説明

クランクシャフトの製造装置および製造方法

【課題】主成形工程と中空成形工程を連続的に行うことを可能とするトランスファ式のクランクシャフトの製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】中空成形型126には、中空成形型126の高さ方向の位置を調整するライナ部、および、中空成形型126の水平方向の位置を調整するシム部132が設けられている。中空成形型126での孔部形成において必要となる孔部の厚み調整(高さ方向の調整)は、ライナ部による中空成形型126の高さ調整で対応することができる。予備成形品Pの中空成形型126への投入位置に応じて、中空成形型126の水平方向の位置をシム部132により調整することにより、中空成形型126のキャビティへの予備成形品の挿入を容易に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフトの所定部位に中空状の孔部を形成する中空成形工程を行うクランクシャフトの製造装置および製造方法に係り、特に、主成形工程を連続的に行うトランスファ式プレス装置においてその主成形工程に中空成形工程を追加する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のクランクシャフトの製造では、中空成形工程を行う場合、たとえば図7に示すクランクシャフト製造装置1を用いている。クランクシャフト製造装置1は、トランスファ式プレス装置10、ロボット20、および、中空成形プレス装置30を備えている。トランスファ式プレス装置10は、ワークWに対して主成形工程を行い、ロボット20は、トランスファ式プレス装置10で得られたクランクシャフトの予備成形品Pを中空成形プレス装置30に搬送し、中空成形プレス装置30は、クランクシャフトの予備成形品Pに中空成形工程を行う。
【0003】
トランスファ式プレス装置10では、プレスボルスタ11の上側にプレスラム12が対向して配置されている。プレスボルスタ11とプレスラム12の間には、主成形工程(潰し工程、荒工程、仕上工程、および、トリム工程)をワークWに対して行う上下分割可能な潰し型21、荒型22、仕上げ型23、および、トリム型24が成形方向(図の右方向)に順に配設されている。型21〜24の上型は、それらの下型に対してプレスラム12により移動する。型21〜24の下型は、プレスボルスタ11の上面に固定されている。
【0004】
図8は、図7に示すクランクシャフト製造装置1の概略構成を表す上面図である。なお、図7では、図8に示すフィードバー13,14、クランプ爪13A〜13D,14A〜14Dの図示を省略している。型21〜24の下型の前面側および後面側には、成形方向に延在するフィードバー13,14が設けられている。図7では、図示の便宜上、中空成形機構42のパンチを1個のみ図示している。
【0005】
第1フィードバー13には、第1クランプ爪13A〜13Dが設けられ、第2フィードバー14には、第1クランプ爪13A〜13Dに対向して第2クランプ爪14A〜14Dが設けられている。第1クランプ爪13A〜13Dおよび第2クランプ爪14A〜14Dは、フィードバー13,14の延在方向に所定間隔(型同士の間隔)をおいて配置されている。第1クランプ爪13A〜13Dおよび第2クランプ爪14A〜14Dは、ワークWを把持するとともに、第1フィードバー13,14によってその延在方向に沿って移動する。第1フィードバー13,14では、各型の下型における工程後のワークをクランプ爪により把持して次工程の下型へ搬送する(たとえば特許文献1)。
【0006】
このようなトランスファ式プレス装置10では、図9(A)〜(C)に示すように、型内にワークW1,W2を配置した後、型締め、型開き、次工程の型へのワークWの搬送、型締め、・・・、型開きを順次行う。この場合、各工程は、同一のプレスラム11により行われ、次工程への搬送は、フィードバー13,14により行われる。
【0007】
たとえば図9(A)に示すように仕上げ型23で仕上げ工程が施されたワークW1は、トリム型24に投入される。トリム型24では、図9(B)に示すように、ワークW1からバリBが打ち抜かれ、クランクシャフトの予備成形品Pが得られる。具体的には、図10(A)に示すように、上型24Aが、下型24B内のワークW1に対して下降することによって、上型24Aと、ワークW1のバリBが載置されたバリ抑えダイ24Cとにより、ワークW1からバリBが打ち抜かれ、クランクシャフトの予備成形品Pが得られる。
