説明

キースイッチ及びキー入力装置

【課題】サイズを大きくすることなく簡素な構成で、1つのキーボタンに複数の機能を割り当てられるキースイッチ及びキー入力装置を提供する。
【解決手段】キースイッチ10は、基板11と、この基板11上に固定されるドーム状の金属部材12と、少なくとも金属部材12によって基板11に対向して保持され、金属部材12に抗して基板11側に押下可能に配設されるキートップ13と、キートップ13の背面から金属部材12に向かって突出する第1の押し子14aと、この第1の押し子14aを挟んで互いに対向する位置でキートップ13の背面から基板11に向かって突出する第2及び第3の押し子14b,14cと、基板11上に固定され、第1の押し子14aと金属部材12を介して又は直接に接触可能な第1の端子11aと、基板11上に固定され、第2及び第3の押し子14b,14cとそれぞれ接触可能な第2及び第3の端子11b,11cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キースイッチ及びキー入力装置に関し、更に詳しくは、携帯端末装置に好適に搭載されるキースイッチ及びキー入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話機等に代表される携帯端末装置では、一般に、各種キーボタンに機能を割り当てる、いわゆるキーボタンアサインを行っている。しかし、近年、携帯端末装置の高機能化と共に、機能の多様化が進み、キーボタンが不足する傾向にある。
【0003】
キーボタンが不足すると、メニュー構成が複雑化する。このため、ユーザが、目的の機能を使用する際には、ハードキーだけでなく、タッチパネル上のソフトキーも含めて、複数のキー操作が必要となる。その結果、携帯端末装置は、キー操作性に関してユーザの使い勝手が悪くなっている。
【0004】
上記キーボタンの不足に対しては、単に、キーボタンを新たに追加することが考えられる。しかし、例えばキーボタンを1つだけ追加しても、キーボタンの不足は解消できず、キー操作性を十分に向上できない場合がある。また、筐体のサイズ等、ハードウェアに起因する実装上の制約により、キーボタンの追加自体ができない場合もある。
【0005】
特許文献1には、多方向操作スイッチが記載されている。多方向操作スイッチは、直線状に配置された3つのスイッチ部を有するケースと、このスイッチ部を操作する操作つまみとを備える。3つのスイッチ部は、ケースの中央、一端側及び他端側にそれぞれ配置された中央スイッチ部、一端側スイッチ部及び他端側スイッチ部を含む。操作つまみは、これらのスイッチ部に対応する位置にそれぞれ押圧部を有する。この多方向操作スイッチでは、操作つまみの上面の中央、一端側、他端側をそれぞれ押下すると、中央スイッチ部、一端側スイッチ部及び他端側スイッチ部が押圧部と接触し、それぞれON状態となる。
【0006】
特許文献2には、テンキーの4隅(斜め端)の位置にスイッチを設けたキー入力装置が記載されている。キー入力装置では、テンキーの中央部が押下されると、4隅の全てのスイッチがON状態となる。また、テンキーの上端、右端、下端、左端をそれぞれ押下すると、上端、右端、下端、左端の隅となる2つのスイッチがそれぞれON状態となる。
【0007】
上記特許文献1,2に記載の技術では、操作つまみ又はテンキーを押下する位置毎に、ON状態となるスイッチが異なるので、1つの操作つまみ又はテンキーに複数の機能を割り当てられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−123596号公報
【特許文献2】特開2005−038249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、ケースの側面に突起形状の保持部を複数形成し、更に、操作つまみにはフック部が形成され、保持部と係合している。このため、特許文献1では、操作つまみを所定範囲内で傾き操作することが可能となるものの、操作つまみ及びケースの構造が複雑になり、操作つまみのサイズも大きくなるという問題があった。また、特許文献2には、テンキーに設けられるスイッチの構成、及び、テンキーが押下されてスイッチがON状態、即ち導通する構成について具体的な記載がない。
【0010】
