クランプリング
【課題】ウエハへの成膜に悪影響を及ぼすことを抑えることが可能なクランプリングを提供する。
【解決手段】ウエハ100を下部電極に固定するためのクランプリング61は、クランプリング61におけるウエハ100と接触しない側の表面63には、複数の凹部64が設けられており、クランプリング61の内側における円周方向の凹部64の間隔X1は、クランプリング61の外側における円周方向の間隔X2と比べて同等である。
【解決手段】ウエハ100を下部電極に固定するためのクランプリング61は、クランプリング61におけるウエハ100と接触しない側の表面63には、複数の凹部64が設けられており、クランプリング61の内側における円周方向の凹部64の間隔X1は、クランプリング61の外側における円周方向の間隔X2と比べて同等である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを固定するクランプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したクランプリングは、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のように、液晶装置となる前のウエハに処理を施す際に、ウエハをステージに固定するために用いられる。クランプリングの使用方法としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いてウエハの全面に処理膜を成膜する。次に、ウエハの周縁部をクランプリングで挟んで固定し、成膜された処理膜の一部をエッチングしてパターニングする。
【0003】
しかし、エッチングした膜がデポ物としてクランプリングに付着し、ウエハに処理を行う過程でウエハの温度変化と共にクランプリングの温度も変化してデポ物に応力が加わり、クランプリングからデポ物が剥がれてウエハに付着するという問題があった。そこで、クランプリングの表面にブラスト加工を施して表面を粗くし、デポ物が付着する付着面積(表面積)を増やすことにより、クランプリングからデポ物が剥がれることを抑えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−19088号公報
【特許文献2】特開平9−143716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面を粗くすることにより尖った部分が形成され、エッチング処理のときに尖った先端部分も一緒に侵食して剥がれ、剥がれたデポ物がウエハに付着するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るクランプリングは、ウエハをステージに固定するためのクランプリングであって、前記クランプリングにおける前記ウエハと接触しない側の表面には、凹部又は凸部が設けられており、前記クランプリングの内側における円周方向の前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングの外側における円周方向の間隔と比べて同等又は異なることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、クランプリングの表面に凹部又は凸部が設けられているので、クランプリングの表面の面積(表面積)を多くすることが可能となり、表面に付着するデポ物が剥がれることを抑えることができる。また、従来のように、表面が突起状になっていることと比較して、ウエハに処理を施した際(例えば、エッチング処理)に、表面が一緒に侵食されることを抑えることができる。また、クランプリングにおける内側と外側の凹部又は凸部の間隔が同等又は異なるので、例えば、ウエハを介してクランプリングに伝わる温度分布に対応して、デポ物に生じる応力(デポ物とクランプリングとの熱膨張率の差)を緩和させることができる。これにより、クランプリングに付着したデポ物が、エッチング処理や熱膨張率の差によって剥がれることを抑えることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記外側に比べて前記内側の方が同等又は狭いことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、クランプリングの内側に熱が加えられたときのように、内側の熱膨張率の差(デポ物とクランプリング)が大きい場合、内側の間隔が同等又は狭いので、特に内側のデポ物に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記内側に比べて前記外側の方が同等又は狭いことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、例えば、外側に応力が集中する場合、外側の間隔が同等又は狭いので、特に外側のデポ物に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、平面的な形状が円形状であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、平面的に円形状なので、平面方向において応力が集中することを抑えることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、半球状であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、半球状であるので、平面方向及び深さ(高さ)方向における応力の集中を抑えることができる。また、突起状の部分が少ないのでエッチング処理などによって表面が侵食されにくい。これにより、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、平面的な方向の長さに対して高さ方向の長さが短いことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、深さが浅いので、凹部又は凸部に付着したデポ物などを洗浄しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】クランプリングを用いて固定されるウエハの構成を示す模式平面図。
【図2】液晶装置の構造を示す模式平面図。
【図3】図2に示す液晶装置のA−A'線に沿う模式断面図。
【図4】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図5】エッチング装置の構造を示す模式図。
【図6】エッチング装置の中に設けられたクランプリングの構造を示す模式図であり、(a)はクランプリングの構造を示す模式平面図、(b)は(a)に示すクランプリングのB−B'線に沿う模式断面図、(c)は(a)に示すクランプリングのC部を拡大して示す模式拡大図、(d)は(c)に示すクランプリングのD−D'線に沿う模式断面図。
