説明

ギヤードモータ

【課題】出力部材の回転をセンサ装置によって安定して検出することのできるギヤードモータを提供すること。
【解決手段】ギヤードモータ100において、センサ装置80の永久磁石85は、出力部材5において上側連結穴52および下側連結穴53よりも半径方向外側に固定され、ホール素子83は基板8の上面に面実装されている。従って、遊星歯車機構65からの回転が下側連結穴51を介して出力部材5に伝達される際の負荷、および出力部材5の上側連結穴52から回転が出力される際の負荷によって、出力部材5に大きな負荷が加わっても、出力部材5では、永久磁石85の位置がずれるような変形が発生しない。センサ装置80は非接触式であるため、基板8を変形させるような応力を発生させず、かつ、ホール素子83は面実装タイプであるため、基板8の裏側にリード端子が突出することがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータの回転を出力部材に歯車機構を介して伝達するギヤードモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
モータの回転出力を出力部材に歯車機構を介して伝達するギヤードモータでは、センサ装置によって、出力部材の回転を検出するように構成されている。かかるセンサ装置としては、出力部材に設けた接点ブラシ(可動側センサ要素)と、2つのケースに挟持された基板に形成された導電パターン(固定側センサ要素)とを利用した構成が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、接点ブラシと基板に形成された導電パターンとを利用したセンサ装置では、ブラシと導電パターンとの間に接触不良が発生しやすいため、長期信頼性が低いという問題点がある。
【0004】
また、ギヤードモータのセンサ装置としては、出力部材のフランジ状の大径部の外周面に回転伝達用の外歯を設けるとともに、大径部に永久磁石(可動側センサ要素)を設け、ケースに保持された基板にリード端子付きホール素子(固定側センサ要素)を実装した構成が案出されている(特許文献2参照)。
【0005】
かかる磁気センサ装置は非接触式であるため、接点ブラシで生じるような接触不良が発生しない。
【特許文献1】特開2008−43109号公報
【特許文献2】特開2004−229378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2に開示の構成のように、出力部材において回転伝達用の外歯が設けられたフランジ状の大径部に可動側センサ要素を設けた場合、回転伝達時に大径部に加わる応力によって大径部が変形すると、可動側センサ要素の位置がずれてしまい、検出精度が低下するという問題点がある。
【0007】
以上の問題点に鑑みて、本発明の課題は、出力部材の回転をセンサ装置によって安定して検出することのできるギヤードモータを提供することにある。
【0008】
また、本発明の課題は、さらに、軸線方向の寸法を短くすることができるギヤードモータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明では、モータと、該モータの回転を伝達する歯車機構と、該歯車機構を介して前記モータの回転が伝達される出力部材と、該出力部材の回転を検出するセンサ装置と、を有するギヤードモータにおいて、前記歯車機構は、前記出力部材に対して該出力部材の回転軸線方向における一方側に遊星歯車機構を備え、前記センサ装置は、可動側センサ要素と固定側センサ要素とが非接触の非接触式センサ装置であって、前記出力部材の外部への出力部、および前記出力部材の前記遊星歯車機構との連結部より半径方向外側位置に保持され、前記固定側センサ要素は、前記可動側センサ要素と前記遊星歯車機構との間に配置された基板に面実装されていることを特徴とする。
【0010】
本発明において、モータの回転は、歯車機構として用いた遊星歯車機構を介して出力部材に伝達され、出力部材の出力部を介して外部に出力される。その際、センサ装置は、出力部材の回転、例えば、出力部材の回転位置を検出する。ここで、センサ装置の可動側センサ要素は、出力部材において出力部、および遊星歯車機構との連結部より半径方向外側位置に保持されている。このため、遊星歯車機構からの回転が連結部を介して出力部材に伝達される際の負荷、および出力部材の出力部から回転が出力される際の負荷によって、出力部材に大きな負荷が加わっても、かかる負荷は、出力部材において剛性の大きな中心側に加わるだけである。従って、出力部材では、可動側センサ要素が配置された半径方向外側部分が変形することがない。それ故、可動側センサ要素の位置がずれることがないので、センサ装置は高い精度で出力部材の回転を検出する。