本発明は、サイズを大きくすることなく簡素な構成で、1つのキーボタンに複数の機能を割り当てられるキースイッチ及びキー入力装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明は、基板と、
該基板上に固定されるドーム状の金属部材と、
少なくとも前記金属部材によって前記基板に対向して保持され、前記金属部材に抗して前記基板側に押下可能に配設されるキートップと、
前記キートップの背面から前記金属部材に向かって突出する第1の押し子と、該第1の押し子を挟んで互いに対向する位置で前記キートップの背面から前記基板に向かって突出する第2及び第3の押し子と、
前記基板上に固定され、前記第1の押し子と前記金属部材を介して又は直接に接触可能な第1の端子と、
前記基板上に固定され、前記第2及び第3の押し子とそれぞれ接触可能な第2及び第3の端子とを備えるキースイッチを提供する。
【0012】
また、本発明は、キースイッチと、該キースイッチの作動を検出する検出部とを備え、
前記キースイッチは、
基板と、
該基板上に固定されるドーム状の金属部材と、
少なくとも前記金属部材によって前記基板に対向して保持され、前記金属部材に抗して前記基板側に押下可能に配設されるキートップと、
前記キートップの背面から前記金属部材に向かって突出する第1の押し子と、該第1の押し子を挟んで互いに対向する位置で前記キートップの背面から前記基板に向かって突出する第2及び第3の押し子と、
前記基板上に固定され、前記第1の押し子と前記金属部材を介して又は直接に接触可能な第1の端子と、
前記基板上に固定され、前記第2及び第3の押し子とそれぞれ接触可能な第2及び第3の端子とを備えるキー入力装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のキースイッチ及びキー入力装置では、サイズを大きくすることなく簡素な構成で、1つのキーボタンに複数の機能を割り当てることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るキースイッチ及びキー入力装置が搭載された携帯端末装置の外観を示す図。
【図2】(a)及び(b)は、図1に示すA−A線に沿った断面及び一部上面を示す図。
【図3】(a)〜(c)は、キートップの中央部、一端部、他端部を押下した状態の断面を示す図。
【図4】(a)及び(b)は、キー入力装置の構成を示す機能ブロック、及び、キー押下時の検出マトリクスを示す図。
【図5】(a)及び(b)は、比較例であるキースイッチの断面及び一部上面を示す図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るキースイッチの断面を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のキースイッチは、最小構成として、基板と、金属部材と、キートップと、第1〜第3の押し子と、第1〜第3の端子とを備える。金属部材は、基板上に固定されるドーム状の部材である。キートップは、少なくとも金属部材によって基板に対向して保持され、金属部材に抗して基板側に押下可能に配設される。第1の押し子は、キートップの背面から金属部材に向かって突出する。第2及び第3の押し子は、第1の押し子を挟んで互いに対向する位置でキートップの背面から基板に向かって突出する。第1の端子は、基板上に固定され、第1の押し子と金属部材を介して又は直接に接触可能である。第2及び第3の端子は、基板上に固定され、第2及び第3の押し子とそれぞれ接触可能である。
【0016】
上記キースイッチでは、少なくとも第1〜第4の態様で作動可能となる。一例として、まず、キートップを押下しないとき、即ち、第1〜第3の押し子の何れもが第1〜第3の端子に接触しない態様を第1の態様とする。次に、キートップの第1の押し子に対応する位置(例えば、中央)を押下することで、第1〜第3の押し子がそれぞれ第1〜第3の端子に接触する態様を第2の態様とする。続いて、キートップの第2の押し子に対応する位置(例えば、一端側)を押下することで、第1及び第2の押し子がそれぞれ第1及び第2の端子に接触し、第3の押し子が第3の端子に接触しない態様を第3の態様とする。さらに、キートップの第3の押し子に対応する位置(例えば、他端側)を押下することで、第1及び第3の押し子がそれぞれ第1及び第3の端子に接触し、第2の押し子が第2の端子に接触しない態様を第4の態様とする。