【図7】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図8】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図9】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図10】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図11】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図12】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0021】
<ウエハの構成>
図1は、クランプリングを用いて固定されるウエハの構成を示す模式平面図である。以下、ウエハの構成を、図1を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、ウエハ100は、例えば、液晶装置11(図2参照)を製造する際に用いられるものであり、液晶装置11を構成する一対の基板のうち一方の基板(例えば、素子基板)が複数個分、マトリクス状に面付けされる。ウエハ100の大きさは、例えば、8インチである。ウエハ100の厚みは、例えば、1.2mmである。ウエハ100の材質は、例えば、石英である。
【0023】
A部は、ウエハ100における1つの液晶装置11を構成する部分(四角形の素子基板又は対向基板となる部分)である。なお、ウエハ100は、平面的に円形であることに限定されず、円周の一部が切り欠かれたオリフラを有する形状であってもよい。以下、ウエハ100に処理を施し、最終的に形成される液晶装置11の構造について説明する。
【0024】
<液晶装置の構成>
図2は、液晶装置の構造を示す模式平面図である。図3は、図2に示す液晶装置のA−A'線に沿う模式断面図である。以下、液晶装置の構造を、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0025】
図2及び図3に示すように、液晶装置11は、例えば、薄膜トランジスター(以下、「TFT(Thin Film Transistor)素子」と称する。)を画素のスイッチング素子として用いたTFTアクティブマトリクス方式の液晶装置である。液晶装置11は、一対の基板を構成する素子基板12と対向基板13とが、平面視略矩形枠状のシール材14を介して貼り合わされている。
【0026】
素子基板12及び対向基板13は、例えば、ガラスや石英などの透光性材料から構成されている。液晶装置11は、シール材14に囲まれた領域内に液晶層15が封入された構成になっている。なお、シール材14には液晶を注入するための注入口16が設けられ、注入口16は封止材17により封止されている。
【0027】
液晶層15としては、例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料が用いられる。液晶装置11は、シール材14の内周近傍に沿って遮光性材料からなる平面視矩形枠状の額縁遮光膜18が対向基板13に形成されており、この額縁遮光膜18の内側の領域が表示領域19となっている。
【0028】
額縁遮光膜18は、例えば、遮光性材料であるアルミ(Al)で形成されており、対向基板13側の表示領域19の外周を区画するように設けられている。
【0029】
表示領域19内には、画素領域21がマトリクス状に設けられている。画素領域21は、表示領域19の最小表示単位となる1画素を構成している。シール材14の外側の領域には、信号線駆動回路22及び外部接続端子23が素子基板12の一辺(図2における下側)に沿って形成されている。
【0030】
また、シール材14の内側の領域には、この一辺に隣接する二辺に沿って走査線駆動回路24がそれぞれ形成されている。素子基板12の残る一辺(図2における上側)には、検査回路25が形成されている。対向基板13側に形成された額縁遮光膜18は、例えば、素子基板12上に形成された走査線駆動回路24及び検査回路25に対向する位置(言い換えれば、平面的に重なる位置)に形成されている。
【0031】
一方、対向基板13の各角部(例えば、シール材14のコーナー部の4箇所)には、素子基板12と対向基板13との間の電気的導通をとるための上下導通端子26が配設されている。
【0032】
また、図3に示すように、素子基板12の液晶層15側には、複数の画素電極27が形成されており、これら画素電極27を覆うように第1配向膜28が形成されている。画素電極27は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる導電膜である。
【0033】
一方、対向基板13の液晶層15側には、格子状の遮光膜(BM:ブラックマトリクス)(図示せず)が形成され、その上に平面ベタ状の共通電極31が形成されている。そして、共通電極31上には、第2配向膜32が形成されている。共通電極31は、ITO等の透明導電材料からなる導電膜である。
【0034】
液晶装置11は透過型であって、素子基板12及び対向基板13における光の入射側と出射側とにそれぞれ偏光板(図示せず)等が配置されて用いられる。なお、液晶装置11の構成は、これに限定されず、反射型や半透過型の構成であってもよい。
【0035】
図4は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の電気的な構成を、図4を参照しながら説明する。
【0036】
図4に示すように、液晶装置11は、表示領域19を構成する複数の画素領域21を有している。各画素領域21には、それぞれ画素電極27が配置されている。また、画素領域21には、TFT素子33が形成されている。
【0037】
TFT素子33は、画素電極27へ通電制御を行うスイッチング素子である。TFT素子33のソース側には、信号線34が電気的に接続されている。各信号線34には、例えば、信号線駆動回路22(図2参照)から画像信号S1,S2,…,Snが供給されるようになっている。
【0038】
また、TFT素子33のゲート側には、走査線35が電気的に接続されている。走査線35には、例えば、走査線駆動回路24(図2参照)から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmが供給されるようになっている。また、TFT素子33のドレイン側には、画素電極27が電気的に接続されている。
【0039】
走査線35から供給された走査信号G1,G2,…,Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子33が一定期間だけオン状態となることで、信号線34から供給された画像信号S1,S2,…,Snが、画素電極27を介して画素領域21に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
【0040】
画素領域21に書き込まれた所定レベルの画像信号S1,S2,…,Snは、画素電極27と共通電極31(図2参照)との間で形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防止するために、画素電極27と容量線36との間に蓄積容量37が形成されている。
【0041】
