キッチンカウンタの製造方法
【課題】キッチンカウンタの製造方法において、金属製のシンクが変形したり、樹脂製のカウンタにクラックが発生したりすることなく、金属製のシンクの外周部に熱硬化性樹脂による樹脂製のカウンタを一体化成形する。
【解決手段】カウンタ2成形用の金型10,11に金属製のシンク3の外周部をインサートし、次に、金型10,11に熱硬化性樹脂を注入し、次に、シンク3を熱源5によって加熱した状態で、熱源5とは別に設けた樹脂硬化用の熱源4によって金型10,11を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンク3に接合したカウンタ2を成形する。金属製のシンク3を加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、金型10,11の冷却時においてシンク3とカウンタ2の温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンク3とカウンタ2の接合部に生じる熱応力を緩和し、シンク3の変形や、樹脂の割れを防止できる。
【解決手段】カウンタ2成形用の金型10,11に金属製のシンク3の外周部をインサートし、次に、金型10,11に熱硬化性樹脂を注入し、次に、シンク3を熱源5によって加熱した状態で、熱源5とは別に設けた樹脂硬化用の熱源4によって金型10,11を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンク3に接合したカウンタ2を成形する。金属製のシンク3を加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、金型10,11の冷却時においてシンク3とカウンタ2の温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンク3とカウンタ2の接合部に生じる熱応力を緩和し、シンク3の変形や、樹脂の割れを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製シンクと樹脂製カウンタとからなるシステムキッチン用のキッチンカウンタを製造する方法として、金属製シンク(以下、シンク)と、シンクの入る開口を有する樹脂製カウンタ(以下、カウンタ)とをそれぞれ製造し、これらを接着剤により一体化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、キッチンカウンタの他の製造方法として、熱硬化性樹脂による樹脂製シンクをインサートして熱硬化性樹脂によって樹脂製カウンタを成形し、全体が樹脂からなるキッチンカウンタを製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154821号公報
【特許文献2】特開平6−179222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような接着によってシンクとカウンタからなるキッチンカウンタを製造する方法においては、接着工程があるので工期短縮や工程の単純化による生産性向上に限界がある。そこで、特許文献2に示されるようなインサート成形技術を適用し、金属製シンクを樹脂製カウンタ成形用の金型にインサートした状態で樹脂製カウンタを成形してキッチンカウンタを製造することが考えられる。しかしながら、金属製シンクのような大型のものをインサート成形する場合には、金属と樹脂との線膨張率差の影響が大きいので、熱硬化性樹脂による樹脂成形によって一体化されたキッチンカウンタを金型から取り出して常温まで冷却する際に、シンクとカウンタの接合部に熱応力が発生してシンクが変形したり、カウンタにクラックが発生したりするという問題があり、実用化が困難とされている。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、金属製のシンクが変形したり、樹脂製のカウンタにクラックが発生したりすることなく、簡単な構成により、金属製のシンクの外周部に熱硬化性樹脂による樹脂製カウンタを一体化して成るキッチンカウンタをインサート成形できるキッチンカウンタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法において、カウンタ成形用の成形型に金属製のシンクの外周部をインサートし、次に、前記成形型に熱硬化性樹脂を注入し、次に、前記シンクを熱源によって加熱した状態で、前記熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって前記成形型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンクに接合したカウンタを成形するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクの加熱を該シンクの全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクの加熱を光エネルギを用いて行なうものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクに接合する該シンクの外周部の周辺の熱硬化性樹脂を他の部分の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させるものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記成形型は該成形型の温度を上げる昇温制御と前記昇温制御に続いて該成形型の温度を所定温度に維持する温度保持制御とに分けて温度制御され、前記昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度よりも高めに設定されるものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの周辺に他の部位よりも密に配置したものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの内面側から該シンクの外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンクを介して加熱して硬化させるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、金属製のシンクを加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、成形型の冷却時において金属製シンクと熱硬化性樹脂から成るカウンタの温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンクとカウンタとの接合部に生じる熱応力を緩和し、熱応力によるシンクの変形や、熱硬化性樹脂の割れを防止して、キッチンカウンタをインサート成形することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、シンクの各部位を均一に温度制御することによりシンクの変形や、シンクに接する、またはその近傍に位置する熱硬化性樹脂の割れを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、急速な温度上昇と緻密な制御ができ、生産性を向上することができる。また、熱伝導によらずに非接触で加熱できるので、熱源の設定や配置が容易である。