【0008】
続いて、ロボット20による予備成形品Pのプレス装置30への搬送後、下型24Bに残っているバリBは、図9(C)に示すように、バリ抑えダイ24Cの上昇により上方に移動し、クランプ爪13D,14Dにより把持され、バリコンベア15に搬送される。具体的には、図10(B)に示すように、上型24Aが上昇するとともに、下型24Bのバリ抑えダイ24CによりバリBを持ち上げる。次いで、バリBは、クランプ爪13D,14Dにより把持され、フィードバー13,14によりバリコンベア15に搬送される。
【0009】
中空成形プレス装置30では、予備成形品Pに中空状の孔部を形成することにより、成形品が得られる(中空成形工程)。中空状の孔部は、燃費向上の観点から、軽量化を図るために形成されるものである。この場合、クランクピン部に孔部を形成した場合、クランクシャフトの剛性には影響が少ないので、孔部の形成はクランクピン部に行うことが好適である。
【0010】
中空成形工程では、プレスラム32により型41の上型を、予備成形品Pが配置された下型に向けて下降させる。これにより、予備成形品Pを型41内に閉塞するとともに、プレスラム32の移動方向とは垂直な方向から中空成形機構42のパンチを予備成形品Pに挿入する。このような側方成形では、パンチの駆動源として、カムスライドや、油圧シリンダ、サーボモータ等が用いられる(たとえば特許文献2)。なお、図7の符号24L,41Lは、スプリングや、ガスクッション、油圧クッション等からなるワーク拘束用クッションを示し、符号31は、プレスボルスタを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2008−87048号公報
【特許文献2】実開昭61−143727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
以上のような中空成形を行う場合、トランスファ式プレス装置10とは別に中空成形プレス装置30を用いているため、コストが増大するとともに、装置のレイアウトの自由度が小さくなる。そこで、同一装置内で主成形工程と中空成形工程を連続的行うために、トランスファ式プレス装置10と中空成形プレス装置30を一体化すること(たとえば、トリム型24の成形方向側に隣接して中空成形型41を設け、フィードバー13,14を成形方向に延長し、そこにクランプ爪を別途設ける)ことが考えられる。
【0013】
しかしながら、以上のような装置の一体化は、次のような理由から困難である。すなわち、フィードバー13,14による搬送では、予備成形品Pの投入位置はフィードバー13,14のピッチ(移動量)により決定されるが、そのピッチは、型同士の間隔に基づき固定されている。このため、フィードバー13,14による搬送では、中空成形部でのピッチ(移動量)のみを変更することができないから、型の位置に応じて予備成形品Pの投入位置を変更することができるロボット20と比べて、中空成形型41への予備成形品Pの投入精度が低くなる。しかも、中空成形型41では、最終狙い形状をなすキャビティ面と予備成形品Pとの間のクリアランスが極めて狭いため、そのキャビティへの予備成形品Pの挿入が困難となる。
【0014】
また、各型で用いるプレスラム12は同一となるため、中空成形工程においてシャットハイト等の変更により孔部のみの厚み調整(高さ方向の調整)を行う場合、そのような高さ方向の調整が他工程に影響を与えてしまい、その結果、中空成形工程に投入する材料形状の自由度がなくなる。
【0015】
したがって、本発明は、主成形工程と中空成形工程を連続的に行うことを可能とするトランスファ式のクランクシャフトの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明のクランクシャフトの製造装置は、クランクシャフトの素材を予備成形する第1上下分割型と、第1上下分割型で得られた予備成形品を閉塞するとともに、予備成形品の所定部位へのパンチの挿入により中空状の孔部を形成する第2上下分割型と、第1上下分割型および第2上下分割型の上型をそれらの下型に向けて移動させることにより、第1上下分割型および第2上下分割型の閉塞を行うプレスラムとを備え、第2上下分割型には、第2上下分割型の水平方向の位置を調整するシム部と、第2上下分割型の高さ方向の位置を調整するライナ部とが設けられていることを特徴としている。