このように、液晶層15に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより、液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶層15に入射した光が変調されて、画像光が生成されるようになっている。以下、クランプリングを用いて、液晶装置11となる前のウエハ100にエッチング処理を施すためのエッチング装置の構造について説明する。
【0042】
<エッチング装置の構成>
図5は、エッチング装置の構造を示す模式図である。図6は、エッチング装置の中に設けられたクランプリングの構造を示す模式図である。(a)は、クランプリングの構造を示す模式平面図である。(b)は、(a)に示すクランプリングのB−B'線に沿う模式断面図である。(c)は、(a)に示すクランプリングのC部を拡大して示す模式拡大図である。(d)は、(c)に示すクランプリングのD−D'線に沿う模式断面図である。以下、エッチング装置の構造及びクランプリングの構造について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0043】
図5に示すように、エッチング装置41は、例えば、平行平板型のRIE(reactive ion etching)装置である。エッチング装置41は、CVD装置等を用いてウエハ100に成膜された膜にエッチング処理(プラズマエッチング)を施し、TFT素子33などを形成するために用いられる。
【0044】
エッチング装置41は、チャンバー42と、チャンバー42内に処理ガス43を導入するガス供給管44と、チャンバー42内の処理ガス43を排気するガス排気管45と、チャンバー42内においてウエハ100を載置するステージとしての下部電極46と、下部電極46の上方に設けられた平板状の上部電極47とを備えている。上部電極47及び下部電極46は、例えば、高周波電源48a,48bに接続されている。
【0045】
ウエハ100は、ゲート51からチャンバー42内に供給され、下部電極46上に載置される。下部電極46上に載置されたウエハ100は、その周縁部100aがクランプリング61と下部電極46とによって固定されている。クランプリング61は、上下に可動することが可能になっている。なお、下部電極46の下側には、インシュレーター52が配置されている。
【0046】
なお、上部電極47の下側には、ヒーター53が設けられている。ヒーター53の下側には、天板54が設けられている。また、下部電極46におけるウエハ100と接触する面には、ウエハ100に温度を加えるためのガスを供給するガス供給管55と、このガスを排気するガス排気管56とが設けられている。なお、ガス排気管56には、ウエハ100を下部電極46から外すためのピン(図示せず)が挿入されている。
【0047】
エッチング装置41を用いたエッチング処理方法としては、まず、図5に示すように、チャンバー42内の下方に配置された下部電極46上にウエハ100を載置する。その後、クランプリング61が下降することにより、ウエハ100がクランプリング61と下部電極46とによって固定される。
【0048】
次に、ガス供給管44からチャンバー42内に処理ガス43を導入すると共に、ガス排気管45から処理ガス43を排気する。処理ガス43は、例えば、CF4(四フッ化メタン)やO2(酸素)である。次に、高周波電源48a,48bをオンしてチャンバー42内にプラズマを発生させることにより、ウエハ100にエッチング処理が施される。
【0049】
エッチング処理している際のウエハ100の温度は、例えば、70℃である。エッチング処理が終了すると、ウエハ100の温度は略0℃になる。このように、ウエハ100に温度差が生じたときに、ウエハ100に接触しているクランプリング61にも温度差が生じ、従来は、クランプリング61に付着しているデポ物65が熱応力によって剥がれやすくなる。以下、クランプリング61の構造について具体的に説明する。
【0050】
<クランプリングの構成>
図6に示すように、クランプリング61は、ウエハ100の周縁部100a全体を押さえるためにリング状に形成されている。具体的には、クランプリング61の中央に形成されている貫通孔62の領域が、ウエハ100に処理を施す領域となる。クランプリング61の内周径(貫通孔62の直径)は、例えば、197mmである。クランプリング61の幅Wは、例えば、40mmである。また、クランプリング61の厚みは、例えば、8mmである。
【0051】
クランプリング61におけるウエハ100と接触しない側の表面63全体には、ディンプル加工が施されている。具体的には、表面63に半球状の凹部64が複数形成されている。凹部64は、互いの間隔が略均一になるように配置されている。
【0052】
なお、本実施形態では、クランプリング61の円周方向Eにおける凹部64と凹部64との間隔X1,X2は、クランプリングの内側と外側とにおいて略同じ間隔になっている。半球状の凹部64の直径は、例えば、2mmである。凹部64の深さは、例えば、1mmである。
【0053】
このように、クランプリング61の表面63に複数の凹部64が設けられていることにより、表面63の表面積を増やすことが可能となり、例えば、クランプリング61の表面63に付着したデポ物65(不要な処理膜)が熱応力によって剥がれることを抑えることができる。
【0054】
また、半球状の凹部64を形成したことにより、クランプリング61とデポ物65との熱膨張率の差により熱応力が増えたとしても応力が集中することを抑えることができる。クランプリング61の材質は、例えば、石英である。石英の熱膨張率は、0.4〜0.55ppm/kである。また、デポ物65は、例えば、シリコンである。シリコン(単結晶)の熱膨張率は、3.43ppm/kである。このように、凹部64を設けることによって応力が集中することを抑えることにより、クランプリング61の表面63に付着したデポ物65が剥がれることを抑えることができる。
【0055】
また、半球状の凹部64が所定の間隔をあけて複数形成されているので、クランプリング61の表面63が鋭角な突起状とならず、エッチング処理などの場合、表面63が一緒に侵食されることを抑えることができる。よって、パーティクルが発生することを抑えることができる。
【0056】
また、凹部64が半球状であり、凹部64の平面方向の長さに対して深さ方向が長くならないことから、凹部64の中に付着したデポ物65を洗浄しやすくすることができる。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態のクランプリング61によれば、以下に示す効果が得られる。
【0058】
(1)本実施形態のクランプリング61によれば、クランプリング61の表面63に凹部64が設けられているので、表面63の面積(表面積)を多くすることが可能となり、表面63に付着するデポ物65が剥がれることを抑えることができる。また、従来のように、表面が突起状になっていることと比較して、ウエハ100に処理を施した際(例えば、エッチング処理)に、表面63が一緒に侵食されることを抑えることができる。また、クランプリング61における内側と外側の凹部64の間隔が同等なので、例えば、ウエハ100を介してクランプリング61に伝わる温度分布に対応して、デポ物65に生じる応力(デポ物65とクランプリング61との熱膨張率の差)を緩和させることができる。これにより、クランプリング61に付着したデポ物65が、エッチング処理や熱膨張率の差によって剥がれることを抑えることができる。
