【課題】十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板及び配線基板を提供すること。
【解決手段】ガラスと該ガラス中に分散された板状アルミナフィラーとを含有し、板状アルミナフィラーのアスペクト比が20以上であり、板状アルミナフィラーの(104)結晶面のX線回折ピークに対する(006)結晶面のX線回折ピークの強度比が1.0以上であるガラスセラミックス基板11a〜11d、及びガラスセラミックス基板11a〜11dと導体12,13,14を備える配線基板10である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスセラミックス基板及びその製造方法、並びに配線基板に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に使用される配線基板として、ガラスとフィラーとを含む組成物からなるガラスセラミックス基板が知られている。ガラスセラミックス基板は、その表面上に導電パターンを形成して配線基板とし、電子機器に実装される。電子機器の小型化及び高機能化に伴い、ガラスセラミックス基板も、薄型化することが求められている。
【0003】
ガラスセラミックス基板は、主成分としてガラスを含有しているため、衝撃に弱く、クラックが発生し易いという特性を有する。このため、セラミックスフィラーを配合して、強度を向上することが試みられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、ガラスセラミック基板の強度を向上するために、セラミックフィラーの配向度を高くすることが提案されている。ここで、アスペクト比の高いセラミックフィラーは、セラミックフィラー同士が絡み易いため、配向度が低下してしまうことが知られている。このため、特許文献2では、アスペクト比が小さいセラミックフィラーを配合することによって、セラミックスフィラーの配向を向上させ、高強度の配線基板を提供することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−111210号公報
【特許文献2】特開2002−128564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
配線基板に用いられるガラスセラミックス基板は、電子製品の低背化に伴い、更なる薄型化が求められている。また、回路基板の複雑化及び微細化に伴って電極構造が複雑化しているため、ガラスセラミックス基板にかかる応力も大きくなっている。このため、従来よりも、高い強度を有するガラスセラミックス基板が求められている。ところが、本発明者らの検討によれば、上記特許文献1,2で提案されているようなガラスセラミックス基板は強度が十分ではなく、また強度のばらつきが大きいことがわかった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板及び配線基板を提供することを目的とする。また、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板を安定的に製造することが可能なガラスセラミックス基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明では、ガラスと該ガラス中に分散された板状アルミナフィラーとを含有し、板状アルミナフィラーのアスペクト比は20以上であり、板状アルミナフィラーの(104)結晶面のX線回折ピークに対する(006)結晶面のX線回折ピークの強度比が1.0以上であるガラスセラミックス基板を提供する。
【0009】
上記本発明のガラスセラミックス基板は、十分に優れた強度を有するともに、高い破壊靭性値を有する。このような効果が得られる要因の一つを本発明者らは次のように推察している。本発明では、ガラスと特定の形状及びアスペクト比を有するアルミナフィラーを用いた場合に、当該アルミナフィラーのX線回折ピークの強度比として、2つの結晶面を特定するとともに、当該強度比を所定値以上に特定している。このため、アスペクト比が高いアルミナフィラーの配向度を向上させることが可能になり、これが強度及び破壊靭性値の向上に寄与していると考えられる。
【0010】
また、本発明では、板状アルミナフィラーの平均板径が2〜8μmであることが好ましい。これによって、十分に高い強度を有しつつガラスセラミックス基板の表面上に配線を形成する際に、配線ピッチが微細化した場合であっても配線基板の信頼性を高く維持することが可能なガラスセラミックス基板とすることができる。
【0011】
また、本発明のガラスセラミックス基板の表面粗さRaは0.3μm以下であることが好ましい。これによって、配線基板として実装する際の実装性を良好にすることができる。
【0012】
本発明ではまた、上記ガラスセラミックス基板と、当該ガラスセラミックス基板上に導体と、を備える配線基板を提供する。このような配線基板は、上述の特徴を有するガラスセラミックス基板を備えることから、十分に優れた強度を有する。
【0013】
本発明ではまた、ガラス粉末とアスペクト比が20以上である板状アルミナフィラーとを含むスラリーを基材上に塗布して製膜し、グリーンシートを作製する製膜工程と、グリーンシートを焼成して、板状アルミナフィラーの(104)結晶面のX線回折ピークに対する(006)結晶面のX線回折ピークの強度比が1.0以上であるガラスセラミックス基板を得る焼成工程と、を有する、ガラスセラミックス基板の製造方法を提供する。
【0014】
本発明のガラスセラミックス基板の製造方法は、ガラスと特定の形状及びアスペクト比を有するアルミナフィラーを用いている。それとともに、当該アルミナフィラーのX線回折ピークの強度比として、2つの結晶面を特定し、それらのピークの強度比が所定値以上であるガラスセラミックス基板を製造している。このため、アスペクト比が高いアルミナフィラーの配向度を向上させることが可能になり、これが強度及び破壊靭性値の向上に寄与していると考えられる。
【0015】
