説明

ガラス昇降装置

【課題】部品を小型化し、組み立てが容易で、安定してガラス昇降可能なガラス昇降装置を提供する。
【解決手段】Z軸方向に往復移動可能なウインドウガラス3の一端部に、ガラスチャンネル6が固定されている。また、ベルト8は、その一部の領域で、Z軸方向と平行な方向に移動するように設けられている。キャリアブラケット7は、ベルト8に固定されている。アクチュエータ11は、ベルト8をZ軸方向の移動に伴って上下動可能となっている。キャリアブラケット7は、一部の領域におけるベルト8の移動方向に垂直の中心軸のローラ76を有する。また、ガラスチャンネル6のレール62は、ローラ76の回転が可能に、かつ、Z軸方向に相対的に移動しないように拘束する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアのアウターパネルとインナーパネルとの間に配置され、車両のウインドウガラスを昇降させるガラス昇降装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両には、モータ駆動等によってウインドウガラスを昇降させるガラス昇降装置(ウインドウレギュレータ)が、ドアのインナーパネルとアウターパネルとの間に設けられているのが一般的である。
【0003】
このようなガラス昇降装置としては、大別して以下の2つのタイプがある。
【0004】
1つ目は、例えば、一本のリフトアームの回転駆動により、そのリフトアームの先端に連結されたウインドウガラスを昇降させるタイプである(例えば、特許文献1参照)。このタイプの装置では、リフトアームの先端にローラ又はスライダ(以下、「ローラ」等という。)が装着されている。ローラ等は、ウインドウガラスの下辺に装着されたブラケットのガイドレールに沿って水平方向に移動可能となっている。リフトアームが回転駆動されると、ローラ等は円弧状の軌跡に沿って移動する。この移動により、水平方向にはローラ等がブラケットのガイドレールに沿ってスライドするようになる一方、上下方向にはローラ等によりブラケットが押されて、昇降ガイドに沿ってガラスが昇降するようになる。
【0005】
2つ目は、一本のベルト(ギアドワイヤ)の駆動により、そのベルトに固定されたブラケットをガイドに案内させて上下させることにより、そのブラケットに固定されたウインドウガラスを昇降させるタイプである(例えば、特許文献2参照)。このタイプの装置では、ベルトでウインドウガラスをバランスよく保持する必要がある。このため、複数の位置で(例えば、ベルトに対して対称な2つの位置で)、ウインドウガラスとブラケットとが、ボルトとナットとで締結されているのが一般的である。
【0006】
【特許文献1】特開2000−104447号公報
【特許文献2】実開平4−13783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載のガラス昇降装置では、上述のように、ウインドウガラスの昇降中にローラ等がブラケットのガイドレールに沿って水平方向にスライドする。したがって、ウインドウガラスの上下ストロークを確保するためには、ローラ等の摺動距離をそれだけ長くする必要がある。このため、ブラケットのガイドレールを水平方向に長くする必要が生じ、ブラケットが必然的に大きくなる。
【0008】
また、特許文献2に記載のガラス昇降装置では、複数箇所のボルト締めで、ウインドウガラスとブラケットとが締結されているため、その締結作業の分だけ組み立てに時間を要してしまう。さらに、ウインドウガラスとブラケットとがボルト締めで締結されていると、ガラスが昇降してドアフレームに当接した反力でボルトのネジが緩んでしまい、ガラスの昇降動作が不安定となると考えられる。
【0009】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、部材を小型化し、かつ、組み立ての容易で、安定してガラスを昇降させることができるガラス昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のガラス昇降装置は、第1の方向に往復移動可能なウインドウガラスの一端部に固定された第1の連結部材と、一部の領域で前記第1の方向と平行の方向に移動するように設けられた無端ベルトと、前記無端ベルトに固定された第2の連結部材と、前記無端ベルトを移動させる操作又は駆動部と、を有し、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の一方の連結部材は、前記一部の領域における前記無端ベルトの移動方向に垂直の中心軸を持つローラを有し、前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の他方の連結部材は、前記ローラを前記中心軸回りの相対的な回転が可能に且つ前記第1の方向に相対的に移動しないように拘束する拘束部を有することを特徴とする。
