クリーニングブレードを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジ
【課題】 球形トナーを用いた場合であっても、クリーニングブレードと像担持体表面との当接部分を一度に多くのトナーがすり抜けを抑制し、良好なクリーニングを行うことができる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】 クリーニングブレード20の断面の形態が概ね凸形状となるように、ほぼ中央部に肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとする。そして、金属支持板3がブレード根元側肉薄部20βのブレード側面に密着するように接着し、肉厚部20γの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着した形状とする。さらに、クリーニングブレード2の23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下、感光体ドラム1との当接部における線圧が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下の範囲内とする。
【解決手段】 クリーニングブレード20の断面の形態が概ね凸形状となるように、ほぼ中央部に肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとする。そして、金属支持板3がブレード根元側肉薄部20βのブレード側面に密着するように接着し、肉厚部20γの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着した形状とする。さらに、クリーニングブレード2の23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下、感光体ドラム1との当接部における線圧が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下の範囲内とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体等の像担持体上に付着した球形トナーをクリーニングブレードによってクリーニングする複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置及びこれに用いるプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、転写工程後の像担持体表面に残留した転写残トナーをクリーニングブレードで掻き取ってクリーニングするものが広く知られている。このクリーニングブレードとしては、金属製のもの、ウレタンゴムなどの弾性材で形成されたものが知られている。前者のクリーニングブレードは、像担持体表面との当接部分が変形しにくいため、像担持体表面に当接するブレード先端部の加工精度が低い場合や像担持体表面の微小な凹凸がある場合には、ブレード先端部と像担持体表面との間を密着させることができない。そのため。ブレード先端部と像担持体表面との当接部分に微小な隙間が形成されてしまう。このような微小な隙間があると、その隙間を通じてトナーがすり抜け、クリーニング不良が生じやすい。これに対し、後者のクリーニングブレードは、像担持体表面との当接部分が像担持体表面に沿って変形するため、ブレード先端部の加工精度が多少低くても、また像担持体表面に微小な凹凸があっても、像担持体表面と密着することができる。よって、前者のクリーニングブレードに比べて、トナーがすり抜けにくくクリーニング性能に優れていると言える。したがって、クリーニングブレードとしては、ゴムなどの弾性材で形成されたものが広く実用化されている。
【0003】
また、近年、電子写真方式の画像形成装置の画像品質に対する要求が強くなっている。画像品質を向上させる為には、トナーの小粒径化、球形化がその有力な手段であり、重合法等により形成された球形に近いトナー(以下、「球形トナー」という。)を用いることとが主流となりつつある。この球形トナーは、従来の粉砕トナー(異形トナー)に比べて転写効率が高いなどの特徴があり、近年の高画質化の要求に応えることが可能であることが知られている。しかし、球形トナーは、従来の粉砕トナーをクリーニングするためのクリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。
ここで、従来からのクリーニングブレードによるクリーニングについて説明する。クリーニングブレードは、像担持体の回転方向に対してカウンタ方向に当接しており、転写工程後に像担持体上に残留した転写残トナーがクリーニングブレードのエッジ部に達すると、これを像担持体上から掻き落す。
クリーニングブレードにはウレタンゴムのような弾性体を用いることから、弾性体と像担持体だけでは非常に高い摩擦係数となり、そのままでは、クリーニングブレードは像担持体に対して滑ることが出来ず、ブレードの巻き込みやビビリが発生してしまう。しかしながら、電子写真装置で用いられる現像剤や、現像剤の帯電制御、流動性制御の為に添加される小粒径の微粉体がブレードと像担持体の間に介在することにより、像担持体がクリーニングブレードに対して摺動可能となる。また、クリーニングブレードによって像担持体上から掻き落された転写残トナーの一部は像担持体の回転によって、ブレードエッジに滞留する。ブレードエッジに転写残トナーが滞留することによって、クリーニングブレードと像担持体との間に働く摩擦力が低下することにより、クリーニングブレードのメクレなどのない安定したクリーニング性が得られる。