本発明のガラスセラミックス基板の製造方法における焼成工程では、グリーンシートと、該グリーンシートを挟むように該グリーンシートよりも熱収縮が小さい別のグリーンシートと、を有する積層体を焼成することが好ましい。これによって、ガラスセラミックス基板となるグリーンシートの収縮が抑制され、収縮のばらつきによって生じる配向性の乱れを抑制することができる。その結果、一層十分に高い強度を有するガラスセラミックス基板を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板及びそのようなガラスセラミックス基板を備える配線基板を提供することができる。また、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板を安定的に製造することが可能なガラスセラミックス基板の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の配線基板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の好適な実施形態であるガラスセラミックス基板に含まれる板状アルミナフィラーの一例を示す上面図である。
【図3】本発明の好適な実施形態であるガラスセラミックス基板における側面の一部を拡大して示す側面図である。
【図4】本発明の好適な実施形態であるガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。
【図5】本発明の好適な実施形態であるガラスセラミックス基板の製造方法を模式的に示す工程断面図である。
【図6】実施例15のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。
【図7】実施例17のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。
【図8】比較例3のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。
【図9】比較例5のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、場合により図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の配線基板の模式断面図である。図1に示す配線基板10は、ガラスセラミックス基板11a,11b,11c及び11d(以下、纏めてガラスセラミックス基板11a〜11dという)がこの順に積層された積層構造を有する。さらに、配線基板10は、図1中で上下に隣り合うガラスセラミックス基板の間に設けられた内部導体13と、最外層であるガラスセラミックス基板11a(11d)の11b(11c)側とは反対側の面上に設けられた表面導体14と、内部導体13及び表面導体14を電気的に導通するビア導体12とを備える。
【0020】
ガラスセラミックス基板11a〜11dは、それぞれ、ガラスと該ガラスの中に分散された板状アルミナフィラーとを含有する。板状アルミナフィラーの含有量は、ガラスと板状アルミナフィラーの合計量に対して、好ましくは20〜35体積%であり、より好ましくは22.5〜35体積%である。以下、各成分について詳細に説明する。
【0021】
<板状アルミナフィラー>
本実施形態のガラスセラミックス基板11a〜11dは、複数の板状アルミナフィラーを含む。板状アルミナフィラーの平均板径は、好ましくは2〜10μmであり、より好ましくは2〜8μmである。板状アルミナフィラーの平均板径が2μm未満であると、板状アルミナフィラーの高い配向性が得られ難くなる傾向にある。一方、板状アルミナフィラーの平均板径が10μmを超えると、配線基板の配線ピッチが小さい場合に、電子部品等の電気特性に影響を及ぼす場合がある。
【0022】
板状アルミナフィラーの平均厚みは、ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度を一層向上させる観点から、好ましくは0.4μm以下であり、より好ましくは0.03〜0.3μmである。板状アルミナフィラーの平均厚みを小さくすれば、同一含有量でガラスセラミックス基板11a〜11dに含まれる板状アルミナフィラーの個数を増やすことが可能になるため、ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度を向上させることができる。一方、板状アルミナフィラーの平均厚みが0.3μmを超えると、板状アルミナフィラーの良好な配向性が損なわれる傾向にある。
【0023】
板状アルミナフィラーの平均アスペクト比は、ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度を一層向上させる観点から、好ましくは20以上であり、より好ましくは25〜70である。板状アルミナフィラーの平均アスペクト比が20未満であると、板状アルミナフィラーの良好な配向性が損なわれる傾向にある。
【0024】
図2は、本実施形態のガラスセラミックス基板に含まれる板状アルミナフィラーの一例を示す上面図である。図2は、板状アルミナフィラー20の板面形状を示している。すなわち、板状アルミナフィラー20の板面は八角形状を有している。図2のように板状アルミナフィラー20の板面が正八角形ではない場合、板状アルミナフィラー20の板径は、板面における長径yと短径xの平均値として求めることができる。すなわち、板状アルミナフィラー20の板径は、板状アルミナフィラー20に内接する最小の長方形の長辺と短辺の平均値として求めることができる。板状アルミナフィラー20に内接する最小の四角形が正方形の場合は、1辺の長さが板径となる。
【0025】
板状アルミナフィラー20の厚みは、板面に垂直な方向の最大長さである。平均板径、平均厚みは、それぞれ、電子顕微鏡画像において無作為に抽出した500個の板状アルミナフィラーの板径及び厚みの測定値の算術平均値である。平均アスペクト比は、(平均板径)/(平均厚み)によって算出される。
【0026】
