説明

キャビネット用消音装置

【課題】ファンから発生する騒音が外部に漏洩を抑止することができるキャビネット用消音装置を提供する。
【解決手段】キャビネット本体10内を換気するための換気口10bを有するキャビネットに設置され、ファン15により発生する気流が流通する気流流路内に、螺旋構造体153を配設した。これにより、気流は気流流路内の螺旋構造体153により形成される流路を流通して排出される一方で、ファン15による騒音の音波は、螺旋構造体153により減衰されて消音されるので、騒音の外部へ放出が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットに取り付けられるファンの音を消音するキャビネット用消音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器を収納するキャビネットには、電気機器の発熱を外部に放出するためのファンが取り付けられている。ファンの回転に伴い風切り音やモーターの駆動音等の騒音が発生する。近年、VDSL機器や太陽光発電のパワーコンディショナー、冷却装置等の発熱量が大きい電気機器がキャビネット内部に収納されることもあり、ファンの回転数も上がり、騒音が増大してしまう。特許文献1には、ファンの排気側に消音材を配設し、この消音材でファンから発生する騒音を消音させるキャビネット用消音装置が提案されている。また、特許文献2には、ファンにより発生する気流が排気される排気口に、排気を案内して放出するフードを回動自在に取り付け、排気の方向を360度自由に変えることができる風向調整器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−269193号公報
【特許文献2】特開平9−298376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されるようなキャビネット用消音装置は、ファンから発生する騒音を低減させることができるが、所定間隔で吸音材を配置しているため大型化する問題がある。
また、特許文献2に示される風向調整器は、騒音が放出される向きを変えることができるが、フードから放出される騒音自体の抑止効果は低い。
本発明は、上記問題を解決し、小型化でありながらファンから発生する騒音の外部への漏洩を充分に抑止することができるキャビネット用消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1に記載の発明は、キャビネット本体内を換気するための換気口を有するキャビネットに設置され、ファンにより発生する気流が流通する気流流路内に、螺旋構造体を配設したことを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記螺旋構造体は、その気流流入側の端面から気流吹出側の端面を直視できない構造であることを特徴とする。
【0007】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記螺旋構造体は、その中心部に吸音材を備えたものであることを特徴とする。
【0008】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れかに記載の発明において、前記螺旋構造体は、複数の前記螺旋羽根を軸部の周囲に形成した螺旋構造体ユニットが、複数連結されて構成されたものであることを特徴とすることを特徴とする。
【0009】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記螺旋構造体は、複数の前記螺旋羽根の内側端部を軸部に、外側端部を円筒部材内側に密着させたものであることを特徴とする。
【0010】
請求項6に記載の発明は、請求項4又は請求項5に記載の発明において、前記螺旋構造体は、螺旋羽根の中心角が同じで軸線方向長さが異なるユニットが複数連結されて構成され、大きいサイズのユニットを前記ファン側に取り付けたことを特徴とする。
【0011】
請求項7に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記螺旋構造体は、単位長分の一連の螺旋羽根を軸部の周囲に形成した螺旋構造体ユニットが、複数連結されて構成されたものであることを特徴とする。これにより、気流流路の長さに応じて、螺旋構造体ユニットを増減させて螺旋構造体を構成することが可能となり、長さが異なる気流流路毎に螺旋構造体を製作することが無く、低コスト化を図ることが可能となる。また、螺旋構造体ユニットを増減させることにより、必要とされる消音性能を容易に得ることが可能となる。