【0011】
また、センサ装置は非接触式であるため、接触式と違って、固定側センサ要素が実装された基板を変形させるような応力が発生せず、仮に基板が変形した場合でも接触不良に起因する不具合が発生しない。また、センサ装置は非接触式であるため、基板が変形した場合でもチャタリングなどの不具合も発生しない。
【0012】
さらに、固定側センサ要素は、基板に面実装されているため、基板の裏側にリード端子が突出することがない。従って、基板の裏面側に遊星歯車機構を配置した場合でも、基板と遊星歯車機構とを近接させることができる。それ故、ギヤードモータの軸線方向の寸法を短くすることができる。さらにまた、固定側センサ要素は、基板に面実装されているため、リード端子を通す穴を基板に形成する必要がない。それ故、基板の剛性が大きいので、固定側センサ要素と可動側センサ要素との軸線方向の距離を一定に保つことができ、センサ装置の感度が高い。
【0013】
本発明において、前記可動側センサ要素は、前記出力部材において前記固定側センサ要素と対向する面より前記回転軸線方向における他方側に配置されていることが好ましい。すなわち、前記可動側センサ要素は、前記出力部材において前記固定側センサ要素と対向する面より突出していないことが好ましい。このように構成すると、出力部材において基板と対向する面と、基板とを近接させることができるので、ギヤードモータの軸線方向の寸法を短くすることができる。
【0014】
本発明において、前記可動側センサ要素は、例えば、前記出力部材の外周側面から半径方向外側に突出した突部に保持されている構成を採用することができる。かかる構成によれば、出力部材において固定側センサ要素と対向する面より可動側センサ要素が突出していない構成を容易に実現することができる。また、遊星歯車機構からの回転が連結部を介して出力部材に伝達される際の負荷、および出力部材の出力部から回転が出力される際の負荷によって、出力部材に大きな負荷が加わっても、出力部材では、可動側センサ要素の位置がずれるような変形が発生しない。
【0015】
本発明において、前記可動側センサ要素は、前記出力部材において前記固定側センサ要素と対向する面より前記回転軸線方向における他方側に形成された穴内に保持されている構成を採用してもよい。かかる構成によれば、出力部材において固定側センサ要素と対向する面より可動側センサ要素が突出していない構成を容易に実現することができる。また、遊星歯車機構からの回転が連結部を介して出力部材に伝達される際の負荷、および出力部材の出力部から回転が出力される際の負荷によって、出力部材に大きな負荷が加わっても、出力部材では、可動側センサ要素の位置がずれるような変形が発生しない。
【0016】
本発明においては、非接触式のセンサ装置としては、磁気センサやフォトインタラプタなどを用いることができる。但し、非接触式のセンサ装置として磁気センサを用いた場合、フォトインタラプタと比較して、少ないセンサ要素で出力部材の回転を検出することができる。かかる磁気センサにおいて、前記可動側センサ要素は永久磁石であり、前記固定側センサ要素は感磁素子である。
【発明の効果】
【0017】
本発明において、センサ装置の可動側センサ要素は、出力部材において出力部、および遊星歯車機構との連結部より半径方向外側位置に保持されているため、遊星歯車機構からの回転が連結部を介して出力部材に伝達される際の負荷、および出力部材の出力部から回転が出力される際の負荷によって、出力部材に大きな負荷が加わっても、出力部材では、可動側センサ要素の位置がずれるような変形が発生しない。それ故、センサ装置は高い精度で出力部材の回転を検出する。また、センサ装置は非接触式であるため、接触不良やチャタリングなどの不具合が発生しない。さらに、固定側センサ要素は、基板に面実装されているため、基板の裏側にリード端子が突出することがないため、基板の裏面側に遊星歯車機構を配置した場合でも、基板と遊星歯車機構とを近接させることができ、ギヤードモータの軸線方向の寸法を短くすることができる。さらにまた、固定側センサ要素は、基板に面実装されているため、リード端子を通す穴を基板に形成する必要がない。それ故、基板の剛性が大きいので、固定側センサ要素と可動側センサ要素との離間距離を一定に保つことができ、センサ装置の感度が高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0019】
[実施の形態1]
(全体構成)
図1は、本発明を適用したギヤードモータを正面斜め上方からみたときの斜視図である。図2は、図1に示すギヤードモータからモータケースを取り外した状態を正面斜め上方からみたときの斜視図である。図3(a)、(b)は、図2に示す状態からさらに下ケースや出力部材を取り外した状態を背面斜め上方からみた斜視図、およびさらに基板を取り外した状態を背面斜め上方からみた斜視図である。図4(a)、(b)は、図1に示すギヤードモータの縦断面図、および内部の機構部分の構成を示す斜視図である。なお、図4(b)には、固定歯車構成体の図示は省略してある。