一方、球形トナーを用いた場合には、ブレードエッジに球形トナーが滞留することが出来ず、クリーニングブレードと像担持体との間に働く摩擦力を低減することが出来なくなる。摩擦力が低減されないと、像担持体表面が削れて粉体が発生し、その削れた粉体がクリーニングブレードと像担持体との当接部に凝集し、この当接部が不安定になりトナーのすり抜けが発生する。
【0004】
特許文献1には、形状係数SF−1が100〜140でかつ形状係数SF−2が100〜120である真円度の高い球形トナーを用い、これを像担持体表面移動方向に対してカウンタ方向に当接させたクリーニングブレードによってクリーニングする画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、球形トナーを用いた場合にクリーニングブレードと像担持体表面との当接部分で発生するトナーのすり抜けを抑制するために、各種パラメータの数値範囲を規定している。具体的には、クリーニングブレードと像担持体表面との当接部分の線圧を、20[gf/cm]〜60[gf/cm](0.196[N/cm]〜0.588[N/cm])未満としている。また、クリーニングブレードの硬度は50〜80[°]であり、その反発弾性は10〜50[%]である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−312191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、本発明者らによる鋭意研究の結果、特許文献1に記載されているように線圧が60[gf/cm](0.588N/cm)未満では、上述した球形トナーのすり抜けを十分に阻止できず、クリーニング不良の発生を十分に抑制できないことが判明した。そこで、本発明者らは、球形トナーのすり抜けによるクリーニング不良の発生メカニズムを独自に解明すべく種々の実験を行った。そして、このクリーニング不良の発生メカニズムは次のようなものであるとの結論に達した。以下、そのメカニズムについて説明する。
【0007】
図12は、像担持体としての感光体ドラム1に対する弾性ブレードとしてのクリーニングブレード2の配置を説明するための図である。このクリーニングブレード2は、感光体ドラム1の表面移動方向Aに対してその先端部分がカウンタ方向となるように感光体ドラム1表面に当接している。このときの初期接触角度はθであり、かつ、その食込み量はdである。ここで、「初期接触角」とは、次のように定義されるものである。すなわち、感光体ドラム1の軸方向から見て、感光体ドラム1が無いとしたときにクリーニングブレード2先端部分(図中二点鎖線)の感光体ドラム1表面移動方向Aの下流側側面(以下、単に「下流側側面」という。)2aが位置することになる仮想線Fと、感光体ドラム1の表面との交点Cにおける感光体ドラム1表面部分の接線Gをとる。そして、この接線Gと仮想線Fとのなす角θを、初期接触角と定義する。また、「食込み量」とは、次のように定義されるものである。すなわち、感光体ドラム1の軸方向から見て、接線Gと、感光体ドラム1が無いとしたときに、弾性ブレードの先端稜線であるクリーニングブレード2先端面の感光体ドラム表面移動方向Aの下流側縁部(以下、単に「ブレードエッジ」という。)2bが位置することになる仮想点を通る接線Gに平行な仮想線Hとの距離dを、食込み量と定義する。このようなクリーニングブレード2の配置を実現する場合、例えば、まず、ブレードエッジ2bを感光体ドラム1表面に接触させる。そして、その状態から、感光体ドラム1表面に対するクリーニングブレード2の相対的な姿勢を変えないように、その接触点における感光体ドラム1表面部分の法線方向に沿ってクリーニングブレード2を感光体ドラム1表面側へ移動させて、図12に示す状態にする。
【0008】
クリーニングブレード2は、感光体ドラム1表面に当接する先端部とは反対側の端部(後端部)が図示しないケーシングに固定された支持部材としての金属支持板3に接着されている。このようなクリーニングブレード2は、その厚さt1が0.5[mm]以上2.0[mm]以下であり、金属支持板3に接着されていない部分(自由端部分)の長さt2が3.0[mm]以上10.0[mm]以下であるのが一般的である。また、クリーニングブレード2の材料としては、ゴムなどの弾性部材が用られ、硬度が65[°]以上80[°]以下であり、反発弾性が20[%]以上60[%]以下であるポリウレタンでが広く用いられている。
【0009】
図13は、感光体ドラム1を静止させた状態でクリーニングブレード2のブレード先端部を食込み量dで当接させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム1軸方向から見た断面図である。このときのブレード先端部は、図示のように、その下流側側面が感光体ドラム1表面と接触した状態になる。この状態を「スリップ状態」という。
