説明

クラッシュボックスおよび車両衝突時の衝撃エネルギー吸収方法

【課題】車両への取付け作業性に優れ、予め予測した車両衝突時の衝撃エネルギーに対して自在に対応できるクラッシュボックスと、衝撃エネルギー吸収方法を提供する。
【解決手段】クラッシュボックスは、金属製クラッシュボックス本体10と、横断面が方形状に形成された金属製の中空パイプとから構成されており、クラッシュボックス本体10は、中央平板部11、前側壁部13、後側壁部15が互いに平行に配置され、中央平板部11と前側壁部13の両端の間および後側壁部15の両端の間にそれぞれ外方に膨出する第1側壁部12および第2側壁部14が一体に連結されその全体形状は横断面が略8字形状の中空パイプ形状に形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造が簡単で車両への取付け作業性に優れ、予め予測した車両衝突時の衝撃エネルギーに対して自在に対応できるクラッシュボックス、および車両衝突エネルギーの衝撃吸収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両衝突時における衝撃を抑えてドライバーや同乗者を保護することを目的として車両の前後に装着される安全装置としては、車両フレームとバンバーの間に剛性の高い中間間隔材が締結金具にて取り付けされているものが一般的であり、衝突車のエネルギーを主に中間間隔材の変形で吸収する方法がある。
【0003】
また、衝撃吸収体としては、車体フレームとバンバーの間にスプリングを介装したものがあり、また、バンバー自体を例えばゴムや発泡プラスチック樹脂などで構成し、構成素材自体の弾性特性を用いたものが公知であり、さらに、後部吸振ゴム板に、前部吸圧間隙及び吸圧ゴム外空間を有する前部吸圧ゴムと吸振板空間を設け、前部吸圧ゴムにカバーを設けたもの(特許文献1)が開示されている。
【0004】
この出願に関連する先行技術文献情報としては次のものがある。
【特許文献1】特開平10−129372号
【特許文献2】実願昭50−047605号(実開昭51−126934号)のマイクロフィルム
【特許文献3】特開2004−161250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスプリングや衝撃吸収体等の弾性体を配したものは、弾性体自体が具有する弾性を利用するものであるため、減速させて衝突時の衝撃を若干緩和する効果を有するものの、衝撃吸収性能が不十分で車両衝突時における衝撃を抑え切れないとか、衝突して停止する際に、弾性体の具有する自らの弾性で元の形状に復元する自己復元性が運転手に伝達され、重大な二次的な災害になることがあるという問題がある。
【0006】
また、特許文献1に記載の衝撃吸収体にあっては、前部吸圧ゴム及び後部吸振ゴム板の変形による衝撃吸収効果と、前部吸圧間隙及び圧縮空気及び吸振板空間の空気圧による反発効果が互いに相まって作用するため、従来の衝撃吸収体のみのバンバーよりも優れた衝撃緩衝効果が得られるものの、それでも衝撃吸収性能が不十分であり、車両衝突時における衝撃を抑え切れず、ドライバーや同乗者を保護できないという問題がある。
【0007】
本発明は上記実情に鑑み鋭意検討されたもので、その目的は、構造が簡単で車両への取付け作業性に優れ、予め予測した車両衝突時の衝撃エネルギーに対して自在に対応できるクラッシュボックスと、衝撃エネルギー吸収方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、上記特許文献3にて開示したクラッシュボックスの全体形状を改良するとともに、当該クラッシュボックスに、横断面が方形状に形成された金属製の中空パイプを固着することによって、車両衝突時に、クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能を増強できるのみならず、車両衝突時に予測される衝突エネルギーの全てを吸収し得るクラッシュボックスとして自在に設計変更できることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0009】
すなわち、本発明に係るクラッシュボックスの衝撃吸収方法は以下の発明を包含する。
(1)中空パイプ形状に形成された金属製クラッシュボックス本体と、横断面が方形状に形成された金属製の中空パイプとを備えたクラッシュボックスを使用して、車両衝突時の衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収方法であって、