【0012】
請求項8に記載の発明は、請求項1又は請求項7に記載の発明において、前記螺旋構造体に吸音材を貼設、又は、前記螺旋構造体を吸音材で構成したことを特徴とする。これにより、ファンによる騒音の音波が吸音材で吸音され、より騒音を低減させることが可能となる。
【0013】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜請求項8に記載の発明において、前記螺旋構造体の外側に取り付けられた前記円筒部材の内側に吸音材を貼設、又は、前記円筒部材を吸音材で構成したことを特徴とする。これにより、騒音の外部への漏洩を効果的に抑止できる上、製造コストを低減することが可能となる。
【0014】
請求項10に記載の発明は、請求項1〜請求項9に記載の発明において、前記ファンの入風側及び吹出側の両側に前記螺旋構造体を配設したことを特徴とする。これにより、ファンの入風側から放出される騒音もファンの入風側に配設された螺旋構造体により低減させることが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、キャビネット本体内を換気するための換気口を有するキャビネットに設置され、ファンにより発生する気流が流通する気流流路内に、螺旋構造体を配設したことを特徴とする。これにより、気流は気流流路内の螺旋構造体により形成される流路を流通して排出される一方で、ファンによる騒音の音波は、螺旋構造体により減衰されて消音されるので、ファンから発生する騒音の外部への漏洩を効果的に抑止することが可能となる。また、螺旋構造体による騒音を減衰させる構造を狭い空間に形成することができ、消音装置の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1の実施形態のキャビネット用消音装置の全体斜視図である。
【図2】キャビネット本体の扉及びキャビネット用消音装置を除去した状態の全体斜視図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】筐体を取り外した状態のキャビネット用消音装置の斜視図である。
【図5】筐体、ガイド部、及び、円筒部材を取り外した状態のキャビネット用消音装置の斜視図である。
【図6】消音装置の断面斜視図である。
【図7】螺旋構造体の斜視図である。
【図8】第2の実施形態のキャビネット用消音装置の斜視図である。
【図9】第2の実施形態のキャビネット用消音装置の断面斜視図である。
【図10】第2の実施形態のキャビネット用消音装置の断面図である。
【図11】第3の実施形態のキャビネット用消音装置の断面図である。
【図12】第3の実施形態の消音装置の詳細図である。
【図13】第3の実施形態の消音装置の円筒部材を取り外した側面図である。
【図14】第3の実施形態の別例のキャビネット用消音装置の断面図である。
【図15】第4の実施形態のキャビネット用消音装置の断面図である。
【図16】第5の実施形態のキャビネット用消音装置の断面図である。
【図17】第6の実施形態の消音装置の筐体を取り外した斜視図である。
【図18】第6の実施形態の消音装置の円筒部材を取り外した斜視図である。
【図19】第6の実施形態の螺旋構造体ユニットの斜視図である。
【図20】第6の実施形態の螺旋羽根の上面図である。
【図21】第6の実施形態の螺旋羽根の斜視図である。
【図22】第6の実施形態の消音装置の断面図である。
【図23】第6の実施形態の消音ユニットの斜視図である。
【図24】第6の実施形態の螺旋構造体ユニットを連結状態を示す斜視図である。
【図25】第7の実施形態の螺旋構造体ユニットの分解斜視図である。
【図26】第7の実施形態の螺旋構造体ユニットの斜視図である。
【図27】第7の実施形態の消音ユニットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好ましい実施の形態を説明する。なお、第1の実施形態〜第5の実施形態は何れも請求項7以下に対応し、第6〜第7の実施形態が請求項2〜6に対応する。
(第1の実施形態)
