説明

キノリン誘導体、その使用、製造およびそれを含む医薬剤

本発明は、一般式Aにより表わされたキノリン誘導体(式中R1、R2、R3、X、Y、ZおよびAは明細書および請求項に示される)、一般式Aで表わされる該化合物の各種疾患治療のための使用および一般式Aで表わされる該化合物の製造に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のキノリン誘導体、それらの製造および様々な疾患の治療のためのプロテインキナーゼ阻害剤、特にEph(rythropoetin−roducing epatoma amplified sequence=エリスロポエチン産生肝癌増殖配列)受容体の阻害剤としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質チロシンキナーゼは、様々なタンパク質中で特殊チロシン残基のフォスフォリル化を触媒する。そのようなフォスフォリル化反応は、細胞の成長および分化調整における幾多の細胞形成過程で一役を担っている。タンパク質チロシンキナーゼは受容体チロシンキナーゼと非受容体チロシンキナーゼとに区分される。受容体チロシンキナーゼ(RTKs)のファミリーは58のキナーゼからなっている(Manning G.ら、2002年刊、「Science」298号、1912〜1934ページ)。RTKsは細胞外リガンドドメイン、膜間ドメインおよび通例チロシンキナーゼ活性を含む細胞内ドメインを有している。RTKsは、例えば成長因子など細胞外刺激剤の信号伝送を仲介する。
【0003】
リガンド結合は、RTKsの二量重合化およびそれらの細胞内ドメインにおける相互発生自己フォスフォリル化をもたらす。細胞のタイプによっては、それにより、特殊な細胞内結合タンパク質が編成され(特に、非受容体チロシンキナーゼ)、それを通して細胞内で信号加工が行われる(Schlessinger J.2000年刊、「Cell」103号、211〜225ページ)。これに数えられるのが、EGF(表皮増殖因子)、VEGF(血管、内皮細胞増殖因子)、FGF(線維芽細胞増殖因子)、PDGF(血小板誘導成長因子)などの成長因子の受容体ファミリー、さらにはインスリン受容体ファミリーおよび大きなエプリン受容体ファミリーなどである。
【0004】
RTKs内の最大のファミリーはエプリン(Eph)受容体が占めている。これは、その配列分類およびリガンド特異性に応じてEphA受容体(9種類)の群とEphB受容体(6種類)の群に細分される(Kullander K.およびKlein R.2002年刊、「Nat.Rev.Mol.Cell Biol.」3号、475〜486ページ、Cheng N.ら、2002年刊、「Cyt.and growth factor Rev.」13号、75〜85ページ)。Eph受容体は、エプリンAまたはエプリンBファミリーの膜安定リガンドによって活性化される。エプリンAは糖脂質(GPI)を通じて細胞膜内で結合固定しているが、他方エプリンBは透過膜領域および細胞内ドメインを有している。
【0005】
エプリンとEph受容体間の相互作用が、エプリン発現細胞およびEph受容体保有細胞における二方向性信号伝送を招来する。エプリンおよびEph受容体は、胎児成育および成人組織における幾多の形態発生過程で一役を担っている。それらは、胎児原形の形成、血管組織の発育(Gerety S.Sら、1999年刊、「Mol.Cell」4号、403〜414ページ)、および神経回路の確立(Flanagan, J.G.およびVanderhaeghen, P.、1998年刊、「Annu.Rev.Neurosci」21号、306〜354ページ)に関わっている。成人組織では、それらは、例えば腫瘍生成時の血管新生過程、子宮内膜状発症時および腸上皮の形態発生時に関与している(Batlle E.ら、2002年刊、「Cell」111号、251〜263ページ)。
【0006】
それらは、細胞レベルで、移行、癒着および毛髪付近の細胞接触を媒介する。例えばEphB2およびEphB4など、Eph受容体の発現増強は、例えば胸部腫瘍および腸腫瘍など様々な腫瘍組織でも観察された(Nakamoto M.およびBergemann A.D.、2002年刊、「Mic.Res.Tech.」59号、58〜67ページ)。EphB2、EphB3およびEphB4によるノックアウト・マウスは、血管組織の形成時に欠陥が発生する。EphB4マウスの生後14日段階での胎児死亡率%は、この過程におけるEphB4の特別な役割を示している(Gerety S.Sら、1999年刊、「Mol.Cell」4号、403〜414ページ)。これらの受容体を、例えばそれらのキナーゼ活性の阻害により調整すれば、例えば、腫瘍成長および/または腫瘍転移が直接的抗腫瘍作用により、または間接的抗神経作用により抑制されることになる。
【0007】
非受容体チロシンキナーゼは、細胞内に溶解形態で存在し、細胞内における(例えば、成長因子、サイトカイン、抗体、癒着分子の)細胞外信号の加工に関与している。これに数え上げられるものとして、特に、src(肉腫)キナーゼ、Tec(肝細胞癌に発現したチロシンキナーゼ)キナーゼ、Abl(Abelson)キナーゼおよびBrk(胸部腫瘍キナーゼ)キナーゼ、さらには巣状癒着キナーゼ(FAK)がある。
【0008】
これらタンパク質チロシンキナーゼの活性変化が、人体組織内の種々様々な生理障害を惹き起こすことがあり、それにより、例えば炎症性、神経性および腫瘍性疾患の原因になる。
WO 01/19828 Aには、種々様々なキナーゼ阻害剤が開示されている。
US 2004116388 Aには、受容体チロシンキナーゼを阻害するトリアジン化合物が開示されている。
【0009】
WO 03/089434 Aには、イミダゾ[1,2a]ピラジン− 8− イル−アミンが、WO 04/00820 Aには、受容体チロシンキナーゼを阻害する各種芳香族単環が開示されている。
DE 24 27 409 A1には、有効な駆虫剤としての9−(置換アミノ)イミダゾ[4,5f]−キノリンに関して記述されている。
【0010】
EP 0 187 705 A2には、感染疾患で免疫調整作用を示すイミダゾ[4,5f]−キノリンのことが記述されている。US 4 716 168にも、免疫調整作用のあるイミダゾ[4,5f]−キノリンに関する記述がある。同様に、US 5,506,235 Aにも免疫刺激作用のあるイミダゾ[4,5f]−キノリンが開示されている。
【0011】
Ferlin M.G.らは、2000年刊の「Bioorganic & Med.Chem」第8巻(6号)、1415〜1422ページに、細胞成長阻害特性を有するピロロ・キノリンを開示している。
WO 04/006846 Aには、受容体チロシンキナーゼを阻害する各種キナゾリン誘導体が開示されている。
【0012】
しかし、受容体チロシンキナーゼ阻害剤の箇所には、Eph受容体阻害剤に関する記述はない。
本発明の課題は、受容体チロシンキナーゼ、特にEph受容体を阻害する化合物を提供することにある。
【0013】
この課題は、請求項1に記載の一般式Aで表わされるキノリン誘導体、請求項11〜15に記載された、キノリン誘導体の使用、請求項16に記載された、キノリン誘導体の製造方法および請求項17に記載された、キノリン誘導体を含む医薬剤によって解決される。有利な実施形態は従属請求項に記載されている。
【0014】
本発明は、下記の一般式Aで表わされるキノリン誘導体、そのN−酸化物、溶媒化合物、水化物、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーおよび塩に関する。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、
Aは−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリール、−C3〜C12−シクロアルキルおよび−C3〜C12−ヘテロシクロアルキルを含む群から選択され、
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C2〜C6−アルケニル、−C2〜C6−アルキニル、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリール、−C1〜C6−アルコキシ、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルコキシ、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルキル、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルキル、−(CH2n−C6〜C12−アリール、−(CH2n−C5〜C18−ヘテロアリール、−(CH2n−C3〜C10−シクロアルキル、−(CH2n−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−フェニレン−(CH2p−R6、−(CH2pPO3(R62、−(CH2p−NR56、−(CH2p−NR4COR5、−(CH2p−NR4CSR5、−(CH2p−NR4S(O)R5、−(CH2p−NR4S(O)25、−(CH2p−NR4CONR56、−(CH2p−NR4COOR5、−(CH2p−NR4C(NH) NR56、−(CH2p−NR4CSNR56、−(CH2p−NR4S(O)NR56、−(CH2p−NR4S(O)2NR56、−(CH2p−COR5、−(CH2p−CSR5、−(CH2p−S(O)R5、−(CH2p−S(O)(NH)R5、−(CH2p−S(O)25、−(CH2p−S(O)2NR56、−(CH2p−CO25、−(CH2p−CONR56、−(CH2p−CSNR56、−OR5、−(CH2p−SR5および−CR5(OH)−R6を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり単一型または多重型であり、ここで、−C1〜C6−アルキル、−C2〜C6−アルケニル、−C2〜C6−アルキニル、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリールおよび/または−C1〜C6−アルコキシは非置換であるか、あるいは互いに独立してヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、フェニル、NR56、アルキルおよび/または−OR5によって単一的に、または多重に置換され、ここで、−C3〜C10−シクロアルキルおよび−C1〜C10−アルキルの炭素骨格は、互いに独立して窒素原子、酸素原子、硫黄原子および/またはC=O−基および/または一つまたは複数の二重結合を含むことができ、および/またはR1およびR2は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/または−NR4により任意選択的に置換され、
【0017】
X、Y、Zは−CR3=、−CR34−、−C(O)−、−N=、−S−、−O−、NR3−、−S(O)2−、−S(O)−および−S(O)NH−を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、X、YおよびZの間に単一結合または二重結合が存在し、
3は水素、−C1〜C10−アルキルまたは−C1−C10−アルカノイルであり、
4は水素または−C1〜C10−アルキルであり、
【0018】
5およびR6は水素、−C1〜C10−アルキル、−C2〜C10−アルケニル、−C2〜C10−アルキニル、−C1〜C6−アルコキシ、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリールおよび−C5〜C18−ヘテロアリールを含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、ここで、−C1〜C10−アルキル、−C2〜C10−アルケニル、−C2〜C10−アルキニル、−C1〜C6−アルコキシ、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリールおよび/または−C5〜C18−ヘテロアリールは非置換であるか、あるいは互いに独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−OR7、−NR78、−C(O)NR78、−C(O)OR7および/または−C1−C6−アルキルによって単一的に、または多重に置換され、ここで、−C1〜C6−アルキルは非置換であるか、あるいは互いに独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、−NR78、−OR7および/またはフェニルによって単一的に、または多重に置換され、および/またはR5およびR6は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/またはNR4により任意選択的に置換され、
【0019】
