説明

キサントゲン酸トリシクロデカン−9−イルの立体異性体

本願は、キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルの光学活性な立体異性体、その製造方法、及びその医薬組成物を提供する。また、ウイルスによって引起こされる疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、又は寛解させるこれらの使用方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その開示が全体を引用により本明細書に組み込まれている、2007年7月3日出願の米国仮出願第60/958,370号の利益を主張する。
【0002】
(分野)
本明細書は、キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルの光学活性な立体異性体、その製造方法、及び医薬組成物を提供する。また、ウイルス感染及びこうしたウイルス感染に起因する疾患を治療する、予防する、又は寛解させるための、これらの使用方法も提供される。
【0003】
(背景)
キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルは、5つの不斉中心を有し、これが32個の理論上の立体異性体をもたらす、複雑な分子である。しかし、その束縛された環構造のために、該分子に存在する立体異性体は、理論上可能性のあるものよりも少ない。下記のスキーム1に、4つの鏡像異性体対、O-エキソ/C-エキソ,(9R)-1A及び(9S)-1A;O-エキソ/C-エンド,(9R)-1B及び(9S)-1B;O-エンド/C-エキソ,(9R)-1C及び(9S)-1C;並びにO-エンド/C-エンド,(9R)-1D及び(9S)-1Dを含む、いくつかの立体異性体を示す。
【0004】
英国特許第GB2,091,244号;並びに米国特許第4,602,037号及び第4,981,869号には、D609として公知のキサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルの立体異性体の混合物が記載されている。米国特許出願公報第2005/0085448号に特徴づけられるように、D609は、83%のラセミ性O-エキソ/C-エキソ立体異性体1A、並びに17%のラセミ性O-エキソ/C-エンド1B、O-エンド/C-エキソ1C、及びO-エンド/C-エンド1Dを含有する。
【0005】
D609は、抗腫瘍性(米国特許第4,602,037号;Amtmann及びSauerの論文、Cancer Lett. 1987, 35, 237-244;Furstenbergerらの論文、Int. J. Cancer 1989, 43, 508-512;Schickらの論文、Cancer Lett. 1989, 46, 143-147;Schickらの論文、Cancer Lett. 1989, 46, 149-152;Sauerらの論文、Cancer Lett. 1990, 53, 97-102;Porn-Aresらの論文、Exp. Cell. Res. 1997, 235, 48-54)、抗ウイルス性(Sauerらの論文、Pro. Natl. Acad. Sci. USA 1984, 81, 3263-3267;Amtmann らの論文、Biochem. Pharmacol. 1987, 36, 1545-1549;Villanuevaらの論文、Virology 1991, 181, 101-108;Walro及びRosenthalの論文、Antiviral Res. 1997, 36, 63-72)、及び抗炎症活性(Machleidtらの論文、J. Exp. Med. 1996, 184, 725-733;Tschaikowskyらの論文、J. Pharmacol. 1998, 285, 800-804)を含む、様々な生物活性を示すことが報告されている。
【化1】

【0006】
また、D609は、ホスファチジルコリン-特異的ホスホリパーゼC(PC-PLC)の特異的阻害剤としても報告されている(Amtmannの論文、Drugs Exp. Clin. Res. 1996, 22, 287-294;Muller-Deckerの論文、Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989, 162, 198-205)。PC-PLCによるホスファチジルコリンの加水分解は、二次情報伝達物質、ジアシルグリセロールを生成し、該物質は、プロテインキナーゼC(PKC)及び/又は酸性スフィンゴミエリナーゼ(aSMase)を活性化する。D609によるPC-PLCの阻害は、PKC及びaSMaseの活性を抑制するのに有用であることが示唆されている(Schutzeらの論文、Cell 1992, 71, 765-776;Wiegmannらの論文、Cell 1994, 78, 1005-1015、Cifoneらの論文、EMBOJ. 1995, 14, 5859-5868;Amtmann、Drugs Exp. Clin. Res. 1996, 22, 287-294;Machleidtらの論文、J. Exp. Med. 1996, 184, 725-733;Yamamotoらの論文、Biochem. J. 1997, 325, 223-228)。D609の抗増殖性及び抗腫瘍性活性は、PKCの抑制で一部説明することができる(Muller-Deckerらの論文、Exp. Cell Res. 1988, 777, 295-302;Muller- Deckerらの論文、Biochem. Biophys. Res. Commun. 1989, 162, 198-205;Amtmann, Drugs Exp.Clin. Res. 1996, 22, 287-294)。D609によるaSMaseの抑制は、セラミドの生成を減少させ、これにより、PKC-zの活性化(Simarroらの論文、J. Immunol. 1999, 162, 5149-5155)、マイトジェン活性化タンパク質(Buscherらの論文、Mol. Cell. Biol. 1995, 15, 466-475;Monickらの論文、J. Immunol. 1999, 162, 3005-3012)、及び核内因子-kB(NF-kB)(Cell 1992, 71, 765-776;Wiegmannらの論文、Cell 1994, 78, 1005-1015)などの、セラミド媒介によるシグナル伝達を阻害する(Schutzeらの論文、Cell 1992, 71, 765-776;Wiegmannらの論文、Cell 1994, 78, 1005-1015;Machleidtらの論文、J. Exp.Med. 1996, 184, 725-733)。
【0007】
加えて、米国特許第4,851,435号;WO 96/14841;及び米国特許出願公報第2004/0122086号及び第2005/0085448号には、イオン性界面活性剤、脂質、及びステロイドなどの免疫賦活剤を使用して、抗ウイルス性又は抗腫瘍性剤としてのD609の治療効果を増強することが記載されている。
【0008】
Gonzalez-Rouraらの論文(Lipid 2002, 37, 401-406)及び米国特許出願公報第2005/0085448号には、ラセミ性O-エキソ/C-エキソ 1A、O-エキソ/C-エンド 1B、0-エンド/C-エキソ 1C、及びO-エンド/C-エンド 1D立体異性体が記載されている。しかし、Gonzalez-Rouraらは、PC-特異的ホスホリパーゼCに対するそれらの阻害活性において、ジアステレオマー間での大きな差はないことを報告した。
【0009】
上記生物学研究は、キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルのD609、錯体ジステレオメリック(distereomeric)混合物、又はラセミ混合物を使用して行われた。D609の治療上の利点を有するが、D609又は他の抗ウイルス剤の意図しない、望ましくない、不要な、有害な又は副次的な作用を回避する又は減少させる化合物を有する、光学的に純粋なキサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルの立体異性体を見出すことが、特に望ましい。
【0010】
本明細書中の参照文献の引用はいずれも、これら文献を本出願の先行技術として認めるものではない。
【発明の概要】
【0011】
(本開示の要旨)
本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを提供する。一実施態様において、本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸の医薬として許容し得る塩を提供し、該塩には、限定はされないが、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、及び亜鉛塩が含まれる。
【0012】
この光学活性な単一の立体異性体は、ウイルス感染症を治療するための医薬組成物及び方法における有用性を有する。本発明の知る限り、キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イルの多数の立体異性体から、又はラセミのキサントゲン酸O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル、若しくはその誘導体から、単一の鏡像異性体を合成又は分離することは、報告されていない。本明細書中に、このような光学活性な鏡像異性体を製造する3つの方法を提供する。
【0013】
一実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、遷移金属触媒とキラル単座ホスフィンとの錯体の存在下での、アルケン5の不斉ヒドロシリル化によって合成される。
【化2】

【0014】
別の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、不飽和エステル11のラセミ混合物の酵素分割によって生成される。
【化3】

【0015】
更に別の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、飽和エステル13のラセミ混合物の酵素分割によって生成される。
【化4】

【0016】
また、本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤又は担体とを組み合せて含む、医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、該医薬組成物は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸の医薬として許容し得る塩、例えば、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、又は亜鉛塩を含む。特定の実施態様において、該医薬組成物は、局所投与のための剤形として提供される。
【0017】
更に、本明細書中に、ウイルスによって引起こされる疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、対象に治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与することを含む。一実施態様において、該疾患は、性行為感染症である。別の実施態様において、該ウイルスは、腫瘍ウイルスである。更に別の実施態様において、該ウイルスは、パリポーマ(pallipoma)ウイルスである。更に別の実施態様において、該ウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。
【0018】
本明細書中に、ウイルスの複製を阻害する方法を提供し、該方法は、該ウイルスと有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグとを接触させることを含む。一実施態様において、該ウイルスは、性行為感染性である。別の実施態様において、該ウイルスは、腫瘍ウイルスである。更に別の実施態様において、該ウイルスは、パリポーマ(pallipoma)ウイルスである。更に別の実施態様において、該ウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。
【0019】
本明細書中に、ホスファチジルコリン-特異的ホスホリパーゼCの活性を阻害する方法を提供し、該方法は、該ホスホリパーゼCと光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグとを接触させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
(図の簡単な説明)
【図1】図1は、単一継代のHPV-31感染CIN612 9E角化細胞の成長に対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果と、INF-γの効果との比較を示す。
【0021】
【図2】図2は、HPV-31感染CIN612 9E角化細胞における、HPV-31-特異的RNA及びDNAレベル、並びに細胞増殖に対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果を示す。
【0022】
【図3】図3は、多継代のHPV-31感染CIN612 9E角化細胞の成長に対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果と、INF-γの効果との比較を示す。
【0023】
【図4】図4は、多継代のA431細胞の成長に対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果と、INF-γの効果との比較を示す。
【0024】
【図5】図5は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩で処理したHPV-31感染CIN612 9E角化細胞(A);及び未処理のCIN612 9E細胞(B)の細胞形態を示す。
【0025】
【図6】図6は、多継代のHPV-31感染CIN612 9E角化細胞における、HPV-31-特異的DNAレベルに対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果と、INF-γの効果との比較を示す。
【0026】
【図7】図7は、多継代のHPV-31感染CIN612 9E角化細胞における、HPV-31-特異的DNAレベルに対する、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩の効果と、INF-γの効果との比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(詳細な説明)
本明細書に記載される開示の理解を容易にするために、いくつかの用語を下記に定義する。
【0028】
本明細書中の単数形「ある(a)」「ある(an)」及び「該(the)」は、特に記載のない限り、複数の物品を意味する。概して、本明細書中で使用される命名法、並びに本明細書に記載の有機化学、医薬化学、及び薬理学の検査法は、当該分野で周知であり、かつ一般に使用されるものである。特に規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、概して、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0029】
用語「対象」は、動物を意味し、限定はされないが、霊長類(例えば、ヒト)、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、又はマウスを含む。用語「対象」及び「患者」は、例えば、哺乳類の対象に対して、ヒト対象など、本明細書中では互換的に使用される。
【0030】
用語「治療する(treat)」、「治療すること(treating)」及び「治療(treatment)」は、障害、疾患、若しくは病状;又は障害、疾患、若しくは病状に関連する1つ以上の症状を軽減すること、又は抑止すること;或いは障害、疾患、若しくはその病状の原因を軽減すること、又は完治することを含むことを意図している。
【0031】
用語「予防する(prevent)」、「予防すること(preventing)」、及び「予防(prevention)」は、障害、疾患、若しくは病状;及び/又は障害、疾患、若しくは病状に関連する1つ以上の症状の発症を遅らせる、又は防止する方法;疾患の罹患から対象を保護する方法、又は対象の障害、疾患、若しくは症状の罹患の危険性を低減させる方法を意味する。
【0032】
用語「治療上有効な量」は、投与される場合の化合物の量が、治療中の障害、疾患、若しくは病状の1つ以上の症状の進行を予防、又はある程度軽減するのに十分であることを意味する。また、用語「治療上有効な量」は、研究者、獣医師、医師、又は臨床医によって求められている、細胞、組織、系、動物、又はヒトの生物学的又は医学的応答を引き出すのに十分な化合物の量を意味する。
【0033】
用語「医薬として許容し得る担体」、「医薬として許容し得る賦形剤」、「生理的に許容し得る担体」、又は「生理的に許容し得る賦形剤」は、医薬として許容し得る材料、組成物、又は媒体、例えば、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、又は被包材料などを意味する。一実施態様において、各成分は、医薬製剤の他の成分と両立でき、かつ過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、又は他の問題、若しくは合併症を伴うことなく、ヒト及び動物の組織又は器官との接触に使用するのに適している、妥当な利益/危険比に見合っている、という意味で「医薬として許容し得る」である。Remingtonの文献:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」第21版、Lippincott Williams & Wilkins:フィラデルフィア、PA、2005;「賦形剤ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Excipients)」第5版、Roweら編集、「医薬品出版物とアメリカ薬剤協会(The Pharmaceutical Press and the American Pharmaceutical Association)」:2005;及び「医薬品添加物ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Additives)」第3版、Ash及びAsh編集、Gower Publishing Company:2007;「医薬品の予備製剤と製剤(Pharmaceutical Preformulation and Formulation)」、Gibson編集、CRC Press LLC:ボーカラトーン、FL、2004を参照されたい。
【0034】
用語「活性成分」及び「活性物質」は、単体又は1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤と組み合せて、患者に投与し、障害又は疾患の1つ以上の症状を治療する、化合物を意味する。特に、本明細書の「活性成分」及び「活性物質」は、本明細書に記載の化合物の光学活性な異性体を意味する。
【0035】
用語「薬剤」、「治療薬」、及び「化学療法薬」は、障害又は疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、又は寛解させるために、患者に投与される、化合物又はその医薬組成物を意味する。
【0036】
用語「放出制御賦形剤(release controlling excipient)」は、従来の即時放出剤形と比較して、剤形からの活性物質の放出の期間又は場所を変更することが、主要機能である賦形剤を意味する。
【0037】
用語「非放出制御賦形剤(nonrelease controlling excipient)」は、従来の即時放出剤形と比較して、剤形からの活性物質の放出の期間又は場所を変更することを、主要機能として含まない、賦形剤を意味する。
【0038】
用語「アルキル」は、直鎖飽和一価炭化水素基、又は分枝飽和一価炭化水素基を意味する。用語「アルキル」はまた、特に支持しない限り、直鎖及び分枝の両方のアルキルを包含する。特定の実施態様において、該アルキルは、1〜20(C1-20)、1〜15(C1-15)、1〜10(C1-10)、若しくは1〜6(C1-6)個の炭素原子を有する直鎖飽和一価炭化水素基、又は3〜20(C3-20)、3〜15(C3-15)、3〜10(C3-10)、若しくは3〜6(C3-6)個の炭素原子を有する分枝飽和一価炭化水素基である。また、本明細書中の直鎖C1-6及び分枝C3-6アルキル基は、「低級アルキル」とも呼ばれる。アルキル基の例を挙げると、限定はされないが、メチル、エチル、プロピル(全ての異性体の形態を含む。)、n-プロピル、イソプロピル、ブチル(全ての異性体の形態を含む。)、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル(全ての異性体の形態を含む。)、及びヘキシル(全ての異性体の形態を含む。)がある。例えば、C1-6のアルキルは、炭素原子1〜6個の直鎖飽和一価炭化水素基、又は炭素原子3〜6個の分枝飽和一価炭化水素基である。特定の実施態様において、該アルキルは、本明細書に記載の1つ以上の置換基Qで置換することができる。
【0039】
用語「シクロアルキル」は、環状飽和の架橋又は非架橋の一価炭化水素基を意味し、本明細書に記載の1つ以上の置換基Qで任意に置換することができる。特定の実施態様において、該シクロアルキルは、3〜20(C3-20)、3〜15(C3-15)、3〜10(C3-10)、又は3〜7(C3-7)個の炭素原子を有する。シクロアルキル基の例を挙げると、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、デカリニル、及びアダマンチルがある。
【0040】
用語「アリール」は、単環式芳香族基、及び/又は少なくとも1つの芳香族炭化水素環を含む、多環式一価の芳香族基を意味する。特定の実施態様において、該アリールは、6〜20(C6-20)、6〜15(C6-15)、又は6〜10(C6-10)個の環原子を有する。アリール基の例を挙げると、限定はされないが、フェニル、ナフチル、フルオレニル、アズレニル、アントリル、フェナントリル、ピレニル、ビフェニル、及びテルフェニルがある。また、アリールは、二環式又は三環式炭素環を意味し、該環の1つが芳香族であり、かつその他を、飽和、部分的に不飽和、又は芳香族、例えば、ジヒドロナフチル、インデニル、インダニル、若しくはテトラヒドロナフチル(テトラリニル)とすることができる。特定の実施態様において、アリールはまた、本明細書に記載の1つ以上の置換基Qで任意に置換することができる。
【0041】
用語「ヘテロアリール」は、単環式芳香族基、及び/又は少なくとも1つの芳香族環を含む多環式芳香族基を意味し、ここで、少なくとも1つの芳香族環は、O、S、及びNから独立して選択される1つ以上のヘテロ原子を含む。ヘテロアリール基のそれぞれの環は、1又は2個のO原子、1又は2個のS原子、及び/又は1〜4個のN原子を含むことができる。但し各環のヘテロ原子の総数は4個以下であり、かつ各環は少なくとも1個の炭素原子を含む。該ヘテロアリールは、任意のヘテロ原子又は炭素原子で主要構造に付加することができ、安定な化合物を作り出す。特定の実施態様において、該ヘテロアリールは、5〜20、5〜15、又は5〜10個の環原子を有する。単環式ヘテロアリール基の例を挙げると、限定はされないが、ピロリル、ピラゾリル、ピラゾリニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、フラニル、チエニル、オキサジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、及びトリアジニルがある。二環式ヘテロアリール基の例を挙げると、限定はされないが、インドリル、べンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾピラニル、インドリジニル、ベンソフラニル、イソベンゾフラニル、クロモニル、クマリニル、シンノリニル、キノキサリニル、インダゾリル、プリニル、ピロロピリジニル、フロピリジニル、チエノピリジニル、ジヒドロイソインドリル、及びテトラヒドロキノリニルがある。三環式ヘテロアリール基の例を挙げると、限定はされないが、カルバゾリル、ベンゾインドリル、フェナントロリニル、アクリジニル、フェナンスリジニル、及びキサンテニルがある。特定の実施態様において、ヘテロアリールはまた、本明細書に記載の1つ以上の置換基Qで任意に置換することができる。
【0042】
用語「ヘテロシクリル」又は「ヘテロシクリルの(heterocyclic)」は、単環式非芳香族環系、及び/又は多環式環系を意味し、これらは、少なくとも1つの非芳香族環を含み、ここで、1つ以上の非芳香族環原子が、O、S、及びNから独立して選択されるヘテロ原子であり;かつ残りの環原子が炭素原子である。特定の実施態様において、該ヘテロシクリル又はヘテロ環基は、3〜20、3〜15、3〜10、3〜8、4〜7、又は5〜6個の環原子を有する。特定の実施態様において、該ヘテロシクリルは、縮合又は架橋の環系を含み、かつここで、窒素又はイオウ原子を任意に酸化することができ、窒素原子を任意に四級化することができ、かついくつかの環を部分的に又は完全に飽和又は芳香族にすることができる、単環式、二環式、三環式、又は四環式環系である。該ヘテロシクリルは、任意のヘテロ原子又は炭素原子で主要構造に付加することができ、安定な化合物を作り出す。このようなヘテロシクリルの例を挙げると、限定はされないが、アクリジニル、アゼピニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾインドリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾイソオキサジニル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[l,2 a]ピリジニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾピラニル、ベンゾテトラヒドロフラニル、ベンゾテトラヒドロチエニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチオフェニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾチオピラニル、ベンゾオキサジニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、β カルボリニル、カルバゾリル、クロマニル、クロモニル、シンノリニル、クマリニル、デカヒドロイソキノリニル、ジベンゾフラニル、ジヒドロベンゾイソチアジニル、ジヒドロベンゾイソオキサジニル、ジヒドロフリル、ジヒドロピラニル、ジオキソラニル、ジヒドロピラジニル、ジヒドロピリジニル、ジヒドロピラゾリル、ジヒドロピリミジニル、ジヒドロピロリル、ジオキソラニル、1,4ジチアニル、フラノニル、フラニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリル、イミダゾピリジニル、イミダゾチアゾリル、インダゾリル、インドリニル、インドリジニル、インドリル、イソベンゾテトラヒドロフラニル、イソベンゾテトラヒドロチエニル、イソベンゾチエニル、イソクロマニル、イソクマリニル、イソインドリニル、イソインドリル、イソキノリニル、イソチアゾリジニル、イソチアゾリル、イソオキサゾリジニル、イソオキサゾリル、モルフォリニル、ナフチリジニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、オキサジアゾリル、オキサゾリジノニル、オキサゾリジニル、オキサゾロピリジニル、オキサゾリル、オキシラニル、ペリミジニル、フェナントリジニル、フェナントロリニル、フェナルサジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピペラジニル、ピペリジニル、4ピペリドニル、プテリジニル、プリニル、ピラジニル、ピラゾリジニル、ピラゾリル、ピリダジニル、ピリジニル、ピリドピリジニル、ピリミジニル、ピロリジニル、ピロリニル、ピロリル、キナゾリニル、キノリニル、キノキサリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロイソキノリニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロチエニル、テトラゾリル、チアジアゾロピリミジニル、チアジアゾリル、チアモルフォリニル、チアゾリジニル、チアゾリル、チエニル、トリアジニル、トリアゾリル、及び1,3,5トリチアニルがある。特定の実施態様において、ヘテロシクリルはまた、本明細書に記載の1つ以上の置換基Qで任意に置換することができる。
【0043】
用語「アシル」は、-C(O)R基を意味し、式中、Rは、それぞれ本明細書に定義される、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、ヘテロシクリル、アリール、又はヘテロアリールである。アシル基の例を挙げると、限定はされないが、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、エイコサノイル、ドコサノイル、ミリストレオイル、パルミトレオイル、オレオイル、リノレオイル、アラキドノイル、ベンゾイル、ピリジニルカルボニル、及びフロイルがある。
【0044】
用語「ハロゲン」、「ハロゲン化物」、又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素を意味する。
【0045】
用語「任意に置換された」は、アルキル、アルキレン、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルなどの基が、以下から独立して選択される1つ以上の置換基で置換され得ることの意味を意図する:例えば、ハロ、シアノ(-CN)、ニトロ(-NO2)、-SRa、-S(O)Ra、-S(O)2Ra、-Ra、-C(O)Ra、-C(O)ORa、-C(O)NRbRc、-C(NRa)NRbRc、-ORa、-OC(O)Ra、-OC(O)ORa、-OC(O)NRbRc、-OC(=NRa)NRbRc、-OS(O)Ra、-OS(O)2Ra、-OS(O)NRaRb、-OS(O)2NRaRb、-NRaRb、-NRaC(O)Rb、-NRaC(O)ORb、-NRaC(O)NRbRc、-NRaC(NRb)NRcRd、-NRaS(O)Rb、-NRaS(O)2Rb、-NRaS(O)RbRc、又は-NRaS(O)2RbRc(式中、Ra、Rb、Rc、及びRdはそれぞれ独立して、例えば、アルキル、アルケニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルである。)。
【0046】
用語「任意に置換された」は、アルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、又はアシルなどの基が、1つ以上の置換基Q、一実施態様において、1、2、3、4つの置換基Qで置換され得ることの意味を意図し、それぞれのQは、シアノ、ハロ、及びニトロ;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、及びヘテロシクリル;並びに-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(NRe)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(=NRe)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-OS(O)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(O)Rf、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(=NRh)NRfRg、-NReS(O)Rf、-NReS(O)2Rf、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、及び-S(O)2Re(式中、Re、Rf、Rg、及びRhは、それぞれ独立して、水素;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、又はヘテロシクリルであり;又はRf及びRgは、それらに結合しているN原子とともに、ヘテロシクリルを形成する。)から独立して選択される。
【0047】
用語「光学活性な」及び「鏡像異性的に活性な」とは、本明細書中で互換的に使用され、かつ少なくとも1つの鏡像異性体がもう一方を上回って、十分に過剰であり、結果、該化合物の混合物が平面偏光を回転させる化合物を意味する。典型的には、鏡像異性体の光学活性は、鏡像体過剰率(e.e.)として表される。特定の実施態様において、「光学活性な」及び「鏡像異性的に活性な」とは、約50%以上、約70%以上、約80%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、又は約94%以上、約95%以上、約96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、又は約99.5%以上、約99.8%以上の鏡像体過剰率を有する、分子の収集を意味する。特定の実施態様において、該化合物は、問題としているラセミ体の総重量に基づいて、約95%以上の(-)鏡像異性体、及び約5%以下の(+)鏡像異性体を含む。
【0048】
光学活性な化合物の説明において、接頭辞R及びSを用いて、その不斉中心について、分子の絶対配置を表す。 (+)及び(-)を用いて、化合物の旋光、すなわち、光学活性な化合物によって偏光面が回転する方向を表す。接頭辞(-)は、化合物が左旋性であり、つまり、該化合物が、偏光面を左に、又は反時計回りに回転させることを示す。接頭辞(+)は、化合物が右旋性であり、つまり該化合物が、直線偏光を右に、又は時計回りに回転させることを示す。しかし、旋光の記号(+)及び(-)は、分子の絶対配置R及びSとは関連していない。
【0049】
用語「溶媒和物」は、本明細書で提供される化合物、又はその塩が、非共有結合性の分子間力によって結合した、化学量論的又は非化学量論的な量の溶媒を更に含むことを意味する。溶媒が水である場合、該溶媒和物は水和物である。
【0050】
用語「IC50」は、応答性を測定するアッセイにおいて、最大応答の50%阻害に必要な化合物の量、濃度、又は用量を意味する。
【0051】
用語「キサントゲン酸トリシクロデカン-9-イル」は、式1のトリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又は医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物を意味する。
【化5】

