クラッチ装置、及びそのクラッチ装置を用いた苗植付装置
【課題】 半径方向での内外へ移動して定位置停止作用を行うクラッチピンの従動側回転体との接当箇所からの離脱を抑止させるようにしたクラッチ装置を、構造簡単、かつ低コストで得る。
【解決手段】 定位置停止機構Aを、従動側回転体30の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して係脱可能なクラッチピン39とで構成し、凹入部33の回転方向での後方側における接当面37を、従動側回転体30の回転中心をとおる法線に対して、半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してある。
【解決手段】 定位置停止機構Aを、従動側回転体30の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して係脱可能なクラッチピン39とで構成し、凹入部33の回転方向での後方側における接当面37を、従動側回転体30の回転中心をとおる法線に対して、半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してある。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置、及びそのクラッチ装置を用いた苗植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクラッチ装置、あるいは苗植付装置としては、従来より下記[1],[2]に示す構造のものが知られている。
[1] 駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置において、従動側回転体の外周面側に接当用の凹入部を形成し、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンを装備したもの(特許文献1参照)。
[2] 駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置において、従動側回転体の外周面側に切り欠き付きのフランジを設け、クラッチピンの側面に扁平面を形成してカム軸とし、クラッチ入り状態ではフランジ横の環状溝でクラッチピンを案内し、クラッチ切りにするときに、クラッチピンを回転させて切り欠きに係入させるようにしたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−265008号公報(段落番号〔0034〕、〔0035〕、〔0046〕、及び、図10、図12)
【特許文献2】特開2000−270634号公報(段落番号〔0019〕、〔0026〕、及び図9、図10、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造のものでは、従動側回転体に形成された凹入部とクラッチピンとの接当箇所において、半径方向外方側から従動側回転体の回動軌跡内に突入させたクラッチピンが、凹入部の接当面に衝突した際の衝撃で前記半径方向外方へ移動して凹入部から抜け出してしまうことがあった。
【0005】
特許文献2に記載の構造のものでは、従動側回転体の外周側に予め摺接する状態で配置されているクラッチピンを回転操作することによって従動側回転体の切り欠きに係入させる構造のものであるから、クラッチピンが前記半径方向外方への抜け出すような不具合を生じることは避けられる。しかしながら、この構造では、クラッチピン側に従動側回転体を駆動側回転体から離間させるためのカム面と、従動側回転体に形成されている切り欠きに係合して定位置に停止させるための接当面との、両機能を有した面を備えさせる必要ある。
このためクラッチピンとして、カム面を形成したものを用いて、円滑なカム作用を発揮させ得るように、クラッチピン及び従動側回転体の相対摺接箇所を比較的精度良く構成する必要がある。ところが、如何に精度良く製作していても、そのクラッチピンを定位置停止のために従動側回転体の接当面と衝突させるものであるから、長期の使用のうちに、クラッチピンの枢支部にガタが発生したり、カム面に片摩耗が生じるなど、精度の劣化に伴う機能低下によって耐久性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、クラッチピンを従動側回転体の半径方向での内外へ移動させて動力の断続及び定位置停止作用を行う構造のものにおいて、構造簡単、かつ低コストでの製作が可能で、そのクラッチピンの従動側回転体との接当箇所からの離脱を抑止させるようにしたクラッチ装置、及び、そのクラッチ装置を用いた苗植付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明は、請求項1の記載のように、駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記凹入部の回転方向での後方側における接当面を、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してあることを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、クラッチピンの側面と従動側回転体の凹入部における接当面との接当箇所で、凹入部に突入したクラッチピンの側面に接当する従動回転体側の接当面は、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、従動側回転体の半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してある。
したがって、これとは逆に、従動回転体側の接当面が、法線に対して、従動側回転体の半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の後方側に位置するように形成された接当面である場合に比べて、クラッチピンに衝突した時点でクラッチピンに作用する押圧力がクラッチピンを突入方向とは逆の戻し側へ作用するような分力が生じることを回避できる。
そして、この従動側回転体に形成される定位置停止のための凹入部やクラッチピンは、単に係脱するだけの構造であればよく、製作精度面での要求度が少ないので、長期間の使用のうちに、クラッチピンの枢支部に多少のガタが生じたり、クラッチピンや従動側回転体の接触面に多少の摩耗などがあっても、所要機能を長期にわたって維持した状態で用いることができ、結果的に耐久性の良いクラッチ装置を得られる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明のクラッチ装置における第2の解決手段では、請求項2の記載のように、従動側回転体に形成された凹入部に設定されている定位置停止用の一定の角度範囲よりも従動側回転体の回転方向前方側箇所に、前記設定された角度範囲の前記回転方向での前端箇所を越えてさらに前方側へ移行したクラッチピンと係合して、前記従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けた点に特徴がある。
【0010】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段2にかかる本発明のクラッチ装置では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、従動側回転体に形成された凹入部によって設定される定位置停止用の一定の角度範囲よりも回転方向前方側箇所にも従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けたものであるから、接当面と衝突したクラッチピンが、反発作用を受けて凹入部に設定される一定の角度範囲から回転方向前方側へ飛び出した場合にも、その回転方向前方側に設けてある逆転防止面によって、クラッチピンがそれ以上従動側回転体に対して逆転方向側へ相対的に位置ずれすることを抑制する。
その結果、原則的には凹入部によって設定される定位置停止用の一定の角度範囲内にクラッチピンが位置するように停止させるものであるが、その角度範囲を越えて従動側回転体が逆転作動した場合にも、その角度範囲よりも回転方向前方側箇所でに設けられた逆転防止面によって、従動側回転体のそれ以上の逆転を阻止して、従動側回転体と関連して作動する機器が他物と接触して損傷することを未然に抑止し得る等の利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明のクラッチ装置における第3の解決手段では、請求項3の記載のように、駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記従動側回転体の回転方向での後方側に向かう前記クラッチピンの接当部分の側面を、前記従動側回転体の回転中心に近い側が遠い側よりも従動側回転体の回転方向での前方側に位置するように形成してあることを特徴とする。
【0012】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段3にかかる本発明のクラッチ装置では、前記解決手段1または2にかかる発明と同等な作用効果を奏する。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明の苗植付装置における第4の解決手段では、請求項4の記載のように、請求項1、2、または3記載のクラッチ装置を苗植付機構への伝動系に備えるとともに、従動側回転体よりも伝動方向での下手側に、苗植付機構での苗植付動作に伴って蓄圧された押し出しバネの付勢力で作動する苗押し出し機構を設けてあり、
この苗押し出し機構による苗押し出し操作用の押し出しバネの未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相となる接当用の凹入部が形成される領域を設定してある点に構成上の特徴がある。