【0011】
上記構成のガラス昇降装置において、前記拘束部は、前記第1の方向に交差する方向の端部に前記ローラを挿入可能な開口部を有するようにしてもよい。
【0012】
また、前記一方の連結部材は、前記無端ベルトに固定された第2の連結部材であり、前記無端ベルトに一体成型された樹脂ブラケットと、この樹脂ブラケット内に埋め込まれた受け座と、この受け座に固定され前記樹脂ブラケットから外部に導出されたローラ部材と、を有し、前記ローラは、前記ローラ部材に回転可能又は固定的に支持されているようにしてもよい。
【0013】
また、前記無端ベルトは、上方に配置されたプーリと、下方に配置されたリテーナと、中間に配置されたアクチュエータの駆動回転部との間に掛け渡されており、前記アクチュエータの駆動により、前記プーリと前記リテーナとの間の領域で前記第1の方向に往復移動するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の如く、本発明によれば、ベルトとウインドウガラスとの間の連結部材を小型化し、かつ、装置の組み立てを容易として、安定したガラス昇降動作を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係るガラス昇降装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1には、車両ドアとしてのサイドドア1の全体図が示されている。図1では、車両右側側面のサイドドア1が、車両室内視で図示されている。図1に示されるように、サイドドア1は、車両内側側面(+Y側の面)に設けられたインナーパネル2aと、車両外側側面(−Y側の面)に設けられたアウターパネル2bとを備えている。図1では、ドア内部の構造を図示するため、+Y側のインナーパネル2aの大部分が破砕して示されている。サイドドア1を構成するインナーパネル2aと、アウターパネル2bとに囲まれた空間には、矩形平板状のウインドウガラス3と、ウインドウガラス3を昇降させる本実施形態に係るガラス昇降装置としてのウインドウレギュレータ4と、ウインドウガラス3の昇降を案内するガイド5a、5bとが取り付けられている。
【0017】
ガイド5a、5bは、ウインドウガラス3の水平方向両端に、ウインドウガラス3を挟むようにして第1の方向としての上下方向(Z軸方向)に延設されている。図1では、ガイド5a、5bの一部が破砕して示されている。ガイド5a、5bは、断面U字状であり、その凹部が向かい合うようにしてインナーパネル2a及びアウターパネル2bに設置されている。これらの凹部に、ウインドウガラス3の水平方向端部がはめ込まれている。これらガイド5a、5bにより、ウインドウガラス3は、水平方向(X軸方向及びY軸方向)への移動が規制される。後述するように、ウインドウレギュレータ4の駆動により、ウインドウガラス3が昇降するようになるが、その昇降時には、ウインドウガラス3は、ガイド5a、5bによって案内される。
【0018】
次に、ウインドウレギュレータ4の構成について説明する。ウインドウレギュレータ4は、ガラスチャンネル6と、キャリアブラケット7と、ベルト8と、プーリ9と、リテーナ10と、アクチュエータ11と、を備えている。
【0019】
第1の連結部材としてのガラスチャンネル6は、ウインドウガラス3の下辺に固定されている。ガラスチャンネル6は、第2の連結部材としてのキャリアブラケット7と連結されている。キャリアブラケット7は、環状のベルト8の上下に張られた一部の領域に固定されている。ベルト8が駆動されれば、その駆動に伴って、キャリアブラケット7が上下動するようになっている。
【0020】
ベルト8としては、例えば、十分に剛性の高いタイミングベルトが用いられる。ベルト8は、無端状に形成された無端ベルトであり、その内周面に一定間隔で複数の歯部が形成されている。
【0021】