【0016】
請求項4の発明によれば、硬化収縮に対する制約が少ない状態で、シンクになじませて硬化させることができるので、シンクとの接合部周辺に発生する熱応力や残留応力を低減することができ、これらの応力によるシンクの変形やカウンタのクラック発生などをより確実に防止することができる。また、これを言い換えると、次のようになる。熱硬化性樹脂が、金属製のシンクから離れたところで先に硬化する場合には、硬化収縮に伴う応力が、熱硬化性樹脂をシンクから引き剥がす方向の力となるのに対し、シンクに接合する部分の熱硬化性樹脂を他の部分(シンクから離れた部分)の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させる場合には、そのようなシンクから引き剥がす方向の力の発生を緩和することができ、クラック発生をより確実に防止できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、目標温度を高めに設定して昇温するので、効率よく加熱することができる。また、事前に計測した温度変化測定結果に基づいて、熱硬化樹脂の硬化発熱を考慮して昇温の時間制御を行えばよく、これにより、硬化収縮によるシンクの変形や熱硬化性樹脂によるカウンタの割れを防止して効率よくキッチンカウンタを製造することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、シンク周辺を局所的かつ効率的に加熱してシンク周辺の樹脂(接合部となる部分の樹脂)を、他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、シンク周辺の接合部となる部分の樹脂を、上下の成形型からによる2方向に、もう1方向を加えて、3方向から加熱することができるので、接合部の樹脂を他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造方法によって製造されるキッチンカウンタの例を示す斜視図。
【図2】(a)は同キッチンカウンタのシンク周辺の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図3】図2(b)のB部拡大断面図。
【図4】同製造方法のフローチャート。
【図5】同製造方法において金属製のシンクをカウンタの金型にインサートした状態を上下反転して示す斜視図。
【図6】図5の状態で金属製のシンクを透視した斜視図。
【図7】図5の状態で上金型側から見た平面図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】同製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図10】同製造方法の変形例によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図11】図10のD−D線断面図。
【図12】同製造方法の他の変形例によるカウンタの成形の様子を示す断面図。
【図13】第2の実施形態に係る製造方法における樹脂硬化工程のフローチャート。
【図14】同製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図15】図14のE−E線断面図。
【図16】同製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図17】第3の実施形態に係る製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図18】同製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図19】図18のF−F線断面図。
【図20】第4の実施形態に係る製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図21】図20のG−G線断面図。
【図22】第5の実施形態に係る製造方法によりカウンタを成形する様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るキッチンカウンタの製造方法について、図面を参照して説明する。図1乃至図9は第1の実施形態を示す。本実施形態に係るキッチンカウンタの製造方法によって製造されたキッチンカウンタは、図1、図2に示すように、カウンタ2とシンク3とを一体化して構成されている。カウンタ2はシステムキッチンなどの天板となる部分であって台所作業が行われるところであり、後端側には起立部22が形成され、手前側には前垂れ部23が形成されている。カウンタ2は、樹脂製であり、カウンタ2の表面2a側を成形する表面成形型と裏面2b側を成形する裏面成形型を用いて樹脂成形されたものである。シンク3は、食器洗いなどの水まわりの作業が行われるところである。シンク3は金属製であって、例えばステンレス板材から絞り加工により凹部を有するように形成されたものである。シンク3には、カウンタ2と接合するためのフランジ部31が凹部外周に周設されており、シンク3の内側には排水口3aと洗剤等載置台3bが備えられている。このようなカウンタ2とシンク3とは、カウンタ2を構成する樹脂によって、フランジ部31を下方および側方から包み込むように形成された接合部21を介して、互いに接合されている。シンク3は、このような接合部21の構造により、カウンタ2によって下方から支持されている。
【0022】
次に、図3によって、フランジ部31と接合部21の周辺構造を説明する。フランジ部31は、床面に向けて延びた折返し片32と、折返し片32の頂部における水平部33と、水平部33からシンク3の内側凹部に向かうテーパ部34とから成る折り返し構造を有している。この折り返し構造は、フランジ部31の強度を向上させ、フランジ部31が波打ったり歪んだりすることを防止して、シンク3を安定した形状に維持する。折返し片32には、全周にわたる適所に貫通孔(不図示)が設けられている。接合部21は、フランジ部31の下部および折返し片32の外周に形成されており、樹脂が折り返し構造に嵌合し、また、貫通孔に充填されることにより、シンク3に対して強固に固着形成されている。カウンタ2の表面2aは、美観を保つように特に平滑面とされ、表面2aと水平部33とは、面一とされ、裏面2bは応力集中がないように強度の観点から滑らかな表面とされている。