7、R8は水素、−C1〜C4−アルキル、−C6〜C12−アリールおよび−C5〜C18−ヘテロアリールを含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、ここで、アルキル、アリール、ヘテロアリールは非置換であるか、あるいは互いに独立してハロゲンおよび/またはアルコキシによって単一的に、または多重に置換され、またはR7およびR8は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/または−NR4により任意選択的に置換され、
m’、m’’は互いに独立して0〜4であり、
nは1〜6であり、
pは0〜6である)
【0020】
X、Y、Zが互いに独立して、1つ、2つまたは3つのNを意味する限り、
1.部分基X−Y−Z内の骨格はN−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nではない、および
2.YおよびZがそれぞれ同時にCHであれば、XはNHではない
という関係が成り立つ。
【0021】
本発明に基づく化合物は、受容体チロシンキナーゼ、特にEph受容体を阻害する作用のあることが見出された。
【0022】
前段の項目1で挙げた部分基CH−N−NおよびN−N−Nは上記のUS 5,506,235 Aに記述されている。この部分基を有する物質は、US 5,506,235 Aによると、免疫刺激作用を有している。前段の項目1で挙げた部分基N−CH−Nは、DE 24 27 409 A1、EP 0 187 705 A2またはUS 4 716 168に記述されている。この部分基を有する物質は、DE 24 27 409 A1によれば駆虫作用を、EP 0 187 705 A2およびUS 4 716 168によれば免疫調整作用を有している。前段の項目2に挙げた区分に属する、細胞の成長阻害特性を有する化合物については、Ferlin M.G.ら、2000年刊、「Bioorganic & Med.Chem」第8巻(6号)、1415〜1422ページに記述されている。しかし、本段落で取り上げたいずれの資料にもEph受容体阻害剤のことは開示されていない。
【0023】
アルキルとは、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニルおよびデシルなどのそれぞれ直鎖型または有枝型アルキル残基の意味である。
【0024】
アルコキシとは、例えばメチルオキシ、エチルオキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、第2ブチルオキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシまたはデシルオキシなどのそれぞれ直鎖型または有枝型アルコキシ残基の意味である。
【0025】
アルケニル置換基はそれぞれ直鎖型または有枝型であるが、例えば次の残基、つまり、ビニル、プロペン−1−イル、プロペン2−イル、ブト−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−2−イル、ブト−2−エン−1−イル、ブト−2−エン−2−イル、2−メチル−プロプ−2−エン−1−イル、2−メチル−プロプ−1−エン−1−イル、ブト−1−エン−3−イル、ブト−3−エン−1−イル、アリルを指している。
【0026】
アルキニルとは、それぞれ2〜6、好ましくは2〜4のC原子を含む直鎖型または有枝型のアルキニル残基のことである。例えば次の残基、つまり、エチニル、プロピン−1−イル、プロピン−3−イル、ブト−1−イン−1−イル、ブト−1−イン−4−イル、ブト−2−イン−1−イル、ブト−1−イン−3−イルが適している。
【0027】
硫黄、窒素または酸素など、一つまたは複数のヘテロ原子を含むことのできるシクロアルキルとしては、例えば、オキシラニル、オキシエタニル、アジリジニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ジオキサニル、ピペリジニル、モルフォリニル、ジチアニル、チオモルフォリニル、ピペラジニル、トリチアニル、キヌクリジニルが挙げられる。
【0028】
シクロアルキルとは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルなどの単環アルキル環、およびまた、例えばアダマンタニルなどの2環リングまたは3環リングを意味している。シクロアルキル環は非置換であっても、あるいは単一的に、または多重に置換してもよい。本発明に基づくシクロアルキルはC3〜C12の炭化水素原子を含んでいるが、C3〜C10−の炭化水素原子を含むシクロアルキルが好ましく、C3〜C6−の炭化水素原子を含むシクロアルキルが特に好ましい。
【0029】
アリール残基はそれぞれ6〜12の炭素原子を有している。その残基は、単環型でも、あるいは二環型でも可能であり、例えばナフチル、ビフェニルおよび特にフェニルがある。
【0030】
ヘテロアリール残基は、それぞれ5〜18の環状原子、好ましくは5〜10の環状原子、特に好ましくは5〜7の環状原子を含み、且つ炭素の代わりに酸素、窒素または硫黄の群から一つまたは複数の同一または異なったヘテロ原子を有する芳香族環式系を有する。この残基は、単環、二環または三環形式を取ることが可能であり、加えて、それぞれベンゾ縮合も可能である。もちろん、当業者の観点から、特に環応力の点から有意な組み合わせだけが対象になる。
【0031】
ヘテロアリール環は、非置換の形態でも、あるいは単一または多重置換の形態でも可能である。例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルおよび例えば1,3−ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾキサゾリル、ベンジミダゾリル、インダゾリル、インドリル、イソインドリル、オキセピニル、アゾシニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンジミダゾリル、プリニル、キノリニル、イソキノリニル、キノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、キサンテニルなどこれら残基のベンゾ誘導体が挙げられる。
【0032】
ハロゲンとは、それぞれ弗素、塩素、ブロムまたは沃素の意味である。
【0033】
3〜C12−のヘテロシクロアルキルは、3〜12の炭素原子、好ましくは3〜10の炭素原子、特に好ましくは3〜6の炭素原子を含んでいて、酸素、窒素および/または硫黄の少なくとも1つの原子によって環が破断された、場合によっては−(CO)−、−SO−または−SO2−基のうちの単一基または複数の同一または異なる基によって環が破断された、および場合によっては環が一つまたは複数の二重結合を含むアルキル環を有している。もちろん、当業者の観点から、特に環応力の点から有意な組み合わせだけが対象になる。本発明に基づくC3〜C12−のヘテロシクロアルキルは、単環型だけでなく、二環型あるいは三環型もある。単環型複素環としては、例えば、オキシラニル、オキセタニル、アジリジニル、アゼチジニル、テトラヒドロフラニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、ジオキサニル、ピペリジニル、モルフォリニル、ジチアニル、チオモルフォリニル、ピペラジニル、トリチアニル、キヌクリジニルなどが挙げられる。
【0034】
本出願で使用されている「C1〜C10」の表現は、例えば「C1〜C10−アルキル」の定義付けの関係では1〜10という有限数の炭素原子、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10の炭素原子を有するアルキル基を表わしている。さらに、「C1〜C10」の定義は、可能なそれぞれの部分領域、例えば、C1〜C10、C2〜C9、C3〜C8、C4〜C7、C5〜C6、C1〜C2、C1〜C3、C1〜C4、C1〜C5、C1〜C6、C1〜C7、C1〜C8、C1〜C9、C1〜C10、その中でも好ましくはC1〜C2、C1〜C3、C1〜C4、C1〜C5、C1〜C6であること、その中でも好ましくはC1〜C4であることも定義の中に含まれていると解釈される。
【0035】
上と同様に、「C2〜C10」の表現は、例えば「C2〜C10−アルケニル」および「C2〜C10−アルキニル」の定義付けの関係では2〜10という有限数の炭素原子、すなわち、2、3、4、5、6、7、8、9または10の炭素原子を有するアルケニル基またはアルキニル基を表わしている。「C2〜C10」の定義は、可能なそれぞれの部分領域、例えば、C2〜C10、C3〜C9、C4〜C8、C5〜C7、C2〜C3、C2〜C4、C2〜C5、C2〜C6、C2〜C7、C2〜C8、C2〜C9、その中でも好ましくはC2〜C4であることも定義の中に含まれていると解釈される。
【0036】
さらに、「C1〜C6」の表現は、例えば「C1〜C6−アルコキシ」の定義付けの関係では1〜6という有限数の炭素原子、すなわち、1、2、3、4、5または6の炭素原子を有するアルコキシ基を表わしている。「C1〜C6」の定義は、可能なそれぞれの部分領域、例えば、C1〜C6、C2〜C5、C3〜C4、C1〜C2、C1〜C3、C1〜C4、C1〜C5、C1〜C6、その中でも好ましくはC1〜C4であることも定義の中に含まれていると解釈される。
【0037】
本出願の範囲表示で明確に指定されていない場合はいずれも、上記の例で挙げた範囲「C1〜C10」、「C2〜C10」および「C1〜C6」に準じて定義付けされている。
【0038】
異性体とは、同一の分子式を持ちながら化学構造の異なる化合物のことである。これは、一般には構造異性体と立体異性体に区別される。構造異性体は同じ分子式を有するが、その原子または原子群の結合態様が異なっている。これに数え上げられるのは、官能性異性体、位置異性体、互変異性体または原子価異性体である。立体異性体は、原則として同じ構造(組織体)を有しており、したがって構造式も同じであるが、しかし原子の空間配置が異なっている。
【0039】
一般には、立体配置異性体と立体配座異性体は区別される。立体配置異性体は、結合破断でしか相互移行し得ない立体異性体である。これに数え上げられるのは、エナンチオマー、ジアステレオマーおよびE/Z(シス/トランス)異性体である。エナンチオマーは、互に像および鏡像のような性質を呈し、対称平面を持たない立体異性体である。エナンチオマーでない立体異性体はすべてジアステレオマーと称される。特殊例は、二重結合におけるE/Z(シス/トランス)異性体である。立体配座異性体は、単一結合の回転によって互いに移り変わることのできる立体異性体である。異性種類の相互区分にはIUPAC規則の項目E(「Pure Appl.Chem.」45号、11〜30ページ、1976年刊)が参考になる。
【0040】
一般式Aで表わされる、本発明に基づくキノリン誘導体は互変異性体の可能性を含んでおり、EまたはZ異性体を有している。また、キラル中心が存在する場合は、ラセミ体およびエナンチオマーも含んでいる。この場合は二重結合とも見なされる。
【0041】
本発明に基づくキノリン誘導体は、溶媒化合物、特に水化物の形態で存在することも可能である。したがって、その場合では本発明に基づく化合物は、本発明に基づく化合物における結晶格子の構造要素として、特に極性溶媒の水を含んでいる。極性溶媒、特に水の成分は、化学量論的比率で、あるいは非化学量論的比率でも存在することができる。化学量論的な溶媒化合物、水化物とは、ヘミ、(セミ)、モノ、セスキ、ジ、トリ、テトラ、ペンタ等々の溶媒化合物または水化物も含んでいる。
【0042】
N酸化物は、一般式Aで表わされる、本発明に基づく化合物において少なくとも1つの窒素が酸化され得ることを意味している。
【0043】
塩としては、酸機能を含んでいれば、例えば、溶解性良好なアルカリ塩、アルカリ土類塩およびN−メチル−グルカミン、ジメチル・グルカミン、エチル−グルカミン、リシン、1,6−ヘキサジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、サルコシン、セリノール、トリス−ヒドロキシ−メチル−アミノ−メタン、アミノプロパンジオール、Sovak塩基、1−アミノ−2,3,4−ブタントリオールなど有機、無機塩基の生理的相容性のある塩が適している。
【0044】
塩基機能を含んでいれば、塩酸、硫酸、燐酸、クエン酸、酒石酸など有機酸、無機酸の生理的相容性のある塩が適している。
【0045】
官能基は反応過程の間、必要に応じて保護基により保護することができる。そのような保護基になり得るのは、特にエステル、アミド、ケタール/アセタール、ニトロ基、カルバミン酸塩、アルキルエーテル、アリルエーテル、ベンジルエーテルまたはシリルエーテルである。シリルエーテルの構成成分になり得るものとしては、特に、トリメチルシリル(TMS)、tert−ブチル−ジメチルシリル(TBDMS)、tert−ブチル−ジフェニルシリル(TBDPS)、トリエチルシリル(TES)などの化合物がある。それらの製造については実験の部に記述する。
【0046】
前記の一般式Aで表わされるキノリン誘導体は、X、Y、Zが互いに独立して1つ、2つまたは3つのNを意味しているのであれば、