【0020】
図1、図2および図3(a)、(b)に示すギヤードモータ100は、給湯器において水と湯との混合具合を変えるバルブなどに対するアクチェータである。本形態において、ギヤードモータ100は、下ケース11と上ケース12とを連結したモータケース1を備えており、下ケース11の側面にコネクタ部13が構成されている。モータケース1の内部には、ステッピングモータなどのモータ3、このモータ3の回転を伝達する歯車機構6、および歯車機構6を介してモータ3の回転が伝達される樹脂製の出力部材5が配置されており、出力部材5の上端部は、上ケース12に形成された開口から露出している。出力部材5の上端面には、出力部として、Dカット形状の上側連結穴52が形成されており、かかる上側連結穴52に外部の被駆動部材〈図示せず〉の軸部が嵌められる。
【0021】
(歯車機構6などの構成)
図4(a)、(b)に示すように、歯車機構6は、減速歯車列60と遊星歯車機構65とを有している。減速歯車列60は、モータ3の出力軸に固着されたモータピニオン61と、このモータピニオンに噛合する大径歯車を備えた第1複合歯車体62と、第1複合歯車体62の小径歯車に噛合する大径歯車を備えた第2複合歯車体63と、第2複合歯車体63の小径歯車に噛合する大径歯車を備えた第3複合歯車体64とを有しており、第3複合歯車体64は、遊星歯車機構65を構成要素である太陽歯車641を備えている。
【0022】
遊星歯車機構65は、内周面に内歯が形成された固定歯車構成体66と、太陽歯車641および固定歯車構成体66の内歯に下端側が噛合する複数の遊星歯車67を支持する遊星キャリア68と、遊星歯車67の上端側に噛合する内歯を備えた回転伝達部材69とを備えており、固定歯車構成体66は下ケース11に固定されている。回転伝達部材69は、開口端を下方に向けるカップ状の本体部分692と、本体部分692の上底部の下面中心から下方に延びた回転中心軸693と、本体部分692の上底部の上面中心で上方に突出する回転伝達部694とを備えており、回転中心軸693と回転伝達部694とは同一の軸線上に形成されている。回転中心軸693の下端部は、第3複合歯車体64の円筒部643を貫通して下ケース11に形成された円筒状の軸受部111に回転可能に支持されているとともに、回転伝達部694は、出力部材5を介して上ケース12に回転可能に支持された状態にある。この状態で、第3複合歯車体64は、回転伝達部材69の回転中心軸693によって回転可能に支持された状態にある。
【0023】
かかる歯車機構6において、モータ3の回転は、減速歯車列60によって減速されて遊星歯車機構65に伝達された後、遊星歯車機構65においてさらに減速されて、回転伝達部材69の回転伝達部694から出力される。
【0024】
(出力部材5の構成)
図5(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係るギヤードモータ100に用いた出力部材5を斜め上方からみた斜視図、および斜め下方からみた斜視図である。
【0025】
図4(a)、(b)、および図5(a)、(b)において、出力部材5は略円筒形状を備え、軸線方向(上下方向)のやや下端側で半径方向外側に拡径した円盤状のフランジ部55と、フランジ部55の中央から下方に突出した下側円筒部56と、フランジ部55の中央から上方に突出した上側円筒部57とを備えている。本形態において、下側円筒部56と上側円筒部57とは同軸状に形成されており、それらの中心軸線によって出力部材5の回転中心軸線Lが規定されている。
【0026】
上側円筒部57には、出力部としての上側連結穴52が上端面で開口するように形成され、下側円筒部56には、遊星歯車機構65の回転伝達部材69に形成された回転伝達部694が嵌る下側連結穴51(連結部)が下端面で開口するように形成されている。本形態において、回転伝達部694は、外周面が歯車状に形成されたセレーションであり(図3(a)、(b)参照)、下側連結穴51は、内周面が歯車状に形成されたセレーションである(図5(b)参照)。
【0027】
このように構成した出力部材5の上側円筒部57は、上ケース12に形成された円筒部121によって回転可能に支持されている。それ故、出力部材5および回転伝達部材69は、下ケース11の円筒部111と、上ケース12の円筒部121とによって回転可能に支持された状態にある。また、上ケース12に形成された円筒部121の下端部は、出力部材5のフランジ部55の上端面に当接している。このため、出力部材5および回転伝達部材69は、下ケース11および上ケース12によって軸線方向に位置決めされている。