前記クラッシュボックス本体は、中央平板部、平板状の前側壁部、平板状の後側壁部が互いに平行に配置されており、前記前側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第1側壁部がそして前記後側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第2側壁部がそれぞれ一体に連結され、その全体形状が横断面略8字形状の中空パイプ形状に形成されており、
前記中空パイプは横断面が方形状に形成され、前記中央平板部と前側壁部間または前記中央平板部と後側壁部間にその先端部が当接状態に配設、固着されており、
車両衝突時に、クラッシュボックス本体の衝突エネルギー吸収性能と、前記中空パイプの衝突エネルギー吸収性能が互いに協調して機能するところに特徴がある吸収方法。
(2)上記(1)の発明に係るクラッシュボックスの衝撃吸収方法において、前記中空パイプは、前記中央平板部と前側壁部の間および前記中央平板部と後側壁部の間に、見かけ上連続する一対として配設、固着されているところに特徴がある衝撃エネルギー吸収方法。
(3)上記(2)の発明に係るクラッシュボックスの衝撃吸収方法において、前記中空パイプが、見かけ上連続する複数対として配設、固着されているところに特徴がある吸収方法。
(4)上記(1)乃至(3)の発明に係るクラッシュボックスの衝撃吸収方法において、前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、当該クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)調整によって、所望する所定の吸収性能に調整できるところに特徴がある吸収方法。
(5)上記(2)乃至(4)の発明に係るクラッシュボックスの衝撃吸収方法において、前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、見かけ上連続する一対の中空パイプの数量によって所望する所定の吸収性能に調整できるところに特徴がある吸収方法。
【0010】
つぎに、本発明に係るクラッシュボックスは以下の発明を包含する。
(6)金属製のクラッシュボックス本体に、金属製の中空パイプが備えられたクラッシュボックスにおいて、前記クラッシュボックス本体は、中央平板部、平板状の前側壁部、平板状の後側壁部が互いに平行に配置されており、前記前側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第1側壁部がそして前記後側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第2側壁部がそれぞれ一体に連結され、その全体形状が横断面略8字形状の中空パイプ形状に形成されており、前記中空パイプは横断面が方形状に形成され、前記中央平板部と前側壁部の間、または、前記中央平板部と後側壁部の間に、その先端部を当接した状態に配設、固着されているところに特徴があるクラッシュボックス。
(7)上記(6)の発明に係るクラッシュボックスにおいて、前記中空パイプが、前記中央平板部と前側壁部の間、および前記中央平板部と後側壁の間に、見かけ上連続する一対の中空パイプとして配設、固定されているもの。
(8)上記(7)の発明に係るクラッシュボックスにおいて、前記中空パイプが複数対として配設、固定されているもの。
(9)上記(6)乃至(8)の発明に係るクラッシュボックスにおいて、前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、当該クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)調整によって、所望する所定の吸収性能に調整できるもの。
(10)上記(7)乃至(9)の発明に係るクラッシュボックスにおいて、前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、見かけ上連続する一対の中空パイプの数量によって所望する所定の吸収性能に調整できるもの。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、横断面が略8字形状の中空パイプ形状の金属製クラッシュボックス本体に対して、前記中空パイプの寸法形状によって一義的に決まる衝突エネルギーを追加して吸収させることができ机上設計できるため、車両衝突時に期待される衝撃吸収エネルギーを具有する衝撃エネルギー吸収システムとして構築することができる。すなわち本発明により、衝突車を理想的に減速させて衝突時の衝撃を抑えてドライバーや同乗者を保護することができる。
【0012】
また、本発明に係るクラッシュボックスは、クラッシュボックス本体の中央部に中央平板部を有し、前側壁部および後側壁部が平板状に形成され、かつ、これらが互いに平行に配置されているため、車両衝突時にクラッシュボックス本体を横倒れさせることなく、すなわち、前側壁部から後側壁部の一定方向に誘導しながら押し潰す(塑性変形させる)ことができる。