【0023】
次に、図4によって、キッチンカウンタ1の製造方法を説明する。金属製のシンク3を準備し、シンク3の周辺部をカウンタ2成形用の成形型、例えば金型にインサートし(#1)、カウンタ2成形用の熱硬化性樹脂を金型に注入する(#2)。次に、シンク3を熱源によって加熱した状態で、シンク3用の熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって金型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させてカウンタ2を成形し(#3)、成形後に冷却、製品取出しを行い、金属製のシンク3にカウンタ2を接合したキッチンカウンタ1の製造が終了する(#4)。カウンタ2を成形する熱硬化性樹脂は、例えば、人造大理石とすることができる。人造大理石はシステムキッチンの樹脂製カウンタ用樹脂として多く使用される樹脂であり、使用者になじみの深いキッチンカウンタ1が得られる。
【0024】
次に、具体的に製造の様子を説明する。シンク3は、図5、図6に示すように、下金型10と上金型11にシンク3にインサートされている。なお、図5、図6は、カウンタ2が成形される様子を、上下反転した状態で示している。金型10,11は、キッチンカウンタ1の左右長手方向に沿って、樹脂硬化用の熱源4を備えている。熱源4は、例えば、電流を流して発熱させる電気ヒータや、流路に沿って高温水や蒸気、その他の液体や気体からなる循環する熱媒体を用いて構成することができる。上金型11を上方から見ると、図7に示すように、金型10,11にインサートされたシンク3の底面(裏面)が、上金型11の開口11aから突出している様子が見られる。シンク3は、図8に示すように、上下反転して、フランジ部31を下金型10の上面に押し付けて配置され、上金型11がシンク3を囲む態様で下金型10上に配置されている。また、シンク3のフランジ部31の内部には、シンク3を内部から加熱する熱源5が配置されている。熱源5は、ブロックヒータや、ブロックの表面に帯状の電気ヒータを巻き付けたりフィルムヒータを貼り付けたりしたヒータなどを、シンク3の内面に押し付けて構成される。このような熱源5は、フランジ部31に沿ってシンク3の内周に設けられている。
【0025】
熱硬化性樹脂が、金型10,11、およびフランジ部31の周辺のシンク3の外面によって囲まれた空間に、不図示の注入口から注入され、熱源5によってシンク3が加熱された状態で、熱源4によって熱硬化されてカウンタ2が成形される。樹脂の熱硬化中における温度制御は、図9に示すように行われる。すなわち、カウンタ2を構成する樹脂の温度aは、一旦オーバシュートした後、一定値に保持され、シンク3の温度bは樹脂の温度aよりも早い立ち上がりの後、オーバシュートすることなく一定値に保持される。温度aのオーバシュートは、熱硬化性樹脂の内部発熱による。この温度制御において、3つの温度T0,T1,T2が関連する。温度T0は樹脂の熱硬化が開始する下限温度であり、温度T1は、熱硬化時の温度保持制御における目標設定温度であり、温度T1は樹脂が熱破壊されないための上限温度である。この温度条件を考慮して、熱源4,5による温度制御が行われる。
【0026】
第1の実施形態によれば、金属製のシンク3を加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、成形型の冷却時において金属製のシンク3と熱硬化性樹脂から成るカウンタ2の温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンク3とカウンタ2の接合部に生じる熱応力を緩和し、熱応力によるシンク3の変形や、熱硬化性樹脂の割れを防止して、信頼性の高いキッチンカウンタ1をインサート成形することができる。
【0027】
(第1の実施形態の変形例1)
変形例1は、図10、図11に示すように、シンク3の外表面にも熱源6を追加し、シンク3の加熱をシンク3の全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうものである。シンク3を加熱する熱源として、図示した熱源5,6以外にも、金型10,11から露出したシンク3の底部を覆う熱源を設けたり、その底部の内面を加熱する熱源を設けたりして、これらにより各部位を温度制御することができる。なお、シンク3の排水口3aから熱風を吹き込むと共に回収して循環させる熱源を用いてもよい。この変形例1によれば、シンク3の各部位を均一に温度制御することによってシンク3の変形や、シンク3に接し、また、その近傍に位置する熱硬化性樹脂の割れを防止することができる。
【0028】
(第1の実施形態の変形例2)
変形例2は、図12に示すように、シンク3を加熱するために、光エネルギによる熱源7、例えば、赤外線ランプなどを用いるものである。変形例2によれば、急速な温度上昇と緻密な制御ができ、生産性を向上することができる。また、熱伝導によらずに非接触で加熱できるので、熱源の設定や配置が容易である。熱源7に加えて、上述の熱源5,6などを併用することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図13乃至図16は第2の実施形態を示す。本実施形態では、図13に示すように、樹脂硬化工程において、シンク3に接合するシンク3の外周部の周辺の熱硬化性樹脂、すなわち接合部21を構成する樹脂を、他の部分の熱硬化性樹脂、すなわち接合部21から離れた位置にある樹脂よりも先に硬化させ(#11)、その後、全体の樹脂を硬化させる(#12)。このような熱硬化を行うために、図14、図15に示すように、上下の金型10,11において、接合部21、すなわちシンク3のフランジ部31の周辺に、追加の熱源41を備えている。この熱源41は、熱源4と同様の構成とすればよい。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けてシンク3を加熱する。
【0030】
本実施形態における樹脂の熱硬化中の温度制御は、図16に示すように行われる。図中において、温度a0は接合部21の上下位置における金型10,11の内面の温度であり、温度a1は接合部21の樹脂の温度であり、温度a2は接合部21から離れた位置、すなわち、熱源41から離れた位置における樹脂の温度である。温度a0は樹脂の温度a1よりも早い立ち上がりの後、オーバシュートすることなく一定値に保持され、温度a1は、一旦オーバシュートした後、一定値に保持され、温度a2は、温度a1よりも時間的に遅れてゆっくりと立ち上がりオーバシュートすることなく一定値に保持される。
【0031】