【0017】
上記キースイッチでは、キートップを押下する位置を変えるだけで、第1〜第4の態様を採ることができる。このため、第1〜第4の態様毎に機能を割り当てると、1つのキースイッチ(或いはキーボタン)に複数の機能を割り当てたことになる。また、第1〜4の態様は、キートップの背面に形成した第1〜第3の押し子と、基板上に固定した第1〜第3の端子とを組み合せることで構成される。従って、キースイッチでは、1つのキーボタンに複数の機能を割り当てることができ、更に、キートップのサイズを大きくすることなく、構成も簡素化できる。
【0018】
本発明のキー入力装置は、最小構成として、上述のキースイッチと、このキースイッチの作動を検出する検出部とを備える。
【0019】
上記キー入力装置では、上述した第1〜第4の態様によるキースイッチの作動を検出できる。このため、1つのキーボタンに、第1〜第4の態様に対応する機能を割り当てることで、携帯端末装置の多機能化に追従できる。
【0020】
以下、図面を参照し、本発明の例示的な実施の形態について詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るキースイッチ及びキー入力装置が搭載された携帯端末装置の外観を示す図である。携帯端末装置1は、例えば携帯電話機等に代表される携帯型の装置であって、上部筐体2と、下部筐体3と、ヒンジ部4と、キースイッチ10とを備える。携帯端末装置1は、折り畳み型であって、上部筐体2と下部筐体3とがヒンジ部4により相互に回転可能に結合されており、同図には展開された状態が示されている。
【0021】
携帯端末装置1は、通話に限らず、例えば、メール送受信を可能とする通信機能、音声(音楽)データや動画データを再生する機能等の各種機能を有する。キースイッチ(或いはキーボタン)10は、テンキー等とは別に配置された追加キーボタンである。キースイッチ10は、図示のように下部筐体3に実装されており、各種機能のうち、一例として音楽データに関する複数の機能が割り当てられている。以下、図中のA−A線に沿ったキースイッチ10の断面を図2に示す。
【0022】
キースイッチ10は、図2(a)に示すように、基板11と、メタルドーム12と、キートップ13と、キーシート14と、メタルドームシート15とを備える。基板11は、下部筐体3の内部に実装されており、基板11上には第1〜第4の端子11a〜11dがそれぞれ固定されている。メタルドーム12は、基板11上に固定されるドーム状の金属部材であり、頂部付近から基板11に向かって突出する凸部12aが形成されている。
【0023】
キートップ13は、少なくともメタルドーム12によって基板11に対向して保持され、メタルドーム12に抗して基板11側に押下可能に配設される。キーシート14は、導電性を有するラバー素材から成り、キートップ13の背面に配設されている。キーシート14には、電気的に接続された第1〜第3の押し子14a〜14cが形成されている。第1の押し子14aは、キーシート14の背面からメタルドーム12に向かって突出している。第2及び第3の押し子14b,14cは、第1の押し子14aを挟んで互いに対向する位置でキートップ13の背面から基板11に向かって突出している。
【0024】
メタルドームシート15は、絶縁シートであって、メタルドーム12及びメタルドーム12の周囲の基板11表面を覆っている。また、メタルドームシート15は、図2(b)に示すように、第1〜第3の押し子14a〜14cと重なる位置に、第1〜第3の押し子14a〜14cを貫通させる開口(メタルドームシート孔)15a〜15cを有する。
【0025】
基板11上に固定された第1の端子11aは、第1の押し子14aとメタルドーム12を介して接触可能である。第2及び第3の端子11b,11cは、メタルドームシート孔15b,15cを貫通した第2及び第3の押し子14b,14cとそれぞれ接触可能である。また、第4の端子11dは、第1の端子11aと、第2及び第3の端子11b,11cとの間の位置で基板11上にそれぞれ固定されており、メタルドーム12の縁部と接触している。キースイッチ10は、図2(a)に示す状態では、キートップ13が押下されておらず、第1〜第3の押し子14a〜14cの何れもが第1〜第3の端子11a〜11cに接触していない態様(以下、第1の態様という)を採る。