【0017】
本発明のクランクシャフトの製造装置では、第2上下分割型に、その水平方向の位置を調整するシム部を設けているので、予備成形品の第2上下分割型への投入位置に応じて、第2上下分割型の水平方向の位置をシム部により調整することができる。このような水平方向の位置調整は、第1上下分割型とは独立して行うことができるので、第1上下分割型での予備成形工程への影響はない。したがって、ワーク(クランクシャフトの素材、予備成形品、および、成形品)の搬送を、型同士の間隔に基づきピッチが固定されているフィードバーにより行うことができるのはもちろんのこと、第2上下分割型のキャビティ面と予備成形品との間のクリアランスが極めて狭い場合でも、第2上下分割型のキャビティへの予備成形品の挿入を容易に行うことができる。
【0018】
また、第2上下分割型には、その高さ方向の位置を調整するライナ部を設けているので、第2上下分割型での孔部形成において必要となる孔部の厚み調整(高さ方向の調整)は、ライナ部による第2上下分割型の高さ調整で対応することができる。このような高さ調整は、第1上下分割型とは独立して行うことができるので、第1上下分割型での予備成形工程への影響はない。したがって、第1上下分割型および第2上下分割型の上型の下型に対する移動を同一のプレスラムにより行うことができるとともに、第2上下分割型に投入する材料形状の自由度の向上を図ることができる。
【0019】
さらに、以上のような本発明のクランクシャフトの製造装置では、潰し工程、荒工程、仕上工程、および、トリム工程を含む主成形工程を第1上下分割型で行い、かつ中空成形工程を第2上下分割型で行うように設定すると、それら成形工程を固定ピッチのフィードバーおよび同一のプレスラムにより連続的に行うことができる。このようなトランスファ式プレス装置を実現することができるので、コストの低減を図ることができるとともに、装置のレイアウトの自由度を大きくすることができる。
【0020】
本発明のクランクシャフトの製造装置は種々の構成を用いることができる。たとえば第1上下分割型による予備成形品の成形により生じたバリを外部に排出するバリ搬送部を備えることができる。バリ排出部は、第1上下分割型と第2上下分割型との間に設けられたバリステージと、バリステージにおける第2上下分割型へ向かう方向とは異なる方向に設けられ、バリを排出するバリ排出部とを有することができる。
【0021】
従来技術において、たとえば図7に示すトリム型24の成形方向側に隣接して中空成形型41を設け、図8に示すフィードバー13,14を成形方向に延長し、そこにクランプ爪を別途設けた場合、中空成形型41は、中空成形機構42(パンチおよびその駆動源)を有するため、そこには図10に示すトリム型24のバリ抑え機構(バリ抑えダイ24Cおよびバリ押圧部材24D)を設けることができない。そこで、中空成形型41を回避して、図8に示すフィードバー13,14のクランプ爪によってバリBを成形方向側の外部に直接搬送することが考えられるが、クランプ爪どうしの間隔は上記のように型同士の間隔に基づき固定されているから、フィードバー13,14による搬送では上記仕様変更ができない。
【0022】
これに対して上記態様では、第1上下分割型からの予備成形品の搬送後、予備成形品の成形時に生じたバリをバリ搬送部のバリステージに搬送し、バリ搬送部のバリ排出部から第2上下分割型へ向かう方向とは異なる方向にバリを排出することができる。この場合、フィードバーにおいてそれに対応する箇所にクランプ爪を別途設けることにより、フィードバーによるワークの搬送を行うことができるとともに、バリ搬送部のバリステージへのバリの搬送をフィードバーにより行うことができる。このように上記態様では、クランプ爪どうしの間隔等の従来の仕様を変更する必要がない。
【0023】
ここで、装置の前面側では、通常、装置のシャッターが設けられており、バリステージとシャッターとの間にバリ排出部を配置することが考えられるが、この場合、シャッターと各成形工程用の型との距離が長くなるため、装置の操作者の作業性が悪くなる。したがって、バリ排出部は、装置の後面側に配置することが好適である。通常、装置の後面側には、離型剤を型に塗布する塗布装置が設置されているが、上記態様では、たとえば塗布装置下にバリ排出部を配置することにより、塗布装置を回避することができる。
【0024】