第2の実施形態によれば、硬化収縮に対する制約が少ない状態で、接合部21における樹脂を、シンク3になじませて硬化させることができるので、シンク3との接合部21周辺に発生する熱応力や残留応力を低減することができ、これらの応力によるシンク3の変形やカウンタ2へのクラック発生などをより確実に防止することができる。また、これを言い換えると、次のようになる。熱硬化性樹脂が、金属製のシンク3から離れたところで先に硬化する場合には、硬化収縮に伴う応力が、熱硬化性樹脂をシンク3から引き剥がす方向の力となるのに対し、シンク3に接合する部分の熱硬化性樹脂を他の部分(シンク3から離れた部分)の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させる場合には、そのようなシンク3から引き剥がす方向の力の発生を緩和でき、クラック発生をより確実に防止できる。
【0032】
(第3の実施形態)
図17、図18、図19は第3の実施形態を示す。本実施形態における樹脂の熱硬化中における温度制御は、図17に示すように行われる。図中において、温度a3は接合部21の上下位置における金型10,11の内面の温度であり、温度a1は接合部21の樹脂の温度であり、温度a2は接合部21から離れた位置における樹脂の温度である。本実施形態において金型10,11の温度制御は、金型の温度を上げる昇温制御と昇温制御に続いて金型の温度を所定温度T1に維持する温度保持制御とに分けて行われ、昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度、すなわち温度T1よりも高めの温度Txに設定される。この制御により、金型の温度a3は、昇温制御時に一旦温度T2近くまで昇温された後、温度T1に維持される。ここで、温度T1は、例えば90℃であり、高めの温度Txは、例えば30℃高くして、Tx=(T1+30)℃とされる。温度a3は、樹脂の硬化発熱が始まる時点(温度a1がオーバシュート開始する時点)で所定温度T1に戻るように制御される。金型10,11における接合部21周辺以外の温度制御は、温度a3と同様、または、他の温度曲線に従って行われる。
【0033】
上述の温度制御、特に温度a3の制御を実現するために、図18、図19に示すように、上下の金型10,11において、接合部21の周辺に追加の熱源41を備え、さらに、シンク3の外周に熱源6を備えている。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けている。これらの熱源4,5,6,41を制御して、上述の温度制御がなされる。第3の実施形態によれば、目標温度を高めに設定して昇温するので、効率よく加熱することができる。また、事前に計測した温度変化測定結果に基づいて、熱硬化樹脂の硬化発熱を考慮して昇温の時間制御を行えばよく、これにより、硬化収縮によるシンク3の変形や熱硬化性樹脂によるカウンタ2の割れを防止して、効率よくキッチンカウンタ1を製造することができる。
【0034】
(第4の実施形態)
本実施形態は、図20、図21に示すように、樹脂硬化用の熱源を、シンク3の周辺に他の部位よりも密に配置したものであり、金型10,11内に備えた熱源4に加えて、接合部21が形成される領域の上下位置における金型内に、6系統の熱源41を追加している。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けている。第4の実施形態によれば、シンク3周辺を局所的かつ効率的に加熱してシンク3周辺の樹脂(接合部21となる樹脂)を、他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0035】
(第5の実施形態)
本実施形態は、図22に示すように、金型10,11に備えた樹脂硬化用の熱源4,41に加えて、シンク3の内面側に熱源8を備えており、熱源8は、シンク3の内面側から、シンク3の外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンク3を介して加熱して硬化させる熱硬化用の熱源である。熱源8は、例えば、金型10,11に備えた熱源4と同様の構成で、シンク3内に納められる熱源用ブロック80に熱媒体用の流路42を形成して構成される。熱源8は、シンク3を加熱する熱源ともなる。第5の実施形態によれば、シンク3周辺の接合部21となる部分の樹脂を、上下の金型10,11による2方向からに、もう1方向を加えて、3方向から加熱することができるので、接合部21の樹脂を他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成、特に、各熱源の配置および温度制御の構成を組み合わせたとすることができる。また、各実施形態や変形例で示したカウンタ2、シンク3、接合部21、各成形型などの形状は、これらに限定するものではなく、任意の形状のものとすることができる。例えば、シンク3の水平部33、カウンタ2の表面2aなどは、面一でなくてもよい。また、水平部33がシンク3の外周に沿って同一平面内になく、3次元形状を有するものでもよい。また、フランジ部31の折り返し構造は、上述した形状より単純なものでもよく、より複雑なものでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 キッチンカウンタ
2 樹脂製のカウンタ
3 金属製のシンク
4,41 熱源
5,6,7,8 熱源
10 成形型(下側の金型)
11 成形型(上側の金型)
13 外周部
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属製シンクと樹脂製カウンタとからなるシステムキッチン用のキッチンカウンタを製造する方法として、金属製シンク(以下、シンク)と、シンクの入る開口を有する樹脂製カウンタ(以下、カウンタ)とをそれぞれ製造し、これらを接着剤により一体化する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、キッチンカウンタの他の製造方法として、熱硬化性樹脂による樹脂製シンクをインサートして熱硬化性樹脂によって樹脂製カウンタを成形し、全体が樹脂からなるキッチンカウンタを製造する方法が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−154821号公報
【特許文献2】特開平6−179222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に示されるような接着によってシンクとカウンタからなるキッチンカウンタを製造する方法においては、接着工程があるので工期短縮や工程の単純化による生産性向上に限界がある。そこで、特許文献2に示されるようなインサート成形技術を適用し、金属製シンクを樹脂製カウンタ成形用の金型にインサートした状態で樹脂製カウンタを成形してキッチンカウンタを製造することが考えられる。しかしながら、金属製シンクのような大型のものをインサート成形する場合には、金属と樹脂との線膨張率差の影響が大きいので、熱硬化性樹脂による樹脂成形によって一体化されたキッチンカウンタを金型から取り出して常温まで冷却する際に、シンクとカウンタの接合部に熱応力が発生してシンクが変形したり、カウンタにクラックが発生したりするという問題があり、実用化が困難とされている。
