説明

キャッピング装置及び液滴吐出装置

【課題】ノズルの密閉性に優れるキャッピング装置及び液滴吐出装置を提供する。
【解決手段】フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を回転させてフィルム部材54を巻き出しながら、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させる。このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。このため、フィルム部材54とノズル面20Aとの間に隙間が生じにくく、ノズルの密閉性に優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャッピング装置及び液滴吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液滴吐出装置としては、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置が知られている。水性インクなどの揮発性のインクを用いたインクジェット記録装置では、インク滴を吐出するノズルからのインクの溶媒が蒸発を抑制するため、記録ヘッドのノズルを密閉するキャッピング装置が設けられる。キャッピング装置には、種々の方式が知られているが、フィルム状ないしベルト状の部材でノズルを密閉する方式として、特許文献1に開示されるインクジェット記録装置が公知である。
【0003】
特許文献1のインクジェット記録装置は、プラテンに対向配置のラインヘッドのインク滴吐出面の前面にラインヘッドの長手方向に沿って移動自在なキャッピングベルトを配置し、巻取り装置に巻回する。キャッピングベルトには非印刷領域に相当するオリフィスが存在する箇所をキャッピング領域としてそのオリフィスを被覆する全幅被覆部分と、印刷領域に相当するオリフィスが存在する箇所を非キャッピング領域としてそのオリフィスを露出させるスリット部分とを形成する。インク吸引装置を上昇してキャッピングベルトを介してラインヘッドのインク滴吐出面に密着させ、スリット部分のオリフィスに限定してこれを吸引する。
【0004】
この構成によれば、ラインヘッドのメンテナンス動作に消費されるインク量を必要最小限にすることによりランニングコストの低減を図ることができる。
【特許文献1】特開平9−239999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、フィルム状の部材でノズルを密閉する場合において、ノズルの密閉性に優れるキャッピング装置及び液滴吐出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に係るキャッピング装置は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドのノズル面に付着するためのフィルム部材と、前記フィルム部材の一端部が巻き付けられ、回転して前記フィルム部材を巻き出し可能な巻付軸と、前記液滴吐出ヘッドのノズルが配置された領域より外側に設けられ、前記フィルム部材の他端部を固定する固定手段と、前記フィルム部材を巻き出す前記巻付軸を前記ノズル面に沿って所定方向へ移動させる移動手段と、前記巻付軸と共に移動し、前記巻付軸から巻き出された前記フィルム部材を前記ノズル面に付着させる付着手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の請求項2に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記巻付軸は、逆回転して、巻き出した前記フィルム部材を巻き取り、前記移動手段は、前記フィルム部材を巻き取る前記巻付軸を前記ノズル面に沿って前記所定方向と反対方向へ前記巻付軸を移動させることを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項3に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記巻付軸と共に移動し、前記ノズル面に付着したフィルム部材を密着させる密着手段を備えたことを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記液滴吐出ヘッドの外側で、前記フィルム部材を前記ノズル面より高い位置に相対移動させる移動手段を備えたことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項5に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記巻付軸と共に移動し、前記付着手段で付着される前記フィルム部材の張力変動を緩和する張力変動緩和手段を備えたことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項6に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記巻付軸と共に移動し、前記付着手段で付着される前記フィルム部材にたるみを発生させるたるみ発生手段を備えたことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項7に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記フィルム部材の前記ノズル面と接触していた面を清掃する清掃部材を備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項8に係るキャッピング装置は、請求項7の構成において、前記フィルム部材は、前記巻付軸に巻き取られながら、前記清掃部材で清掃されることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項9に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記フィルム部材の前記ノズル面と接触する面に封止液を塗布する塗布手段を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項10に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記固定手段は、使用済みの前記フィルム部材を巻き取って前記巻付軸から未使用の前記フィルム部材を巻き出す巻取軸を備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項11に係るキャッピング装置は、請求項1の構成において、前記固定手段は、未使用の前記フィルム部材を巻き出す巻出軸を備え、前記巻付軸は、使用済みの前記フィルム部材を巻き取り、前記巻出軸から未使用の前記フィルム部材を巻き出すことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項12に係る液滴吐出装置は、請求項1〜11のいずれか1項に記載のキャッピング装置と、記録媒体に画像を記録する前記液滴吐出ヘッドと、前記記録媒体を搬送する搬送手段と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1の構成によれば、本発明の構成を有しない場合に比して、フィルム部材とノズル面との間に隙間が生じにくく、ノズルの密閉性に優れる。
【0019】
本発明の請求項2の構成によれば、フィルム部材をノズル面から剥離する際に要する力が小さくなる。
【0020】
本発明の請求項3の構成によれば、フィルム部材のノズル面の凹凸への追従性が向上する。
【0021】
本発明の請求項4の構成によれば、フィルム部材をノズル面に付着させた際に、フィルム部材がノズル面から剥がれにくい。
【0022】
本発明の請求項5の構成によれば、フィルム部材のノズル面の凹凸への追従性が向上する。
【0023】
本発明の請求項6の構成によれば、フィルム部材のノズル面の凹凸への追従性が向上する。
【0024】
本発明の請求項7の構成によれば、フィルム部材とノズル面の間の異物混入を抑制し、異物混入による密閉性の低下を抑える。
【0025】
本発明の請求項8の構成によれば、フィルム部材に付着した液体が乾燥増粘する前に清掃できる。
【0026】
本発明の請求項9の構成によれば、フィルム部材とノズル面との密着性が高まり、ノズルの密閉性が高まる。
【0027】
本発明の請求項10の構成によれば、フィルム部材の交換の頻度を低減できる。
【0028】
本発明の請求項11の構成によれば、フィルム交換の頻度を低減できる。
【0029】
本発明の請求項12の構成によれば、フィルム部材とノズル面への間に隙間が生じにくく、ノズルの密閉性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下に、本発明に係る実施形態の一例を図面に基づき説明する。
【0031】
〔第1実施形態〕
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
【0032】
本実施形態では、液滴を吐出する液滴吐出装置の一例として、インク滴を吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録装置について説明する。
【0033】
なお、液滴吐出装置は、インクを吐出する装置に限定されるものではない。液滴吐出装置としては、例えば、フィルムやガラス上にインク等を吐出してカラーフィルタを製造するカラーフィルタ製造装置、溶解状態の半田を基板上に吐出して部品実装用のバンプを形成する装置、液状の金属を吐出して配線パターンを形成する装置及び液滴を吐出して膜を形成する各種の成膜装置であってもよく、液滴を吐出するものであればよい。
【0034】
(本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成)
まず、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を説明する。図1及び図2には、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成が概略図にて示されている。