本発明のクランクシャフトの製造方法は、本発明のクランクシャフトの製造装置による第1上下分割型での主成形工程と第2上下分割型での中空成形工程を、同一プレスラムおよびフィードバー搬送で連続的に行う手法を含む。
【0025】
すなわち、本発明のクランクシャフトの製造方法は、第1上下分割型内にクランクシャフトの素材を閉塞して予備成形し、第2上下分割型内に予備成形品を閉塞するとともに、第2上下分割型に設けられたパンチを予備成形品の所定部位に挿入することにより孔部を形成し、プレスラムによって、第1上下分割型および第2上下分割型の上型をそれらの下型に対して移動させることにより、第1上下分割型および第2上下分割型の閉塞を行い、第2上下分割型の水平方向の位置調整をシム部により行い、第2上下分割型の高さ方向の位置調整をライナ部により行うことを特徴としている。
【0026】
本発明のクランクシャフトの製造方法では、本発明のクランクシャフトの製造装置と同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明のクランクシャフトの製造装置あるいは製造方法によれば、潰し工程、荒工程、仕上工程、および、トリム工程を含む主成形工程を第1上下分割型で行い、かつ中空成形工程を第2上下分割型で行うように設定すると、それら成形工程を固定ピッチのフィードバーおよび同一のプレスラムにより連続的に行うことができる等の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置の概略構成を表す概念図である。
【図2】本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置のフィードバーを含む部分構成を表す概略上面図である。
【図3】本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置の中空成形型の下型を含む概略部分構成を表す側断面図である。
【図4】本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置の中空成形型の下型の概略構成を表す上面図である。
【図5】本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置のバリ搬送部の概略構成を表す概念図である。
【図6】(A)〜(D)は、本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置による連続成形工程を表す概念図である。
【図7】従来のクランクシャフト製造装置の概略構成を表す概念図である。
【図8】従来のクランクシャフト製造装置のフィードバーを含む部分構成を表す概略上面図である
【図9】(A)〜(C)は、従来のクランクシャフト製造装置のトランスファ式プレス装置による成形工程を表す概念図である。
【図10】(A),(B)は、従来のクランクシャフト製造装置のトリム型の動作を表す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(1)実施形態の構成
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る一実施形態のクランクシャフト製造装置100の概略構成を表す概念図である。図2は、図1に示すクランクシャフト製造装置100のフィードバー13,14を含む部分構成を表す概略上面図である。図1では、図2に示すフィードバー13,14およびクランプ爪13A〜13D,113E,113F,14A〜14D,114E,114Fの図示を省略している。図1では、図3,4に示すライナ部131およびシム部132の図示を省略している。図1では、図示の便宜上、図2に示す中空成形機構142のパンチを1個のみ図示している。なお、本実施形態では、図7〜10と同様な構成要素には同符号を付し、その説明は省略している。
【0030】
クランクシャフト製造装置100は、図7〜10に示す従来のトランスファ式プレス装置10が行っていた主成形工程(潰し工程、荒工程、仕上工程、および、トリム工程)と、従来の中空部成形装置30が行っていた中空成形工程とを、同一のプレスラム12および固定ピッチのフィードバー13,14を用いて連続的に行う装置である。
【0031】