【0052】
(トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸)
トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸は、5つの不斉中心を有し、これが32個の理論上の立体異性体をもたらす、複雑な分子である。しかし、その束縛された環構造のために、該分子に存在する立体異性体は、理論上可能性のあるものよりも少ない。スキーム1に、4つの鏡像異性体対、O-エキソ/C-エキソ,(9R)-1A及び(9S)-1A;O-エキソ/C-エンド,(9R)-1B及び(9S)-1B;O-エンド/C-エキソ,(9R)-1C及び(9S)-1C;並びにO-エンド/C-エンド,(9R)-1D及び(9S)-1Dを含む、いくつかの立体異性体を示す。
【0053】
本開示は、治療薬として、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aを使用することの、ラセミ体又はジアステレオ異性の混合物を上回るいくつかの利点を企図している。第1に、光学的に純粋な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aは、極めて有効であり、そのため、ラセミ体又はジアステレオ異性の混合物と比べて、低用量又は低濃度の使用で、同じ利益を達成することが可能である。第2に、本開示は、ジアステレオ異性又はラセミ体の混合物の使用に付随する、不要な、望ましくない、有害な、若しくは副次的な作用を低減する、又は回避することを企図している。実際に、該光学的に純粋な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aは、ラセミ体又はジアステレオ異性のいずれかの混合物と比べて、治療係数の向上を示す。本明細書記載の光学的に純粋な異性体又はその組成物を使用することという本開示によって企図される他の利益には、薬物動態プロファイルの単純化、望ましくない薬物-薬物相互作用の低減、及び患者間の差異の低減を含めることができる。
【0054】
従って、本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを提供する。
【0055】
特定の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、約50%以上、約60%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約91%以上、約92%以上、約93%以上、又は約94%以上、約95%以上、96%以上、約97%以上、約98%以上、約99%以上、又は約99.5%以上、約99.9%以上、約99.95%以上、約99.99%以上、又は約100%の鏡像体過剰率を有する。
【0056】
特定の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの鏡像体過剰率は、約50%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約60%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約70%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約80%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約85%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約90%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約91%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約92%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約93%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約94%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約95%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約96%以上である特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約97%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約98%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約99%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約99.5%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約99.9%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約99.95%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約99.99%以上である。特定の実施態様において、該鏡像体過剰率は、約100%以上である。
【0057】
特定の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、約60重量%以上、約70重量%以上、約80重量%以上、約90重量%以上、約95重量%以上、96重量%以上、約97重量%以上、約98重量%以上、約99重量%以上、又は約99.5重量%以上、約99.8重量%以上、約99.9重量%以上、又は約100重量%の(-)-鏡像異性体を含む。
【0058】
特定の実施態様において、該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ中の(-)-鏡像異性体含有量は、約60重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約70重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約80重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約90重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約95重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約96重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約97重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約98重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約99重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約99.5重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約99.8重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約99.9重量%以上である。特定の実施態様において、(-)-鏡像異性体含有量は、約100重量%以上である。
【0059】
更に別の実施態様において、本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの医薬として許容し得る塩を提供する。医薬として許容し得る塩の製造での使用に適した塩基は、限定はされないが、下記が含まれる。限定はされないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛、及び水酸化アンモニウムを含めた無機塩基;並びに限定はされないが、L-アルギニン、ベネタミン、ベンザチン、N,N'-ジベンジルエチレンジアミン、N-ベンジルフェネチルアミン、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、2-(ジエチルアミノ)-エタノール、エタノールアミン、エチルアミン、エチレンジアミン、イソプロピルアミン、N-メチル-グルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、L-リジン、モルフォリン、4-(2-ヒドロキシエチル)-モルフォリン、メチルアミン、ピペリジン、ピペラジン、プロピルアミン、ピロリジン、1-(2-ヒドロキシエチル)-ピロリジン、ピリジン、キヌクリジン、キノリン、イソキノリン、トリエタノールアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、クロロプロカイン、プロカイン、N-メチル-D-グルカミン、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-l,3-プロパンジオール、l-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-l'-イルメチル-ベンゾイミダゾール、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、及びトロメタミンを含めた、第一級、第二級、第三級、及び第四級、脂肪族及び芳香族アミンなどの有機塩基。更なる医薬として許容し得る塩基の検討には、Bergeらの論文、J. Pharm. Sci. 1977, 66, 1-19;及び「製薬の塩、特性、及び使用ハンドブック(Handbook of Pharmaceutical Salts, Properties, and Use)」、Stah及びWermuth編集;Wiley-VCH and VHCA、チューリッヒ、2002を参照されたい。
【0060】
特定の実施態様において、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aは、無機塩であり、限定はされないが、リチウム、ナトリウム、及びカリウムなどのアルカリ金属;カルシウム及びマグネシウムなどのアルカリ土類金属;亜鉛;並びにアンモニウム塩が含まれる。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、アルカリ金属塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、アルカリ土類金属塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、リチウム塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、マグネシウム塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、カルシウム塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、ナトリウム塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、カリウム塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、亜鉛塩である。特定の実施態様において、該医薬として許容し得る塩は、アンモニウム塩である。
【0061】
別の実施態様において、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの医薬として許容し得る塩は、有機塩である。医薬として許容し得る塩の製造での使用に適した有機塩基は、本明細書に記載されるものである。
【0062】
更に別の実施態様において、本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸のプロドラッグを提供し、限定はされないが、WO 2005/032492(全体を引用により本明細書に組み込んでいる)に開示されているものを含む。
【0063】
化合物のプロドラッグは、親化合物の機能的誘導体であり、インビボにて親化合物に容易に変換できる。いくつかの状況において、プロドラッグは、多くの場合、親化合物より容易に投与できるので、有用である。例えば、プロドラッグは、その親化合物がそうでなくても、経口投与で生物学的に利用することができる。また、該プロドラッグは、医薬組成物への溶解性を、親化合物を上回るように向上し得る。プロドラッグは、酵素的工程及び代謝的な加水分解を含む、様々な機構によって、親の薬剤へ変換され得る。Harperの論文、Progress in Drug Research 1962, 4, 221-294;Morozowichらの文献、「プロドラッグ及び類似体をによるバイオ医薬品特性の設計(Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs)」、Roche編集、APHA Acad. Pharm. Sci. 1977;「薬剤設計、理論及び適用における薬剤中の生体内可逆性担体(Bioreversible Carriers in Drug in Drug Design, Theory and Application)」Roche編集、APHA Acad. Pharm. Sci. 1987;「プロドラッグの設計(Design of Prodrugs)」Bundgaard, Elsevier, 1985;Wangらの論文、Curr. Pharm. Design 1999, 5, 265-287;Paulettiらの論文、Adv. Drug. Delivery Rev. 1997, 27, 235-256;Mizenらの論文、Pharm. Biotech. 1998, 11, 345-365;Gaignaultらの論文、Pract. Med. Chem. 1996, 671-696;Asgharnejadの文献、「医薬システムにおける輸送工程(Transport Processes in Pharmaceutical Systems)」 Amidonら編集、Marcell Dekker, 185-218, 2000;Balantらの論文、Eur. J. Drug Metab. Pharmacokinet. 1990, 15, 143-53;Balimane及びSinkoの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 183-209;Browneの論文、Clin. Neuropharmacol. 1997, 20, 1-12;Bundgaardの論文、Arch. Pharm. Chem.1979, 86, 1-39;Bundgaardの論文、Controlled Drug Delivery 1987, 17, 179-96;Bundgaardの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1992, 5, 1-38;Fleisherの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 115-130;Fleisherの論文、Methods Enzymol 1985, 112, 360-381;Farquharらの論文、J. Pharm. Sci. 1983, 72, 324-325;Freemanらの論文、J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1991, 875-877;Friis及びBundgaardの論文、Eur. J. Pharm. Sci. 1996, 4, 49-59;Gangwarらの論文、Des. Biopharm. Prop. Prodrugs Analogs, 1977, 409-421;Nathwani及びWoodらの論文、Drugs 1993, 45, 866-94;Sinhababu及びThakkerの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 241-273;Stellaらの論文、Drugs 1985, 29, 455- 73;Tanらの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 117-151;Taylorの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1996, 19, 131-148;Valentino及びBorchardtの論文、Drug Discovery Today 1997, 2, 148-155;Wiebe及びKnausの論文、Adv. Drug Delivery Rev. 1999, 39, 63-80;Wallerらの論文、Br. J. Clin. Pharmac. 1989, 28, 497-507を参照されたい。
【0064】
一実施態様において、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのプロドラッグは、式(I)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物であり、式中、Raは、1つ以上のS、O、N、及びPから選択されるヘテロ原子で置換されたアルキルである。
【化6】

【0065】
別の実施態様において、プロドラッグは、式(II)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物であり、式中、Rb、Rc、及びRdは、それぞれ独立してH又はアルキルである。
【化7】

【0066】
式(II)のプロドラッグの合成をスキーム2に例示する(Kriseらの論文、Pharm. Sci. 1999, 88, 922-927;及びKriseらの論文、J. Pharm. Sci. 1999, 88, 928-932)。化合物2と(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩との置換反応から、対応する光学活性な式(II)のプロドラッグが生成される。特定の実施態様において、RbはHである。特定の実施態様において、Rc及びRdは、それぞれ独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はt-ブチルである。特定の実施態様において、Rc及びRdは、それぞれ独立してメチル、n-プロピル、又はt-ブチルである。特定の実施態様において、Rc及びRdは、どちらもメチルである。特定の実施態様において、Rc及びRdは、どちらもn-プロピルである。特定の実施態様において、Rc及びRdは、どちらもt-ブチルである。特定の実施態様において、RbはHであり、Rc及びRdは、それぞれ独立してメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はt-ブチルである。
【化8】

【0067】
更に別の実施態様において、プロドラッグは、式(III)の化合物、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物であり、式中、Rb及びRcは、それぞれ独立してH又はアルキルである。
【化9】

特定の実施態様において、RbはHである。特定の実施態様において、Rcは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はt-ブチルである。Rcは、メチル、n-プロピル、又はt-ブチルである。特定の実施態様において、RbはHであり、かつRcは、メチル、n-プロピル、又はt-ブチルである。
【0068】
式(III)のプロドラッグの合成をスキーム3に例示する。Bodorらの論文(J. Org. Chem. 1983, 48, 5280-5284)に従って合成される、酢酸クロロメチル3と、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩とを反応させて、対応する光学活性な式(III)のプロドラッグ4が生成される。式中、RbはHである。
【化10】

【0069】
(光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸の製造)
(1. 不斉ヒドロシリル化)
本明細書中に、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの合成のための不斉ヒドロシリル化法を提供する(スキーム4)。本明細書の構造式中の星型記号「*」は、基が所望の部位に付加される場合に、得られる光学活性な化合物が、 (+)又は(-)のいずれかの所望する同方向に光学活性を有するために、基が付加することができる部位を示している。
【0070】
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物の合成方法を、本明細書に例示する。所望であれば、該方法は、光学活性な (+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物の合成に、同様に適用可能である。
【化11】

【0071】
一実施態様において、該方法は、アキラルなC-エキソアルケン5とシランとを、遷移金属触媒とキラル単座ホスフィンとの錯体の存在下で反応させて、光学活性な有機シラン6を生成することを含む。
【0072】
別の実施態様において、該方法は、酸化剤を用いて該光学活性な有機シラン6を酸化し、立体化学を保持したまま、光学活性なアルカノール7を生成することを更に含む。
【0073】
更に別の実施態様において、該方法は、該光学活性なアルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物に変換することを更に含む。
【0074】
更に別の実施態様において、該方法は、次の工程を含む。a) アキラルなC-エキソアルケン5とシランとを、遷移金属触媒と不斉単座ホスフィンとの錯体の存在下で、反応させて、光学活性な有機シラン6を生成する工程;b) 酸化剤を用いて、該光学活性な有機シラン6を酸化し、立体化学を保持したまま、光学活性なアルカノール7を生成する工程;及びc) 該光学活性なアルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物に変換する工程である。
【0075】
不斉ヒドロシリル化の使用に適したシランを挙げると、限定はされないが、式(IV)の化合物がある。
【化12】

式中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立してH;ハロゲン; 1つ以上の置換基Q、一実施態様においては、1、2、又は3つの置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキル;又は-OR4であり、ここで、R4は、それぞれ独立して、1つ以上の置換基Q、一実施態様においては、1、2、又は3つの置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、又はC6-10アリールである。
【0076】
適当なシランの例を挙げると、限定はされないが、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、メトキシジクロロシラン、トリエチルシラン、ペンタメチルジシロキサン(HSiMe2OTMS)、及びl,l-ジメチル-3,3-ジフェニル-3-tert-ブチルジシロキサン(HSiMe2OTBDPS)がある。特定の実施態様において、該シランは、トリクロロシランである。特定の実施態様において、該シランは、メチルジクロロシランである。特定の実施態様において、該シランは、ジメチルクロロシランである。特定の実施態様において、該シランは、メトキシジクロロシランである。特定の実施態様において、該シランは、トリエチルシランである。特定の実施態様において、該シランは、ペンタメチルジシロキサン(HSiMe2OTMS)である。特定の実施態様において、該シランは、l,l-ジメチル-3,3-ジフェニル-3-tert-ブチルジシロキサン(HSiMe2OTBDPS)である。
【0077】
不斉ヒドロシリル化反応の触媒としての使用に適した遷移金属を挙げると、限定はされないが、白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、及びルテニウムがある。該遷移金属触媒は、不均一又は均一系とし得る。特定の実施態様において、該遷移金属触媒は、白金である。特定の実施態様において、該遷移金属触媒は、イリジウムである。特定の実施態様において、該遷移金属触媒は、パラジウムである。特定の実施態様において、該遷移金属触媒は、ロジウムである。特定の実施態様において、該遷移金属触媒は、ルテニウムである。
【0078】
適当なキラル単座ホスフィン配位子を挙げると、限定はされないが、式(V)の化合物である。
【化13】