【0059】
(2)本実施形態のクランプリング61によれば、凹部64が半球状であるので、平面方向及び深さ方向における応力の集中を抑えることができる。また、突起状の部分が少ないのでエッチング処理などによって侵食されにくい。これにより、デポ物65がクランプリング61から剥がれることを抑えることができる。また、凹部64の深さが浅いので、凹部64に付着したデポ物65などを洗浄しやすくすることができる。
【0060】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0061】
(変形例1)
上記したように、クランプリング61の円周方向Eにおける凹部64と凹部64との距離は、内側と外側とにおいて略同等(等間隔)にすることに限定されず、以下のようにしてもよい。図7は、クランプリングの表面に形成された凹部周辺の構造を主に示す模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すクランプリングのF−F'線に沿う模式断面図である。
【0062】
図7に示すクランプリング161は、円周方向Eにおける凹部64と凹部64との間隔が、内側の間隔X1に対して外側の間隔X2が広くなっている。なお、凹部64と凹部64との間隔は、内側から外側に向かって除々に広がるようにしてもよい。
【0063】
これによれば、ウエハ100と接触する側(内側)の凹部64と凹部64との間隔が狭いので、内側の熱膨張率の差(デポ物65とクランプリング161)が外側に比べて大きい場合でも、デポ物65に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物65がクランプリング61から剥がれることを抑えることができる。
【0064】
なお、熱応力を緩和させる方法として、内側の間隔X1を狭くする方法とは別に、凹部64の穴径を小さくして、凹部64と凹部64との間隔を狭くするように(敷き詰めるように)してもよい。
【0065】
また、図7に示すクランプリング161の形態とは反対に、図8に示すクランプリング261のように、内側の間隔X1に対して外側の間隔X2が狭くなるように凹部64と凹部64とが配置されていてもよい。図8は、クランプリングの表面に形成された凹部周辺の構造を主に示す模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すクランプリングのG−G'線に沿う模式断面図である。これによれば、例えば、クランプリング261の外側に応力が集中する場合、付着したデポ物65に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物65がクランプリング261から剥がれることを抑えることができる。
【0066】
(変形例2)
上記したように、凹部64の形状は、半球状であることに限定されず、以下のような形状でもよい。図9及び図10は、クランプリングの表面の一部を拡大して示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図である。
【0067】
図9に示すクランプリング361は、凹部364の形状が円柱状になっている。なお、凹部364に付着したデポ物65を洗浄しやすくするために、直径の長さに対して深さが浅いことが望ましい。これによれば、平面的に円形状であり、かつ円柱状の溝となっているので、平面方向における応力の集中を抑えることができる。よって、デポ物65がクランプリング361から剥がれることを抑えることができる。
【0068】
図10に示すクランプリング461は、凹部464の形状が円錐状になっている。なお、上記と同様に、凹部464に付着したデポ物65を洗浄しやすくするために、直径の長さに対して深さが浅いことが望ましい。
【0069】
(変形例3)
上記したように、クランプリング61の表面63の表面積を増やすために凹部64を設けていることに限定されず、例えば、図11に示すクランプリング561のように、凸部564を形成するようにしてもよい。図11に示す凸部564は、半球状になっている。これによれば、表面63の面積(表面積)を増やすことが可能となり、付着したデポ物65が剥がれることを抑えることができる。
【0070】
(変形例4)
上記したように、凹部64と凹部64とを千鳥状に配置することに限定されず、例えば、図12に示すクランプリング661のように、クランプリング661の中心から外側に向かって広がるような放射状に配置されていてもよい。これによれば、内側の凹部64と凹部64との間隔が狭いので、内側の熱膨張率の差が外側に比べて大きい場合でも、デポ物65に加わる応力を緩和させることができる。
【符号の説明】
【0071】
11…液晶装置、12…素子基板、13…対向基板、14…シール材、15…液晶層、16…注入口、17…封止材、18…額縁遮光膜、19…表示領域、21…画素領域、22…信号線駆動回路、23…外部接続端子、24…走査線駆動回路、25…検査回路、26…上下導通端子、27…画素電極、28…第1配向膜、31…共通電極、32…第2配向膜、33…TFT素子、34…信号線、35…走査線、36…容量線、37…蓄積容量、41…エッチング装置、42…チャンバー、43…処理ガス、44…ガス供給管、45…ガス排気管、46…ステージとしての下部電極、47…上部電極、48a,48b…高周波電源、51…ゲート、52…インシュレーター、53…ヒーター、54…天板、55…ガス供給管、56…ガス排気管、61,161,261,361,461,561,661…クランプリング、62…貫通孔、63…表面、64,364,464…凹部、65…デポ物、100…ウエハ、100a…周縁部、564…凸部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハを固定するクランプリングに関する。
【背景技術】
【0002】
上記したクランプリングは、例えば、特許文献1や特許文献2に記載のように、液晶装置となる前のウエハに処理を施す際に、ウエハをステージに固定するために用いられる。クランプリングの使用方法としては、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いてウエハの全面に処理膜を成膜する。次に、ウエハの周縁部をクランプリングで挟んで固定し、成膜された処理膜の一部をエッチングしてパターニングする。
【0003】
しかし、エッチングした膜がデポ物としてクランプリングに付着し、ウエハに処理を行う過程でウエハの温度変化と共にクランプリングの温度も変化してデポ物に応力が加わり、クランプリングからデポ物が剥がれてウエハに付着するという問題があった。そこで、クランプリングの表面にブラスト加工を施して表面を粗くし、デポ物が付着する付着面積(表面積)を増やすことにより、クランプリングからデポ物が剥がれることを抑えていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−19088号公報