1.部分基X−Y−Z内の骨格がN−N−CH、N−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nでないこと、および
2.YおよびZそれぞれが同時にCHであれば、XがNHでないこと
を条件として、優先的に使用される。
【0047】
前記の一般式Aで表わされるキノリン誘導体が優先的に使用される。但し、式中の記号は次の意味である。
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C6〜C12−アリール、−C1〜C6−アルコキシ、−NR56、−NR4COR5、−NR4S(O)R5、−NR4S(O)25、−NR4CONR56、−NR4S(O)NR56、−NR4S(O)2NR56、−COR5、COOR5、−S(O)R5、−S(O)(NH)R5、−S(O)25、−S(O)2NR56、−CO25、−CONR56、OR5および−CR5(OH)−R6を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので単一型または多重型である、および
m’、m’’=互いに独立して0〜3
とする。
【0048】
一般式A中のR3は、好ましくは、水素とする。
一般式A中のAは、好ましくは、フェニルとする。
【0049】
一般式Aで表わされる化合物のうち、環Aがフェニルで、R1およびR2が、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C1〜C6−アルコキシ、−NH−C(O)−NH−アリール、−C1〜C4−アルキル−CO−NH−、−COOR5を、および、好ましくは、−COORN(ここで、RNはH、アルキル、アルケニル、シクロアルキルまたはアリールとする)、−CR5(OH)−R6および−CONH2を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので単一型または多重型であり、
m’、m’’が互いに独立して、その値が0〜3である化合物が特に好ましい。
【0050】
その場合最も好ましいのは、R1およびR2が、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、−CH3、−C25、CH3O−、C25O−、HOCH2−、CH3CONH−、−NH−C(O)−NH−フェニル、−COOHおよび−CONH2を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので単一型または多重型であるという化合物である。
【0051】
そのほか、X、YおよびZが−CR4=、−CR45−、−C(O)−、−N=、−S−、−O−、−NR4−、−S(O)2−、−S(O)−および−S(O)NH−を含む基から互いに独立して選択されるものであって、その場合N、SまたはOが環に多重に存在することのない、一般式Aで表わされるキノリン誘導体も好ましい。この場合、好ましくは、環Aはフェニル、m’およびm’’=0〜2とする。
【0052】
さらには、X、YおよびZが−S(O)2−、−S−、−NH−、−CH=、−C(CH3)=および/または−CH2−である、一般式Aで表わされる化合物も好ましい。
【0053】
一般式Aで表わされるキノリン誘導体の部分基X−Y−Zにおける骨格は、−S−CH=CH−、−S−C(C1〜C6−アルキル)=N−を含む、好ましくは、−S−C(C1〜C3−アルキル)=N−、より好ましくは、−S−C(CH3)=N−、−S(O)2−CH2−CH2−および−CH=CH−S−を含む基から選択されていれば特に好都合である。
【0054】
最も好ましいのは次の化合物である。
1)4−メチル−3−(チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノール
2)4−メチル−3−(2−メチル−チアゾロ[4,5−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノール
3)4−メチル−3−(チエノ[2,3−f]キノリン−9−イル−アミノ)フェノール
4)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メチル−フェノール
5)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノール
6)4−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−3−メチル−フェノール
7)2−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノール
8)4−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノール
9)[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)フェニル]−メタノール
10)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−安息香酸
【0055】
11)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−ベンズアミド
12)(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−(3−メトキシフェニル)アミン
13)N−[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェニル]−アセタミド
14)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−5−メトキシフェノール
15)5−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−2−メチルフェノール
16)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−2−メチルフェノール
17)3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−5−メチル−フェノール
18)4−クロロ3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−5−メチル−フェノール
19)2−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メトキシ−フェノール
20)(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−アミン
【0056】
21)[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メトキシ−フェニル]−メタノール
22)1−[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェニル]−3−フェニル−尿素
23)1−[4−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェニル]−3−フェニル−尿素
24)(3,5−ジメトキシ−フェニル)−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−アミン
25)(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−(3,4,5−トリメトキシ−フェニル)−アミン
26)N3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−4−メチル−フェニル−1,3−ジアミン
27)1−[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メチル−フェニル]−3−フェニル−尿素
【0057】
本発明に基づく、一般式Aで表わされるキノリン誘導体は、受容体チロシンキナーゼ、特にEphキナーゼを阻害する。その作用は、例えば、血管、リンパ管または脈管の新生と関係する疾患、血管障害、生体細胞の過剰増殖を原因とする疾患、あるいは慢性または急性の神経変性疾患に有効である。したがって、一般式Aで表わされる本キノリン誘導体は医薬剤として使用することができる。
【0058】
治療の対象は、特に人間であるが、しかし例えば犬や猫など類似哺乳動物種にも使用される。
血管新生および/または脈管新生による疾患は、血管の成長を阻害するか(抗血管新生)、または促進(血管新生促進)することで治療することができる。抗血管新生における使用は、例えば腫瘍血管新生、子宮内膜症、糖尿病性またはその他原因による網膜症、あるいは老人性斑変性に対して行われる。血管新生促進のための使用は、例えば心筋梗塞、あるいは脳内虚血または神経外傷による急性神経変性疾患に対して行われる。
【0059】
血管疾患とは、狭窄症、動脈硬化、再狭窄症、またはリューマチ性関節炎などの炎症性疾患のことを言う。
過剰増殖疾患とは、固形腫瘍、非固形腫瘍または非ガン性の皮膚細胞過剰増殖のことを言う。なお、固形腫瘍とは、特に乳房、結腸、腎臓、肺および/または脳の腫瘍を指している。非固形腫瘍とは、なかでも白血病のことであり、非ガン性の皮膚細胞過剰増殖とは、特に乾癬、湿疹、強皮症または良性の前立腺肥大のことである。
【0060】
慢性の神経変性疾患とは、特にハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、AIDS性認知症またはアルツハイマー病のことを言う。
一般式Aで表わされるキノリン誘導体は、インビトロまたはインビボでの診断において、オートラジオグラフおよび/またはPET(陽電子放射断層撮影法)による組織内受容体の同定目的にも同様に使用することができる。
当該物質は、特にまた、診断目的に放射能標識を付けることもできる。
【0061】
本発明に基づくキノリン誘導体は、医薬剤としての使用には、有効物質のほか、例えば水、ゼラチン、アラビアゴム、乳糖、澱粉、ステアリン酸マグネシウム、滑石、植物油、ポリアルキレングリコールなど、腸内または腸管外への適用に適した製薬用の有機または無機の不活性担体物質も含む製薬用製剤の形態に加工される。製薬用製剤は、例えば錠剤、糖衣剤、坐薬、カプセルなどの固形形状に、または例えば溶液、懸濁液またはエマルジョンなどの液体形状にすることができる。そのほか、必要に応じて、防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤などの補助剤、浸透圧変更用の塩または緩衝剤が含まれる。
【0062】
これらの製薬用製剤も同様に本発明の対象である。
腸管外の適用には、特に注射溶液または懸濁液が、とりわけポリヒドロキシエトキシル化されたひまし油に溶かした活性化合物の水溶液が適している。
担体系としては、胆汁酸の塩、あるいは動物性または植物性のリン脂質など界面活性補助剤も使用できるほか、それらの混合物およびリポソームまたはそれらの構成成分も使用することができる。
【0063】
経口投与には、特に、滑石および/または例えばラクトース、とうもろこし澱粉または馬鈴薯澱粉など炭化水素系の担体または結合剤を含む錠剤、糖衣剤またはカプセルが適している。適用は、例えば、必要に応じて甘味料の加えられたシロップなど、液状形態で行うこともできる。
上記の腸内、腸管外投与および経口投与も同様に本発明の対象である。
【0064】
有効物質の用量は、投与形態、患者の年齢および体重、治療対象である疾病の種類および重病度、その他類似ファクタによって変動することがある。1日当りの用量は0.5〜1,000mgであるが、この用量は、1日1回の単独用量として、あるいは2回またはそれ以上の回数に分割して投与することもできる。
【0065】
一般式Aで表わされるキノリン誘導体を少なくとも1種類含む、上記疾患の治療用医薬剤も同様に本発明の対象である。その場合当該医薬剤は、必要に応じて、適した調製物質および担体物質を含むことができる。
【0066】
原料化合物の製造に関する記述がない限り、これは、当業者間で知られた方法により、または公知の化合物に準じて、あるいはここで記述された方法により製造することができる。ここに記述された置換はいずれも、並列反応器により、または作業技術の組み合わせによって行うことも可能である。
【0067】
異性体混合物は、例えば結晶化、クロマトグラフィーまたは塩生成など常用の方法によってエナンチオマーまたはE/Z−異性体に分離することができる。
塩の製造は、通常どおり、一般式Aで表わされる化合物の溶液を、必要に応じて溶液状にした当量または過剰量の塩基または酸と混合させ、沈殿物を分離させるか、またはその溶液を常法により精製することによって行う。
【0068】
本発明に基づくキノリン誘導体の製造方法も同様に本発明の対象である。
一般式Aで表わされる、本発明に基づくキノリン誘導体の製造で主として使用される中間体は、一般式I〜VIで表わされる下記の化合物である。
【0069】
本発明に基づく化合物の製造
方法1
【化2】