【0013】
また、このクラッシュボックスは、構造が簡単であるため廉価に提供できるばかりか、車両への取付け作業性にも優れており、かつ車両衝突時に車両本体よりも優先して破損するため、車両本体の損傷を最小限に抑えることができ、そして、新しいクラッシュボックスに簡単に脱着交換することができる。
【0014】
また、フレームがラダーフレーム型の構造に構成され、特定の荷重点でフレーム自体が曲がったり折れたりするだけの例えばトラックや一部乗用車の場合、フレーム自体は荷重を発生させながらストロークしないために、車両衝突時、クラッシュボックスがフレームよりも優先して押し潰され(塑性変形)するため、車両本体の損傷を最小限に抑えることができる。
【0015】
また、上記クラッシュボックスによると、クラッシュボックス本体の原材の種類、板厚あるいは長さ(奥行き)、または、中空パイプの原材の種類、板厚、長さ(奥行き)あるいは、取付数量などを設計変更することにより、クラッシュボックスの荷重(衝撃エネルギー吸収性能)を自在に設計できるため、小さくても堅牢なクラッシュボックスの形成が可能となり、廉価に製造でき、経済的に有利になるとともに、設置場所の省スペース化が図れる。
【0016】
さらにまた、従来のように弾性体が配設されていないので、弾性体の自己復元性が運転手に伝達されることがない。すなわち、運転手に伝達された自己復元性が原因となって生じる、二次的災害を防止できるなど、極めて実効性に優れた作用効果が得られる。
【0017】
特に本発明に係るクラッシュボックスのうち、クラッシュボックス本体の中央平板部と前側壁部の間および中央平板部と後側壁部の間に、見かけ上連続する一対として固着するように構成されているものは、車両衝突時の衝撃エネルギーが大きい場合であっても、クラッシュボックスを、予め予測した車両衝突時の衝撃エネルギーに対して自在対応できる衝撃エネルギー吸収システムとして構築することができる。すなわち、クラッシュボックスの全体寸法が小さくても車両衝突時の衝撃エネルギーを確実に吸収できるため、衝突車を理想的に減速させて衝突時の衝撃を抑え、ドライバーや同乗者を保護できる安全装置として搭載することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施の形態を説明するが、これらはその代表的なものを例示したに過ぎず、様々に設計変更して実施できるものとする。
【0019】
図1は本発明の1実施例となるクラッシュボックス1を模式的に示す要部斜視図であり、図2は同クラッシュボックス1を構成するクラッシュボックス本体10の断面図である。
【0020】
図において、クラッシュボックス1は、中空パイプ形状に形成された金属製クラッシュボックス本体10と、横断面が方形状に形成された金属製の中空パイプ20とから構成されている。
【0021】
上記クラッシュボックス本体10は、中央平板部11、平板状の前側壁部13、平板状の後側壁部15が互いに平行に配置されており、そして、前側壁部13の両端と中央平板部11の間には外方に膨出する第1側壁部12が一体連結されており、中央平板部11と後側壁部15の両端の間にも外方に膨出する第2側壁部14が一体に連結されており、その概略全体形状は横断面が略8字形状の中空パイプ形状に形成されている。なお、クラッシュボックス1の複数を連結すべく、前側壁部13と後側壁部15には、両者間を連結するための連結手段18が形成されている。
【0022】
上記クラッシュボックス本体10の原材や板厚、その長さ(奥行き)等を設計変更することにより、車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能を調整することができる。すなわち例えば、クラッシュボックス本体10の長さ(奥行き)を大きくすればするほど硬くなるため、車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能は大きくなるし、その長さ(奥行き)を小さくすればするほど軟らかくなるため、車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能は小さくなる。
【0023】
中空パイプ20は、中央平板部11と前側壁部13の間、あるいは中央平板部11と後側壁部15の間に配置され固着されるものであり、クラッシュボックス1にあっては、中央平板部11と前側壁部13の間、および中央平板部11と後側壁部15の間に、見かけ上連続する一対となるように配設、固着されている(請求項7の発明に対応)。
【0024】