【0014】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段4にかかる本発明の苗植付装置では、前記解決手段1、2、または3にかかる発明のクラッチ装置を用いて苗植付装置を構成したものであり、苗押し出し機構による苗押し出し操作用の付勢バネが未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、従動側回転体の1回転中における停止位置を定めるように凹入部を形成したものであるから、苗押し出し機構による押し出し作用力による回転抵抗が少ない時点を避けて定位置停止機構が設定されている。
その結果、定位置停止位置での生じる従動側回転体の接当面とクラッチピンとの衝突時の衝撃を、従動側回転体に対する回転抵抗の大きい範囲で生じさせることにより、ある程度和らげることができ、装置の耐久性を向上し得る点で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔苗植付装置の全体構成〕
図1及び図2に示すように、苗植付装置1は6条植え仕様に構成されたものであって、走行機体(図外)に備えられた昇降リンク機構10の後端下部にローリング自在に連結されており、6条分のマット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台2、この苗のせ台2の下端から1株分づつ苗を切り出して田面Tに植え付けてゆく6組の回転式の苗植付機構4、および田面Tの植付箇所を2条分づつ均平化するよう並列配備された3個の整地フロート5、等が備えられている。
【0016】
苗植付装置1の前側下部にはアルミ材を押し出し成型してなる左右に長い角筒状の植付フレーム11が装備され、この植付フレーム11が昇降リンク機構10の後端下部にローリング自在に連結されている。植付フレーム11の左右中間部に、走行機体からの動力を受けるフィードケース12が連結されるとともに、植付フレーム11の左右中央部と左右両端近くに3個の植付伝動ケース13が後向き片持ち状に連結されている。各植付伝動ケース13の後部には植付駆動軸14が貫通横架されており、各植付駆動軸14の左右端に前記苗植付機構4が配置されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、植付伝動ケース13の前部下方にはフロート支点軸15が横水平に配備されて、植付フレーム11の両端に備えたブラケットに支持されており、このフロート支点軸15から後方に向けて突設された3組のフロート支持アーム16の後端に、整地フロート5が支点a周りにそれぞれ上下揺動可能に連結支持されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、フィードケース12には図外左方の走行機体から取り出された作業用動力が軸伝達され、このフィードケース12に伝達された動力で苗のせ台2が横送り駆動されるとともに、そのストロークエンドごとに苗のせ台2に備えた苗送りベルト17が一定ピッチづつ送り駆動される。フィードケース12の後部から取り出された横軸動力が各植付伝動ケース13の前部に横架支承された入力軸20に伝達されるようになっている。
【0019】
植付伝動ケース13はアルミダイキャストによって前後に長い筒状に一体成型されており、その詳細な構造を図3〜図5に基づいて説明する。
【0020】
植付伝動ケース13の前部に設けられたボス部13aに入力軸20が貫通横架されて軸受け支承されるとともに、植付伝動ケース13の後部に設けられたボス部13bに植付駆動軸14が貫通横架されて軸受け支承され、これら入力軸20と植付駆動軸14とがチェーン伝動機構21で連動連結されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、チェーン伝動機構21には、入力軸20に装着された入力側スプロケット22、植付駆動軸14に装着された出力側スプロケット23、これらに亘って巻回された伝動チェーン24、および、伝動チェーン24の弛みを吸収するチェーンタイトナ25、等が備えられている。植付駆動軸14が入力軸20に対して2分の1の回転速度で減速駆動されるように、出力側スプロケット23が入力側スプロケット22の2倍のピッチ径に設定されている。
【0022】
図4に示すように、入力側スプロケット22は入力軸20に対して遊嵌支持されるとともに、トルクリミッタ26を介して入力軸20と連動連結されている。
トルクリミッタ26は、入力軸20にシフト可能にスプライン装着されたクラッチ部材27、クラッチ部材27を入力側スプロケット22側にスライド付勢するトルクバネ28、クラッチ部材27と入力側スプロケット22の対向部位に設けられたカム係合部29、等によって構成されている。
【0023】
通常時には、バネ付勢されたクラッチ部材27がカム係合部29の係合によって入力側スプロケット22と一体化されて、入力軸20の回転動力がクラッチ部材27を介して入力側スプロケット22に伝達される。これに対して、入力側スプロケット22に作用する負荷トルクがトルクバネ28のバネ圧として規制された設定トルクより大きくなると、カム係合部29において乗り上がりが発生して、クラッチ部材27がトルクバネ28に抗して後退変位する。その結果、クラッチ部材27から入力側スプロケット22への動力伝達が瞬間的に遮断されて、過大な負荷トルクが苗植付機構駆動系に働くことが未然に回避される。
【0024】
図4及び図5に示すように、前記チェーン伝動機構21を介して動力が伝えられる出力側スプロケット23は、植付駆動軸14に対して遊嵌支持され、植付駆動軸14にスプランイン嵌合された従動側回転体30とともに、後述する少数条クラッチ3を構成するものであり、この出力側スプロケット23が少数条クラッチ3の駆動側回転体を構成している。
【0025】
〔苗植付機構〕
苗植付機構4には、植付駆動軸14の端部に連結固定されて植付駆動軸14の軸心p周りに一体回転する回転ケース40と、この回転ケース40における両端部の横外側に自転可能に軸支された爪ケース41とが備えられており、各爪ケース41には植付爪42と苗押し出し具43が装備されている。
【0026】
この苗植付機構4では、回転ケース40が植付駆動軸14によって前進回転方向(図1において反時計方向)に定速で1回転されるのに連動して、爪ケース41が回転ケース40に内装された周知の不等速ギヤ伝動機構(図示せず)によって逆方向に不等速で1回転自転され、これによって、植付爪42が、苗のせ台2下端の苗取出し口と田面とに亘る縦長の先端回動軌跡rを描いて循環移動するようになっている。植付爪42が苗のせ台2の下端から切り出し保持した苗を田面に持ち込む時点で苗押し出し具43が爪先側に突出作動して、保持した苗を植付爪42から分離して地中に押込むように構成されている。
【0027】
爪ケース41の内部には、図10に示すように、苗押し出し具43が、植付爪42に沿って摺動するように爪ケース41に支持されており、この苗押し出し具43を爪ケース41に対して出退移動させるための苗押出し機構Eは、爪ケース41の内部に設けたカム軸44、カム軸44に取付けられるカム45、カム45に摺接する天秤アーム46、圧縮コイルバネで成る押出しバネ47、苗押し出し具43と天秤アーム46とを連動連結するバネホルダ48等から構成されている。
【0028】
これにより、苗押出し機構Eは、苗植付爪42が苗植運動を行うに伴い、回転ケース40の回転力によって駆動され、苗押し出し具43を図10に二点鎖線で示す如く苗植付爪42の先端側に位置する作用位置に押し出しバネ47の弾性復元力による操作力によって押出し操作したり、図10に実線で示す如く作用位置よりも苗植付爪42の基端側に位置する非作用位置にカム45による操作力によって引退操作したりする。
【0029】
爪ケース41のケース壁の一部には、潤滑用グリースの注入孔49を形成してあり、この注入孔49には、グリースの洩れだし阻止するように注入孔49を閉塞する弾性材料製の栓部材49Aを着脱自在に装着してある。
【0030】
〔少数条クラッチの構造〕
図4及び図6に示すように、畦際近くで全植付条数より少ない条数での植付を行う場合に用いるための少数条クラッチ3は、植付伝動ケース13ごとに2条単位で苗植付機構4の作動を停止するものであり、次のように構成されている。
【0031】
この少数条クラッチ3は、植付駆動軸14にシフト可能にスプライン装着された従動側回転体30、従動側回転体30を出力側スプロケット23側に押圧付勢するバネ31、および、従動側回転体30と出力側スプロケット23との対向部位に設けられた爪咬合部32、等によって構成されている。
【0032】
このように構成された少数条クラッチ3では、通常の植付作業状態では、バネ付勢された従動側回転体30が爪咬合部32を介して出力側スプロケット23と一体化されて、チェーン伝動機構21を介して出力側スプロケット23に伝達された回転動力が従動側回転体30を介して植付駆動軸14に伝達される。
そして、従動側回転体30をバネ31に抗して後退変位させて爪咬合部32での咬合を解除することで、出力側スプロケット23から植付駆動軸14への動力伝達が遮断され、この植付駆動軸14で駆動される苗植付機構4が休止される。
【0033】
爪咬合部32の構造について説明する。まず、従動側回転体30の従動側突起爪32Aの構造について説明する。図7及び図8に示すように、従動側回転体30の回転中心位置に、植付駆動軸14と咬合するスプライン部30Aを備えたボス部30Bを突出させるとともに、ボス部30Bの180°対角位置に夫々従動側突起爪32A、32Aを設けてある。
【0034】
図7及び図8に示すように、従動側突起爪32A、32Aは、円周方向にやや長い長方形断面を備えた矩形状のものであり、ボス部30Bと一体形成されており、出力側スプロケット23に向かう面を傾斜面32Cに形成している。
傾斜面32Cにおける傾斜度は、従動側突起爪32Aの出力側スプロケット23に向かう突出量を、従動側回転体30の回転方向下手側程小さくなるものに設定してある。
【0035】