【特許文献2】特開平9−143716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面を粗くすることにより尖った部分が形成され、エッチング処理のときに尖った先端部分も一緒に侵食して剥がれ、剥がれたデポ物がウエハに付着するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るクランプリングは、ウエハをステージに固定するためのクランプリングであって、前記クランプリングにおける前記ウエハと接触しない側の表面には、凹部又は凸部が設けられており、前記クランプリングの内側における円周方向の前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングの外側における円周方向の間隔と比べて同等又は異なることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、クランプリングの表面に凹部又は凸部が設けられているので、クランプリングの表面の面積(表面積)を多くすることが可能となり、表面に付着するデポ物が剥がれることを抑えることができる。また、従来のように、表面が突起状になっていることと比較して、ウエハに処理を施した際(例えば、エッチング処理)に、表面が一緒に侵食されることを抑えることができる。また、クランプリングにおける内側と外側の凹部又は凸部の間隔が同等又は異なるので、例えば、ウエハを介してクランプリングに伝わる温度分布に対応して、デポ物に生じる応力(デポ物とクランプリングとの熱膨張率の差)を緩和させることができる。これにより、クランプリングに付着したデポ物が、エッチング処理や熱膨張率の差によって剥がれることを抑えることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記外側に比べて前記内側の方が同等又は狭いことが好ましい。
【0010】
この構成によれば、クランプリングの内側に熱が加えられたときのように、内側の熱膨張率の差(デポ物とクランプリング)が大きい場合、内側の間隔が同等又は狭いので、特に内側のデポ物に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記内側に比べて前記外側の方が同等又は狭いことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、例えば、外側に応力が集中する場合、外側の間隔が同等又は狭いので、特に外側のデポ物に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、平面的な形状が円形状であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、平面的に円形状なので、平面方向において応力が集中することを抑えることができる。よって、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、半球状であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、半球状であるので、平面方向及び深さ(高さ)方向における応力の集中を抑えることができる。また、突起状の部分が少ないのでエッチング処理などによって表面が侵食されにくい。これにより、デポ物がクランプリングから剥がれることを抑えることができる。
【0017】
[適用例6]上記適用例に係るクランプリングにおいて、前記凹部又は凸部は、平面的な方向の長さに対して高さ方向の長さが短いことが好ましい。
【0018】
この構成によれば、深さが浅いので、凹部又は凸部に付着したデポ物などを洗浄しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】クランプリングを用いて固定されるウエハの構成を示す模式平面図。
【図2】液晶装置の構造を示す模式平面図。
【図3】図2に示す液晶装置のA−A'線に沿う模式断面図。
【図4】液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図。
【図5】エッチング装置の構造を示す模式図。
【図6】エッチング装置の中に設けられたクランプリングの構造を示す模式図であり、(a)はクランプリングの構造を示す模式平面図、(b)は(a)に示すクランプリングのB−B'線に沿う模式断面図、(c)は(a)に示すクランプリングのC部を拡大して示す模式拡大図、(d)は(c)に示すクランプリングのD−D'線に沿う模式断面図。
【図7】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図8】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図9】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図10】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図11】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【図12】クランプリングの変形例の構造を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した実施形態について図面に従って説明する。なお、使用する図面は、説明する部分が認識可能な状態となるように、適宜拡大または縮小して表示している。
【0021】
<ウエハの構成>
図1は、クランプリングを用いて固定されるウエハの構成を示す模式平面図である。以下、ウエハの構成を、図1を参照しながら説明する。
【0022】
図1に示すように、ウエハ100は、例えば、液晶装置11(図2参照)を製造する際に用いられるものであり、液晶装置11を構成する一対の基板のうち一方の基板(例えば、素子基板)が複数個分、マトリクス状に面付けされる。ウエハ100の大きさは、例えば、8インチである。ウエハ100の厚みは、例えば、1.2mmである。ウエハ100の材質は、例えば、石英である。
【0023】
A部は、ウエハ100における1つの液晶装置11を構成する部分(四角形の素子基板又は対向基板となる部分)である。なお、ウエハ100は、平面的に円形であることに限定されず、円周の一部が切り欠かれたオリフラを有する形状であってもよい。以下、ウエハ100に処理を施し、最終的に形成される液晶装置11の構造について説明する。
【0024】
<液晶装置の構成>
図2は、液晶装置の構造を示す模式平面図である。図3は、図2に示す液晶装置のA−A'線に沿う模式断面図である。以下、液晶装置の構造を、図2及び図3を参照しながら説明する。
【0025】