図14は、図13に示した状態において感光体ドラム1を図中矢印Aの方向へ表面移動させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図である。感光体ドラム1が図中矢印Aの方向へ表面移動すると、感光体ドラム表面に接触していたブレード先端部の下流側側面部分(ブレードエッジ2bを含む)が、感光体ドラム表面との摩擦力によって図中矢印Aの方向へ引っ張られる。これにより、ブレードエッジ2bが移動し、最終的には、図14に示すように、ブレードエッジ2bを含むブレード先端面の一部が感光体ドラム表面に接触し、ブレードニップを形成した状態となる。この状態を「スティック状態」という。このスティック状態におけるブレードエッジ2b周囲の弾性変形は、感光体ドラム1の表面移動中は、その弾性変形による復元力とその当接部分の動摩擦力とが平衡状態になるところで維持され、感光体ドラム1の表面移動停止中は、その弾性変形による復元力よりも大きい当接部分の静止摩擦力によって維持される。したがって、感光体ドラム1の表面移動中に当接部分の動摩擦力が変動せず、かつ、当接部分の静止摩擦力がスティック状態におけるブレード先端面のブレードエッジ2b周囲の弾性変形に対する復元力よりも大きい場合には、スティック状態が一定に維持される。
【0010】
上記スティック状態においては、上記スリップ状態の場合に比べて、クリーニングブレード2と感光体ドラム1表面とが当接している部分の面積が小さい。しかも、スティック状態においては、感光体ドラム1表面から受ける摩擦力により、スリップ状態では起きない、ブレードエッジ2b周囲がブレード先端面の法線方向に圧縮変形する。そして、この圧縮変形に対する復元力は、クリーニングブレード2と感光体ドラム1表面との当接圧を高める向きに働く。このように、スティック状態においては、感光体ドラム1表面との当接面積が小さく、かつ、圧縮による反発弾性力がクリーニングブレード2と感光体ドラム1表面との当接圧を高める向きに働くことから、上記スリップ状態の場合に比べて、その当接圧が高い状態になり、トナーのすり抜けが起きにくい。よって、トナーのすり抜けを抑制するためには、クリーニング時に安定してスティック状態を維持することが重要である。
【0011】
本発明者らは、実験により、感光体ドラム1に当接するクリーニングブレード2が部分的にスティック状態とスリップ状態とを往復する運動(以下、スティックスリップ運動という。)をしていることが分かった。この実験では、まず、感光体ドラム1表面と同様の摩擦特性を有する透明な表面移動部材の表面にクリーニングブレード2を当接させる。そして、この表面移動部材をその表面に球形トナーを付着させた状態で表面移動させ、そのときのクリーニングブレード2と表面移動部材との当接部分を、表面移動部材の裏面からカメラで撮影し、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動の様子を観察した。これは、スティック状態で安定している時に、部分的に感光体ドラム1表面の摩擦係数が変化し、感光体ドラム1表面とクリーニングブレード2との間の摩擦力が変化することにより発生する。具体的には、部分的に摩擦係数が下がると感光体ドラム1とク−ニングブレード1との間に働く摩擦力よりもクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力が大きくなり、スリップ状態になる。スリップ状態になると復元力が摩擦力よりも小さくなるため、感光体ドラム1の表面移動と共にスティック状態に戻される。一方、部分的に摩擦係数が大きくなると、感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力がクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力よりも大きくなり、ブレード先端部の下流側側面部分がさらに図中矢印A方向に引っ張られる。そして、摩擦係数が大きい部分が通過すると感光体ドラム1とク−ニングブレード2との間に働く摩擦力よりもクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力が大きくなり、スリップ状態になる。そして、スリップ状態になると復元力が摩擦力よりも小さくなるため、感光体ドラム1の表面移動と共にスティック状態に戻される。
そして、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動において、クリーニングブレード2がスリップしている時に多くの球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1との間をすり抜けている様子が観察された。
一方、クリーニングブレード2によるクリーニングが容易な粉砕トナーをクリーニングした場合には、ブレードエッジ2bと感光体ドラム1との当接部にトナーが滞留し、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との間に働く摩擦力が低下する。摩擦力が低下することにより、スティックスリップ現象の少ない安定したブレードニップが形成されており、良好なクリーニング性を得ることが出来た。
そして、球形トナーを用いた場合には、ブレードエッジに球形トナーが滞留することが出来ないため、クリーニングブレード2は感光体ドラム1との摩擦力によって、スティックスリップを繰り返す。これにより、不安定なブレードニップとなり、球形トナーがすり抜け、クリーニング不良となる。
【0012】