ただし、中空パイプ20の取付け位置や取付け数量などを限定するものではなく、たとえば、前記中央平板部と前側壁部の間または中央平板部と後側壁部の間のいずれか一方に前記中空パイプを固着したもの(請求項6の発明に対応)、見かけ上連続する複数対の中空パイプを配設、固着したもの(請求項8の発明に対応)、前記中央平板部と前側壁部の間および前記中央平板部と後側壁部の間に、中空パイプを互い違いに不連続に固着したものなど、様々に設計変更できる。
【0025】
上記中空パイプ20の原材や板厚、寸法形状、長さ(奥行き)あるいは配設数量などを設計変更することにより、車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能を調整することができる。すなわち例えば、中空パイプ20の原材として高硬度の金属を使用したり、板厚、縦横寸法などを大きく形成したり、配設、固着せしめる中空パイプ20の数量を多くしたり、中空パイプ20の奥行き(長さ)を長くすると車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能は大きくなり、その逆の場合には車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能は小さくなる。中空パイプ20の横断面形状は方形であることが好ましく、正方形であるとさらに好適である。
【0026】
つぎに、クラッシュボックス1の取付けは、クラッシュボックス1を、車体フレームと例えばバンバーの間に配し、溶接手段または締結金具などを使用した締結手段によって堅牢に外付け固定される。なお、取付けに際しては、クラッシュボックス10を左右一対として装備することが好ましいが、その取付け位置や取付け数量などを限定するものではなく、これらの事項はいずれも設計変更可能な事項であるものとする。
【0027】
以上のとおり、本発明に係るクラッシュボックスは、車両衝突時に、クラッシュボックス本体が押し潰される(塑性変形する)ことと、中空パイプが押し潰される(塑性変形する)ことの両方が互いに相まって、車両衝突時に負荷される衝突エネルギーを吸収して衝突車両を減速させることができるので、運転手ならびに同乗者に負荷される衝突衝撃エネルギーを吸収してその安全を確保することができる。
【0028】
また、叙上のとおり、クラッシュボックス本体や中空パイプの塑性変形によって吸収できる衝突エネルギー吸収性能はいずれも、これらの原材やその寸法形状などから一義的に決まる一定値である。従って、例えば基準となるクラッシュボックス本体の原材、板厚、縦横寸法、長さ(奥行き)を定めておくと、当該クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)の延伸または減縮によって車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能を机上算出でき、さらには、前記中空パイプの原材、板厚、縦横寸法、長さ(奥行き)などを設計変更することによっても車両衝突時の衝撃エネルギー吸収性能を机上算定できるため(予測できるため)、結果として、要求する衝撃エネルギー吸収性能を備えた当該クラッシュボックスを自在設計することができるのである。
【0029】
以下、本発明の実施の形態を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、これらはその代表的なものを例示したに過ぎず、以下の実施例により本発明が限定されるものではなく、様々に設計変更して実施できるものとする。
【実施例1】
【0030】
クラッシュボックス本体は板厚5mmのアルミ製(6063−T5)であり、略8字形状の長尺(板厚5mm)を引抜き成形した後、所望する長さに切断してクラッシュボックス本体をそれぞれ作製し、各クラッシュボックス本体を載荷試験器を用いて等速(20mm/分)で押し潰し、発生する縦潰れ方向の荷重の推移を求めた。
【0031】
クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)によるエネルギー吸収性能(荷重)の変化を検討した結果、長さ150mmのクラッシュボックス本体のエネルギー吸収性能(荷重)が約30kNであるに対して、長さ100mmのクラッシュボックス本体のエネルギー吸収性能(荷重)は約20kN、長さ200mmのクラッシュボックス本体のエネルギー吸収性能(荷重)は約37kNであった。
【0032】
以上のことから、クラッシュボックス本体の長さを10mm増減させることにより、エネルギー吸収性能(荷重)を1.4kN〜2.0kNの割合で増減することが解る。
【0033】
