説明

キャブのフロア

【課題】 キャブのフロア下部、特に、フロアの中央部位の下方に配設する装置等に対して大幅な高さ制限を与えることなく、しかも、キャブの天井高さ位置を下げて、作業機械の車高を低く構成することができるキャブのフロアを提供する
【解決手段】 キャブ10のフロア15を中央部位15aが、中央部位15aの両側方における側方部位15b,15cよりも高く配せるように、中央部位15aと両側方部位15b,15cとの間に段差を設けて構成する。中央部位15aによって、中央部位15aの下方に配設する装置等に対して高さの高い設置スペースを構成することができ、側方部位15b,15cの位置を下げることにより、キャブ10の天井部11の高さを低く構成することができる。また、段差を形成して構成した中央部位15aをフロア15の強度を向上させるリブとして機能させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に搭載されたキャブのフロアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から作業機械に搭載されるキャブのフロアでは、例えば、特開2005−1418号公報や特開2003−49452号公報等に見られるように略水平のフロアを備えた構成となっている。キャブのフロアを水平に構成しておくためには、フロア下部に配する装置等のなかで寸法が高い装置等を収納できる高さ位置にフロアを構成しておかなければならない。このため、フロア下部における空間としては、小さな装置等を収納した部位における上部空間は広く構成されてしまい、無駄な空間を備えてしまうことになる。
【0003】
また、キャブのフロアを、下部床板と下部床板の上側に設ける上部床板との二重床板構造にて構成し、下部床板に空調ユニット収納凹部を形成した建設機械(特許文献1参照)が提案されている。特許文献1に記載された建設機械を本願発明における従来技術1として、下部床板31と上部床板32とを示す斜視図を図3に示している。
【0004】
図3に示すように、図示せぬ運転席を支持する台座34の前方側におけるフロアは、空調ユニット収納凹部31aを形成した下部床板31と、下部床板31の上側に載せられる上部床板32及びフロアマット33とから構成されている。空調ユニット収納凹部31aに空調ユニット35を収納した後、上部床板32で空調ユニット35を覆うことができる。
【特許文献1】特開2005−226307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された建設機械のキャブでは、上部床板32によって段差を有する床面として構成しておくことができるが、フロアの構成としては下部床板31と上部床板32との二重床板構造によって構成されている。このため、空調ユニット35を収納した下部床板31の下面と下部床板31の下方に配設した装置等との間には、配設した装置等の大きさによって大小様々な上部空間が構成されてしまうことになる。
【0006】
また、上部床板32に構成された段差は、上部床板32の一端部側に形成されている。このため、上部床板32としては段差部によって多少の強度が得られるとしても、平板状の床板に比べて格段に強度を向上させるものではない。
【0007】
更に、空調ユニット収納凹部31aの深さを深く構成した場合には、空調ユニット収納凹部31aの下方部位における収納空間は、水平に構成したフロアに比べて更に狭くなってしまう。このため、下部床板31の下方に配設することのできる装置等に大幅な制限を与えてしまうことになる。
【0008】
また、空調ユニット収納凹部31aの下方部位における収納空間を広げるために、下部床板31の配設位置を高く配設したり、空調ユニット収納凹部31aの深さを浅く構成したりすることができる。しかしこのように構成したとしても、下部床板31の配設位置を高く配設した場合には、相対的に上部床板32の高さ位置も高く配設されてしまうことになる。また、空調ユニット収納凹部31aの深さを浅く構成した場合には、空調ユニット収納凹部31aから飛び出した空調ユニット35の部分が多くなり、上部床板32としては飛び出した空調ユニット35を覆う為、更に上方に大きく持ち上がった構成となる。
【0009】
このとき、上部床板35の上面から運転席までの間の高さ寸法や、キャブの天井までの高さを所望の高さ寸法として構成しておくためには、天井の高さ位置を高く構成しておかなければならなくなる。天井の高さ位置を高く構成すると、全体的に建設機械の車高が高く構成されることになる。
【0010】
建設機械の車高が高く構成されると、トラック等に建設機械を載せて搬送する場合には、道路交通法によって走行できる車両の高さ制限に引っかかってしまうことになる。また、船舶等を用いて建設機械を搬送する場合においても、通常の大きさのコンテナーに収納して搬送することができなくなり、特別に作った専用のコンテナー内に収納するか特別の設置方法を用いて船舶等に搭載しなければならなくなる。
【0011】
本願発明は、キャブのフロア下部、特に、フロアの中央部位の下方に配設する装置等に対して大幅な高さ制限を与えることなく、しかも、キャブの天井高さ位置を下げて、作業機械の車高を低く構成することができるキャブのフロアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明の課題は請求項1、2に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本願発明では、作業機械に搭載されたキャブのフロアであって、板状体からなる前記フロアが、前記フロアの左右幅方向における中央部位と前記中央部位に隣接した両側方部位との間に段差を有して構成され、