【0028】
出力部材5では、上側連結穴52および下側連結穴51が出力部材5の回転中心軸線L上に形成されている。また、出力部材5と回転伝達部材69は、下側連結穴51に回転伝達部694が嵌ることにより一体で回転可能であるため、出力部材5の回転中心軸線Lと、回転伝達部材69の回転中心軸693は、同一軸線上にある。
【0029】
(基板8の支持構造)
図2、図3(a)、(b)および図4(a)、(b)に示すように、モータケース1の内側には、モータ3に対する給電や、後述するセンサ装置80と外部との電気的な接続を行なうための基板8が配置されている。基板8の中央には、回転伝達部材69の回転伝達部694が貫通する穴89が形成されている。このため、回転伝達部694は、基板8の穴89を貫通して基板8の上方に突出し、出力部材5と連結されている。
【0030】
本形態において、基板8は片面基板であり、上面のみに配線パターン88が形成されている。また、基板8上には面実装タイプのキャパシタなどといった各種の電気素子87が実装されている。本形態において、モータ3と基板8上の配線パターン88はリード線(図示せず)により電気的に接続され、コネクタ端子131は、配線パターン88のランドにハンダ付けされた構造になっている。基板8では、端部のみにコネクタ端子131を貫通させる端子穴が形成され、その他の領域には、電気素子を実装するための端子穴が一切、形成されていない。
【0031】
かかる基板8を配置するにあたって、本形態では、まず、固定歯車構成体66には、遊星歯車67と噛み合う内歯に加えて、モータ3の側面部を支持するモータ支持部663と、モータ支持部663においてモータ3が位置する側と反対側の面に形成された基板支持部665と、遊星歯車機構65が配置されている空間を囲む円筒壁666とが形成されており、基板支持部665の上端部と円筒壁666の上端部とは同一の高さ位置にある。また、下ケース11において、コネクタ部13が配置されている側、すなわち、固定歯車構成体66において円筒壁666に対して基板支持部665が位置する側とは反対側に、コネクタ端子131を保持する端子台114が形成されているとともに、この端子台114に対して半径方向内側などには基板支持板部115が形成されており、かかる基板支持板部115は、固定歯車構成体66の基板支持部665の上端部、および円筒壁666の上端部と同一の高さ位置にある。さらに、上ケース12において、コネクタ部13が配置されている側には、コネクタ端子131を覆うカバー部124が形成されているとともに、このカバー部124に対して半径方向内側などには、下ケース11の基板支持板部115の上端部に対して所定の隙間を介して対峙する基板押え部125が形成されている。
【0032】
そこで、本形態では、下ケース11に上ケース12を重ねる際、下ケース11の基板支持板部115と上ケース12の基板押え部125との間に基板8の外周側を挟持した状態にしてある。この状態で、基板8は、固定歯車構成体66の基板支持部665および円筒壁666の上端部によって支持されるため、下方に撓むことがない。なお、固定歯車構成体66の基板支持部665には基板8に対する位置決め突起667が形成され、基板8には位置決め突起667が嵌る小穴86が形成されている。
【0033】
このようにして本形態では、遊星歯車機構65を上面側で覆うように基板8が配置されている。その結果、基板8の上面側に出力部材5が位置し、基板8の裏面側に遊星歯車機構65が配置された状態となる。
【0034】
(センサ装置80の構成)
図3(a)、図4(a)、および図5(a)、(b)において、本形態のギヤードモータ100に用いたセンサ装置80は磁気センサであり、かかる磁気センサは非接触式のセンサ装置である。かかるセンサ装置80を構成するにあたって、本形態では、センサ装置80の固定側センサ要素として面実装タイプのホール素子83(感磁素子)が基板8の上面にハンダにより実装され、かかるホール素子83は、出力部材5のフランジ部55の外周縁、および外周縁より半径方向のやや外側に対して軸線方向で対向する状態にある。
【0035】
また、出力部材5のフランジ部55の外周面には、周方向で離間する2つの突起551、552と、かかる突起551、552で挟まれた隙間に対して軸線方向の上側に形成された位置決め用の突起553とによって磁石保持部58が形成されており、かかる磁石保持部58に永久磁石85が取り付けられている。より具体的には、永久磁石85は、2つの突起551、552の間に対して、永久磁石85の上端部が位置決め用の突起553の下面に当接するように配置され、2つの突起551、552によって弾性をもって挟持されている。その結果、出力部材5が回転した際の永久磁石85の軌跡に対してホール素子83が軸線方向で対向する状態となる。なお、永久磁石85と突起との接着、突起に対する熱溶着、突起を機械的に変形させる加締めなどの方法で、永久磁石85を磁石保持部58に固定してもよい。