【0026】
次に、図3を参照してキートップ13が押下された状態について説明する。図3(a)は、ユーザが図中矢印Aに示すように、キートップ13の中央部を押下(押下A)した状態を示している。この状態では、第1の押し子14aが、メタルドームシート孔15aを貫通し、更に、メタルドーム12を基板11側に押し付けることで、凸部12aと第1の端子11aとが接触している。なお、凸部12aは、第1の押し子14aと第1の端子11aとの接触の安定性を保つために形成されている。また、第2及び第3の押し子14b,14cは、メタルドームシート孔15b,15cを貫通して第2及び第3の端子11b,11cに接触する。つまり、キースイッチ10は、図3(a)に示すように、キートップ13の中央部が押下されると、第1〜第3の押し子14a〜14cがそれぞれ第1〜第3の端子11a〜11cに接触する態様(以下、第2の態様という)を採る。
【0027】
図3(b)は、ユーザが図中矢印Bに示すように、キートップ13の一端側を押下(押下B)した状態を示している。この状態では、第2の押し子14bが、メタルドームシート孔15bを貫通して第2の端子11bに接触する。また、第1の押し子14aが第1の端子11aと接触する。ここで、キートップ13は、一端側に傾いているので、キートップ13の他端側の背面に位置する第3の押し子14cと第3の端子11cとは接触していない。つまり、キースイッチ10は、図3(b)に示すように、キートップ13の一端側が押下されると、第1及び第2の押し子14a,14bがそれぞれ第1及び第2の端子11a,11bに接触し、第3の押し子14cが第3の端子11cに接触しない態様(以下、第3の態様という)を採る。
【0028】
図3(c)は、ユーザが図中矢印Cに示すように、キートップ13の他端側を押下(押下C)した状態を示している。この状態では、第3の押し子14cが、メタルドームシート孔15cを貫通して第3の端子11cに接触する。また、第1の押し子14aが第1の端子11aと接触する。ここで、キートップ13は、他端側に傾いているので、キートップ13の一端側の背面に位置する第2の押し子14bと第2の端子11bとは接触していない。つまり、キースイッチ10は、図3(c)に示すように、キートップ13の他端側が押下されると、第1及び第3の押し子14a,14cがそれぞれ第1及び第3の端子11a,11cに接触し、第2の押し子14bが第2の端子11bに接触しない態様(以下、第4の態様という)を採る。
【0029】
上記のように、キースイッチ10は、キートップ13を押下する位置を変えるだけで、第1〜4の態様を採る。なお、キースイッチ10では、第1〜4の態様に加えて、他の第5〜第8の態様を採る場合がある。第5の態様とは、図3(b)に示す第3の態様で、第1の押し子14aと第1の端子11aとの接触不良により、第2の押し子14bのみが第2の端子11bに接触する態様をいう。第6の態様とは、図3(c)に示す第4の態様で、第1の押し子14aと第1の端子11aとの接触不良により、第3の押し子14cのみが第3の端子11cに接触する態様をいう。
【0030】
第7の態様とは、例えば、キートップ13の中央部を押下して、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触したものの、第2及び第3の押し子14b,14cがそれぞれ第2及び第3の端子11b,11cに接触しない態様をいう。第7の態様は、例えば、メタルドーム12の凸部12aと第1の端子11aとの間に導電性の異物が入り込んだ場合等が想定される。第8の態様とは、例えば、キートップ13の中央部を押下して、第2及び第3の押し子14b,14cがそれぞれ第2及び第3の端子11b,11cに接触したものの、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触しない態様をいう。第8の態様は、例えば、メタルドーム12の凸部12aが劣化している場合等が想定される。
【0031】
図4(a)は、キー入力装置の構成を例示する回路ブロック図である。キー入力装置30は、キースイッチ10と、キースイッチ10の作動を検出する検出部20とを備える。キースイッチ10の作動とは、キースイッチ10が上記第1〜第8の態様の何れかを採ることをいう。検出部20は、キー入力検出器(DET)21,22,23と、制御回路24と、CPU25と、各種機能ブロックに接続された各種制御回路26とを備える。