式中、R5は、H;ハロゲン; 1つ以上の置換基Q、一実施態様においては、1、2、又は3つの置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキル;又は-OR8であり、ここでR8はそれぞれ、1つ以上の置換基Q、一実施態様においては、1、2、又は3つの置換基Qで任意に置換されたC1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、又はC6-10アリールであり;並びに
R6及びR7のそれぞれは、独立して、1つ以上の置換基Q、一実施態様においては、1、2、3、4、又は5つの置換基Qで任意に置換されたC6-10アリールである。
【0079】
特定の実施態様において、R5は、アルキ(alky)であり、限定はされないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、及びヘキシルを含む。特定の実施態様において、R5は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はt-ブチルである。特定の実施態様において、R5は-OR8であり、ここでR8は、C1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、又はC6-10アリールである。特定の実施態様において、R8は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、t-ブチル、ペンチル、及びヘキシルである。特定の実施態様において、R5は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、又はt-ブチルである。特定の実施態様において、R6及びR7のそれぞれは、独立して、フェニル;又はモノ-、ジ-、トリ-、テトラ-、若しくはペンタ-ハロゲン化フェニルである。特定の実施態様において、R6及びR7はフェニルである。特定の実施態様において、R5は-OR8であり、ここで、R8はメチルである。特定の実施態様において、R5は-OR8であり、ここで、R8はメチルであり;かつR6及びR7はフェニルである。
【0080】
O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグのキラリティーは、主に、使用するキラル単座ホスフィンのキラリティーで決定される。例えば、パラジウムと式IIの(R)-(+)-単座ホスフィン配位子(式中、R5はメトキシであり、かつR6及びR7はフェニルである。)との錯体は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン-9-オール(7)の形成を導き、これは、立体化学を保持したまま、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの形成を導く。
【0081】
光学活性な有機シラン6の酸化での使用に適した酸化剤を挙げると、限定はされないが、過酸化水素;並びに過酢酸(AcOOH)及びm-クロロ過安息香酸などの過酸である。特定の実施態様において、該酸化剤は、過酸化水素である。特定の実施態様において、該酸化剤は、過酸である。特定の実施態様において、該酸化剤は、過酢酸又はm-クロロ過安息香酸である。
【0082】
該光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカン-9-オール(7)は、当業者に公知の方法を使用して、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに容易に変換される。「キサントゲン酸及び関連化合物(Xanthates and Related Compounds)」、Rao編集、Marcel Dekker, Inc., ニューヨーク, 1971, pgs. 7-31;米国特許第4,602,037号;及びGonzalez-Rouraらの論文、Lipids 2002, 37, 401-406を参照されたい。
【0083】
出発物質、アキラルなC-エキソアルケン5は、スキーム5に示すように、ジシクロペンタジエン8から製造される。まず、ジシクロペンタジエンを臭化水素酸で処理し、ワーグナー-メーヤワイン転位によって、C-エキソ-ブロモアルケン9が生成する(Brunsonらの論文、J. Am. Chem. Soc. 1945, 67, 1178-1180)。C-エキソ-ブロモアルケン9を水素化して、C-エキソブロモアルカン10が得られ、次いで、これを脱臭化水素化して、アキラルなC-エキソアルケン5を形成する(Youngbloodらの論文、J. Org. Chem. 1956, 27, 1436-1438;Osawaらの論文、J. Org. Chem. 1982, 47, 1923-1932)。
【化14】

【0084】
(2. 酵素分割:方法I)
また本明細書中に、不飽和エステル11の酵素分割による、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの合成方法も提供する。
【化15】

式中、R9C(O)-はC1-24アシルである。
【0085】
式11の構造は、2対の鏡像異性体、(R)-11A及び(S)-11A、並びに(R)-11B及び(S)-11Bを表す。特定の実施態様において、酵素分割に使用されるエステル11は、4つの立体異性体、(R)-11A、(S)-11A、(R)-11B、及び(S)-11B全ての混合物である。特定の実施態様において、酵素分割に使用されるエステル11は、(R)-11A及び(S)-11Aの混合物、例えば、これらのラセミ混合物などである。特定の実施態様において、酵素分割に使用されるエステル11は、(R)-11B及び(S)-11Bの混合物、例えば、これらのラセミ混合物などである。
【化16】

【0086】
特定の実施態様において、該アシルは、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、イソブタノイル、ペンタノイル、ヘキサノイル、ヘプタノイル、オクタノイル、ノナノイル、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、エイコサノイル、ドコサノイル、ミリストレオイル、パルミトレオイル、オレオイル、リノレオイル、又はアラキドノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、アセチルである。特定の実施態様において、該アシルは、プロピオニルである。特定の実施態様において、該アシルは、ブタノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、イソブタノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ペンタノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ヘキサノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ヘプタノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、オクタノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ノナノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、デカノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ドデカノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、テトラデカノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ヘキサデカノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、オクタデカノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、エイコサノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ドコサノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、ミリストレオイルである。特定の実施態様において、該アシルは、パルミトレオイルである。特定の実施態様において、該アシルは、オレオイルである。特定の実施態様において、該アシルは、リノレオイルである。特定の実施態様において、該アシルは、アラキドノイルである。特定の実施態様において、該アシルは、天然の脂肪酸アシルであり、限定はされないが、ブタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、エイコサノイル、ドコサノイル、ミリストレオイル、パルミトレオイル、オレオイル、リノレオイル、及びアラキドノイルが含まれる。
【0087】
一実施態様において、該方法は、加水分解酵素を用いて、不飽和エステル11を選択的に加水分解し、光学活性な(+)-又は(-)-アルケノール12を生成する工程を含み、該工程は、酵素の特異性に左右され、かつ反対の光学活性を有する光学活性な未反応エステル11として他の鏡像異性体が残る(スキーム6)。所望の鏡像異性体が、エステル形態である場合、該方法はまた、酵素的加水分解後に、クロマトグラフィーなどの従来法を用いて、光学活性な未反応エステル11から光学活性なアルケノール12を分離する工程も含むこともできる。所望の鏡像異性体が該光学活性な未反応エステル11である場合、該方法は、該光学活性なエステル11を対応する光学活性なアルコール12に変換する工程を更に含み、該工程は当業者に公知の従来方法、例えば、該光学活性なエステル11を水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムなどの塩基で処理することによって達成することができる。
【0088】
本明細書中の用語「加水分解酵素」は、加水分解酵素又は加水分解酵素を含有する微生物を意味する。該加水分解酵素は、どの供給源からでも入手することができ、限定はされないが、動物、植物、及び微生物が含まれる。該酵素は、精製形態、粗製形態、微生物発酵ブロス、発酵ブロス、又は発酵ブロスの濾液などの任意の従来の形態で使用することができる。加えて、該酵素又は微生物を固定化することができる。
【0089】
該酵素分割での使用に適した加水分解酵素を挙げると、限定はされないが、リパーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、及びアシラーゼがある。
【0090】
適当なリパーゼを挙げると、限定はされないが、アマノPS-30(シュードモナス・セパシア(Pseudomonas cepacia))、アマノGC-20(ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum candidum))、アマノAPF(アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger))、アマノAK(シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.))、シュードモナス・フルオレセイン(Pseudomonas fluoresceins)リパーゼ、アマノリパーゼP30(シュードモナス・エスピー(Pseudomonas sp.))、アマノP(シュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens))、アマノAY-30(カンジダ・シリンドラセア(Candida cylindracea))、アマノN(リゾプス・ニヴェウス(Rhizopus niveus))、アマノR(ペニシリウム・エスピー(Penicillium sp.))、アマノFAP(リゾプス・オリザエ(リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)))、アマノAP-12(アスペルギルス・ニルガー(Aspergillus nlger))、アマノMAP(ムコール・メルヘイ(Mucor melhei))、アマノGC-4(ゲオトリクム・カンディダム(Geotrichum candidum))、シグマL-0382及びL-3126(ブタ由来パンクレアーゼ)、リパーゼOF、リパーゼR(リゾプス・エスピー(Rhizopus sp.))、シグマL-3001(コムギ胚芽由来)、シグマL-1754(カンジダ・シチンドラセア(Candida cytindracea))、シグマL-0763(クロモバクテリウム・ビスコスム(Chromobacterlum vlscosum))、アマノK-30(アスペルギルス・ニルガー(Aspergillus nlger))、及びカンジダ・アンタクチカ(Candida antactica)リパーゼA又はシュードモナス・フルオレセンス(Pseudomonas fluorescens)リパーゼがある。適当なペプチダーゼを挙げると、限定はされないが、リゾプス・オリザエ(Rhizopus oryzae)ペプチダーゼがある。
【化17】

【0091】
特定の実施態様において、該酵素分割は緩衝溶液中で行われ、該緩衝溶液には、リン酸二水素カリウム又はリン酸二水素ナトリウムなどの無機酸塩緩衝液;及びクエン酸ナトリウムなどの有機酸塩緩衝液が含まれる。該緩衝液の濃度は、使用する特定の酵素又は微生物に応じて、約0.005〜約2M又は約0.005〜約0.5Mで変化し得る。
【0092】
エステル11の溶解度に応じて、反応混合物に界面活性剤を添加して、該物質を可溶化することができる。適当な界面活性剤を挙げると、限定はされないが、アルキルアリールポリエーテルアルコール、オクチルフェノキシポリエトキシエタノール、及びTriton X-100などの非イオン性界面活性剤がある。
【0093】
また、有機溶媒を、共溶媒として加えて、該酵素分割を促進することができる。適当な溶媒を挙げると、限定はされないが、アセトニトリル、t-ブチルメチルエーテル、THF、DMSO、DMF、及びアルコールがある。
【0094】
別の実施態様において、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製造方法は、スキーム6に示すように、次の工程を含む。a)加水分解酵素を用いて、エステル11を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル11及び光学活性な(+)-アルケノール12を生成する工程;b) 該光学活性な(-)-エステル11を加水分解して、光学活性な(-)-アルケノール12を生成する工程;c)該光学活性な(-)-アルケノール12を還元して、立体化学を保持したまま、光学活性な(-)-アルカノール7を生成する工程;及びd)該光学活性な(-)-アルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程である。
【0095】
本明細書で提供される方法において、加水分解反応(工程b)及び還元反応(工程c)は、特定の順序に制限されない。
所望であれば、該還元反応を加水分解反応の前に行うことができる。
【0096】
所望であれば、(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグも、同様に製造することができる。該(+)鏡像異性体の合成方法は、次の工程を含む。a)加水分解酵素を用いて、エステル11を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル11及び光学活性な(+)-アルケノール12を生成する工程;b)該光学活性な(+)-アルケノール12を還元して、立体化学を保持したまま、光学活性な(+)-アルカノール7を生成する工程;及びc)該光学活性な(+)-アルカノール7を光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程である。
【0097】
特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リパーゼ、エステラーゼ、ペプチダーゼ、アミダーゼ、又はアシラーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リパーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、ペプチダーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、エステラーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、アミダーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、アシラーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、それぞれ任意に固定化された、リゾプス・オリザエペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカリパーゼA、又はシュードモナス・フルオレセインリパーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リゾプス・オリザエペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカリパーゼA、又は固定化されたカンジダ・アンタクチカリパーゼAである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リゾプス・オリザエペプチダーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、カンジダ・アンタクチカリパーゼAである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、固定化されたカンジダ・アンタクチカリパーゼAである。
【0098】
特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は触媒量である、すなわち、該酵素分割反応において、酵素の量は、エステル11の約50重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、約15重量%以下、又は約10重量%以下である。特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は、エステル11の約50重量%以下である。特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は、エステル11の約25%重量以下である。特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は、エステル11の約20重量%以下である。特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は、エステル11の約15重量%以下である。特定の実施態様において、該酵素分割に使用される酵素は、エステル11の約10重量%以下である。
【0099】
特定の実施態様において、該酵素分割は、約5〜約100℃、約10〜約75℃、約15〜60℃、約20〜約50℃、約25〜約40℃、又は約30〜約40℃の温度で行われる。特定の実施態様において、該温度は、約5〜約100℃である。特定の実施態様において、該温度は、約10〜約75℃である。特定の実施態様において、該温度は、約15〜約60℃である。特定の実施態様において、該温度は、約20〜約50℃である。特定の実施態様において、該温度は、約25〜約40℃である。特定の実施態様において、該温度は、約30〜約40℃である。
【0100】
特定の実施態様において、該酵素分割は、約48時間以下、約36時間以下、又は約24時間以下の期間で行われる。
【0101】
出発物質、O-エキソ/C-エキソ-エステル11は、スキーム7に示すように、ジシクロペンタジエン8から製造される。まず、ジシクロペンタジエン8を硫酸で処理して、O-エキソ/C-エキソ-アルケノール12を形成する(Brunson及びRienerの論文、J. Am. Chem. Soc. 1945, 67, 723-728)、続いて、アシル化して、出発物質O-エキソ/C-エキソ-エステル11が得られる。
【化18】

【0102】
(3. 酵素分割:方法II)
更に別の実施態様において、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、エステル13の酵素分割によって製造される。
【化19】

式中、R9C(O)-は、本明細書に記載されるものである。式13の構造は、2つの鏡像異性体、(R)-13及び(S)-13を表す。
【化20】

【0103】
一実施態様において、該方法は、加水分解酵素を用いて、エステル13を選択的に加水分解し、光学活性な(+)-又は(-)-アルケノール7を生成する工程を含み、該工程は、酵素の特異性に左右され、かつ反対の光学活性を有する光学活性な未反応エステル13である他方の鏡像異性体が残る。該方法はまた、酵素的加水分解後に、クロマトグラフィーなどの従来法を用いて、光学活性な未反応エステル13から光学活性なアルケノール7を分離する工程を含むこともできる。所望の鏡像異性体が該光学活性な未反応エステル13である場合、該方法は、該光学活性なエステル13を、対応する光学活性なアルコール7に変換する工程を更に含み、該工程は当業者に公知の従来方法、例えば、該光学活性なエステル13を水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムなどの塩基で処理することによって達成することができる。適当な反応条件及びパラメータ、例えば、加水分解酵素、溶媒、及び緩衝液などは、本明細書に記載されているものである。
【0104】
別の実施態様において、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製造方法は、次の工程を含む。a)加水分解酵素を用いて、エステル13を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル13及び光学活性な(+)-アルケノール7を生成する工程;b) 該光学活性な(-)-エステル13を加水分解して、光学活性な(-)-アルケノール7を生成する工程;及びc)該光学活性な(-)-アルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程である。
【0105】
所望であれば、 (+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを、同様に製造することもできる。該(+)鏡像異性体の合成方法は、次の工程を含む。a)加水分解酵素を用いて、エステル13を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル13及び光学活性な(+)-アルカノール7を生成する工程;及びb)該光学活性な(+)-アルカノール7を光学活性な (+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程である。
【0106】
特定の実施態様において、該加水分解酵素は、それぞれ任意に固定化された、リゾプス・オリザエペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカリパーゼA、又はシュードモナス・フルオレセンスリパーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リゾプス・オリザエペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカリパーゼA、又はシュードモナス・フルオレセンスリパーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、リゾプス・オリザエペプチダーゼである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、カンジダ・アンタクチカリパーゼAである。特定の実施態様において、該加水分解酵素は、シュードモナス・フルオレセンスリパーゼである。
【0107】
出発物質エステル13は、スキーム8に示すように、O-エキソ/C-エキソ-アルケノール12から製造される。O-エキソ/C-エキソ-アルケノール12をO-エキソ/C-エキソ-アルカノール7に水素化し、続いて、アシル化して、出発物質O-エキソ/C-エキソ-エステル13が得られる。
【化21】