【0070】
一般式Aで表わされる、本発明に基づくキノリン誘導体は、例えば図式1に示された方法で製造することができる。式中の残基Kは、例えばハロゲンまたはn=1〜3として−OS(O)2n2n+1、残基Rはメチルまたはエチルとすることができ、残基X、YおよびZは一般式Aの場合と同一の意味を有している。必要な原料物質は、市場から調達するか、または文献に記載の方法に従って、または文献に公表された方法に準じて製造する。
【0071】
一般式Iで表わされた化合物を、例えばマレイン酸ジエチルエトキシメチレンなどのマレイン酸ジアルキルアルコキシメチレンに付加することにより、一般式IIで表わされる化合物が生成される。次に、これらの化合物を、好ましくは熱条件下で一般式IIIで表わされる化合物に環状化する。この環状化ではリューイス酸の酸o−を使用することもできる。続いてエステルを鹸化するが、それにより、一般式IVで表わされる化合物が得られる。これは、好ましくは、次に熱条件下でデカルボキシル化する。その場合、一般式Vで表わされる化合物が生成される。この方法に代え、一般式IIIで表わされるアルキルエステルの直接的なデカルボキシル化を行うこともできる。
【0072】
上記の熱条件によるほか、文献に公表されている、一般式IIIで表わされる化合物および一般式IVで表わされる化合物を原料として、それらのデカルボキシル化による別な方法を使用することもできる。次に、一般式VIで表わされる化合物が、例えば塩化チオニル(K=Cl)またはパーフルオルアルキルスルホン酸無水物(K=パーフルオルアルキルスルフォニル)での置換により製造される。一般式Aで表わされる化合物は、一般式VIで表わされる化合物にアミン((R1m’, (R2m’’ArNR3H)を付加することにより製造することができる。その場合、必要に応じて、さらに残基X、YおよびZに変更を加えることができる。場合によっては中間段階で含まれることのある、カルボニル基、ヒドロキシ基またはアミノ基などの官能基は、その間公知の方法に従って保護基により保護することができる。
【0073】
以下では、一般式Aに相当する、本発明に基づく環系の例を表示する。
【0074】
【化3】