図2には、インナーパネル2aの全体図が示されている。図2に示されるように、インナーパネル2aには、プーリ9、リテーナ10、アクチュエータ11の取付穴20、21、22が設けられている。さらに、インナーパネル2aには、インナーパネル2aとアウターパネル2bの間に作用者が手を挿入して作業を行うための作業用穴23が設けられている。プーリ9、リテーナ10、アクチュエータ11は、それぞれ取付穴20、21、22を介して、インナーパネル2aに取り付けられる。作業者は、必要に応じて、作業用穴23から手を挿入して、これらの取付作業や、位置の微調整などを行う。
【0022】
プーリ9は、インナーパネル2aに軸着される。プーリ9には、ベルト8の歯部と噛み合う歯車が形成されている。この噛み合いにより、キャリアブラケット7が、スムーズに上下動するようになっている。リテーナ10は、その外周に、ベルト8を摺動させる摺動面を有している。なお、リテーナ10の代わりに、プーリを設置するようにしてもよい。アクチュエータ11は、インナーパネル2aに固定される。
【0023】
これらプーリ9と、リテーナ10と、アクチュエータ11の回転駆動部(不図示)とに、ベルト8が掛け渡されている。これにより、ベルト8は、その一部の領域で、Z軸方向と平行な方向に移動するようになっている。キャリアブラケット7は、この一部の領域に固定されている。プーリ9と、リテーナ10と、アクチュエータ11とによってベルト8の操作又は駆動部が形成されている。ベルト8は、アクチュエータ11の駆動により、プーリ9とリテーナ10との間の領域で、Z軸方向に往復移動する。なお、アクチュエータ11の構成については、例えば、特開2007−162349号公報等に開示されているので、詳細な説明を省略する。なお、アクチュエータ11に代えて、手動式の回転操作レバーを採用してもよい。
【0024】
なお、ベルト8の歯部は、プーリ9と、リテーナ10と、アクチュエータ11と接触するため、その背面よりも対摩耗性に優れた材質により形成されている。キャリアブラケット7は、この歯部と噛み合った状態で一体的に樹脂成型されている。すなわち、キャリアブラケット7には、樹脂成型時に、ベルトの歯部と噛み合った波状の溝部が形成され、その溝部にベルト8の一部がはめ込まれた状態となっている。
【0025】
図3(a)、図3(b)、図3(c)には、ガラスチャンネル6とキャリアブラケット7とが連結された部分(以下、「連結部」と略述する。)が拡大して示されている。図3(a)には、この連結部を車両室内(+Y方向)から見た図が示され、図3(b)には、連結部を上方(+Z方向)から見た図が示され、図3(c)には、連結部を車両後方(−X方向)から見た図が示されている。
【0026】
図3(a)、図3(b)、図3(c)に総合して示されるように、ガラスチャンネル6の上部には、X軸方向に延びる断面略U字状の部材61が設けられている。その部材61の凹部は、上方を向いている。この凹部には、ウインドウガラス3が、ゴム製のフィラー(不図示)を介して圧入され、固定されている。また、ガラスチャンネル6の下部には、X軸方向に延びる断面略C字状の拘束部としてのレール62が設けられている。レール62の凹部は、+Y側を向いている。
【0027】
図3(a)に示されるように、キャリアブラケット7は、ベルト8と一体的に樹脂成型された樹脂ブラケット71を有している。図3(b)に示されるように、この樹脂ブラケット71は、+Z側から見た場合に、略L字状となっている。樹脂ブラケット71には、ピン75を介してローラ76が接続されている。図3(a)に破線で示されるように、ロータ76は、略円柱形状であり、ピン75をZ軸方向に垂直な中心軸(ローラ部材)として樹脂ブラケット71に対して回転可能となっている。図3(c)に示されるように、ローラ76は、レール62の凹部内に挿入されている。
【0028】
図4(a)には、キャリアブラケット7の分解図が示されている。図4(a)では、図3(a)のA−A’断面に沿って図示されている。図4(a)に示されるように、樹脂ブラケット71の中には、例えば薄い鉄板72(受け座)がインサート成型により埋め込まれている。鉄板72には、円形の貫通孔73が設けられている。また、樹脂ブラケット71にも、貫通孔73とほぼ同心で、かつ、貫通孔73よりも直径の大きい貫通孔74が設けられている。
【0029】