本実施形態のガラスセラミックス基板に含まれる板状アルミナフィラーは、図2のように板面に垂直な方向から見た平面形状が、円形、楕円形又は円形若しくは楕円形に近似する多角形等、異方性の小さな形状であるものが好ましい。ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度向上の観点からは、板状アルミナフィラーの平面形状は、好ましくは六角形であること、より好ましくは正六角形である。
【0027】
図3は、本実施形態のガラスセラミックス基板11aの側面の一部を拡大して示す側面図である。図3に示すように、ガラスセラミックス基板のガラス22中に分散された板状アルミナフィラー20は、板面がほぼ同一方向に向いており、面Aとほぼ平行になっている。このように、板状アルミナフィラー20は良好な配向性を有している。この配向性の良否は、CuKα線を用いたX線回折測定によって求められる(104)結晶面と(006)結晶面のピークの強度比によって判断することができる。
【0028】
板状アルミナフィラーの(104)結晶面と(006)結晶面におけるX線回折ピークの強度比は、(104)結晶面及び(006)結晶面の面積基準のピーク強度を、それぞれI(006)及びI(104)としたとき、I(104)に対するI(006)の比、すなわちI(006)/I(104)の計算式で求めることができる。
【0029】
本実施形態の板状アルミナフィラーのI(006)/I(104)(以下、ピーク強度比αという)は、1.0以上である。このようなピーク強度比αを有する板状アルミナフィラーは、ガラスセラミックス基板11a〜11dにおいて、良好な配向性を有する。ピーク強度比αは、一層優れた強度を有するガラスセラミックス基板とする観点から、好ましくは1.5以上であり、より好ましくは2.0以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。ピーク強度比αが高くなるほど、板状アルミナフィラーの板面の向きが揃い、配向性が良好になる。このように、本実施形態のガラスセラミックス基板は、板状アルミナフィラーの板面の向きがほぼ揃っており、配向性が良好であることから、優れた強度と高い靭性を有する。なお、ピーク強度比αに特に上限はないが、実用上、上限は20程度となる。
【0030】
図4は、本実施形態のガラスセラミックス基板のX線回折測定結果を示すチャートである。図4におけるチャートAは、市販のX線回折装置を用いて、図3におけるガラスセラミックス基板11aの面AにX線を照射して測定されたX線回折チャートである。図4におけるチャートBは、市販のX線回折装置を用いて、図3におけるガラスセラミックス基板11aの面BにX線を照射して測定されたX線回折チャートである。
【0031】
チャートAは、チャートBよりも明瞭に(104)結晶面と(006)結晶面のピークを示している。本実施形態のピーク強度比αは、面A、すなわち板状アルミナフィラー20の板面にほぼ平行な面にX線を照射して測定されたチャートAのピークから計算される値である。チャートAは、板状アルミナフィラー20の板面にほぼ平行な面にX線を照射して測定されたX線回折ピークであるため、板状アルミナフィラー20の(104)結晶面と(006)結晶面のピークが明瞭に示されている。したがって、各ピークのピーク強度からピーク強度比αを高い精度で算出することができる。このように、本実施形態では、特定のアスペクト比を有する板状アルミナフィラー20の配向性を良好にするために、X線を照射する面を特定すると共に、その面に応じて最適な結晶面を特定している。これによって、ガラスセラミックス基板の強度の強度を十分に高くするとともに、強度のばらつきを十分に小さくすることができる。なお、チャートBは、板状アルミナフィラー20のアスペクト比が高いために、チャートAよりも(104)結晶面及び(006)結晶面のピークが不鮮明である。このため、チャートBのX線回折ピークから正確なピーク強度比αを算出することは困難である。
【0032】
なお、板状アルミナフィラーの配向性を示す他の結晶面として、(110)結晶面が考えられるものの、この(110)結晶面はチャートAでは検出されない。したがって、(110)結晶面では板状アルミナフィラーの配向性を規定することはできないと考えられる。
【0033】
ガラスセラミックス基板11a〜11dは、板状アルミナフィラー20以外のセラミックスフィラーを更に含有してもよい。板状アルミナフィラー以外のセラミックスフィラーとしては、例えば、マグネシア、スピネル、シリカ、ムライト、フォルステライト、ステアタイト、コージェライト、ストロンチウム長石、石英、ケイ酸亜鉛、ジルコニア及びチタニアからなる群より選ばれる少なくとも一種の材料によって形成された球状又は板状のフィラーが挙げられる。また、ガラスセラミックス基板11a〜11dは、球状アルミナを含有してもよい。ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度を一層高くする観点から、板状アルミナフィラーの割合を全セラミックスフィラーの80体積%以上とすることが好ましい。
【0034】
<ガラス>
ガラスセラミックス基板11a〜11dに含まれるガラス22の材料としては、例えば、(1)非晶質ガラス系材料及び(2)結晶化ガラス系材料の少なくとも1種からなるガラス粉末が挙げられる。(2)結晶化ガラス系材料は、加熱焼成時に多数の微細な結晶がガラス成分中に析出した材料であり、ガラスセラミックスともいう。
【0035】
ガラス22は、(1)非晶質ガラス系材料及び(2)結晶化ガラス系材料のうち、(2)結晶化ガラス系材料を用いて形成されるものであることが好ましい。(2)結晶化ガラス系材料としては、例えば、(i)SiO、B、Al及びアルカリ土類金属酸化物を含有するガラス並びに(ii)SiO、CaO、MgO、Al及びCuOを含有するディオプサイド結晶ガラスを用いることができる。
【0036】