図1に示されるように、第1の実施形態は、キャビネット本体10の一側面側に、消音装置150が取り付けられた実施形態である。本実施形態では、図2に示されるように、キャビネット本体10は、前面が開放した箱形である。そして、図1に示されるように、キャビネット本体10の開放した前面には、扉11が開閉自在に取り付けられている。キャビネット本体10の他側面には、吸気口10aが形成され、この吸気口10aには、ルーバー12が取り付けられている。このルーバー12には、不織布等で構成されたフィルターが取り付けられ、キャビネット本体10内への異物の進入が防止される。
【0018】
図2に示されるように、キャビネット本体10の一側面側には、円形状の換気口10bが形成されている。図2、図3に示されるように、換気口10bには、ファン15が取り付けられている。本実施形態では、ファン15は、キャビネット本体10の内部側に取り付けられている。
【0019】
図1、図3、図4に示されるように、第1の実施形態の消音装置150は、筐体151、ガイド部材152、螺旋構造体153、円筒部材154、流入口部材155、吹出口部材156、支持部材157とから構成されている。筐体151は箱形であり、キャビネット本体10の一側面に取り付けられている。換気口10bは、筐体151の内部に開口している。筐体151内には、ガイド部材152、螺旋構造体153、円筒部材154、流入口部材155、吹出口部材156、支持部材157が収納されて取り付けられている。
【0020】
図4に示されるように、流入口部材155は、板状の基板155aの四隅が折り曲げられて構成されている。基板155aには、円形状の流入口155bが形成されている。流入口部材155の外縁形状は、筐体151内部の断面形状と対応している。流入口部材155は、換気口10bの下側位置に、筐体151内部を区切るように取り付けられている。
【0021】
図4、図5に示されるように、吹出口部材156は、板状の基板156aの四隅が折り曲げられて構成されている。基板156aには、円形状の吹出口156bが形成されている。吹出口部材156の外縁形状は、筐体151内部の断面形状と対応している。図3に示されるように、吹出口部材156は、筐体151下端の開口端に取り付けられている。
【0022】
図3、図4に示されるように、ガイド部材152は、その断面が円弧形状に形成された板状である。ガイド部材152は、換気口10bと流入口155bを覆うように取り付けられている。本実施形態では、ガイド部材152の一端は、換気口10bに対応する消音装置150の筐体151の内面に取り付けられ、ガイド部材152の他端は、流入口155b外側の基板155aに取り付けられている。このガイド部材152により、換気口10bから排出される気流が、スムーズに流入口155bに導かれる。
【0023】
図3、図4、図6に示されるように、流入口部材155の流入口155bと吹出口部材156の吹出口156bを接続するように、円筒部材154が取り付けられている。図3、図4、図6に示されるように、円筒部材154の内部には、螺旋構造体153が密着して取り付けられている。本実施形態では、図7に示されるように、螺旋構造体153は、軸部153aと、この軸部153aの上端から下端にかけて、旋回しながら取り付けられた螺旋羽根153bとから構成されている。本実施形態では、螺旋構造体153は、単位長となる螺旋一周分の螺旋構造体ユニット158を、複数個連結して構成されている。なお、図示したこの螺旋構造体ユニット158は、螺旋羽根153の螺旋一周分を単位長としたが、螺旋二周分または半周分など適選なものを単位長としてもよい。図7の(B)に示されるように、軸部153aの一端には、係合突起153cが形成され、軸部153aの他端には、係合突起153cと係合する係合凹部153dが形成されている。
【0024】
図3、図6に示されるように、係合突起153cが係合凹部153dに係合して、複数の螺旋構造体ユニット158が連結されて一体となり、流入口155bから吹出口156bに連なる一連の螺旋構造体153が構成されている。図5に示されるように、複数の螺旋構造体ユニット158が連結されている状態では、螺旋羽根153bの開始端153eと、前記螺旋羽根153bと隣接する螺旋羽根153bの終了端153fが合致している。これにより、同軸に重ね合わされ一体となった軸部153aの一端(上端)から他端(下端)側にかけて、複数周回連続的に旋回する螺旋羽根が形成されている。螺旋構造体153を上面視すると、螺旋羽根153bの外縁は円形状となっている。図3や図6に示されるように、螺旋羽根153bの外縁は、円筒部材154の内面と合致して当接している。最下端の螺旋構造体153は、吹出口156bを横断するように吹出口部材156に取り付けられた棒状の支持部材157によって支持されている。