なお、実施例1のクラッシュボックスを、載荷試験器を用いて等速で押し潰した時に発生する縦潰れ方向の変化を高速撮影したところ、図3(a)〜(c)に斜視図で模式的に示すように、クラッシュボックス本体は、中央平板部と前側壁部の間が最先に押し潰され(塑性変化し)、ついで、中央平板部と後側壁部の間が押し潰されている(塑性変化する)ことが解る。後述する実施例2および実施例3においても同様の経過を経て押し潰されることが確認できた。
【実施例2】
【0034】
実施例1記載のクラッシュボックス本体(板厚5mm、長さ150mm)に、下記中空パイプを備え、取付けた中空パイプ数量の異なるそれぞれのクラッシュボックスを、載荷試験器を用いて等速(20mm/分)で押し潰し、発生する縦潰れ方向のエネルギー吸収性能(荷重)を検討した。
【0035】
中空パイプは板厚2.0mmのアルミ製(6063−T5)で、横断面が縦40mm、横20mmの角パイプ形状として形成されており、そして、クラッシュボックス本体の中央平板部と前側壁部の間および中央平板部と後側壁部の間にそれぞれ先端部が当接するように配し、見かけ上連続する1対となるように溶接固定されたものである。
【0036】
その結果、クラッシュボックス本体に中空パイプ1対を配設すると、荷重(エネルギー吸収性能)が約34kN増加し、中空パイプ2対を配設すると荷重(エネルギー吸収性能)が71kN増加し、中空パイプ3対を配設すると荷重(エネルギー吸収性能)が約92kN増加した。
【0037】
以上のことから、クラッシュボックス本体に対して中空パイプが配設されると、当該クラッシュボックスの荷重(エネルギー吸収性能)は中空パイプ1対当たり約35kNの割合で増大することが解る。
【0038】
実施例1および2の結果から、クラッシュボックス本体の長さおよび中空パイプの配設数量を考慮すると、所望する所定の衝撃エネルギー吸収性能を具有するクラッシュボックスを自在設計できるものと思料され以下、その実証実験を実施した。
【実施例3】
【0039】
実証実験1
例えば衝撃エネルギー吸収性能(荷重)が55kNのクラッシュボックスは、実施例1記載の基準クラッシュボックス本体(衝撃エネルギー吸収性能:約30kN)に対し、クラッシュボックス本体の長さを100mmとして(50mm短くして)衝撃エネルギー吸収性能を約10kN減少させ、かつ、実施例2に記載の中空パイプ1対を備えて衝撃エネルギー吸収性能を約34kN増加させることによって達成できる。
【0040】
上記条件を満足するテストピースを作製し、載荷試験器を用いて等速(20mm/分)で押し潰し縦潰れ方向の荷重を測定したところ、衝撃エネルギー吸収性能(荷重)は53.0kN〜55.0kN(n=3)と実測でき、設計衝撃エネルギー吸収性能(55kN)と実験的に良く一致することが実証できた。
【実施例4】
【0041】
実証実験2
つぎに、上記テストピース2個を並列に並べ、載荷試験器を用いて上記と同様に測定したところ、衝撃エネルギー吸収性能は105kN〜109kNと実測でき、設計した衝撃エネルギー吸収性能110kNと実験的に良く一致することが実証できた。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の活用例としては、
1)エレベーターの底面や天井面に装備される衝撃吸収装置、
2)電車や船舶などに装備される衝撃吸収装置、
3)電柱、信号機または案内標識の支柱、ガードレールなどに配設される衝撃吸収装置、
4)道路分岐部分などに配設される衝撃吸収装置、
などが例示できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1は、本発明のクラッシュボックスを模式的に示す斜視図である。
【図2】図2は、同クラッシュボックスを構成するクラッシュボックス本体の断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、載荷試験器を用いてクラッシュボックスを等速で押し潰した時に発生する縦潰れ方向の変化を高速撮影した画像に基づく当該クラッシュボックス本体の経時的変化を模式的に示す斜視図であり、クラッシュボックス本体は、中央平板部と前側壁部の間が最先に押し潰され(塑性変化し)、ついで、中央平板部と後側壁部の間が押し潰される(塑性変化する)ことが図示されている。
【符号の説明】
【0044】
1 … クラッシュボックス
10 … クラッシュボックス本体
11 … 中央平板部
12 … 第1側壁部
13 … 平板状の前側壁部
14 … 第2側壁部
15 … 平板状の後側壁部
18 … 連結手段
20 … 中空パイプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空パイプ形状に形成された金属製クラッシュボックス本体と、横断面が方形状に形成された金属製の中空パイプとを備えたクラッシュボックスを使用して、車両衝突時の衝撃エネルギーを吸収する衝撃エネルギー吸収方法であって、