【0108】
また、該光学活性なO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、当業者に公知の他の従来法及び技術を使用して製造することができる。例えば、ラセミのO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aは、光学活性な塩基と反応させて、ジアステレオマーを形成し、続いて、クロマトグラフィー又は分別再結晶して、遊離酸の再生、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、又はプロドラッグへ変換することによって、分割することができる。
【0109】
別法として、ラセミのO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、キラルカラム又はTLCを用いて、クロマトグラフ的に分割することができる。鏡像異性体の分離に使用するための様々なキラルカラム及び溶出液が、市販されており、かつ分離に適した条件は、当業者に公知の方法によって経験的に決定することができる。本明細書で提供される鏡像異性体の分離に使用できるキラルカラムの例を挙げると、限定はされないが、CHIRALCEL(登録商標)OB、CHIRALCEL(登録商標)OB-H、CHIRALCEL(登録商標)OD、CHIRALCEL(登録商標)OD-H、CHIRALCEL(登録商標)OF、CHIRALCEL(登録商標)OG、CHIRALCEL(登録商標)OJ、及びCHIRALCEL(登録商標)OKがある。
【0110】
更なる方法及び技術は、以下の文献に見出すことができる。例えば、「鏡像異性体、ラセミ体及び分割(Enantiomers, Racemates and Resolutions (液剤))」, Jacquesらの文献、Wiley-Interscience, ニューヨーク, 1981;Wilen、Collet及びJacquesの論文、Tetrahedron 1977, 2725-2736;「炭素化合物の立体化学(Stereochemistry of Carbon Compounds)」Elielの文献、McGraw-Hill, ニューヨーク, 1962;Wilenの文献「分割剤及び光学分割一覧(Tables of Resolving Agents and Optical Resolutions (液剤))」、Eliel編集, Univ. of Notre Dame Press, Notre Dame, インディアナポリス, 1972, pgs. 268-298;「有機化合物の立体化学(Stereochemistry of Organic Compounds)」Eliel、Wilen及びMandaの文献, John Wiley & Sons, Inc., 1994;並びに「立体選択的合成 実践的アプローチ(Stereoselective Synthesis A Practical Approach)」, Nogradi著, VCH Publishers, Inc., ニューヨーク, 1995.である。
【0111】
O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの光学活性な立体異性体の同一性及び光学純度;並びに化合物6、7及び11〜13などのキラル中間体(chiral intermediate)は、旋光分析、NMR、又は当該分野で公知の他の分析方法によって測定することができる。
【0112】
(医薬組成物)
本明細書中に、活性成分である(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグと、1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤又は担体とを組み合せて含む、医薬組成物を提供する。特定の実施態様において、該医薬組成物は、少なくとも1つの放出制御型の賦形剤又は担体を含む。特定の実施態様において、該医薬組成物は、少なくとも1つの非放出制御型の賦形剤又は担体を含む。特定の実施態様において、該医薬組成物は、少なくとも1つの放出制御型、及び少なくとも1つの非放出制御型の賦形剤又は担体を含む。
【0113】
本明細書で提供される医薬組成物は、単位剤形、又は複数剤形で提供することができる。本明細書中の単位剤形とは、ヒト及び動物の対象への投与に適した、かつ当該分野で公知のように個々に包装された、物理的に分離した単位を意味する。各単位用量は、所要の薬剤用担体又は賦形剤と関連して、所望の治療効果を生じるのに十分な所定量の活性成分を含有する。単位剤形の例を挙げると、アンプル、シリンジ、並びに個々に包装された錠剤及びカプセル剤がある。単位剤形は、これを分割して、又は複数回で投与することができる。複数剤形は、単一の容器に包装された複数の同一単位剤形であり、単位剤形に分離して投与される。複数薬用量形態の例を挙げると、バイアル、瓶入りの錠剤若しくはカプセル剤、又はパイント若しくはガロン瓶がある。
【0114】
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、単体又は1つ以上の活性成分と組み合せて投与することができる。本明細書で提供される医薬組成物は、経口、非経口、及び局所的投与のための様々な剤形で処方することができる。また、該医薬組成物は、調節型放出剤形(modified release dosage form)として処方することができ、遅延性(delayed-)、徐放性(extended-)、持続性(prolonged-)、持効性(sustained-)、脈動性(pulsatile-)、制御性(controlled-)、促進性(accelerated)及び速攻性(fast-)、標的性(targeted-)、計画性(programmed-)、及び胃滞留性(gastric retention)の剤形が含まれる。こうした剤形は、従来法及び当業者に公知の技術によって製造することができる(Remington:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」、上記;「放出改質した薬物送達技術(Modified release (調節型) Drug Deliver Technology)」、Rathboneら編集、Drugs and the Pharmaceutical Science, Marcel Dekker, Inc.: ニューヨーク, NY, 2002; Vol. 126を参照されたい。)。
【0115】
一実施態様において、対象に経口投与するための剤形で医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及び1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤、又は担体を含む。該医薬組成物はまた、1つ以上の免疫賦活剤を更に含み、その薬理学的特性を更に増強することができる。適当な免疫賦活剤を挙げると、限定はされないが、イオン性界面活性剤、脂質、及びステロイドである。イオン性界面活性剤の例を挙げると、デカン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、デカン酸カリウム、ウンデカン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、デカン酸ナトリウム、ウンデカン酸ナトリウム、及びラウリン酸ナトリウムなどのC6-19脂肪酸及びこれらの塩;並びにラウリル硫酸ナトリウム及びラウリル硫酸カリウムを含むC8-18アルキル硫酸がある。脂質の例を挙げると、ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、及びホスファチジルイノシトールなどのリン脂質;ガングリソイドなどの糖脂質;及びスフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質がある。ステロイドの例を挙げると、ステアリルアミン、コレステロール;コレスタノール、コラン酸、コンドリラステロール、及びα,β,γ-システロール(sisterol)がある。
【0116】
別の実施態様において、対象に親投与(parental administration)するための剤形で医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及び1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤、又は担体を含む。該医薬組成物はまた、本明細書記載の1つ以上の免疫賦活剤を更に含み、その薬理学的特性を更に増強することができる。
【0117】
更に別の実施態様において、対象に局所投与するための剤形で医薬組成物が提供され、該医薬組成物は、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及び1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤、又は担体を含む。該医薬組成物はまた、本明細書記載の1つ以上の免疫賦活剤を更に含み、その薬理学的特性を更に増強することができる。
【0118】
本明細書で提供される医薬組成物は、1回、又は時間を置いて複数回投与することができる。的確な薬用量及び治療期間は、年齢、体重、及び治療を行っている患者の状態によって変化し、公知の試験プロトコールを用いて、又はインビボ若しくインビトロ試験若しくは診断データ試験からの推定によって、経験的に決定できることが理解される。更に、いかなる特定個人についても、特定の薬用量計画が、個々の要望及び製剤の投与を管理又な監督する者の専門的な判断に従って、時間をかけて調整されるべきであることが理解される。
【0119】
(A. 経口投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、固体、半固体、又は液体の剤形で経口投与用に提供することができる。また、本明細書中の経口投与は、頬側、舌、及び舌下投与を含む。適当な経口用剤形を挙げると、限定はされないが、錠剤、カプセル剤、丸剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、香剤、カシェ剤、ペレット剤、薬用チューインガム、顆粒剤、原料散剤(bulk powders)、発泡性又は非発泡性の散剤又は顆粒剤、液剤、乳剤、懸濁剤、液剤、ウエハース(wafers)、スプリンクル(sprinkles)、エリキシル剤、及びシロップ剤がある。活性成分に加えて、該医薬組成物は、1つ以上の医薬として許容し得る担体又は賦形剤を含有することができ、限定はされないが、結合剤、増量剤、希釈剤、崩壊剤、湿潤剤、潤滑剤、流動促進剤、着色剤、色素移行防止剤(dye-migration inhibitor)、甘味剤、及び調味剤を含む。
【0120】
結合剤又はグラニュレータ(granulator)は、錠剤に粘着性を与え、加圧後、該錠剤が無傷であるようにする。適当な結合剤又はグラニュレータを挙げると、限定はされないが、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、及びアルファ化デンプン(例えば、STARCH1500)などのデンプン;ゼラチン;スクロース、グルコース、右旋糖、モラセス、及びラクトースなどの糖;アカシア、アルギン酸、アルギン酸塩、アイリッシュモスの抽出物、パンワーガム(Panwar gum)、ガティガム、イサゴール外皮の粘液、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビーガム(Veegum)、カラマツアラボガラクタン(arabogalactan)、トラガント末、及びグアーガムなどの天然及び合成のガム;エチルセルロース、酢酸セルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)などのセルロース;AVICEL-PH-101、AVICEL-PH-103、AVICEL RC-581、AVICEL-PH-105(FMC Corp.、マーカスフック、PA)などの結晶セルロース;並びにこれらの混合物がある。適当な増量剤を挙げると、限定はされないが、タルク、炭酸カルシウム、結晶セルロース、粉末セルロース、デキストレート(dextrate)、カオリン、マンニトール、ケイ酸、ソルビトール、デンプン、アルファ化デンプン、及びこれらの混合物がある。該結合剤又は増量剤は、本明細書で提供される医薬組成物中、約50〜約99重量%で存在し得る。
【0121】
適当な希釈剤を挙げると、限定はされないが、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、ラクトース、ソルビトール、スクロース、イノシトール、セルロース、カオリン、マンニトール、塩化ナトリウム、ドライスターチ(dry starch)、及び粉砂糖がある。特定の希釈剤、マンニトール、ラクトース、ソルビトール、スクロース、及びイノシトールなどは、十分量存在する場合に、いくつかの圧縮錠に、咀嚼によって口内で崩壊できるような特性を与えることができる。このような圧縮錠は、咀嚼錠として使用することができる。
【0122】
適当な崩壊剤を挙げると、限定はされないが、寒天;ベントナイト;メチルセルロース及びカルボキシメチルセルロースなどのセルロース;木産物(wood product);天然のスポンジ;陽イオン交換樹脂;アルギン酸;グアーガム及びビーガムHVなどのガム;柑橘類の果肉;クロスカルメロースなどの架橋セルロース;クロスポビドンなどの架橋ポリマー;架橋デンプン;炭酸カルシウム;ナトリウムデンプングリコラートなどの結晶セルロース;ポラクリリンカリウム;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、タピオカデンプン、及びアルファ化デンプンなどのデンプン;粘土;アライン(align);及びこれらの混合物がある。本明細書で提供される医薬組成物中の崩壊剤の量は、処方の様式によって異なり、当業者には容易に認められる。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.5〜約15重量%、又は約1〜約5重量%の崩壊剤を含有することができる。
【0123】
適当な潤滑剤を挙げると、限定はされないが、ステアリン酸カルシウム;ステアリン酸マグネシウム;ミネラルオイル;ライトミネラルオイル;グリセリン;ソルビトール;マンニトール;ベヘン酸グリセロール及びポリエチレングリコール(PEG)などのグリコール;ステアリン酸;ラウリル硫酸ナトリウム;タルク;ピーナッツ油、綿実油、ひまわり油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、及び大豆油を含む水素化植物油;ステアリン酸亜鉛;オレイン酸エチル;エチルラウレート;寒天;デンプン;石松子;AEROSIL(登録商標)200(W.R. Grace Co.、ボルティモア、MD)及びCAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.、ボストン、MA)などのシリカ又はシリカゲル;並びにこれらの混合物がある。本明細書で提供される医薬組成物は、約0.1〜約5重量%の潤滑剤を含有することができる。
【0124】
適当な流動促進剤を挙げると、コロイド状二酸化ケイ素、CAB-O-SIL(登録商標)(Cabot Co.、ボストン、MA)、及びアスベストを含まないタルクがある。着色剤は、許可、保証された水溶性FD&C染料、及びアルミナ水和物上に懸濁した不溶性のFD&C染料、並びにカラーレーキ(color lake)及びこれらの混合物のいずれかを含む。カラーレーキは、水溶性の染料の重金属の水酸化物への吸着による組み合せにより、不溶性形態の染料になる。調味剤を挙げると、果実などの植物から抽出された天然の香料、及びペパーミント及びサリチル酸メチルなどの爽快な味覚を生じる化合物の総合的な配合物がある。甘味剤を挙げると、スクロース、ラクトース、マンニトール、シロップ、グリセリン、並びにサッカリン及びアスパルテームなどの人工甘味剤がある。適当な乳化剤を挙げると、ゼラチン、アカシア、トラガント、ベントナイト、及びモノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN(登録商標)20)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン80(TWEEN(登録商標)80)、及びオレイン酸トリエタノールアミンなどの界面活性剤がある。懸濁剤及び分散剤を挙げると、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ペクチン、トラガント、ビーガム、アカシア、ナトリウムカルボメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンがある。保存剤を挙げると、グリセリン、メチル及びプロピルパラベン、安息香酸付加(benzoic add)、安息香酸ナトリウム、及びアルコールがある。湿潤剤を挙げると、プロピレングリコールモノステアラート、ソルビタンモノオレアート、ジエチレングリコールモノラウラート、及びポリオキシエチレンラウリルエーテルがある。溶媒を挙げると、グリセリン、ソルビトール、エチルアルコール、及びシロップがある。乳剤に利用される非水性液体の例を挙げると、ミネラルオイル及び綿実油がある。有機酸を挙げると、クエン酸及び酒石酸がある。二酸化炭素源を挙げると、重炭酸ナトリウム及び炭酸ナトリウムがある。
【0125】
同じ製剤内でさえ、多数の担体及び賦形剤が、様々な機能を果たすことを、理解されたい。
【0126】
本明細書で提供される医薬組成物は、圧縮錠、粉薬錠剤、咀嚼ロゼンジ剤、速溶解性錠剤(rapidly dissolving tablet)、多圧縮錠(multiple compressed tablet)、又は腸溶コーティング錠、糖衣若しくはフィルムコート錠として提供される。腸溶錠は、胃酸の作用に耐えるが、腸で溶解又は崩壊する物質で被覆された圧縮錠であり、従って、胃の酸環境から活性成分を保護する。腸溶コーティングを挙げると、限定はされないが、脂肪酸、脂肪、サリチル酸フェニル、ワックス、シェラック、アンモニア処理したシェラック、及び酢酸フタル酸セルロースがある。糖衣錠は、糖コーティングによって囲まれた圧縮錠であり、不快な味又は臭いを隠し、かつ酸化から錠剤を保護するのに有益である。フィルムコート錠は、水溶性材料の薄層又は膜で被覆された圧縮錠である。フィルムコーティングを挙げると、限定はされないが、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール4000、及び酢酸フタル酸セルロースがある。フィルムコーティングは、糖コーティングと同じ一般的特徴を与える。多圧縮錠は、2回以上の圧縮サイクルで作製された圧縮錠であり、層状の錠剤(layered tablet)、及び圧縮コート(press-coated)又は有核錠(dry-coated tablet)を含む。
【0127】
錠剤の剤形は、粉末、結晶、又は顆粒形態の活性成分単体で、又は結合剤、崩壊剤、放出制御性ポリマー、潤滑剤、希釈剤、及び/又は着色剤を含む、本明細書記載の1つ以上の担体又は賦形剤と組み合わせて製造することができる。調味剤及び甘味剤は、咀嚼錠及びロゼンジ剤の形成において、特に有用である。
【0128】
本明細書で提供される医薬組成物は、軟又は硬カプセル剤として提供することができ、これらは、ゼラチン、メチルセルロース、デンプン、又はアルギン酸カルシウムから製造することができる。硬ゼラチンカプセル剤は、乾燥充填カプセル(DFC)としても知られ、2つの区分からなり、一方を他方に被せて、これにより、活性成分を完全に包囲する。軟カプセル剤(SEC)は、ゼラチンの外壁などの柔らかく、球状の外壁を有し、グリセリン、ソルビトール、又は類似のポリオールの添加によって可塑化される。柔らかいゼラチンの外壁は、保存剤を含有して、微生物の増殖を防ぐことができる。適当な保存剤は、本明細書記載のものであり、メチル及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸を含む。本明細書で提供される液体、半固体、及び固体の剤形は、カプセルに被包することができる。適当な液体及び半固体の剤形を挙げると、炭酸プロピレン、植物油、又はトリグリセリド中の液剤及び懸濁剤がある。このような液剤を含有しているカプセル剤は、米国特許第4,328,245号;第4,409,239号;及び第4,410,545号に記載されるように製造することができる。また、カプセル剤は、活性成分の溶解を調節又は維持するために、当業者に公知のように被覆を施すことができる。
【0129】
本明細書で提供される医薬組成物は、乳剤、液剤、懸濁剤、エリキシル剤、及びシロップを含む、液体及び半固体の剤形で提供することができる。乳剤は、一方の液体が別の液体中を小球の形態で分散する二相系であり、水中油型又は油中水型とし得る。乳剤は、医薬として許容し得る非水性液体又は溶媒、乳化剤、及び保存剤を含むことができる。懸濁剤は、医薬として許容し得る懸濁剤及び保存剤を含むことができる。水溶性アルコール液剤に含むことができるのは、低級アルキルアルデヒドのジ(低級アルキル)アセタール(用語「低級」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキルを意味する。)などの医薬として許容し得るアセタール、例えば、アセトアルデヒドジエチルアセタール;並びにプロピレングリコール及びエタノールなど、1つ以上のヒドロキシル基を有する水混和性の溶媒である。エリキシル剤は、透明、甘味で、及び含水アルコール液剤である。シロップ剤は、例えば、スクロースなどの糖の濃縮した水性液剤であり、保存剤を含むこともできる。液体の剤形について、例えば、ポリエチレングリコール中の溶液などは、十分な量の医薬として許容し得る液体担体、例えば、水などで希釈して、投与に都合の良いように測定できる。
【0130】
他の有用な液体及び半固体の剤形を挙げると、限定はされないが、本明細書で提供される活性成分、及び1,2-ジメトキシメタン、ジグリム、トリグリム、テトラグリム、ポリエチレングリコール-350-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-550-ジメチルエーテル、ポリエチレングリコール-750-ジメチルエーテルを含むジアルキル化モノ又はポリアルキレングリコールを含むものがあり、ここで、350、550、及び750は、ポリエチレングリコールの近似の平均分子量を意味する。更に、こうした製剤は、1つ以上の抗酸化体を含むことができ、該抗酸化体は、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、没食子酸プロピル、ビタミンE、ヒドロキノン、ヒドロキシクマリン、エタノールアミン、レシチン、セファリン、アスコルビン酸、リンゴ酸、ソルビトール、リン酸、重亜硫酸塩、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオジプロピオン酸及びそのエステル、並びにジチオカルバマートである。
【0131】
また、本明細書中に提供される経口投与のための医薬組成物は、リポソーム、ミセル、微粒子、又はナノシステムの形態で提供されてもよい。ミセルの剤形は、米国特許第6,350,458号に記載されるように製造することができる。
【0132】
本明細書で提供される医薬組成物は、非発泡性の又は発泡性の顆粒剤及び散剤として提供され、液体剤形に再構成することができる。該非発泡性の顆粒剤及び散剤に使用される、医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、希釈剤、甘味剤、及び湿潤剤を含むことができる。該発泡性の顆粒剤及び散剤に使用される、医薬として許容し得る担体及び賦形剤は、有機酸及び二酸化炭素源を含むことができる。
【0133】
着色剤及び調味剤は、上記剤形の全てで使用することができる。
【0134】
本明細書で提供される医薬組成物は、即効型又は調節型放出の剤形として製剤することができ、該剤形には、遅延性、持効性、脈動性、制御性、標的性、及び計画性放出形態が含まれる。
【0135】
本明細書で提供される医薬組成物は、所望の治療上の作用を損なうことはない他の活性成分、又は所望の作用を補う物質、例えば、制酸剤、プロトンポンプ阻害剤、及びH2受容体アンタゴニストなどとともに処方することができる。
【0136】
(B. 非経口投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、局部又は全身投与のために、注射、注入、又は埋め込みによって非経口的に投与することができる。本明細書で提供される非経口投与を挙げると、静脈内、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、脳室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、滑膜内、及び皮下投与がある。
【0137】
本明細書で提供される医薬組成物は、非経口投与に適した任意の剤形で処方することができ、該剤形には、液剤、懸濁剤、乳剤、ミセル、リポソーム、ミクロスフェア、ナノシステム、及び注射前に液体の液剤又は懸濁剤に適した固体形態が含まれる。こうした剤形は、薬科学分野の当業者に公知の従来法に従って製造することができる(Remingtonの文献:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」上記を参照されたい。)。
【0138】
非経口投与を目的とした医薬組成物は、1つ以上の医薬として許容し得る担体及び賦形剤を含むことができ、これらに含まれるのは、限定はされないが、水性媒体、水混和性媒体、非水性媒体、微生物の増殖に対する抗菌剤又は保存剤、安定剤、溶解度増強剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化体、局所麻酔薬、懸濁剤及び分散剤、湿潤剤又は乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート化剤、抗凍結剤、溶解保護剤(lyoprotectant)、増粘剤、pH調整剤、及び不活性ガスである。
【0139】
適当な水性媒体を挙げると、限定はされないが、水、食塩水、生理食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、等張ブドウ糖注射液、滅菌水注射液、ブドウ糖及び乳酸リンゲル注射液がある。非水性媒体を挙げると、限定はされないが、植物由来の不揮発性油、ヒマシ油、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、ピーナッツ油、ペパーミント油、ベニバナ油、ゴマ油、大豆油、水素化植物油、水素化大豆油、並びにヤシ油及びヤシの種油の中鎖トリグリセリドがある。水混和性媒体を挙げると、限定はされないが、エタノール、1,3-ブタンジオール、液体ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール300及びポリエチレングリコール400)、プロピレングリコール、グリセリン、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルアセトアミド、及びジメチルスルホキシドがある。
【0140】
適当な抗菌剤又は保存剤を挙げると、限定はされないが、フェノール、クレゾール、水銀、ベンジルアルコール、クロロブタノール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル、チメロサール、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、メチル及びプロピルパラベン、並びにソルビン酸がある。適当な等張剤を挙げると、限定はされないが、塩化ナトリウム、グリセリン、及びブドウ糖がある。適当な緩衝剤を挙げると、限定はされないが、リン酸塩及びクエン酸塩がある。適当な抗酸化体は、重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む、本明細書中に記載されるものである。適当な局所麻酔薬を挙げると、限定はされないが、プロカイン塩酸塩がある。適当な懸濁剤及び分散剤は、カルボキシメチルセルオースナトリウム(sodium carboxymethylcelluose)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、及びポリビニルピロリドンを含む、本明細書中に記載されるものである。適当な乳化剤を挙げると、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン80、及びオレイン酸トリエタノールアミンを含む、本明細書記載のものがある。適当な金属イオン封鎖剤又はキレート化剤を挙げると、限定はされないが、EDTAがある。適当なpH調整剤を挙げると、限定はされないが、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸、及び乳酸がある。適当な錯化剤を挙げると、限定はされないが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、及びスルホブチルエーテル7-β-シクロデキストリン(CAPTISOL(登録商標)、CyDex、レネクサ、KS)を含むシクロデキストリンがある。
【0141】
本明細書で提供される医薬組成物、単一又は複数回の用量の投与で処方することができる。単一用量の処方は、アンプル、バイアル、又はシリンジに詰められる。複数回の用量の非経口での処方は、静菌的又は静真菌的濃度の抗菌剤を含有しなければならない。当該分野で公知されかつ実践されているように、全ての非経口的処方は、無菌でなければならない。
【0142】
一実施態様において、該医薬組成物は、既成の滅菌溶液として提供される。別の実施態様において、該医薬組成物は、凍結乾燥した散剤及び注射用錠剤を含む滅菌乾式可溶性製剤として提供され、使用前に媒体で再構成される。更に別の実施態様において、該医薬組成物は、既成の滅菌懸濁剤として提供される。更に別の実施態様において、該医薬組成物は、滅菌乾式不溶性製剤として提供され、使用前に媒体で再構成される。更に別の実施態様において、該医薬組成物は、既成の滅菌乳剤として提供される。
【0143】
本明細書で提供される医薬組成物は、即効型又は調節型放出の剤形として製剤することができ、該剤形には、遅延性、持効性、脈動性、制御性、標的性、及び計画性放出形態が含まれる。
【0144】
該医薬組成物は、埋め込み型デポ剤として投与するために、懸濁剤、固体、半固体、又はチキソトロピーな液体として処方することができる。一実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、固体の内部マトリックス中に分散しており、外部を、体液には不溶性であるが、医薬組成物中の活性成分を通して拡散することができる外部ポリマー膜に囲まれている。
【0145】
適当な内部マトリックスを挙げると、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、可塑化又は非可塑化のポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカルボナート共重合体、アクリル酸及びメタクリル酸のエステルのヒドロゲルなどの親水性ポリマー、コラーゲン、架橋ポリビニルアルコール、並びに架橋した部分的に加水分解したポリ酢酸ビニルがある。
【0146】
適当な外部ポリマー膜を挙げると、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、シリコーンゴム 、ポリジメチルシロキサン、ネオプレンゴム、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、酢酸ビニルを含有するポリ塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、ポリエチレンテレフタラートイオノマー, ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコール ターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体がある。
【0147】
(局所投与)
本明細書で提供される医薬組成物は、皮膚、開口部、又は粘膜に局所的に投与することができる。本明細書中の該局所的投与に含まれるのは、(内)皮膚、結膜、角膜内、眼球内、眼部、耳介、経皮、経鼻、膣、尿道、呼吸部、及び直腸内投与である。
【0148】
本明細書で提供される医薬組成物は、局部又は全身作用のための局所投与に適した任意の剤形で処方することができ、該剤形には、乳剤、液剤、懸濁剤、クリーム剤、ゲル剤、ヒドロゲル、軟膏剤、散布剤、包帯剤、エリキシル剤、ローション剤、懸濁剤、チンキ剤、ペースト剤、泡、フィルム、エアロゾル剤、潅注、スプレー剤、坐剤、絆創膏、皮膚パッチが含まれる。また、本明細書で提供される医薬組成物の局所的処方には、リポソーム、ミセル、ミクロスフェア、ナノシステム、及びこれらの組み合わせを含むことができる。
【0149】
本明細書で提供される局所的処方の使用に適した医薬として許容し得る担体及び賦形剤を挙げると、限定はされないが、水性媒体、水混和性媒体、非水性媒体、微生物の増殖に対する抗菌剤又は保存剤、安定剤、溶解度増強剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化体、局所麻酔薬、懸濁剤及び分散剤、湿潤剤又は乳化剤、錯化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート化剤、浸透促進剤、抗凍結剤、溶解保護剤、増粘剤、及び不活性ガスがある。
【0150】
また、該医薬組成物は、エレクトロポレーション、イオン泳動、フォノフォレシス、
POWDERJECT(商標)(Chiron Corp.、エメリービル、CA)、及びBIOJECT(商標) (Bioject Medical Technologies Inc.、チュアラチン、OR)などのソノフォレーシス及びマイクロニードル又は無針注射で局所的に投与することができる。
【0151】
本明細書で提供される医薬組成物は、軟膏剤、クリーム剤、及びゲル剤の形態で提供することができる。適当な軟膏剤媒体を挙げると、ラード、白色ワセリン、及びプラスチベースなどの油性又は炭化水素基剤;親水性ワセリン、ヒドロキシステアリンスルファート、及び無水ラノリンなどの乳化可能又は吸着性基剤;親水性軟膏などの水除去可能な基剤;様々な分子量のポリエチレングリコールを含む水溶性軟膏基剤;セチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン、ラノリン、及びステアリン酸を含む油中水(W/O)型乳剤又は水中油(O/W)型乳剤のいずれかの乳剤基剤がある(Remingtonの文献:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」、上記を参照されたい。)。これらの媒体は皮膚軟化薬であるが、一般に抗酸化体及び保存剤の添加を必要とする。
【0152】
適当なクリーム剤基剤は、水中油型又は油中水型とし得る。クリーム剤媒体は、水洗可能であり、かつ油相、乳化剤、及び水相を含有することができる。該油相は、「内部」相とも呼ばれ、一般にワセリン、及びセチル又はステアリルアルコールなどの脂肪アルコールを含む。該水相は通常、必ずではないが、油相の容量を上回り、かつ一般に湿潤剤を含有する。クリーム剤製剤中の乳化剤は、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性、又は両性界面活性剤とし得る。
【0153】
ゲル剤は、半固体、懸濁剤型の系である。単一相のゲルは、液体担体中で実質的に均一に分散した有機高分子を含有している。適当なゲル化剤を挙げると、カルボマー、カルボキシポリアルキレン、Carbopol(登録商標)などの架橋したアクリル酸ポリマー;ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレン共重合体、及びポリビニルアルコールなどの親水性ポリマー;ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタラート、及びメチルセルロースなどのセルロースポリマー;トラガント及びキサンタンガムなどのガム;アルギン酸ナトリウム;並びにゼラチンがある。均一ゲルを製造するために、アルコール若しくはグリセリンなどの分散剤を添加することができ、又はゲル化剤を粉砕、機械的混合、及び/又は撹拌して分散することができる。
【0154】
本明細書で提供される医薬組成物は、坐薬、腟坐薬、ブージー剤、湿布若しくはパップ剤、ペースト剤、散剤、包帯剤、クリーム剤、硬膏剤、避妊薬、軟膏剤、液剤、乳剤、懸濁剤、タンポン、ゲル剤、泡、スプレー、又は浣腸の形態で、直腸、尿道、膣、又は膣周囲に投与することができるこれらの剤形は、上記のRemingtonの文献:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」に記載される従来の方法を用いて製造することができる。
【0155】
直腸、尿道、及び膣の坐薬は、体の開口部に挿入するために固形物であり、常温では固体であるが、体温で融解又は軟化し、活性成分を開口部内に放出する。直腸及び膣の坐薬に利用される医薬として許容し得る担体を挙げると、軟化剤などの媒体があり、本明細書で提供される医薬組成物;と重亜硫酸塩及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む本明細書記載の抗酸化体とを処方する場合、該軟化剤は、体温付近で融点を生じる。 適当な媒体を挙げると、限定はされないが、カカオバター(カカオ油)、グリセリン-ゼラチン、カルボワックス(ポリオキシエチレングリコール)、鯨ロウ、パラフィン、白及び黄ロウ、並びに脂肪酸のモノ-、ジ-、及びトリグリセリドの適切な混合物、ポリビニルアルコール、メタクリル酸ヒドロキシエチル、ポリアクリル酸;グリセリンゼラチンなどのヒドロゲルがある。様々な媒体の組み合わせが使用できる。直腸及び膣の坐薬は、圧縮法又はモールディングによって製造できる。典型的な直腸及び膣の坐薬の重量は、約2〜3gである。
【0156】
本明細書で提供される医薬組成物は、液剤、懸濁剤、軟膏剤、乳剤、ゲル化液剤、液剤用散剤、ゲル剤、眼挿入物、及び埋め込み物の形態で、眼に投与することができる。
【0157】
本明細書で提供される医薬組成物は、鼻腔内に又は吸入によって、気道に投与することができる。該医薬組成物は、加圧容器、ポンプ、スプレー、電気流体力学を用いて微細なミストを作り出す噴霧器などの噴霧器、又は噴霧吸入器を使用して送達するために、エアロゾル又は溶液の形態とし、単独で、又は1,1,1,2-テトラフルオロエタン若しくは1,1,1,2,3,3,3-ヘプタフルオロプロパンなどの適当な噴霧剤と組み合わせて提供することができる。該医薬組成物はまた、吸入用の乾燥粉末として、単独で、又はラクトース若しくはリン脂質などの不活性な担体;及び点鼻薬と組み合わせて提供することができる。鼻腔内の使用について、該粉末は、キトサン又はシクロデキストリンを含む生体接着剤を含む。
【0158】
加圧容器、ポンプ、スプレー、噴霧器、又は噴霧吸入器での使用のための液剤又は懸濁剤は、エタノール、水性エタノール、又は本明細書で提供される活性成分の分散、可溶、若しくは放出の徐放に適した別の薬剤、溶媒である噴霧剤、及び/又はソルビタントリオレアート、オレイン酸、若しくはオリゴ乳酸などの界面活性剤を含有して処方することができる。