【0035】
図1及び図2に示すように、インクジェット記録装置10は、用紙等の記録媒体Pが収容される記録媒体収容部12と、記録媒体Pに画像を記録する画像記録部14と、記録媒体収容部12から画像記録部14へ記録媒体Pを搬送する搬送手段16と、画像記録部14によって画像が記録された記録媒体Pが排出される記録媒体排出部18と、を備えている。
【0036】
画像記録部14は、ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドの一例として、インク滴を吐出して記録媒体Pに画像を記録するインクジェット記録ヘッド20Y、20M、20C、20K(以下、20Y〜20Kと示す)を備えている。
【0037】
このインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、記録媒体Pの搬送方向の上流側から、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の色の順で配置されており、その各色に対応したインク滴を、サーマル方式や圧電方式等の手段によって、複数のノズルが形成されたノズル面20Aから吐出し、画像を記録する構成となっている。
【0038】
また、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、ぞれぞれ、画像記録が可能な幅が、記録媒体Pの被記録領域の幅以上とされている。なお、ここでいう幅とは、記録媒体Pの搬送方向と交差する交差方向の長さである。さらに、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kは、インク滴を吐出するノズルが配置された複数のユニットを交差方向に沿って繋ぎ合わせて形成されており、交差方向に長くされている。
【0039】
インクジェット記録装置10には、インクを貯留するインクタンク21Y、21M、21C、21Kが設けられている。このインクタンク21Y、21M、21C、21Kから、各インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kへインクが供給される。なお、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kへ供給されるインクとしては、水性インク、油性インク、溶剤系インク等、各種インクの使用が可能である。
【0040】
更に、インクジェット記録装置10には、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのメンテナンスをするメンテナンスユニット22Y、22M、22C、22K(以下、22Y〜22Kと示す)が設けられている。このメンテナンスユニット22Y〜22Kは、それぞれ、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aに対向する対向位置(図2参照)と、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aから退避した退避位置(図1参照)との間を移動可能に構成されている。
【0041】
各メンテナンスユニット22Y〜22Kは、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aを覆うキャッピング装置50、予備吐出(空吐出)された液滴を受ける受け部材、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズル面20Aを清掃する清掃部材等を有しており、各インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kをメンテナンスする際には、各インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kが所定高さ上昇すると共にメンテナンスユニット22Y〜22Kが対向位置に移動し、各種のメンテナンスを行う。
【0042】
搬送手段16は、記録媒体収容部12に収容された記録媒体Pを送り出す送出しロール24と、送出しロール24によって送り出された記録媒体Pを挟持搬送する搬送ロール対25と、搬送ロール対25によって搬送された記録媒体Pの被記録面をインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kに対面させる無端状の搬送ベルト30と、を備えている。
【0043】
搬送ベルト30は、記録媒体Pの搬送方向下流側に配置された駆動ロール26と、記録媒体Pの搬送方向上流側に配置された従動ロール28とに巻き掛けられ、所定方向(図1においてA方向)に循環移動するように構成されている。
【0044】
また、従動ロール28の上部には、記録媒体Pを搬送ベルト30へ押え付ける押さえロール32が設けられている。この押さえロール32は搬送ベルト30に従動すると共に帯電ロールを兼ねており、この押さえロール32によって搬送ベルト30が帯電されることにより、記録媒体Pが搬送ベルト30に静電吸着されて搬送される構成である。
【0045】
この搬送ベルト30が記録媒体Pを搬送することにより、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Cと記録媒体Pとが相対移動し、相対移動する記録媒体Pにインク滴が吐出されて画像が形成される。
【0046】
なお、記録媒体Pに対してインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kが移動する構成であっても良く、記録媒体Pとインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kとが相対移動する構成であればよい。
【0047】
また、搬送ベルト30は、記録媒体Pを静電吸着して保持する構成に限定されるものではなく、記録媒体Pとの摩擦により、あるいは記録媒体Pを吸引や粘着などの非静電的手段によって保持する構成にしてもよい。
【0048】
また、搬送ベルト30の下流側には、その搬送ベルト30から記録媒体Pを剥離する剥離爪が接近・離隔可能に配設されている。インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kにより画像が記録された記録媒体Pは、搬送ベルト30の曲率及び剥離爪により記録媒体Pが搬送ベルト30から剥離される構成となっている。なお、図1及び図2においては、剥離爪の図示を省略している。
【0049】
剥離爪の下流側には、記録媒体Pの被記録面側がスターホイールとされた複数の搬送ロール対38が設けられている。この搬送ロール対38により、画像記録部14で画像が記録された記録媒体Pが、記録媒体排出部18へ搬送される。
【0050】
また、搬送ベルト30の下方には、記録媒体Pを反転させる反転部36が設けられており、搬送ロール対38が記録媒体Pを下流に一旦搬送した後、搬送ロール対38が逆転して記録媒体Pが反転部36に送られる構成となっている。
【0051】
この反転部36には、記録媒体Pの被記録面側がスターホイールとされた複数の搬送ロール対39が設けられ、反転部36に送り込まれた記録媒体Pが再度、搬送ベルト30へ送られるようになっている。
【0052】
また、図示しないが、インクジェット記録装置10は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kの動作を制御する制御手段と、インクジェット記録装置10の全体の動作を制御するシステム制御手段とを備えている。
【0053】
制御手段は、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kに接続され、外部から入力された画像データに応じてインク滴の吐出タイミングと、使用するインクジェット記録ヘッド20Y〜20Kのノズルを決定し、そのノズルに駆動信号を印加する。
【0054】
次に、インクジェット記録装置10の画像記録動作について説明する。
【0055】
まず、送出しロール24により、記録媒体収容部12から記録媒体Pが送り出され、搬送ベルト30よりも上流側の搬送ロール対25により、搬送ベルト30へ送られる。
【0056】
搬送ベルト30へ送られた記録媒体Pは、その搬送ベルト30の搬送面に吸着・保持され、インクジェット記録ヘッド20Y〜20Kの記録位置へ搬送され、記録媒体Pの被記録面に画像が記録される。そして、その画像記録終了後、記録媒体Pは搬送ベルト30から剥離爪によって剥離される。
【0057】
記録媒体Pの片面へのみ画像を記録する場合は、搬送ベルト30よりも下流側の搬送ロール対38によって記録媒体排出部18へ排出される。
【0058】
記録媒体Pの両面へ画像を記録する場合には、片面に画像が記録された後、記録媒体Pは、反転部36で反転されて、再び搬送ベルト30に送られる。記録媒体Pの反対面側に上記と同様に画像が記録され、記録媒体Pの両面へ画像が記録され、記録媒体排出部18へ排出される。
(本実施形態に係るキャッピング装置50の構成)
次に、本実施形態に係るキャッピング装置50の構成について説明する。なお、メンテナンスユニット22Y〜22Kには、それぞれ、キャッピング装置50が設けられているが、ここでは、メンテナンスユニット22Yに設けられたキャッピング装置50、すなわちインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aを覆うキャッピング装置50を例にとって説明する。
【0059】
本実施形態に係るキャッピング装置50は、図3に示すように、メンテナンスユニット22Yに設けられた駆動軸60を備えている。駆動軸60は、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って、メンテナンスユニット22Yの長手方向に延び設けられている。
【0060】
また、駆動軸60は、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って移動可能にメンテナンスユニット22Yに支持されている。