(i)のガラスの好適な組成、及び(i)のガラスを用いた場合のガラスセラミックス基板11a〜11dにおけるガラス22の好適な組成を説明する。ガラス22は、SiO、B、Al及びアルカリ土類金属酸化物を含有することが好ましい。SiOの含有量は、ガラス22全量を基準として46〜60質量%であることが好ましく、47〜55質量%であることがより好ましい。(i)のガラスにおけるSiOの含有量が46質量%未満であるとガラス化が困難になる傾向にある。一方、(i)のガラスにおけるSiOの含有量が60質量%を超えると融点が高くなって低温焼結が困難になる傾向にある。
【0037】
の含有量は、ガラス22全量を基準として、好ましくは0.5〜5質量%であり、より好ましくは1〜3質量%である。ガラス22におけるBの含有量が5質量%を超えると、耐湿性が低下する傾向にある。一方、ガラス22におけるBの含有量が0.5質量%未満であると、ガラス化温度が高くなるとともに密度が低くなる傾向にある。
【0038】
Alの含有量は、ガラス22全量を基準として、好ましくは6〜17.5質量%であり、より好ましくは7〜16.5質量%である。ガラス22におけるAlの含有量が6質量%未満であると十分に優れた強度が損なわれる場合がある。一方、ガラス22におけるAlの含有量が17.5質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
【0039】
アルカリ土類金属酸化物の含有量は、ガラス22全量を基準として、好ましくは25〜45質量%であり、より好ましくは30〜40質量%である。アルカリ土類金属酸化物としては、例えば、MgO、CaO、BaO及びSrOが挙げられる。これらのアルカリ土類金属酸化物は一種のみを含んでいてもよく二種以上を含んでいてもよい。アルカリ土類金属酸化物の中でも、SrOとその他のアルカリ土類金属酸化物とを組み合わせて含むことが好ましい。CaO、MgO及びBaOからなる群より選ばれる少なくとも一種と、SrOとを組み合わせて用いると、溶解ガラスの粘性が低下し、焼結温度の自由度を大きくすることができる。このため、ガラスセラミックス基板11a〜11dの製造を容易にすることができる。
【0040】
アルカリ土類金属酸化物の全量に対するSrOの含有量は、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上である。この含有量が60質量%未満であると、ガラス22と板状アルミナフィラー20との熱膨張係数の差が大きくなりガラスセラミックス基板11a〜11dの強度が低下する傾向にある。
【0041】
アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaO、MgO及びBaOの合計含有量は、好ましくは1質量%以上である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaO及びMgOの含有量は、それぞれ好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するCaOの含有量は、好ましくは10質量%未満である。アルカリ土類金属酸化物の全量に対するMgOの含有量は、好ましくは4質量%以下である。CaO及びMgOの含有量が上述の値よりも大きくなると熱膨張係数が小さくなりすぎて、ガラスセラミックス基板11a〜11dの強度が低下する傾向、及びガラスの結晶化度の制御が困難になる傾向にある。ガラスセラミックス基板11a〜11dの製造の容易性とガラスセラミックス基板の強度とを両立させる観点からは、アルカリ土類金属酸化物全量に対するCaO及びMgOの合計含有量は、好ましくは10質量%未満である。アルカリ土類金属酸化物全量に対するCaOの含有量は、好ましくは5質量%以下である。
【0042】
アルカリ土類金属酸化物全量に対するBaOの含有量は、好ましくは5質量%以下である。この含有量が5質量%を超えると誘電率が高くなる傾向にある。
【0043】
次に、(ii)の結晶ガラス及び(ii)の結晶ガラスを用いた場合のガラスセラミックス基板11a〜11dにおけるガラス22の好適な組成を説明する。(ii)の結晶ガラスは、焼成によって主結晶としてディオプサイド結晶ガラスを析出する。
【0044】
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、SiOはガラスのネットワークフォーマーであるとともに、ディオプサイド結晶の構成成分である。SiOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量を基準として、好ましくは40〜65質量%であり、より好ましくは45〜65質量%である。SiOの含有量が40質量%未満であるとガラス化が困難になる傾向にある。一方、SiOの含有量が65質量%を超えると密度が低くなる傾向にある。
【0045】
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、CaOはディオプサイド結晶の構成成分である。CaOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは20〜35質量%であり、より好ましくは25〜30質量%である。CaOの含有量が20質量%未満であると誘電損失が高くなる傾向にある。一方、CaOの含有量が35質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
【0046】
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、MgOはディオプサイド結晶の構成成分である。MgOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは11〜30質量%であり、より好ましくは12〜25質量%である。MgOの含有量が11質量%未満であると結晶が析出し難くなる傾向にある。一方、MgOの含有量が30質量%を超えるとガラス化が困難になる傾向にある。
【0047】