【0036】
かかる構成を採用すると、永久磁石85を出力部材5のフランジ部55の下面から突出させずに出力部材5に取り付けることができる。さらに、永久磁石85は、出力部材5において、外部への出力部である上側連結穴52、および遊星歯車機構65との下側連結穴51より半径方向外側位置に保持された状態となる。
【0037】
なお、図3にはホール素子83を周方向の2箇所に配置し、図5には、永久磁石85を周方向の2箇所に配置した例を示してあるが、ホール素子83および永久磁石85の数については、出力部材5の回転検出に求められる分解能に応じて最適な数のホール素子83および永久磁石85が設けられることになる。
【0038】
(本形態の主な効果)
以上説明したギヤードモータ100において、モータ3の回転は、歯車機構6として用いた減速歯車列60および遊星歯車機構65を介して出力部材5に伝達され、出力部材5の上側連結穴52(出力部)を介して外部に出力される。その際、センサ装置80は、出力部材5の回転を検出する。
【0039】
ここで、センサ装置80の永久磁石85(可動側センサ要素)は、出力部材5において上側連結穴52(出力部)、および遊星歯車機構65との下側連結穴51(連結部)より半径方向外側位置に保持されている。このため、遊星歯車機構65からの回転が下側連結穴51を介して出力部材5に伝達される際の負荷、および出力部材5の上側連結穴52から回転が出力される際の負荷によって、出力部材5に大きな負荷が加わっても、かかる負荷は出力部材5において剛性の大きな中心部に加わるだけである。従って、出力部材5において、永久磁石85が保持されたフランジ部55の外周側のなどが変形することがない。それ故、永久磁石85の位置がずれることがないので、センサ装置80は高い精度で出力部材5の回転を検出する。
【0040】
しかも、本形態では、歯車機構6として遊星歯車機構65を用い、かかる遊星歯車機構65では、太陽歯車や回転伝達部694が、出力部材5の上側連結穴52(出力部)や下側連結穴51(連結部)と同軸上に配置されている。また、遊星歯車機構65の外形が円形であって、その中心軸線上に回転伝達部694や、出力部材5の上側連結穴52および下側連結穴51が配置されている。このため、出力部材5に対する駆動方向が反転した場合でも、出力部材5が半径方向に変位しない。それ故、出力部材5がいずれの方向に回転した場合でも、センサ装置80は、出力部材5の回転を確実に検出することができる。
【0041】
また、センサ装置80は非接触式であるため、接触式と違って、ホール素子83(固定側センサ要素)が実装された基板8を変形させるような応力が発生せず、仮に基板8が変形した場合でも接触不良に起因する不具合が発生しない。また、センサ装置80は非接触式であるため、基板8が変形した場合でもチャタリングなどの不具合も発生しない。
【0042】
また、ホール素子83は、基板8の上面に面実装されているため、基板8の裏側にリード端子が突出することがない。従って、基板8の裏面側に遊星歯車機構65を配置した場合でも、基板8と遊星歯車機構65とを近接させることができる。それ故、ギヤードモータ100の軸線方向の寸法を短くすることができる。
【0043】
さらに、ホール素子83は、基板8の上面に面実装されているため、リード端子を通す穴を基板8に形成する必要がない。それ故、基板8の剛性が大きいので、永久磁石85とホール素子83との軸線方向の距離を一定に保つことができ、センサ装置80の感度が高い。
【0044】
さらにまた、永久磁石85は、出力部材5のフランジ部55においてホール素子83と対向する下面より軸線方向の上側に配置されている。すなわち、永久磁石85は、出力部材5においてホール素子83と対向する面(フランジ部55の下面)より突出していない。従って、出力部材5において基板8と対向する面と、基板8とを近接させることができるので、ギヤードモータ100の軸線方向の寸法を短くすることができる。
【0045】
しかも、永久磁石85は、出力部材5の外周側面から半径方向外側に突出した突部551、552、553に保持されている。このため、出力部材5においてホール素子83と対向するフランジ部55の下面より永久磁石85が突出していない構成を容易に実現することができる。また、遊星歯車機構65からの回転が下側連結穴51を介して出力部材5に伝達される際の負荷、および出力部材5の上側連結穴52から回転が出力される際の負荷によって、出力部材5に大きな負荷が加わっても、出力部材5では、永久磁石85を保持する突起551、552、553の位置がずれるような変形が発生しない。