ここまでは、スティックスリップ運動によりトナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良について述べたが、図12で示した従来のクリーニングブレード2における不具合はそれだけではない。金属支持板3のクリーニングブレード2と接触する先端稜線である支持板エッジ3bの近傍のクリーニングブレード2に応力が集中し、この応力が集中する部分(以下、応力集中部)2Sで座屈が生じる恐れがあった。
クリーニングブレード2と感光体ドラム3との当接部で、球形トナーがすり抜けるのを防ぐのに必要な線圧を得るため、クリーニングブレード2は食い込み量dの分、感光体ドラム1に対して外側に曲がり、曲げ応力が生じている。そして、この曲げ応力は応力集中部2Sで最大となる。また、クリーニングブレード2に加わる応力は上述した曲げ応力に限らず、図中仮想線Fと平行な方向に圧縮応力が働くことも考えられる。これらの応力によって、応力集中部2Sに加わる応力が限界に達すると、クリーニングブレード2は座屈してしまう。座屈が発生すると、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との当接部で、所望の線圧を得ることが出来なくなる。所望の線圧を得ることが出来ないと、一度に多くのトナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良となる。
【0013】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、球形トナーを用いた場合であっても、弾性ブレードと像担持体表面との当接部分を一度に多くのトナーがすり抜けを抑制し、良好なクリーニングを行うことができる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面にトナー像を担持して表面移動する像担持体と、その先端稜線を含む所定の範囲が該像担持体表面と当接するように、支持部材で支持された弾性ブレードを用いて該像担持体表面に付着した不要トナーを該像担持体表面から除去するクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、該像担持体の表面移動方向に対して該弾性ブレードがカウンタ方向に当接するように配置されており、該支持部材の該弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の該弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて該弾性ブレード部分を補強する補強手段を設け、該弾性ブレードを形成する弾性体が23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下であり、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下であり、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力(以下、線圧と呼ぶ。)が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記弾性ブレード後端から先端にいたる途中から少なくとも部分的に肉厚を厚くし、肉厚を厚くした部分の厚みの段差面が、上記支持部材の先端面に密着するように該弾性ブレードを該支持部材に取り付け、該肉厚を厚くした部分によって上記補強手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記弾性ブレードの上記支持部材側の側面に、その後端面が該支持部材の先端面と密着するように、上記補強手段としての補強部材を固設したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の画像形成装置において、上記弾性ブレードを形成する弾性体がポリウレタンエラストマーであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記トナー像を形成するトナーに潤滑剤を添加することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記像担持体の最表層に潤滑物質を内添することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7の画像形成装置において、上記像担持体が無機微分粒子を含有した保護層を有することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至7の画像形成装置において、上記像担持体には保護層が設けられ、保護層のバインダー樹脂が架橋構造を有することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記保護層の上記架橋構造を有する上記バインダー樹脂の構造中に、電荷輸送部位を有することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10の画像形成装置において、上記像担持体と上記クリーニング装置とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジを有することを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが断熱構造を有することを特徴とするものである。
【0015】