【0025】
以下に、第1の実施形態のキャビネット用消音装置150の作用について説明する。ファン15が回転すると、吸気口10aから吸気された空気が、キャビネット本体10内部に収納された電気機器を冷却した後に、換気口10bから排気され、キャビネット本体10内が換気される。換気口10bから排気された気流は、ガイド部材152により、流入口155bに導かれる。流入口155bに導かれた気流は、円筒部材154内の螺旋羽根153bにより形成される流路を流通して、吹出口156bから排出される。
【0026】
ファン15からは騒音が発生するが、換気口10bは筐体151で覆われているので、ファン15から発生する直接音が外部に放出されないようになっている。なお、直接音とは、反射や透過することなく、直接耳に伝達される音のことをいう。円筒部材154内には螺旋構造体153が配設されているので、流入口155bに進入する騒音の音波は、円筒部材154内の螺旋羽根153bにより形成される流路内を吹出口156b側に伝達したとしても、騒音の音波が、螺旋羽根153b、円筒部材154の内壁、及び、軸部153aに何度も反射し、反射する際に音波が減衰されることから、吹出口156bからは、殆ど騒音が放出されない。
【0027】
このように本発明では、ファン15により発生する気流が流通する気流流路である円筒部材154内に、複数の螺旋構造体153を配設したので、気流は円筒部材154内の螺旋羽根153bにより形成される流路を流通し、吹出口156bから排出される一方で、ファン15による騒音の音波は、螺旋構造体153により減衰されて消音されるので、騒音が殆ど外部に放出されず、ファン15から発生する騒音の外部への漏洩を抑止することが可能となる。
また、螺旋構造体153による騒音を減衰させる構造を狭い空間に形成することができ、消音装置の小型化を図ることができる。
【0028】
なお、ガイド部材152、円筒部材154の内面、螺旋構造体153の表面に、ウレタンやスポンジゴム等の吸音材を貼設したり、或いは、ガイド部材152、円筒部材154、螺旋構造体153自体を吸音材で構成したりすると、騒音の音波が吸音材で吸音されるため、より好ましい。
特に、円筒部材154の内側に吸音材を貼設した構造とすれば、螺旋構造体153で仕切られた円筒部材の面全体に渡って吸音材が配置されることになり、騒音の外部への漏洩を効果的に抑止できる上、製造コストも低減することができる。
【0029】
なお、円筒部材154の下端は開口しているが、円筒部材154の内部に螺旋構造体153が配設されているので、円筒部材154の下端からの雨風の進入が防止される。なお、円筒部材154を伸縮自在な蛇腹形状とし、必要とされる消音性能に応じて、円筒部材154の内部に配設される螺旋構造体ユニット158の数を増減させることにしても差し支え無い。
【0030】
(第2の実施形態)
図8〜図10を用いて、第1の実施形態と異なる点について、第2の実施形態のキャビネット用消音装置250について説明する。第2の実施形態では、キャビネット本体10の換気口10bに、消音装置250が回動可能に取り付けられ、消音装置250の吹出口251bの向きを任意の方向に変更することができる実施形態である。
【0031】
図9に示されるように、第2の実施形態の消音装置250は、筐体251と螺旋構造体253とから構成されている。筐体251は、図において、下側に吹出口251bが形成された箱形形状である。筐体251内には、円筒形状の円筒部材251cが設けられていて、その一端が流入口251aとなっている。キャビネット本体10の換気口10bと流入口251aが合致して、筐体251がキャビネット本体10に回動可能に取り付けられている。なお、換気口10bと流入口251aの合致部分には、ゴム等で構成されたパッキンが取り付けられ、換気口10b内部への雨水や異物の進入を防止している。
【0032】
図9や図10に示されるように、螺旋構造体253は、第1の実施形態と同様に軸部253aと、この軸部253aの一端から他端側に、旋回するように形成された螺旋羽根253bとから構成されている。本実施形態では、螺旋構造体253は、単位長となる螺旋一周分の螺旋構造体ユニット258が、複数個連結されて構成されている。すなわち、複数の螺旋構造体ユニット258が連結されて一体となり、一連の螺旋構造体253が構成されている。また、図9や図10に示されるように、螺旋羽根253bの外縁は、円筒部材251cの内面と合致して当接している。本実施形態では、螺旋構造体253は、その軸部253aが、筐体251の内部に形成された嵌合凹部251dと嵌合して取り付けられている。なお、軸部253aと螺旋羽根253bを別部材とし、軸部253aに螺旋羽根253bに差し込む構造としても差し支え無い。