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、Alはガラスの結晶性を調節する成分である。Alの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス全量に対して、好ましくは0.5〜10質量%であり、より好ましくは1〜5質量%である。Alの含有量が0.5質量%未満であると結晶性が強くなりすぎてガラス成形が困難になる傾向にある。一方、Alの含有量が10質量%を超えるとディオプサイド結晶が析出し難くなる傾向にある。
【0048】
ディオプサイド結晶ガラスにおいて、CuOはAgに電子を与え、ガラスセラミックス中への拡散を抑制する成分である。CuOの含有量は、ディオプサイド結晶ガラス成分全量に対して、好ましくは0.01〜1.0質量%である。CuOの含有量が0.01質量%未満であると上述の効果が十分に発揮されない傾向にある。一方、CuOの含有量が1.0質量%を超えると誘電損失が大きくなり過ぎる傾向にある。
【0049】
ディオプサイド結晶ガラス成分において、SrO、ZnO、TiOはガラス化を容易にするために添加する成分である。ディオプサイド結晶ガラス成分全量に対する含有量は、各成分とも好ましくは0〜10質量%であり、より好ましくは0〜5%である。これらの成分が各々10質量%より多くなると結晶性が弱くなり、ディオプサイドの析出量が少なくなって誘電損失が大きくなる傾向にある。
【0050】
また、ディオプサイド結晶ガラス成分としては、誘電損失等の特性を損なわない範囲で上記成分以外の成分を含んでいてもよい。
【0051】
(i)及び(ii)のガラスのうち、一層優れた強度を得る観点から、ガラスセラミックス基板11a〜11dにおけるガラス22は、(ii)の結晶ガラスを用いて形成されることが好ましい。
【0052】
本実施形態のガラスセラミックス基板11a〜11dの表面粗さRaは、一層強度を高くするとともに電子部品への実装性を向上させる観点から、好ましくは0.5μm以下であり、より好ましくは0.4μm以下であり、さらに好ましくは0.3μm以下である。ガラスセラミックス基板11a〜11dの表面粗さRaは、原料として用いるガラス粉末の粒径のサイズを調整することによって変えることができる。ガラス粉末の平均粒径(D50)は、好ましくは2μm以下であり、より好ましくは1.8μm以下である。なお、本明細書における平均粒径とは、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される体積平均粒子径(d(50))である。
【0053】
以上、本発明のガラスセラミックス基板及びそれを備える配線基板の好適な実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、配線基板は単一のガラスセラミックス基板から構成されるものであってもよい。また、積層された複数のガラスセラミックス基板のいずれか一つのみを上記実施形態のガラスセラミックス基板としてもよい。また、配線基板に備えられるガラスセラミックス基板の枚数は限定されない。
【0054】
次に、本発明のガラスセラミックス基板の製造方法の好適な実施形態を、配線基板10を例にして説明する。図5は、図1に示す配線基板10の製造方法を説明するための工程断面図である。
【0055】
本実施形態のガラスセラミックス基板の製造方法では、まず、図5の(a)に示すように、ビア導体パターン2、内部導体パターン3及び表面導体パターン4の少なくとも一つが形成された基板用グリーンシート1a〜1dを用意する。
【0056】
基板用グリーンシート1a〜1dは、ガラスとガラス中に分散した板状アルミナフィラーを含有する。この基板用グリーンシート1a〜1dは、以下の手順で形成することができる。
【0057】
まず、板状アルミナフィラー20を準備する。板状アルミナフィラー20は、例えば、アルミン酸塩と酸性アルミニウム塩とを水を含んだ状態で反応させて、アルミナ及び/又はアルミナ水和物と中和金属塩を含む混合物を得る反応工程と、該混合物を1000〜1600℃で焼成する焼成工程とを有する製造方法によって得ることができる。
【0058】
反応工程では、まず、水酸化ナトリウムを水に溶解させて水酸化ナトリウム溶液を調製する。この水酸化ナトリウム溶液に、金属アルミニウム及びリン酸水素二ナトリウムを混合して攪拌し、金属アルミニウム及びリン酸水素二ナトリウムが溶解した混合溶液を調製する。当該混合溶液に、pHが6〜8となるまで硫酸アルミニウム水溶液を攪拌しながら投入し、白濁状のゲル状混合物(アルミナ及び/又はアルミナ水和物と中和金属塩を含む混合物)を得る。その後、当該混合物を乾燥して、水分を除去する。
【0059】
焼成工程では、乾燥した混合物を、1000〜1600℃で2〜8時間焼成して、焼成物を得る。得られた焼成物に水を加えて洗浄及び濾過を行い、得られた固形分を乾燥する。以上の工程によって、所定のサイズを有する板状アルミナフィラー20を得ることができる。
【0060】
板状アルミナフィラー20を、例えば、ガラス粉末並びに結合剤、溶剤、可塑剤及び分散剤等を含む有機ビヒクルと混合し、スラリー状の誘電体ペーストを調製する。ここで、板状アルミナフィラーの配向性を良好にするためには、誘電体ペースト中において板状アルミナフィラーを十分に分散させる必要がある。一方、混合時に板状アルミナフィラー20の破損を十分に防止する必要がある。したがって、板状アルミナフィラー20の破損を防止しつつ板状アルミナフィラー20の分散性を良好にする観点から、混合は、メディアを用いる混合装置(例えばビーズミルなど)よりも、ボールミルを用いて行うことが好ましい。また、混合時における衝撃を和らげる観点から、混合は時間をかけて行うことが好ましい。具体的には、混合時間は40時間以上とすることが好ましい。
【0061】
誘電体ペースト中の板状アルミナフィラー20の含有量は、好ましくは22.5〜32.5体積%である。板状アルミナフィラーの分散性が不十分であると、ガラスセラミック基板における板状アルミナフィラーの良好な配向性が損なわれる傾向にある。
【0062】