前記クラッシュボックス本体は、中央平板部、平板状の前側壁部、平板状の後側壁部が互いに平行に配置されており、前記前側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第1側壁部がそして前記後側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第2側壁部がそれぞれ一体に連結され、その全体形状が横断面略8字形状の中空パイプ形状に形成されており、
前記中空パイプは横断面が方形状に形成され、前記中央平板部と前側壁部間または前記中央平板部と後側壁部間にその先端部が当接状態に配設、固着されており、
車両衝突時に、クラッシュボックス本体の衝突エネルギー吸収性能と、前記中空パイプの衝突エネルギー吸収性能が互いに協調して機能することを特徴とする衝撃エネルギー吸収方法。
【請求項2】
前記中空パイプは、前記中央平板部と前側壁部の間および前記中央平板部と後側壁部の間に、見かけ上連続する一対として配設、固着されていることを特徴とする、請求項1記載の衝撃エネルギー吸収方法。
【請求項3】
前記衝撃エネルギー吸収方法において、
前記中空パイプが、見かけ上連続する複数対として配設、固着されていることを特徴とする、請求項2記載の衝撃エネルギー吸収方法。
【請求項4】
前記衝撃エネルギー吸収方法において、
前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、当該クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)調整によって、所望する所定の吸収性能に調整できることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収方法。
【請求項5】
前記衝撃エネルギー吸収方法において、
前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、見かけ上連続する一対の中空パイプの数量によって所望する所定の吸収性能に調整できることを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の衝撃エネルギー吸収方法。
【請求項6】
金属製のクラッシュボックス本体に、金属製の中空パイプが備えられたクラッシュボックスにおいて、
前記クラッシュボックス本体は、中央平板部、平板状の前側壁部、平板状の後側壁部が互いに平行に配置されており、前記前側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第1側壁部がそして前記後側壁部と中央平板部の間に外方に膨出する第2側壁部がそれぞれ一体に連結され、その全体形状が横断面略8字形状の中空パイプ形状に形成されており、
前記中空パイプは横断面が方形状に形成され、前記中央平板部と前側壁部の間、または、前記中央平板部と後側壁部の間に、その先端部を当接した状態に配設、固着されていることを特徴とするクラッシュボックス。
【請求項7】
前記中空パイプが、前記中央平板部と前側壁の間、および前記中央平板部と後側壁の間に、見かけ上連続する一対の中空パイプとして配設、固定されていることを特徴とする、請求項6に記載のクラッシュボックス。
【請求項8】
前記中空パイプが複数対として配設、固定されていることを特徴とする、請求項7に記載のクラッシュボックス。
【請求項9】
前記クラッシュボックスにおいて、
前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、当該クラッシュボックス本体の長さ(奥行き)調整によって、所望する所定の吸収性能に調整できることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載のクラッシュボックス。
【請求項10】
前記クラッシュボックスにおいて、
前記クラッシュボックスの衝突エネルギー吸収性能は、見かけ上連続する一対の中空パイプの数量によって所望する所定の吸収性能に調整できることを特徴とする、請求項7〜9のいずれかに記載のクラッシュボックス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−6897(P2008−6897A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177658(P2006−177658)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(506222959)株式会社光岡自動車 (2)
【出願人】(396025193)株式会社花井製作所 (5)
【Fターム(参考)】