【0033】
以下に、第2の実施形態のキャビネット用消音装置250の作用について説明する。ファン15が回転すると、吸気口10aから吸気された空気が、キャビネット本体10内部に収納された電気機器を冷却した後に、換気口10bから排気される。換気口10bから排気された気流は、円筒部材251c内の螺旋羽根253bにより形成される流路を流通して、吹出口251bから排出される。
【0034】
ファン15からは騒音が発生するが、換気口10bは、筐体251で覆われているので、ファン15から発生する直接音の外部への漏洩を効果的に抑止することが可能となる。円筒部材251a内には螺旋構造体253が配設されているので、円筒部材251a内に進入する騒音の音波は、円筒部材251c内の螺旋羽根253bにより形成される流路内を吹出口251b側に伝達したとしても、騒音の音波が、螺旋羽根253b、円筒部材251aの内壁、及び、軸部253aに何度も反射し、反射する際に音波が減衰されることから、吹出口251bからは、殆ど騒音が放出されず、ファン15から発生する騒音の外部への漏洩を抑止することが可能となる。 また、吹出口251bから僅かに放出される騒音も、消音装置250を回動させることにより、吹出口251bの向きを人が居ない方向に変更させることができる。
【0035】
なお、筐体251又は円筒部材251cの内面や螺旋構造体253の表面に吸音材を貼設したり、或いは、筐体251の内面、円筒部材251c又は螺旋構造体253自体を吸音材で構成したりすると、騒音の音波が吸音材で吸音されるため、好ましい。なお、螺旋構造体253の螺旋方向を、ファン15の回転方向と同一にすることが、螺旋構造体153内の気流の流れがスムーズになる点で好ましい。
【0036】
(第3の実施形態)
図11〜図13を用いて、第1の実施形態と異なる点について第3の実施形態のキャビネット用消音装置350について説明する。第3の実施形態では、消音装置350がキャビネット本体10の内部に取り付けられた実施形態である。図12の(B)に示されるように、消音装置350は、円筒部材351、前記した螺旋構造体253とから構成されている。円筒部材351の内部の断面形状は円形状であり、本実施形態では、円筒部材351は円筒である。螺旋構造体253は円筒部材351の内部に収納されて取り付けられ、螺旋羽根253bの外縁は、円筒部材351の内面と合致して当接している。図11や図12に示されるように、消音装置350(円筒部材351)が、その一端の吹出口351bで、換気口10bに取り付けられている。そして、消音装置350(円筒部材351)他端の流入口351aにファン15が取り付けられている。なお、ファン15の外径と円筒部材351の内径は略同一であることが、ファン15により発生した気流の流れがスムーズになる点で好ましい。なお、螺旋構造体253は、実施形態1と同様に軸部253aと、この軸部253aの一端から他端側に、旋回するように形成された螺旋羽根253bとから構成され、単位長となる螺旋一周分の螺旋構造体ユニット258を、複数個連結して形成したものとしてもよい。
【0037】
ファン15から放出される騒音は、消音装置350内に進入するので、ファン15から発生する直接音が外部に放出されないようになっている。円筒部材351内には螺旋構造体253が配設されているので、円筒部材351内に進入する騒音の音波は、円筒部材351内の螺旋羽根253bにより形成される流路内を吹出口351b側に伝達したとしても、騒音の音波が、螺旋羽根253b、円筒部材351の内壁、及び、軸部253aに何度も反射し、反射する際に音波が減衰されることから、吹出口351bからは、殆ど騒音が放出されない。
【0038】
なお、円筒部材351の内面や螺旋構造体253の表面に吸音材を貼設したり、或いは、円筒部材351の内面、螺旋構造体253自体を吸音材で構成したりすると、騒音の音波が吸音材で吸音されるため、好ましい。
このように、第3の実施形態では、消音装置350がキャビネット本体10の内部に取り付けられているので、キャビネット本体10外に、消音装置350が突出すること無く、邪魔にならない。なお、本実施形態において屋外で使用する場合には換気口10bにルーバー等を設置することが望ましい。
【0039】