【0061】
駆動軸60は、例えば、ボールネジで形成され、回転駆動することによりインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って、所定方向、例えばインクジェット記録ヘッド20Yの長手方向の一方(図中のA方向)及びその反対方向(図中のB方向)へ移動するようになっている。
【0062】
この駆動軸60には、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って移動する移動体52が固定されている。移動体52は、駆動軸60がノズル面20Aに沿って移動することにより、駆動軸60と一体にインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面に沿って所定方向、例えばインクジェット記録ヘッド20Yの長手方向の一方(図中のA方向)及びその反対方向(図中のB方向)へ移動する構成となっている。
【0063】
ノズル面20Aに沿って移動する移動体52は、インクジェット記録ヘッド20Yの外側であって、フィルム部材54がインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置から外れたメンテナンスユニット22Yの一端部側の第1退避位置(図3に示す位置)と、インクジェット記録ヘッド20Yの外側であって、フィルム部材54がインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置から外れたメンテナンスユニット22Yの他端部側の第2退避位置(図8に示す位置)との間を移動するようになっている。
【0064】
移動体52には、図3及び図4(a)に示すように、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに付着可能なフィルム部材54と、フィルム部材54の一端部が巻き付けられ、回転してフィルム部材54を巻き出し可能な巻付軸56が設けられている。
【0065】
フィルム部材54の材質は、ノズル面20Aへの追従性および密閉性を確保するために柔軟に変形する部材で、かつノズル内のインク蒸発を防ぐために気体透過が少ないものが望ましい。また、フィルム部材54の板厚は、1mm以下の薄板が良い。
【0066】
フィルム部材54の材料としては、PET、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド等が考えられ、さらに気体透過性を少なくするために上記材料に金属膜を蒸着させた2層構造としてもよい。最終的には、フィルム部材54の材質は、耐インク性や弾性を考慮して選択される。本実施形態では、フィルム部材54として、板厚0.1mmのポリイミドを使用している。
【0067】
また、インクジェット記録ヘッド20Yの外側には、フィルム部材54の他端部を固定する固定手段の一例としての固定部材58が設けられている。固定部材58は、上記の第1退避位置側に設けられており、この固定部材58により、フィルム部材54の他端部がメンテナンスユニット22Yの一端部に固定されている。固定部材58は、インクジェット記録ヘッド20Yからインク滴を吐出して画像を形成する際に、画像の形成を妨げないように、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル配置領域の外側に位置していればよく、図3の位置には限られない。
【0068】
なお、固定手段としては、固定部材58に限られず、例えば、後述する第2実施形態に示す固定装置78としてもよく、フィルム部材54の他端部を固定するものであれば良い。
【0069】
また、巻付軸56は、支持部材68に回転可能に支持されている。支持部材68は、移動体52から図3の及び図4(a)の上方に延び設けられた軸部70に、この軸部70に沿って上下方向に移動可能に支持されている。これにより、支持部材68は、巻付軸56に巻き付けられたフィルム部材54がノズル面20Aに接触する接触方向と、フィルム部材54がノズル面20Aから離れる離間方向との間を移動可能となる。
【0070】
また、巻付軸56には、巻付軸56を正転逆転させる駆動部64が設けられている。巻付軸56は、駆動部64から駆動力を付与されて、フィルム部材54を巻き出す巻き出し方向に回転すると共に、巻き出したフィルム部材54を巻き取る巻き取り方向に逆回転する構成となっている。駆動部64としては、例えば、巻付軸56を回転駆動させる駆動モータが用いられている。
【0071】
なお、巻付軸56からフィルム部材54を巻き出す際は、巻付軸56が駆動する構成でなくても良く、巻付軸56をインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って移動させることにより、巻付軸56が従動回転してフィルム部材54を巻き出す構成であってもよい。この場合においても、フィルム部材54を巻き取る際に巻付軸56を巻き取り方向に回転駆動させる必要がある。巻付軸56を巻き取り方向へ回転させる駆動部としては、例えば、ぜんまいが用いられる。ぜんまいは、巻付軸56が巻き出し方向に回転した際に巻かれ、移動体52が戻る際に、巻き戻って巻付軸56を逆回転させる構成となっている。なお、ぜんまいが巻き戻る際は、適度なブレーキがかかるようにしても良い。
【0072】
また、巻付軸56の同軸上に取り付けられたピニオンと、このピニオンに噛み合うラックとを設け、ラックを移動させることにより、巻付軸56を巻き取り方向へのみ回転させ、巻付軸56が巻き出し方向へ従動回転する際には、巻付軸56を空転させる構成であってもよい。
【0073】
また、巻付軸56にワンウェイクラッチを設け、巻付軸56が巻き出し方向へ従動回転する際に駆動部からの駆動力を断絶し、巻付軸56を巻き取り方向へのみ駆動部により駆動させる構成であってもよい。
【0074】
フィルム部材54を巻き出す巻付軸56は、移動体52がノズル面20Aに沿って移動することにより、移動体52と一体にインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面に沿って所定方向、例えば、インクジェット記録ヘッド20Yの長手方向の一方(図中のA方向)及びその反対方向(図中のB方向)へ移動する構成となっている。
【0075】
すなわち、移動体52を移動させる駆動軸60は、フィルム部材54を巻き出す巻付軸56をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させると共に、フィルム部材54を巻き取る巻付軸56をノズル面20Aに沿って前記所定方向と反対方向へ巻付軸56を移動させる移動手段として機能する。
【0076】
なお、移動手段としては、駆動軸60に限られず、巻付軸56をノズル面20Aに沿って移動させるものであればよく、例えば、インクジェット記録ヘッド20Yの長手方向の一端部と他端部に設けられた滑車に巻き掛けられた無端状のベルトで構成されていてもよい。この構成では、ベルトに移動体52が固定され、滑車を回転させることにより、ベルトを循環移動させて、移動体52をノズル面20Aに沿って移動させることができる。
【0077】
また、巻付軸56と共に移動し、巻付軸56から巻き出されたフィルム部材54をノズル面20Aに付着させる付着手段の一例としての圧縮ばね62が、軸部70に設けられている。
【0078】
この圧縮ばね62が、支持部材68を図3の及び図4(a)の上方へ付勢しており、フィルム部材54が巻き付けられた巻付軸56がノズル面20Aに押され、フィルム部材54が巻き出されながらノズル面20Aに付着する。また、圧縮ばね62は、インクジェット記録ヘッド20Yの外側の第2退避位置で、フィルム部材54を図3の及び図4(a)においてノズル面20Aより高い位置に持ち上げる。すなわち、圧縮ばね62は、フィルム部材54をノズル面20Aより高い位置に相対移動させる移動手段として機能する。
【0079】
なお、フィルム部材54を移動させるのではなく、インクジェット記録ヘッド20Yを下方へ移動させることにより、フィルム部材54をノズル面20Aより高い位置に相対移動させる構成であっても良い。
【0080】
また、フィルム部材54をノズル面20Aより高い位置に相対移動させる構成でなくてもよく、フィルム部材54がノズル面20Aと同じ高さに位置するように構成してもよい。
【0081】
また、付着手段としては、圧縮ばね62に限られず、例えば、後述する第3実施形態に示す押し当て部材90及び押し当て部材92としてもよく、巻付軸56から巻き出されたフィルム部材54をノズル面20Aに付着させるものであればよい。
【0082】
また、移動体52には、フィルム部材54のノズル面20Aと接触していた接触面を清掃する清掃部材66が設けられている。この清掃部材66は、移動体52に揺動可能に支持された保持部材72に保持されている。
【0083】
保持部材72には、図4(b)に示すように、フィルム部材54から拭き取ったインクを回収するためのインク吸収部材76が設けられている。また、保持部材72には、引っ張りばね74の一端部が固定され、引っ張りばね74の他端部は、移動体52に固定されており、清掃部材66は、フィルム部材54へ付勢されている。
【0084】
フィルム部材54へ付勢される清掃部材66は、フィルム部材54の接触面に接触して、接触面に付着したインク等の付着物を掻き取って清掃するようになっている。
【0085】
清掃部材66は、巻付軸56に巻き付けられたフィルム部材54の量の増減にかかわらず、フィルム部材54に接触し、巻付軸56に巻き取られている状態のフィルム部材54に接触可能となっている。清掃部材66が巻付軸56に巻き取られている状態のフィルム部材54に接触することで、清掃部材66による清掃動作が、フィルム部材54の巻き取り動作と並行して行われ、フィルム部材54は、巻付軸56に巻き取られながら、清掃部材66で清掃される。
【0086】
