説明

ガルバノスキャナ、及びレーザ加工装置

【課題】ガルバノミラーを高速かつ高精度に位置決めする。
【解決手段】ガルバノスキャナは、ガルバノミラーと揺動機構とシャフトと軸受けと半円状板とを備え、前記揺動機構は、前記半円状板の表裏面に取り付けられた1対の可動子ユニットと、前記1対の可動子ユニットを挟むように配された1対の固定子ユニットとを有し、前記揺動機構は、前記半円状板を介して前記ガルバノミラーを揺動させる際に、前記1対の可動子ユニットと前記1対の固定子ユニットとの間における反射面の面外方向の磁気的力が排除されるように磁気的力の主方向が前記反射面の面内方向及び回転軸に沿った方向と平行になるとともに、磁気的力を相殺するように、前記1対の固定子ユニットが前記1対の可動子ユニットを挟むように配された状態が維持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバノスキャナ、及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ガルバノスキャナにおいて、ミラーが直接シャフトに固着されることが記載されている。これにより、ミラーを保持するミラー枠を用いてミラーをシャフトに取り付けた場合に比べて剛性を高くすることができ、ミラーの曲げ変形による共振とシャフトの捩れ変形による共振とを抑制できるので、ミラーを高速、高精度で位置決めすることができるとされている。
【0003】
特許文献2には、ガルバノスキャナにおいて、ミラーとコイルとを2つの支持部材によって連結し、2つの支持部材をそれぞれ軸受けで揺動自在に支持することが記載されている。また、コイルの一方の直線部分に上向きの磁場が発生し、コイルの他方の直線部分に下向きの磁場が発生するように、コイルの上下に2対の永久磁石が配置されることが記載されている。これにより、特許文献2によれば、コイルに電流を流すことにより発生させた推力が回転トルクとなってミラーの角度が変わり、発生したトルクを回転軸を介してミラーに伝達する必要がないので、回転時の捩れ変形による共振が発生せず、ミラーの位置決めの高速、高精度化を実現できるとされている。
【0004】
特許文献3には、ガルバノスキャナにおいて、ガルバノミラーとシャフトを介して一体に回動する回動板の面倒れ周波数をガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05〜1.6倍にすることが記載されている。これにより、特許文献3によれば、光学式ロータリエンコーダがシャフトの回転角を計測でき、ガルバノミラーの高速動作時においても高精度の角度測定が可能となるので、ガルバノスキャナの位置決めを高速に行うことができるとされている。
【0005】
特許文献4には、光学スキャナにおいて、軸受けにより回転自在に支持された軸にミラーが取り付けられ、その軸の回転中心から半径方向にずれた位置で駆動力伝達部材の一端が締結端子を介して軸に保持されることが記載されている。これにより、特許文献4によれば、駆動力伝達部材を変位させることにより小さな駆動力でミラーを位置決めすることができるので、構造系の変形や振動の発生を抑えることができ、高速かつ高精度な位置決め動作が可能になるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−46460号公報
【特許文献2】特開2004−20956号公報
【特許文献3】特許第3800124号公報
【特許文献4】特開2004−74166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の技術では、ミラーが固着されたシャフトの径方向斜め下部に径方向に磁化された1対の永久磁石が固定され、1対の永久磁石に対してシャフトの径方向斜め下部にコイルが配置されている。すなわち、永久磁石とコイルとの間の磁気吸引力がミラーの面外方向に負荷されるように永久磁石が配置されているため、磁気吸引力による荷重がミラーの反射面を歪ませる可能性がある。ミラーの反射面が歪むと、ミラーで反射されたレーザビームの断面形状が劣化するので、ミラーの位置決め精度が低下する傾向にある。また、これを防止するために、ミラーまたは回転軸の曲げ剛性を増加させると、ミラーおよび回転軸の慣性モーメントが増大するため、ミラーの高速な位置決めが困難になる。