なお、図14に示されるように、キャビネット本体10内側の吸気口10aに消音装置350を取り付けると、吸気口10aからの騒音の漏洩が防止されるので、より好ましい。なお、キャビネット本体10外側の吸気口10aに消音装置350を取り付けても差し支え無い。
【0040】
(第4の実施形態)
図15を用いて、第1の実施形態と異なる点について第4の実施形態のキャビネット用消音装置350について説明する。第4の実施形態は、図15に示されるように、換気口10bに取り付けられたファン15の入風側15a及び吹出側15bの両方側に、消音装置350が取り付けられた実施形態である。この実施形態では、ファン15の吹出側15bだけでなく、入風側15aから放出される騒音が螺旋構造体153により、消音される。なお、本使用例ではファン15に取り付けられた消音装置350のうち、一方の消音装置350が筐体の外部に設置されているが、双方共に筐体10の内部に設置したものとしてもよい。また外部に設置する消音装置は上記した実施形態1または2の構造を採用してもよい。
【0041】
(第5の実施形態)
図16を用いて、第1の実施形態と異なる点について第5の実施形態のキャビネット用消音装置450について説明する。第5の実施形態は、図16に示されるように、円筒部材154の内部にファン15が取り付けられ、このファン15の入風側15a及び吹出側15bの両方側の円筒部材154の内部に螺旋構造体153を配設した実施形態である。ファン15の吹出側15bだけでなく、入風側15aから放出される騒音が螺旋構造体153により、消音される。
【0042】
以下に示す各実施形態は、請求項2〜6に対応するものである。
(第6の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態の螺旋構造体の形状を、連続羽根から単羽根に変化させたものである。以下、図17〜図24を用いて第1の実施形態と異なる点について説明する。図17〜図19に示すように、本実施形態の螺旋構造体653は、軸部653aとこの軸部653aの上端から下端にかけて設けられた複数の螺旋羽根653bとからなり、その外側を円筒部材654で覆われている。本実施形態の螺旋羽根653bは、図20及び図21に示すように中心角120°の螺旋状の単羽根であり、図19のように軸部653aを中心に周方向に120°間隔で配列されている。これにより円筒部材654内には単羽根で仕切られた風路が複数(本実施形態では3つ)形成されるため、第1の実施形態に比べてファン15からの通風量を多くすることができる。
【0043】
前記螺旋構造体653は、軸部653aを中心に周方向に120°間隔で3枚の螺旋羽根653bを配列し、螺旋羽根653bの流入口155b側の一端部と、隣り合う螺旋羽根653bの吹出口156側の他端側とが視線上重なり合うように構成しているため、気流流入側の端面から気流吹出側の端面を直視できない螺旋構造となっている。このため気流は直線的に気流吹出側の端面に流れることはなく、螺旋面に沿って旋回しながら螺旋構造体653の内部を通過することとなる。また、単羽根はその内側端部661を軸部653aに、外側端部662を円筒部材654の内側壁に当接させている。これにより、ファンからの音波は螺旋構造体653や円筒部材654の内側壁に反射して減衰しながら吹出口156bに到達することとなるため、騒音が直接外部に抜けることがない。なお、螺旋羽根653bの外側端部662は円筒部材654の内側壁に当接するものであるが、円筒部材654の内側壁に吸音材を形成している場合には、螺旋羽根653bの外側端部662が吸音材に当接するように形成する。
【0044】
また、図22及び図23のように、螺旋羽根653bや軸部653a(螺旋構造体653)の表面、さらには円筒部材654の内側壁に吸音材659を貼設することが好ましい。これにより騒音の減衰・消音効果を高めることができる。なお、同様の効果を得るために、螺旋羽根653bや軸部653a(螺旋構造体653)自体を吸音材で形成してもよい。また、螺旋構造体653の上部にファン15を形成しており、ファン15の軸部15bの同一直線状に螺旋構造体653の軸部653aが形成される。ファン15の軸部15b付近は風が流れず、風が流れたとしてもわずかな流量である。そのため軸部653aに吸音材659を貼設しても流量に対して大きな影響を与えずに音波の減衰が可能で、騒音を減衰させる構造を狭い空間に形成することができ小型化を図ることができる。なお、この際、軸部653aと軸部653aに貼設した吸音材659の直径幅はファン15の軸部15bと同径が望ましい。
【0045】