【0032】
DET21,22,23は、図示のように、それぞれ第2の端子11b、第1及び第3の端子11a,11cと電気的に接続されており、上記各態様に応じて0或いは1を示す検出信号を出力する。第1〜第3の端子11a〜11cは、短絡防止のための抵抗(数百kΩ)を経て電源Vdd(例えば、3.0V)に接続されている。第4の端子11dは、図示のように、GNDに接続されている。
【0033】
制御回路24は、DET21,22,23及びCPU25に接続されており、DET21,22,23から検出信号を受け取り、CPU25に検出信号を受け渡す。CPU25は、検出信号を受け取ると、図4(b)に示すキー押下時の検出マトリクス40に従い、各種制御回路26に対して命令を行う。各種制御回路26は、命令に従い各動作を実行する。各動作として、検出マトリクス40では、動作A、動作B、動作Cを割り当てている。一例として、動作Aは、音声のON/OFFする動作とした。動作Bは、音量を下げる動作とした。動作Cは、音量を上げる動作とした。
【0034】
次に、検出マトリクス40について説明する。検出マトリクス40では、第1の態様41、即ち「押下なし」で動作を「オフ」としている。第1の態様41では、第1〜第3の押し子14a〜14cの何れもが第1〜第3の端子11a〜11cに接触していない。このため、第1〜第3の端子11a〜11cは、電源Vddの電位を維持しており、DET21,22,23の検出信号が「1,1,1」となる。
【0035】
第2の態様42、即ち「押下A」では、動作を「動作A」としている。第2の態様42では、第1〜第3の押し子14a〜14cがそれぞれ第1〜第3の端子11a〜11cに接触する。このとき、第1の端子11aは、GNDに接続された第4の端子11dとメタルドーム12を介して電気的に接続されている。また、第2及び第3の端子11b,11cは、導電性のキーシート14により第1の端子11aと電気的に接続されている。このため、第1〜第3の端子11a〜11cは、GND電位となり、検出信号が「0,0,0」となる。
【0036】
第3の態様43では、動作を「動作B」としている。なお、第3の態様43での押下を「押下B1」とした。第3の態様43では、第1及び第2の押し子14a,14bがそれぞれ第1及び第2の端子11a,11bに接触し、第3の押し子14cが第3の端子11cに接触しない。このため、第3の端子11cのみが電源Vddの電位を維持し、第1及び第2の端子11a,11bがGND電位となり、検出信号が「0,0,1」となる。
【0037】
第4の態様44では、動作を「動作C」としている。なお、第4の態様44での押下を「押下C1」とした。第4の態様44では、第1及び第3の押し子14a,14cがそれぞれ第1及び第3の端子11a,11cに接触し、第2の押し子14bが第2の端子11bに接触しない。このため、第2の端子11bのみが電源Vddの電位を維持し、第1及び第3の端子11a,11cがGND電位となり、検出信号が「1,0,0」となる。
【0038】
第5の態様45では、動作を「動作B」としている。なお、第5の態様45での押下を「押下B2」とした。第5の態様45では、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触しない点で、第3の態様43と異なる。第5の態様45では、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触していないものの、図3(b)に示す押下Bにより、第1の押し子14aとメタルドーム12とは接触している。つまり、第2の押し子14bと接触している第2の端子11bは、第1の押し子14a及びメタルドーム12を介して第4の端子11dと電気的に接続されている。このため、第2の端子11bのみがGND電位となり、第1及び第3の端子11cは電源Vddの電位を維持し、検出信号が「0,1,1」となる。
【0039】
ここで、第3の態様43と第5の態様45とは、上記したように、検出信号が異なっているが、いずれの動作も「動作B」である。つまり、検出マトリクス40では、第5の態様45を第3の態様43と見なしている。このため、ユーザが押下B1を意図しながら、実際には押下B2により第5の態様45が採られた場合であっても、ユーザの意図する「動作B」が実行される。