【0008】
特許文献2に記載の技術では、揺動中心と直交する方向に長い棒状の支持部材を介してミラーとコイルとを連結する構成のため、回転角度を拡大する場合及び/又はミラーが大型で高トルクが必要な場合、コイルを大型化するとともに支持部材を長くする必要がある。この場合、支持部材の慣性モーメントの増大と支持部材の曲げ剛性の低下とにより、支持部材の固有振動数が低下する傾向にあるので、ミラーの高速かつ高精度な位置決めが困難になる。
【0009】
特許文献3に記載の技術では、2つの軸受けの間において可動コイルがシャフトに固定され、可動コイルを挟んで極性の異なる1対の永久磁石が配置されている。これにより、ガルバノミラーの面外方向の面倒れ振動および軸系のねじれ振動が発生しやすく、ガルバノミラーの高速かつ高精度な位置決めが困難になる。
【0010】
特許文献4に記載の技術では、圧電素子が弾性部材を弾性変形させながら変位台を介して駆動力伝達部材を変位させている。これにより、弾性部材の固有振動数に制約を受け、ミラーの高速な位置決めが困難になる傾向にある。また、弾性変形を生じる機構のため、疲労破壊する可能性があり、高精度な位置決めが困難になる傾向にある。
【0011】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、ガルバノミラーを高速かつ高精度に位置決めすることができるガルバノスキャナ、及びレーザ加工装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の1つの側面にかかるガルバノスキャナは、光ビームを反射させるとともに所定の角度に偏向させる反射面と前記反射面の反対側の背面とを有するガルバノミラーと、回転軸の回りに前記ガルバノミラーを揺動させ位置決めする揺動機構と、前記回転軸に沿った方向における前記ガルバノミラーの一端に接続され、前記回転軸に沿って延びたシャフトと、前記シャフトを前記ガルバノミラーの前記一端側で回転可能に支持する軸受けと、前記ガルバノミラーの前記背面から前記揺動機構まで突出するように前記回転軸に対して略垂直に延びた半円状板とを備え、前記揺動機構は、前記半円状板の表裏面に取り付けられた1対の可動子ユニットと、前記1対の可動子ユニットを挟むように配された1対の固定子ユニットとを有し、前記揺動機構は、前記半円状板を介して前記ガルバノミラーを揺動させる際に、前記1対の可動子ユニットと前記1対の固定子ユニットとの間における前記反射面の面外方向の磁気的力が排除されるように磁気的力の主方向が前記反射面の面内方向及び前記回転軸に沿った方向と平行になるとともに、磁気的力を相殺するように、前記1対の固定子ユニットが前記1対の可動子ユニットを挟むように配された状態が維持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ガルバノミラーの反射面の面外方向の磁気的力が排除されるとともに、磁気的力を相殺するので、ガルバノミラーの歪を低減でき、ガルバノミラーで反射された光ビームの断面形状の劣化を低減できるので、ガルバノミラーの位置決め精度を向上することができる。また、位置決め精度の低下を防止するためにガルバノミラー又はシャフトの剛性を増加させる必要がないので、ガルバノミラー又はシャフトの慣性モーメントの増大も抑制できる。したがって、ガルバノミラーを高速かつ高精度に位置決めすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、実施の形態1にかかるガルバノスキャナの構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態2にかかるガルバノスキャナの構成を示す図である。
【図3】図3は、実施の形態3にかかるガルバノスキャナの構成を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態3にかかるガルバノスキャナの構成を示す図である。
【図5】図5は、実施の形態3の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明にかかるガルバノスキャナの実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0016】
実施の形態1.