クランクシャフト製造装置100では、従来のトランスファ式プレス装置10において、トリム型24の成形方向側(図の右側)にバリ搬送部125および中空成形型126を順に設けるとともに、それら部位125,126の新設に応じて、プレスラム12およびフィードバー13,14を成形方向側(図の右側)に延長している。中空成形部126は、図3に示すライナ部131および図4に示すシム部132を有している。バリコンベア115は、従来のトランスファ式プレス装置10のバリコンベア15の代わりに、バリ搬送部125に設けられている。
【0032】
バリ搬送部125は、バリステージ125S、バリコンベア115、および、ロボット140を備えている。バリステージ125Sは、プレスボルスタ11に固定されている。バリステージ125Sの上面には、トリム型24から搬送されたバリBあるいは予備成形品Pが載置される載置部125Mが設けられている。バリコンベア115は、たとえばバリステージ125Sの後面に配置されるとともに、バリBを外部に排出する。
【0033】
ロボット140は、たとえばクランプ爪140Aにより、載置部125M上のバリBを持ち上げ、バリコンベア115に搬送する。バリコンベア115への搬送手段は、ロボット140に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。たとえば、バリコンベア115をバリステージ125Sに対して接近させる移動機構を設け、バリコンベア115によりバリ載置部125M上のバリBを取り出す構成を用いることができる。
【0034】
中空成形型126は上下分割型である。中空成形型126の下型はプレスボルスタ11に固定され、上型はプレスラム12に固定されている。中空成形型126には、図7に示す中空成形機構42およびワーク拘束用クッション31Lと同様な構成を有する中空成形機構142およびワーク拘束用クッション131Lが設けられている。
【0035】
中空成形型126の下型には、図3に示すように、その高さ方向の位置を調整するライナ部131が設けられている。たとえば中空成形型126の下型の高さ位置が低くなった場合、ライナ部131を下型の底部に配置する。ライナ部131は、たとえば所望の高さ調整量と同等の厚みを有する板材を用いる。この場合、複数の板材を用い、高さ調整量に応じてそれら板材を適宜挿脱してもよい。ライナ部131は、必要に応じて上型に設ける。
【0036】
中空成形型126の下型には、図4に示すように、その水平方向の位置を調整するシム部132が設けられている。シム部132は、板材であって、たとえば下型の形状型部126Aの外周部に配置される板材である。シム部132は、たとえば水平位置の調整量および方向に応じて、形状型部126Aの外周部の前面側(図4の下側)、後面側(図4の上側)、成形方向側(図4の右側)、および、成形方向反対側(図4の左側)うちの少なくとも一方向側で挿脱される。シム部132は、下型のシム部132に対応させて上型に設ける。
【0037】
第1フィードバー13には第1クランプ爪113E,113Fが設けられ、第2フィードバー14には第2クランプ爪114E、114Fが設けられている。クランプ爪113E,114Eは、バリステージ125Sに対向して配置され、クランプ爪113F,114Fは、中空成形型126に対向して配置されている。第1クランプ爪113E,113Fおよび第2クランプ爪114E,114Fは、ワークWを把持するとともに、第1フィードバー13,14によってその延在方向に沿って移動させられる。
【0038】
(2)実施形態の動作
クランクシャフト製造装置100の動作について、おもに図6を参照して説明する。図6(A)〜6(D)は、クランクシャフト製造装置100による連続成形工程を表す概念図である。
【0039】
クランクシャフト製造装置100では、図6(A)〜6(D)に示すように、成形プレスでの荷重や冷却性の観点から、1工程分の間隔をおいてワークW1,W2,W3を配置し、型締め、型開き、次工程の型へのワークの搬送、型締め、・・・、型開きを順次行う。この場合、潰し工程、荒工程、仕上工程、トリム工程、中空成形工程を同一のプレスラム12により行い、ワークW1,W2の搬送を同一のフィードバー23,24により行っている。
【0040】
たとえば、図6(A)に示すように、仕上げ型23で仕上げ工程が施されたワークW1は、プレスラム12の上昇後、クランプ爪13C,14C(図2のみに図示)に把持され、フィードバー13,14(図2のみに図示)によりトリム型24に搬送される。このとき、荒型21で荒工程が施されたワークW2は、クランプ爪13A,14A(図2のみに図示)に把持され、フィードバー13,14により潰し型22に搬送される。