前記中央部位よりも低位に構成された前記各側方部位が、少なくとも前記キャブ内に配設する装置を設置するスペース又は作業者の足を乗せる充分なスペースを備えてなることを最も主要な特徴となしている。
【0013】
また、本願発明では、前記フロアが、第1フロア部材と第2フロア部材とを連接固定して構成され、前記第1フロア部材が、板状体を屈曲させて前記一方の側方部位と前記中央部位とを備え、前記フロアの左右幅方向における断面形状が下向きに開口した略コ字状の一端側から外方に延設したフランジを有する形状に構成され、前記第2フロア部材が、前記第1フロア部材の端縁に沿って連接固定される板状体として構成されてなることを主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0014】
本願発明では、フロアの左右幅方向における中央部位と中央部位に隣接した両側方部位との間に段差を形成し、中央部位の高さ位置を両側方部位に対して高位となるように構成している。しかも、左右の幅方向において両側方部位に所定の幅をもたせた構成としている。このようにフロアを構成することによって、両側方部位からキャブの天井の高さまでの寸法を所望の寸法として構成しておきながら、天井の高さ位置を低く構成することができるようになり、作業機械の車高を低く構成することができる。
【0015】
フロア構成として、段差をもたせて中央部位を両側方部位よりも高位となるように構成しているので、中央部位の下方における設置スペースとしては高さを備えた設置スペースとして構成しておくことができる。このため、従来の作業機械で設置していた装置等を配設するためのレイアウトを変更することなく、それらの装置等の上部に本願発明に係わるフロアを構成することができる。しかも、フロアの中央部位から天井までの高さ寸法としては、所望の高さ寸法が得られるように構成しておくことができる。
【0016】
また、両側方部位に所定の幅をもたせるとともに、段差をもたせて中央部位を両側方部位よりも高く構成しているので、中央部位にリブとしての機能を持たせておくことができる。即ち、フロアとしては、中央にリブが形成された構成としておくことができるので、単一の平板状のフロアを用いた場合に比べて、フロアとしての強度を向上させることができる。従って、フロアを構成する板状部材の板厚を薄く構成しておくことができるようになり、作業機械としての重量低減を図ることができる。
【0017】
しかも、両側方部位に所定の幅をもたせた構成としているので、一方の側方部位に空調機等の設置を行うことができ、空調機等を設置するための新たな設置場所を確保する必要がない。また、他方の側方部位を作業者が昇降時における足を支える部材として構成しておくことができる。
【0018】
本願発明に係わるフロアを、第1フロア部材と第2フロア部材とを連接固定して構成しているので、一枚の板状体の中央部に凸部が形成されるように屈曲させて構成したり、絞り加工によって構成したりするよりも、容易に構成することができる。即ち、一枚の板状体の中央部に凸部が形成されるように屈曲させるためには、大型の屈曲させる装置を必要とする、また、絞り加工で形成するためには、高価な金型を備えた大型のプレス装置を必要とする。
【0019】
これに対して、第1フロア部材だけに屈曲部が形成されているので、屈曲部を形成する装置としては、大型の装置を用いなくてすむ。しかも、第1フロア部材と第2フロア部材との2つの部材からフロアを構成しているので、第1フロア部材と第2フロア部材とを搬送したり組み付けたりする上でも、これらの作業が容易になる。また、第1フロア部材と第2フロア部材とを溶接にて連接固定して、キャブのフロアとして取り付け固定する場合でも、溶接ロボットを用いて溶接作業を行わせることができるようになり、取り付け作業を効率的に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本願発明の作業機械に搭載されるキャブの構成及びフロアの構成としては、以下で説明する構成に限定されるものではない。以下で説明する構成以外にも本願発明の課題を解決することができる構成であれば、それらの構成を採用することができるものである。このため、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではなく、多様な変更が可能である。
【実施例】
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係わる作業機械に搭載されるキャブの概略斜視図である。図2は、第1フロア部材と第2フロア部材とからなるフロアの連接固定前の状態を示す概略斜視図である。
【0022】
図1に示すようにキャブ10は、天井部11を下面側から支持する形で左右一対のAピラー12と中央部に配した左右一対のBピラー13とによって支持固定している。左右一対のAピラー12は途中から略L字状に折れ曲がり、折れ曲がった先で天井部11を支持固定している。Aピラー12において折れ曲がって天井部11を支持している部位は、Bピラー13によって下から支持固定されている。
【0023】
キャブ10の右側面部は、側壁14と窓ガラスとを備えた構成となっている。キャブ10の左側面部におけるAピラー12とBピラー13との間に形成した昇降口22は、図示せぬドアによって開閉することができる。キャブ10内には運転席21が設けられ、運転席21の前方下部にはフロア15が配設されている。また、キャブ10の後方部は、カバー20によって覆われている。カバー20の下方部位には、図示せぬカウンターウェイトを配することができる。
【0024】