実施の形態1にかかるガルバノスキャナ1について図1を用いて説明する。図1(a)は、ガルバノスキャナ1の内部構成を示す側面図である。図1(b)は、ガルバノスキャナ1の正面断面図であり、図1(a)のA−A断面図である。
【0017】
ガルバノスキャナ1は、ガルバノミラー2、ミラーマウント3、軸受け6、エンコーダ板7、発光部9、受光部10、アンプ56、カウンタ57、可動子取り付け板(半円状材)21、揺動機構SWM、及びサーボアンプ54を備える。
【0018】
ガルバノミラー2は、反射面2a、背面2b、一端2c、他端2d、及び複数のリブ231〜238を有する。反射面2aは、光ビームLを反射させるとともに所定の角度に偏向させるための面である。背面2bは、反射面2aの反対側の面である。回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の一端2cは、ミラーマウント3に固定されている。一端2cは、回転軸RAに沿った方向における端部である。他端2dは、回転軸RAに沿った方向における一端2cと反対側の端部である。
【0019】
また、複数のリブ231〜238は、回転軸RAに沿った方向における可動子取り付け板21の両側で、背面2bから揺動機構SWM側へ突出している。複数のリブ231〜238は、それぞれ回転軸RAに略垂直に延びている。これにより、ガルバノミラー2の曲げ剛性及び軸系の捩れ剛性を向上させることができる。
【0020】
ミラーマウント3は、回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の一端2c側に隣接して順に配されたマウント部32及びシャフト部31を含む。シャフト部31は、マウント部32を介して、回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の一端2cに接続されている。シャフト部31は、回転軸RAに沿って延びている。
【0021】
軸受け6は、シャフト部31をガルバノミラー2の一端2c側で回転可能に(例えば、回転自由に)支持する。すなわち、ミラーマウント3のシャフト部31は、軸受け6によってガルバノスキャナ1の筐体(図示せず)に回転可能に支持されている。
【0022】
エンコーダ板7は、マウント8を介して、シャフト部31に固定されている。発光部9と受光部10とは、エンコーダ板7を挟んで対向するように配置されている。受光部10は、受光した光に応じた信号をアンプ56へ供給する。アンプ56は、受光部10から受けた信号を増幅してカウンタ57へ供給する。カウンタ57は、アンプ56から受けた信号(パルス)の数をカウントしてサーボアンプ54へ供給する。
【0023】
可動子取り付け板21は、ガルバノミラー1の背面2bから揺動機構SWMまで突出している。可動子取り付け板21は、図1(a)に示すように、回転軸RAに略垂直に延びているとともに、反射面2aに対して略垂直に延びている。また、可動子取り付け板21は、回転軸RAに垂直な方向から見た場合(図1(b)参照)に例えば回転軸RAを中心とする半円状の形状を有している。可動子取り付け板21は、表裏面として、第1の面211及び第2の面212を有する。第1の面211は、回転軸RAに略垂直に延びており、ガルバノミラー2の他端2d側を向く面である。第2の面212は、回転軸RAに略垂直に延びており、ガルバノミラー2の一端2c側を向く面である。
【0024】
揺動機構SWMは、シャフト部31が軸受け6により支持された状態で、回転軸RAの回りにガルバノミラー2を揺動させることにより、ガルバノミラー2を位置決めする。揺動機構SWMは、1対の可動磁石(1対の可動子ユニット)41、42と1対の固定コイル(1対の固定子ユニット)51、52とを有する。
【0025】
1対の可動磁石41、42は、可動子取り付け板21の表裏面(第1の面211及び第2の面212)に取り付けられている。すなわち、可動磁石41は、第1の面211に固定され、可動磁石42は、第2の面212に固定されている。