なお、フィルム部材54を巻き出す際には、清掃部材66による清掃は不要であるため、清掃部材66への負荷を低減するために、巻付軸56が逆回転するのを利用してワンウェイクラッチ等により、フィルム部材54を巻き出す際には清掃部材66がフィルム部材54から離間する構成としてもよい。図4(b)における二点鎖線は、清掃部材66がフィルム部材54から離間した状態を示している。
【0087】
清掃部材66としては、例えば、清掃ブレードが用いられ、清掃部材66の材質は、耐候性、耐インク性、耐摩耗性がある材質がのぞましく、EPDM(エチレン−プロピレン−ジエンゴム)やウレタン、NBR(ニトリルゴム)(HNBR(水素化ニトリルゴム)含む)等のゴム部材や、エラストマー系の部材等が考えられ、使い方に応じて選択される。
【0088】
また、清掃部材66としては、後述する第2実施形態のように、フィルム部材54に接触するロール状の吸収体であってもよい。
【0089】
なお、本実施形態に係るインクジェット記録ヘッド20Yは、図3に示すように、キャッピング装置50によるキャッピングが可能なキャップ位置と、キャップ位置よりも上方位置であってメンテナンスユニット22Yから退避する退避位置との間を移動可能とされている。
【0090】
インクジェット記録ヘッド20Yを退避位置に移動させてから、メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに対向する対向位置に移動するようになっている。
【0091】
また、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する際におけるノズル面20Aの高さは、固定部材58がフィルム部材54を固定する固定位置よりも低くなっており、巻付軸56が第2退避位置にいるときのフィルム部材54の高さよりも低くなっている。
【0092】
次に、キャッピング装置50のキャッピング動作について説明する。
【0093】
メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置に位置する場合に、キャッピング装置50がキャッピング命令を受けると、図5に示すように、ステップ100において、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置するか否か判定する。インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する場合は、ステップ102に移行し、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置しない場合は、ステップ104に移行する。ステップ104ではインクジェット記録ヘッド20Yをキャップ位置に移動させて、ステップ102へ移行する。
【0094】
ステップ102では、清掃部材66をオフする、すなわち、清掃部材66をフィルム部材54から離間させて、ステップ106に移行する。なお、清掃部材66がフィルム部材54から離間しない構成では、ステップ102は不要となる。
【0095】
ステップ106では、フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を巻き出し方向に回転させ、フィルム部材54の巻き出しを開始し、ステップ108に移行する。
【0096】
ステップ108では、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて(図6参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させ、ノズル面20Aのキャッピングをし、ステップ110に移行する。
【0097】
ステップ110では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ112に移行する。ステップ112では、移動体52の移動を停止し、キャッピング動作が終了する。
【0098】
このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。
【0099】
キャップオフ命令、すなわち、キャップとしてのフィルム部材54をノズル面20Aから外す命令を受けると、図7に示すように、ステップ120において、清掃部材66をオンする、すなわち、清掃部材66をフィルム部材54に接触させて、ステップ122に移行する。なお、清掃部材66がフィルム部材54から離間しない構成では、ステップ120は不要となる。
【0100】
ステップ122では、巻付軸56を巻き取り方向に逆回転させ、フィルム部材54の巻き取りを開始し、ステップ124に移行する。
【0101】
ステップ124では、移動体52を前記所定方向の反対方向へ移動させて(図8参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aからフィルム部材54を剥離すると共に、フィルム部材54の清掃をしながら、フィルム部材54を回収し、ステップ126に移行する。
【0102】
ステップ126では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ128に移行する。ステップ128では、移動体52の移動を停止し、フィルム部材54をノズル面20Aから外す動作が終了する。
【0103】
このように、フィルム部材54は、巻き取られながらノズル面20Aの他端から徐々に剥離されて、ノズル面20Aから外される。
【0104】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0105】
第2実施形態に係るキャッピング装置250は、図9及び図10(b)に示すように、インクジェット記録ヘッド20Yの外側に設けられ、フィルム部材54の他端部を固定する固定手段の一例としての固定装置78を備えている。
【0106】
固定装置78は、上記の第1退避位置側に設けられており、この固定装置78により、フィルム部材54の他端部がメンテナンスユニット22Yの一端部側で固定されている。
【0107】
固定装置78は、使用済みのフィルム部材54を巻き取って巻付軸56から未使用のフィルム部材54を巻き出す巻取軸80と、フィルム部材54に一定の張力を付与する張力付与ロール79を備えている。
【0108】
巻取軸80には、図示しない駆動モータが接続されており、巻付軸56からフィルム部材54を巻き出してノズル面20Aを覆う際は、駆動モータは停止してフィルム部材54を固定状態とする。
【0109】
フィルム部材54が劣化してきたら、フィルム部材54によるキャッピングが行われていないときに、巻取軸80を回転させて使用済みのフィルム部材54を巻き取って収容すると共に、巻付軸56から未使用のフィルム部材54を巻き出し、ノズル面20Aに接触するフィルム部材54を新しくする。
【0110】
なお、巻取軸80は、未使用のフィルム部材54を巻き出す巻出軸としてもよい。この構成では、フィルム部材54が劣化してきたら、フィルム部材54によるキャッピングが行われていないときに、巻付軸56を回転させて使用済みのフィルム部材54を巻き取って収容すると共に、巻取軸80から未使用のフィルム部材54を巻き出し、ノズル面20Aに接触するフィルム部材54を新しくする。
【0111】
なお、固定手段としては、固定装置78に限られず、例えば、図10(a)に示すように、第1実施形態に示す固定部材58としてもよく、フィルム部材54の他端部を固定するものであれば良い。
【0112】
また、移動体52には、フィルム部材54のノズル面20Aと接触していた接触面を清掃する清掃部材67と、フィルム部材54のノズル面20Aと接触する面にシール液(封止液)を塗布する塗布手段の一例としての塗布部材82が設けられている。
【0113】
この清掃部材67及び塗布部材82は、それぞれ、ロール状に形成され、移動体52に揺動可能に支持された保持部材83に保持されている。保持部材83は、先端部が二股に枝分かれした形状をしており、保持部材83の一方の先端部に清掃部材67が回転可能に取り付けられ、保持部材83の他方の先端部に塗布部材82が回転可能に取り付けられている。
【0114】
この保持部材83が一方に揺動することにより、清掃部材67が巻付軸56のフィルム部材54に接触すると共に、塗布部材82が巻付軸56のフィルム部材54から離間し、保持部材83が他方に揺動することにより、清掃部材67が巻付軸56のフィルム部材54から離間すると共に、塗布部材82が巻付軸56のフィルム部材54に接触する構成となっている。
【0115】
清掃部材67は、ロール状の吸収体で形成され、フィルム部材54の接触面に接触して、接触面に付着したインク等の付着物を拭き取って清掃するようになっている。
【0116】
また、清掃部材67は、巻付軸56に巻き付けられたフィルム部材54の量の増減にかかわらず、フィルム部材54に接触し、巻付軸56に巻き取られている状態のフィルム部材54に接触可能となっている。清掃部材67が巻付軸56に巻き取られている状態のフィルム部材54に接触することで、清掃部材67による清掃動作が、フィルム部材54の巻き取り動作と並行して行われ、フィルム部材54は、巻付軸56に巻き取られながら、清掃部材67で清掃される。
【0117】
なお、清掃部材67としては、第1実施形態のように、フィルム部材54に接触する清掃ブレードであってもよい。
【0118】
塗布部材82は、ロール状の多孔質体で形成され、図11に示すように、シール液供給装置84からシール液が供給される。
【0119】
シール液供給装置84は、フィルム部材54から離間した塗布部材82をシール液に浸らせてシール液を塗布部材82に供給するシール液供給部85と、シール液を貯留するシール液貯留部86と、シール液貯留部86からシール液供給部85へシール液を送る送液手段87と、を備えている。
【0120】
送液手段87は、例えば、圧力の作用によりシール液を送液する送液ポンプで構成され、この送液手段87により、シール液貯留部86からシール液供給部85へシール液が一定に供給されるように構成されている。
【0121】