ローラ76にも貫通孔77が設けられている。ピン75は、ローラ76を挟むようにして、ローラ76の貫通孔77及び鉄板72の貫通孔73にこの順に挿入される。その後、図4(b)の完成図に示されるように、ピン75の先端がかしめられ、ピン75が、鉄板72に固定される。これにより、ローラ76は、樹脂ブラケット71から外部に導出されたピン75に回転可能に支持されるようになる。
【0030】
また、図5(a)には、ガラスチャンネル6を+Y方向から見た図が示され、図5(b)には、ガラスチャンネル6を−X方向から見た図が示されている。図5(a)、図5(b)に総合して示されるように、ガラスチャンネル6のレール62には、キャリアブラケット7のローラ76を挿入可能な開口部63が、Y軸方向両端部(第1の方向に交差する方向の端部)に設けられている。後述するように、ウインドウガラス3のサイドドア1への組み付けの際には、この開口部63から、キャリアブラケット7のローラ76が挿入されるようになる。なお、開口部63は、いずれか一方(組み立て工程において、ローラ76が挿入される側)に設けられていればよい。
【0031】
図6(a)〜図6(c)には、組み立て工程における、ガラスチャンネル6と、キャリアブラケット7との連結作業の様子が示されている。ここで、前提として、ウインドウガラス3は、まだドア内に挿入されておらず、ガイド5aのみが設置され、ガイド(ディビジョンバー)5bは、まだ設置されていないものとする。
【0032】
また、プーリ9、リテーナ10、アクチュエータ11は、すでに、インナーパネル2a内に組み付けられており、ベルト8が張られているものとする。そして、図6(a)に示されるように、キャリアブラケット7が、所定の位置に位置決めされているものとする。この状態で、図6(b)に示されるように、作業者は、インナーパネル2aとアウターパネル2bとの間に、ウインドウガラス3を、上方から挿入する。この場合、ウインドウガラス3は、実際の取付位置から−X方向にずらした状態で挿入される。ここで、作業者は、ガラスチャンネル6のレール62の高さを、キャリアブラケット7の高さに合わせる。
【0033】
そして、図6(c)に示されるように、作業者は、ウインドウガラス3を+X方向にずらし、開口部63からレール62内に、キャリアブラケット3のローラ76を挿入する。この状態で、作業者は、ウインドウガラス3の+X側の側辺を、ガイド5aに差し込み、ウインドウガラス3の精密な位置合わせを行う。そして、最後に、作業者は、ガイド5bを、ウインドウガラス3の−X側の側辺を挟むようにして設置する。これにより、ウインドウガラス3の水平方向の移動が規制された状態となる。
【0034】
このような連結作業により、キャリアブラケット7を構成するローラ76は、ガラスチャンネル6のレール62によって、そのレール62に対してY軸回りの相対的な回転が可能、かつ、Z軸方向に相対的に移動しないように拘束される。
【0035】
次に、本実施形態のガラス昇降装置の動作について説明する。
【0036】
まず、ウインドウガラス3が、図1に示される位置から、図7(a)に示される位置、すなわち全閉位置まで上昇させる際の動作について説明する。ウインドウガラス3を上昇させる場合には、アクチュエータ11が図7(a)に示される矢印の向き(反時計回り)にベルト8を駆動するようになる。そうすると、図7(b)に示されるように、キャリアブラケット7が上昇を始める。キャリアブラケット7が上昇を始めると、その上昇により、キャリアブラケット7のローラ76が、ガラスチャンネル6のレール62を上に押すようになる。この押圧力により、ウインドウガラス3が上昇する。
【0037】
ウインドウガラス3が上昇し、図7(a)に示されるように、サイドドア1の上のフレーム78に当接すると、その旨がリミットスイッチ等の不図示のセンサで検出される。このセンサの検出信号は、アクチュエータ11のコントローラ(不図示)に送られる。この検出信号が入力されると、コントローラは、アクチュエータ11によるベルト8の駆動を停止させる。この時点で、図7(a)に示されるように、キャリアブラケット7は、プーリ9に最も近づいた状態となっている。
【0038】