また、第1の実施形態と同様に、単羽根の長さごとに螺旋構造体ユニット658を形成し、これを図19のように複数個連結して流入口155bから吹出口156bに連なる一連の螺旋構造体653を構成してもよい。これにより、気流流路の長さに合わせて螺旋構造体ユニット658の連結個数を調節できるので、個別の螺旋構造体653を製作する必要がなく、汎用性に富む。なお、本実施形態では、図22に示すように、螺旋構造体ユニット658の外側に同じ高さの円筒部材654を取り付けて消音ユニット660を構成し、この消音ユニット660を連結する構造である。各消音ユニット660は同寸のものでもよいし、図23及び図24に示すように高さの異なるものであってもよい。図23及び図24の実施形態は、各螺旋構造体ユニット658は螺旋羽根653bの中心角が同じであるが軸線方向長さが異なるユニットが形成させてある。図においてはいずれも分解斜視図を示しているが、実際の使用形態では連結されて使用されるものである。いずれの消音ユニット660であっても、単羽根の中心角度は同じであるので連続的に旋回する螺旋羽根653bを形成できる。また、消音ユニット660の大きさや個数の組合せ方次第で、使用状況に応じた換気性能と消音性能を発揮させることができる。例えば、大きい消音ユニットを上にして連結した場合には、大きい消音ユニットの単羽根は小さい消音ユニットの単羽根より緩やかな斜度となるので、大きいサイズのユニットをファン15側に取り付けることにより、ファン15からの風をよりスムーズに筐体151内に流れ込ませることができる。
【0046】
なお、本実施形態では、3枚の単羽根を120°間隔で配列したが、これに限定されるものではない。例えば、単羽根6枚で構成した場合には、単羽根の斜度が60°と緩やかであるので、ファン15からの風が消音装置150内に流れ込みやすくなる。しかも、ファン15からの音波の反射面積は増加するため、効果的に換気・消音することができる。なお、上記構造を第2の実施形態から第5の実施形態に用いても差支えない。
【0047】
(第7の実施形態)
本実施形態は、複数の単羽根からなる螺旋構造体ユニット700を分解可能に形成したものである。以下、図25〜図27を用いてその構成及び組み立て方法を説明する。
【0048】
本実施形態の螺旋構造体ユニット700は、図25に示すように、6枚の単羽根(からなる螺旋羽根)701と、軸部653aに相当する円柱状の吸音材702と、吸音材702にすべての単羽根701を一体的に固定する枠状の止め部704とからなる。
【0049】
各単羽根701の内側の上下端には、単羽根701の上下辺から延設された円弧部701aが形成されている。一方、各単羽根701の外側の上下端には、止め部704,705に係止する引掛り片701c,701dが突出形成されている。
【0050】
止め部704,705は、上下一対の円形枠体であり、単羽根701を、上下から挟み込んで一体的に固定するものである。枠体の内壁には、単羽根701の外側に形成された引掛り片701c,701dが嵌め込まれる嵌入部704c,705dが60°間隔で形成されている。
【0051】
まず、吸音材702の上下面外周を覆うように、単羽根701の円弧部701aを相互に隣接配置する。そして、上側の止め部704を単羽根701の上端外縁を挟み込むように取り付け、同様に、下側の止め部705を単羽根701の下端外縁を挟み込むように取り付ける。このとき、全ての引掛り片701c,701dが、対応する嵌入部704c,705dに嵌まり込むように取り付ける。これにより、吸音材702、単羽根701が止め部704、705により一体的に固定され、図26に示す螺旋構造体ユニット700が完成する。
【0052】
なお、図27のように、上記螺旋構造体ユニット700に円筒部材706を取り付ければ消音ユニット708が完成する。この場合も、円筒部材706の内壁に吸音材707を貼設しておけば、消音性能を高めることができる。
【0053】
以上、現時点において、もっとも、実践的であり、かつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨あるいは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うキャビネット用消音装置もまた技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0054】
10 キャビネット本体
10a 吸気口
10b 換気口
11 扉
12 ルーバー
