説明

キレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物

【課題】 金属表面の錆やスケールなどの酸化物皮膜を除去するためのキレート剤・有機酸洗液に添加し、洗浄液中の金属素地の腐食、孔食を抑制する添加で変異原性物質を含まない製剤を提供すること。
【解決手段】腐食抑制剤は、
(1) 両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドキシアルキルイミダゾリニウムベタインおよび/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩の1種以上からなること。
(2) (1)の物質にメルカプタン基(HS−)、チオシアン酸基(−SCN)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種を混合する製剤を使用すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面の錆やスケールなどの酸化物皮膜を除去するためのキレート剤・有機酸洗液に添加する腐食抑制剤に関し、洗浄液中の金属素地の腐食、孔食を抑制するための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
金属表面に付着している錆やスケール等の酸化皮膜を除去するために、塩酸、硫酸等の無機酸や、シュウ酸、リンゴ酸、グルコン酸、クエン酸等の有機酸や、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等のポリアミノカルボン酸や、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩や、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、 ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレンテトラミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等のホスホン酸や、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩が金属の溶解性分として使用されてきた。
【0003】
しかし、溶解性分のみの使用では、酸化物皮膜を除去する以外に金属素地の腐食、水素脆性、孔食生成などの弊害をもたらす。これらを抑制ないし防止する目的で、各種の腐食抑制剤が使用されてきており、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、4級のアンモニウム塩等の有機アミン類、ヘキサメチレンテトラミン等のホルマリン関連物質、チオ尿素、メルカプトベンゾチアゾール等の硫黄化合物、2-プロピン-1-オール、1-ヘキシン-3-オール、ブチンジオール等のアセチレンアルコール類が腐食抑制剤として公知である。
【0004】
腐食抑制剤としてイミダゾリンの四級カチオン化合物が開示され(特許文献1)、有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物も開示されている。(特許文献2)しかし、近年の環境問題で、効果のあったヘキサメチレンテトラミン等のホルマリン関連物質や、チオ尿素が、変異原性物質に位置づけられ、アセチレンアルコール系の2-プロピン-1-オール(別名プロパギルアルコール)も毒性が強く、使用困難となってきた。又、上記の腐食抑制剤単独では効果が充分でない。
【特許文献1】特公昭43−22168、特公昭44−26535、特公昭49−15144、特公昭52−42528、特公昭52−42529、特開昭51−20728、特公昭56−512、特公昭57−48639、特公3207183
【特許文献2】特公3364006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記のような事情に着目してなされたものであって、その目的は、変異原性物質であるヘキサメチレンテトラミンや、チオ尿素を使用しないで、キレート剤や有機酸洗浄に於いて腐食抑制効果のある製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することのできた本発明の腐食抑制剤の製剤とは、化1で示される両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドキシアルキルイミダゾリニウムベタインおよび/または化2で示される両性の界面活性剤であるβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩の1種以上からなることを特徴とするキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物である。

(化1)

R1は炭素数が1〜20の分枝が有って良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を示す。
R2,R3は炭素数が1〜3のアルキレン基を示す
(化2)