次に、ウインドウガラス3が、図1に示される位置から、図8(a)に示される位置、すなわち全開位置まで下降させる際の動作について説明する。ウインドウガラス3を下降させる場合には、アクチュエータ11が図8(a)に示される矢印の向き(時計回り)にベルト8を駆動するようになる。そうすると、図8(b)に示されるように、キャリアブラケット7が下降を始める。キャリアブラケット7が下降を始めると、その下降により、キャリアブラケット7のローラ76が、ガラスチャンネル6のレール62の凹部の下面を下に押すようになる。この押圧力により、ウインドウガラス3が下降する。
【0039】
ウインドウガラス3が下降し、図8(a)に示されるように、最下位置に到達すると、その旨がリミットスイッチ等の不図示のセンサで検出される。このセンサの検出信号は、アクチュエータ11のコントローラ(不図示)に送られる。検出信号が入力されると、コントローラは、アクチュエータ11によるベルトの駆動を停止させる。この時点で、図8(a)に示されるように、キャリアブラケット7は、リテーナ10に最も近づいた状態となっている。
【0040】
本実施形態に係るウインドウレギュレータ4は、このようにしてウインドウガラス3の昇降を行う。すなわち、キャリアブラケット7のローラ76が、ガラスチャンネル6のレール62と、上下方向に係合して連結されているため、キャリアブラケット7を上下動させることにより、ガラスチャンネル6及びこれに一体のガラスウインドウ3を昇降させることができる。ガラスウインドウ3は、ガイド5a、5bによって、水平方向の移動が規制されているので、この駆動により、ガラスウインドウ3は、上下方向にのみ動くようになる。
【0041】
なお、本実施形態では、ウインドウガラス3が最上の位置又は最下の位置に達したことをリミットスイッチ等で検出するものとしたが、本実施形態には、限られない。例えば、アクチュエータのトルク又は電流値がある一定以上の値となることを検出することにより、ウインドウガラス3が最上の位置又は最下の位置に達したことを検出するようにしてもよい。また、アクチュエータ11の代わりに、回転操作レバーを取り付ける際には、そのような検出を行う必要はない。
【0042】
ここで、図7(a)に示されるような全閉位置で、ウインドウガラス3がサイドドア1の上辺のフレーム78に当接したときに、アクチュエータ11によってベルト8の駆動の停止が遅れた場合を考える。このような場合には、ウインドウガラス3が停止しても、キャリアブラケット7がさらに上昇するため、図9に示されるように、キャリアブラケット7が傾斜するような状態となる。この場合、仮に、キャリアブラケット7とガラスチャンネル6とが、ねじ止め等で締結され、しっかりと固定されていた場合には、ガラスが昇降してドアフレームに当接した反力でボルトのネジが緩んでしまい、ガラスの昇降動作が不安定になってしまう可能性がある。しかしながら、本実施形態では、キャリアブラケット7が傾斜してもローラ76が回転するだけで、ガラスチャンネル6の姿勢は維持されるので、ガラスの昇降動作は安定したままとなる。
【0043】
また、仮に、キャリアブラケット7とガラスチャンネル6とが、ねじ止め等で締結され、しっかりと固定されていた場合には、ウインドウガラス3が静止しているにもかかわらず、ベルト8に大きな引っ張り荷重がかかってしまう。
【0044】
しかしながら、本実施形態に係るウインドウレギュレータ4によれば、ガラスチャンネル6とキャリアブラケット7とは、レール62とローラ76とを介して連結されているだけなので、キャリアブラケット7が傾斜しても、ローラ76が回転するだけで、ガラスチャンネル6の位置及び姿勢は維持され、ベルト8にかかる引張り荷重が著しく低減されるようになる。この結果、ベルト8の寿命が延びて、ウインドウレギュレータ4を長時間好適に使用することができるようになる。
【0045】
以上詳細に説明したように、本実施形態に係るウインドウレギュレータ4によれば、Z軸方向に往復移動可能なウインドウガラス3の一端部に、ガラスチャンネル6が固定されている。また、ベルト8は、その一部の領域で、Z軸方向と平行な方向に移動するように設けられている。キャリアブラケット7は、ベルト8に固定されている。アクチュエータ11は、ベルト8をZ軸方向の移動に伴って上下動可能となっている。キャリアブラケット7は、一部の領域におけるベルト8の移動方向に垂直の中心軸のローラ76を有する。また、ガラスチャンネル6のレール62は、ローラ76の回転が可能に、かつ、Z軸方向に相対的に移動しないようにローラ76を拘束する。
【0046】