シール液を一定に供給する構成としては、例えば、シール液供給部85に、シール液供給部85の液量の上限及び下限を検知する液面センサ88を設け、シール液供給部85内のシール液が減少して、液面センサ88が下限を検知すると送液手段87を駆動してシール液をシール液供給部85に補充し、液面センサ88が上限を検知したら送液手段87を停止する構成としてもよい。
【0122】
また、シール液としては、例えば、インクと同じ物性であってインク染料あるいは顔料の入っていない溶液が用いられる。
【0123】
次に、キャッピング装置250のキャッピング動作について説明する。
【0124】
メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置に位置する場合に、キャッピング装置250がキャッピング命令を受けると、図12に示すように、ステップ200において、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置するか否か判定する。インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する場合は、ステップ202に移行し、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置しない場合は、ステップ204に移行する。ステップ204ではインクジェット記録ヘッド20Yをキャップ位置に移動させて、ステップ202へ移行する。
【0125】
ステップ202では、塗布部材82をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54から離間させると共に、塗布部材82をフィルム部材54に接触させて、ステップ206に移行する。
【0126】
ステップ206では、フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を巻き出し方向に回転させ、フィルム部材54の巻き出しを開始し、ステップ208に移行する。
【0127】
ステップ208では、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて(図13参照)、フィルム部材54にシール液を塗布すると共に、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させ、ノズル面20Aのキャッピングをし、ステップ210に移行する。
【0128】
ステップ210では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ212に移行する。ステップ212では、移動体52の移動を停止し、キャッピング動作が終了する。
【0129】
このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。
【0130】
キャップオフ命令、すなわち、キャップとしてのフィルム部材54をノズル面20Aから外す命令を受けると、図14に示すように、ステップ220において、清掃部材67をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54に接触させて、ステップ222に移行する。
【0131】
ステップ222では、巻付軸56を巻き取り方向に逆回転させ、フィルム部材54の巻き取りを開始し、ステップ224に移行する。
【0132】
ステップ224では、移動体52を前記所定方向の反対方向へ移動させて(図15参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aからフィルム部材54を剥離すると共に、フィルム部材54の清掃をしながら、フィルム部材54を回収し、ステップ226に移行する。
【0133】
ステップ226では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ228に移行する。ステップ228では、移動体52の移動を停止し、フィルム部材54をノズル面20Aから外す動作が終了する。
【0134】
このように、フィルム部材54は、巻き取られながらノズル面20Aの他端から徐々に剥離されて、ノズル面20Aから外される。
【0135】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について説明する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0136】
第3実施形態に係るキャッピング装置350は、図16及び図17に示すように、巻付軸56と共に移動し、ノズル面20Aに付着したフィルム部材54を密着させる密着手段の一例として、フィルム部材54をノズル面20Aに押し当てる押し当て部材90を備えている。
【0137】
押し当て部材90は、ロール形状の弾性部材で形成されており、圧縮ばね等の付勢手段91により上方へ付勢されている。押し当て部材90は、巻付軸56と固定部材58との間に配置されており、巻付軸56から巻き出されてノズル面20Aに付着したフィルム部材54を、さらに、ノズル面20Aに押し当てて密着させることにより、フィルム部材54をノズル面20Aに追従させる。
【0138】
押し当て部材90としては、例えば、シリコンやEPDM、NBR(HNBR含む)、ウレタン等のゴム部材が考えられ、必要な硬度や耐インク性、耐久性によって選択される。
【0139】
なお、巻付軸56は、圧縮ばね62により上方へ付勢されているが、押し当て部材90でフィルム部材54をノズル面20Aに押し当ててフィルム部材54をノズル面20Aに追従させるため、巻付軸56のフィルム部材54がノズル面20Aに非接触の状態になっていても良い。なお、この構成の場合は、押し当て部材90が、上述した付着手段として機能し、上記の密着手段がない構成となる。
【0140】
次に、キャッピング装置350のキャッピング動作について説明する。
【0141】
メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置に位置する場合に、キャッピング装置350がキャッピング命令を受けると、図18に示すように、ステップ300において、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置するか否か判定する。インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する場合は、ステップ302に移行し、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置しない場合は、ステップ304に移行する。ステップ304ではインクジェット記録ヘッド20Yをキャップ位置に移動させて、ステップ302へ移行する。
【0142】
ステップ302では、塗布部材82をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54から離間させると共に、塗布部材82をフィルム部材54に接触させて、ステップ306に移行する。
【0143】
ステップ306では、フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を巻き出し方向に回転させ、フィルム部材54の巻き出しを開始し、ステップ308に移行する。
【0144】
ステップ308では、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて(図19、図20(a)参照)、フィルム部材54にシール液を塗布すると共に、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させ、さらに、押し当て部材90がフィルム部材54をノズル面20Aに密着させて、ノズル面20Aのキャッピングし、ステップ310に移行する。
【0145】
押し当て部材90がフィルム部材54をノズル面20Aに密着させる場合において、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに、図20(b)に示すように、凹凸があっても、押し当て部材90が変形し、フィルム部材54をノズル面20Aの段差部に追従させてノズル面20Aに密着させる。
【0146】
ステップ310では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ312に移行する。ステップ312では、移動体52の移動を停止し、キャッピング動作が終了する。
【0147】
このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。
【0148】
キャップオフ命令、すなわち、キャップとしてのフィルム部材54をノズル面20Aから外す命令を受けると、図21に示すように、ステップ320において、清掃部材67をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54に接触させて、ステップ322に移行する。
【0149】
ステップ322では、巻付軸56を巻き取り方向に逆回転させ、フィルム部材54の巻き取りを開始し、ステップ324に移行する。
【0150】
ステップ324では、移動体52を前記所定方向の反対方向へ移動させて(図22参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aからフィルム部材54を剥離すると共に、フィルム部材54の清掃をしながら、フィルム部材54を回収し、ステップ326に移行する。
【0151】
ステップ326では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ328に移行する。ステップ328では、移動体52の移動を停止し、フィルム部材54をノズル面20Aから外す動作が終了する。
【0152】
このように、フィルム部材54は、巻き取られながらノズル面20Aの他端から徐々に剥離されて、ノズル面20Aから外される。
【0153】
(押し当て部材90の変形例)
次に、押し当て部材90の変形例について説明する。
【0154】
変形例に係る押し当て部材92は、図23(a)に示すように、ブレード形状に形成されている。押し当て部材92としては、例えば、シリコンやEPDM、NBR(HNBR含む)、ウレタン等のゴム部材が考えられ、必要な硬度や耐インク性、耐久性によって選択される。
