説明

クリップ

【課題】本発明は、被取付部材に取付部材を取り付ける際に、クリップを間に介在させることによって、取付工数を低減させるとともに、寸法誤差あるいは形状の異なる部材に対する取付性を向上させることができるクリップに関するものである。
【解決手段】本発明のクリップは、取付部材と被取付部材との間に介在され、前記両者を保持固定するものであり、第1係止部、第2係止部、およびこれらを連結する連結手段から少なくとも構成されている。前記第1係止部は、クリップを前記被取付部材に取り付けるために、少なくとも複数個の第1係合手段が設けられている。前記第2係止部は、たとえば、前記第1係止部と係止方向が異なる面で、かつ、軸線方向が異なり、前記取付部材と被取付部材を同時に取り付ける第2係合手段が設けられている。前記連結手段は、前記第1係止部と前記第2係止部との間で撓みおよび回動が可能なように連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被取付部材に取付部材を取り付ける際に、クリップを間に介在させることによって、取付工数を低減させるとともに、寸法誤差あるいは形状の異なる部材に対する取付性を向上させることができるクリップに関するものである。また、本発明は、取付部材であるバンパー、および被取付部材であるボディーの組み立てに使用する部品点数および工数を低減するクリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のクリップは、たとえば、特開平8−230587号公報に記載されているように、バンパー側部の先端が車体のホイールアーチ部に沿うように合成樹脂製部材により形成されている。車両用バンパーは、バンパー側部の先端に一体的に形成されているヒンジ部と、前記ヒンジ部に一体的に形成されるとともに、車体に一部が係止されている車体ホイールアーチ部と、バンパー側部間の間隙を覆うエクステンション部とから構成されている。
【0003】
また、実開平6−45870号公報に記載されているバンパー構造は、バンパーフェイスの上端縁部に切り欠き部を有するリブを設けるとともに、突条に上方へ突出する突片を薄肉ヒンジ部を介して設けられている。前記突片は、切り欠き部を挿通可能で、かつ、リテーナーの貫通孔の縁部に係止可能な係合突起が設けられている。前記リテーナーは、リブの内面に、突片が薄肉ヒンジ部において回動することによって係合突起が切り欠き部を挿通し、かつ、貫通孔の縁部に係止された状態で結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−230587号公報
【特許文献2】実開平6−45870号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来例におけるクリップは、ヒンジ部を設けることによって、部品点数を低減し、組み立てを容易にしている。また、従来例におけるクリップは、ヒンジ部を曲げるだけで、容易に取り付けができる。しかし、取付部材および被取付部材との間にクリップを介在させた取り付けは、前記取付部材の正面に孔を開けることができない場合が多く、側部で取り付けられていた。前記側部における取付部材、被取付部材、およびクリップからなる三者の取付部は、単に、被取付部材にクリップを介して取付部材を取り付ける第1係止部からヒンジにより第2係止部に連結する際に、ネジの軸方向が異なるという問題があった。特に、前記クリップは、ボディーとバンパーの間において、三者を共締めする際に、係合する部分をヒンジにより一体にすることが困難であった。
【0006】
以上のような課題を解決するために、本発明は、取付部材、クリップ、および被取付部材を、前記クリップに連結されている第2係合部により、一体に取り付けることができ、かつ、部品点数、組立工数、および前記三者の寸法誤差の吸収を同時に解決することができるクリップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(第1発明)
第1発明のクリップは、取付部材と被取付部材との間に介在され、前記両者を保持固定するものであり、前記被取付部材に取り付けるための少なくとも複数個の第1係合手段が設けられている第1係止部と、前記第1係止部と係止方向が異なるとともに、前記取付部材と被取付部材を同時に取り付ける第2係合手段が設けられている第2係止部と、前記第1係止部と前記第2係止部との間で撓みおよび回動可能に連結されている連結手段とから少なくとも構成されている。
【0008】
(第2発明)
第2発明のクリップにおいて、前記連結手段は、ヒンジであることを特徴とする。
【0009】
(第3発明)
第3発明のクリップにおいて、前記第1係止部および第2係止部に設けられた第1係合手段および第2係合手段は、少なくとも一つのネジを挿入して締め付けるグロメットからなることを特徴とする。
【0010】
(第4発明)