【0159】
本明細書で提供される医薬組成物は、吸引によって送達するのに適したサイズ、例えば、50マイクロメーター以下、又は10マイクロメーター以下に微粒子化することができる。こうしたサイズの粒子は、当業者に公知の粉砕法、例えば、スパイラルジェットミル、流動層ジェットミル、超臨界流体プロセシングのナノ粒子の形成、高圧均質化、又は噴霧乾燥などを用いて製造することができる。
【0160】
インヘラー又はインサフレーターの使用のためのカプセル、ブリスター及びカートリッジは、本明細書で提供される医薬組成物;ラクトース又はデンプンなどの適当な粉末基剤;及びl-ロイシン、マンニトール、又はステアリン酸マグネシウムなどの性能改質剤の粉末混合物を含有して処方することができる。該ラクトースは、無水物又は一水和物の形態とし得る。他の適当な賦形剤を挙げるとデキストラン、グルコース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、フルクトース、スクロース、及びトレハロースがある。吸引/鼻腔内投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、更に、適当なメタノール及びレボメントールなどの香料、又はサッカリン若しくはサッカリンナトリウムなどの甘味剤を含むことができる。
【0161】
局所投与のための本明細書で提供される医薬組成物は、遅延性、持効性、脈動性、制御性、標的性、及び計画性放出を含む、即効型又は調節型放出となるように処方することができる。
【0162】
(D. 調節型放出)
本明細書で提供される医薬組成物は、調節型放出剤形として処方され得る。本明細書中の用語「調節型放出(modified release)」とは、同じ経路で投与した場合に、即効型剤形とは、活性物質の放出の速度又は場所が異なる剤形を意味する。調節型放出剤形を挙げると、遅延性、徐放性、持続性、持効性、脈動性又は周期性(pulsed-)、制御性、促進性及び速攻性、標的性、計画性放出、並びに胃滞留性剤形がある。調節型放出剤形の医薬組成物は、様々な調節型放出デバイス及び当業者に公知の方法を用いて製造することができ、限定はされないが、マトリックス制御型放出デバイス(matrix controlled release device)、浸透圧制御型放出デバイス(osmotic controlled release device)、多粒子制御型放出デバイス(multiparticulate controlled release device)、イオン交換樹脂、腸溶コーティング、多層コーティング、ミクロスフェア、リポソーム、及びこれらの組み合わせを含む。また、活性成分の放出速度も、粒子サイズ及び活性成分のポリモルフォリズム(polymorphorism)を変化させることで調節することができる。
【0163】
調節型放出の例を挙げると、限定はされないが、米国特許第3,845,770号;第3,916,899号;第3,536,809号;第3,598,123号;第4,008,719号;第5,674,533号;第5,059,595号;第5,591,767号;第5,120,548号;第5,073,543号;第5,639,476号;第5,354,556号;第5,639,480号;第5,733,566号;第5,739,108号;第5,891,474号;第5,922,356号;第5,972,891号;第5,980,945号;第5,993,855号;第6,045,830号;第6,087,324号;第6,113,943号;第6,197,350号;第6,248,363号;第6,264,970号;第6,267,981号;第6,376,461号;第6,419,961号;第6,589,548号;第6,613,358号;及び第6,699,500号がある。
【0164】
(マトリックス制御型放出デバイス)
本明細書で提供される医薬組成物の調節型放出剤形は、当業者に公知のマトリックス制御放出デバイスを用いて製造することができる(Takadaらの文献、「ドラッグデリバリー制御百科事典(Encyclopedia of Controlled Drug Delivery)」 Vol. 2, Mathiowitz編集、Wiley, 1999を参照されたい。)。
【0165】
一実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物の調節型放出剤形は、侵食性のマトリックスデバイスを使用して処方され、該マトリックスデバイスは、水-膨潤性、浸食性、又は溶解性のポリマーであり、合成ポリマー、並びに多糖及びタンパク質などの天然のポリマー及び誘導体を含む。
【0166】
侵食性のマトリックを形成するのに有用な材料は、限定はされないが、キチン、キトサン、デキストラン、及びプルラン;ガム寒天(gum agar)、アラビアガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、トラガカントガム、カラゲナン、ガティガム、グアーガム、キサンタンガム、及びスクレログルカン;デキストリン及びマルトデキストリンなどのデンプン;ペクチンなどの親水性コロイド;レシチンなどの脂質;アルギナート;プロピレングリコールアルギナート;ゼラチン;コラーゲン;及びセルロース誘導体、例えば、エチルセルロース(EC)、メチルエチルセルロース(MEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、CMEC、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、酢酸セルロース(CA)、プロピオン酸セルロース(CP)、酪酸セルロース(CB)、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAP、CAT、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、HPMCP、HPMCAS、酢酸トリメリット酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMCAT)、及びエチルヒドロキシエチルセルロース(EHEC);ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;ポリ酢酸ビニル;グリセリン脂肪酸エステル;ポリアクリルアミド;ポリアクリル酸;エタクリル酸又はメタクリル酸の共重合体(EUDRAGIT(登録商標)、Rohm America, Inc.、ピスカタウェイ、NJ);ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル);ポリ乳酸;L-グルタミン酸及びエチルL-グルタマートの共重合体;分解性乳酸-グリコール酸共重合体;ポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸;及び他のアクリル酸誘導体、例えば、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸(2-ジメチルアミノエチル)、及びメタクリル酸(トリメチルアミノエチル)クロリドのホモポリマー及び共重合体である。
【0167】
別の実施態様において、該医薬組成物は、非侵食性のマトリックスデバイスとともに処方される。活性成分は、不活性マトリックス中に溶解又は分散され、かつ主に、拡散によって、投与された不活性マトリックスを通過して放出される。非侵食性のマトリックスデバイスとしての使用に適した材料を挙げると、限定はされないが、不溶性のプラスチック、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸ブチル、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、酢酸ビニルを含有する塩化ビニル共重合体、塩化ビニリデン、エチレン及びプロピレン、ポリエチレンテレフタラートイオノマー、ブチルゴムエピクロロヒドリンゴム、エチレン/ビニルアルコール共重合体、エチレン/酢酸ビニル/ビニルアルコールターポリマー、及びエチレン/ビニルオキシエタノール共重合体、ポリ塩化ビニル、可塑化ナイロン、可塑化ポリエチレンテレフタラート、天然ゴム、シリコーンゴム、ポリジメチルシロキサン、シリコーンカルボナート共重合体(silicone carbonate copolymer)、並びに;親水性ポリマー、例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、クロスポビドン、及び架橋した部分的に加水分解したポリ酢酸ビニル;並びにカマウバワックス(camauba wax)、微結晶性ワックス、及びトリグリセリドなどの脂肪族化合物がある。
【0168】
マトリックス制御放出系において、例えば、使用するポリマーのタイプ、ポリマーの粘性、ポリマー及び/又は活性成分の粒子径、活性成分とポリマーの割合、及び組成物中の他の賦形剤によって、所望の放出速度を制御することができる
【0169】
本明細書で提供される医薬組成物の調節型放出剤形は、直接圧縮、乾式及び湿式造粒に続く圧縮、融解造粒に続く圧縮を含む、当業者に公知の方法によって製造することができる。
【0170】
(2. 浸透圧制御型放出デバイス)
本明細書で提供される医薬組成物の調節型放出剤形は、浸透圧制御型放出デバイスを使用して製造することができ、該浸透圧制御型放出デバイスには、1槽系(one-chamber system)、2槽系(two-chamber system)、非対称膜技術(asymmetric membrane technology)(AMT)、及び押出母核系(extruding core system)(ECS)が含まれる。一般に、こうしたデバイスは、少なくとも2つの成分:(a) 活性成分を含有する母核;及び(b)該母核を包む、少なくとも1つの輸送口をもつ半透膜を有する。該半透膜は、使用の水性環境から母核への水の流入を制御して、輸送口を通過する放出によって薬剤放出を生じさせる。
【0171】
活性成分に加えて、該浸透圧デバイスの母核は、使用環境から該デバイス母核への水の輸送の動力を作り出す浸透圧剤を任意に含む。浸透圧剤の一分類の水膨潤性親水性ポリマーは、「オスモポリマー(osmopolymer)」及び「ヒドロゲル」とも呼ばれ、限定はされないが、親水性のビニル及びアクリルポリマー、多糖、例えば、アルギン酸カルシウム、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリ(メタクリル酸2-ヒドロキシエチル)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリビニルピロリドン(PVP)、架橋PVP、ポリビニルアルコール(PVA)、PVA/PVP共重合体、メタクリル酸メチル及び酢酸ビニルなどの疎水性モノマーを含有するPVA/PVP共重合体、大きなPEOブロックを含有する親水性ポリウレタン、クロスカルメロースナトリウム、カラゲナン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)及びカルボキシエチルセルロース(CEC)、アルギン酸ナトリウム、ポリカルボフィル、ゼラチン、キサンタンガム、並びにグリコール酸デンプンナトリウムなどが含まれる。
【0172】
浸透圧剤の他の分類は、オスモゲン(osmogen)であり、水を吸収して、周囲の被覆の障壁を横断する浸透圧勾配に作用することができる。適当なオスモゲンを挙げると、限定はされないが、無機塩、例えば、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸カリウム、リン酸カリウム、炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムなど;糖、例えば、ブドウ糖、フルクトース、グルコース、イノシトール、ラクトース、マルトース、マンニトール、ラフィノース、ソルビトール、スクロース、トレハロース、及びキシリトールなど;有機酸、例えば、アスコルビン酸、安息香酸、フマル酸、クエン酸、マレイン酸、セバシン酸、ソルビン酸、アジピン酸、エデト酸、グルタミン酸、p-トルンスルホン酸(tolunesulfonic acid)、コハク酸、及び酒石酸;尿素;並びにこれらの混合物がある。
【0173】
異なる溶解速度の浸透圧剤を用いて、最初に活性成分が剤形から送達されるのを迅速化するのに作用することができる。例えばMannogeme EZ(SPI Pharma、ルイス、DE)などの、非晶質糖を使用して、最初の2時間でより速い送達が提供され、所望の治療効果を迅速に生じることができ、徐々にかつ断続的に残量を放出し、延長された期間かけて所望のレベルの治療効果又は予防効果を維持することができる。この場合、活性成分は、このような速度で放出され、代謝及び排泄される活性物質の量に置き換えられる。
【0174】
また、該母核は、本明細書記載の多種多様の他の賦形剤及び担体を含み、剤形の性能の向上、又は安定化若しくは加工を促進することができる。
【0175】
半透膜の形成に有用な材料を挙げると、様々なグレードのアクリル、ビニル、エーテル、ポリアミド、ポリエステル、及びセルロースの誘導体があり、これらは、生理学的に適切なpHで水-浸透性及び水-不溶性でるか、又は架橋などの化学変化によって不溶性になりやすい。被覆を形成するのに役立つ適当なポリマーの例を挙げると、可塑化、非可塑化、及び強化された酢酸セルロース(CA)、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、CAプロピオン酸、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース(CAB)、CAエチルカルバマート、CAP、CAメチルカルバマート、CAスクシナート、酢酸トリメリト酸セルロース(CAT)、CAジメチルアミノアセタート、CAエチルカルボナート、CAクロロアセタート、CAエチルオキサラート、CA メチルスルホナート、CAブチルスルホナート、CAp-トルエンスルホナート、寒天アセタート(agar acetate)、アミローストリアセタート、βグルカンアセタート、βグルカントリアセタート、アセトアルデヒドジメチルアセタート、ローカストビーンガムのトリアセタート、ヒドロキシル化エチレン-酢酸ビニル、EC、PEG、PPG、PEG/PPG共重合体、PVP、HEC、HPC、CMC、CMEC、HPMC、HPMCP、HPMCAS、HPMCAT、ポリアクリル酸及びエステル並びにポリメタクリル酸及びエステル並びにこれらの共重合体、デンプン、デキストラン、デキストリン、キトサン、コラーゲン、ゼラチン、ポリアルケン、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリビニルエステル及びエーテル、天然ワックス、並びに合成ワックスがある。
【0176】
また、半透膜は、米国特許第5,798,119号に開示されるように、疎水性の微細孔膜をすることができ、ここで、孔は実質的に気体で満たされており、かつ水性媒体に濡れることはないが、水蒸気を浸透することができる。このような疎水性であるが、水蒸気浸透性の膜は、一般に、疎水性ポリマー、例えば、ポリアルケン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリビニルハライド、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルエステル及びエーテル、天然ワックス、並びに合成ワックスである。
【0177】
半透膜の輸送口は、コーティング後に、機械的に又はレーザードリル加工によって形成することができる。また、輸送口は、水溶性の栓の侵食によって、又は母核中の圧入の間、膜の薄い部分の破裂によって、原位置で形成することができる。加えて、米国特許第5,612,059号及び第5,698,220号に開示されるタイプの非対称膜コーティング場合、コーティング工程の間に、輸送口を形成することができる。
【0178】
放出される活性成分の総量及び放出速度は、実質的に、半透膜の厚さ及び空隙率、母核の組成物、並びに輸送口の数、サイズ、及び位置によって調節することができる。
【0179】
更に、浸透圧制御型放出剤形の医薬組成物は、本明細書記載の更なる従来の賦形剤含み、剤形の性能又は加工を促進することができる。
【0180】
該浸透圧制御型放出剤形は、当業者に公知の従来法及び技術に従って製造することができる(Remingtonの文献:「薬学の科学と実務(The Science and Practice of Pharmacy)」上記;Santus及びBakerの論文、J. Controlled Release 1995, 35, 1-21;Vermaらの論文、Drug Development and Industrial Pharmacy 2000, 26, 695-708;Vermaらの論文、J. Controlled Release 2002, 79, 7-27を参照されたい。)。
【0181】
特定の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、AMT制御型放出剤形として処方することができ、これは、活性成分及び他の医薬として許容し得る賦形剤を含む母核を被覆する非対称な浸透膜を含む。米国特許第5,612,059号及びWO 2002/17918を参照されたい。該AMT制御型放出剤形は、直接圧縮、乾式造粒、湿式造粒、及び浸漬法を含む、当業者に公知の従来法及び技術に従って製造することができる。
【0182】
特定の実施態様において、本明細書で提供される医薬組成物は、ESC制御型放出剤形として処方することができ、これは、活性成分、ヒドロキシルエチルセルロース、及び他の医薬として許容し得る賦形剤を含む母核を被覆する浸透膜を含む。
【0183】
(3. 多粒子制御型放出デバイス)
本明細書で提供される医薬組成物の調節型放出剤形は、多粒子制御型放出デバイスを形成することができ、直径約10μm〜約3 mm、約50μm〜約2.5mm、又は約100μm〜約1mmの、多様な粒子剤、顆粒剤、又はペレット剤を含む。このような多粒子は、湿式及び乾式造粒、押出し/球状化、ローラー圧縮、溶融凝固、及びシードコアの噴霧コーティングを含む、当業者に公知の従来法及び技術に従って製造することができる。例えば、「多粒子の経口薬物送達(Multiparticulate Oral Drug Delivery)」;Marcel Dekker:1994;及び「製薬のペレット化技術(Pharmaceutical Pelletization Technology)」; Marcel Dekker:1989を参照されたい。
【0184】
本明細書記載の他の賦形剤を該医薬組成物に配合して、多粒子の加工及び形成を補助することができる。得られる粒子は、それら自身、多粒子デバイスを構成するか、又は腸溶ポリマー、水膨潤、及び水溶性ポリマーなどの様々な膜形成材料で被覆することができる。更に、該多粒子は、カプセル又は錠剤として加工することができる。
【0185】
(4. 標的送達)
また、本明細書で提供される医薬組成物は、特定の組織、受容体、又は治療する対象の体の他の領域を標的として処方することができ、リポソーム、再封入赤血球(resealed erythrocyte)、及び抗体ベースの送達系をふくむ。これらの例を挙げると、限定はされないが、米国特許第6,316,652号;第6,274,552号;第6,271,359号;第6,253,872号;第6,139,865号;第6,131,570号;第6,120,751号;第6,071,495号;第6,060,082号;第6,048,736号;第6,039,975号;第6,004,534号;第5,985,307号;第5,972,366号;第5,900,252号;第5,840,674号;第5,759,542号;及び第5,709,874号がある。
【0186】
(使用方法)
本明細書は、ウイルスによって引起こされる疾患を治療する、予防する、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを患者に投与することを含む。ウイルスによって引起こされる疾患の例を挙げると、限定はされないが、伝染性軟属腫感染症、HTLV感染症、HTLV-1感染症、HIV感染症(AIDS)、ヒトパピローマウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、性器ヘルペス感染症、ウイルス性下痢、インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、急性灰白髄炎、狂犬病、単核球症、エボラ、呼吸器多核体ウイルス感染症、デング熱、黄熱、ラッサ熱、アレナウイルス感染症、ブニヤウイルス感染症、フィロウイルス感染症、フラビウイルス感染症、ハンタウイルス感染症、ロタウイルス感染症、ウイルス性髄膜炎、ウエストナイル熱、アルボウイルス感染症、パラインフルエンザ、天然痘、エプスタイン-バーウイルス感染症、デング出血熱、サイトメガロウイルス感染症、新生児サイトメガロウイルス感染症、進行性多巣性白質脳症、ウイルス性胃腸炎、肝炎、口唇ヘルペス、眼単純ヘルペス、髄膜炎、脳炎、帯状疱疹、脳炎、カリフォルニアセログループウイルス感染症、セントルイス脳炎、リフトバレー熱、手足口病、ヘンドラウイルス感染症、エンテロウイルス感染症、アストロウイルス感染症、アデノウイルス感染症、日本脳炎、リンパ性脈絡髄膜炎、小児ばら疹、サシチョウバエ熱、SARS、疣贅、猫ひっかき病、伝染性紅斑、伝染性膿痂疹、バラ色粃糠疹、リッサウイルス感染症、H5N1ウイルス感染症(鳥インフルエンザ)、及びヒトパパローマウイルス(human papaloma virus)感染症がある。
【0187】
本明細書中で提供される治療方法に適したウイルスの例を挙げると、限定はされないが、アデノウイルス、アルボウイルス、アレナウイルス、アストロウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、H5N1ウイルス、ヘンドラウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、新生児サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、リッサウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ムンプスウイルス、オルフウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パラポックスウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ポリオーマウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロゼオロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス、及び黄熱病ウイルスがある。
【0188】
一実施態様において、該ウイルスは、性行為感染性である。別の実施態様において、該ウイルスは、腫瘍ウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、パポーバウイルス又は単純ヘルペスウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、ポリオーマ又はパピローマウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、ポリオーマウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、パピローマウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、ヒトパピローマウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。
【0189】
また、本明細書中に、腫瘍ウイルスによって引起こされる疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを、このような疾患を有する又は疑いのある患者に投与することを含む。
【0190】
特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、性行為感染性である。特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、パポーバウイルスである。特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、ポリオーマ又はパピローマウイルスである。特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、ポリオーマウイルスである。特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、パピローマウイルスである。特定の実施態様において、該腫瘍ウイルスは、ヒト又はウシパピローマウイルスである。
【0191】
特定の実施態様において、腫瘍ウイルスによって引起こされる疾患は、疣贅であり、これに含まれるのは、限定はされないが、足底疣贅及び性器疣贅;子宮頚部異形成;限定はされないが喉頭乳頭腫を含む再発性気道乳頭腫症;又は肛門生器の癌、例えば、頸部、肛門及び肛門周囲、外陰部、腟、並びに陰茎癌などを含むパピローマウイルス感染症と関連する癌;口腔咽頭領域及び食道癌などの頭部及び頸部癌;並びに基底細胞癌及び扁平上皮癌などの皮膚癌である。
【0192】
特定の実施態様において、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物を投与すると、投与後、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に、例えば、ウイルス価の測定など、当業者に公知の方法で測定した場合、該化合物の投与のない対象と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のウイルスの複製が低減される。
【0193】
特定の実施態様において、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物を投与すると、投与後、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、該化合物の投与のない対象と比較して、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100倍以上のウイルスの複製が低減される。
【0194】
特定の実施態様において、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物を投与すると、投与後、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、該化合物の投与のない対象と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のウイルス価が低減される。
【0195】
特定の実施態様において、治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物を投与すると、投与後、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、該化合物の投与のない対象と比較して、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100倍以上のウイルス価が低減される。
【0196】
更に、本明細書は、ウイルスの複製を阻害する方法を提供し、該方法は、ウイルスと光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグとの接触を含む。
【0197】
一実施態様において、該ウイルスは、性行為感染性である。別の実施態様において、該ウイルスは、腫瘍ウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、パポーバウイルス又は単純ヘルペスウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、ポリオーマ又はパピローマウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、ポリオーマウイルスである。特定の実施態様において、該パポーバウイルスは、パピローマウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、ヒトパピローマウイルスである。特定の実施態様において、該ウイルスは、単純ヘルペスウイルスである。
【0198】
特定の実施態様において、ウイルスと治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物とを接触すると、最初の接触から、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、このような接触のない対象と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%以上のウイルス価が低減される。
【0199】
特定の実施態様において、ウイルスと治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物とを接触すると、最初の接触から、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、このような接触のない対象と比較して、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100倍以上のウイルス価が低減される。
【0200】
特定の実施態様において、ウイルスと治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物とを接触すると、最初の接触から、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、このような接触のない対象と比較して、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%倍以上のウイルス価が低減される。
【0201】
特定の実施態様において、ウイルスと治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ;又はその医薬組成物とを接触すると、最初の接触から、1日、2日、3日、4日、5日、10日、15日、又は30日に当業者に公知の方法で測定した場合、このような接触のない対象と比較して、1、2、3、4、5、10、15、20、25、50、75、100倍以上のウイルス価が低減される。
【0202】
また、本明細書中に、対象の疾患の1つ以上の症状を治療する、予防する、又は寛解させる方法を提供し、該方法は、このような疾患を有する又は疑いのある患者に治療上有効な量の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグを投与することを含む。
【0203】
一実施態様において、該疾患は癌であり、限定はされないが、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、肝癌、子宮頸癌、結腸癌、腎癌、皮膚癌、頭部及び頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱癌、子宮癌、リンパ癌、白血病、胃癌、膵癌、精巣リンパ腫、及び多発性骨髄腫を含む。
【0204】
本明細書中に、ホスホリパーゼCの活性を阻害する方法を提供し、該方法は、ホスホリパーゼCと光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグとを接触することを含む。
【0205】
治療する疾患及び対象の症状に応じて、本明細書で提供される光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、ICV、イントラシステマル(intracistemal)注射又は注入、皮下注射又は埋め込み)、吸入、経鼻、腟、直腸、舌下、又は局所的(例えば、経皮又は局部)投与経路で投与することができ、かつ単体で、又は各投与経路に適した医薬として許容し得る担体、免疫賦活剤、及び媒体とともに適当な薬用量単位で処方することができる。
【0206】
投与量は、1日に適切な間隔で投与される1、2、3、4、5、6回以上の分割投与量の形態とし得る。該投与量又は分割投与量は、単位薬用量あたり0.1〜10ミリグラム、0.1〜5ミリグラム、又は0.1〜2ミリグラムの活性成分を含有する、薬用量単位の形態で投与することができ、かつ患者の症状が必要とする場合、該薬用量を、別の方法で、連続注入として投与することができる。
【0207】
特定の実施態様において、適切な薬用量レベルは、約0.001〜約10mg、患者の体重kgあたり、1日あたり(mg/kg/日)、約0.01〜約10 mg/kg/日、約0.01〜約1 mg/kg/日、又は約0.05〜約1 mg/kg/日であり、単一又は複数回の投与量で投与することができる。適当な薬用量レベルは、約0.001〜25 mg/kg/日、約0.001〜10 mg/kg/日、又は約0.001〜5 mg/kg/日とし得る。この範囲内で、該薬用量は、0.001〜0.005、0.005〜0.05、0.05〜0.5、又は0.5〜5.0 mg/kg/日とし得る。
【0208】
特定の実施態様において、適切な薬用量レベルは、約0.1、約0.2、約0.3、約0.4、約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7、約8、約9、約10 mg/kg/日である。
【0209】
(製品のキット/物品)
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグはまた、当業者に周知の包装材料を用いて、製造品として提供することができる。例えば、米国特許第5,323,907号;第5,052,558号;及び第5,033,252号を参照されたい。医薬品の包装材料の例を挙げると、限定はされないが、ブリスター包装、瓶、管、インヘラー、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、並びに選択した製剤並びに意図する投与及び治療方法に適した任意の包装材料がある。
【0210】
また、本明細書は、医師が使用する場合、患者への適切な量の活性成分の投与を単純化できるキットを提供する。特定の実施態様において、本明細書で提供されるキットは、容器及び光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製剤を備える。
【0211】
特定の実施態様において、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグは、本明細書記載の他の治療薬と組み合わせて投与される。他の治療薬を、同時に又は同じ投与経路で患者に投与することができる、又は投与することができない。
【0212】
特定の実施態様において、該キットは、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製剤を含む容器を備え、容器中には、1つ以上の本明細書記載の他の治療薬を含む。
【0213】
本明細書で提供されるキットは、活性成分を投与するのに使用されるデバイスを更に含むことができる。こうしたデバイスの例を挙げると、限定はされないが、シリンジ、無針注射器点滴用バッグ、パッチ、及びインヘラーがある。また、本明細書で提供されるキットは、活性成分の投与のためのコンドームを備えることができる。
【0214】
本明細書で提供されるキットは、1つ以上の活性成分を投与するのに使用される、医薬として許容し得る媒体を更に含むことができる。例えば、活性成分が、非経口投与用に再構成しなければならない固体の形態で提供される場合、該キットは、適当な媒体が密封された容器を含むことができ、該容器中で、活性成分を溶解して、非経口投与に適した滅菌溶液不要の粒子を形成することができる。医薬として許容し得る媒体の例を挙げると、限定はされないが:限定はされないが、USPで定められた注射用水、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖及び塩化ナトリウム注射液、並びに乳酸リンゲル注射液を含む水性媒体;限定はされないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びプロピレングリコールを含む水混和性の媒体;並びに限定はされないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルを含む非水性媒体がある。
【実施例】
【0215】
本明細書中の、工程、スキーム及び実施例に使用される記号及び規約は、特定の略語が明確に定義されるかどうかに構わず、現行の科学文献、例えば、Journal of the American Chemical Society又はJournal of Biological Chemistryに使用されるものと一致する。限定はされないが、具体的には、実施例及び明細書を通して下記の略語を使用し得る:g(グラム);mg(ミリグラム);L(リッター);mL(ミリリッター);μL(マイクロリッター);psi(重量ポンド毎平方インチ);M(モラー);mM(ミリモラー);μM(マイクロモラー);Hz(ヘルツ);MHz(メガヘルツ);mol(モル);mmol(ミリモル);RT(室温);hr(時間);min(分);TLC(薄層クロマトグラフィー);mp(融点);RP(逆相);Tr(保持時間);TFA(トリフルオロ酢酸);TEA(トリエチルアミン);THF(テトラヒドロフラン);TFAA(トリフルオロ酢酸無水物);CD3OD(重水素化メタノール);CDCl3(重水素化クロロホルム);DMSO(ジメチルスルホキシド);SiO2(シリカ);atm(大気圧);EtOAc(酢酸エチル);CHCl3(クロロホルム);HCl(塩酸);Ac(アセチル);DMF(N,N-ジメチルホルムアミド);Me(メチル);Cs2CO3(炭酸セシウム);EtOH(エタノール);Et(エチル);tBu(tert-ブチル);MeOH(メタノール)。
【0216】
下記実施例の全てについて、当業者に公知の標準的な後処理及び精製方法を利用することができる。特に指示しない限り、全ての温度は、℃(摂氏)で表す。全ての反応は、特に断らない限り、室温で行われた。スキーム2〜6に図示した合成方法は、特定の実施例の使用を通して適用可能な化学の例示を意図するものであり、本開示の範囲を示すものではない。
【0217】
(実施例1)
(光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの合成)
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩の合成をスキーム4及び5に図示する。
【0218】
工程1. ジシクロペンタジエン8(132.2g、1mol)及び48%の臭化水素酸(227mL)の混合物を70℃で3時間撹拌した。沈殿物を濾過し、ヘキサンで洗浄した。有機層を水層から分離し、該水層を更にヘキサンで抽出した。あわせた有機層を水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、濃縮した。残留するオイルを真空下(12mmHg)105〜113℃にて蒸留し、C-エキソブロモアルケン9(199.3g、93.5%)を無色のオイルとして得た。
【化22】