【0155】
押し当て部材92は、移動体52に揺動可能に支持された保持部材93に保持されている。保持部材93が一方に揺動することにより、押し当て部材92がフィルム部材54に接触し、保持部材93が他方に揺動することにより、押し当て部材92がフィルム部材54から離間すると構成となっている。押し当て部材92は、フィルム部材54をノズル面20Aに密着させる際に、フィルム部材54に接触し、フィルム部材54をノズル面20Aから剥離する際は、フィルム部材54から離間する。
【0156】
押し当て部材92の接触及び離間動作は、例えば、巻付軸56の回転を利用したワンウェイクラッチ等により、保持部材93を揺動させて行う構成としても良い。
【0157】
また、押し当て部材92の取り付け角度は、押し当て部材92がフィルム部材54をノズル面20Aに押し当てる圧力がフィルム部材54をノズル面20Aに密着させられる範囲になるように、設定される。
【0158】
押し当て部材92の先端部の形状としては、図23(b)に示すように、矩形状であっても良く、また、フィルム部材54に接触する部分を斜めに切って傾斜面とした形状であっても良く、押し当ての条件によって形状が選択される。
【0159】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について説明する。なお、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0160】
第4実施形態に係るキャッピング装置450は、図24及び図25に示すように、巻付軸56と共に移動し、ノズル面20Aに付着したフィルム部材54を密着させる密着手段の一例として、フィルム部材54に空気を吹き付けるエアダクト95が設けられている。
【0161】
エアダクト95には、図示されないコンプレッサー等に接続され、必要に応じてフィルム部材54に空気を吹き付ける構成となっている。
【0162】
また、エアダクト95は、巻付軸56と固定部材58との間に配置されており、巻付軸56から巻き出されてノズル面20Aに付着したフィルム部材54に空気を吹き付けノズル面20Aに密着させることにより、フィルム部材54をノズル面20Aに追従させる。
【0163】
次に、キャッピング装置450のキャッピング動作について説明する。
【0164】
メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置に位置する場合に、キャッピング装置450がキャッピング命令を受けると、図26に示すように、ステップ400において、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置するか否か判定する。インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する場合は、ステップ402に移行し、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置しない場合は、ステップ404に移行する。ステップ404ではインクジェット記録ヘッド20Yをキャップ位置に移動させて、ステップ402へ移行する。
【0165】
ステップ402では、塗布部材82をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54から離間させると共に、塗布部材82をフィルム部材54に接触させて、ステップ406に移行する。
【0166】
ステップ406では、フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を巻き出し方向に回転させ、フィルム部材54の巻き出しを開始し、ステップ408に移行する。
【0167】
ステップ408では、エアダクト95からフィルム部材54への空気の吹き付けを開始し、ステップ410に移行する。
【0168】
ステップ410では、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて(図27参照)、フィルム部材54にシール液を塗布すると共に、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させ、さらに、エアダクト95からフィルム部材54に空気圧を与えてノズル面20Aにフィルム部材54を密着させて、ノズル面20Aのキャッピングし、ステップ412に移行する。
【0169】
エアダクト95からフィルム部材54に空気圧を与えてノズル面20Aに密着させる場合において、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに、凹凸があっても、フィルム部材54をノズル面20Aの段差部に追従させてノズル面20Aに密着させる。
【0170】
ステップ412では、エアダクト95からの空気の吹き付けを停止し、ステップ414に移行する。
【0171】
ステップ414では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ416に移行する。ステップ416では、移動体52の移動を停止し、キャッピング動作が終了する。
【0172】
このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。
【0173】
キャップオフ命令、すなわち、キャップとしてのフィルム部材54をノズル面20Aから外す命令を受けると、図28に示すように、ステップ420において、清掃部材67をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54に接触させて、ステップ422に移行する。
【0174】
ステップ422では、巻付軸56を巻き取り方向に逆回転させ、フィルム部材54の巻き取りを開始し、ステップ424に移行する。
【0175】
ステップ424では、移動体52を前記所定方向の反対方向へ移動させて(図29参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aからフィルム部材54を剥離すると共に、フィルム部材54の清掃をしながら、フィルム部材54を回収し、ステップ426に移行する。
【0176】
ステップ426では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ428に移行する。ステップ428では、移動体52の移動を停止し、フィルム部材54をノズル面20Aから外す動作が終了する。
【0177】
このように、フィルム部材54は、巻き取られながらノズル面20Aの他端から徐々に剥離されて、ノズル面20Aから外される。
【0178】
〔第5実施形態〕
次に、本発明の第5実施形態について説明する。なお、第1実施形態、第2実施形態、第3実施形態及び第4実施形態と同一の部分には同一の符号を付し、説明を省略する。また、液滴吐出装置の一例としてのインクジェット記録装置の全体構成は、第1実施形態と同一であるので、説明を省略する。
【0179】
第5実施形態に係るキャッピング装置550は、図30及び図31に示すように、巻付軸56と共に移動し、巻付軸56から巻き出されたフィルム部材54をノズル面20Aに付着させる付着手段の一例として、フィルム部材54をノズル面20Aに押し当てる押し当て部材96を備えている。
【0180】
押し当て部材96は、ロール形状の弾性部材で形成されており、圧縮ばね等の付勢手段97により上方へ付勢されている。押し当て部材96は、巻付軸56と固定部材58との間に配置されており、巻付軸56から巻き出されたフィルム部材54をノズル面20Aに押し当てて付着させる。
【0181】
押し当て部材96としては、例えば、シリコンやEPDM、NBR(HNBR含む)、ウレタン等のゴム部材が考えられ、必要な硬度や耐インク性、耐久性によって選択される。
【0182】
巻付軸56と押し当て部材96との間には、巻付軸56と共に移動し、押し当て部材96で付着されるフィルム部材54にたるみを発生させるたるみ発生手段の一例としてのテンションロール98が配置されている。
【0183】
テンションロール98は、ロール形状の弾性部材で形成されており、圧縮ばね等の付勢手段99により上方へ付勢されている。
【0184】
テンションロール98は、ノズル面20Aに形成された段差を通過する際に、その段差に追従して上下動してフィルム部材54に張力を制御し、フィルム部材54にたるみを発生させるようになっている。
【0185】
テンションロール98は、図31に示すように、その軸方向両端部に形成されロール径が大きくされた大径部と、その大径部の間に形成された小径部とを備えており、大径部がノズル面20Aのノズル領域外と接触し、小径部はノズル面20Aとは非接触となっている。フィルム部材54は、小径部に巻き掛けられ、ノズル面20Aとは離間するので、フィルム部材54はノズル面20Aに直接接触しないようになっている。
【0186】
テンションロール98としては、例えば、シリコンやEPDM、NBR(HNBR含む)、ウレタン等のゴム部材が考えられ、必要な硬度や耐インク性、耐久性によって選択される。
【0187】
また、巻付軸56は、巻付軸56に巻き付けられたフィルム部材54がノズル面20Aとは接触しない高さに設けられている。さらに、巻付軸56からフィルム部材54を巻き出す際は、巻付軸56をインクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに沿って移動させることにより、巻付軸56が従動回転してフィルム部材54を巻き出す構成となっている。
【0188】
フィルム部材54を巻き取る際に巻付軸56を巻き取り方向に回転駆動させる必要があり、巻付軸56を巻き取り方向へ回転させる駆動部としては、例えば、ぜんまいが用いられる。ぜんまいは、巻付軸56が巻き出し方向に回転した際に巻かれ、移動体52が戻る際に、巻き戻って巻付軸56を逆回転させる構成となっている。なお、ぜんまいが巻き戻る際は、適度なブレーキがかかるようにしても良い。
【0189】