【0046】
[実施の形態2]
図6(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施の形態2に係るギヤードモータ100に用いた出力部材5を斜め上方からみた斜視図、斜め下方からみた斜視図、磁石保持部の構成を示す断面図、および磁石保持部に永久磁石85が保持された状態を示す断面図である。
【0047】
図4(a)を参照して説明したように、本形態のギヤードモータ100に用いたセンサ装置80も、実施の形態1と同様、磁気センサであり、かかる磁気センサは非接触式のセンサ装置である。かかるセンサ装置80を構成するにあたって、本形態では、センサ装置80の固定側センサ要素であるホール素子83(感磁素子)として面実装タイプの素子を用い、基板8の上面に面実装してある。
【0048】
また、出力部材5に永久磁石85を設けるにあたって、本形態では、図6(a)、(b)に示すように、出力部材5には、フランジ部55の上面で開口する磁石保持穴59が周方向の4箇所に等角度間隔で形成されている。ここで、磁石保持穴59は下底部591を備え、下底部591には小穴592が形成されている。小穴592は、磁石保持穴59に永久磁石85を固定する際の磁極の確認に用いられる。例えば、永久磁石85に対して磁極を示す色やマークなどの指標を付しておけば、磁石保持穴59に永久磁石85を装着した後、小穴592から磁極を確認することができる。また、小穴592は永久磁石85の固定具合の確認にも利用できる。例えば、磁石保持穴59に永久磁石85を装着した後、小穴592から冶具を差し込めば、永久磁石85の固定具合を確認することができる。
【0049】
かかる磁石保持穴59に永久磁石85を固定するにあたっては、棒状の永久磁石85をフランジ部55の上方から磁石保持穴59に装着する。その結果、永久磁石85は、磁石保持穴59の下底部591で支持され、永久磁石85の軸線方向の位置が決められる。この状態で、接着、突起に対する熱溶着、突起を機械的に変形させる加締めなどの方法で、永久磁石85を磁石保持穴59に固定する。本形態では、磁石保持穴59の深さ寸法を永久磁石85の軸線方向の寸法よりも大にし、フランジ部55の上面において、磁石保持穴59の開口縁を加熱して熱溶着する。
【0050】
その結果、フランジ部55の溶融部分595が永久磁石85に被さり、磁石保持穴59に永久磁石85が固定される。この状態で、出力部材5が回転した際の永久磁石85の軌跡に対してホール素子83が軸線方向で対向する状態となる。また、かかる構成を採用すると、出力部材5のフランジ部55の下面から永久磁石85を突出させずに、永久磁石85を出力部材5に取り付けることができる。さらに、永久磁石85は、出力部材5において上側連結穴52、および遊星歯車機構65との下側連結穴51より半径方向外側位置に保持された状態となる。
【0051】
なお、図3にはホール素子83を周方向の2箇所に配置し、図6には、永久磁石85を周方向の4箇所に配置した例を示してあるが、ホール素子83および永久磁石85の数については、出力部材5の回転検出に求められる分解能に応じて最適な数のホール素子83および永久磁石85が設けられることになる。
【0052】
以上説明したギヤードモータ100においても、実施の形態1と同様、センサ装置80の永久磁石85(可動側センサ要素)は、出力部材5において上側連結穴52(出力部)、および遊星歯車機構65との下側連結穴51(連結部)より半径方向外側位置に保持されている。このため、遊星歯車機構65からの回転が下側連結穴51を介して出力部材5に伝達される際の負荷、および出力部材5の上側連結穴52から回転が出力される際の負荷によって、出力部材5に大きな負荷が加わっても、出力部材5では、可動側センサ要素の位置がずれるような変形が発生しない。それ故、センサ装置80は高い精度で出力部材5の回転を検出するなど、実施の形態1と同様な効果を奏する。
【0053】
また、本形態では、永久磁石85は、出力部材5においてホール素子83と対向するフランジ部55の下面より軸線方向の上側に形成された磁石保持穴59内に保持されている。このため、出力部材5においてホール素子83と対向するフランジ部55の下面より永久磁石85が突出していない構成を容易に実現することができる。また、遊星歯車機構65からの回転が下側連結穴51を介して出力部材5に伝達される際の負荷、および出力部材5の上側連結穴52から回転が出力される際の負荷によって、出力部材5に大きな負荷が加わっても、出力部材5では、磁石保持穴59の位置がずれるような変形が発生しない。
【0054】
[他の実施の形態]