【0005】
本発明は、上記課題を解消するものであって、金属製のシンクが変形したり、樹脂製のカウンタにクラックが発生したりすることなく、簡単な構成により、金属製のシンクの外周部に熱硬化性樹脂による樹脂製カウンタを一体化して成るキッチンカウンタをインサート成形できるキッチンカウンタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、請求項1の発明は、金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法において、カウンタ成形用の成形型に金属製のシンクの外周部をインサートし、次に、前記成形型に熱硬化性樹脂を注入し、次に、前記シンクを熱源によって加熱した状態で、前記熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって前記成形型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンクに接合したカウンタを成形するものである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクの加熱を該シンクの全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうものである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクの加熱を光エネルギを用いて行なうものである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記シンクに接合する該シンクの外周部の周辺の熱硬化性樹脂を他の部分の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させるものである。
【0010】
請求項5の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記成形型は該成形型の温度を上げる昇温制御と前記昇温制御に続いて該成形型の温度を所定温度に維持する温度保持制御とに分けて温度制御され、前記昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度よりも高めに設定されるものである。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの周辺に他の部位よりも密に配置したものである。
【0012】
請求項7の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法において、前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの内面側から該シンクの外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンクを介して加熱して硬化させるものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、金属製のシンクを加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、成形型の冷却時において金属製シンクと熱硬化性樹脂から成るカウンタの温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンクとカウンタとの接合部に生じる熱応力を緩和し、熱応力によるシンクの変形や、熱硬化性樹脂の割れを防止して、キッチンカウンタをインサート成形することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、シンクの各部位を均一に温度制御することによりシンクの変形や、シンクに接する、またはその近傍に位置する熱硬化性樹脂の割れを防止することができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、急速な温度上昇と緻密な制御ができ、生産性を向上することができる。また、熱伝導によらずに非接触で加熱できるので、熱源の設定や配置が容易である。
【0016】
請求項4の発明によれば、硬化収縮に対する制約が少ない状態で、シンクになじませて硬化させることができるので、シンクとの接合部周辺に発生する熱応力や残留応力を低減することができ、これらの応力によるシンクの変形やカウンタのクラック発生などをより確実に防止することができる。また、これを言い換えると、次のようになる。熱硬化性樹脂が、金属製のシンクから離れたところで先に硬化する場合には、硬化収縮に伴う応力が、熱硬化性樹脂をシンクから引き剥がす方向の力となるのに対し、シンクに接合する部分の熱硬化性樹脂を他の部分(シンクから離れた部分)の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させる場合には、そのようなシンクから引き剥がす方向の力の発生を緩和することができ、クラック発生をより確実に防止できる。
【0017】
請求項5の発明によれば、目標温度を高めに設定して昇温するので、効率よく加熱することができる。また、事前に計測した温度変化測定結果に基づいて、熱硬化樹脂の硬化発熱を考慮して昇温の時間制御を行えばよく、これにより、硬化収縮によるシンクの変形や熱硬化性樹脂によるカウンタの割れを防止して効率よくキッチンカウンタを製造することができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、シンク周辺を局所的かつ効率的に加熱してシンク周辺の樹脂(接合部となる部分の樹脂)を、他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0019】
請求項7の発明によれば、シンク周辺の接合部となる部分の樹脂を、上下の成形型からによる2方向に、もう1方向を加えて、3方向から加熱することができるので、接合部の樹脂を他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る製造方法によって製造されるキッチンカウンタの例を示す斜視図。
【図2】(a)は同キッチンカウンタのシンク周辺の平面図、(b)は(a)のA−A線断面図。
【図3】図2(b)のB部拡大断面図。
【図4】同製造方法のフローチャート。
【図5】同製造方法において金属製のシンクをカウンタの金型にインサートした状態を上下反転して示す斜視図。