【0040】
第6の態様46では、動作を「動作C」としている。なお、第6の態様46での押下を「押下C2」とした。第6の態様46では、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触しない点で、第4の態様44と異なる。第6の態様46では、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触していないものの、図3(c)に示す押下Cにより、第1の押し子14aとメタルドーム12とは接触している。つまり、第3の押し子14cと接触している第3の端子11cは、第1の押し子14a及びメタルドーム12を介して第4の端子11dと電気的に接続されている。このため、第3の端子11cのみがGND電位となり、第1及び第2の端子11a,11bは電源Vddの電位を維持し、検出信号が「1,1,0」となる。
【0041】
ここで、第4の態様44と第6の態様46とは、上記したように、検出信号が異なっているが、いずれの動作も「動作C」である。つまり、検出マトリクス40では、第6の態様46を第4の態様44と見なしている。このため、ユーザが押下C1を意図しながら、実際には押下C2により第6の態様46が採られた場合であっても、ユーザの意図する「動作C」が実行される。
【0042】
第7及び第8の態様47,48では、動作を共に「オフ」とし、押下を「不可」とした。第7の態様47は、例えば、メタルドーム12の凸部12aと第1の端子11aとの間に導電性の異物が入り込んだ状態で図3(a)に示す押下Aが行われた場合が想定される。この場合には、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触するが、第2及び第3の押し子14cがそれぞれ第2及び第3の端子11cと接触しない。このため、第7の態様47では、検出信号が「1,0,1」となる。
【0043】
第8の態様48は、例えば、メタルドーム12の凸部12aが劣化した状態で図3(a)に示す押下Aが行われた場合が想定される。この場合には、第2及び第3の押し子14b,14cがそれぞれ第2及び第3の端子11b,11cと接触するが、第1の押し子14aと第1の端子11aとが接触しない。このため、第8の態様48では、検出信号が「0,1,0」となる。つまり、第7及び第8の態様47,48は、上記したようにユーザの意図しない押下状態にある。そこで、検出マトリクス40では、第7及び第8の態様47,48での動作を「オフ」にすることで、ユーザの意図しない動作が実行されることを防止している。
【0044】
このように、キー入力装置30は、キースイッチ10が第2の態様42であれば動作A、即ち音声のON/OFFする動作を実行し、第3及び第5の態様43,45であれば動作B、即ち音量を下げる動作を実行し、また、第4及び第6の態様44,46であれば動作C、即ち音量を上げる動作を実行する。さらに、キー入力装置30は、キースイッチ10が第1、第7及び第8の態様41,47,48であれば、動作をオフとする。
【0045】
次に、図5を参照して、比較例であるキースイッチの構成について説明する。キースイッチ100では、キーシート14Aには第1の押し子14aのみが形成され、上記第2及び第3の押し子14b,14cが形成されていない。また、基板11には、第1及び第4の端子11a,11dのみが形成され、上記第2及び第3の端子11b,11cが形成されていない。さらに、メタルドームシート15Aには、上記メタルドームシート孔15a〜15cが形成されていない。なお、メタルドーム12Aには、上記凸部12aが形成されていない。
【0046】
このため、キースイッチ100では、第1の押し子14aが第1の端子11aに接触するか否かの態様を採るだけであり、1つのキーボタンに対して1つの動作しか割り当てられない。
【0047】
これに対して、本実施形態では、上記したように、キーシート14に第1〜第3の押し子14a〜14cを形成し、基板11上に第1〜第3の端子11a〜11cを形成し、また、メタルドームシート15にメタルドームシート孔15a〜15cをそれぞれ形成した。従って、本実施形態では、キートップ13の押下に応じて複数の態様を採ることができ、例えば、1つのキーボタンに対して3つの動作を割り当てられる。