【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
一般式Aに対応して、上記例における5原子異種環状化合物の−N=および−NH−の代わりに−NR4−を使用することもできる。ここでR4は、例えばC1〜C10−アルキルまたはC1〜C10−アルカノイルとする。その場合では−N=にはNからの二重結合が割り当てられよう。
【0078】
5原子環のX、YおよびZが炭素である限り、これらも同様に単独に、または多重的に置換することができ、例えば残基としてアルキルを有することができる。
【0079】
X、Y、Zが互いに独立して、1つ、2つまたは3つのNを意味する限り、
1.部分基X−Y−Z内の骨格はN−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nではない、および
2.YおよびZがそれぞれ同時にCHであれば、XはNHではない
という関係が成り立つ。
【0080】
より好ましい場合は、X、Y、Zが互いに独立して、1つ、2つまたは3つのNを意味する限り、
1.部分基X−Y−Z内の骨格はN−N−CH、N−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nではない、および
2.YおよびZがそれぞれ同時にCHであれば、XはNHではない
という関係が成り立つ。
【0081】
実施例14−メチル−3−(チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
実施例1a) 2−(ベンゾ[b]チオフェン−5−イルアミノメチレン)−マロン−酸ジエチルエステルの製造
【化6】

【0082】
5mlのマレイン酸ジエチルエトキシメチレンに540mgのベンゾ[b]チオフェン−5−イラミンを溶かした溶液を130℃で1.5時間撹拌する。続いて、当反応混合物を酢酸エチルで希釈する。塩化ナトリウム飽和水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムを通して乾燥させ、真空内で濃縮する。当粗製物をカラムクロマトグラフィーにより、シリカゲルおよびヘキサン/酢酸エチルを用いて精製する。1.88gの生成物が得られる。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.30〜1.45(6H);4.20〜4.38(4H);7.16(1H);7.30(1H);7.51(1H);7.58(1H);7.86(1H);8.16(1H);11.12(1H)ppm.
【0083】
実施例1b):9−オキソ−6,9−ジヒドロ−チエノ[3,2−f]キノリン−8−カルボン酸−エチルエステルの製造
【化7】

【0084】
項目1aに記載された化合物315mgを2mlのジフェニルエーテルに溶かした溶液を240℃で35分間撹拌する。冷却後シクロヘキサンを混合し、23℃で1時間追加撹拌する。沈殿生成物を吸引濾過し、ジクロルメタン/メタノール(95:5)混合物で再結晶化させる。159mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=1.30(3H);4.23(2H);7.61(1H);8.02(1H);8.34(1H);8.56(1H);8.94(1H);12.50(1H)ppm.
【0085】
実施例1c):9−オキソ−6,9−ジヒドロ−チエノ[3,2−f]キノリン−8−カルボン酸の製造
【化8】

【0086】
実施例1bに記載された化合物1gを15mlのエタノールに溶かした溶液に、500mgの水酸化ナトリウムを含む水溶液を加える。循環下で2時間煮沸する。冷却後2規定の塩酸で酸処理する。次に、23℃で1時間追加撹拌する。続いて吸引濾過する。902mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=7.80(1H);8.18(1H);8.53(1H);8.84(1H);8.96(1H);13.67(1H);15.93(1H)ppm.
【0087】
実施例1d):6H−チエノ[3,2−f]キノリン−9−オンの製造
【化9】

【0088】
実施例1cに記載された化合物100mgを3mlのジフェニルエーテルに溶かした溶液を、270℃で1時間撹拌する。冷却後シクロヘキサンで希釈し、23℃で8時間追加撹拌する。濾過後74mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=6.19(1H);7.55(1H);7.90〜8.03(2H);8.26(1H);8.94(1H);11.99(1H)ppm.
【0089】
実施例1e):9−クロルチエノ[3,2−f]キノリンの製造
【化10】

【0090】
実施例1dに記載された化合物150mgを1.5mlの塩化チオニルに溶かした溶液に、N,N−ジメチルホルムアミドを1滴加え、その後100℃で1時間撹拌する。続いて当反応混合物を真空で濃縮する。トルエン中での溶解および真空中での濃縮を3回繰り返す。次に、生成物に2規定の苛性ソーダを加えて20分間撹拌する。吸引濾過し、残滓を水で洗って、真空中50℃で乾燥する。138mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=7.85(1H);8.00(1H);8.12(1H);8.46(1H);8.76〜8.92(2H)ppm.
【0091】
実施例1f):4−メチル−3−(チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
【化11】

【0092】
実施例1eに記載された化合物130mgと3−ヒドロキシ−6−メチルアニリン85mgを3mlのアセトニトリルに溶かした溶液を金属管内で160℃に加熱する。当反応混合物を24時間同温度に保ち、その後冷却し、真空中で濃縮する。シリカゲルの使用下でヘキサン/酢酸エチル混合物によりクロマトグラフィー処理する。54mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.08(3H);6.47(1H);6.50〜6.61(2H);7.10(1H);7.85(1H);7.96(1H);8.10(1H);8.29(1H);8.40(1H);8.54(1H);9.20(1H)ppm.
【0093】
実施例24−メチル−3−(2−メチル−チアゾロ[4,5−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
実施例2a):2−[(2−メチルベンゾチアゾール−5−イルアミノ)−メチレン]−マロン酸−ジエチルエステルの製造
【化12】

【0094】
実施例1aに準じて、1gの5−アミノ−2−メチルベンゾチアゾールをマロン酸ジエチルエトキシメチレンに溶かした溶液から1.31gの生成物が得られる。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.30〜1.45(6H);2.84(3H);4.20〜4.38(4H);7.15(1H);7.71(1H);7.78(1H);8.60(1H);11.13(1H)ppm.
【0095】
実施例2b):2−メチル−9−オキソ−6,9−ジヒドロチアゾロ[4,5−f]キノリン−8−カルボン酸エチルエステルの製造
【化13】

【0096】
実施例1bに準じて、項目2aに記載された化合物1.31gをジフェニルエーテルに溶かした溶液から1.09gの生成物が得られる。
1H−NMR(CDCl3):δ=1.46(3H);3.00(3H);4.50(2H);8.01(1H);8.13(1H);9.28(1H);13.11(1H)ppm.
【0097】
実施例2c):2−メチル−9−オキソ−6,9−ジヒドロ−チアゾロ[4,5−f]キノリン−8−カルボン酸の製造
【化14】

【0098】
実施例1cに準じて、実施例2bに記載された化合物1.05gから788mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.92(3H);7.80(1H);8.53(1H);8.91(1H);13.55(1H)ppm.
【0099】
実施例2d):2−メチル−6H−チアゾロ[4,5−f]キノリン−9−オンの製造
【化15】

【0100】
実施例1dに準じて、実施例2c)に記載された化合物150mgをジフェニルエーテルに溶かした溶液から55mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.92(3H);6.17(1H);7.61(1H);7.90(1H);8.28(1H);11.81(1H)ppm.
【0101】
実施例2e):9−クロロ−2−メチル−チアゾロ[4,5−f]キノリンの製造
【化16】

【0102】
実施例1eに準じて、実施例2dに記載された化合物160mgを塩化チオニルに溶かした溶液から128mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.96(3H);7.92(1H);8.11(1H);8.56(1H);8.91(1H)ppm.
【0103】
実施例2f):4−メチル−3−(2−メチル−チアゾロ[4,5−f]キノリン−9−イル−アミノ)−フェノールの製造
【化17】

【0104】
実施例1fに準じて、実施例2e)に記載された化合物50mgおよび3−ヒドロキシ−6−メチルアニリン32mgをアセトニトリルに溶かした溶液から41mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.24(3H);3.00(3H);6.60(3H);6.92(1H);6.99(1H);7.19(1H);7.88(1H);8.32(1H);8.51(1H);9.40(1H);10.95(1H)ppm.
【0105】
実施例34−メチル−3−(チエノ[2,3−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
実施例3a):2−(ベンゾ[b]チオフェン−6−イルアミノメチレン)マロン酸−ジエチルエステルの製造
【化18】