上記請求項1乃至12の画像形成装置においては、像担持体に当接し、像担持体上の転写残トナーをクリーニングする弾性ブレードの各種パラメータの数値範囲が次のようになっている。
23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下、JISA硬度が70[%]以上90[°]以下、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下。
弾性ブレードの各種パラメータの数値範囲が上記範囲内とすることにより、スティックスリップ運動を抑制することが出来、ブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することが出来る。
また、支持部材の弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて補強する補強手段を設けることにより、弾性ブレードの一部に応力が集中し、弾性ブレードが座屈することを防止することが出来る。弾性ブレードの座屈を防止することで、座屈して線圧が維持できないことに起因するブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至12の発明によれば、ブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することができるので、球形トナーを用いた場合であっても良好なクリーニングを行うことができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態(以下、実施形態1と呼ぶ)について説明する。
まず、実施形態1に係るプリンタ全体の構成及び動作について説明する。
図2は、実施形態1に係るプリンタ全体の概略構成図である。このプリンタは、図中矢印Aの方向に回転する像担持体としての感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1は、アルミニウム基体の外周面に有機感光体からなる感光層を形成したものを用い、そのドラム表層がポリカーボネート製のもので、オイラーベルト法の測定により測定した摩擦係数μが0.3≦μ≦0.6の範囲内のものである。この感光体ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電装置7と、潜像形成手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置9及び除電手段としての除電装置8が配置されている。また、転写装置5により転写が行われる転写領域に対して、紙などの記録材Pが搬送される記録材搬送方向(図中矢印Bの方向)の下流側には、記録材P上のトナー像を定着させる定着手段としての定着装置6が配置されている。
【0018】
帯電装置7は、感光体ドラム1の表面を一様に帯電するものである。この帯電装置7は、帯電部材を感光体ドラム1の表面に接触させ、又は感光体ドラム1の表面と微小な空隙を空けて配置し、これに帯電バイアスを印加することによって感光体ドラム1表面を所望の極性及び所望の電位に一様帯電する。この帯電部材としては、例えば弾性体からなる帯電ローラや、ワイヤー電極とグリッド電極を用いたスコロトロン帯電器などを用いることができる。なお、帯電装置7としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0019】
露光装置3は、帯電装置7によって帯電された感光体ドラム1の表面に、画像データに応じた静電潜像を形成するものである。この露光装置3は、例えば、発光素子としてLD(Laser Diode)あるいはLED(Light Emitting Diode)を使用し、一様に帯電された感光体ドラム1表面に対して画像データに基づく光を照射することにより、その感光体ドラム1表面に静電潜像を形成する。なお、露光装置3としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0020】
現像装置4は、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行うものである。この現像装置4は、固定配置された磁界発生手段としてのマグネットローラを内部に有する現像剤剤担持体としての現像ローラ4aを備えている。この現像ローラ4aは、表面に現像剤を担持しながら回転することによって、現像剤を感光体ドラム1と対向する現像領域へ搬送する。実施形態1では、現像剤としてトナーとキャリアからなる二成分現像剤を用い、マグネットローラの磁力により現像領域でキャリアを穂立ちさせてブラシ状にして現像を行う磁気ブラシ現像方式を採用している。なお、現像剤としては、キャリアを用いずにトナーのみからなる一成分現像剤を用いてもよい。上記現像ローラ4aには、現像バイアス電源から現像バイアスが印加される。これにより、現像領域において、現像ローラ4a表面の電位と感光体ドラム1表面の静電潜像部分における電位との間に電位差が生じ、この電位差によって形成される現像電界の作用を受けて、現像剤中のトナーが静電潜像へ付着する。これにより、感光体ドラム1上の静電潜像がトナー像になる。なお、現像装置4としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0021】