第4発明のクリップにおいて、前記第1係止部および第2係止部に設けられた第1および第2係合手段の係止方向は、互いにほぼ90度異なる軸線方向に設けられていることを特徴とする。
【0011】
(第5発明)
第5発明のクリップにおいて、前記取付部材は、自動車用バンパーであり、被取付部材は、車両本体であって、前記車両本体に前記自動車用バンパーを取り付けることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、取付部材、クリップ、および被取付部材を共締めする際に、クリップに連設されている連結手段により、撓ませ、あるいは必要に応じて、回動させることにより、それぞれの寸法誤差を吸収することができる。
【0013】
本発明によれば、クリップによる前記三者の共締め方向と、被取付部材に取り付ける方向の違いにより、異なる方向に応力を分散させて、経年変化による劣化を減少させることができる。
【0014】
本発明によれば、前記三者における寸法によるバラツキを吸収することができるとともに、前記クリップにおける第1係止部および第2係止部が連結手段によって連結されているため、部品点数を低減するとともに、組み立ての際の工数を減らすことができる。
【0015】
本発明によれば、第1係止部および第2係止部に設けられた係合手段に、ネジを挿入して締め付けるグロメットとすることで、防水性および振動による騒音防止の役割を果たすのみならず、ワッシャを用いずに堅固な固定が可能である。
【0016】
本発明によれば、前記グロメットは、前記第2係止部に対して傾斜した方向に設けることにより、前記連結手段の部分を所定角度に曲げた状態で取付部材の孔に真っ直ぐに入れることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(イ)は本発明の実施例であるクリップの平面図、(ロ)は正面図、(ハ)は底面図、(ニ)は背面図である。(実施例1)
【図2】本発明の実施例であるクリップを使用した車体、クリップ、バンパーの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施例において、車体、クリップ、およびバンパーの組立平面図である。
【図4】本発明の実施例において、クリップの使用状態拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1発明)
第1発明のクリップは、取付部材と被取付部材との間に介在され、前記両者を保持固定するものであり、第1係止部、第2係止部、およびこれらを連結する連結手段から少なくとも構成されている。前記第1係止部は、クリップを前記被取付部材に取り付けるために、少なくとも複数個の第1係合手段が設けられている。前記第2係止部は、たとえば、前記第1係止部と係止方向が異なる面で、かつ、軸線方向が異なり、前記取付部材と被取付部材を同時に取り付ける第2係合手段が設けられている。前記連結手段は、前記第1係止部と前記第2係止部との間で撓みおよび回動が可能なように連結されている。
【0019】
最初、クリップは、前記第1係止部に設けられた複数の第1係合手段によって被取付部材に取り付けられる。前記取付部材は、たとえば、先端部を前記クリップに係合させるとともに、ネジ等によって第2係合部に取り付けられる。前記第2係合部は、前記連結手段により撓ませ、あるいは必要に応じて、回動させて、被取付部材と取付部材とを共締めすることができる。前記クリップは、方向違いの係合部にネジ止めすることができるため、応力を分散させて経年変化を少なくすることができる。また、前記クリップにおける連結手段は、取り付け孔の寸法によるバラツキを吸収することができる。さらに、前記クリップは、第1係止部および第2係止部が連結手段によって連結されているため、部品点数を低減するとともに、組み立ての際の工数を減らすことができる。
【0020】
また、第2係止部は、取付部材の先端部が前記クリップに係合させることができるように、取付部材係合受入部が第1係止部と同様に設けられている。さらに、前記第2係止部は、取付部材および被取付部材との間に挿入されて、取付部材、クリップ、および被取付部材の三者を共締めできる形状になっている。前記取付部材係合受入部は、前記取付部材が受け入れた後、抜け止めの爪を設けることができる。
【0021】
(第2発明)
第2発明のクリップにおいて、第1係合部および第2係合部を連結する前記連結手段は、たとえば、合成樹脂製部材からなるヒンジとすることで、組み立てにおいて、取付部材、クリップ、および被取付部材における各部の寸法誤差を吸収することができる。
【0022】
(第3発明)