【0026】
1対の固定コイル51、52は、1対の可動磁石41、42を挟むように配置されている。すなわち、固定コイル51が可動磁石41に対面し、固定コイル52が可動磁石42に対面している。具体的には、固定コイル51は、可動磁石41の回転軸RAを中心とした円弧方向の移動範囲内で可動磁石41に対面した状態が維持されるように、例えば、回転軸RAを中心とした円弧方向に可動磁石41よりも長く延びている。同様に、固定コイル52は、可動磁石42の回転軸RAを中心とした円弧方向の移動範囲内で可動磁石41に対面した状態が維持されるように、例えば、回転軸RAを中心とした円弧方向に可動磁石42よりも長く延びている。
【0027】
サーボアンプ54は、互いに対面した固定コイル51と可動磁石41との間、及び固定コイル52と可動磁石42との間に、それぞれ磁気吸引力あるいは磁気反発力が発生するように、リード線55を介して固定コイル51、52にそれぞれ電流を流す。これにより、サーボアンプ54は、揺動機構SWMが可動子取り付け板21を介して回転軸RAの回りにガルバノミラー1を揺動させるように、揺動機構SWMを駆動する。
【0028】
揺動機構SWMでは、可動子取り付け板21を介してガルバノミラー2を揺動させる際に、可動磁石41、42が回転軸RAの回りを円弧状に移動した場合でも、1対の可動磁石41、42が1対の固定コイル51、52の間に配置されている。すなわち、揺動機構SWMは、可動子取り付け板21を介してガルバノミラー2を揺動させる際に、1対の可動磁石41、42と1対の固定コイル51、52との間における反射面2aの面外方向の磁気的力(磁気吸引力又は磁気反発力)が排除されるように磁気的力の主方向が反射面2aの面内方向及び回転軸RAに沿った方向と平行になる。それとともに、揺動機構SWMは、磁気的力を相殺するように、1対の固定コイル51、52が1対の可動磁石41、42を挟むように配された状態が維持される。
【0029】
次に、実施の形態1にかかるガルバノスキャナ1の動作を説明する。
【0030】
エンコーダ板7の片側に設置された発光部9から照射された光がエンコーダ板7を透過して受光部10にて受光される。受光部10は、受光した光に応じた信号(パルス)を発生させてアンプ56へ供給する。アンプ56は、供給された信号を増幅しカウンタ57へ供給する。カウンタ57は、供給された信号(パルス)の数をカウントしてカウント値を角度に変換し測定された角度としてサーボアンプ54へ供給する。
【0031】
一方、角度指令発生部53は、入力部(図示せず)を介して受けたユーザから指令、及び/又は、ガルバノスキャナ1を適用した装置(例えば、レーザ加工装置)の動作状態に応じて、所定の角度指令を生成してサーボアンプ54へ供給する。
【0032】
サーボアンプ54は、カウンタ57から供給された測定された角度の値と、角度指令発生部53から供給された角度指令の示す角度の値とを比較し、目標の角度にガルバノミラー2を揺動させるように揺動機構SWMの駆動を制御(フィードバック制御)する。すなわち、目標の角度にガルバノミラー2を揺動させるのに必要な電力がサーボアンプ54からリード線55を介して固定コイル51、52に入力される。この電力によって固定コイル51、52から電磁力が発生し、この電磁力によってそれぞれ相対している可動磁石41、42との間で磁気吸引力または磁気反発力が生じ、可動磁石41、42と可動子取り付け板21を介して一体になっているガルバノミラー2が目標の角度に揺動させる。このようにしてガルバノスキャナ1におけるガルバノミラー2が目標の角度に揺動される。
【0033】
ここで、仮に、可動磁石と固定コイルとの間の磁気的力(磁気吸引力又は磁気反発力)がガルバノミラーの面外方向に負荷されるように可動磁石が配置されている場合を考える。この場合、磁気的力による荷重がガルバノミラーの反射面を歪ませる可能性がある。ガルバノミラーの反射面が歪むと、ガルバノミラーで反射されたレーザビームの断面形状が劣化するので、ガルバノミラーの位置決め精度が低下する傾向にある。また、これを防止するために、ガルバノミラーまたはシャフト部の曲げ剛性を増加させると、ガルバノミラーおよびシャフト部の慣性モーメントが増大するため、ガルバノミラーの高速な位置決めが困難になる。したがって、ガルバノミラーの高速かつ高精度な位置決めが困難になる。