【0048】
本実施形態では、3つの動作として、音声のON/OFFする動作A、音量を下げる動作B、及び、音量を上げる動作Cを示した。これに対して、既存のキーボタンでは、音量を調整するために、音量を下げるためのキーボタンと、音量を上げるためのキーボタンがそれぞれ必要となり、キーボタン或いは部品を実装するスペースを増やす必要がある。
【0049】
本実施形態では、キーボタン或いは部品を実装するスペースを増やすことなく、省スペース化を図った上で、キー入力検出を物理的に増やすことができる。また、キーボタンを既存のキーに適用すれば、既存のキー入力方式と比べて、3倍までのキー入力検出が可能となり、更なる多機能化に追従できる。従って、キーボタンアサインが不足することを低減し、また、機能に応じて柔軟なキーボタンアサインが可能となる。このため、ユーザが、複雑なキー操作を行わずに、目的の機能を動作させることができ、使い勝手が向上する。
【0050】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態に係るキースイッチの断面を示す図である。キースイッチ10Aは、キートップ13Aの表面に凹部13aが形成されている点で、上記第1の実施形態に係るキースイッチ10と異なる。キートップ13Aは、キーシート14の第1の押し子14aに対応する中央部で、上部形状を湾曲させている。このため、本実施形態では、キートップ13Aの押下をより確実に行うことができると共に、図3に示した押下A,B,Cに伴うそれぞれの感触の違いをユーザに認識し易くできる。このため、操作感を向上できる。
【0051】
上記各実施形態では、キーシート14を導電性のラバー素材としたが、これに限定されない。一例として、キーシート自体は、導電性を持たない一般的なラバー素材とし、キーシートの押し子側の表面に、第1〜第3の押し子14a〜14cを接続する導電層を配置してもよい。導電層としては、例えば、蒸着、めっき等の素材で形成する。これにより、キーシートのコストを低減できる。
【0052】
上記各実施形態では、1つのキーボタンに音量に関する各機能を割り当てたが、これに限らず、動画に関する各機能を割り当ててもよい。一例として、図4(b)に示す動作Aを動画の再生及び停止、動作Bを早送り、動作Cを巻き戻しとしてもよい。
【0053】
上記各実施形態では、キーボタンを追加キーボタンとして示したが、これに限らず、筐体に配置されているテンキー、ナビゲーションキー等、既存の各種キーボタンに適用してもよい。
【0054】
また、上記各実施形態では、第1の押し子14aと第1の端子11aとがメタルドーム12を介して接触可能な構成を示したが、これに限定されない。一例として、メタルドーム12に開口部を形成し、この開口部を介して第1の押し子14aと第1の端子11aとが直接に接触可能な構成としてもよい。この構成であっても、第1の押し子14aと第1の端子11aとが直接に接触した状態で、第1の端子11aがメタルドーム12の少なくとも一部に接触すれば、図4(b)に示す検出マトリクス40に従った各動作が可能となる。
【0055】
また、メタルドーム12に形成された凸部12aは、1つに限らず、複数形成してもよい。凸部12aを複数形成することで、メタルドーム12内に異物が混入した場合であっても、第1の押し子14aと第1の端子11aとの接触の安定性を確実に保つことができる。なお、第1の押し子14aと第1の端子11aとの接触が確保できるのであれば、凸部12aを形成しなくてもよい。
【0056】
さらに、上記各実施形態では、キースイッチ10及びキー入力装置30が折り畳み型の携帯端末装置1に実装されている例を示したが、これに限らず、スライド型或いは一体型の適宜の携帯端末装置に実装してもよい。
【0057】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明のキースイッチ及びキー入力装置は、上記実施形態の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
1:携帯端末装置
2:上部筐体
3:下部筐体
4:ヒンジ部
10,10A:キースイッチ
11:基板
11a〜11d:第1〜第4の端子
12:メタルドーム(金属部材)
12a:凸部
13,13A:キートップ
13a:凹部
14:キーシート