結合剤としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂及びメタアクリル酸樹脂等が挙げられる。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル等が挙げられる。溶剤としては、例えば、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0063】
調製した誘電体ペーストを、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)シート等の支持体上にドクターブレード法等によって成膜する。これによって、支持体上に基板用グリーンシート1a〜1dを形成することができる。ドクターブレード法によって成膜を行うことで、板状アルミナフィラーの板面を基板用グリーンシートの主面とほぼ平行(水平方向)になるように配向させることができる。これによって、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板を形成することができる。
【0064】
次に、基板用グリーンシート1a〜1dに、導体パターン(配線パターンや電極パッド、ビアホール等)を形成する。具体的には、基板用グリーンシート1a〜1dの所定の位置に貫通孔(ビアホール)を形成し、ここに導体ペーストを充填することによりビア導体パターン2を形成する。また、内層となる基板用グリーンシート1b及び1cの表面に所定のパターンで導体ペーストを印刷し、内部導体パターン3を形成する。さらに、最も外側に配置される基板用グリーンシート1a及び1dには、表面導体パターン4を形成する。なお、基板用グリーンシート1a〜1dには、必要に応じて電子素子(インダクタやキャパシタ等)を形成してもよい。
【0065】
導体パターンの形成に用いる導電ペーストは、例えば、Ag、Ag−Pd合金、Cu、Ni等の各種導電性金属や合金からなる導電材料と有機ビヒクルとを混練することにより調製することができる。導電ペーストに用いられる有機ビヒクルは、バインダと溶剤とを主たる成分として含有する。バインダ、溶剤及び導電材料の配合比に特に制限はなく、例えば、導電材料に対して、バインダを1〜15質量%、溶剤を10〜50質量%配合することができる。導電ペーストには、必要に応じて各種分散剤や可塑剤等から選択される添加物を添加してもよい。
【0066】
次に、図5の(b)に示すように、基板用グリーンシート1a,1b,1c及び1dをこの順で積層して積層体を得る。この積層体を積層方向に挟むようにして拘束層となる一対の収縮抑制用グリーンシート5を配置する。基板用グリーンシート1a〜1dからなる積層体を、収縮抑制用グリーンシート5により挟み込むことで、後述の焼成時における積層体の面内方向(積層方向に垂直な方向)の収縮を抑制することができる。
【0067】
また、このように積層体の面内方向の収縮を抑制することにより、収縮ばらつきによって生じる板状アルミナフィラーの配向性の乱れを低減することができる。すなわち、焼成前に配向した板状アルミナフィラーの良好な配向性を維持することが可能となる。したがって、配向度の高い焼結体を得ることが可能となり、強度に一層優れるガラスセラミックス基板とすることができる。
【0068】
拘束層となる収縮抑制用グリーンシート5に用いられる材料(以下、「収縮抑制材」という)としては、例えば、トリジマイト、クリストバライト、石英、溶融石英、アルミナ、ムライト、ジルコニア、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、炭化ケイ素及び炭酸カルシウムが挙げられる。
【0069】
収縮抑制材は、基板用グリーンシート1a〜1dの焼成温度で収縮しない材料を含有することが好ましい。上述の材料のうち、拘束層としての機能を有し、剥離も容易である点からトリジマイトが好ましい。トリジマイトを用いると、積層体を焼成した後、熱膨張の差により収縮抑制用グリーンシート5が自然剥離する。剥離性を一層向上させるために、拘束層は、炭酸カルシウムからなる層をトリジマイトからなる層の上に積層した積層構造を有することが好ましい。
【0070】
次に、図5の(c)に示すように、収縮抑制用グリーンシート5が両側に配置された積層体(仮スタック)をプレスする。プレス後に、焼成を行うことにより、図5の(d)に示すように、基板用グリーンシート1a〜1dはガラスセラミックス基板11a〜11dとなり、ビアホール内のビア導体パターン2はビア導体12となる。また、内部導体パターン3は内部導体13となり、表面導体パターン4は表面導体14となる。
【0071】
次に、図5の(e)に示すように、ガラスセラミックス基板11a,11bから収縮抑制用グリーンシート5を剥離する。以上の工程によって、ガラスセラミックス基板11a〜11d、及びガラスセラミックス基板11a〜11dを備える配線基板10を得ることができる。焼成工程の後に、ガラスセラミックス基板の11a〜11dの少なくとも一つのX線回折測定を行う測定工程を行ってもよい。
【0072】
以上、図1に示すガラスセラミックス基板11a〜11d、及び配線基板10の製造方法を説明したが、本発明のガラスセラミックス基板及び配線基板の製造方法は上述の方法に限られるものではない。例えば、上述の製造方法では、収縮抑制用グリーンシート5を配置して、積層体の焼成を行ったが、収縮抑制用グリーンシート5を配置せずに積層体を焼成して、ガラスセラミックス基板及び配線基板を製造してもよい。
【実施例】
【0073】
実施例及び比較例を参照して、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0074】
(実施例1)
[ガラスセラミックス基板の作製]
ガラス粉末A(SiO、CaO、MgO、Al及びCuOを主成分とする、ディオプサイドを析出する結晶化ガラス粉末)と、板状アルミナフィラーとを準備した。なお、板状アルミナフィラーの平均板径、平均厚み及び平均アスペクト比を表1に示す。
【0075】