【0106】
実施例1aに準じて、1gの5−アミノ−2−メチルベンゾチアゾールをマロン酸ジエチルエトキシメチレンに溶かした溶液から1.31gの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=1.20〜1.35(6H);4.08〜4.30(4H);7.43(2H);7.70(1H);7.89(1H);8.10(1H);8.50(1H);10.86(1H)ppm.
【0107】
実施例3b):9−オキソ−6,9−ジヒドロ−チエノ[2,3−f]キノリン−8−カルボン酸エチルエステルの製造
【化19】

【0108】
実施例1bに準じて、項目3aに記載された化合物1.31gをジフェニルエーテルに溶かした溶液から1.09gの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=1.33(3H);4.38(2H);7.62(1H);7.89(1H);8.24(1H);8.67(1H);12.76(1H)ppm.
【0109】
実施例3c):9−オキソ−6,9−ジヒドロ−チエノ[2,3−f]キノリン−8−カルボン酸の製造
【化20】

【0110】
実施例2cに準じて、実施例3bに記載された化合物1.05gから788mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=7.72(1H);7.84(1H);8.04(1H);8.41(1H);8.98(1H);13.78(1H)ppm.
【0111】
実施例3d):6H−チエノ[2,3−f]キノリン−9−オンの製造
【化21】

【0112】
実施例1dに準じて、実施例3cに記載された化合物640mgをジフェニルエーテルに溶かした溶液から483mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=6.30(1H);7.55〜7.66(2H);7.80(1H);8.03(1H);8.18(1H);12.23(1H)ppm.
【0113】
実施例3e):トリフルオルメタンスルホン酸−チエノ[2,3−f]キノリン−9−イル−エステルの製造
【化22】

【0114】
実施例3dに記載された物質100mgを2mlのピリジンに溶かした溶液に、250μlのトリフルオロメタンスルホン酸無水物を0℃で加える。その後、21℃に昇温して同温度で45分間撹拌する。続いて、当反応混合物を塩化ナトリウム飽和水溶液へ注ぎ込む。2時間追加撹拌した後で吸引濾過する。残滓を、シリカゲルの使用下でヘキサン/酢酸エチル混合物によるカラムクロマトグラフィーにより精製する。106mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=6.68(1H);7.68(1H);7.75(1H);7.94(1H);8.28〜8.40(1H)ppm.
【0115】
実施例3f):4−メチル−3−(チエノ[2,3−f]キノリン−9−イルアミノ)フェノールの製造
【化23】

【0116】
項目3eに記載された化合物100mgと3−ヒドロキシ−6−メチルアニリン75mgを5mlのアセトニトリルに溶かした溶液を50℃で24時間撹拌する。続いて、沈殿した反応生成物を吸引濾過し、シリカゲルの使用下でヘキサン/酢酸エチル混合物によるカラムクロマトグラフィーにより精製する。75mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.06(3H);6.60(1H);6.78〜6.90(2H);7.26(1H);7.91(1H);8.08(1H);8.21(1H);8.52〜8.65(2H);9.38(1H)ppm.
【0117】
実施例43−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メチル−フェノールの製造
実施例4a):2−(1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−イルアミノ)−メチレン]マロン酸ジエチルエステルの製造
【化24】

【0118】
実施例1aに準じて、340mgの1,1−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−1λ6−ベンゾ[b]チオフェン−5−イルアミンをマロン酸ジエチルエトキシメチレンに溶かした溶液から613mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=1.25(6H);3.32(2H);3.59(2H);4.18(2H);7.50(1H);7.54(1H);7.72(1H);8.42(1H);10.72(1H)ppm.
【0119】
実施例4b:3,3,9−トリオキソ−2,3,6,9−テトラヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−8−カルボン酸エチルエステルの製造
【化25】

【0120】
実施例1bに準じて、項目4aに記載された化合物100mgをジフェニルエーテルに溶かした溶液から162mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=1.28(3H);3.62(2H);3.96(2H);4.22(2H);7.72(1H);7.96(1H);8.56(1H);12.60(1H)ppm.
【0121】
実施例4c:3,3,9−トリオキソ−2,3,6,9−テトラヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−8−カルボン酸の製造
【化26】

【0122】
実施例1cに準じて、実施例4bに記載された化合物444mgから382mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.69(2H);4.00(2H);7.90(1H);8.12(1H);8.97(1H);13.66(1H);14.98(1H)ppm.
【0123】
実施例4d:3,3−ジオキソ−1,2,3,6−テトラヒドロ−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−オンの製造
【化27】

【0124】
実施例1dに準じて、実施例4cに記載された化合物380mgをジフェニルエーテルに溶かした溶液から280mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.59(2H);3.95(2H);6.11(1H);7.63(1H);7.85〜8.02(2H);12.09(1H)ppm.
【0125】
実施例4e:9−クロロ−1,2−ジヒドロ−チエノ[3,2−f]キノリン−3,3−ジオキシドの製造
【化28】

【0126】
実施例1eに準じて、実施例4dに記載された化合物500mgを塩化チオニルに溶かした溶液から512mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.77(2H);4.16(2H);7.90(1H);8.06(1H);8.21(1H);8.95(1H)ppm.
【0127】
実施例4f:3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メチル−フェノールの製造
【化29】

【0128】
実施例1fに準じて、実施例4eに記載された化合物83mgおよび3−ヒドロキシ−6−メチルアニリン80mgをアセトニトリルに溶かした溶液から51mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.10(3H);3.80(2H);4.24(2H);6.49(1H);6.79(1H);6.84(1H);7.26(1H);8.19(1H);8.28(1H);8.52(1H);9.61(1H);9.89(1H)ppm.
【0129】
実施例53−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
【化30】

【0130】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび3−アミノフェノール80mgをアセトニトリルに溶かした溶液から73mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.76(2H);4.22(2H);6.82(1H);6.90(2H);7.02(1H);8.18(1H);8.28(1H);8.58(1H);9.80(1H);9.98(1H)ppm.
【0131】
実施例64−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−3−メチル−フェノールの製造
【化31】

【0132】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび4−アミノ−3−メチル−フェノール90mgをアセトニトリルに溶かした溶液から37mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.78(2H);4.26(2H);6.34(1H);6.80(1H);6.88(1H);7.12(1H);8.15(1H);8.28(1H);8.48(1H);9.43(1H);9.84(1H)ppm.
【0133】
実施例72−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
【化32】

【0134】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび2−アミノフェノール80mgをアセトニトリルに溶かした溶液から59mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.80(2H);4.22(2H);6.52(1H);6.99(1H);7.12(1H);7.28〜7.40(2H);8.16(1H);8.28(1H);8.54(1H);9.48(1H);10.20(1H)ppm.
【0135】
実施例84−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェノールの製造
【化33】

【0136】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび4−アミノフェノール80mgをアセトニトリルに溶かした溶液から47mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.74(2H);4.22(2H);6.78(1H);6.95(2H);7.28(2H);8.12(1H);8.24(1H);8.50(1H);9.65(1H);9.91(1H)ppm.
【0137】
実施例9[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)フェニル]−メタノールの製造
【化34】

【0138】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび3−アミノベンジルアルコール90mgをアセトニトリルに溶かした溶液から88mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.76(2H);4.25(2H);4.58(2H);7.00(1H);7.35(2H);7.46(1H);7.53(1H);8.18(1H);8.39(1H);8.59(1H);9.99(1H)ppm.
【0139】
実施例103−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−安息香酸の製造
【化35】

【0140】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび3−アミノ安息香酸100mgをアセトニトリルに溶かした溶液から65mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.73(2H);4.28(2H);7.06(1H);7.66〜7.83(2H);7.95(1H);8.06(1H);8.20(1H);8.30(1H);8.61(1H);10.00(1H);13.28(1H)ppm.
【0141】
実施例113−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−ベンズアミドの製造
【化36】

【0142】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび3−アミノベンズアミジンアセトニトリル100mgから54mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.78(2H);4.28(2H);7.03(1H);7.52(1H);7.67(2H);7.90(1H);7.99(1H);8.12(1H);8.21(1H);8.29(1H);8.60(1H);9.98(1H)ppm.
【0143】
実施例12(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−(3−メトキシフェニル)アミンの製造
【化37】