14a〜14c:第1〜第3の押し子
15:メタルドームシート
15a〜15c:メタルドームシート孔
20:検出部
21〜23:キー入力検出器(DET)
24:制御回路
25:CPU
26:各種制御回路
30:キー入力装置
40:検出マトリクス
41〜48:第1〜第8の態様

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
該基板上に固定されるドーム状の金属部材と、
少なくとも前記金属部材によって前記基板に対向して保持され、前記金属部材に抗して前記基板側に押下可能に配設されるキートップと、
前記キートップの背面から前記金属部材に向かって突出する第1の押し子と、該第1の押し子を挟んで互いに対向する位置で前記キートップの背面から前記基板に向かって突出する第2及び第3の押し子と、
前記基板上に固定され、前記第1の押し子と前記金属部材を介して又は直接に接触可能な第1の端子と、
前記基板上に固定され、前記第2及び第3の押し子とそれぞれ接触可能な第2及び第3の端子とを備えるキースイッチ。
【請求項2】
前記第1〜第3の押し子の何れもが前記第1〜第3の端子に接触しない第1の態様と、
前記第1〜第3の押し子がそれぞれ前記第1〜第3の端子に接触する第2の態様と、
前記第1及び第2の押し子がそれぞれ前記第1及び第2の端子に接触し、前記第3の押し子が前記第3の端子に接触しない第3の態様と、
前記第1及び第3の押し子がそれぞれ前記第1及び第3の端子に接触し、前記第2の押し子が前記第2の端子に接触しない第4の態様とで作動可能である、請求項1に記載のキースイッチ。
【請求項3】
前記第1〜第3の押し子は、導電部材によって互いに接続されている、請求項1又は2に記載のキースイッチ。
【請求項4】
前記金属部材及び該金属部材の周囲の基板表面は、絶縁シートに覆われており、該絶縁シートは、前記第1〜第3の押し子を貫通させる開口を有する、請求項1〜3の何れか一に記載のキースイッチ。
【請求項5】
前記金属部材に対応するキートップの表面に凹部が形成される、請求項1〜4の何れか一に記載のキースイッチ。
【請求項6】
前記第2の押し子のみが前記第2の端子に接触する第5の態様と、前記第3の押し子のみが前記第3の端子に接触する第6の態様とで更に作動可能である、請求項1〜5の何れか一に記載のキースイッチ。
【請求項7】
請求項6に記載のキースイッチと、該キースイッチの作動を検出する検出部とを備え、該検出部は、前記第5の態様を前記第3の態様と見なし、前記第6の態様を前記第4の態様と見なすキー入力装置。
【請求項8】
キースイッチと、該キースイッチの作動を検出する検出部とを備え、
前記キースイッチは、
基板と、
該基板上に固定されるドーム状の金属部材と、
少なくとも前記金属部材によって前記基板に対向して保持され、前記金属部材に抗して前記基板側に押下可能に配設されるキートップと、
前記キートップの背面から前記金属部材に向かって突出する第1の押し子と、該第1の押し子を挟んで互いに対向する位置で前記キートップの背面から前記基板に向かって突出する第2及び第3の押し子と、
前記基板上に固定され、前記第1の押し子と前記金属部材を介して又は直接に接触可能な第1の端子と、
前記基板上に固定され、前記第2及び第3の押し子とそれぞれ接触可能な第2及び第3の端子とを備えるキー入力装置。
【請求項9】
前記キースイッチは、前記第1〜第3の押し子の何れもが前記第1〜第3の端子に接触しない第1の態様と、
前記第1〜第3の押し子がそれぞれ前記第1〜第3の端子に接触する第2の態様と、
前記第1及び第2の押し子がそれぞれ前記第1及び第2の端子に接触し、前記第3の押し子が前記第3の端子に接触しない第3の態様と、
前記第1及び第3の押し子がそれぞれ前記第1及び第3の端子に接触し、前記第2の押し子が前記第2の端子に接触しない第4の態様とで作動可能である、請求項8に記載のキー入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−154782(P2011−154782A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−13714(P2010−13714)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】