図2及び図3に示すように、液晶装置11は、例えば、薄膜トランジスター(以下、「TFT(Thin Film Transistor)素子」と称する。)を画素のスイッチング素子として用いたTFTアクティブマトリクス方式の液晶装置である。液晶装置11は、一対の基板を構成する素子基板12と対向基板13とが、平面視略矩形枠状のシール材14を介して貼り合わされている。
【0026】
素子基板12及び対向基板13は、例えば、ガラスや石英などの透光性材料から構成されている。液晶装置11は、シール材14に囲まれた領域内に液晶層15が封入された構成になっている。なお、シール材14には液晶を注入するための注入口16が設けられ、注入口16は封止材17により封止されている。
【0027】
液晶層15としては、例えば、正の誘電率異方性を有する液晶材料が用いられる。液晶装置11は、シール材14の内周近傍に沿って遮光性材料からなる平面視矩形枠状の額縁遮光膜18が対向基板13に形成されており、この額縁遮光膜18の内側の領域が表示領域19となっている。
【0028】
額縁遮光膜18は、例えば、遮光性材料であるアルミ(Al)で形成されており、対向基板13側の表示領域19の外周を区画するように設けられている。
【0029】
表示領域19内には、画素領域21がマトリクス状に設けられている。画素領域21は、表示領域19の最小表示単位となる1画素を構成している。シール材14の外側の領域には、信号線駆動回路22及び外部接続端子23が素子基板12の一辺(図2における下側)に沿って形成されている。
【0030】
また、シール材14の内側の領域には、この一辺に隣接する二辺に沿って走査線駆動回路24がそれぞれ形成されている。素子基板12の残る一辺(図2における上側)には、検査回路25が形成されている。対向基板13側に形成された額縁遮光膜18は、例えば、素子基板12上に形成された走査線駆動回路24及び検査回路25に対向する位置(言い換えれば、平面的に重なる位置)に形成されている。
【0031】
一方、対向基板13の各角部(例えば、シール材14のコーナー部の4箇所)には、素子基板12と対向基板13との間の電気的導通をとるための上下導通端子26が配設されている。
【0032】
また、図3に示すように、素子基板12の液晶層15側には、複数の画素電極27が形成されており、これら画素電極27を覆うように第1配向膜28が形成されている。画素電極27は、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる導電膜である。
【0033】
一方、対向基板13の液晶層15側には、格子状の遮光膜(BM:ブラックマトリクス)(図示せず)が形成され、その上に平面ベタ状の共通電極31が形成されている。そして、共通電極31上には、第2配向膜32が形成されている。共通電極31は、ITO等の透明導電材料からなる導電膜である。
【0034】
液晶装置11は透過型であって、素子基板12及び対向基板13における光の入射側と出射側とにそれぞれ偏光板(図示せず)等が配置されて用いられる。なお、液晶装置11の構成は、これに限定されず、反射型や半透過型の構成であってもよい。
【0035】
図4は、液晶装置の電気的な構成を示す等価回路図である。以下、液晶装置の電気的な構成を、図4を参照しながら説明する。
【0036】
図4に示すように、液晶装置11は、表示領域19を構成する複数の画素領域21を有している。各画素領域21には、それぞれ画素電極27が配置されている。また、画素領域21には、TFT素子33が形成されている。
【0037】
TFT素子33は、画素電極27へ通電制御を行うスイッチング素子である。TFT素子33のソース側には、信号線34が電気的に接続されている。各信号線34には、例えば、信号線駆動回路22(図2参照)から画像信号S1,S2,…,Snが供給されるようになっている。
【0038】
また、TFT素子33のゲート側には、走査線35が電気的に接続されている。走査線35には、例えば、走査線駆動回路24(図2参照)から所定のタイミングでパルス的に走査信号G1,G2,…,Gmが供給されるようになっている。また、TFT素子33のドレイン側には、画素電極27が電気的に接続されている。
【0039】
走査線35から供給された走査信号G1,G2,…,Gmにより、スイッチング素子であるTFT素子33が一定期間だけオン状態となることで、信号線34から供給された画像信号S1,S2,…,Snが、画素電極27を介して画素領域21に所定のタイミングで書き込まれるようになっている。
【0040】
画素領域21に書き込まれた所定レベルの画像信号S1,S2,…,Snは、画素電極27と共通電極31(図2参照)との間で形成される液晶容量で一定期間保持される。なお、保持された画像信号S1,S2,…,Snがリークするのを防止するために、画素電極27と容量線36との間に蓄積容量37が形成されている。
【0041】
このように、液晶層15に電圧信号が印加されると、印加された電圧レベルにより、液晶分子の配向状態が変化する。これにより、液晶層15に入射した光が変調されて、画像光が生成されるようになっている。以下、クランプリングを用いて、液晶装置11となる前のウエハ100にエッチング処理を施すためのエッチング装置の構造について説明する。
【0042】
<エッチング装置の構成>
図5は、エッチング装置の構造を示す模式図である。図6は、エッチング装置の中に設けられたクランプリングの構造を示す模式図である。(a)は、クランプリングの構造を示す模式平面図である。(b)は、(a)に示すクランプリングのB−B'線に沿う模式断面図である。(c)は、(a)に示すクランプリングのC部を拡大して示す模式拡大図である。(d)は、(c)に示すクランプリングのD−D'線に沿う模式断面図である。以下、エッチング装置の構造及びクランプリングの構造について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0043】
図5に示すように、エッチング装置41は、例えば、平行平板型のRIE(reactive ion etching)装置である。エッチング装置41は、CVD装置等を用いてウエハ100に成膜された膜にエッチング処理(プラズマエッチング)を施し、TFT素子33などを形成するために用いられる。
【0044】
エッチング装置41は、チャンバー42と、チャンバー42内に処理ガス43を導入するガス供給管44と、チャンバー42内の処理ガス43を排気するガス排気管45と、チャンバー42内においてウエハ100を載置するステージとしての下部電極46と、下部電極46の上方に設けられた平板状の上部電極47とを備えている。上部電極47及び下部電極46は、例えば、高周波電源48a,48bに接続されている。
【0045】
ウエハ100は、ゲート51からチャンバー42内に供給され、下部電極46上に載置される。下部電極46上に載置されたウエハ100は、その周縁部100aがクランプリング61と下部電極46とによって固定されている。クランプリング61は、上下に可動することが可能になっている。なお、下部電極46の下側には、インシュレーター52が配置されている。
【0046】