このようにすれば、回転アームなどではなく、ベルト駆動により、キャリアブラケット7を上下方向に直線移動させるので、キャリアブラケット7のローラ76の移動方向と、ウインドウガラス3との移動方向とを一致させることができるようになる。これにより、ガラスチャンネル6のレール62の水平方向の長さを短くすることができるようになるので、ガラスチャンネル6を小型化することができるようになる。
【0047】
さらに、ガラスチャンネル6とキャリアブラケット7とを、ボルトやナットなどで締結する必要がなくなるので、部品点数を削減することができるうえ、装置の組み立て工数を削減することができるようになる。
【0048】
また、本実施形態によれば、キャリアブラケット7が傾斜してもローラ76が回転するだけで、ガラスチャンネル6の姿勢は維持されるので、ガラスの昇降動作は安定したままとなる。
【0049】
また、本実施形態に係るウインドウレギュレータ4では、ガラスチャンネル6のレール62には、キャリアブラケット7のローラ76を挿入可能な開口部63が、水平方向両端部に設けられている。このようにすれば、キャリアブラケット7のローラ76を、ガラスチャンネル6のレール62の開口部63から挿入するという簡単な動作で、キャリアブラケット7とガラスチャンネル6とを容易に連結することが可能となる。
【0050】
また、ベルト8の剛性が高いので、ウインドウレギュレータ4をドアに組み付けた時には、キャリアブラケット7の水平方向(Y軸方向)の位置が固定される。したがって、ベルト8が張られた状態では、ローラ76の向きは常に一定となるため、ガラスチャンネル6にローラ76を挿入しやすくなる。以上のことから、装置組み立てを容易に行うことができるようになる。
【0051】
また、本実施形態によれば、ウインドウガラス3が最上のフレーム78に当接した後も、キャリアブラケット7がベルト8の駆動により傾斜しても、ローラ76が回転するだけで、ガラスチャンネル6の位置はそのままとなるので、ベルト8への引っ張り荷重が増大するのを防止することができるようになる。この結果、装置の破損などを防止することができるうえ、その寿命を長くすることができるようになる。
【0052】
なお、上記実施形態では、キャリアブラケット7のローラ76を拘束する部分をレール62とした。しかしながら、ローラ76を回転可能に、かつ、Z軸方向に相対的に移動しないように拘束できるものであれば、どのような形状のものであってもよい。
【0053】
なお、上記実施形態では、キャリアブラケット7にローラ76を設け、ガラスチャンネル6にレール62を設けたが、キャリアブラケット7にレールを設け、ガラスチャンネル6にローラを設け、両者を連結するようにしてもよい。
【0054】
また、本実施形態では、キャリアブラケット7として、ベルト8と一体的に成型され、かつ、鉄板72がインサート成型により埋め込まれ、その鉄板72によってピン75を介してローラ76を支持するものを採用した。ローラ76を支持する受け座に鉄を使用しているので、その強度が十分となり、装置の破損等が防止されるようになる。
【0055】
なお、上記実施形態では、ピン75の受け座を鉄板としたが、強度が十分であれば、他の種類の金属板を用いることも可能である。また、樹脂の部分で、ローラ76を十分に支持できる場合には、金属板をインサート成型する必要はない。また、キャリアブラケット7全体が、金属で構成されていてもよい。
【0056】
また、上記実施形態では、ピンかしめによってローラ76と樹脂ブラケット71とを接合したが、本発明はこれには限られない。例えば、スナップフィット接合により、ローラ76と樹脂ブラケット71とを接合するようにしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、図6(a)〜図6(c)に示されるように、ベルト8を完全に張り、キャリアブラケット7の位置を固定した状態で、ガラスチャンネル6とキャリアブラケット7との連結を行ったが、例えば、インナーパネル2aに対するリテーナ9の締め付けを緩めておき、ベルト8を緩めた状態で、ガラスチャンネル6とキャリアブラケット7との連結を行うようにしてもよい。
【0058】
また、本発明は、図1〜図9に示されるような、本実施形態に係るウインドウレギュレータ4の各構成要素の形状等には、限定されない。要は、ウインドウガラス3側の連結部材と、ベルト8側の連結部材の一方が、ローラを有し、他方が、ローラを軸回りの相対的な回転が可能に且つZ軸方向に相対的に移動しないように拘束する拘束部を有していればよい。