駆動側回転体としての出力側スプロケット23において、従動側回転体30に向かう面に形成される駆動側突起爪23A、23Aについて説明する。図7に示すように、植付駆動軸14に外嵌される軸挿通孔23Bの周縁部に一対の駆動側突起爪23A、23Aを従動側回転体30に向けて突設してあり、駆動側突起爪23A、23Aは、半円環状のものであり、内向き面23aと外向き面23bとが共に円弧状を呈している。
【0036】
図7に示すように、内向き面23aと外向き面23bとを備えた半円環状の駆動側突起爪23A、23Aの端部面23c、23cは、略半径方向に沿った互いに対向する直線面となっており、一定の間隔Lを持って配置され、従動側回転体30が出力側スプロケット23に咬合する状態で、従動側突起爪32A、32Aが両端部面23c、23c間に、かつ、ボス部30Bが内向き面23a、23a間に嵌入するように構成してある。
【0037】
図7に示すように、駆動側突起爪23A、23Aの従動側突起爪32A、32Aに向かう面は、回転方向に沿った平坦面に形成してある。これに対して、前記したように、従動側突起爪32A、32Aは駆動側突起爪23A、23Aに向かう面が傾斜面32Cに形成されている。
【0038】
このような構成によって、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとが咬合を開始する際に、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとの相手側に向かう面が当接する状態になっても、従動側突起爪32A、32Aの駆動側突起爪23A、23Aに向かう面が回転方向に沿った傾斜面32Cに形成されているので、当接状態を解消する方向に従動側回転体30が回転し、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとが咬合を完了する。
【0039】
〔定位置停止機構〕
定位置停止機構Aについて説明する。
図5及び図6に示すように、少数条クラッチ3における従動側回転体30の外周側には、植付伝動ケース13に前方から貫通装着したクラッチピン39との係合により、その従動側回転体30の回転を一定範囲内で停止させるための凹入部33を形成してあり、この凹入部33と前記クラッチピン39とで定位置停止機構Aを構成している。
【0040】
前記凹入部33には、前記クラッチピン39との接当で従動側回転体30を駆動側回転体である出力側スプロケット23から離す方向へ操作するための乗り上がりカム面36と、クラッチピン39との接当で従動側回転体30の回転を停止させるための接当面37とを形成してある。
【0041】
前記乗り上がりカム面36は、従動側回転体30の外周側で軸心方向に面する状態で形成されており、植付伝動ケース13に前方から貫通装着したクラッチピン39を、クラッチ入り位置で回転している従動側回転体30の半径方向での外方側から、その従動側回転体30の回転軌跡内に突入させると、一定位置にあるクラッチピン39と乗上がり傾斜カム面36との相対回転によるカム作用で従動側回転体30がバネ31に抗してクラッチ切り方向に強制シフトされ、植付駆動軸14が所定の回転位相において停止されるようになっている。
【0042】
図3及び図6に示すように、クラッチピン39は、植付伝動ケース13上部に横向きの支点b周りに揺動可能に枢支連結されたクラッチ操作アーム50の一端に係合連動されるとともに、クラッチ操作アーム50は支点bに装着したコイルスプリングで構成された付勢バネ51によってピン引き出し方向(クラッチ入り方向)に揺動付勢されている。クラッチ操作アーム50にはねじりバネを利用した弾性アーム53が装着されており、機体運転部から操作される操作ワイヤ52のインナ端が弾性アーム53の端部に連結されている。操作ワイヤ52を引き操作してクラッチ操作アーム50を付勢バネ51に抗して揺動させることで、クラッチピン39が前記した凹入部33内に突入して少数条クラッチ3が切り操作される。
【0043】
なお、操作ワイヤ52を引き操作したタイミングによっては、クラッチピン39を凹入部33内に突入できないことがあり、この場合は、弾性アーム53がねじり変形してワイヤストロークを吸収し、乗上がりカム面36の回動軌跡内にクラッチピン39が突入できる回転位相まで従動側回転体30が回転した時点で、弾性アーム53のねじり復元力でクラッチ操作アーム50が揺動されてクラッチピン39が突入操作されることになる。
【0044】
このように構成された定位置停止機構において、特に本発明では、前記従動側回転体30の凹入部33における接当面37を次のように形成している。
【0045】
前記従動側回転体30に形成された凹入部33の回転方向での後方側には、外周側から半径方向の内方側へ突入してきたクラッチピン39に接当して、クラッチ切り状態の従動側回転体30の慣性による回転を停止させるための接当面37が形成されている。
この凹入部33の回転方向での後方側における接当面37は、図8及び図9に示すように、従動側回転体30の回転中心pからの法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面部分が回転方向の前方側に位置するように、図中に示す角度α分だけ傾斜させた面によって形成されている。
このように接当面37を形成したことによって、凹入部33に突入したクラッチピン39の側面39aに対する接当面37の姿勢が、凹入部33の奥側で離れる、つまり凹入部33の接当面37において従動側回転体30の半径方向での内方側に位置する部分が従動側回転体30の外周側に位置する部分よりもクラッチピン39の側面39aから離れて位置する。
したがって、前記接当面37とクラッチピン39の側面39aとの接当によっても、接当面37側からクラッチピン39に対して、クラッチピン39を突入方向とは逆方向(従動回転体30の中心から離れる方向)へ押し戻すような操作力を生じる虞はない。
上記の接当面37の法線に対する傾斜角度αは、クラッチピン39の抜けだしを回避できるように適度な角度を選択すればよいが、できるだけ小さい角度である方が従動回転体30の接当面37の損傷を抑制する上では望ましい。一例を挙げれば、約4°程度が望ましいが、これに限らず、さらに大きな角度、もしくは、ほんの僅かな傾斜角度であっても、法線と平行な面に比べればそれなりの効果を期待することができるので、差し支えない。
【0046】
上記凹入部33は、図7および図8に示すように、クラッチピン39の突入方向での深さが深い凹入溝部分34と、浅い凹入溝部分35との2種類の凹入溝部分34,35で形成されている。前記深い凹入溝部分34では、従動側回転体30の回転方向での後方側に前記接当面37が形成され、その接当面37にクラッチピン39が接当することによって逆転方向に回転しようとする従動側回転体30の逆転方向への移動を制限する第1の逆転防止面38Aが従動側回転体30の前記回転方向での前方側に形成されている。
そして、浅い凹入溝部分35には、前記第1の逆転防止面38Aで停止させることのできなかった従動側回転体30がさらに逆転方向へ移動したときに、クラッチピン39に対して再度接当してそれ以上の逆転を防止するように、第2の逆転防止面38Bが浅い凹入溝部分35の前記回転方向での前方側の端部に形成されている。
【0047】
上記の2種類の凹入溝部分34,35のうち、深い凹入溝部分34が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲が、本発明でいう従動側回転体30の定位置停止用の領域を定めるための角度範囲θ1であり、浅い凹入溝部分35が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲が、定位置停止範囲を越えて従動側回転体30が逆方向へ回転した場合における移動許容範囲を定めるための角度範囲θ2である。
この逆方向移動許容範囲である前記角度範囲θ1,θ2は、図11における植付駆動軸14に対する回転ケース40の位置関係て示されている。つまり、この図11では、回転ケース40と一体に回転する従動側回転体30が、第2の逆転防止面38Bをクラッチピン39に接当させた状態で停止しており、この状態では、回転ケース40の下端側の苗植付機構4において、爪ケース41に装備された植付爪42が泥面に突入する直前の状態、もしくは僅かに突入している状態を示している。
このように、定位置停止範囲として最適な範囲は越えているが、未だ爪が泥面に突入する前、もしくは、ごく浅い範囲に突入しているなど、停止状態で機体を移動させても植付爪42を損傷するような外力がほとんど作用しない状態である。
【0048】
図12及び図13は、前記2種類の凹入溝部分34,35のうち、深い凹入溝部分34が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲、つまり、本発明でいう従動側回転体30の定位置停止用の領域を定めるための角度範囲θ1の各端部で従動側回転体30が停止した状態を示している。
つまり、図13が、従動側回転体30の凹入部33のうち、深い凹入溝部分34の回転方向後方側の端部に形成された接当面37にクラッチピン39の側面が接当して停止している状態を示している。
また、図12が、従動側回転体30の凹入部33のうち、深い凹入溝部分34の回転方向前方側の端部に形成された第1の逆転防止面38Aにクラッチピン39の側面が接当して停止している状態を示している。
この図12及び図13に示す状態では、回転ケース40の両端に装備された各苗植付機構4の何れもが圃場の泥面から植付爪42を十分に離れさせた上方位置にあるように、回転ケース40の長手方向が水平方向に近い状態で停止させるように、従動側回転体30の定位置停止位置を設定してある。
【0049】
そして、従動側回転体30の接当面37がクラッチピン39と衝突すると、その衝撃によって従動側回転体30が逆転方向へ移動し、その逆転方向への移動を第1逆転防止面38Aとの接当で止められ、この位置で従動側回転体30が停止すれば前記図12の位置に回転ケース40が停止することになる。