【0219】
工程2. 酢酸エチル(200mL)中C-エキソブロモアルケン9の溶液に10%のPd/C(2g)を添加した。該混合物を50psiで一晩、水素化した。触媒を濾過して除去し、該反応溶液を濃縮した。残留するオイルを真空下(12mmHg)112〜118℃にて蒸留し、C-エキソブロモアルカン10(196.53g、98%)を無色のオイルとして得た。
1HNMR(CDCl3)δ:0.85-0.21(14H,m),3.85-3.95(1H,m).
【0220】
工程3. 無水tBuOH(400mL)中、tBuOK(75.74g、0.675mol)の懸濁液に、無水THF(100mL)中、C-エキソブロモアルカン10(96.81g、0.45mol)の溶液を、室温にて撹拌しながら滴加した。該混合物をアルゴン下で一晩還流した。冷却後、該反応混合物を水(800mL)で希釈し、ヘキサンで抽出した。あわせた有機層を無水MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。残留するオイルを真空下(15mmHg)58〜63℃にて蒸留し、C-エキソアルケン5(38.62、64%)を無色のオイルとして得た。
【化23】

【0221】
工程4. トリス-(ジベンジリデンアセトン)-二パラジウム(0)(Pd2dba3)とCHCl3付加物(41mg、0.04mmol)、R-(+)-MOP(74mg、0.16mmol)、及びC-エキソアルケン5との混合物を5分間超音波処理し、続いて、浴槽温度0℃にてアルゴン下で撹拌しながらトリクロロシラン(1mL、9.6mmol)を滴加した。本反応に使用する式IIの特異的キラル単座ホスフィン配位子は、R5が-OCH3、かつR6及びR7がフェニルのR配置を有する。次いで、該混合物を同じ温度で一晩撹拌した。該反応混合物をヘキサンを滴加して希釈し、濾過し、ヘキサンで洗浄した。あわせた有機物を濃縮して、無色のオイルである、粗製の光学活性なSi-エキソ/C-エキソ有機シラン6が得られ、これを更に精製することなく次の工程に直接使用した。
【0222】
工程5. 氷浴で冷却した、THF(10mL)及びMeOH(10mL)中の粗製Si-エキソ/C-エキソ有機シラン6、KHCO3(5.82g)及びKF(2.25g)の混合物に、30%の水性H2O2(5.1mL)を撹拌しながら滴加した。一晩撹拌した後、該反応混合物をCHCl3で抽出した。あわせた有機層を水で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、濾過し、濃縮した。粗製生成物をシリカクロマトグラフで精製して、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソアルカノール7(954mg、79%)を無色のオイルとして得た。
【化24】

【0223】
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソアルカノール7の鏡像体過剰率(e.e.)及びエキソ/エンド比を下記のように、該分子からカルバマートへ変換することによって測定した。THF(5mL)中の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソアルカノール7(91mg、0.6mmol)の溶液に、3,5-ジニトロフェニルイソシアナート(150mg、0.72mmol)を添加した。該反応混合物を室温で3時間撹拌した。溶媒を除去後、残渣をシリカクロマトグラフィーで精製して、対応するカルバマート(84mg)を黄白色の非晶質体として得た。
HPLC(化学的純度):99.2%;HPLC(光学純度):83% e.e.;MS(ESI)m/z:360(M-1);エキソ/エンド比:99%より大きい。
【0224】
また、触媒及び他の反応条件を変更して、不斉ヒドロシリル化反応を最適化した。結果を表1に要約する。
【表1】

a. トリクロロシランの添加前に、Pd2dba3-CHCl3付加物、(R)-MOP、及び化合物5の混合物を5分間超音波処理した。
b. 化合物5の添加前に、Pd2dba3-CHCl3付加物、(R)-MOP、及びトリクロロシランの混合物を5分間超音波処理した。
c. 化合物5及びトリクロロシランの添加前に、CHCl3中のPd2dba3-CHCl3付加物と(R)-MOPとの混合物を5分間超音波処理して、溶媒を除去した。
d. トリクロロシランの添加後に、内部温度をトリクロロシランの沸点を上回るまで上昇した。
【0225】
工程6. 氷浴で冷却した、無水THF(2mL)中の光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソアルカノール7(79.5mg、0.52mmol、78%e.e.)の溶液に、tBuOK(53mg、0.47mmol)を撹拌しながら滴加し、続いて、無水THF(3mL)中のCS2(40mg、0.53mmol)の溶液を滴加した。該混合物を室温で一晩撹拌した。溶媒を除去後、残渣をEt2Oで粉末化し、乾燥して、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩(99mg、71%)を黄白色の固体として得た。
【化25】

【0226】
(実施例2)
(光学活性なO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの合成)
光学活性な(+)-及び(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩の合成をスキーム6〜8に図示する。
【0227】
工程1. H2SO4(25重量%、150mL)中のクロペンタジエン8(50g)を、窒素下にて107℃で5時間、機械的に撹拌した。室温まで冷却した後、該反応混合物を水層及び有機層に分離した。該有機層を水層から分離し水で洗浄し、t-ブチルメチルエーテル(250mL)で希釈し、真空中で濃縮して、アルケノール12(55g、100%)を無色のオイルとして得た。
【0228】
工程2. エタノール(600mL)中のアルケノール12(200g)とPd/C(3.75重量%、7.5g)との混合物をオートクレーブに入れた。該混合物を水素下(5bars)室温にて一晩撹拌した。反応を1HNMRで監視した。反応完了後、セライト(400g)を通して該反応混合物を濾過し、真空中で濃縮して、アルカノール7(200g、100%)を無色のオイルとして得た。
【0229】
工程3. ピリジン(8mL)中のアルカノール7(2g)の溶液に、無水酢酸(1.35mL)及びジメチルアミノピリジン(290mg)を窒素下で添加した。該混合物を50℃で3.5時間撹拌した。塩酸(2M、30mL)で中性化した後、該反応混合物をCH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空中で濃縮して、エステル13(2g)を黄白色のオイルとして得た。
【0230】
工程4. t-ブチルメチルエーテル(0.2mL)と0.1MのKH2PO4緩衝液pH7(1mL)との混合物中のエステル13(20mg)を、表2に記載した3つの酵素の1つ(2mg)の存在下で、一晩、振盪機上で撹拌した。3つの酵素の全ては、Mann Associates社(ロンドン、UK)から入手した。これらの酵素は、(+)エステル13を選択的に加水分解し、これによって、光学活性な(+)アルカノール7及び(-)エステル13を生成する。これらの光学純度を、Holscherらの論文(Helv. Chim. Acta 2004, 87, 1666-1680)に記載のキラルGCによって分析した。その結果を表2に要約する。
【表2】