【0059】
また、ウインドウガラス3の移動方向は、上下方向でなくてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】サイドドアの全体図である。
【図2】インナーパネルの全体図である。
【図3】図3(a)は、ガラスチャンネルとブラケットとで構成される連結部を+Y方向から見た図であり、図3(b)は、連結部を上方から見た図であり、図3(c)は、連結部を後方から見た図である。
【図4】図4(a)は、キャリアブラケットの分解図であり、図4(b)は、キャリアブラケットの完成図である。
【図5】図5(a)は、ガラスチャンネルを+Y方向から見た図であり、図5(b)は、ガラスチャンネルを−X方向から見た図である。
【図6】図6(a)〜図6(c)は、ガラスチャンネルとキャリアブラケットとの連結させる際の工程を示す図である。
【図7】図7(a)は、ウインドウガラスが最上位置にある状態を示す図であり、図7(b)は、ウインドウガラスを上昇させる際の力の伝達の様子を示す図である。
【図8】図8(a)は、ウインドウガラスが最下位置にある状態を示す図であり、図8(b)は、ウインドウガラスを下降させる際の力の伝達の様子を示す図である。
【図9】キャリアブラケットが傾斜した場合の様子を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1 サイドドア
2a インナーパネル
2b アウターパネル
3 ウインドウガラス
4 ウインドウレギュレータ
5a、5b ガイド
6 ガラスチャンネル
7 キャリアブラケット
8 ベルト
9 プーリ
10 リテーナ
11 アクチュエータ
20、21、22 取付穴
23 作業用穴
61 部材
62 レール
63 開口部
71 樹脂ブラケット
72 鉄板
73、74 貫通孔
75 ピン
76 ローラ
77 貫通孔
78 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に往復移動可能なウインドウガラスの一端部に固定された第1の連結部材と、
一部の領域で前記第1の方向と平行の方向に移動するように設けられた無端ベルトと、
前記無端ベルトに固定された第2の連結部材と、
前記無端ベルトを移動させる操作又は駆動部と、
を有し、
前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の一方の連結部材は、前記一部の領域における前記無端ベルトの移動方向に垂直の中心軸を持つローラを有し、
前記第1の連結部材及び前記第2の連結部材の他方の連結部材は、前記ローラを前記中心軸回りの相対的な回転が可能に且つ前記第1の方向に相対的に移動しないように拘束する拘束部を有することを特徴とするガラス昇降装置。
【請求項2】
前記拘束部は、前記第1の方向に交差する方向の端部に前記ローラを挿入可能な開口部を有することを特徴とする請求項1に記載のガラス昇降装置。
【請求項3】
前記一方の連結部材は、
前記無端ベルトに固定された第2の連結部材であり、
前記無端ベルトに一体成型された樹脂ブラケットと、この樹脂ブラケット内に埋め込まれた受け座と、この受け座に固定され前記樹脂ブラケットから外部に導出されたローラ部材と、を有し、
前記ローラは、前記ローラ部材に回転可能に又は固定的に支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のガラス昇降装置。
【請求項4】
前記無端ベルトは、上方に配置されたプーリと、下方に配置されたリテーナと、中間に配置されたアクチュエータの駆動回転部との間に掛け渡されており、前記アクチュエータの駆動により、前記プーリと前記リテーナとの間の領域で前記第1の方向に往復移動することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガラス昇降装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−127299(P2009−127299A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−303757(P2007−303757)
【出願日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】