【0034】
それに対して、実施の形態1では、ガルバノミラー2を揺動させる際に反射面2aの面外方向の磁気的力(磁気吸引力又は磁気反発力)が排除されるとともに磁気的力を相殺するように構成された揺動機構SWMをガルバノミラー2の背面から直接突出した半円状の可動子取り付け板21上に設置する。これにより、ガルバノミラー2の歪を低減でき、ガルバノミラー2で反射された光ビームの断面形状の劣化を低減できるので、ガルバノミラー2の位置決め精度を向上することができる。また、位置決め精度の低下を防止するためにガルバノミラー2又はシャフト部31の剛性を増加させる必要がないので、ガルバノミラー2又はシャフト部31の慣性モーメントの増大も抑制できる。また、このようにガルバノミラー2の背面2bに磁気的力を相殺するように構成された揺動機構SWMを設置し、ガルバノミラー2を軸受け6にて回転可能に支持することにより、ガルバノミラー2の軸系のねじれ振動の固有振動数が向上することを示す有限要素法解析結果を実際に得た。したがって、ガルバノミラー2を揺動させる際における構造系の振動周波数を高くできるため、サーボアンプのサーボ制御ゲインを上げることができるようになり、高速な位置決め動作が可能となる。すなわち、実施の形態1によれば、ガルバノミラー2の反射面2aの面外方向の面倒れ振動及び軸系の捩れ振動の固有振動の影響を抑制でき、ガルバノミラー2を高速かつ高精度に位置決めすることができる。
【0035】
なお、振動周波数を向上するためには、ミラーマウントにおけるシャフト部の軸径を大きくするなど高剛性化すればするほど回転軸回りのイナーシャが増大する。従って、構造系の振動周波数は、ガルバノスキャナの位置決め周波数の1.05倍から1.60倍程度にすることができる。
【0036】
また、反射面2aの面外方向の磁気的力が排除されるとともに磁気的力を相殺するように構成された揺動機構SWMを、ガルバノミラー2の背面から揺動機構SWMまで突出した半円状の可動子取り付け板21上に直接取り付けた可動子(可動磁石41、42)と、筐体(図示せず)に固体された固定子(固定コイル51、52)とで実現している。これにより、ガルバノミラー2を揺動させる際における軸受け6に及ぼす応力も低減できるので、軸受け6の寿命が短くなることを抑制できる。
【0037】
あるいは、仮に、回転軸RAと略直交する方向に長い棒状の支持部材を介してガルバノミラーと可動子(コイル)とを連結する場合について考える。この場合、回転角度を拡大する場合及び/又はガルバノミラーが大型で高トルクが必要な場合、可動子(コイル)を大型化するとともに支持部材を長くする必要がある。これにより、支持部材の慣性モーメントが増大しやすく、支持部材の曲げ剛性が低下しやすい。この結果、支持部材の固有振動数が低下して、ガルバノミラーの高速かつ高精度な位置決めが困難になる可能性がある。
【0038】
それに対して、実施の形態1では、ガルバノミラー2の背面2bから揺動機構SWMまで突出した半円状の可動子取り付け板21を介してガルバノミラー2と可動子(可動磁石41、42)とを連結するように、可動子(可動磁石41、42)が可動子取り付け板21の表裏面に配されている。これにより、回転角度を拡大する場合及び/又はガルバノミラーが大型で高トルクが必要な場合でも、可動子(可動磁石41、42)を大型することなく回転中心(回転軸RA)から可動子(可動磁石41、42)までの距離を短くしたままガルバノミラー2を揺動することが容易になる。これにより、ガルバノスキャナ1の固有振動数を容易に向上することができるので、ガルバノミラー2を高速かつ高精度に位置決めすることができる。
【0039】
実施の形態2.