第3発明のクリップにおいて、前記第1係止部および第2係止部に設けられた係合手段は、ネジを挿入して締め付けるグロメットである。前記グロメットは、たとえば、ネジ孔を有する二つに割れた凸起部からなる弾力を有する合成樹脂製等からなり、防水性および振動による騒音防止の役割を果たすのみならず、ワッシャを用いずに堅固な固定が可能である。また、前記第2係止部に設けられた係合手段であるグロメットは、前記第2係止部に対して傾斜した方向に設けることもできる。前記傾斜した係合手段は、前記連結手段の部分を所定角度に曲げた状態で取付部材の孔に真っ直ぐに入ることができる。
【0023】
(第4発明)
第4発明のクリップにおいて、前記第1係止部および第2係止部における係合手段の係止方向は、ほぼ90度異なる軸線方向に設けられる。前記係止方向は、ほぼ90度異なっていれば、同じ面または異なる面のいずれでも良い。
【0024】
(第5発明)
第5発明のクリップは、車両本体に自動車用バンパーを取り付けるものであり、組み立て工数、寸法誤差の吸収、あるいは、振動に対する遮音および防水性を向上させることができるものである。
【実施例】
【0025】
図1(イ)は本発明の実施例であるクリップの平面図、(ロ)は正面図、(ハ)は底面図、(ニ)は背面図である。図2は本発明の実施例であるクリップを使用した車体、クリップ、バンパーの分解斜視図である。図3は本発明の実施例において、車体、クリップ、およびバンパーの組立平面図である。図2および図3において、本発明のクリップ11は、たとえば、車体のボディー等からなる被取付部材21と、バンパー等からなる取付部材31との間に介在され、前記これらの三者を保持固定するものである。
【0026】
図1において、前記クリップ11は、第1係止部12が成形されている本体121と、第2係止部13と、前記本体121に連結する連結手段14とから少なくとも構成され、それぞれが一体に成形されている。前記第1係止部12は、クリップ11を前記ボディー21に取り付けるために、少なくとも複数個の第1係合手段122が設けられている。前記第2係止部13は、たとえば、前記第1係止部12と係止方向が異なる面で、かつ、取り付け孔の軸線方向が異なり、前記バンパー31とボディー21を同時に取り付ける第2係合手段132が設けられている。
【0027】
前記連結手段14は、前記第1係止部12と前記本体121との間で撓み、および回動が可能なように、たとえば、弾力を有する合成樹脂製部材によって、連結されている。最初、クリップ11は、前記第1係止部12に設けられた複数の第1係合手段122によってボディー21に取り付けられる。前記バンパー31は、たとえば、直角に折り曲げられた係合端部312(図3参照)の先端部を前記クリップ11に設けられたバンパー係合受入部123(図1参照)に当接するように係合させる。また、位置決手段126は、クリップ11をボディー21に取り付ける際の位置決めとするとともに、爪片を設け、前記クリップ11をボディー21に取り付けた後、外れないような形状に成形されている。
【0028】
また、前記バンパー31の折り曲げられた係合端部312は、前記バンパー係合受入部123に当接する前に、前記クリップ11において、前記前記バンパー係合受入部123と同じ面に、抜け止め爪124を越えることにより、一旦、係合した後、係合が外れないようになっている。前記クリップ11の前記第2係合部13は、前記連結手段14により撓ませ、あるいは必要に応じて、回動させて、ボディー21とバンパー31に共締めすることができる。
【0029】
前記クリップ11は、軸方向が異なる係合部にネジ止めすることができるため、応力を分散させて、固定部における経年変化を少なくすることができる。また、前記クリップ11における連結手段14は、取り付け孔または取り付け部の寸法によるバラツキを吸収することができる。さらに、前記クリップ11は、第1係止部12および第2係止部13が連結手段14によって連結されているため、部品点数を低減するとともに、組み立ての際の工数を減らすことができる。
【0030】
また、第2係止部13は、本体131にバンパー31に設けられた取付部314を受け入れるバンパー挿入部133と、第2係合手段132とから少なくとも構成されている。バンパー31の端部に成形された係合端部312および係合孔313は、前記クリップ11に設けられたバンパー係合受入部123および抜け止め爪124に係合させることができる。さらに、前記第2係止部13に設けられたグロメット135は、バンパー31の係合端部312と同じ平面に突出して設けられた取付部314の取付孔315、およびボディー21の端部に設けられたボディー取付部213のボディー係合孔214との間に挿入されて、バンパー31、クリップ11、およびボディー21の三者を共締めする。
【0031】
なお、前記クリップ11は、第1係合部12および第2係合部13を連結する前記連結手段14をたとえば、弾性を有する合成樹脂製部材からなるヒンジとすることで、組み立ての際における、バンパー31、クリップ11、およびボディー21における各部の寸法誤差を吸収するだけでなく、組み立てを容易にすることができる。
【0032】