15 ファン
15a 入風側
15b 吹出側
100 第1の実施形態のキャビネット用消音装置
150 消音装置(第1の実施形態)
151 筐体
152 ガイド部材
153 螺旋構造体
153a 軸部
153b 螺旋羽根
153c 係合突起
153d 係合凹部
154 円筒部材
155 流入口部材
155a 基板
155b 流入口
156 吹出口部材
156a 基板
156b 吹出口
157 支持部材
158 螺旋構造体ユニット
200 第2の実施形態のキャビネット用消音装置
250 消音装置(第2の実施形態)
251 筐体
251a 流入口
251b 吹出口
251c 円筒部材
300 第3の実施形態のキャビネット用消音装置
350 消音装置(第3の実施形態)
351 円筒部材
351a 流入口
351b 吹出口
400 第4の実施形態のキャビネット用消音装置
500 第5の実施形態のキャビネット用消音装置
600 第5の実施形態のキャビネット用消音装置
653 螺旋構造体
653a 軸部
653b 螺旋羽根
654 円筒部材
658 螺旋構造体ユニット
659 吸音材
660 吸音ユニット
661 内側端部
662 外側端部
700 螺旋構造体ユニット(第7の実施形態)
701 単羽根
701a 円弧部
701c 引掛り片
701d 引掛り片
702 吸音材
704 止め部
704c 嵌入部
705 止め部
705d 嵌入部
706 円筒部材
707 吸音材
708 消音ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット本体内を換気するための換気口を有するキャビネットに設置され、ファンにより発生する気流が流通する気流流路内に、螺旋構造体を配設したことを特徴とするキャビネット用消音装置。
【請求項2】
前記螺旋構造体は、その気流流入側の端面から気流吹出側の端面を直視できない構造であることを特徴とする請求項1記載のキャビネット用消音装置。
【請求項3】
前記螺旋構造体は、その中心部に吸音材を備えたものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のキャビネット用消音装置。
【請求項4】
前記螺旋構造体は、複数の螺旋羽根を軸部の周囲に形成した螺旋構造体ユニットが、複数連結されて構成されたものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のキャビネット用消音装置。
【請求項5】
前記螺旋構造体は、複数の前記螺旋羽根の内側端部を前記軸部に、外側端部を円筒部材内側に密着させたものであることを特徴とする請求項4に記載のキャビネット用消音装置。
【請求項6】
前記螺旋構造体は、前記螺旋羽根の中心角が同じで軸線方向長さが異なるユニットが複数連結されて構成され、大きいサイズのユニットを前記ファン側に取り付けたことを特徴とする請求項4又は請求項5に記載のキャビネット用消音装置。
【請求項7】
前記螺旋構造体は、単位長分の一連の螺旋羽根を軸部の周囲に形成した螺旋構造体ユニットが、複数連結されて構成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のキャビネット用消音装置。
【請求項8】
螺旋構造体に吸音材を貼設するか、又は、前記螺旋構造体を吸音材で構成したことを特徴とする請求項1又は請求項7に記載のキャビネット用消音装置。
【請求項9】
前記螺旋構造体の外側に取り付けられた前記円筒部材の内側に吸音材を貼設するか、又は、前記円筒部材を吸音材で構成したことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれかに記載のキャビネット用消音装置。
【請求項10】
前記ファンの入風側及び吹出側の両側に前記螺旋構造体を配設したことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれかに記載のキャビネット用消音装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2012−117518(P2012−117518A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231877(P2011−231877)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000227401)日東工業株式会社 (374)
【Fターム(参考)】