【図6】図5の状態で金属製のシンクを透視した斜視図。
【図7】図5の状態で上金型側から見た平面図。
【図8】図7のC−C線断面図。
【図9】同製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図10】同製造方法の変形例によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図11】図10のD−D線断面図。
【図12】同製造方法の他の変形例によるカウンタの成形の様子を示す断面図。
【図13】第2の実施形態に係る製造方法における樹脂硬化工程のフローチャート。
【図14】同製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図15】図14のE−E線断面図。
【図16】同製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図17】第3の実施形態に係る製造方法による成形中の各部の温度変化図。
【図18】同製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図19】図18のF−F線断面図。
【図20】第4の実施形態に係る製造方法によりカウンタを成形する際の上金型側から見た平面図。
【図21】図20のG−G線断面図。
【図22】第5の実施形態に係る製造方法によりカウンタを成形する様子を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施形態に係るキッチンカウンタの製造方法について、図面を参照して説明する。図1乃至図9は第1の実施形態を示す。本実施形態に係るキッチンカウンタの製造方法によって製造されたキッチンカウンタは、図1、図2に示すように、カウンタ2とシンク3とを一体化して構成されている。カウンタ2はシステムキッチンなどの天板となる部分であって台所作業が行われるところであり、後端側には起立部22が形成され、手前側には前垂れ部23が形成されている。カウンタ2は、樹脂製であり、カウンタ2の表面2a側を成形する表面成形型と裏面2b側を成形する裏面成形型を用いて樹脂成形されたものである。シンク3は、食器洗いなどの水まわりの作業が行われるところである。シンク3は金属製であって、例えばステンレス板材から絞り加工により凹部を有するように形成されたものである。シンク3には、カウンタ2と接合するためのフランジ部31が凹部外周に周設されており、シンク3の内側には排水口3aと洗剤等載置台3bが備えられている。このようなカウンタ2とシンク3とは、カウンタ2を構成する樹脂によって、フランジ部31を下方および側方から包み込むように形成された接合部21を介して、互いに接合されている。シンク3は、このような接合部21の構造により、カウンタ2によって下方から支持されている。
【0022】
次に、図3によって、フランジ部31と接合部21の周辺構造を説明する。フランジ部31は、床面に向けて延びた折返し片32と、折返し片32の頂部における水平部33と、水平部33からシンク3の内側凹部に向かうテーパ部34とから成る折り返し構造を有している。この折り返し構造は、フランジ部31の強度を向上させ、フランジ部31が波打ったり歪んだりすることを防止して、シンク3を安定した形状に維持する。折返し片32には、全周にわたる適所に貫通孔(不図示)が設けられている。接合部21は、フランジ部31の下部および折返し片32の外周に形成されており、樹脂が折り返し構造に嵌合し、また、貫通孔に充填されることにより、シンク3に対して強固に固着形成されている。カウンタ2の表面2aは、美観を保つように特に平滑面とされ、表面2aと水平部33とは、面一とされ、裏面2bは応力集中がないように強度の観点から滑らかな表面とされている。
【0023】
次に、図4によって、キッチンカウンタ1の製造方法を説明する。金属製のシンク3を準備し、シンク3の周辺部をカウンタ2成形用の成形型、例えば金型にインサートし(#1)、カウンタ2成形用の熱硬化性樹脂を金型に注入する(#2)。次に、シンク3を熱源によって加熱した状態で、シンク3用の熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって金型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させてカウンタ2を成形し(#3)、成形後に冷却、製品取出しを行い、金属製のシンク3にカウンタ2を接合したキッチンカウンタ1の製造が終了する(#4)。カウンタ2を成形する熱硬化性樹脂は、例えば、人造大理石とすることができる。人造大理石はシステムキッチンの樹脂製カウンタ用樹脂として多く使用される樹脂であり、使用者になじみの深いキッチンカウンタ1が得られる。
【0024】
次に、具体的に製造の様子を説明する。シンク3は、図5、図6に示すように、下金型10と上金型11にシンク3にインサートされている。なお、図5、図6は、カウンタ2が成形される様子を、上下反転した状態で示している。金型10,11は、キッチンカウンタ1の左右長手方向に沿って、樹脂硬化用の熱源4を備えている。熱源4は、例えば、電流を流して発熱させる電気ヒータや、流路に沿って高温水や蒸気、その他の液体や気体からなる循環する熱媒体を用いて構成することができる。上金型11を上方から見ると、図7に示すように、金型10,11にインサートされたシンク3の底面(裏面)が、上金型11の開口11aから突出している様子が見られる。シンク3は、図8に示すように、上下反転して、フランジ部31を下金型10の上面に押し付けて配置され、上金型11がシンク3を囲む態様で下金型10上に配置されている。また、シンク3のフランジ部31の内部には、シンク3を内部から加熱する熱源5が配置されている。熱源5は、ブロックヒータや、ブロックの表面に帯状の電気ヒータを巻き付けたりフィルムヒータを貼り付けたりしたヒータなどを、シンク3の内面に押し付けて構成される。このような熱源5は、フランジ部31に沿ってシンク3の内周に設けられている。
【0025】
熱硬化性樹脂が、金型10,11、およびフランジ部31の周辺のシンク3の外面によって囲まれた空間に、不図示の注入口から注入され、熱源5によってシンク3が加熱された状態で、熱源4によって熱硬化されてカウンタ2が成形される。樹脂の熱硬化中における温度制御は、図9に示すように行われる。すなわち、カウンタ2を構成する樹脂の温度aは、一旦オーバシュートした後、一定値に保持され、シンク3の温度bは樹脂の温度aよりも早い立ち上がりの後、オーバシュートすることなく一定値に保持される。温度aのオーバシュートは、熱硬化性樹脂の内部発熱による。この温度制御において、3つの温度T0,T1,T2が関連する。温度T0は樹脂の熱硬化が開始する下限温度であり、温度T1は、熱硬化時の温度保持制御における目標設定温度であり、温度T1は樹脂が熱破壊されないための上限温度である。この温度条件を考慮して、熱源4,5による温度制御が行われる。