上記実施の形態1、2では、出力部材5において遊星歯車機構65との連結部として下側連結穴51を用いたが、かかる連結部として、遊星歯車機構65側に形成された穴に嵌る突部を利用してもよい。また、上記実施の形態1、2では、出力部材5において、外部への出力部として上側連結穴52を用いたが、かかる出力部として、外部の被駆動部材に形成された穴に嵌る突部を利用してもよい。
【0055】
また、本形態のギヤードモータ100において、非接触式のセンサ装置80としては、フォトインタラプタなどを用いることができる。但し、非接触式のセンサ装置80として磁気センサを用いた場合、フォトインタラプタと比較して、少ないセンサ要素で出力部材5の回転を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明を適用したギヤードモータを正面斜め上方からみたときの斜視図である。
【図2】図1に示すギヤードモータからモータケースを取り外した状態を正面斜め上方からみたときの斜視図である。
【図3】(a)、(b)は、図2に示す状態からさらに下ケースや出力部材を取り外した状態を背面斜め上方からみた斜視図、およびさらに基板を取り外した状態を背面斜め上方からみた斜視図である。
【図4】(a)、(b)は、図1に示すギヤードモータの縦断面図、および内部の機構部分の構成を示す斜視図である。
【図5】(a)、(b)は、本発明の実施の形態1に係るギヤードモータに用いた出力部材を斜め上方からみた斜視図、および斜め下方からみた斜視図である。
【図6】(a)、(b)、(c)、(d)は、本発明の実施の形態2に係るギヤードモータに用いた出力部材を斜め上方からみた斜視図、斜め下方からみた斜視図、磁石保持部の構成を示す断面図、および磁石保持部に永久磁石が保持された状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
1 モータケース
3 モータ
5 出力部材
6 歯車機構
8 基板
51 出力部材の下側連結穴(連結部)
52 出力部材の上側連結穴(出力部)
55 出力部材のフランジ部
58 磁石保持部
59 磁石保持穴(磁石保持部)
60 減速歯車列
65 遊星歯車機構
69 遊星歯車機構の回転伝達部材
80 センサ装置
83 ホール素子(固定側センサ要素/感磁素子)
85 永久磁石(可動側センサ要素)
100 ギヤードモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
該モータの回転を伝達する歯車機構と、
該歯車機構を介して前記モータの回転が伝達される出力部材と、
該出力部材の回転を検出するセンサ装置と、
を有するギヤードモータにおいて、
前記歯車機構は、前記出力部材に対して該出力部材の回転軸線方向における一方側に遊星歯車機構を備え、
前記センサ装置は、可動側センサ要素と固定側センサ要素とが非接触の非接触式センサ装置であって、
前記可動側センサ要素は、前記出力部材の外部への出力部、および前記出力部材の前記遊星歯車機構との連結部より半径方向外側位置に保持され、
前記固定側センサ要素は、前記可動側センサ要素と前記遊星歯車機構との間に配置された基板に面実装されていることを特徴とするギヤードモータ。
【請求項2】
前記可動側センサ要素は、前記出力部材において前記固定側センサ要素と対向する面より前記回転中心軸線方向における他方側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のギヤードモータ。
【請求項3】
前記可動側センサ要素は、前記出力部材の外周側面から半径方向外側に突出した突部に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のギヤードモータ。
【請求項4】
前記可動側センサ要素は、前記出力部材において前記固定側センサ要素と対向する面より前記回転軸線方向における他方側に形成された穴内に保持されていることを特徴とする請求項1または2に記載のギヤードモータ。
【請求項5】
前記可動側センサ要素は永久磁石であり、
前記固定側センサ要素は感磁素子であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のギヤードモータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−130865(P2010−130865A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305782(P2008−305782)
【出願日】平成20年11月30日(2008.11.30)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】