R1は炭素数が1〜20の分枝が有って良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を示す。
R2は炭素数が1〜2のアルキレン基を示す
Mはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属を示す。
【0007】
また前記で示される両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン(化1)が、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよび/または2-アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン で有る物や、および/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩(化2)から選ばれる少なくとも1種は、目や皮膚に対する刺激が少なく、ベビーシャンプーや、ボディーシャンプーの基材に使用されるもので安全性が高いものである。腐食抑制機能はまだ充分に解明されていないが、両性の界面活性剤は水溶性が良く、金属表面に対する吸着が良くなることで腐食抑制の効果が出る物と考えられる。
【0008】
また本発明は前記で示される両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン(化1)および/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩(化2)の1種以上と、メルカプタン基(HS−)、チオシアン酸基(−SCN)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種の混合物とからなることを特徴とするキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物である。
両者を混合使用することで、相乗効果が発生し腐食抑制効果が良くなる。
【0009】
前記のメルカプタン基(HS−)、チオシアン酸基(−SCN)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物の代表例としてが、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトベンゾイミダゾール、2,4,6-トリメルカプト-S-トリアジン、2-ジブチルアミノ-4,6-ジメルカプト-S-トリアジン、2-アニリノ-4,6-ジメルカプト-S-トリアジン、3-メルカプト-1-プロパンスルホン酸、1-チオグリセロール、2-アミノチオフェノール、4-アミノチオフェノール、チオ安息香酸、グリセロール-モノチオグリコレート、β-メルカプトプロピオン酸、β-メルカプト酢酸、β-メルカプトマレイン酸、β-メルカプトリンゴ酸、P-ヒドロキシチオフェノール、チオサリチル酸、チオテレフタル酸、2-メルカプトエタノール、メルカプトフェノール、チオ酢酸、α-メルカプトトルエン、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、チオシアン酸アンモニウム、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム等が選ばれる。
【0010】
各々の腐食抑制剤はキレート剤・有機酸洗浄液に、0.00001〜10wt%添加することで効果的な腐食抑制を示す。両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタインおよび/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩は、0.001wt%以下では腐食抑制を示さず、より効果的には0.005wt%以上であり、10wt%以上では腐食抑制効果が飽和となり価格も高くつきより効果的には1wt%以下である。メルカプタン基(HS−)、チオシアン酸基(−SCN)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物は、0.00001wt%以下では腐食抑制を示さず、より効果的には0.0001wt%以上であり、1wt%以上では腐食抑制効果が飽和となり価格も高くつきより効果的には0.1wt%以下である。
【0011】
対象となるキレート剤としては、ニトリロ3酢酸、エチレンジアミン4酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン3酢酸、ジエチレントリアミン5酢酸等のポリアミノカルボン酸や、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩であり、アミノトリ(メチレンホスホン酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ホスホン酸、エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、ジエチレンテトラミンペンタ(メチレンホスホン酸)、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸等のホスホン酸や、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩であり、有機酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ヒドロキシ酢酸、グルコン酸、チオグリコール酸、チオリンゴ酸等の有機酸や、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩などが挙げられる。
【0012】
また本発明の腐食抑制剤は、使用する洗浄剤に添加しても良く、また濃厚な洗浄剤原液に添加しておき、使用時に水で希釈使用しても良い。また洗浄剤との混合を良くするために、溶剤や界面活性剤を併用しても良い。
【0013】
またサビ金属との親和性を良くし、洗浄剤の浸透性を向上させる界面活性剤を併用しても良い。
【0014】
また本発明の腐食抑制剤は、他の腐食抑制剤と併用しても良い。併用する他の腐食抑制剤としては、繊維の柔軟仕上げ剤や、シャンプーリンス剤として使用され人体の安全性が比較的良好な4級カチオン製剤や、アルキルアミン、ポリアミン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、エチレンジアミンEO/PO付加物(旭電化、プルロニックTRシリーズ)、ケイ皮アルデヒド、ヒダントイン、5,5-ジメチルヒダントイン、アラントイン、グリオキシル酸や、亜リン酸、次亜リン酸、ジエチルヒドロキシアミン、L-ソルビン酸、L-アスコルビン酸等の還元剤などが挙げられる。
【0015】
また本発明の腐食抑制剤は、これを添加したキレート剤・有機酸洗浄液を金属表面に吹き付けるか金属表面をキレート剤・有機酸洗浄液に浸漬することのいずれの洗浄方法を用いても良い。
【0016】
また本発明の腐食抑制剤は、塩酸、硫酸、リン酸、スルファミン酸、フッ酸、硝酸等の無機酸や、無機酸と有機酸の混合酸による酸洗浄においても使用可能であり、効果を示す。
【実施例】
【0017】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実施例1
【0018】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液〔ヒドロオキシエチレンジアミン3酢酸の3ナトリウム塩の40%水溶液(キレストH、キレスト社製)を5wt%と、クエン酸1水塩を3wt%加えたpH3.7の水溶液〕に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCL(川研ファインケミカル社製、含量36%)を、0.1wt%添加した洗浄液200gに、試験片として240番研磨の冷延鋼板(60×40×2mm、50cm)を浸漬し、80℃に6時間放置して、前後の重量変化から腐食量と防食率を測定した。結果を表1に示す。
実施例2
【0019】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCLの0.1%と、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩(サンビットN-G、三新化学工業社製)を0.01wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例3
【0020】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCLの0.1%と、メルカプトベンズイミダゾール(サンダントMB、三新化学工業社製)を0.01wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例4
【0021】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCLの0.1%と、ジメチルジチオカルバミン酸のナトリウム塩(40%水溶液、サンセラーS−40、三新化学工業社製)を0.05wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例5
【0022】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCLの0.1%と、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩の0.01wt%と、5,5-ジメチルヒダントイン(MRCユニテック社製)を0.1wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例6
【0023】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、β-椰子アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム化合物であるリポミンLA(ライオン社製、含量20%)を0.1wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例7
【0024】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、β-椰子アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム化合物であるリポミンLA(ライオン社製、含量20%)の0.1wt%と、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩(サンビットN-G、三新化学工業社製)を0.01wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例1
【0025】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液200gに、無添加で実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。(ブランク例)
比較例2
【0026】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩の0.01wt%を0.1wt%添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例3
【0027】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、メルカプトベンズイミダゾールの0.01wt%を添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例4
【0028】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、ジメチルジチオカルバミン酸のナトリウム塩(40%)0.05wt%を添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例5
【0029】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、5,5-ジメチルヒダントイン0.1wt%を添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例6
【0030】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCLの0.1%と、変異原性物質であるチオ尿素の0.01wt%を添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
比較例7
【0031】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物として、特公3364006に開示されている2-プロピン-1-オールの0.1wt%と、ココナットアミン(ファーミンC、花王社製)の0.1wt%を添加した洗浄液200gに、実施例1と同様に試験をした結果を表1に示す。
実施例8
【0032】
アルカリ性の標準キレート剤・有機酸洗浄液〔エチレンジアミン4酢酸の3ナトリウム塩(キレストC、キレスト社製)を5wt%に、水酸化ナトリウムを添加してpH9.1に調整した水溶液〕に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインであるソフタゾリンCL(川研ファインケミカル社製)の0.1wt%と、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩の0.01wt%と、5,5-ジメチルヒダントインの0.1wt%を添加した洗浄液200gに、試験片として240番研磨の冷延鋼板(60×40×2mm、50cm)を浸漬し、80℃に6時間放置して、前後の重量変化から腐食量と防食率を測定した。結果を表2に示す。
比較例8
【0033】
アルカリ性の標準キレート剤・有機酸洗浄液200gに、無添加で実施例8と同様に試験をした結果を表2に示す。(ブランク例)
比較例9
【0034】
アルカリ性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩の0.01wt%を添加した洗浄液200gに、実施例8と同様に試験をした結果を表2に示す。
比較例10
【0035】
アルカリ性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、5,5-ジメチルヒダントインの0.1wt%を添加した洗浄液200gに、実施例8と同様に試験をした結果を表2に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
【表2】