アクリル系樹脂を19.4g、トルエンを59.1g、エタノールを3g、可塑剤(ブチルフタリルグリコール酸ブチル)を6.5g混合して、有機ビヒクルを調製した。そして、ガラス粉末A、板状アルミナフィラー、及び調製した有機ビヒクルを配合し、ボールミルを用いて72時間混合して誘電体ペーストを調製した。
【0076】
調製した誘電体ペーストをポリエチレンテレフタレートフィルム上にドクターブレード法により成膜して基板用グリーンシートを複数形成した。複数枚の基板用グリーンシートを積層して、74MPaでプレスした後、大気中、900℃で1時間焼成し、多層構造のガラスセラミックス基板を得た。なお、焼成後のガラスセラミックス基板の合計厚さは0.2mmであり、ガラスセラミックス基板における板状アルミナフィラーの含有量は、表1に示すとおりであった。
【0077】
次に、市販のX線回折装置を用いて、ガラスセラミックス基板のX線回折測定を行った。測定面は、図3の面Aとした。得られたX線回折チャートにおいて、板状アルミナフィラーの(006)結晶面と(104)結晶面のそれぞれの面積基準のピーク強度(I006,I104)を求め、I104に対するI006の比(I006/I104)を求めた(ピーク強度比1という)。その結果は、表1に示すとおりであった。
【0078】
[ガラスセラミックス基板の評価]
JIS C2141に準拠して、上述の通りに作製したガラスセラミックス基板の3点曲げ強さ試験を行った。具体的には、ガラスセラミックス基板の一辺を2点で支持し、これと対向する辺における上記2点の中間位置に徐々に加重を加えて、ガラスセラミックス基板に切断が生じたときの荷重を測定し、これに基づいて3点曲げ強度(MPa)を算出した。当該曲げ強度を30点測定して平均値(平均曲げ強度)を求めた。その結果を表1に示す。
【0079】
(実施例2〜7及び比較例1)
表1に示すように、サイズ及び形状の異なる板状アルミナフィラーを用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガラスセラミックス基板を作製し、X線回折測定を行った。そして、実施例1と同様にして、評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表1に示すとおりであった。
【0080】
なお、実施例5と実施例11については、複数枚の基板用グリーンシートを積層して得られた積層体のX線回折測定を行い、I104に対するI006の比(I006/I104)を求めた(ピーク強度比2という)。結果は、表1に示すとおりであった。
【0081】
(実施例7〜12及び比較例2)
実施例1〜6及び比較例1と同様にして、複数のグリーンシートを作製した。複数枚の基板用グリーンシートを積層して積層体を得た。該積層体を積層方向に挟むようにしてトリジマイトを含む一対の収縮抑制用グリーンシートを積層し、74MPaでプレスした。その後、大気中、900℃で1時間焼成し、多層構造のガラスセラミックス基板を得た。なお、焼成後のガラスセラミックス基板の厚さは0.2mmであり、ガラスセラミックス基板における板状アルミナフィラーの含有量は、表1に示すとおりであった。
【0082】
実施例1〜6及び比較例1と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表1に示すとおりであった。
【0083】
【表1】

【0084】
(実施例13〜18、比較例3)
表2に示すように板状アルミナフィラーのサイズ及び配合量を変更したこと、及びガラス粉末Aに代えてガラス粉末B(SiO、CaO、MgO、Al及びCuOを主成分とする、ディオプサイドを析出する結晶化ガラス粉末)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、実施例13〜18及び比較例3のガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例1と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表2に示すとおりであった。
【0085】
実施例16及び比較例3については、JIS−R−1607に準拠して破壊靭性値(KIC)の測定を行った。その結果、実施例16の方が高い破壊靭性値を有することが確認された。板状アルミナフィラーの配向性が高い方が、高い破壊靭性値を示すことが確認された。
【0086】
(実施例19)
ガラス粉末B、板状アルミナフィラー、及び調製した有機ビヒクルを配合した後のボールミルを用いた混合時間を72時間から48時間に変更したこと以外は、実施例14と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例14と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1(I006/I104)及び評価結果は表2に示すとおりであった。
【0087】
(比較例4)
ガラス粉末B、板状アルミナフィラー、及び調製した有機ビヒクルを配合した後のボールミルを用いた混合時間を72時間から24時間に変更したこと以外は、実施例14と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例14と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1(I006/I104)及び評価結果は表2に示すとおりであった。
【0088】
【表2】

【0089】
図6は、実施例15のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。図6に示す通り、実施例15のX線回折チャートでは、(006)結晶面及び(104)結晶面に由来する明瞭なピークを確認することができた。一方、(110)結晶面のピークは確認することができなかった。
【0090】
図7は、実施例17のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。図7に示す通り、実施例17のX線回折チャートでは、(006)結晶面及び(104)結晶面に由来する明瞭なピークを確認することができた。一方、(110)結晶面のピークは確認することができなかった。