【0231】
工程5. (-)-エステル13(25g)をメタノール(150mL)に溶解した。NaOH水溶液(4M、65mL)を添加し、該混合液を22℃で60分間撹拌した。該反応混合物を減圧下で濃縮し、残渣を水(100mL)及びtert-ブチルエーテル(100mL)間で分配した。水層をメチルtert-ブチルエーテル(100mL)で抽出し、あわせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥した。溶媒を減圧下で除去して、(-)アルカノール7(19.9g)を得た。
【0232】
工程6. THF(10mL)中のナトリウムt-ブトキシド(1.6g)の溶液に、光学活性な(-)-アルカノール7を添加し、続いて、二硫化炭素(1.5g)を滴加した。次いで、該反応混合物を、室温で一晩保持した。該反応混合物を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄して、光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩を得た。
【0233】
同じ手順を用いて、光学活性な(+)-アルカノール7もまた、光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩に変換した。
【0234】
(実施例3)
(光学活性なO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの合成)
光学活性な(+)-及び(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aのカリウム塩の合成をスキーム6及び7に図示する。
【0235】
工程1. ピリジン(8mL)中のアルカノール12(2g)の溶液に、無水酢酸(1.35mL)及びジメチルアミノピリジン(290mg)を窒素下で添加した。該混合物を50℃で3.5時間撹拌した。塩酸(2M、30mL)で中性化した後、該反応混合物をCH2Cl2で抽出した。あわせた有機層を無水Na2SO4で乾燥し、真空中で濃縮して、不飽和エステル11(2g)を黄白色のオイルとして得た。
【0236】
工程2. t-ブチルメチルエーテル(0.2mL)と0.1MのKH2PO4緩衝液pH7(1mL)との混合物中のエステル11(20mg)を、表2に記載した加水分解酵素の1つ(2mg)の存在下で、一晩、振盪機上で撹拌した。3つの酵素の全ては、Mann Associates社(ロンドン、UK)から入手した。これらの酵素は、(+)-エステル11を選択的に加水分解し、これによって、光学活性な(+)アルカノール12及び(-)エステル11を生成する。これらの光学純度を、Holscherらの論文(Helv. Chim. Acta 2004, 87, 1666-1680)に記載のキラルGCによって分析した。その結果を表3に要約する。
【0237】
工程3. メタノール(50mL)中の(-)エステル11に、炭酸カリウム(21.6g)を窒素下で添加した。該混合物を室温で一晩撹拌し、アセタートが消失するまで、TLC(CH2Cl2、PMA染色)で監視した。水(30mL)及びメチルtert-ブチルエーテル(30mL)を添加した。水層をメチルtert-ブチルエーテル(3x20mL)で抽出し、あわせた有機層をNa2SO4で乾燥し、蒸発乾固して、(-)アルケノール12(7.6g、98%)を得た。
【0238】
工程4. エタノール(40mL)中の(-)12(7.6g)をオートクレーブに入れた。Pd/C(3.75% w/w、285mg)を添加し、該混合物を室温にてH2下(5bars)で撹拌した。該反応が完了するまで、1HNMRで監視し、次いで、セライト(5g)を通して濾過し、変換して暗いオイルである(-)7(7.8g)を得た。
【0239】
工程5. 光学活性な(+)-及び(-)-アルカノール7を、本明細書に記載の手順を使用して、光学活性な(+)-及び(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aカリウム塩に変換した。
【表3】

【0240】
(実施例4)
(光学活性なO-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aの合成)
工程1. アルコール+/-12の合成。シクロペンタジエン8(50g)を25% w/wのH2SO4(150mL)中、107℃で5時間、窒素下で加熱した。該反応物を冷却し、層を分離した。有機層を水で洗浄し、tert-ブチルメチルエーテル(250mL)で希釈した。次いで、該tert-ブチルメチルエーテルを真空中で減少させて、アルコール+/-12(55g、100%)を得た。
【0241】
工程2. アセタート+/-11(R9=Me)の合成。アルケノール+/-12(537g)に無水酢酸(340mL)、トリエチルアミン(490mL)、及びN-メチルイミダゾール(2.5mL)を添加した。該混合物を50℃で2.5時間撹拌し、次いで、tert-ブチルメチルエーテル(540mL)及び2MのHCl(490mL)を添加した。層を分離し、水層をtert-ブチルメチルエーテル(540mL)で2回抽出した。あわせた有機層を5%のNaHCO3(270mL)、鹹水(540mL)で洗浄し、濃縮してアセタート+/-11(R9=Me)(590g、96%)を得た。
【0242】
工程3. アセタート+/-13(R9=Me)の合成。エタノール(1500mL)中のアセタート+/-11(R9=Me)(600g)を、Pd/C(20g)を用いて、3barにて25℃で2時間、水素化した。完了次第(GCで判断)、反応媒体をセライトを通して濾過し、濃縮してアセタート+/-13(R9=Me)(606g)を得た。
【0243】
工程4. アセタート+/-13(R9=Me)のバイオレゾリューション(bioresolution)。リン酸カリウム二塩基性(potassium phosphate dibasic)(82.5g)を水(6L)に添加し、30分間撹拌し、次いで、2MのNaOHを用いてpHをpH7に調節した。該溶液を35℃まで温め、+/-13(R9=Me)を一度に添加し、続いて、酵素AEOl5(300g)及び0.1Mのリン酸カリウム二塩基性緩衝液(1L)を添加した。GCで反応の完了を判断して、、塩化ナトリウム(50g)及びトルエン(2.5L)を添加した。該混合物を5分間撹拌し、分離させて、水相をトルエンに抽出した(2x2.5L)。あわせた有機層を鹹水(2.5L)で洗浄し、次いでセライト(400g)を通して濾過した。有機層の濃縮によって、アセタート-13(R9=Me)(96g)及びアルカノール+7(197g)を含有する粗製物質(480g)を得た。
【化26】

【0244】
工程5. フタラート+14形成及びアセタート-13(R9=Me)の単離。ピリジン(107 mL)に、バイオレゾリューション工程由来の不要なアルコール+7と所望のアセタート-13(R9=Me)との混合物を添加した。次いで、無水フタル酸(65g)及びN,N-ジメチルアミノピリジン(4.3g)を添加し、60℃で5時間加熱して反応させた。10℃まで冷却して、2MのHCl(214mL)を滴加して、内部温度を20℃未満に保持した。tert-ブチルメチルエーテル(214mL)を添加し、5分間撹拌した。有機層を分離し、2MのHCl(214mL)で洗浄した。あわせた水性画分をtert-ブチルメチルエーテル(214mL)に抽出させた。有機画分を1MのNaOH(2x214mL)、鹹水(214mL)で洗浄し、濃縮して乾燥し、アセタート-13(R9=Me)(49.1g)を得た。
【0245】
工程6. 異性体の不純物を含有するアルカノール-7の合成。水酸化ナトリウム(11.8g)をメタノール(260mL)中のアセタート-13(R9=Me)(52g)に、窒素雰囲気下で添加した。25℃で2時間撹拌して反応させ、メタノールを蒸留し、次いで、tert-ブチルメチルエーテル(75mL)及び水(75mL)を添加した。該混合物を5分間撹拌した。層を分離して、更に水(2x75mL)を加えた。鹹水(75mL)を添加し、該混合物を5分間撹拌し、次いで、塩化アンモニウム(75mL)を加え5分間撹拌した。層を分離して、有機層を濃縮してアルカノール-7(37.1g)を得た。
【化27】

【0246】
工程7. p-ニトロ安息香酸-15の合成。アルカノール-7(39.8g、副生成物及び異性体が混入)を130mLのピリジン(130mL)に溶解した。ジクロロメタン中のp-ニトロベンゾイルクロリド(231g)25% w/w溶液を滴加すると同時に、氷浴で該混合物を冷却した。22℃で18時間、撹拌を続けた。水(130mL)の添加の後、該混合物を60分間撹拌した。メチルtert-ブチルエーテル(1L)を添加し、該混合物を2MのHCl水溶液(1L)で洗浄した。有機層をNaHCO3(aq.)及び鹹水で洗浄し、乾燥した(Na2SO4)。減圧下で溶液を蒸発させ、褐色の固体である粗製のp-ニトロ安息香酸エステル-15(84.4g)を得た。粗製のp-ニトロ安息香酸エステル-15(84.4g)をイソプロパノール(400mL)中で、還流するまで加熱した。該混合物を5時間以内で22℃まで冷却し、45℃でシードした(seed)。22℃で更に2時間後、該混合物を濾過した。湿ったケーキをイソプロパノール(50mL)、次いでヘキサン(50mL)で洗浄した。空気乾燥後、ジアステレオな、かつエナンチオピュアな-15(43.4g)を、化学的に得た。母液の残留物を同じ方法で、イソプロパノール(190mL)からもう一度結晶化して、第2回目の純粋な-15(13.1g)を得た。
【0247】
工程8. 純粋な-7の合成。精製したp-ニトロ安息香酸エステル-15(142g)をメタノール(1.4L)中で60℃まで加熱した。4MのNaOH水溶液(360mL)を添加し、該混合物を22℃で60分間撹拌した。次いで、減圧下でメタノールの大部分を蒸留させた。残渣を水(250mL)及びメチルtert-ブチルエーテル(250mL)との間で分配した。水層をメチルtert-ブチルエーテル(150mL)でもう一度抽出した。あわせた有機抽出物をNa2SO4で乾燥させた。溶媒を減圧下で除去し、アルカノール-7(57.4g)を無色のオイルとして得た。
【0248】
工程9. 光学活性な(+)-及び(-)-アルカノール7を本明細書記載の手順を用いて、光学活性な(+)-及び(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1Aに変換した。
【0249】
(実施例5)
(ホスファチジルコリン-特異的ホスホリパーゼCの阻害)
Invitrogen社(カールスバート、CA)より入手したAmplex Redホスファチジルコリン-特異的ホスホリパーゼC(PC-PLC)アッセイキットを使用して、光学活性な(+)-及び(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A((+)-及び(-)-鏡像異性体1A)のカリウム塩のホスファチジルコリン-特異的ホスホリパーゼCに対する阻害活性を、D609及びラセミ体のO-エキソ/C-エキソキサントゲン酸1A(ラセミ体1A)のカリウム塩とともに評価した。D609は、Sigma Aldrich社から入手した。
【0250】
Amplex Redの原液(〜20mM)、使用反応緩衝液、及び西洋ワサビペルオキシダーゼ原液(200U/mL)、H2O2使用溶液(20mM)、コリンオキシデート(oxidate)原液(20U/mL)、アルカリホスファターゼ原液(400U/mL)、及びB. cereus PC-PLC原液(10U/mL)をアッセイキットの説明書に従って調製した。また、各被験化合物の原液(100mg/mL)も、実験開始の2時間前に、該化合物を溶解して調製した。
【0251】
200μLのAmplex Red試薬の原液、100μLのHRP原液、200μLのアルカリホスファターゼ原液、100μLのコリンオキシダーゼ原液、及び78μLのレシチン溶液を9.32μLの使用反応緩衝液に添加して、使用するAmplex Red/HRP/レシチン溶液を調製した。PC-PLC溶液(0.2U/mL)をPC-PLC原液を、反応緩衝液で所望の濃度に希釈して調整した。
【0252】
一連の濃度の被験化合物(25μL)を、96ウェルプレートにピペットで移した。非阻害のPC-PLC対照及び無-PC-PLC対照に、25 μLの水を加えた。50μLのAmplex Red/HRP/レシチン使用溶液の添加後、25μLのPC-PLC溶液を各ウェルに添加して、反応を開始した。無-PC-PLC対照には、PC-PLC溶液の代わりに、 25μLの水を添加した。該実験は3組で行った。該反応は、遮光して行った。37℃で30分のインキュベーション後、蛍光マイクロプレートリーダーで励起光550nm及び発光検出590nmを用いて、該反応を測定した。得られた蛍光データは、無-PC-PLC対照から得られた値を引いて、バックグランドの蛍光の補正を行った。次いで、各被験化合物についてIC50値を算出した。該結果を表4に要約する。
【表4】

【0253】
(実施例6)
(ウシパピローマウイルス(BPV)の阻害)
Amtmannらの論文(Exp. Cell. Res. 1985, 161, 541-550)に記載される、インビトロでのBPV-感染ハムスター胎仔線維芽細胞(HEF)の細胞増殖アッセイを用いて、光学活性な(+)-及び(-)-鏡像異性体1Aのウシパピローマウイルスに対する阻害活性を、D609及びラセミ体1Aのカリウム塩とともに評価した。結果を表5に要約する。
【0254】
簡潔には、ハムスター胎仔線維芽細胞、及びウシパピローマウイルス1型(BPV-l)-形質変換HEF(HEF-BPV)をイーグル基礎培地で生育した。10%のウシ胎仔血清を含有するpH6.8の細胞培地中、1プレートあたり0.5x106個の細胞密度で、BPB-HEP及びHEFを、96-ウェルプレートに播種した。次いで、該プレートを5%のCO2の存在下、湿度100%、37℃でインキュベートした。6時間後、プレート上の細胞培地を、一連の濃度の被験化合物を含有する新鮮なDMEM細胞培地と交換した。該プレートを37℃で更に72時間インキュベートした。次いで、プレート中の細胞をPBSで洗浄し、0.9%のNaClを含有する3%のホルムアルデヒド溶液で1分間固定し、水で10秒洗浄し、一晩乾燥させた。検出のために、該プレートをクリスタルバイオレット溶液で室温にて5分間染色し、水で5回洗浄し、室温で一晩乾燥させた。エタノール/酢酸(99:1、v/v、100mL)を各ウェルに添加した後、該プレートをELISAリーダーを使用して585nmで測定した。
【表5】

【0255】
(実施例7)
(ヒトパピローマウイルス(HPV)の阻害)
光学活性な(-)-鏡像異性体1Aのヒトパピローマウイルスに対する阻害活性を、HPV-31-感染CIN612 9E角化細胞を用いて評価した(Meyersらの論文、Science 1992, 257, 971-973)。
【0256】
(a. 短期研究)
細胞増殖に対する効果。1x106個のマイトマイシンC処理した3T3細胞(1x104細胞/ウェル)を含有する、96-ウェルプレートに、E培地中1プレートあたり0.5x106細胞(0.5x104細胞/ウェル)の密度で、HPV-31感染細胞を播種した。該プレートをCO2インキュベーター中、5%のCO2下、37℃、湿度100%で6時間インキュベートした後、細胞培地を除去し、0.85g/LのNaHCO及び一連の濃度(0、0.5、1、2、4、8、16、32、64、及び128μg/mL)の被験化合物、又は陽性対照(200IU/mLのインターフェロンγ)を含有する、新鮮なE培地を加えた。再蒸留H2O中100mg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aの原液を、アッセイの1時間以上前に調製し、使用まで氷上で保管した。全ての試料を各濃度で4組試験した。未処理の細胞の1つの96ウェルプレートを、被験化合物又は対照で処理した細胞と同じ時点で固定した。該プレートをCO2インキュベーター中、37℃で72時間インキュベートした。該細胞培地をデカントによって除去した後、PBS中に0.5mMのEDTAを含有する溶液(100μL/ウェル)で2回、及びPBS(100μL/ウェル)で洗浄して、線維芽細胞フィーダーを除去した。ホルムアルデヒド(3%、100μL/ウェル)を該プレートに添加した。5分後、ホルムアルデヒドをデカントし、該プレートを吸い取り紙上に上下逆にして、一晩室温で乾燥させた。0.1mLのクリスタルバイオレット溶液を各ウェルに添加して、細胞を染色した。室温で5分間のインキュベートの後、該クリスタルバイオレット溶液をデカントし、該プレートを3Lの新鮮な水に水浸して、5回洗浄した。使用のクリスタルバイオレット溶液を、最初にエタノール中に溶解して10%の濃度にし、次いで、該エタノール溶液を再蒸留H2Oで希釈して(1:20)調製した。該プレートを吸い取り紙上に上下逆さまにして一晩乾燥させた後、0.1mLのエタノール/酢酸(99:1)を各ウェルに添加し、595nmの光学密度をELISAリーダーで測定した。
【0257】
被験化合物又は対照の濃度に対する成長をプロットして、用量反応曲線を作成した。結果を図1及び図2に示す。該用量反応曲線の、用量反応曲線と非阻害の成長の50%に対応するx軸に平行の直線とが交わる点から、IC50値を決定した。光学活性な(-)-鏡像異性体1Aは、16μg/mLのEC50を示したが、陽性対照(INF-γ)は、HPV-31感染CIN612 9E角化細胞の成長に、200UI/mLで、約50%の阻害を示した。
【0258】
HPV-31特異的DNA及びRNAに対する効果。新鮮なE培地及び1x106個のマイトマイシンC処理したJ2 3T3線維芽細胞フィーダーを含有する14.5cmのディッシュに、HPV-31感染細胞(3x106個)を分注した。6時間後、0.85 g/LのNaHCO3及び一連の濃度(0、0.5、1、2、4、8、16、及び32μg/mL)の被験化合物を含有する新鮮な培地を加えた。全ての試料を、各濃度で2回試験した。37℃で72時間のインキュベーション後、該フィーダー細胞を4mMのEDTAで取除き、次いで、DNA及びRNAを単離した。該単離したDNA及びRNAを、HPV-31の特定配列のゲルでサザンブロット及びノーザンブロットして解析した。HPV-非感染の陰性対照として、ヒトA431上皮癌細胞を使用した。X線フィルムをスキャンし、HPV-31特異的DNA及び主要なmRNA種の光学密度を調べた。
【0259】
被験化合物の濃度に対する積算値をプロットして、用量反応曲線を作成した。結果を図2に示す。該用量反応曲線の、用量反応曲線と非阻害の成長の50%に対応するx軸に平行の直線とが交わる点から、IC50値を決定した。光学活性な(-)-鏡像異性体1Aは、HPV-31特異的RNA発現の阻害において、10.7μg/mLのIC50を示した。対照RNA(アクチン特異的RNA)の発現は、32μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aの高濃度で作用しただけであった。HPV-31特異的DNAの阻害において、光学活性な(-)-鏡像異性体1Aは、32μg/mLで37.5%の阻害を示した。
【0260】
(b. 長期研究)
新鮮なE培地及び1x106個のマイトマイシンC処理した3T3線維芽細胞フィーダーを含有する14.5cmのディッシュに、HPV-31感染細胞(3x106個)を分注した。該ディッシュをCO2インキュベーター中、5%のCO2下、37℃、湿度100%でインキュベートした。HPV-非感染の陰性対照として、ヒトA431上皮癌細胞を使用した。6時間のインキュベーション後、細胞培地を除去し、0.85 g/LのNaHCO3及び10及び3.3μg/mLの濃度の被験化合物、又は対照(200IU/mLのインターフェロンγ)を加えた。各濃度について、4つのディッシュを用意した。該ディッシュをCO2インキュベーター中、37℃でインキュベーションした。72時間ごとに、培地を各濃度の被験化合物又は対照を含有する新しいE培地と置換えた。7日後、又は未処理の細胞がコンフルエントになった時、DNA/RNA抽出のために各群の1つのディッシュを回収し、続いて、サザン/ノーザンブロット解析を行い;かつ1つのディッシュをトリプシン処理し、細胞の数を測定し、細胞を3つの新しいディッシュに播種し、上記のように処理及び培養した。この手順を9継代繰返した。こうした継代中、細胞の形態及び細胞密度を監視した。
【0261】
細胞増殖に対する効果。回収したディッシュ中の細胞の数を、ノイバウエル型血球計で測定した。継代ごとに増殖率を測定した。継代の最終での各培地の細胞の数を、各継代の最初に播種した細胞の数で割った。被験化合物で処理した角化細胞の成長が停止した時、終点に達する。細胞成長の停止は、1以下の増殖率と定義した。
【0262】
未処理のCIN612 9E細胞の成長は、9継代を通してある程度一定であった。増殖率の変動は2.7〜3.9の間であった。観察期間中、生存率の低下は見られなかった。対照的に、全ての被験化合物による処理は、細胞成長に作用した(図3)。
【0263】
INF-γで処理すると、最初の細胞継代中、高い比率の細胞死となり、1未満の増殖率(0.8)となる。しかし、増殖率は第2継代で急速に増加し(2.4)、さらに3継代でそのレベルを保ち、残り4継代間に1.9〜1.5の間に減少する。しかし、該減少は、累積的ではなかった。
【0264】
CIN612 9E細胞を、濃度3.3μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理すると、成長速度が減少した。増殖率は、2.9(第1継代)〜1.1(第9継代)に減少した。つまり、細胞は第9継代後、ほぼ成長が停止した。
【0265】
CIN612 9E細胞を、濃度10μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理すると、細胞増殖が大きく減少した。増殖率は、最初の5継代の間に、未処理の細胞の3から2〜2.5の値まで減少した。第5継代以後、急激で累積的な増殖率の減少が見られた(第5継代:2.4、第6継代1.3、第9継代:0.1)。第7継代から、増殖率は、1より小さくなり、これは、細胞が死んでいることを示唆している。
【0266】
相対的に、対照のA431細胞(上皮癌細胞)の成長は、9継代を通して、ほぼ一定であるか、又はCIN 9E細胞と比較して小範囲で減少した(図4)。光学活性な(-)-鏡像異性体1AとIFN-γのどちらにも処理されていない対照のA431細胞の増殖率は、3.5〜4.7であった。200IU/mLのINF-γによるA431細胞の処理は、細胞成長において、顕著な影響を示さなかった。増殖率は、9継代を通して、3.7〜4.6であった。光学活性な(-)-鏡像異性体1AによるA431細胞の処理は、僅かな影響だけを示した。濃度3.3μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理すると、細胞成長を僅かに阻害した。増殖率は、3.1〜4.2で変動した。累積的な効果はなかった。濃度10μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aによる処理もまた、細胞成長を僅かに阻害した。増殖率は、2.8〜3.5で変動した。累積的な効果はなかった。
【0267】
第5継代から、10μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理したCIN 612 9E細胞の形態に顕著な変化が観察された(図5A及び5B)。未処理のCIN 612 9E細胞の十字模様の代わりに、細胞は非形質転換の角化細胞のように、より組織化して成長した光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理したCIN 612 9E細胞は、培養が集密度まで成長した場合、接触を阻害されたが、一方未処理のCIN 612 9E細胞は、集密度に達した後も、蓄積し、成長を止めなかった。加えて、光学活性な(-)-鏡像異性体1Aで処理したCIN 612 9E細胞は、平面の丸形となったが、未処理のCIN 612 9Eは、紡錘型を維持した。
【0268】
HPV-31特異的DNA及びRNAに対する影響:DNA及びRNAは、HPV-31の特定配列のゲルをサザンブロット及びノーザンブロットして解析した。X線フィルムをスキャンし、HPV-31特異的DNA及び主要なmRNA種の光学密度を調べた。それぞれの処理用量の継代の数に対して、積算値をプロットして時間曲線を作成した。該時間曲線の、時間曲線と非処理の対照試料の全体の50%に対応するx軸に平行の直線とが交わる点から、T50(対照の50%までレベルが減少するのに要する時間)を測定した。
【0269】
結果を図6及び7に示し、表6に要約する。3.3μg/mL若しくは10μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1A、又は200IU/mLのINF-γで処理した細胞は、全て、HPV-31特異的DNA及びRNA内容物の連続的な減少を示した(表6)。最も効果的な処理は、10μg/mLの光学活性な(-)-鏡像異性体1Aであった。細胞あたりのウイルスゲノムの数は、単一継代後に、50%以上減少し(T50DNA<1かつT50RNA<1)、かつ6継代後に5%より少なくなるまで減少した。第9継代後は、ウイルスのDNA及びRNAは、ほとんど検出できなかった(1%未満)。
【表6】