【0144】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物90mgおよび3−メトキシフェニルアミン100mgをアセトニトリルに溶かした溶液から106mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.70〜3.88(5H);4.26(2H);6.95〜7.16(4H);7.50(1H);8.19(1H);8.28(1H);8.58(1H);9.90(1H)ppm.
【0145】
実施例13N−[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−フェニル]−アセトアミドの製造
【化38】

【0146】
実施例4fに準じて、実施例4eに記載された化合物150mgおよびN−(3−アミノフェニル)−アセトアミド180mgをアセトニトリルに溶かした溶液から146mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.08(3H);3.74(2H);4.23(2H);7.02(1H);7.16(1H);7.40〜7.55(2H);7.96(1H);8.18(1H);8.28(1H);8.59(1H);9.90(1H);10.32(1H)ppm.
【0147】
実施例143−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−5−メトキシフェノールの製造
実施例14a):トリフルオロメタンスルホン酸−3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル−5−エステルの製造
【化39】

【0148】
実施例3eに準じて、実施例4dに記載された化合物300mgおよび645μlのトリフルオルメタンスルホン酸無水物をピリジンに溶かした溶液から348mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.78(2H);3.90(2H);7.86(1H);8.17(1H);8.30(1H);9.20(1H)ppm.
【0149】
実施例14b):3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−5−メトキシフェノールの製造
【化40】

【0150】
実施例3fに準じて、項目14aに記載された化合物100mgおよび85mgの3−アミノ−5−メトキシフェノールをアセトニトリルに溶かした溶液から59mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=3.60〜3.75(5H);4.07(2H);6.06(1H);6.28(2H);7.35(1H);7.89(1H);8.00(1H);8.27(1H);8.66(1H);9.50(1H)ppm.
【0151】
実施例155−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−2−メチルフェノールの製造
【化41】

【0152】
実施例14bに準じて、実施例14aに記載された化合物120mgおよび80mgの5−アミノ−2−メチルフェノールをアセトニトリルに溶かした溶液から58mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.10(3H);3.67(2H);4.10(2H);6.62(1H);6.74(1H);7.06(1H);7.17(1H);7.87(1H);7.98(1H);8.18(1H);8.59(1H);9.40(1H)ppm.
【0153】
実施例163−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−2−メチルフェノールの製造
【化42】

【0154】
実施例14bに準じて、実施例14aに記載された化合物120mgおよび80mgの3−アミノ−2−メチルフェノールをアセトニトリルに溶かした溶液から32mgの生成物が得られる。
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.00(3H);3.75(2H);4.27(2H);6.35(1H);6.71(1H);7.00(1H);7.18(1H);8.48(1H)ppm.
【0155】
実施例14bに記載された方法に準じて、項目14aに記載された化合物およびそれぞれのアニリン誘導体から、下表に示された実施例が生じる。
【0156】
【表1】

【0157】
【表2】

【0158】
【表3】

【0159】
実施例
構造
名前
【0160】
実施例22および23の構成に必要なアニリンは、次のように表わされる。
1−(3−アミノ−フェニル)−3−フェニル−尿素(実施例22用
3gのニトロアニリンを50mlのジクロルメタンに溶かす。3.5mlのフェニルイソシアネートを加え、23℃で22時間追加撹拌する。続いて、沈殿した反応生成物を濾別する。当粗製物を30mlのテトラヒドロフランと16mlのエタノールからなる混合物に溶かし、150mgのパラジウム/カーボン(10%)を加えて水素の作用下に置き、常圧で1.5時間水素添加する。次に、当反応混合物をセライトに通して濾過する。真空中で濃縮させ、得られた粗製物をジイソプロピルエーテルにより再結晶化させる。2.3gの生成物が得られる。
【0161】
1−(4−アミノ−フェニル)−3−フェニル−尿素(実施例23用
製造は、上記の1−(3−アミノ−フェニル)−3−フェニル−尿素用の方法に準じて行うが、但し原料物質として4−ニトロアニリンを使用する。
【0162】
実施例263−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イル)−4−メチル−フェニル−1,3−ジアミンの製造
【化43】

【0163】
実施例20に記載された化合物100mgを、5mlのテトラヒドロフランと3mlのエタノールからなる混合物に溶かす。20mgのパラジウム/カーボン(10%)を加えて水素の作用下に置き、常圧で4.5時間水素添加する。次に、当反応混合物をセライトに通して濾過する。真空中で濃縮させ、得られた粗製物をシリカゲルの使用下カラムクロマトグラフィーにより精製する。91mgの生成物が得られる。
(d6−DMSO、1滴のDCI;400MHz):δ=2.18(3H);3.70(2H);4.27(2H);6.31(1H);7.41(1H);7.46(1H);7.54(1H);8.23(1H);8.50(1H)ppm.
【0164】
実施例271−[3−(3,3−ジオキソ−2,3−ジヒドロ−1H−3λ6−チエノ[3,2−f]キノリン−9−イルアミノ)−4−メチル−フェニル]−3−フェニル−尿素の製造
【化44】

【0165】
実施例26に記載された化合物22mgを、2mlのジクロルメタンに溶かす。12μlのフェニルイソシアネートを加え、23℃で16時間追加撹拌する。その後、少量のジイソプロピルエーテルで希釈する。沈殿した反応生成物を濾別し、次に、当粗製物をジイソプロピルエーテルと共に撹拌する。20mgの生成物が得られる。
(d6−DMSO、1滴のDCI;400MHz):δ=2.18(3H);3.72(2H);4.22(2H);6.34(1H);6.87(1H);7.18(2H);7.30(1H);7.36(3H);7.54(1H);8.20(2H);8.46(1H)ppm.
【0166】
化合物の生物学的テスト
EphB4用のテストシステム
20ng/mlの遺伝子組換えEphB4キナーゼ(ProQinase(有)、フライブルク/ドイツ)、2.67μg/mlのpolyGluAla Tyr、2μM ATP、25mM HEPES(pH 7.3)、5mM MgCl2、1mM MnCl2、2mM DTT、0.1mM NaVO4、1%(体積/体積)グリセリン、0.02% NP40、EDTA不含のプロテアーゼ阻害剤(Complete/Roche社、50mlに対して1錠)からなる混合物を20℃で10分間潜伏させる。検査用物質を100%DMSO中で溶かし、反応開始前に0.017倍の量を用意する。50mM Hepes(pH7.0)、0.2%BSA、0.14μg/ml PT66−Europium、3.84μg/ml SA−XL665、75mM EDTAからなる1.7倍量の溶液を添加して60分後に、当調製液をPerkinElmer社のDiscovery HTRF測定器で計測する。
【0167】
特に、次の化合物が25μM未満のIC50によりEphB4キナーゼを阻害する。つまり、明細書の実施例1、2、3、4、5および15に記載の本発明に基づく化合物である。実施例2に記載の化合物ではIC50は270nMである。
これは、本発明に基づく物質が受容体チロシンキナーゼ、特にEph受容体およびここでは特にEphB4を阻害することを明確に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式Aで表わされるキノリン誘導体、そのN−酸化物、溶媒化合物、水化物、立体異性体、ジアステレオマー、エナンチオマーおよび塩。
【化1】