転写装置5は、感光体ドラム1上のトナー像を、図中矢印Bの方向に搬送されてくる記録材P上へ転写するものである。この転写装置5は、転写ローラ等の転写部材を感光体ドラム1の表面に所定の押圧力で接触させ、その転写部材と感光体ドラム1との間に転写ニップを形成する。そして、この転写ニップで記録材Pを挟み込んだ状態で、転写バイアス電源からトナーとは逆極性の転写バイアスを転写部材に印加することによって形成される転写電界により、感光体ドラム1表面上のトナー像を記録材P上へ転写させる。なお、転写部材としては、例えば弾性体からなる転写ローラや転写ベルト、あるいは、ワイヤー電極とグリッド電極を用いたスコロトロン帯電器などを用いることができる。なお、転写装置5としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。このようにしてトナー像が転写された記録材Pは、定着装置6へ搬送され、ここでトナー像が定着された後、機外へ排出される。
【0022】
クリーニング装置9は、転写されずに感光体ドラム1の表面に残留した転写残トナーを感光体ドラム1の表面から除去するものである。このクリーニング装置9は、弾性ブレードとしてのクリーニングブレード2によって感光体ドラム1表面上の転写残トナーを掻き取って除去する。クリーニングブレード2の先端に溜まった転写残トナーは、クリーニング装置9の内部に落下する。そして、図示しないトナー搬送機構により廃トナーとして図示しない廃トナーボトルへ搬送され、ここに蓄えられる。このようにして廃トナーボトルに蓄えられた廃トナーは、サービスマンなどにより回収される。なお、クリーニング装置9の内部に落下した転写残トナーを、リサイクルトナーとして現像装置4などに搬送し、再度現像に使用するようにしてもよい。
【0023】
上記除電装置8は、感光体ドラム表面の残留電荷を除去するものである。残留電荷が除去された感光体ドラム1の表面は、次の画像形成に寄与することになる。なお、この除電装置8は、LEDなどを用いた光除電方式を採用しているが、これに限られるものではない。
【0024】
近年、トナーを用いて画像形成を行う画像形成装置100においては、より高精度で高精細な画像を形成すべく、高解像度の要求が高まっている。高解像度を達成する方法としては、粒径が小さく、かつ、球形に近い球形トナーを用いるのが効果的であることが知られている。そこで、実施形態1では、画質向上のために、トナーの粒径が2.0μm〜10μmで、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上記分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図3(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をL1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図3(b)に示す真円の外周長をL2としたときのL2/L1を求め、その平均値を円形度とした。
【0025】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法により形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたトナーなどを用いることができ、その製造方法に限定されない。このような球形トナーにおいては、上述したように、粉砕トナーを感光体ドラム1表面から除去するために用いられていた従来のクリーニングブレード2では、球形トナーを感光体ドラム1表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生するという問題がある。
【0026】
そこで、本発明者らは、球形トナーをクリーニングブレード2でクリーニングする際に、球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1との当接部をすり抜けてクリーニング不良が発生する問題を解決するために、カウンタ方式のクリーングブレード2において、球形トナーを用いた場合にクリーニング不良が発生する原因について、鋭意検討を重ねた。
その結果、クリーニングブレード2の先端の微小振動(スティックスリップ)が球形トナーのクリーニング不良と大きく関係していることが分かった。スティックスリップは、感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力(Fbp)と、弾性体であるクリーニングブレード2の復元力(Fbr)との大小関係によって発生する。
感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力Fbpと、クリーニングブレード2の弾性力Fbrにおいて、Fbp>Fbrの場合、クリーニングブレード2の先端は感光体ドラム1の表面移動方向に沿って移動する(スティック)。
また、Fbp<Fbrとなった場合には、感光体ドラム1の表面移動方向とは反対方向に向かって移動(スリップ)する。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動において、クリーニングブレード2がスリップしている時にクリーニングブレード2と感光体ドラム1とのブレードニップ部を球形トナーがすり抜けている様子が観察された。
【0027】