なお、上部電極47の下側には、ヒーター53が設けられている。ヒーター53の下側には、天板54が設けられている。また、下部電極46におけるウエハ100と接触する面には、ウエハ100に温度を加えるためのガスを供給するガス供給管55と、このガスを排気するガス排気管56とが設けられている。なお、ガス排気管56には、ウエハ100を下部電極46から外すためのピン(図示せず)が挿入されている。
【0047】
エッチング装置41を用いたエッチング処理方法としては、まず、図5に示すように、チャンバー42内の下方に配置された下部電極46上にウエハ100を載置する。その後、クランプリング61が下降することにより、ウエハ100がクランプリング61と下部電極46とによって固定される。
【0048】
次に、ガス供給管44からチャンバー42内に処理ガス43を導入すると共に、ガス排気管45から処理ガス43を排気する。処理ガス43は、例えば、CF4(四フッ化メタン)やO2(酸素)である。次に、高周波電源48a,48bをオンしてチャンバー42内にプラズマを発生させることにより、ウエハ100にエッチング処理が施される。
【0049】
エッチング処理している際のウエハ100の温度は、例えば、70℃である。エッチング処理が終了すると、ウエハ100の温度は略0℃になる。このように、ウエハ100に温度差が生じたときに、ウエハ100に接触しているクランプリング61にも温度差が生じ、従来は、クランプリング61に付着しているデポ物65が熱応力によって剥がれやすくなる。以下、クランプリング61の構造について具体的に説明する。
【0050】
<クランプリングの構成>
図6に示すように、クランプリング61は、ウエハ100の周縁部100a全体を押さえるためにリング状に形成されている。具体的には、クランプリング61の中央に形成されている貫通孔62の領域が、ウエハ100に処理を施す領域となる。クランプリング61の内周径(貫通孔62の直径)は、例えば、197mmである。クランプリング61の幅Wは、例えば、40mmである。また、クランプリング61の厚みは、例えば、8mmである。
【0051】
クランプリング61におけるウエハ100と接触しない側の表面63全体には、ディンプル加工が施されている。具体的には、表面63に半球状の凹部64が複数形成されている。凹部64は、互いの間隔が略均一になるように配置されている。
【0052】
なお、本実施形態では、クランプリング61の円周方向Eにおける凹部64と凹部64との間隔X1,X2は、クランプリングの内側と外側とにおいて略同じ間隔になっている。半球状の凹部64の直径は、例えば、2mmである。凹部64の深さは、例えば、1mmである。
【0053】
このように、クランプリング61の表面63に複数の凹部64が設けられていることにより、表面63の表面積を増やすことが可能となり、例えば、クランプリング61の表面63に付着したデポ物65(不要な処理膜)が熱応力によって剥がれることを抑えることができる。
【0054】
また、半球状の凹部64を形成したことにより、クランプリング61とデポ物65との熱膨張率の差により熱応力が増えたとしても応力が集中することを抑えることができる。クランプリング61の材質は、例えば、石英である。石英の熱膨張率は、0.4〜0.55ppm/kである。また、デポ物65は、例えば、シリコンである。シリコン(単結晶)の熱膨張率は、3.43ppm/kである。このように、凹部64を設けることによって応力が集中することを抑えることにより、クランプリング61の表面63に付着したデポ物65が剥がれることを抑えることができる。
【0055】
また、半球状の凹部64が所定の間隔をあけて複数形成されているので、クランプリング61の表面63が鋭角な突起状とならず、エッチング処理などの場合、表面63が一緒に侵食されることを抑えることができる。よって、パーティクルが発生することを抑えることができる。
【0056】
また、凹部64が半球状であり、凹部64の平面方向の長さに対して深さ方向が長くならないことから、凹部64の中に付着したデポ物65を洗浄しやすくすることができる。
【0057】
以上詳述したように、本実施形態のクランプリング61によれば、以下に示す効果が得られる。
【0058】
(1)本実施形態のクランプリング61によれば、クランプリング61の表面63に凹部64が設けられているので、表面63の面積(表面積)を多くすることが可能となり、表面63に付着するデポ物65が剥がれることを抑えることができる。また、従来のように、表面が突起状になっていることと比較して、ウエハ100に処理を施した際(例えば、エッチング処理)に、表面63が一緒に侵食されることを抑えることができる。また、クランプリング61における内側と外側の凹部64の間隔が同等なので、例えば、ウエハ100を介してクランプリング61に伝わる温度分布に対応して、デポ物65に生じる応力(デポ物65とクランプリング61との熱膨張率の差)を緩和させることができる。これにより、クランプリング61に付着したデポ物65が、エッチング処理や熱膨張率の差によって剥がれることを抑えることができる。
【0059】
(2)本実施形態のクランプリング61によれば、凹部64が半球状であるので、平面方向及び深さ方向における応力の集中を抑えることができる。また、突起状の部分が少ないのでエッチング処理などによって侵食されにくい。これにより、デポ物65がクランプリング61から剥がれることを抑えることができる。また、凹部64の深さが浅いので、凹部64に付着したデポ物65などを洗浄しやすくすることができる。
【0060】
なお、実施形態は上記に限定されず、以下のような形態で実施することもできる。
【0061】
(変形例1)
上記したように、クランプリング61の円周方向Eにおける凹部64と凹部64との距離は、内側と外側とにおいて略同等(等間隔)にすることに限定されず、以下のようにしてもよい。図7は、クランプリングの表面に形成された凹部周辺の構造を主に示す模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すクランプリングのF−F'線に沿う模式断面図である。
【0062】
図7に示すクランプリング161は、円周方向Eにおける凹部64と凹部64との間隔が、内側の間隔X1に対して外側の間隔X2が広くなっている。なお、凹部64と凹部64との間隔は、内側から外側に向かって除々に広がるようにしてもよい。
【0063】
これによれば、ウエハ100と接触する側(内側)の凹部64と凹部64との間隔が狭いので、内側の熱膨張率の差(デポ物65とクランプリング161)が外側に比べて大きい場合でも、デポ物65に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物65がクランプリング61から剥がれることを抑えることができる。
【0064】
なお、熱応力を緩和させる方法として、内側の間隔X1を狭くする方法とは別に、凹部64の穴径を小さくして、凹部64と凹部64との間隔を狭くするように(敷き詰めるように)してもよい。
【0065】