【0041】
次いで、トリム型24では、プレスラム12が下降することにより、図10(A)に示すように、ワークW1にトリム工程が施される。具体的には、バリBがワークW1から打ち抜かれ、クランクシャフトの予備成形品Pが得られる。このとき、潰し型22では、プレスラム12が下降することにより、ワークW2に潰し工程が施される。
【0042】
続いて、プレスラム12の上昇後、図6(B)に示すように、トリム型24内の予備成形品Pが、クランプ爪13D,14D(図2のみに図示)に把持され、フィードバー13,14によりバリ搬送部125へ搬送され、載置部125Mに載置される。このとき、バリBはトリム型24に残される。また、このとき、潰し型22内のワークW2は、クランプ爪13B,14B(図2のみに図示)に把持され、フィードバー13,14により仕上げ型23に搬送される。
【0043】
次いで、仕上げ型23でワークW2への仕上げ工程が行われ、プレスラム12が上昇した後、図6(C)に示すように、バリ搬送部125では、予備成形品Pが、クランプ爪113E,114E(図2のみに図示)により把持され、フィードバー13,14により中空成形型126へ搬送される。
【0044】
ここで本実施形態では、中空成形型126に、その水平方向の位置を調整するシム部132を設けているので、予備成形品Pの中空成形型126への投入位置に応じて、中空成形型126の水平方向の位置をシム部132により調整することができる。これにより、中空成形型126のキャビティ面と予備成形品Pとの間のクリアランスが極めて狭い場合でも、中空成形型126のキャビティへの予備成形品の挿入を容易に行うことができる。また、このような水平方向の位置調整は、型21〜24およびバリステージ125Aとは独立して行うことができるので、型21〜24およびバリステージ125Aでの各工程への影響がない。
【0045】
このような予備成形品Pの搬送時、トリム型24では、プレスラム12の上昇とともに、バリ抑えダイ24Cが下型から上昇することにより、トリム型24に残されているバリBが持ち上げられる。バリBは、クランプ爪13D,14Dに把持され、フィードバー13,14によりバリ搬送部125へ搬送され、バリ載置部125Mに載置される。また、このとき、仕上げ型23内のワークW2は、クランプ爪13C,14Cに把持され、フィードバー13,14によりトリム型24に搬送される。
【0046】
次に、中空成形型126では、プレスラム12により、予備成形品Pが配置された下型に向けて中空成形型126の上型を下降させる。これにより、予備成形品Pを型126内に閉塞するとともに、プレスラム12の移動方向とは垂直な方向から中空成形機構142のパンチを予備成形品Pに挿入すると、中空状の孔部Hが形成された成形品Pが得られる。このとき、トリム型24では、プレスラム12が下降することにより、ワークW2にトリム工程が施され、バリBがワークW2から打ち抜かれ、クランクシャフトの予備成形品Pが得られる。
【0047】
ここで本実施形態では、中空成形型126には、その高さ方向の位置を調整するライナ部131を設けているので、中空成形型126での孔部H形成において必要となる孔部Hの厚み調整(高さ方向の調整)は、ライナ部131による中空成形型126の高さ調整で対応することができる。このような高さ調整は、型21〜24とは独立して行うことができるので、型21〜24での各成形工程への影響はない。
【0048】
続いて、プレスラム12の上昇後、図6(D)に示すように、中空成形型126内の成形品Pが、クランプ爪113F,114F(図2のみに図示)に把持され、フィードバー13,14により装置外部へ搬送される。このとき、バリ搬送部125内のバリBは、図5に示すロボット140の爪140Aによりバリコンベア115に排出される。また、このとき、トリム型23内におけるワークW2から得られた予備成形品Pは、クランプ爪13D,14Dに把持され、フィードバー13,14によりバリ搬送部125へ搬送され、載置部125Mに載置される。この場合、ワークW2から得られたバリBはトリム型24に残される。
【0049】
図6(D)に示す処理以降、ワークW2は、ワークW1と同様な処理が施されるとともに、ワークW2に対して1工程分の間隔をおいて投入されているワークW3は、ワークW1,W2と同様な処理が施され、クランクシャフトの成形品が順次得られる。
【0050】