【0026】
第1の実施形態によれば、金属製のシンク3を加熱した状態で熱硬化性樹脂によって成形するので、成形型の冷却時において金属製のシンク3と熱硬化性樹脂から成るカウンタ2の温度差を低減して収縮量の差を小さくすることができ、シンク3とカウンタ2の接合部に生じる熱応力を緩和し、熱応力によるシンク3の変形や、熱硬化性樹脂の割れを防止して、信頼性の高いキッチンカウンタ1をインサート成形することができる。
【0027】
(第1の実施形態の変形例1)
変形例1は、図10、図11に示すように、シンク3の外表面にも熱源6を追加し、シンク3の加熱をシンク3の全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうものである。シンク3を加熱する熱源として、図示した熱源5,6以外にも、金型10,11から露出したシンク3の底部を覆う熱源を設けたり、その底部の内面を加熱する熱源を設けたりして、これらにより各部位を温度制御することができる。なお、シンク3の排水口3aから熱風を吹き込むと共に回収して循環させる熱源を用いてもよい。この変形例1によれば、シンク3の各部位を均一に温度制御することによってシンク3の変形や、シンク3に接し、また、その近傍に位置する熱硬化性樹脂の割れを防止することができる。
【0028】
(第1の実施形態の変形例2)
変形例2は、図12に示すように、シンク3を加熱するために、光エネルギによる熱源7、例えば、赤外線ランプなどを用いるものである。変形例2によれば、急速な温度上昇と緻密な制御ができ、生産性を向上することができる。また、熱伝導によらずに非接触で加熱できるので、熱源の設定や配置が容易である。熱源7に加えて、上述の熱源5,6などを併用することができる。
【0029】
(第2の実施形態)
図13乃至図16は第2の実施形態を示す。本実施形態では、図13に示すように、樹脂硬化工程において、シンク3に接合するシンク3の外周部の周辺の熱硬化性樹脂、すなわち接合部21を構成する樹脂を、他の部分の熱硬化性樹脂、すなわち接合部21から離れた位置にある樹脂よりも先に硬化させ(#11)、その後、全体の樹脂を硬化させる(#12)。このような熱硬化を行うために、図14、図15に示すように、上下の金型10,11において、接合部21、すなわちシンク3のフランジ部31の周辺に、追加の熱源41を備えている。この熱源41は、熱源4と同様の構成とすればよい。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けてシンク3を加熱する。
【0030】
本実施形態における樹脂の熱硬化中の温度制御は、図16に示すように行われる。図中において、温度a0は接合部21の上下位置における金型10,11の内面の温度であり、温度a1は接合部21の樹脂の温度であり、温度a2は接合部21から離れた位置、すなわち、熱源41から離れた位置における樹脂の温度である。温度a0は樹脂の温度a1よりも早い立ち上がりの後、オーバシュートすることなく一定値に保持され、温度a1は、一旦オーバシュートした後、一定値に保持され、温度a2は、温度a1よりも時間的に遅れてゆっくりと立ち上がりオーバシュートすることなく一定値に保持される。
【0031】
第2の実施形態によれば、硬化収縮に対する制約が少ない状態で、接合部21における樹脂を、シンク3になじませて硬化させることができるので、シンク3との接合部21周辺に発生する熱応力や残留応力を低減することができ、これらの応力によるシンク3の変形やカウンタ2へのクラック発生などをより確実に防止することができる。また、これを言い換えると、次のようになる。熱硬化性樹脂が、金属製のシンク3から離れたところで先に硬化する場合には、硬化収縮に伴う応力が、熱硬化性樹脂をシンク3から引き剥がす方向の力となるのに対し、シンク3に接合する部分の熱硬化性樹脂を他の部分(シンク3から離れた部分)の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させる場合には、そのようなシンク3から引き剥がす方向の力の発生を緩和でき、クラック発生をより確実に防止できる。
【0032】
(第3の実施形態)
図17、図18、図19は第3の実施形態を示す。本実施形態における樹脂の熱硬化中における温度制御は、図17に示すように行われる。図中において、温度a3は接合部21の上下位置における金型10,11の内面の温度であり、温度a1は接合部21の樹脂の温度であり、温度a2は接合部21から離れた位置における樹脂の温度である。本実施形態において金型10,11の温度制御は、金型の温度を上げる昇温制御と昇温制御に続いて金型の温度を所定温度T1に維持する温度保持制御とに分けて行われ、昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度、すなわち温度T1よりも高めの温度Txに設定される。この制御により、金型の温度a3は、昇温制御時に一旦温度T2近くまで昇温された後、温度T1に維持される。ここで、温度T1は、例えば90℃であり、高めの温度Txは、例えば30℃高くして、Tx=(T1+30)℃とされる。温度a3は、樹脂の硬化発熱が始まる時点(温度a1がオーバシュート開始する時点)で所定温度T1に戻るように制御される。金型10,11における接合部21周辺以外の温度制御は、温度a3と同様、または、他の温度曲線に従って行われる。
【0033】
上述の温度制御、特に温度a3の制御を実現するために、図18、図19に示すように、上下の金型10,11において、接合部21の周辺に追加の熱源41を備え、さらに、シンク3の外周に熱源6を備えている。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けている。これらの熱源4,5,6,41を制御して、上述の温度制御がなされる。第3の実施形態によれば、目標温度を高めに設定して昇温するので、効率よく加熱することができる。また、事前に計測した温度変化測定結果に基づいて、熱硬化樹脂の硬化発熱を考慮して昇温の時間制御を行えばよく、これにより、硬化収縮によるシンク3の変形や熱硬化性樹脂によるカウンタ2の割れを防止して、効率よくキッチンカウンタ1を製造することができる。
【0034】
(第4の実施形態)
本実施形態は、図20、図21に示すように、樹脂硬化用の熱源を、シンク3の周辺に他の部位よりも密に配置したものであり、金型10,11内に備えた熱源4に加えて、接合部21が形成される領域の上下位置における金型内に、6系統の熱源41を追加している。また、図示していないが、シンク3を加熱するための熱源5を設けている。第4の実施形態によれば、シンク3周辺を局所的かつ効率的に加熱してシンク3周辺の樹脂(接合部21となる樹脂)を、他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0035】