1 HPV-31特異的RNAの量が50 %減少するのに必要な継代数。
2 HPV-31特異的DNAの量が50 %減少するのに必要な継代数。
【0270】
(実施例8)
(単純ヘルペスウイルス2型(HSV-2)の阻害)
単純ヘルペスウイルス2型に対する光学活性な(+)-及び(-)-鏡像異性体1Aのカリウム塩の阻害活性及び細胞毒性を、D609、ラセミ体1Aのカリウム塩、及びアシクロビルとともに評価した。結果を表6に要約する。
【0271】
Calu-6細胞及びRITA細胞を、10%のウシ胎仔血清を含有するDMEM細胞培地で、CO2インキュベーター中、5%のCO2下、37℃、湿度100%にて培養した。
【0272】
細胞毒性試験について、Calu-6細胞を96ウェルプレートに、DMEM細胞培地中、1プレートあたり3x106細胞の密度で播種した。該プレートを、5%のCO2の存在下、37℃で24時間、インキュベートした。プレート中のDMEM細胞培地を、一連の濃度の被験化合物を含有する、新鮮なDMEM細胞培地と交換した。該プレートを、5%のCO2の存在下、37℃で48時間、インキュベートした。次いで、該プレートをPBSで洗浄し、0.9%のNaClを含有する3%のホルムアルデヒド溶液で1分間固定させ、10秒間洗浄し、かつ一晩乾燥させた。検出のために、該プレートを室温で5分間、クリスタルバイオレット溶液で染色し、水で5回洗浄し、かつ室温で一晩乾燥させた。エタノール/酢酸(99:1、v/v、100mL)をウェルに添加した後、該プレートを、ELISAリーダーを使用して、595nmで測定した。化合物濃度に対して光学密度値の平均をプロットし、各被験化合物の用量反応曲線を得た。該用量反応曲線から得られたLD50値を、表5に要約する。
【0273】
HSV-2阻害について、Calu-6細胞を96ウェルプレートに、DMEM細胞培地中、1プレートあたり3x106細胞の密度で、播種した。該プレートを、5%のCO2の存在下、37℃で24時間、インキュベートした。該プレート中のDMEM細胞培地を取除き、1ウェルあたり50プラーク形成単位で、細胞を単純ヘルペスウイルス2型に感染させた。37℃で60分間のインキュベーション後、一連の濃度の被験化合物を含有するDMEM細胞培地を添加した。該プレートを、5%のCO2の存在下、37℃で48時間、インキュベートした。該プレートを、更に分析前に、-20℃で凍結させた。室温で解凍後、各ウェルの上澄みを、4℃で5分間、18,000gで遠心して、感染性ウイルス粒子を含有する上澄みを作成した。試験前に、該上澄みを更に希釈した。
【0274】
RITA細胞を、24ウェルリンブラ(Linbra)プレートに、2mLのDMEM 細胞培地中、1プレートあたり4x106細胞の密度で播種した。該プレートを、5%のCO2の存在下、37℃で24時間、インキュベートした。細胞培地を除去後、0.1mLの希釈した上澄みを添加し、かつ該プレートを37℃で48時間インキュベートした。10%のウシ胎仔血清及び0.5%メチルセルロースを含有するDMEM細胞培地を添加し、かつ該プレートを37℃で1時間インキュベートした。次いで、該プレートをPBSで洗浄し、0.9%のNaClを含有する3%のホルムアルデヒド溶液で1分間固定させ、10秒間洗浄し、かつ一晩乾燥させた。検出のために、次いで、該プレートを室温で5分間、クリスタルバイオレット溶液で染色し、水で5回洗浄し、かつ室温で一晩乾燥させた。プラークの数を肉眼で測定した。次いで、1ウェルあたりのプラーク数に希釈率を掛けた。化合物濃度に対するプラーク数/0.1mLをプロットして、用量反応曲線を得た。また、LD50をIC50で割って、各化合物について治療係数を算出した。
【表7】

【0275】
(実施例9)
(局所製剤)
軟膏剤:
【表8】

【0276】
活性成分、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、及びヴァスリン(vasline)を均一になるまで混合する。
【0277】
(実施例10)
(局所製剤)
軟膏剤:
【表9】

【0278】
活性成分、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ、並びにヴァスリン及びコレステロールを均一になるまで混合する。
【0279】
(実施例11)
(局所製剤)
軟膏剤:
【表10】

【0280】
活性成分、(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物、並びにヴァスリン及びコレステロールを均一になるまで混合する。
【0281】
上記に定める実施例は、実施態様の製造及び使用方法の完全な開示及び説明を当業者に提供し、本開示の範囲の限定を意図するものではない。本開示を実施するための当業者には明らかな上記方法の変更が、下記特許請求の範囲内で行われることを意図している。本明細書で引用する全ての刊行物、特許、及び出願特許は、これらの刊行物、特許、又は出願特許のそれぞれが、参照により本明細書に組み込まれることを、具体的かつ個々に示されるように、参照により本明細書に組み込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、若しくは溶媒和物。
【請求項2】
塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
カリウム、ナトリウム、又はリチウム塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
カリウム塩である、請求項1記載の化合物。
【請求項5】
約80%以上の鏡像体過剰率を有する、請求項1〜4のいずれか一項記載の化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物、及び1つ以上の医薬として許容し得る賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項7】
経口、局所、又は親の投与のために処方される、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
カプセル剤又は錠剤として処方される、請求項6又は7記載の医薬組成物。
【請求項9】
単一用量で提供される、請求項6〜8のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物を、対象に投与することを含む、対象におけるウイルスに起因する疾患の治療方法。
【請求項11】
前記疾患が伝染性軟属腫感染症、HTLV感染症、HTLV-I感染症、AIDS、ヒトパピローマウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染、性器ヘルペス感染、ウイルス性下痢、インフルエンザ、麻疹、風疹、水痘、流行性耳下腺炎、急性灰白髄炎、狂犬病、単核球症、エボラ、呼吸器多核体ウイルス感染症、デング熱、黄熱、ラッサ熱、アレナウイルス感染症、ブニヤウイルス感染症、フィロウイルス感染症、フラビウイルス感染症、ハンタウイルス感染症、ロタウイルス感染症、ウイルス性髄膜炎、ウエストナイル熱、アルボウイルス感染症、パラインフルエンザ、天然痘、エプスタイン-バーウイルス感染症、デング出血熱、サイトメガロウイルス感染症、新生児サイトメガロウイルス感染症、進行性多巣性白質脳症、ウイルス性胃腸炎、肝炎、口唇ヘルペス、眼単純ヘルペス、髄膜炎、脳炎、帯状疱疹、脳炎、カリフォルニアセログループウイルス感染症、セントルイス脳炎、リフトバレー熱、手足口病、ヘンドラウイルス感染症、エンテロウイルス感染症、アストロウイルス感染症、アデノウイルス感染症、日本脳炎、リンパ性脈絡髄膜炎、小児ばら疹、サシチョウバエ熱、SARS、疣贅、猫ひっかき病、伝染性紅斑、伝染性膿痂疹、バラ色粃糠疹、リッサウイルス感染症、H5N1ウイルス感染症、及びヒトパパローマウイルス感染症からなる群から選択される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記疾患が疣贅、子宮頚部異形成;再発性気道乳頭腫症、又はパピローマウイルス感染に関連する癌である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記疾患が子宮頸部、肛門及び肛門周囲、外陰部、腟、又は陰茎の癌である、請求項10記載の方法。
【請求項14】
前記疾患が肛門生殖器癌、頭部及び頸部癌、又は皮膚癌である、請求項10記載の方法。
【請求項15】
前記頭部及び頸部癌が、口腔咽頭領域又は食道癌である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物を、対象に投与することを含む、対象におけるウイルス感染の阻害方法。
【請求項17】
ウイルスと治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物とを、接触させることを含む、ウイルス複製の阻害方法。
【請求項18】
前記ウイルスがアデノウイルス、アルボウイルス、アレナウイルス、アストロウイルス、ブニヤウイルス、コロナウイルス、コクサッキーウイルス、サイトメガロウイルス、デングウイルス、エボラウイルス、エンテロウイルス、エプスタイン-バーウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、H5N1ウイルス、ヘンドラウイルス、ヒトTリンパ球向性ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、ヒトパピローマウイルス、ハンタウイルス、肝炎ウイルス、ヘパドナウイルス、ヘルペスウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、単純ヘルペスウイルス2型、新生児サイトメガロウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、ラッサウイルス、リンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス、リッサウイルス、伝染性軟属腫ウイルス、ムンプスウイルス、オルフウイルス、パラインフルエンザウイルス、パラミクソウイルス、パラポックスウイルス、パルボウイルス、ピコルナウイルス、ポリオウイルス、ポリオーマウイルス、狂犬病ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、ロゼオロウイルス、ロタウイルス、風疹ウイルス、天然痘ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、ウエストナイルウイルス、及び黄熱病ウイルスからなる群から選択される、請求項10〜17記載の方法。
【請求項19】
前記ウイルスが、性感染性ウイルスである、請求項10及び16〜18のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
前記ウイルスが、腫瘍ウイルスである、請求項10及び16〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
前記ウイルスが、パポーバウイルスである、請求項10及び16〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
前記ウイルスが、ポリオーマ又パピローマウイルスである、請求項10及び16〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
前記ウイルスが、パピローマウイルスである、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記パピローマウイルスが、ヒトパピローマウイルスである、請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスが、単純ヘルペスウイルスである、請求項10及び16〜20のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
ホスホリパーゼCと請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物とを、接触させることを含む、ホスホリパーゼCの活性阻害方法。
【請求項27】
請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物の製造方法であって、下記の工程:
a) アキラルなC-エキソアルケン5とシランとを、遷移金属触媒とキラル単座ホスフィンとの錯体の存在下で反応させて、光学活性な有機シラン6を生成する工程;
b) 該光学活性な有機シラン6を、酸化剤を用いて酸化し、立体化学を保持したまま、光学活性なアルカノール7を生成する工程;及び
c) 該光学活性なアルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項28】
光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製造方法であって、下記の工程:
a) アキラルなのC-エキソアルケン5とシランとを、遷移金属触媒とキラル単座ホスフィンとの錯体の存在下で反応させて、光学活性な有機シラン6を生成する工程;
b) 該光学活性な有機シラン6を、酸化剤を用いて酸化し、光学活性なアルカノール7を生成する工程;及び
c) 該光学活性なアルカノール7を光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項29】
前記キラル単座ホスフィンが、式(IV)の化合物である、請求項27又は28記載の方法
【化1】

(式中、R5はH;C1-6アルキル;又は-OR8であり、ここでR8はC1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、又はC6-10アリールであり;かつ
R6及びR7のそれぞれは、独立してC6-10アリールであり;
ここで、アルキル、シクロアルキル、及びアリールのそれぞれは、独立して、1つ以上の置換基Qで任意に置換され、該置換基Qは、それぞれ独立して、シアノ、ハロ、若しくはニトロ;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、若しくはヘテロシクリル;又は-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(NRe)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(=NRe)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-0S(0)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(0)Rf、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(=NRh)NRfRg、-NReS(O)Rf、-NReS(0)2Rf、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRg、-SRe、-S(O)Re、及び-S(O)2Reからなる群から選択され;ここで、Re、Rf、Rg、及びRhのそれぞれは、独立して、水素;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、若しくはヘテロシクリルであり;又はRf及びRgは、それらに結合しているN原子とともに、ヘテロシクリルを形成する。)。
【請求項30】
前記キラル単座ホスフィンが、R立体配座である、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
前記キラル単座ホスフィンが、S立体配座である、請求項27〜29のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
R5が-OR8であり、式中R8がC1-6アルキルである、請求項29〜31のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
R8がメチルである、請求項29〜32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
R6及びR7のそれぞれが、独立して、1つ以上のハロ基で任意に置換されたフェニルである、請求項29〜33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
前記シランが、式(IV)の化合物である、請求項27〜34のいずれか一項記載の方法:
【化2】

(式中、R1、R2、及びR3はそれぞれ独立してH;ハロゲン;C1-6アルキル;又は-OR4;であり、ここで、R4はC1-6アルキル、C3-7シクロアルキル、又はC6-10アリールであり;
ここで、アルキル、シクロアルキル、及びアリールのそれぞれは、独立して、1つ以上の置換基Qで任意に置換され、該置換基Qのそれぞれは、独立して、シアノ、ハロ、又はニトロ;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、若しくはヘテロシクリル;又は-C(O)Re、-C(O)ORe、-C(O)NRfRg、-C(NRe)NRfRg、-ORe、-OC(O)Re、-OC(O)ORe、-OC(O)NRfRg、-OC(=NRe)NRfRg、-OS(O)Re、-OS(O)2Re、-OS(O)NRfRg、-0S(0)2NRfRg、-NRfRg、-NReC(0)Rf、-NReC(O)ORf、-NReC(O)NRfRg、-NReC(=NRh)NRfRg、-NReS(O)Rf、-NReS(0)2Rf、-NReS(O)NRfRg、-NReS(O)2NRfRe、-SRe、-S(O)Re、又は-S(O)2Reからなる群から選択され;ここで、Re、Rf、Rg、及びRhはそれぞれ独立して水素;C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-7シクロアルキル、C6-14アリール、ヘテロアリール、若しくはヘテロシクリルであり;又はRf及びRgは、それらに結合しているN原子とともに、ヘテロシクリルを形成する。)。
【請求項36】
前記シランが、トリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルクロロシラン、メトキシジクロロシラン、トリエチルシラン、ペンタメチルジシロキサン(HSiMe2OTMS)、又はl,l-ジメチル-3,3-ジフェニル-3-tert-ブチルジシロキサン(HSiMe2OTBDPS)である、請求項27〜35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
前記シランが、トリクロシランである、請求項27〜36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
前記遷移金属が白金、イリジウム、パラジウム、ロジウム、又はルテニウムである、請求項27〜37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物の製造方法であって、下記の工程:
a) 加水分解酵素を用いて、エステル11を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル11及び光学活性な(+)-アルケノール9を生成する工程;
b) 該光学活性な(-)-エステル11を加水分解して、光学活性な(-)-アルケノール9を生成する工程;
c) 該光学活性な(-)-アルケノール12を還元して、光学活性な(-)-アルカノール7を生成する工程;及び
d) 該光学活性な(-)-アルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項40】
光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製造方法であって、下記の工程:
a) 加水分解酵素を用いて、エステル11を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル11及び光学活性な(+)-アルケノール9を生成する工程;
b) 光学活性な(+)-アルケノール12を還元して、光学活性な(+)-アルカノール7を生成する工程;及び
c) 該光学活性な(+)-アルカノール7を光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項41】
前記加水分解酵素が、リゾプス・オリザエ由来のペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカ由来のリパーゼA、又はシュードモナス・フルオレセンス由来のリパーゼである、請求項39又は40記載の方法。
【請求項42】
前記加水分解酵素が、リゾプス・オリザエ由来のペプチダーゼである、請求項41記載の方法。
【請求項43】
前記加水分解酵素が、カンジダ・アンタクチカ由来のリパーゼAである、請求項41記載の方法。
【請求項44】
前記加水分解酵素が、シュードモナス・フルオレセンス由来のリパーゼである、請求項41記載の方法。
【請求項45】
請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物の製造方法であって、下記の工程:
a) 加水分解酵素を用いて、エステル13を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル13及び光学活性な(+)-アルカノール7を生成する工程;
b) 光学活性な(-)-エステル13を加水分解して、光学活性な(-)-アルカノール7を生成する工程;及び
c) 該光学活性な(-)-アルカノール7を光学活性な(-)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項46】
光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグの製造方法であって、下記の工程:
a) 加水分解酵素を用いて、エステル13を選択的に加水分解し、光学活性な(-)-エステル13及び光学活性な(+)-アルカノール7を生成する工程;及び
b) 該光学活性な(+)-アルカノール7を光学活性な(+)-O-エキソ/C-エキソ-トリシクロ[5.2.1.02,6]-デカ-9-イル-キサントゲン酸1A、又はその医薬として許容し得る塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグに変換する工程
を含む、前記製造方法。
【請求項47】
前記加水分解酵素が、リゾプス・オリザエ由来のペプチダーゼ、カンジダ・アンタクチカ由来のリパーゼA、又はシュードモナス・フルオレセンス由来のリパーゼである、請求項45又は46記載の方法。
【請求項48】
前記加水分解酵素が、リゾプス・オリザエ由来のペプチダーゼである、請求項47記載の方法。
【請求項49】
前記加水分解酵素が触媒量である、請求項39〜48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経変性疾患、及び虚血、再灌流傷害、外傷、アテローム性動脈硬化、及び/又は老化と関連する疾患からなる群から選択される疾患を、治療する、予防する、又は寛解させる方法であって、治療上有効な量の請求項1〜5のいずれか一項記載の化合物を対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項51】
前記癌が、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、脳癌、肝癌、子宮頸癌、結腸癌、腎癌、皮膚癌、頭部及び頸部癌、骨癌、食道癌、膀胱癌、子宮癌、リンパ癌、白血病、胃癌、膵癌、精巣リンパ腫、又は多発性骨髄腫である、請求項50記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−531830(P2010−531830A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513790(P2010−513790)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/005460
【国際公開番号】WO2009/003711
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510002556)
【Fターム(参考)】