前記第1逆転防止面38Aとクラッチピン39との接当で、再び従動側回転体30が回転方向前方側へ移動方向を変え、前記接当面37にクラッチピン39が接当した状態で止まると図13の位置で回転ケース40が停止する。
前記従動側回転体30の接当面37とクラッチピン39との衝突による衝撃が特に強くて、従動側回転体30の逆転方向へ移動が第1逆転防止面38Aとの接当で止められない場合には、クラッチピン39が浅い凹入溝部分35に乗り上げて付勢バネ51による押圧作用を増大し、クラッチピン39の端部が浅い凹入溝部分35に摺接して、従動側回転体30に回転抵抗を与えながら第2の逆転防止面38Bに接当し、従動側回転体30の回転を停止させるように作用する。
この第2の逆転防止面38Bに接当した状態で従動側回転体30が停止すれば、図11に示す位置で回転ケース40が停止する。
【0050】
前記凹入部33による定位置停止作用が働く範囲は、苗植付機構4における苗押し出し機構Eの駆動負荷との関係で次のように定めてある。
つまり、図10に示されるように苗植付機構4の苗押し出し機構Eを構成する部材のうち、回転カム45は、苗押し出し方向側にバネ付勢されている苗押し出し具43を、天秤アーム46を介して、バネ付勢力に抗して強制的に引き込ませ、所定タイミングで押出しバネ47による強制的な苗押し出し作用を働かせるように構成されている。
そして、前記回転カム45を駆動する力は、前記植付駆動軸14から前記従動側回転体30を介して伝達されるものであるから、その回転カム45を駆動する力も従動側回転体30の回転抵抗として作用している。
【0051】
本発明では、この回転抵抗を従動側回転体30の定位置停止を円滑に行わせるための手段として利用できるように、次のように構成している。
すなわち、苗押し出し用の回転カム45のうち、その回転半径が短い領域、つまり、回転カム45による天秤アーム46を介しての押出しバネ47の圧縮度合いが少ない範囲を除外して前記従動側回転体30の凹入部33による定位置停止範囲を設定している。
つまり、図10に仮想線で示す天秤アーム46が回転カム45の終端から外れて押出しバネ47により苗押し出し具43を押し出した時点、及びその直後では、押出しバネ47は十分に蓄圧されていないので、この範囲を除いて、回転カム45が天秤アーム46を介して押出しバネ47を十分に圧縮した範囲で前記従動側回転体30の定位置停止操作が開始されるように、前記従動側回転体30の凹入部33の位置を設定してある。
【0052】
〔他の実施形態の1〕
[1] 上記の実施形態では、従動側回転体30に形成する凹入部33の形状を、従動側回転体30の回転方向での後方側における接当面37が、従動側回転体30の半径方向での内方側よりも外方側が回転方向での前方側に位置するように傾斜面に形成してあり、これによってクラッチピン39に対する抜け出し方向の分力が作用しないように構成されているものであるが、このような構造に限らず、次のように構成してもよい。
すなわち、図14(a)に示すように、従動側回転体30の凹入部33に突入したクラッチピン39の下部が、従動側回転体30形成された凹入部33の接当面37に対して、従動側回転体30の半径方向における内方側の端部近くで半径方向外方側におけるクラッチピン39の側面に先行して前記凹入部33の接当面37に接近するように、下膨らみの形状に形成してもよい。
また、図14(b)に示すように、クラッチピン39の軸芯を凹入部33への突入方向前方側ほど接当面37に近接するように傾斜させて設定してもよい。
上記の図14(a),(b)に示す構造では、従動側回転体30の凹入部33における接当面37は、従来の構造のものと同様に回転軸芯に対する法線方向に沿う面であるが、その接当面37に接当するクラッチピン39側の面が衝突による上側への分力を生じないように傾斜している。
【0053】
〔他の実施形態の2〕
[2] 図15は、植付伝動ケース13と回転ケース40との間で、植付伝動ケース13の端面に固定ボルトを介して基端側を着脱可能に装着した筒状部材は、回転ケース40側に設けてあるシール部40aに先端側を入り込ませて、シール部40aに設けられているシール用リップ部分と接触してシールするための補助リップ用ガイド18である。
この補助リップ用ガイド18は、前記図4に記載した実施形態での補助リップ用ガイド18よりも長く形成したものであり、主に寒冷地で採用される条間の大きい圃場での植付作業に適している。この補助リップ用ガイド18は、薄板材の深絞り加工によって構成してある。
【0054】
〔他の実施形態の3〕
[3] 図16は、苗植付装置1における苗取り出し口ガイド19の実施形態を示すものである。
この構造では、苗取り出し口ガイド19を、植付伝動ケース13に固定した取付ブラケット13cを介して固定してある。
したがって、苗取り量調節レバー6の調節操作にともなって苗取り出し口の位置が多少前後に変化しても、植付爪42の軌跡と苗取り出し口ガイド19との位置関係は常に一定であるから、苗取り量を多くした時に、苗取り出し口ガイド19が爪軌跡に近づいたり、逆に、苗取り量を少なく調節したときに、苗取り出し口ガイド19が爪軌跡から離れすぎたりする不具合を回避し易い。
【0055】
〔他の実施形態の4〕
[4] 図17は、苗植付装置1における苗取り出し口ガイド19のさらに別の実施形態を示すものである。この構造では、苗取り出し口ガイド19の上端側を植付伝動ケース13の固定部に設けた支点軸19a対して揺動自在に枢支し、かつ、苗取り量調節レバー6の揺動支点60周りでの揺動操作にともなって、苗取り出し口ガイド19の下端側を揺動操作自在に構成してある。
つまり、苗取り量調節レバー6、苗量「増」側(図では上側)へ操作すると、苗取り出し口ガイド19の下端側は、植付爪の軌跡rから離れる側へ移動し、苗量「減」側(図では下側)へ操作すると、苗取り出し口ガイド19の下端側は、植付爪42の軌跡rに近づく側へ移動する。
このように調節すると、苗量が増加されるにともなって分割苗の床土の量も増加するが、苗取り出し口ガイド19が植付爪の軌跡rから離れることで、分割苗と苗取り出し口ガイド19との間隔はあまり変化しない状態で維持できる。また、苗量を減少した場合も、分割苗の床土の量も少なくなるが、苗取り出し口ガイド19が植付爪の軌跡rに近づくことで、分割苗と苗取り出し口ガイド19との間隔はあまり変化しない状態で維持できる。
【0056】
〔他の実施形態の5〕
[5] 植付駆動軸14で駆動される苗植付機構4としては、上記のように植付駆動軸14の1回転で2回の植付を行う回転式の他に、植付駆動軸14の1回転で1回の植付を行うクランク式のものを利用することもできる。
【0057】
〔他の実施形態の6〕
[6] 爪咬合部32を構成する対象として少数条クラッチ3に適用するものを示したが、これよりも伝動方向上手側の植付クラッチなど、伝動系の適宜な部位にこのようなクラッチ装置を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】苗植付装置の側面図
【図2】苗植付装置の要部平面図
【図3】植付ケースの側面図
【図4】植付ケースの横断平面図
【図5】苗植付機構への伝動構造を示す断面図
【図6】少数条クラッチの操作構造を示す縦断背面図
【図7】駆動側回転体と従動側回転体との伝動構造を示す斜視図
【図8】従動側回転体を示す平面図
【図9】従動側回転体を示す斜視図
【図10】苗植付機構における苗押し出し機構を示す断面図
【図11】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図12】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図13】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図14】定位置停止機構の別の実施形態を示す説明図
【図15】苗植付装置の別の実施形態を示す断面図
【図16】苗取り出し口ガイドの別実施形態を示す概略説明図
【図17】苗取り出し口ガイドの別実施形態を示す概略説明図
【符号の説明】
【0059】
3 少数条クラッチ
4 苗植付機構
23 駆動側回転体
30 従動側回転体
33 凹入部
34 深い凹入溝部分
35 浅い凹入溝部分
37 接当面
38A 第1の逆転防止面
38B 第2の逆転防止面
39 クラッチピン
43 苗押し出し具
A 定位置停止機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置、及びそのクラッチ装置を用いた苗植付装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のクラッチ装置、あるいは苗植付装置としては、従来より下記[1],[2]に示す構造のものが知られている。
[1] 駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置において、従動側回転体の外周面側に接当用の凹入部を形成し、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンを装備したもの(特許文献1参照)。
[2] 駆動側回転体と従動側回転体とを備えたクラッチと、そのクラッチを断続操作するクラッチ操作機構と、従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構とを備えたクラッチ装置において、従動側回転体の外周面側に切り欠き付きのフランジを設け、クラッチピンの側面に扁平面を形成してカム軸とし、クラッチ入り状態ではフランジ横の環状溝でクラッチピンを案内し、クラッチ切りにするときに、クラッチピンを回転させて切り欠きに係入させるようにしたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−265008号公報(段落番号〔0034〕、〔0035〕、〔0046〕、及び、図10、図12)