次に、実施の形態2にかかるガルバノスキャナ1iについて、図2を参照して説明する。図2は、実施の形態2にかかるガルバノスキャナ1iの内部構成を示す側面図である。以下では、実施の形態1と異なる部分を中心に説明する。
【0040】
実施の形態2のガルバノスキャナ1iは、ガルバノミラー2の両側のミラーマウント3、13iにより回転可能に(例えば、回転自由に)支持している点で実施の形態1と異なる。すなわち、ガルバノスキャナ1iは、ミラーマウント13i及び軸受け(第2の軸受け)16iをさらに備える。
【0041】
ミラーマウント13iは、回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の他端2d側に隣接して順に配されたマウント部132i及びシャフト部(第2のシャフト)131iを含む。シャフト部131iは、マウント部132iを介して、回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の他端2dに接続されている。シャフト部131iは、回転軸RAに沿った方向に延びている。
【0042】
軸受け16iは、シャフト部131iをガルバノミラー2の一端2d側で回転可能に(例えば、回転自由に)支持する。すなわち、ミラーマウント13iのシャフト部131iは、軸受け16iによってガルバノスキャナ1iの筐体(図示せず)に回転可能に支持されている。シャフト部131iは、シャフト部31と同軸であり、回転軸RAに沿った方向へ延びている。
【0043】
実施の形態1のように、ガルバノミラー2の片端(一端2c側)を回転可能に支持している場合、ガルバノミラー2の反射面2aの面外方向の面倒れ振動の向上に限界がある。
【0044】
それに対して、実施の形態2では、回転軸RAに沿った方向におけるガルバノミラー2の両側(一端2c側及び他端2d側)に軸受け6、16iを配置しガルバノミラー2を回転可能に支持する構成としている。これにより、揺動機構SWMは、シャフト部31が軸受け6により支持されるとともにシャフト部131iが軸受け16iにより支持された状態で、ガルバノミラー2を揺動させる。この結果、ガルバノミラー2の面外方向の面倒れ振動をさらに抑制できるので、大型のガルバノミラーを用いる場合、あるいは揺動角度の大きい場合において揺動機構が大型な、すなわち慣性モーメントが大きいガルバノミラーを用いる場合においても、ガルバノミラー2を高精度に位置決めすることがさらに容易になる。
【0045】
実施の形態3.
次に、実施の形態3にかかるガルバノスキャナ1jについて、図3及び図4を参照して説明する。図3は、実施の形態3にかかるガルバノスキャナ1jの内部構成を示す側面図である。図4は、実施の形態3にかかるガルバノスキャナ1jにおけるガルバノミラー2jの背面構造と可動子取り付け板21とを示す図である。図4(a)は、ガルバノミラー2j及び可動子取り付け板21の側面図であり、図4(b)は、ガルバノミラー2j及び可動子取り付け板21の背面図であり、図4(c)は、ガルバノミラー2j及び可動子取り付け板21の正面図である。以下では、実施の形態1及び実施の形態2と異なる点を中心に説明する。
【0046】
図3に示すガルバノスキャナ1jにおけるガルバノミラー2jは、図4に示すように、主構造部材22j、及び複数のリブ23j1〜23j8を有する。主構造部材22jは、可動子取り付け板21と交差するように、反射面2aに沿いながら回転軸RAに沿った方向へ延びている。複数のリブ23j1〜23j8は、回転軸RAに沿った方向における可動子取り付け板21の両側に配され、主構造部材22jと交差するように、回転軸RAに略垂直にそれぞれ延びている。複数のリブ23j1〜23j8は、ガルバノミラー2jを揺動させる際に1対の固定コイル51、52と干渉しないように、可動子取り付け板21の背面2bから突出している(図3参照)。具体的には、図4(b)に示すように、複数のリブ23j1〜23j8は、反射面2aに垂直な方向から透視した場合に、1対の固定コイル51、52のいずれにも重ならないように、回転軸RAに略垂直にそれぞれ延びている。
【0047】
実施の形態1および実施の形態2においては、複数のリブ231〜238のうちの一部のリブ232、236が1対の固定コイル51、52と干渉する位置において背面2bから突出している(図1、図2参照)。これにより、図5(a)に示すようにガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉を避けようとした場合に、揺動角度を拡大する(例えばα°より大きくする)ことが困難な傾向にある。
【0048】