また、図7に示すクランプリング161の形態とは反対に、図8に示すクランプリング261のように、内側の間隔X1に対して外側の間隔X2が狭くなるように凹部64と凹部64とが配置されていてもよい。図8は、クランプリングの表面に形成された凹部周辺の構造を主に示す模式図であり、(a)は平面図であり、(b)は(a)に示すクランプリングのG−G'線に沿う模式断面図である。これによれば、例えば、クランプリング261の外側に応力が集中する場合、付着したデポ物65に加わる応力を緩和させることができる。よって、デポ物65がクランプリング261から剥がれることを抑えることができる。
【0066】
(変形例2)
上記したように、凹部64の形状は、半球状であることに限定されず、以下のような形状でもよい。図9及び図10は、クランプリングの表面の一部を拡大して示す模式図であり、(a)は模式平面図、(b)は模式断面図である。
【0067】
図9に示すクランプリング361は、凹部364の形状が円柱状になっている。なお、凹部364に付着したデポ物65を洗浄しやすくするために、直径の長さに対して深さが浅いことが望ましい。これによれば、平面的に円形状であり、かつ円柱状の溝となっているので、平面方向における応力の集中を抑えることができる。よって、デポ物65がクランプリング361から剥がれることを抑えることができる。
【0068】
図10に示すクランプリング461は、凹部464の形状が円錐状になっている。なお、上記と同様に、凹部464に付着したデポ物65を洗浄しやすくするために、直径の長さに対して深さが浅いことが望ましい。
【0069】
(変形例3)
上記したように、クランプリング61の表面63の表面積を増やすために凹部64を設けていることに限定されず、例えば、図11に示すクランプリング561のように、凸部564を形成するようにしてもよい。図11に示す凸部564は、半球状になっている。これによれば、表面63の面積(表面積)を増やすことが可能となり、付着したデポ物65が剥がれることを抑えることができる。
【0070】
(変形例4)
上記したように、凹部64と凹部64とを千鳥状に配置することに限定されず、例えば、図12に示すクランプリング661のように、クランプリング661の中心から外側に向かって広がるような放射状に配置されていてもよい。これによれば、内側の凹部64と凹部64との間隔が狭いので、内側の熱膨張率の差が外側に比べて大きい場合でも、デポ物65に加わる応力を緩和させることができる。
【符号の説明】
【0071】
11…液晶装置、12…素子基板、13…対向基板、14…シール材、15…液晶層、16…注入口、17…封止材、18…額縁遮光膜、19…表示領域、21…画素領域、22…信号線駆動回路、23…外部接続端子、24…走査線駆動回路、25…検査回路、26…上下導通端子、27…画素電極、28…第1配向膜、31…共通電極、32…第2配向膜、33…TFT素子、34…信号線、35…走査線、36…容量線、37…蓄積容量、41…エッチング装置、42…チャンバー、43…処理ガス、44…ガス供給管、45…ガス排気管、46…ステージとしての下部電極、47…上部電極、48a,48b…高周波電源、51…ゲート、52…インシュレーター、53…ヒーター、54…天板、55…ガス供給管、56…ガス排気管、61,161,261,361,461,561,661…クランプリング、62…貫通孔、63…表面、64,364,464…凹部、65…デポ物、100…ウエハ、100a…周縁部、564…凸部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエハをステージに固定するためのクランプリングであって、
前記クランプリングにおける前記ウエハと接触しない側の表面には、凹部又は凸部が設けられており、
前記クランプリングの内側における円周方向の前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングの外側における円周方向の間隔と比べて同等又は異なることを特徴とするクランプリング。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプリングであって、
前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記外側に比べて前記内側の方が同等又は狭いことを特徴とするクランプリング。
【請求項3】
請求項1に記載のクランプリングであって、
前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記内側に比べて前記外側の方が同等又は狭いことを特徴とするクランプリング。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、平面的な形状が円形状であることを特徴とするクランプリング。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、半球状であることを特徴とするクランプリング。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、平面的な方向の長さに対して高さ方向の長さが短いことを特徴とするクランプリング。
【請求項1】
ウエハをステージに固定するためのクランプリングであって、
前記クランプリングにおける前記ウエハと接触しない側の表面には、凹部又は凸部が設けられており、
前記クランプリングの内側における円周方向の前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングの外側における円周方向の間隔と比べて同等又は異なることを特徴とするクランプリング。
【請求項2】
請求項1に記載のクランプリングであって、
前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記外側に比べて前記内側の方が同等又は狭いことを特徴とするクランプリング。
【請求項3】
請求項1に記載のクランプリングであって、
前記円周方向における前記凹部又は凸部の間隔は、前記クランプリングにおける前記内側に比べて前記外側の方が同等又は狭いことを特徴とするクランプリング。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、平面的な形状が円形状であることを特徴とするクランプリング。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、半球状であることを特徴とするクランプリング。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載のクランプリングであって、
前記凹部又は凸部は、平面的な方向の長さに対して高さ方向の長さが短いことを特徴とするクランプリング。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−199266(P2012−199266A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60467(P2011−60467)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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