【特許文献2】特開2000−270634号公報(段落番号〔0019〕、〔0026〕、及び図9、図10、図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造のものでは、従動側回転体に形成された凹入部とクラッチピンとの接当箇所において、半径方向外方側から従動側回転体の回動軌跡内に突入させたクラッチピンが、凹入部の接当面に衝突した際の衝撃で前記半径方向外方へ移動して凹入部から抜け出してしまうことがあった。
【0005】
特許文献2に記載の構造のものでは、従動側回転体の外周側に予め摺接する状態で配置されているクラッチピンを回転操作することによって従動側回転体の切り欠きに係入させる構造のものであるから、クラッチピンが前記半径方向外方への抜け出すような不具合を生じることは避けられる。しかしながら、この構造では、クラッチピン側に従動側回転体を駆動側回転体から離間させるためのカム面と、従動側回転体に形成されている切り欠きに係合して定位置に停止させるための接当面との、両機能を有した面を備えさせる必要ある。
このためクラッチピンとして、カム面を形成したものを用いて、円滑なカム作用を発揮させ得るように、クラッチピン及び従動側回転体の相対摺接箇所を比較的精度良く構成する必要がある。ところが、如何に精度良く製作していても、そのクラッチピンを定位置停止のために従動側回転体の接当面と衝突させるものであるから、長期の使用のうちに、クラッチピンの枢支部にガタが発生したり、カム面に片摩耗が生じるなど、精度の劣化に伴う機能低下によって耐久性が低下するという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、クラッチピンを従動側回転体の半径方向での内外へ移動させて動力の断続及び定位置停止作用を行う構造のものにおいて、構造簡単、かつ低コストでの製作が可能で、そのクラッチピンの従動側回転体との接当箇所からの離脱を抑止させるようにしたクラッチ装置、及び、そのクラッチ装置を用いた苗植付装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために講じた本発明の技術手段は、次の点に構成上の特徴、及び作用効果がある。
〔解決手段1〕
本発明は、請求項1の記載のように、駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記凹入部の回転方向での後方側における接当面を、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してあることを特徴とする。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記構成によれば、クラッチピンの側面と従動側回転体の凹入部における接当面との接当箇所で、凹入部に突入したクラッチピンの側面に接当する従動回転体側の接当面は、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、従動側回転体の半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してある。
したがって、これとは逆に、従動回転体側の接当面が、法線に対して、従動側回転体の半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の後方側に位置するように形成された接当面である場合に比べて、クラッチピンに衝突した時点でクラッチピンに作用する押圧力がクラッチピンを突入方向とは逆の戻し側へ作用するような分力が生じることを回避できる。
そして、この従動側回転体に形成される定位置停止のための凹入部やクラッチピンは、単に係脱するだけの構造であればよく、製作精度面での要求度が少ないので、長期間の使用のうちに、クラッチピンの枢支部に多少のガタが生じたり、クラッチピンや従動側回転体の接触面に多少の摩耗などがあっても、所要機能を長期にわたって維持した状態で用いることができ、結果的に耐久性の良いクラッチ装置を得られる利点がある。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明のクラッチ装置における第2の解決手段では、請求項2の記載のように、従動側回転体に形成された凹入部に設定されている定位置停止用の一定の角度範囲よりも従動側回転体の回転方向前方側箇所に、前記設定された角度範囲の前記回転方向での前端箇所を越えてさらに前方側へ移行したクラッチピンと係合して、前記従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けた点に特徴がある。
【0010】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段2にかかる本発明のクラッチ装置では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、従動側回転体に形成された凹入部によって設定される定位置停止用の一定の角度範囲よりも回転方向前方側箇所にも従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けたものであるから、接当面と衝突したクラッチピンが、反発作用を受けて凹入部に設定される一定の角度範囲から回転方向前方側へ飛び出した場合にも、その回転方向前方側に設けてある逆転防止面によって、クラッチピンがそれ以上従動側回転体に対して逆転方向側へ相対的に位置ずれすることを抑制する。
その結果、原則的には凹入部によって設定される定位置停止用の一定の角度範囲内にクラッチピンが位置するように停止させるものであるが、その角度範囲を越えて従動側回転体が逆転作動した場合にも、その角度範囲よりも回転方向前方側箇所でに設けられた逆転防止面によって、従動側回転体のそれ以上の逆転を阻止して、従動側回転体と関連して作動する機器が他物と接触して損傷することを未然に抑止し得る等の利点がある。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明のクラッチ装置における第3の解決手段では、請求項3の記載のように、駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記従動側回転体の回転方向での後方側に向かう前記クラッチピンの接当部分の側面を、前記従動側回転体の回転中心に近い側が遠い側よりも従動側回転体の回転方向での前方側に位置するように形成してあることを特徴とする。
【0012】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段3にかかる本発明のクラッチ装置では、前記解決手段1または2にかかる発明と同等な作用効果を奏する。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明の苗植付装置における第4の解決手段では、請求項4の記載のように、請求項1、2、または3記載のクラッチ装置を苗植付機構への伝動系に備えるとともに、従動側回転体よりも伝動方向での下手側に、苗植付機構での苗植付動作に伴って蓄圧された押し出しバネの付勢力で作動する苗押し出し機構を設けてあり、
この苗押し出し機構による苗押し出し操作用の押し出しバネの未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相となる接当用の凹入部が形成される領域を設定してある点に構成上の特徴がある。
【0014】
〔作用及び効果〕
上記のように構成された解決手段4にかかる本発明の苗植付装置では、前記解決手段1、2、または3にかかる発明のクラッチ装置を用いて苗植付装置を構成したものであり、苗押し出し機構による苗押し出し操作用の付勢バネが未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、従動側回転体の1回転中における停止位置を定めるように凹入部を形成したものであるから、苗押し出し機構による押し出し作用力による回転抵抗が少ない時点を避けて定位置停止機構が設定されている。
その結果、定位置停止位置での生じる従動側回転体の接当面とクラッチピンとの衝突時の衝撃を、従動側回転体に対する回転抵抗の大きい範囲で生じさせることにより、ある程度和らげることができ、装置の耐久性を向上し得る点で有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔苗植付装置の全体構成〕
図1及び図2に示すように、苗植付装置1は6条植え仕様に構成されたものであって、走行機体(図外)に備えられた昇降リンク機構10の後端下部にローリング自在に連結されており、6条分のマット状苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台2、この苗のせ台2の下端から1株分づつ苗を切り出して田面Tに植え付けてゆく6組の回転式の苗植付機構4、および田面Tの植付箇所を2条分づつ均平化するよう並列配備された3個の整地フロート5、等が備えられている。
【0016】
苗植付装置1の前側下部にはアルミ材を押し出し成型してなる左右に長い角筒状の植付フレーム11が装備され、この植付フレーム11が昇降リンク機構10の後端下部にローリング自在に連結されている。植付フレーム11の左右中間部に、走行機体からの動力を受けるフィードケース12が連結されるとともに、植付フレーム11の左右中央部と左右両端近くに3個の植付伝動ケース13が後向き片持ち状に連結されている。各植付伝動ケース13の後部には植付駆動軸14が貫通横架されており、各植付駆動軸14の左右端に前記苗植付機構4が配置されている。
【0017】
図1及び図2に示すように、植付伝動ケース13の前部下方にはフロート支点軸15が横水平に配備されて、植付フレーム11の両端に備えたブラケットに支持されており、このフロート支点軸15から後方に向けて突設された3組のフロート支持アーム16の後端に、整地フロート5が支点a周りにそれぞれ上下揺動可能に連結支持されている。
【0018】