それに対して、実施の形態3では、複数のリブ23j1〜23j8が1対の固定コイル51、52と干渉しないような位置において背面2bから突出している(図3参照)。これにより、リブ高さを越えてガルバノミラー2jを揺動できるので、ガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉を避けようとした場合でも、揺動角度を例えばβ°(>α°)へ拡大できる(図5(b)参照)。
【0049】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、複数のリブ231〜238のうちの一部のリブ232、236が1対の固定コイル51、52と干渉する位置において背面2bから突出しているので、ガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉しない範囲で所定の揺動角度(例えばα°)を確保しようとした場合、1対の固定コイル51、52と回転軸RAとの距離を近づける(例えばD1より小さくする)ことが困難な傾向にある。これにより、固定コイル51、52と対面すべき可動磁石41、42と回転軸RAとの距離も近づける(例えばD1より小さくする)ことが困難な傾向にある。
【0050】
それに対して、実施の形態3では、複数のリブ23j1〜23j8が1対の固定コイル51、52と干渉しないような位置において背面2bから突出しているので、ガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉しない範囲で所定の揺動角度(例えばα°)を確保しようとした場合に、1対の固定コイル51、52と回転軸RAとの距離を例えばD2(<D1)まで近づけることができる(図5(c)参照)。これにより、固定コイル51、52と対面すべき可動磁石41、42と回転軸RAとの距離も例えばD2(<D1)まで近づけることができる(図5(c)参照)。
【0051】
この結果、可動子取り付け板及び可動子(可動磁石)の慣性モーメント(イナーシャ)を低減できるので、ガルバノスキャナの固有振動数をさらに向上させることができる。したがって、位置決め周波数がさらに高くできるので、ガルバノミラーをさらに高速に位置決めすることができる。それとともに、可動子取り付け板及び可動子(可動磁石)と固定子(固定コイル)とを小型化できるので、ガルバノスキャナの小型化が容易になる。
【0052】
また、実施の形態1および実施の形態2においては、複数のリブ231〜238のうちの一部のリブ232、236が1対の固定コイル51、52と干渉する位置において背面2bから突出しているので、ガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉しない範囲で所定の揺動角度(例えばα°)を確保しようとした場合、回転軸RAからのリブ231〜238の最大高さを高くする(例えばH1より高くする)ことが困難な傾向にある。
【0053】
それに対して、実施の形態3では、複数のリブ23j1〜23j8が1対の固定コイル51、52と干渉しないような位置において背面2bから突出しているので、ガルバノミラーの背面のリブと固定コイルとの干渉しない範囲で所定の揺動角度(例えばα°)を確保しようとした場合に、回転軸RAからのリブ23j1〜23j8の最大高さを例えばH2(>H1)まで高くすることができる(図5(d)参照)。
【0054】
この結果、ガルバノミラーの面外曲げ剛性及びねじり剛性をさらに向上させることができるとともに、固有振動数を向上できる。したがって、位置決め周波数がさらに高くできるので、ガルバノミラーをさらに高速に位置決めすることができる。
【0055】
なお、上記の各実施の形態においては、可動子取り付け板21の表裏面に1対の可動磁石41、42が1対の可動子として取り付けられた可動磁石型のガルバノスキャナの場合を説明したが、可動子取り付け板21の表裏面に1対の可動コイルを1対の可動子として取り付け、1対の可動コイルの両側に1対の可動コイルを挟むように1対の固定磁石を1対の固定子として配置してもよい。すなわち、1対の可動子としての1対の可動コイルは1対の固定磁石の磁界中に配置されており、1対の可動コイルと1対の可動コイルを挟むように配された1対の固定磁石とによって揺動機構が構成されている可動コイル型のガルバノスキャナであっても構わない。
【0056】
また、エンコーダ板は、光が透過する透過型光エンコーダとして説明したが、光を反射する反射型エンコーダであっても構わない。また、エンコーダ板は、インクリメンタル型であっても絶対値型であっても構わない。
【0057】