前記第1係止部12に設けられた複数個からなる第1係合手段122は、ボディー21に嵌合させた後、ネジを挿入して締め付けるグロメット125から構成することができる。前記グロメット125は、たとえば、ネジ孔122′を有する二つに割れた凸起部からなる合成樹脂製等である。また、第2係止部13に設けられた第2係合手段132は、バンパー31の係合端部312を挿入するバンパー挿入部133が成形されているとともに、前記バンパー挿入部133と直角方向にグロメット135が成形されている。
【0033】
図4は本発明の実施例において、クリップの使用状態拡大図である。図1および図4において、前記グロメット125およびグロメット135は、クリップ11、ボディー21、およびバンパー31を堅固に取り付けることができるとともに、取付部における防水性および振動による騒音防止の役割を果たすのみならず、ワッシャを用いずに堅固な固定が可能である。
【0034】
また、前記第2係止部13に設けられた第2係合手段132であるグロメット135は、前記第2係止部13の面に対して傾斜した方向に設けることもできる。前記傾斜して設けられたグロメット135は、前記連結手段14の部分を所定角度に曲げた状態でボディー21およびバンパー31の孔に対して真っ直ぐに挿入することができる。
【0035】
前記クリップ11は、前記第1係止部12および第2係止部13における係合手段の係止方向を、ほぼ90度異なる軸線方向に設けられている。前記係止方向は、ほぼ90度異なっていれば、同じ面または異なる面のいずれに設けることもできる。
【0036】
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではない。そして、本発明は、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱することがなければ、種々の設計変更を行うことが可能である。本発明のクリップは、特許請求の範囲に記載された事項を逸脱しないかぎり、クリップ、ボディーおよびバンパーとともに、各部の形状を変更することができることはいうまでもないことである。
【符号の説明】
【0037】
11・・・クリップ
12・・・第1係止部
121・・・本体
122・・・第1係合手段
123・・・バンパー係合受入部
124・・・抜け止め爪
125・・・グロメット
126・・・位置決手段
13・・・第2係止部
131・・・本体
132・・・第2係合手段
133・・・バンパー挿入部
135・・・グロメット
14・・・連結部
21・・・ボディー
211・・・本体
212・・・バンパー取付部
213・・・取付ネジ孔
31・・・バンパー
311・・・バンパー本体
312・・・係合端部
313・・・係合孔
314・・・取付部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取付部材と被取付部材との間に介在され、前記両者を保持固定するクリップにおいて、
前記被取付部材に取り付けるための少なくとも複数個の第1係合手段が設けられている第1係止部と、
前記第1係止部と係止方向が異なるとともに、前記取付部材と被取付部材を同時に取り付ける第2係合手段が設けられている第2係止部と、
前記第1係止部と前記第2係止部との間で撓みおよび回動可能に連結されている連結手段と、
から少なくとも構成されていることを特徴とするクリップ。
【請求項2】
前記連結手段は、ヒンジであることを特徴とする請求項1に記載されたクリップ。
【請求項3】
前記第1係止部および第2係止部に設けられた第1係合手段および第2係合手段は、少なくとも一つのネジを挿入して締め付けるグロメットからなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載されたクリップ。
【請求項4】
前記第1係止部および第2係止部に設けられた第1および第2係合手段の係止方向は、互いにほぼ90度異なる軸線方向に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載されたクリップ。
【請求項5】
前記取付部材は、自動車用バンパーであり、被取付部材は、車両本体であって、前記車両本体に前記自動車用バンパーを取り付けることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載されたクリップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−241159(P2010−241159A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89009(P2009−89009)
【出願日】平成21年4月1日(2009.4.1)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】