図1及び図2に示すように、フィードケース12には図外左方の走行機体から取り出された作業用動力が軸伝達され、このフィードケース12に伝達された動力で苗のせ台2が横送り駆動されるとともに、そのストロークエンドごとに苗のせ台2に備えた苗送りベルト17が一定ピッチづつ送り駆動される。フィードケース12の後部から取り出された横軸動力が各植付伝動ケース13の前部に横架支承された入力軸20に伝達されるようになっている。
【0019】
植付伝動ケース13はアルミダイキャストによって前後に長い筒状に一体成型されており、その詳細な構造を図3〜図5に基づいて説明する。
【0020】
植付伝動ケース13の前部に設けられたボス部13aに入力軸20が貫通横架されて軸受け支承されるとともに、植付伝動ケース13の後部に設けられたボス部13bに植付駆動軸14が貫通横架されて軸受け支承され、これら入力軸20と植付駆動軸14とがチェーン伝動機構21で連動連結されている。
【0021】
図3及び図4に示すように、チェーン伝動機構21には、入力軸20に装着された入力側スプロケット22、植付駆動軸14に装着された出力側スプロケット23、これらに亘って巻回された伝動チェーン24、および、伝動チェーン24の弛みを吸収するチェーンタイトナ25、等が備えられている。植付駆動軸14が入力軸20に対して2分の1の回転速度で減速駆動されるように、出力側スプロケット23が入力側スプロケット22の2倍のピッチ径に設定されている。
【0022】
図4に示すように、入力側スプロケット22は入力軸20に対して遊嵌支持されるとともに、トルクリミッタ26を介して入力軸20と連動連結されている。
トルクリミッタ26は、入力軸20にシフト可能にスプライン装着されたクラッチ部材27、クラッチ部材27を入力側スプロケット22側にスライド付勢するトルクバネ28、クラッチ部材27と入力側スプロケット22の対向部位に設けられたカム係合部29、等によって構成されている。
【0023】
通常時には、バネ付勢されたクラッチ部材27がカム係合部29の係合によって入力側スプロケット22と一体化されて、入力軸20の回転動力がクラッチ部材27を介して入力側スプロケット22に伝達される。これに対して、入力側スプロケット22に作用する負荷トルクがトルクバネ28のバネ圧として規制された設定トルクより大きくなると、カム係合部29において乗り上がりが発生して、クラッチ部材27がトルクバネ28に抗して後退変位する。その結果、クラッチ部材27から入力側スプロケット22への動力伝達が瞬間的に遮断されて、過大な負荷トルクが苗植付機構駆動系に働くことが未然に回避される。
【0024】
図4及び図5に示すように、前記チェーン伝動機構21を介して動力が伝えられる出力側スプロケット23は、植付駆動軸14に対して遊嵌支持され、植付駆動軸14にスプランイン嵌合された従動側回転体30とともに、後述する少数条クラッチ3を構成するものであり、この出力側スプロケット23が少数条クラッチ3の駆動側回転体を構成している。
【0025】
〔苗植付機構〕
苗植付機構4には、植付駆動軸14の端部に連結固定されて植付駆動軸14の軸心p周りに一体回転する回転ケース40と、この回転ケース40における両端部の横外側に自転可能に軸支された爪ケース41とが備えられており、各爪ケース41には植付爪42と苗押し出し具43が装備されている。
【0026】
この苗植付機構4では、回転ケース40が植付駆動軸14によって前進回転方向(図1において反時計方向)に定速で1回転されるのに連動して、爪ケース41が回転ケース40に内装された周知の不等速ギヤ伝動機構(図示せず)によって逆方向に不等速で1回転自転され、これによって、植付爪42が、苗のせ台2下端の苗取出し口と田面とに亘る縦長の先端回動軌跡rを描いて循環移動するようになっている。植付爪42が苗のせ台2の下端から切り出し保持した苗を田面に持ち込む時点で苗押し出し具43が爪先側に突出作動して、保持した苗を植付爪42から分離して地中に押込むように構成されている。
【0027】
爪ケース41の内部には、図10に示すように、苗押し出し具43が、植付爪42に沿って摺動するように爪ケース41に支持されており、この苗押し出し具43を爪ケース41に対して出退移動させるための苗押出し機構Eは、爪ケース41の内部に設けたカム軸44、カム軸44に取付けられるカム45、カム45に摺接する天秤アーム46、圧縮コイルバネで成る押出しバネ47、苗押し出し具43と天秤アーム46とを連動連結するバネホルダ48等から構成されている。
【0028】
これにより、苗押出し機構Eは、苗植付爪42が苗植運動を行うに伴い、回転ケース40の回転力によって駆動され、苗押し出し具43を図10に二点鎖線で示す如く苗植付爪42の先端側に位置する作用位置に押し出しバネ47の弾性復元力による操作力によって押出し操作したり、図10に実線で示す如く作用位置よりも苗植付爪42の基端側に位置する非作用位置にカム45による操作力によって引退操作したりする。
【0029】
爪ケース41のケース壁の一部には、潤滑用グリースの注入孔49を形成してあり、この注入孔49には、グリースの洩れだし阻止するように注入孔49を閉塞する弾性材料製の栓部材49Aを着脱自在に装着してある。
【0030】
〔少数条クラッチの構造〕
図4及び図6に示すように、畦際近くで全植付条数より少ない条数での植付を行う場合に用いるための少数条クラッチ3は、植付伝動ケース13ごとに2条単位で苗植付機構4の作動を停止するものであり、次のように構成されている。
【0031】
この少数条クラッチ3は、植付駆動軸14にシフト可能にスプライン装着された従動側回転体30、従動側回転体30を出力側スプロケット23側に押圧付勢するバネ31、および、従動側回転体30と出力側スプロケット23との対向部位に設けられた爪咬合部32、等によって構成されている。
【0032】
このように構成された少数条クラッチ3では、通常の植付作業状態では、バネ付勢された従動側回転体30が爪咬合部32を介して出力側スプロケット23と一体化されて、チェーン伝動機構21を介して出力側スプロケット23に伝達された回転動力が従動側回転体30を介して植付駆動軸14に伝達される。
そして、従動側回転体30をバネ31に抗して後退変位させて爪咬合部32での咬合を解除することで、出力側スプロケット23から植付駆動軸14への動力伝達が遮断され、この植付駆動軸14で駆動される苗植付機構4が休止される。
【0033】
爪咬合部32の構造について説明する。まず、従動側回転体30の従動側突起爪32Aの構造について説明する。図7及び図8に示すように、従動側回転体30の回転中心位置に、植付駆動軸14と咬合するスプライン部30Aを備えたボス部30Bを突出させるとともに、ボス部30Bの180°対角位置に夫々従動側突起爪32A、32Aを設けてある。
【0034】
図7及び図8に示すように、従動側突起爪32A、32Aは、円周方向にやや長い長方形断面を備えた矩形状のものであり、ボス部30Bと一体形成されており、出力側スプロケット23に向かう面を傾斜面32Cに形成している。
傾斜面32Cにおける傾斜度は、従動側突起爪32Aの出力側スプロケット23に向かう突出量を、従動側回転体30の回転方向下手側程小さくなるものに設定してある。
【0035】
駆動側回転体としての出力側スプロケット23において、従動側回転体30に向かう面に形成される駆動側突起爪23A、23Aについて説明する。図7に示すように、植付駆動軸14に外嵌される軸挿通孔23Bの周縁部に一対の駆動側突起爪23A、23Aを従動側回転体30に向けて突設してあり、駆動側突起爪23A、23Aは、半円環状のものであり、内向き面23aと外向き面23bとが共に円弧状を呈している。
【0036】
図7に示すように、内向き面23aと外向き面23bとを備えた半円環状の駆動側突起爪23A、23Aの端部面23c、23cは、略半径方向に沿った互いに対向する直線面となっており、一定の間隔Lを持って配置され、従動側回転体30が出力側スプロケット23に咬合する状態で、従動側突起爪32A、32Aが両端部面23c、23c間に、かつ、ボス部30Bが内向き面23a、23a間に嵌入するように構成してある。
【0037】
図7に示すように、駆動側突起爪23A、23Aの従動側突起爪32A、32Aに向かう面は、回転方向に沿った平坦面に形成してある。これに対して、前記したように、従動側突起爪32A、32Aは駆動側突起爪23A、23Aに向かう面が傾斜面32Cに形成されている。
【0038】
このような構成によって、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとが咬合を開始する際に、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとの相手側に向かう面が当接する状態になっても、従動側突起爪32A、32Aの駆動側突起爪23A、23Aに向かう面が回転方向に沿った傾斜面32Cに形成されているので、当接状態を解消する方向に従動側回転体30が回転し、従動側突起爪32A、32Aと駆動側突起爪23A、23Aとが咬合を完了する。
【0039】
〔定位置停止機構〕
定位置停止機構Aについて説明する。
図5及び図6に示すように、少数条クラッチ3における従動側回転体30の外周側には、植付伝動ケース13に前方から貫通装着したクラッチピン39との係合により、その従動側回転体30の回転を一定範囲内で停止させるための凹入部33を形成してあり、この凹入部33と前記クラッチピン39とで定位置停止機構Aを構成している。
【0040】
前記凹入部33には、前記クラッチピン39との接当で従動側回転体30を駆動側回転体である出力側スプロケット23から離す方向へ操作するための乗り上がりカム面36と、クラッチピン39との接当で従動側回転体30の回転を停止させるための接当面37とを形成してある。
【0041】