また、上記の各実施の形態におけるガルバノスキャナは例えばレーザ加工装置(図示せず)に適用できる。すなわち、レーザ加工装置は、ガルバノスキャナに加えて、レーザ光源(図示せず)、及びステージ(図示せず)を備える。ステージには、その上に被加工物が載置されている。レーザ光源は、レーザ光を出射する。ガルバノスキャナは、上記のようにガルバノミラーを位置決めした状態で、レーザ光源から受けた光をガルバノミラーの反射面で反射させるとともに所定の角度に偏光させてステージ上に載置された被加工物へ照射する。そして、ガルバノスキャナは、さらに次の位置にガルバノミラーを位置決めした状態で、レーザ光源から受けた光をガルバノミラーの反射面で反射させるとともに所定の角度に偏光させてステージ上に載置された被加工物へ照射する。このような動作を繰り返していき、ガルバノスキャナは、被加工物を加工するように、レーザ光源から出射されたレーザ光を被加工物上で走査させる。これにより、被加工物を高速且つ高精度に加工することができる。
【0058】
あるいは、上記の各実施の形態におけるガルバノスキャナは、レーザ加工装置以外のレーザ光またはレーザ光以外の光ビームを偏向するあらゆる装置に用いることができる。ガルバノスキャナにおけるその他の部分の構成、形状、材料、大きさ、数量、接続関係等についても、上記各実施の形態に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0059】
以上のように、本発明にかかるガルバノスキャナ及びレーザ加工装置は、レーザ光を用いた被加工物の加工に有用である。
【符号の説明】
【0060】
1、1i、1j ガルバノスキャナ
2、2j ガルバノミラー
3、13i ミラーマウント
6、16i 軸受け
7 エンコーダ板
8 マウント
9 発光部
10 受光部
21 可動子取り付け板
31、131i シャフト部
32、132i マウント部
41、42 可動磁石
51、52 固定コイル
53 角度指令発生部
54 サーボアンプ
55 リード線
56 アンプ
57 カウンタ
231〜238、23j1〜23j8 リブ
RA 回転軸
SWM 揺動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ビームを反射させるとともに所定の角度に偏向させる反射面と前記反射面の反対側の背面とを有するガルバノミラーと、
回転軸の回りに前記ガルバノミラーを揺動させ位置決めする揺動機構と、
前記回転軸に沿った方向における前記ガルバノミラーの一端に接続され、前記回転軸に沿って延びたシャフトと、
前記シャフトを前記ガルバノミラーの前記一端側で回転可能に支持する軸受けと、
前記ガルバノミラーの前記背面から前記揺動機構まで突出するように前記回転軸に対して略垂直に延びた半円状板と、
を備え、
前記揺動機構は、
前記半円状板の表裏面に取り付けられた1対の可動子ユニットと、
前記1対の可動子ユニットを挟むように配された1対の固定子ユニットと、
を有し、
前記揺動機構は、前記半円状板を介して前記ガルバノミラーを揺動させる際に、前記1対の可動子ユニットと前記1対の固定子ユニットとの間における前記反射面の面外方向の磁気的力が排除されるように磁気的力の主方向が前記反射面の面内方向及び前記回転軸に沿った方向と平行になるとともに、磁気的力を相殺するように、前記1対の固定子ユニットが前記1対の可動子ユニットを挟むように配された状態が維持される
ことを特徴とするガルバノスキャナ。
【請求項2】
前記回転軸に沿った方向における前記ガルバノミラーの他端に接続され、前記回転軸に沿って延びた第2のシャフトと、
前記第2のシャフトを前記ガルバノミラーの前記他端側で回転可能に支持する第2の軸受けと、
をさらに備え、
前記揺動機構は、前記シャフトが前記軸受けにより支持されるとともに前記第2のシャフトが前記第2の軸受けにより支持された状態で、前記ガルバノミラーを揺動させる
ことを特徴とした請求項1に記載のガルバノスキャナ。
【請求項3】
前記ガルバノミラーは、前記ガルバノミラーを揺動させる際に前記1対の固定子ユニットと干渉しないように前記背面から前記揺動機構側へ突出するように前記回転軸に対して略垂直に延びた複数のリブを前記回転軸に沿った方向における前記半円状板の両側に有する
ことを特徴とした請求項1又は2に記載のガルバノスキャナ。
【請求項4】
レーザ光源と、
被加工物が載置されたステージと、
前記被加工物を加工するように、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記被加工物上で走査させる請求項1から3のいずれか1項に記載のガルバノスキャナと、
を備えたことを特徴とするレーザ加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242644(P2011−242644A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115402(P2010−115402)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】