また、巻付軸56の同軸上に取り付けられたピニオンと、このピニオンに噛み合うラックとを設け、ラックを移動させることにより、巻付軸56を巻き取り方向へのみ回転させ、巻付軸56が巻き出し方向へ従動回転する際には、巻付軸56を空転させる構成であってもよい。
【0190】
また、巻付軸56にワンウェイクラッチを設け、巻付軸56が巻き出し方向へ従動回転する際に駆動部からの駆動力を断絶し、巻付軸56を巻き取り方向へのみ駆動部により駆動させる構成であってもよい。
【0191】
次に、キャッピング装置550のキャッピング動作について説明する。
【0192】
メンテナンスユニット22Yがインクジェット記録ヘッド20Yに対向する対向位置に位置する場合に、キャッピング装置550がキャッピング命令を受けると、図32に示すように、ステップ500において、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置するか否か判定する。インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置する場合は、ステップ502に移行し、インクジェット記録ヘッド20Yがキャップ位置に位置しない場合は、ステップ504に移行する。ステップ504ではインクジェット記録ヘッド20Yをキャップ位置に移動させて、ステップ502へ移行する。
【0193】
ステップ502では、塗布部材82をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54から離間させると共に、塗布部材82をフィルム部材54に接触させて、ステップ506に移行する。
【0194】
ステップ506では、フィルム部材54をノズル面20Aに接触させた状態で、巻付軸56を巻き出し方向に回転させ、フィルム部材54の巻き出しを開始し、ステップ508に移行する。
【0195】
ステップ508では、移動体52をノズル面20Aに沿って所定方向へ移動させて(図33、図34及び図35参照)、フィルム部材54にシール液を塗布すると共に、押し当て部材96がフィルム部材54をノズル面20Aに付着させて、ノズル面20Aのキャッピングし、ステップ510に移行する。
【0196】
ステップ510では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ512に移行する。ステップ512では、移動体52の移動を停止し、キャッピング動作が終了する。
【0197】
このように、フィルム部材54は、巻き出されながらノズル面20Aの一端から徐々に付着して、ノズル面20Aをキャップする。
【0198】
ここで、図33、図34及び図35に示すように、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aに凹凸がある場合におけるテンションロール98及び押し当て部材96の動作について説明する。
【0199】
移動体52が移動を開始すると、図33(a)に示すように、テンションロール98がノズル面20Aと接触して下方に押込まれる。テンションロール98が下方へ押し込まれると、フィルム部材54も下方に引っ張られて、巻付軸56が回転してフィルム部材54が引き出される。さらに移動体52が移動すると、図33(b)に示すように、押し当て部材96がノズル面20Aに接触して下方に押込まれる。押し当て部材96が下方に押込まれると、テンションロール98が下方へ押し込まれることで引き出されたフィルム部材54の張力が、押し当て部材96とテンションロール98との間で弱まり、フィルム部材54がたわむ。
【0200】
たわんだフィルム部材54を押し当て部材96がノズル面20Aに押し当て、フィルム部材54をノズル面20Aの段差部に追従させてノズル面20Aに付着させる。
【0201】
また、隣接するノズル面20Aが凹んでいる場合は、図34(a)に示すように、テンションロール98が凹部に沿って上昇し、押し当て部材96とテンションロール98との間で弱まり、フィルム部材54がたわむ。
【0202】
図34(b)に示すように、たわんだフィルム部材54を押し当て部材96がノズル面20Aに押し当て、フィルム部材54をノズル面20Aの段差部に追従させてノズル面20Aに付着させる。
【0203】
また、隣接するノズル面20Aが突出している場合は、図35(a)に示すように、テンションロール98が凸部に沿って下方に押込まれる。テンションロール98が下方へ押し込まれると、フィルム部材54も下方に引っ張られて、巻付軸56が回転してフィルム部材54が引き出される。さらに移動体52が移動すると、図35(b)に示すように、押し当て部材96がノズル面20Aに接触して下方に押込まれる。押し当て部材96が下方に押込まれると、テンションロール98が下方へ押し込まれることで引き出されたフィルム部材54の張力が、押し当て部材96とテンションロール98との間で弱まり、フィルム部材54がたわむ。
【0204】
たわんだフィルム部材54を押し当て部材96がノズル面20Aに押し当て、フィルム部材54をノズル面20Aの段差部に追従させてノズル面20Aに付着させる。
【0205】
このように、テンションロール98によるフィルム部材54の張力を制御することにより、図36(a)、(b)に示すように、フィルム部材54をノズル面20Aの段差に追従させて、テンションロール98で発生したフィルム部材54のたわみ分をノズル面20Aに付着させる。
【0206】
キャップオフ命令、すなわち、キャップとしてのフィルム部材54をノズル面20Aから外す命令を受けると、図37に示すように、ステップ520において、清掃部材67をオンする、すなわち、清掃部材67をフィルム部材54に接触させて、ステップ522に移行する。
【0207】
ステップ522では、巻付軸56を巻き取り方向に逆回転させ、フィルム部材54の巻き取りを開始し、ステップ524に移行する。
【0208】
ステップ524では、移動体52を前記所定方向の反対方向へ移動させて(図22参照)、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aからフィルム部材54を剥離すると共に、フィルム部材54の清掃をしながら、フィルム部材54を回収し、ステップ526に移行する。
【0209】
ステップ526では、巻付軸56の回転を停止し、ステップ528に移行する。ステップ528では、移動体52の移動を停止し、フィルム部材54をノズル面20Aから外す動作が終了する。
【0210】
このように、フィルム部材54は、巻き取られながらノズル面20Aの他端から徐々に剥離されて、ノズル面20Aから外される。
【0211】
(第5実施形態に係るキャッピング装置550の変形例)
次に、第5実施形態に係るキャッピング装置550の変形例として、フィルム部材付着手段で付着されるフィルム部材の張力変動を緩和する張力変動緩和手段を備えた実施例について説明する。
【0212】
変形例に係るキャッピング装置552は、図38に示すように、巻付軸56と共に移動し、押し当て部材96で付着されるフィルム部材54の張力変動を緩和する張力変動緩和手段の一例としてのテンションロール75を備えている。
【0213】
テンションロール75は、ロール形状の弾性部材で形成されており、引っ張りばね等の付勢手段77により下方へ付勢されている。フィルム部材54は、テンションロール75に巻き掛けられ、テンションロール75により、所定の張力が付与されている。
【0214】
テンションロール75が、所定の張力をフィルム部材54に付与することで、押し当て部材96がノズル面20Aに形成された段差を通過する際に、その段差に追従して上下動することにより発生するフィルム部材54の張力変動を緩和し、フィルム部材54の張力を所定の範囲内にして、フィルム部材54に必要以上にたるみが発生しないようになっている。
【0215】
このように、テンションロール75によるフィルム部材54の張力を制御することにより、フィルム部材54をノズル面20Aの段差に追従させて、ノズル面20Aに付着させる。
【0216】
なお、第1実施形態〜第5実施形態では、移動体52を第2退避位置まで移動させて、インクジェット記録ヘッド20Yのノズル面20Aにフィルム部材54を付着させ、ノズル面20Aのキャッピングをしていたが、インクジェット記録ヘッド20Yのノズルが、フィルム部材54で密閉された状態であればよく、移動体52を第2退避位置まで移動させなくても構わない。例えば、図39に示すように、インクジェット記録ヘッド20Yのノズルが、フィルム部材54で密閉された時点で、移動体52を停止する構成であっても良い。
【0217】
本発明は、上記の実施形態に限るものではなく、種々の変形、変更、改良が可能である。例えば、上記の実施形態ではノズル面20Aが略水平となるようにインクジェット記録ヘッドを配置し、液滴が略鉛直下方に吐出去れる場合について説明したが、これに限られず、液滴の吐出方向が鉛直方向に対して斜め或いは鉛直方向に対して垂直となるようにインクジェット記録ヘッドを配置してもよく、また、液滴の吐出方向が鉛直上方となるようにインクジェット記録ヘッドを配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0218】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図2は、第1実施形態に係るインクジェット記録装置において、メンテナンスユニットがインクジェット記録ヘッドのノズル面に対向する対向位置にある状態を示す概略図である。
【図3】図3は、第1実施形態に係るキャッピング装置が第1退避位置にある状態を示す概略図である。
【図4】図4(a)は、第1実施形態に係るキャッピング装置を示す概略図であり、図4(b)は、第1実施形態に係るキャッピング装置の内部構成を示す概略図である。
【図5】図5は、第1実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図6】図6は、第1実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作を示す概略図である。