前記乗り上がりカム面36は、従動側回転体30の外周側で軸心方向に面する状態で形成されており、植付伝動ケース13に前方から貫通装着したクラッチピン39を、クラッチ入り位置で回転している従動側回転体30の半径方向での外方側から、その従動側回転体30の回転軌跡内に突入させると、一定位置にあるクラッチピン39と乗上がり傾斜カム面36との相対回転によるカム作用で従動側回転体30がバネ31に抗してクラッチ切り方向に強制シフトされ、植付駆動軸14が所定の回転位相において停止されるようになっている。
【0042】
図3及び図6に示すように、クラッチピン39は、植付伝動ケース13上部に横向きの支点b周りに揺動可能に枢支連結されたクラッチ操作アーム50の一端に係合連動されるとともに、クラッチ操作アーム50は支点bに装着したコイルスプリングで構成された付勢バネ51によってピン引き出し方向(クラッチ入り方向)に揺動付勢されている。クラッチ操作アーム50にはねじりバネを利用した弾性アーム53が装着されており、機体運転部から操作される操作ワイヤ52のインナ端が弾性アーム53の端部に連結されている。操作ワイヤ52を引き操作してクラッチ操作アーム50を付勢バネ51に抗して揺動させることで、クラッチピン39が前記した凹入部33内に突入して少数条クラッチ3が切り操作される。
【0043】
なお、操作ワイヤ52を引き操作したタイミングによっては、クラッチピン39を凹入部33内に突入できないことがあり、この場合は、弾性アーム53がねじり変形してワイヤストロークを吸収し、乗上がりカム面36の回動軌跡内にクラッチピン39が突入できる回転位相まで従動側回転体30が回転した時点で、弾性アーム53のねじり復元力でクラッチ操作アーム50が揺動されてクラッチピン39が突入操作されることになる。
【0044】
このように構成された定位置停止機構において、特に本発明では、前記従動側回転体30の凹入部33における接当面37を次のように形成している。
【0045】
前記従動側回転体30に形成された凹入部33の回転方向での後方側には、外周側から半径方向の内方側へ突入してきたクラッチピン39に接当して、クラッチ切り状態の従動側回転体30の慣性による回転を停止させるための接当面37が形成されている。
この凹入部33の回転方向での後方側における接当面37は、図8及び図9に示すように、従動側回転体30の回転中心pからの法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面部分が回転方向の前方側に位置するように、図中に示す角度α分だけ傾斜させた面によって形成されている。
このように接当面37を形成したことによって、凹入部33に突入したクラッチピン39の側面39aに対する接当面37の姿勢が、凹入部33の奥側で離れる、つまり凹入部33の接当面37において従動側回転体30の半径方向での内方側に位置する部分が従動側回転体30の外周側に位置する部分よりもクラッチピン39の側面39aから離れて位置する。
したがって、前記接当面37とクラッチピン39の側面39aとの接当によっても、接当面37側からクラッチピン39に対して、クラッチピン39を突入方向とは逆方向(従動回転体30の中心から離れる方向)へ押し戻すような操作力を生じる虞はない。
上記の接当面37の法線に対する傾斜角度αは、クラッチピン39の抜けだしを回避できるように適度な角度を選択すればよいが、できるだけ小さい角度である方が従動回転体30の接当面37の損傷を抑制する上では望ましい。一例を挙げれば、約4°程度が望ましいが、これに限らず、さらに大きな角度、もしくは、ほんの僅かな傾斜角度であっても、法線と平行な面に比べればそれなりの効果を期待することができるので、差し支えない。
【0046】
上記凹入部33は、図7および図8に示すように、クラッチピン39の突入方向での深さが深い凹入溝部分34と、浅い凹入溝部分35との2種類の凹入溝部分34,35で形成されている。前記深い凹入溝部分34では、従動側回転体30の回転方向での後方側に前記接当面37が形成され、その接当面37にクラッチピン39が接当することによって逆転方向に回転しようとする従動側回転体30の逆転方向への移動を制限する第1の逆転防止面38Aが従動側回転体30の前記回転方向での前方側に形成されている。
そして、浅い凹入溝部分35には、前記第1の逆転防止面38Aで停止させることのできなかった従動側回転体30がさらに逆転方向へ移動したときに、クラッチピン39に対して再度接当してそれ以上の逆転を防止するように、第2の逆転防止面38Bが浅い凹入溝部分35の前記回転方向での前方側の端部に形成されている。
【0047】
上記の2種類の凹入溝部分34,35のうち、深い凹入溝部分34が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲が、本発明でいう従動側回転体30の定位置停止用の領域を定めるための角度範囲θ1であり、浅い凹入溝部分35が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲が、定位置停止範囲を越えて従動側回転体30が逆方向へ回転した場合における移動許容範囲を定めるための角度範囲θ2である。
この逆方向移動許容範囲である前記角度範囲θ1,θ2は、図11における植付駆動軸14に対する回転ケース40の位置関係て示されている。つまり、この図11では、回転ケース40と一体に回転する従動側回転体30が、第2の逆転防止面38Bをクラッチピン39に接当させた状態で停止しており、この状態では、回転ケース40の下端側の苗植付機構4において、爪ケース41に装備された植付爪42が泥面に突入する直前の状態、もしくは僅かに突入している状態を示している。
このように、定位置停止範囲として最適な範囲は越えているが、未だ爪が泥面に突入する前、もしくは、ごく浅い範囲に突入しているなど、停止状態で機体を移動させても植付爪42を損傷するような外力がほとんど作用しない状態である。
【0048】
図12及び図13は、前記2種類の凹入溝部分34,35のうち、深い凹入溝部分34が形成された範囲に相当する従動側回転体30の回転角度範囲、つまり、本発明でいう従動側回転体30の定位置停止用の領域を定めるための角度範囲θ1の各端部で従動側回転体30が停止した状態を示している。
つまり、図13が、従動側回転体30の凹入部33のうち、深い凹入溝部分34の回転方向後方側の端部に形成された接当面37にクラッチピン39の側面が接当して停止している状態を示している。
また、図12が、従動側回転体30の凹入部33のうち、深い凹入溝部分34の回転方向前方側の端部に形成された第1の逆転防止面38Aにクラッチピン39の側面が接当して停止している状態を示している。
この図12及び図13に示す状態では、回転ケース40の両端に装備された各苗植付機構4の何れもが圃場の泥面から植付爪42を十分に離れさせた上方位置にあるように、回転ケース40の長手方向が水平方向に近い状態で停止させるように、従動側回転体30の定位置停止位置を設定してある。
【0049】
そして、従動側回転体30の接当面37がクラッチピン39と衝突すると、その衝撃によって従動側回転体30が逆転方向へ移動し、その逆転方向への移動を第1逆転防止面38Aとの接当で止められ、この位置で従動側回転体30が停止すれば前記図12の位置に回転ケース40が停止することになる。
前記第1逆転防止面38Aとクラッチピン39との接当で、再び従動側回転体30が回転方向前方側へ移動方向を変え、前記接当面37にクラッチピン39が接当した状態で止まると図13の位置で回転ケース40が停止する。
前記従動側回転体30の接当面37とクラッチピン39との衝突による衝撃が特に強くて、従動側回転体30の逆転方向へ移動が第1逆転防止面38Aとの接当で止められない場合には、クラッチピン39が浅い凹入溝部分35に乗り上げて付勢バネ51による押圧作用を増大し、クラッチピン39の端部が浅い凹入溝部分35に摺接して、従動側回転体30に回転抵抗を与えながら第2の逆転防止面38Bに接当し、従動側回転体30の回転を停止させるように作用する。
この第2の逆転防止面38Bに接当した状態で従動側回転体30が停止すれば、図11に示す位置で回転ケース40が停止する。
【0050】
前記凹入部33による定位置停止作用が働く範囲は、苗植付機構4における苗押し出し機構Eの駆動負荷との関係で次のように定めてある。
つまり、図10に示されるように苗植付機構4の苗押し出し機構Eを構成する部材のうち、回転カム45は、苗押し出し方向側にバネ付勢されている苗押し出し具43を、天秤アーム46を介して、バネ付勢力に抗して強制的に引き込ませ、所定タイミングで押出しバネ47による強制的な苗押し出し作用を働かせるように構成されている。
そして、前記回転カム45を駆動する力は、前記植付駆動軸14から前記従動側回転体30を介して伝達されるものであるから、その回転カム45を駆動する力も従動側回転体30の回転抵抗として作用している。
【0051】
本発明では、この回転抵抗を従動側回転体30の定位置停止を円滑に行わせるための手段として利用できるように、次のように構成している。
すなわち、苗押し出し用の回転カム45のうち、その回転半径が短い領域、つまり、回転カム45による天秤アーム46を介しての押出しバネ47の圧縮度合いが少ない範囲を除外して前記従動側回転体30の凹入部33による定位置停止範囲を設定している。
つまり、図10に仮想線で示す天秤アーム46が回転カム45の終端から外れて押出しバネ47により苗押し出し具43を押し出した時点、及びその直後では、押出しバネ47は十分に蓄圧されていないので、この範囲を除いて、回転カム45が天秤アーム46を介して押出しバネ47を十分に圧縮した範囲で前記従動側回転体30の定位置停止操作が開始されるように、前記従動側回転体30の凹入部33の位置を設定してある。
【0052】
〔他の実施形態の1〕
[1] 上記の実施形態では、従動側回転体30に形成する凹入部33の形状を、従動側回転体30の回転方向での後方側における接当面37が、従動側回転体30の半径方向での内方側よりも外方側が回転方向での前方側に位置するように傾斜面に形成してあり、これによってクラッチピン39に対する抜け出し方向の分力が作用しないように構成されているものであるが、このような構造に限らず、次のように構成してもよい。