【0091】
図6及び図7のX線回折チャートから、高いアスペクト比を有する板状アルミナフィラーの場合、(110)結晶面のX線回折ピークでは板状アルミナフィラーの配向性を判断できないことが確認された。
【0092】
図8は、比較例3のガラスセラミックス基板のX線回折チャートである。図8では、(006)結晶面、(104)結晶面及び(110)結晶面のピークが確認された。これらのピークのそれぞれの強度から、I006/(I110+I006)を算出すると、0.8であった。
【0093】
(実施例20〜22)
ガラス粉末Bとして、表3に示す平均粒径を有するものを用いたこと以外は、実施例11と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例11と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表3に示すとおりであった。また、ガラスセラミックス基板表面の任意の十点における算術平均粗さ(Ra)を、表面粗さ計を用い、JIS B0601(1994)に準拠して測定した。測定結果は表3に示すとおりであった。
【0094】
(実施例23,24)
板状アルミナフィラーの配合量を変えて、ガラスセラミックス基板におけるアルミナフィラーの含有量を表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例4と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例4と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表3に示すとおりであった。
【0095】
(実施例25,26)
アルミナフィラーの配合量を変えて、アルミナフィラーの含有量を表3に示すとおりに変更したこと以外は、実施例10と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例11と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。X線回折のピーク強度比1及び評価結果は表3に示すとおりであった。
【0096】
【表3】

【0097】
(比較例5)
板状アルミナフィラーに変えて不定形アルミナフィラー(平均粒径:1.5μm、昭和電工株式会社製、商品名:AL−43−M)を用いたこと以外は、実施例1と同様にしてガラスセラミックス基板を作製した。そして、実施例1と同様にして、X線回折測定及び評価を行った。その結果、X線回折のピーク強度比1は、0.04であり、曲げ強度は250MPaであった。
【0098】
図9は、比較例5のX線回折チャートである。図9に示すように、不定形アルミナフィラーを用いた場合、(110)結晶面のピークに比べて(006)結晶面のピークが小さくなることが確認された。この結果から、I006/I104で計算される各実施例のピーク強度比1は、板状アルミナフィラーを含有するガラスセラミックス基板に特有の値であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明によれば、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板及びそのようなガラスセラミックス基板を備える配線基板を提供することができる。また、十分に優れた強度を有するガラスセラミックス基板を安定的に製造することが可能なガラスセラミックス基板の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0100】
1a,1b,1c,1d…基板用グリーンシート、2…ビア導体パターン、3…内部導体パターン、4…表面導体パターン、5…収縮抑制用グリーンシート、10…配線基板、11a,11b,11c,11d…ガラスセラミックス基板、12…ビア導体(導体)、13…内部導体(導体)、14…表面導体(導体)、20…板状アルミナフィラー、22…ガラス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスと該ガラス中に分散された板状アルミナフィラーとを含有し、
前記板状アルミナフィラーのアスペクト比が20以上であり、
前記板状アルミナフィラーの(104)結晶面のX線回折ピークに対する(006)結晶面のX線回折ピークの強度比が1.0以上であるガラスセラミックス基板。
【請求項2】
前記アルミナフィラーの平均板径が2〜8μmである請求項1に記載のガラスセラミックス基板。
【請求項3】
表面粗さRaが0.3以下である請求項1又は2に記載のガラスセラミックス基板。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項のガラスセラミックス基板と、該ガラスセラミックス基板上に導体と、を有する配線基板。
【請求項5】
ガラス粉末とアスペクト比が20以上である板状アルミナフィラーとを含むスラリーを基材上に塗布して製膜し、グリーンシートを作製する製膜工程と、
前記グリーンシートを焼成して、前記板状アルミナフィラーの(104)結晶面のX線回折ピークに対する(006)結晶面のX線回折ピークの強度比が1.0以上であるガラスセラミックス基板を得る焼成工程と、を有する、ガラスセラミックス基板の製造方法。
【請求項6】
前記焼成工程では、前記グリーンシートと、該グリーンシートを挟むように前記グリーンシートよりも熱収縮が小さい別のグリーンシートと、を有する積層体を焼成する、請求項4に記載のガラスセラミックス基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−176210(P2011−176210A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40303(P2010−40303)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】