(式中、
Aは−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリール、−C3〜C12−シクロアルキルおよび−C3〜C12−ヘテロシクロアルキルを含む群から選択され、
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C2〜C6−アルケニル、−C2〜C6−アルキニル、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリール、−C1〜C6−アルコキシ、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルコキシ、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルキル、−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルコキシ−C1〜C6−アルキル、−(CH2n−C6〜C12−アリール、−(CH2n−C5〜C18−ヘテロアリール、−(CH2n−C3〜C10−シクロアルキル、−(CH2n−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−フェニレン−(CH2p−R6、−(CH2pPO3(R62、−(CH2p−NR56、−(CH2p−NR4COR5、−(CH2p−NR4CSR5、−(CH2p−NR4S(O)R5、−(CH2p−NR4S(O)25、−(CH2p−NR4CONR56、−(CH2p−NR4COOR5、−(CH2p−NR4C(NH)NR56、−(CH2p−NR4CSNR56、−(CH2p−NR4S(O)NR56、−(CH2p−NR4S(O)2NR56、−(CH2p−COR5、−(CH2p−CSR5、−(CH2p−S(O)R5、−(CH2p−S(O)(NH)R5、−(CH2p−S(O)25、−(CH2p−S(O)2NR56、−(CH2p−SO2OR5、−(CH2p−CO25、−(CH2p−CONR56、−(CH2p−CSNR56、−OR5、−(CH2p−SR5および−CR5(OH)−R6を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、単一型または多重型であり、ここで、−C1〜C6−アルキル、−C2〜C6−アルケニル、−C2〜C6−アルキニル、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリール、−C5〜C18−ヘテロアリールおよび/または−C1〜C6−アルコキシは非置換であるか、あるいは互いに独立してヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、フェニル、NR56、アルキルおよび/または−OR5によって単一的に、または多重に置換され、ここで、−C3〜C10−シクロアルキルおよび−C1〜C10−アルキルの炭素骨格は、互いに独立して窒素原子、酸素原子、硫黄原子および/またはC=O−基および/または一つまたは複数の二重結合を含むことができ、および/またはR1およびR2は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/または−NR4により任意選択的に置換され、
X、Y、Zは−CR3=、−CR34−、−C(O)−、−N=、−S−、−O−、NR3−、−S(O)2−、−S(O)−および−S(O)NH−を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、X、YおよびZの間に単一結合または二重結合が存在し、
3は水素、−C1〜C10−アルキルまたは−C1〜C10−アルカノイルであり、
4は水素または−C1〜C10−アルキルであり、
5およびR6は水素、−C1〜C10−アルキル、−C2〜C10−アルケニル、−C2〜C10−アルキニル、−C1〜C6−アルコキシ、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリールおよび−C5〜C18−ヘテロアリールを含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、ここで、−C1〜C10−アルキル、−C2〜C10−アルケニル、−C2〜C10−アルキニル、−C1〜C6−アルコキシ、−C3〜C10−シクロアルキル、−C3〜C12−ヘテロシクロアルキル、−C6〜C12−アリールおよび/または−C5〜C18−ヘテロアリールは非置換であるか、あるいは互いに独立してヒドロキシ、ハロゲン、シアノ、ニトロ、−OR7、−NR78、−C(O)NR78、−C(O)OR7および/または−C1−C6−アルキルによって単一的に、または多重に置換され、ここで、−C1〜C6−アルキルは非置換であるか、あるいは互いに独立してハロゲン、ヒドロキシ、シアノ、−NR78、−OR7および/またはフェニルによって単一的に、または多重に置換されている。および/またはR5およびR6は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/またはNR4により任意選択的に置換され、
7、R8は水素、−C1〜C4−アルキル、−C6〜C12−アリールおよび−C5〜C18−ヘテロアリールを含む群から互いに独立して選択される同一または異なるものであり、ここで、アルキル、アリール、ヘテロアリールは非置換であるか、あるいは互いに独立してハロゲンおよび/またはアルコキシによって単一的に、または多重に置換され、またはR7およびR8は共に、3〜10のメチレン単位からなる架橋を任意選択的に形成し、ここで、2メチレン単位まではO、Sおよび/または−NR4により任意選択的に置換される。
m’、m’’は互いに独立して0〜4であり、
nは1〜6であり、
pは0〜6であり、
という関係にあり、加えてX、Y、Zが互いに独立して、1つ、2つまたは3つのNを意味する限り、
1.部分基X−Y−Z内の骨格はN−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nではない、および
2.YおよびZがそれぞれ同時にCHであれば、XはNHではない
という関係が成り立つものとする。)
【請求項2】
X、Y、Zが互いに独立して、1つ、2つまたは3つのNを意味する場合、
1.部分基X−Y−Z内の骨格はN−N−CH、N−CH−N、CH−N−NまたはN−N−Nではないこと、および
2.YおよびZがそれぞれ同時にCHであれば、XはNHではない
ことを特徴とする、請求項1に記載のキノリン誘導体。
【請求項3】
Aがフェニルであることを特徴とする、請求項1および/または2に記載のキノリン誘導体。
【請求項4】
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C6〜C12−アリール、−C1〜C6−アルコキシ、−NR56、−NR4COR5、−NR4S(O)R5、−NR4S(O)25、−NR4CONR56、−NR4S(O)NR56、−NR4S(O)2NR56、−COR5、COOR5、−S(O)R5、−S(O)(NH)R5、−S(O)25、−S(O)2NR56、−CO25、−CONR56、−OR5および−CR5(OH)−R6を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので単一型または多重型であること、および
m’、m’’=互いに独立して0〜3である
ことを特徴とする、請求項3に記載のキノリン誘導体。
【請求項5】
X、YおよびZが、互いに独立して、−CR4=、−CR45−、−C(O)−、−N=、−S−、−O−、−NR4−、−S(O)2−、−S(O)−および−S(O)NH−を含む群から選択され、ここでN、SまたはOが環に多重に存在しないことを特徴とする、前記請求項の一項に記載のキノリン誘導体。
【請求項6】
X、YおよびZが、−S(O)2−、−S−、−NH−、−CH=、−C(CH3)=および/または−CH2−を表わすことを特徴とする、前記請求項の一項に記載のキノリン誘導体。
【請求項7】
前記部分基X−Y−Zにおける骨格が、−S−CH=CH−、−S−C(C1〜C6−アルキル)=N−、−S(O)2−CH2−CH2−および−CH=CH−S−を含む群から選択されることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のキノリン誘導体。
【請求項8】
3が水素であることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のキノリン誘導体。
【請求項9】
Aはフェニルであり、
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、−C1〜C6−アルキル、−C1〜C4−ヒドロキシアルキル、−C1〜C6−アルコキシ、−C1〜C4−アルキル−CO−NH−、−NH−C(O)−NH−アリール、−COOR5、−CR5(OH)−R6および−CON H2を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので単一型または多重型であり、および
m’、m’’は互いに独立して0〜3である
ことを特徴とする、前記請求項の一項に記載のキノリン誘導体。
【請求項10】
1およびR2は水素、ヒドロキシ、ハロゲン、ニトロ、アミノ、シアノ、−CH3、−C25、CH3O−、C25O−、HOCH2−、CH3CONH−、−NH−C(O)−NH−フェニル、−COOHおよび−CONH2を含む群から互いに独立して選択される同一または異なるもので、単一型または多重型であること
を特徴とする、請求項9に記載のキノリン誘導体。
【請求項11】
医薬剤の製造のため、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の使用。
【請求項12】
血管、リンパ管または脈管の新生と関係する疾患、血管障害、生体細胞の過剰増殖を原因とする疾患、および慢性または急性の神経変性疾患の医薬剤の製造のための、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の使用。
【請求項13】
インビトロまたはインビボでの診断において、オートラジオグラフまたはPET(陽電子放射断層撮影法)による組織内受容体の同定のための、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の使用。
【請求項14】
Eph受容体キナーゼの阻害剤としての、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の使用。
【請求項15】
腸内、腸管外投与および経口投与のための製薬調剤形態での、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の使用。
【請求項16】
次の図式に基づく下記作業ステップを有する、請求項1〜10の一項に記載のキノリン誘導体の製造のための方法。
【化2】

(式中、
Kはハロゲンおよび−OS(O)2n2n+1(n=1〜3)を含む群から選択され、
Rはメチルまたはエチルであり、
X、YおよびZは一般式Aの場合と同じ意味を有する)
ステップa)一般式IIで表わされる化合物の生成を伴う、一般式Iで表わされる化合物のマロン酸ジアルキルオキシメチレンへの付加
b)一般式IIで表わされる化合物の、一般式IIIで表わされる化合物への環状化
c)一般式IVで表わされる化合物の生成を伴う、一般式IIIで表わされる化合物の鹸化
d)一般式Vで表わされる化合物の生成を伴う、一般式IVで表わされる化合物の脱カルボキシル化
e)一般式VIで表わされる化合物の生成を伴う、一般式Vで表わされる化合物の塩化チオニルまたはパーフルオルスルホン酸無水物による置換
f)一般式Aで表わされるキノリン誘導体の生成を伴う、一般式(R1m’,(R2m’’ArNR3H(ここで、R1、R2、R3、m’およびm’’は一般式Aの場合と同じ意味を有する)で表わされるアミンの、一般式VIで表わされる化合物への付加。
【請求項17】
請求項1〜10の一項に記載の少なくとも1種類のキノリン誘導体および適した調製物質、および担体物質を含む医薬剤。

【公表番号】特表2008−524301(P2008−524301A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−547384(P2007−547384)
【出願日】平成17年12月19日(2005.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013955
【国際公開番号】WO2006/066955
【国際公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(300049958)バイエル・シエーリング・ファーマ アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】