すなわち、図14(a)に示すように、従動側回転体30の凹入部33に突入したクラッチピン39の下部が、従動側回転体30形成された凹入部33の接当面37に対して、従動側回転体30の半径方向における内方側の端部近くで半径方向外方側におけるクラッチピン39の側面に先行して前記凹入部33の接当面37に接近するように、下膨らみの形状に形成してもよい。
また、図14(b)に示すように、クラッチピン39の軸芯を凹入部33への突入方向前方側ほど接当面37に近接するように傾斜させて設定してもよい。
上記の図14(a),(b)に示す構造では、従動側回転体30の凹入部33における接当面37は、従来の構造のものと同様に回転軸芯に対する法線方向に沿う面であるが、その接当面37に接当するクラッチピン39側の面が衝突による上側への分力を生じないように傾斜している。
【0053】
〔他の実施形態の2〕
[2] 図15は、植付伝動ケース13と回転ケース40との間で、植付伝動ケース13の端面に固定ボルトを介して基端側を着脱可能に装着した筒状部材は、回転ケース40側に設けてあるシール部40aに先端側を入り込ませて、シール部40aに設けられているシール用リップ部分と接触してシールするための補助リップ用ガイド18である。
この補助リップ用ガイド18は、前記図4に記載した実施形態での補助リップ用ガイド18よりも長く形成したものであり、主に寒冷地で採用される条間の大きい圃場での植付作業に適している。この補助リップ用ガイド18は、薄板材の深絞り加工によって構成してある。
【0054】
〔他の実施形態の3〕
[3] 図16は、苗植付装置1における苗取り出し口ガイド19の実施形態を示すものである。
この構造では、苗取り出し口ガイド19を、植付伝動ケース13に固定した取付ブラケット13cを介して固定してある。
したがって、苗取り量調節レバー6の調節操作にともなって苗取り出し口の位置が多少前後に変化しても、植付爪42の軌跡と苗取り出し口ガイド19との位置関係は常に一定であるから、苗取り量を多くした時に、苗取り出し口ガイド19が爪軌跡に近づいたり、逆に、苗取り量を少なく調節したときに、苗取り出し口ガイド19が爪軌跡から離れすぎたりする不具合を回避し易い。
【0055】
〔他の実施形態の4〕
[4] 図17は、苗植付装置1における苗取り出し口ガイド19のさらに別の実施形態を示すものである。この構造では、苗取り出し口ガイド19の上端側を植付伝動ケース13の固定部に設けた支点軸19a対して揺動自在に枢支し、かつ、苗取り量調節レバー6の揺動支点60周りでの揺動操作にともなって、苗取り出し口ガイド19の下端側を揺動操作自在に構成してある。
つまり、苗取り量調節レバー6、苗量「増」側(図では上側)へ操作すると、苗取り出し口ガイド19の下端側は、植付爪の軌跡rから離れる側へ移動し、苗量「減」側(図では下側)へ操作すると、苗取り出し口ガイド19の下端側は、植付爪42の軌跡rに近づく側へ移動する。
このように調節すると、苗量が増加されるにともなって分割苗の床土の量も増加するが、苗取り出し口ガイド19が植付爪の軌跡rから離れることで、分割苗と苗取り出し口ガイド19との間隔はあまり変化しない状態で維持できる。また、苗量を減少した場合も、分割苗の床土の量も少なくなるが、苗取り出し口ガイド19が植付爪の軌跡rに近づくことで、分割苗と苗取り出し口ガイド19との間隔はあまり変化しない状態で維持できる。
【0056】
〔他の実施形態の5〕
[5] 植付駆動軸14で駆動される苗植付機構4としては、上記のように植付駆動軸14の1回転で2回の植付を行う回転式の他に、植付駆動軸14の1回転で1回の植付を行うクランク式のものを利用することもできる。
【0057】
〔他の実施形態の6〕
[6] 爪咬合部32を構成する対象として少数条クラッチ3に適用するものを示したが、これよりも伝動方向上手側の植付クラッチなど、伝動系の適宜な部位にこのようなクラッチ装置を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】苗植付装置の側面図
【図2】苗植付装置の要部平面図
【図3】植付ケースの側面図
【図4】植付ケースの横断平面図
【図5】苗植付機構への伝動構造を示す断面図
【図6】少数条クラッチの操作構造を示す縦断背面図
【図7】駆動側回転体と従動側回転体との伝動構造を示す斜視図
【図8】従動側回転体を示す平面図
【図9】従動側回転体を示す斜視図
【図10】苗植付機構における苗押し出し機構を示す断面図
【図11】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図12】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図13】苗植付装置の定位置停止位置を示す説明図
【図14】定位置停止機構の別の実施形態を示す説明図
【図15】苗植付装置の別の実施形態を示す断面図
【図16】苗取り出し口ガイドの別実施形態を示す概略説明図
【図17】苗取り出し口ガイドの別実施形態を示す概略説明図
【符号の説明】
【0059】
3 少数条クラッチ
4 苗植付機構
23 駆動側回転体
30 従動側回転体
33 凹入部
34 深い凹入溝部分
35 浅い凹入溝部分
37 接当面
38A 第1の逆転防止面
38B 第2の逆転防止面
39 クラッチピン
43 苗押し出し具
A 定位置停止機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記凹入部の回転方向での後方側における接当面を、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してあることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
従動側回転体に形成された凹入部に設定されている定位置停止用の一定の角度範囲よりも従動側回転体の回転方向前方側箇所に、
前記設定された角度範囲の前記回転方向での前端箇所を越えてさらに前方側へ移行したクラッチピンと係合して、前記従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けた請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記従動側回転体の回転方向での後方側に向かう前記クラッチピンの接当部分の側面を、前記従動側回転体の回転中心に近い側が遠い側よりも従動側回転体の回転方向での前方側に位置するように形成してあることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項4】
請求項1、2、または3記載のクラッチ装置を苗植付機構への伝動系に備えるとともに、従動側回転体よりも伝動方向での下手側に、苗植付機構での苗植付動作に伴って蓄圧された押し出しバネの付勢力で作動する苗押し出し機構を設けてあり、
この苗押し出し機構による苗押し出し操作用の押し出しバネの未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相となる接当用の凹入部が形成される領域を設定してある苗植付装置。
【請求項1】
駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記凹入部の回転方向での後方側における接当面を、従動側回転体の回転中心をとおる法線に対して、前記半径方向での内方側よりも外方側に位置する面が、回転方向の前方側に位置するように形成してあることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項2】
従動側回転体に形成された凹入部に設定されている定位置停止用の一定の角度範囲よりも従動側回転体の回転方向前方側箇所に、
前記設定された角度範囲の前記回転方向での前端箇所を越えてさらに前方側へ移行したクラッチピンと係合して、前記従動側回転体の逆転を阻止するための逆転防止面を設けた請求項1記載のクラッチ装置。
【請求項3】
駆動側回転体と従動側回転体との相対向する面に、互いに接当して動力を伝達可能な伝動部を形成したクラッチと、
前記駆動側回転体と前記従動側回転体とを互いに離反する方向へ強制移動させて伝動部での動力伝達状態を解除するクラッチ操作機構とを備えるとともに、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相を一定の角度範囲内に制限する定位置停止機構を備えたクラッチ装置であって、
前記定位置停止機構を、前記従動側回転体の外周面側に形成した接当用の凹入部と、その凹入部に対して従動側回転体の外周側から半径方向の内外に移動して係脱可能なクラッチピンとで構成し、
前記従動側回転体の回転方向での後方側に向かう前記クラッチピンの接当部分の側面を、前記従動側回転体の回転中心に近い側が遠い側よりも従動側回転体の回転方向での前方側に位置するように形成してあることを特徴とするクラッチ装置。
【請求項4】
請求項1、2、または3記載のクラッチ装置を苗植付機構への伝動系に備えるとともに、従動側回転体よりも伝動方向での下手側に、苗植付機構での苗植付動作に伴って蓄圧された押し出しバネの付勢力で作動する苗押し出し機構を設けてあり、
この苗押し出し機構による苗押し出し操作用の押し出しバネの未蓄圧、または蓄圧初期に相当する領域を避けて、前記従動側回転体の1回転中における停止位置の位相となる接当用の凹入部が形成される領域を設定してある苗植付装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−41598(P2009−41598A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−204675(P2007−204675)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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