(第5の実施形態)
本実施形態は、図22に示すように、金型10,11に備えた樹脂硬化用の熱源4,41に加えて、シンク3の内面側に熱源8を備えており、熱源8は、シンク3の内面側から、シンク3の外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンク3を介して加熱して硬化させる熱硬化用の熱源である。熱源8は、例えば、金型10,11に備えた熱源4と同様の構成で、シンク3内に納められる熱源用ブロック80に熱媒体用の流路42を形成して構成される。熱源8は、シンク3を加熱する熱源ともなる。第5の実施形態によれば、シンク3周辺の接合部21となる部分の樹脂を、上下の金型10,11による2方向からに、もう1方向を加えて、3方向から加熱することができるので、接合部21の樹脂を他の部分よりも先に効率よく硬化させることができる。
【0036】
なお、本発明は、上記構成に限られることなく種々の変形が可能である。例えば、上述した各実施形態の構成を互いに組み合わせた構成、特に、各熱源の配置および温度制御の構成を組み合わせたとすることができる。また、各実施形態や変形例で示したカウンタ2、シンク3、接合部21、各成形型などの形状は、これらに限定するものではなく、任意の形状のものとすることができる。例えば、シンク3の水平部33、カウンタ2の表面2aなどは、面一でなくてもよい。また、水平部33がシンク3の外周に沿って同一平面内になく、3次元形状を有するものでもよい。また、フランジ部31の折り返し構造は、上述した形状より単純なものでもよく、より複雑なものでもよい。
【符号の説明】
【0037】
1 キッチンカウンタ
2 樹脂製のカウンタ
3 金属製のシンク
4,41 熱源
5,6,7,8 熱源
10 成形型(下側の金型)
11 成形型(上側の金型)
13 外周部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法において、
カウンタ成形用の成形型に金属製のシンクの外周部をインサートし、
次に、前記成形型に熱硬化性樹脂を注入し、
次に、前記シンクを熱源によって加熱した状態で、前記熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって前記成形型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンクに接合したカウンタを成形することを特徴とするキッチンカウンタの製造方法。
【請求項2】
前記シンクの加熱を該シンクの全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項3】
前記シンクの加熱を光エネルギを用いて行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項4】
前記シンクに接合する該シンクの外周部の周辺の熱硬化性樹脂を他の部分の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項5】
前記成形型は該成形型の温度を上げる昇温制御と前記昇温制御に続いて該成形型の温度を所定温度に維持する温度保持制御とに分けて温度制御され、前記昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度よりも高めに設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの周辺に他の部位よりも密に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの内面側から該シンクの外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンクを介して加熱して硬化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項1】
金属製シンクの外周部に樹脂製カウンタを一体化して成形して成るキッチンカウンタの製造方法において、
カウンタ成形用の成形型に金属製のシンクの外周部をインサートし、
次に、前記成形型に熱硬化性樹脂を注入し、
次に、前記シンクを熱源によって加熱した状態で、前記熱源とは別に設けた樹脂硬化用の熱源によって前記成形型を加熱して熱硬化性樹脂を硬化させ、金属製のシンクに接合したカウンタを成形することを特徴とするキッチンカウンタの製造方法。
【請求項2】
前記シンクの加熱を該シンクの全部位に対して行なうと共に、各部位ごとに温度制御を行なうことを特徴とする請求項1に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項3】
前記シンクの加熱を光エネルギを用いて行なうことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項4】
前記シンクに接合する該シンクの外周部の周辺の熱硬化性樹脂を他の部分の熱硬化性樹脂よりも先に硬化させることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項5】
前記成形型は該成形型の温度を上げる昇温制御と前記昇温制御に続いて該成形型の温度を所定温度に維持する温度保持制御とに分けて温度制御され、前記昇温制御における目標温度は温度保持制御における目標温度よりも高めに設定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項6】
前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの周辺に他の部位よりも密に配置したことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【請求項7】
前記樹脂硬化用の熱源は、前記シンクの内面側から該シンクの外面に接合する熱硬化性樹脂をそのシンクを介して加熱して硬化させることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のキッチンカウンタの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−126256(P2011−126256A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289748(P2009−289748)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】
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