【図7】図7は、第1実施形態に係るキャッピング装置において、フィルム部材をノズル面から外す動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図8】図8は、第1実施形態に係るキャッピング装置が第2退避位置にある状態を示す概略図である。
【図9】図9は、第2実施形態に係るキャッピング装置が第1退避位置にある状態を示す概略図である。
【図10】図10(a)は、第2実施形態に係るキャッピング装置において、固定部材でフィルム部材を固定した構成を示す概略図であり、図10(b)は、第2実施形態に係るキャッピング装置において、使用済みのフィルム部材を巻き取る巻取軸を備えた固定装置でフィルム部材を固定した構成を示す概略図である。
【図11】図11は、第2実施形態に係るキャッピング装置において、塗布部材にシール液を供給するシール液供給装置の構成を示す概略図である。
【図12】図12は、第2実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図13】図13は、第2実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作を示す概略図である。
【図14】図14は、第2実施形態に係るキャッピング装置において、フィルム部材をノズル面から外す動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図15】図15は、第2実施形態に係るキャッピング装置が第2退避位置にある状態を示す概略図である。
【図16】図16は、第3実施形態に係るキャッピング装置が第1退避位置にある状態を示す概略図である。
【図17】図17は、第3実施形態に係るキャッピング装置を示す概略図である。
【図18】図18は、第3実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図19】図19は、第3実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作を示す概略図である。
【図20】図20(a)は、第3実施形態に係るキャッピング装置において、ノズル面に凹凸がない場合のキャッピング動作を示す概略図であり、図20(b)は、第3実施形態に係るキャッピング装置において、ノズル面に凹凸がある場合のキャッピング動作を示す概略図である。
【図21】図21は、第3実施形態に係るキャッピング装置において、フィルム部材をノズル面から外す動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図22】図22は、第3実施形態に係るキャッピング装置が第2退避位置にある状態を示す概略図である。
【図23】図23は、第3実施形態に係るキャッピング装置において、押し当て部材の変形例を示す概略図である。
【図24】図24は、第4実施形態に係るキャッピング装置が第1退避位置にある状態を示す概略図である。
【図25】図25は、第4実施形態に係るキャッピング装置を示す概略図である。
【図26】図26は、第4実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図27】図27は、第4実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作を示す概略図である。
【図28】図28は、第4実施形態に係るキャッピング装置において、フィルム部材をノズル面から外す動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図29】図29は、第4実施形態に係るキャッピング装置が第2退避位置にある状態を示す概略図である。
【図30】図30は、第5実施形態に係るキャッピング装置を示す概略図である。
【図31】図31は、第5実施形態に係るキャッピング装置を下から見た概略図である。
【図32】図32は、第5実施形態に係るキャッピング装置のキャッピング動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図33】図33(a)は、第5実施形態に係るキャッピング装置において、キャッピング開始して最初のノズル面にテンションロールが接触した状態を示す図であり、図33(b)は、キャッピング開始して最初のノズル面に押し当て部材が接触した状態を示す図である。
【図34】図34(a)は、第5実施形態に係るキャッピング装置において、隣接するノズル面が凹んでいる場合に、そのノズル面にテンションロールが接触した状態を示す図であり、図34(b)は、凹んだノズル面に押し当て部材が接触した状態を示す図である。
【図35】図35(a)は、第5実施形態に係るキャッピング装置において、隣接するノズル面が突出している場合に、そのノズル面にテンションロールが接触した状態を示す図であり、図35(b)は、突出したノズル面に押し当て部材が接触した状態を示す図である。
【図36】図36は、第5実施形態に係るキャッピング装置において、凹凸のあるノズル面フィルム部材が追従して付着した状態を示す図である。
【図37】図37は、第5実施形態に係るキャッピング装置において、フィルム部材をノズル面から外す動作の動作フローを示すフローチャートである。
【図38】図38は、第5実施形態に係るキャッピング装置の変形例を示す図である。
【図39】図39は、第1実施形態に係るキャッピング装置を、インクジェット記録ヘッド20Yのノズルがフィルム部材54で密閉された時点で停止させた状態を示す概略図である。
【符号の説明】
【0219】
10 インクジェット記録装置(液滴吐出装置)
16 搬送手段
20Y、20M、20C、20K インクジェット記録ヘッド(液滴吐出ヘッド)
20A ノズル面
50 キャッピング装置
54 フィルム部材
56 巻付軸
58 固定部材(固定手段)
60 駆動軸(移動手段)
62 圧縮ばね(付着手段、持ち上げ手段)
66 清掃部材
67 清掃部材
75 テンションロール(張力変動緩和手段)
78 固定装置(固定手段)
82 塗布部材(塗布手段)
90 押し当て部材(密着手段)
92 押し当て部材(密着手段)
95 エアダクト(密着手段)
96 押し当て部材(付着手段)
98 テンションロール(たるみ発生手段)
250 キャッピング装置
350 キャッピング装置
450 キャッピング装置
550 キャッピング装置
552 キャッピング装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから液滴を吐出する液滴吐出ヘッドのノズル面に付着するためのフィルム部材と、
前記フィルム部材の一端部が巻き付けられ、回転して前記フィルム部材を巻き出し可能な巻付軸と、
前記液滴吐出ヘッドのノズルが配置された領域より外側に設けられ、前記フィルム部材の他端部を固定する固定手段と、
前記フィルム部材を巻き出す前記巻付軸を前記ノズル面に沿って所定方向へ移動させる移動手段と、
前記巻付軸と共に移動し、前記巻付軸から巻き出された前記フィルム部材を前記ノズル面に付着させる付着手段と、
を備えたことを特徴とするキャッピング装置。
【請求項2】
前記巻付軸は、逆回転して、巻き出した前記フィルム部材を巻き取り、
前記移動手段は、前記フィルム部材を巻き取る前記巻付軸を前記ノズル面に沿って前記所定方向と反対方向へ前記巻付軸を移動させることを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項3】
前記巻付軸と共に移動し、前記ノズル面に付着したフィルム部材を密着させる密着手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項4】
前記液滴吐出ヘッドの外側で、前記フィルム部材を前記ノズル面より高い位置に相対移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項5】
前記巻付軸と共に移動し、前記付着手段で付着される前記フィルム部材の張力変動を緩和する張力変動緩和手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項6】
前記巻付軸と共に移動し、前記付着手段で付着される前記フィルム部材にたるみを発生させるたるみ発生手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項7】
前記フィルム部材の前記ノズル面と接触していた面を清掃する清掃部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項8】
前記フィルム部材は、前記巻付軸に巻き取られながら、前記清掃部材で清掃されることを特徴とする請求項7に記載のキャッピング装置。
【請求項9】
前記フィルム部材の前記ノズル面と接触する面に封止液を塗布する塗布手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項10】
前記固定手段は、使用済みの前記フィルム部材を巻き取って前記巻付軸から未使用の前記フィルム部材を巻き出す巻取軸を備えたことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項11】
前記固定手段は、未使用の前記フィルム部材を巻き出す巻出軸を備え、
前記巻付軸は、使用済みの前記フィルム部材を巻き取り、前記巻出軸から未使用の前記フィルム部材を巻き出すことを特徴とする請求項1に記載のキャッピング装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のキャッピング装置と、
記録媒体に画像を記録する前記液滴吐出ヘッドと、
前記記録媒体を搬送する搬送手段と、
を備えたことを特徴とする液滴吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2008−155542(P2008−155542A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348532(P2006−348532)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】