フロア15は、図2に示すように第1フロア部材16と第2フロア部材17とを、それぞれの端縁16a、17a同士を重ね合わせて溶接固定された構成となっている。第1フロア部材16は、フロア15における一方の側方部位15bと中央部位15aとを備えた形状に、板状体を屈曲させて構成されている。また、第2フロア部材は、フロア15における他方の側方部位15cを構成する板状体から構成されている。
【0025】
フロア15をキャブ10内に配設したとき、中央部位15aと側方部位15b及び側方部位15cとの間に段差を形成して、中央部位15aを側方部位15b,15cよりも上方に配設することができる。高さ位置を高くした中央部位15aの下方には、所望の装置等を配設するのに十分なスペースを確保しておくことができる。段差の高さ寸法としては、中央部位15aの下方に配設する装置等と中央部位15aとが干渉しない高さ寸法として構成しておくことができる。
【0026】
このように、側方部位15b及び側方部位15cを中央部位15aよりも下方に配設することができるので、側方部位15b及び側方部位15cから天井部11までの高さを変えることなく、作業機械における地上から天井部11までの高さ寸法、即ち、作業機械の車高を低く構成することができる。
図示例では示していないが、フロア15に段付きのマットを被せて、マットの表面が水平な床面状態となるように構成しておくこともできる。
【0027】
このように、本願発明に係わるフロア15でキャブ10のフロアを構成することにより、作業機械の車高を低く構成することができる。これにより、作業機械をトラック等で搬送するときも道路交通法に反しないで作業機械を搬送することができる。また、作業機械を船にて搬送する際にも、通常の大きさのコンテナー内に作業機械を収納して搬送することが可能となる。
【0028】
また、フロア15の周囲は、Aピラー12の下端部同士を連接固定する下部フレーム18と、Aピラー12とBピラー13の下端部を連接固定する図示せぬ下部フレームと、運転席21を構成する台座23等との間で溶接固定される構成となっている。
【0029】
この構成によって、フロア15を溶接固定するとき、フロア15の周囲及び第1フロア部材16と第2フロア部材との溶接部は、溶接棒がアクセスし易くしかも溶接線にそって溶接棒を移動し易い配置構成となっている。このため、溶接ロボットを用いて自動的に溶接作業を行なわせることができるようになる。フロアの周囲を溶接固定する代わりに、ボルト等の固定手段で固定しておくこともできる。
【0030】
また、図1、図2に示すように、第1フロア部材16の中央部位15aによって、フロア15としてはリブを備えた構成となることができるので、フロア15の強度を大幅に向上させることができる。これにより、平板状の板材でフロアを構成する場合に比べて、第1フロア部材16及び第2フロア部材17を構成する板状体の板厚を薄く構成しても、平板状の板材で構成したフロアと同等の強度をもたせておくことができる。従って、フロア15の重量を低減することができるので、作業機械としての重量低減を図ることができる。
【0031】
しかも、上述した従来技術のように2重床板構造となっていないので、フロア15としての重量は大幅に低減することができ、しかも、フロア15の下部空間を有効に利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本願発明は、本願発明の技術思想を適用することができる装置等に対しては、本願発明の技術思想を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】作業機械に搭載されるキャブの概略斜視図である。(実施例)
【図2】フロアの概要斜視図である。(実施例)
【図3】フロアの要部を示す斜視図である。(従来例)
【符号の説明】
【0034】
10・・・キャブ、
15・・・フロア、
15a・・・中央部位、
15b、15c・・・側方部位、
16・・・第1フロア部材、
17・・・第2フロア部材、
18・・・下部フレーム、
23・・・台座、
31・・・下部床板、
31a・・・空調ユニット収納凹部、
32・・・上部床板、
35・・・空調ユニット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機械に搭載されたキャブのフロアであって、
板状体からなる前記フロアが、前記フロアの左右幅方向における中央部位と前記中央部位に隣接した両側方部位との間に段差を有して構成され、
前記中央部位よりも低位に構成された前記各側方部位が、少なくとも前記キャブ内に配設する装置を設置するスペース又は作業者の足を乗せる充分なスペースを備えてなることを特徴とするキャブのフロア。
【請求項2】
前記フロアが、第1フロア部材と第2フロア部材とを連接固定して構成され、
前記第1フロア部材が、板状体を屈曲させて前記一方の側方部位と前記中央部位とを備え、前記フロアの左右幅方向における断面形状が下向きに開口した略コ字状の一端側から外方に延設したフランジを有する形状に構成され、
前記第2フロア部材が、前記第1フロア部材の端縁に沿って連接固定される板状体として構成されてなることを特徴とする請求項2記載のキャブのフロア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−302773(P2008−302773A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−150722(P2007−150722)
【出願日】平成19年6月6日(2007.6.6)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【出願人】(000184643)コマツユーティリティ株式会社 (106)
【Fターム(参考)】