このように本実施形態では、中空成形型126の水平方向の位置をシム部132により調整することにより、中空成形型126のキャビティへの予備成形品の挿入を容易に行うことができる。また、シム部132による水平方向の位置調整は、型21〜24およびバリステージ125Aでの各工程への影響がないから、ワーク(クランクシャフトの素材、予備成形品、および、成形品)の搬送を、ピッチが固定されている同一のフィードバー13,14により行うことができる。また、中空成形型126のライナ部131による高さ調整は、型21〜24での各成形工程への影響なく行うことができるから、型21〜24,126の上型の下型に対する移動を同一のプレスラム12により行うことができるとともに、中空成形型126に投入する材料形状の自由度の向上を図ることができる。
【0051】
以上のように各成形工程を、一台の装置100内の固定ピッチのフィードバー13,14および同一のプレスラム12により連続的に行うことができるので、コストの低減を図ることができるとともに、装置のレイアウトの自由度を大きくすることができる。
【0052】
特に、トリム型24と中空成形型126との間に設けたバリ搬送部125では、バリコンベア115から中空成形型126へ向かう方向とは異なる方向にバリBを排出することができる。この場合、フィードバー13,14においてそれに対応する箇所にクランプ爪113E,114Eを別途設けることにより、フィードバー13,14によるワークの搬送を行うことができるとともに、バリ搬送部125のバリステージ125SへのバリBの搬送をフィードバー13,14により行うことができる。したがって、クランプ爪どうしの間隔等の従来の仕様を変更する必要がない。
【符号の説明】
【0053】
100…クランクシャフト製造装置、21…潰し型(第1上下分割型)、22…荒型(第1上下分割型)、23…仕上げ型(第1上下分割型)、24…トリム型(第1上下分割型)、115…バリコンベア(バリ排出部)、125…バリ搬送部、125M…バリ載置部、125S…バリステージ、126…中空成形型(第2上下分割型)、131…ライナ部、132…シム部、B…バリ、P…予備成形品、W,W1〜W3…ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクシャフトの素材を予備成形する第1上下分割型と、
前記第1上下分割型で得られた予備成形品を閉塞するとともに、前記予備成形品の所定部位へのパンチの挿入により中空状の孔部を形成する第2上下分割型と、
前記第1上下分割型および前記第2上下分割型の上型をそれらの下型に向けて移動させることにより、前記第1上下分割型および前記第2上下分割型の閉塞を行うプレスラムとを備え、
前記第2上下分割型には、前記第2上下分割型の水平方向の位置を調整するシム部と、前記第2上下分割型の高さ方向の位置を調整するライナ部とが設けられていることを特徴とするクランクシャフトの製造装置。
【請求項2】
前記第1上下分割型による前記予備成形品の成形により生じたバリを外部に排出するバリ搬送部を備え、
前記バリ排出部は、前記第1上下分割型と前記第2上下分割型との間に設けられたバリステージと、前記バリステージにおける前記第2上下分割型へ向かう方向とは異なる方向に設けられ、前記バリを排出するバリ排出部とを有することを特徴とする請求項1に記載のクランクシャフトの製造装置。
【請求項3】
第1上下分割型内にクランクシャフトの素材を閉塞して予備成形し、
第2上下分割型内に前記予備成形品を閉塞するとともに、第2上下分割型に設けられたパンチを前記予備成形品の所定部位に挿入することにより孔部を形成し、
プレスラムによって、前記第1上下分割型および前記第2上下分割型の上型をそれらの下型に対して移動させることにより、前記第1上下分割型および前記第2上下分割型の閉塞を行い、
前記第2上下分割型の水平方向の位置調整をシム部により行い、前記第2上下分割型の高さ方向の位置調整をライナ部により行うことを特徴とするクランクシャフトの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−227943(P2010−227943A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−75451(P2009−75451)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】