【0038】
酸性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン単独使用の実施例1は、防食率82.1%を示し、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインと、メルカプタン基(HS−)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物の併用である実施例2,3,4はそれぞれ相乗効果を示し、実施例2に5,5-ジメチルヒダントインを添加した実施例5では、より相乗効果を示した。
【0039】
β-椰子アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム化合物単独使用の実施例6は、防食率83.4%を示し、β-椰子アルキルアミノプロピオン酸ナトリウム化合物と、メルカプトベンゾチアゾールのナトリウム塩の併用である実施例7は、相乗効果を示した。
【0040】
2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが入っていない比較例2,3,4,5は、防食率が30%以下で効果が無く、変異原性物質であるチオ尿素と、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインとの併用は防食率94.5%と効果を示した。有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物として、特公3364006に開示されている2-プロピン-1-オールと、ココナットアミンを添加した比較例7は、防食率53.8%で余りよい効果を示さなかった。
【0041】
アルカリ性の標準キレート剤・有機酸洗浄液に、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインと、メルカプタン基(HS−)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物と、5,5-ジメチルヒダントインを添加した実施例6は、防食率97.8%で効果を示し、2-椰子アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインが添加されていない比較例9,10は、効果が悪い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン(化1)および/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩(化2)の1種以上からなることを特徴とするキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物。
(化1)

R1は炭素数が1〜20の分枝が有って良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を示す。
R2,R3は炭素数が1〜3のアルキレン基を示す。
(化2)

R1は炭素数が1〜20の分枝が有って良いアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、炭素数が6〜20のアリール基、ベンジル基、複素環基を示す。
R2は炭素数が1〜3のアルキレン基を示す。
Mはナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属を示す。
【請求項2】
前記で示される両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタイン(化1)および/またはβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩(化2)の1種以上と、メルカプタン基(HS−)、チオシアン酸基(−SCN)、もしくはメルカプタン基のアルカリ金属塩(NaS−、KS−,LiS−)を有する有機化合物から選ばれる少なくとも1種の混合物とからなることを特徴とする請求項1に記載のキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物。
【請求項3】
前記化1で示される両性の界面活性剤である2-アルキル-N-カルボキシアルキル-N-ヒドロキシアルキルイミダゾリニウムベタインが、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインおよび/または2-アルキル-N-カルボキシエチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインから選ばれる少なくとも1種である請求項1,2に記載のキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物。
【請求項4】
前記化2で示される両性の界面活性剤であるβ-アルキルアミノカルボン酸のアルカリ金属塩が、β-アルキルアミノプロピオン酸のアルカリ金属塩である請求項1,2に記載のキレート剤・有機酸洗浄用腐食抑制剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4に記載の各々の腐食抑制剤をキレート剤・有機酸洗浄液に、0.00001〜10wt%添加することを特徴とする腐食抑制剤組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の腐食抑制剤組成物を添加したキレート剤・有機酸洗浄液を金属表面に吹き付けるか金属表面をキレート剤・有機酸洗浄液に浸漬することで、金属表面を洗浄することを特徴とする金属の洗浄方法。

【公開番号】特開2006−169595(P2006−169595A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365164(P2004−365164)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(596148629)中部キレスト株式会社 (31)
【出願人】(592211194)キレスト株式会社 (30)
【Fターム(参考)】