一方、クリーニングブレード2によるクリーニングが容易な粉砕トナーをクリーニングした場合には、スティックスリップの発生頻度が少なく、ブレードニップが安定している様子が観察された。すなわち、球形トナーをクリーニングする時に発生するスティックスリップを低減し、微小振動の少ない、安定したブレードニップを形成することによって球形トナーがクリーニング可能となる。具体的には、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動で往復する距離が短く、スティックスリップの発生頻度を少なくすることにより、球形トナーのすり抜けを防ぐことが出来る。しかしながら、ウレタンゴムなどの弾性部材からなるクリーニングブレード2を感光体ドラム1に押しつける場合には、多かれ少なかれ、必ずスティックスリップ運動が発生する。そこで、我々はスティックスリップが起きる場合にも、球形トナーがクリーニング可能な場合を検討した。
【0028】
スティックスリップ運動を詳しく調べる為に、クリーニングブレード2と感光体ドラム1が当接するブレードエッジ2bに着目し、高倍率のレンズを用いて観察を行った。図4(a)に観察結果の概要を示す。ブレードエッジ2bは、感光体ドラム1との当接によって、先端めくれ部分2cが形成され、このめくれ部分2cにクリーニングブレード2を感光体ドラム1に押しつける為に付与した荷重が集中する。表面移動する感光体ドラム1とブレードエッジ2bとの間に働く摩擦力によって、クリーニングブレード2はスティック状態となり、感光体ドラム1表面移動方向に沿って移動する。クリーニングブレード2の復元力が摩擦力より大きくなったところで、スリップ状態に移行し、感光体ドラム1の表面移動方向と反対向きに移動する。このようなスティックスリップ運動により、ブレードエッジ2bは感光体ドラム1の表面移動方向に対して、往復運動をする。この時、クリーニングブレード2と感光体ドラム1とのなす角度θ(実クリーニング角度:以下で定義する)も変化する。スティック状態になるにつれ、感光体ドラム1の表面移動方向にそってブレードエッジ2bが引っ張られる場合には、θは小さくなる。一方、スリップ運動中は、θはスティック状態に比べ大きくなる。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動の振幅が小さいほど、θの値の変化(=dθ)は小さくなる。本発明者等は、クリーニングブレード2によるクリーニングの安定性とスティックスリップ運動に相関があると考え、
安定性∝(1/dθ)
とした。
ここで、実クリーニング角θと変化量dθを次のように定義する。
実クリーニング角θは、ブレード先端部を観察した画像から規定した。すなわち、図4(a)に示すように、基準となる球形トナーとブレードとの接線と、球形トナーと感光体との接線がなす角度を実クリーニング角度θとした。ここで、粒径が7μmの球形トナーTを基準とした。具体的には、観察画像中に7μmの円を当てはめ、接点、接線を求め、実クリーニング角度θを求めた。
また、図4(b)、(c)に示すように、実クリーニング角の変化量dθは、クリーニング動作時の実クリーニング角θの最大値θmax、最小値θminから次式のように定義する。
dθ=θmax−θmin
【0029】
球形トナーをクリーニングする場合には、ブレードエッジ2bと感光体ドラム1とのブレードニップ部にトナーが滞留しにくいため、滞留トナーによって摩擦力が軽減し、スティックスリップ抑制する効果が働きにくい。そのため、粉砕トナーをクリーニングする場合に比べ、スティックスリップが激しくなる傾向がある。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動は、少なくともクリーニングブレード2、感光体ドラム1、トナーの三体の影響が複雑に関係している。
【0030】
そこで、本発明者等は、クリーニングブレード2がスティックスリップ運動をしにくいブレードについて検討を行った。ブレード特性の中で、スティックスリップと密接な関係にある反発弾性と硬度に着目した。反発弾性は、高反発弾性であるほど、スティックスリップ運動が激しくなり、低反発弾性であるほど、スティックスリップ運動は抑制される傾向にある。また、硬度が高いほど、ブレードの変形が抑制され、スティックスリップ運動は抑制される傾向にある。
【0031】
[実験1]
ブレードの物性値を変更によってスティックスリップ低減を図るために、以下の実験を行い、ブレードの物性値とスティックスリップ運動との関係を明らかにした。図12に示した形状のクリーニングブレード2を感光体ドラム1と同等の摩擦係数を有する透明な表面移動部材に当接し、この表面移動体に球形トナーを付着させ、クリーニングブレード2でクリーニングを行いその時のクリーニング性を評価した。また、反発弾性・硬度と実クリーニング角変動量dθとの関係を明らかにすべく、下記の実験条件のもとで、ブレード(1)〜(12)のクリーニング時の実クリーニング角θの変動量dθを測定した。
実験条件:
食込み量d=1.0[mm]
表面移動体:μ=0.3〜0.6(オイラーベルト法による)
表面移動体線速:100[mm/s]
初期接触角β=20[°]
クリーニングブレード厚さt1=2.0[mm]
自由長t2=7.0[mm]
【表1】
【0032】
表1のクリーニング性は、クリーニング後の像担持体表面の残トナー量を下記の基準で判別した。
○:完全にクリーニングされた場合。
△:部分的に筋状のクリーニング不良が発生した場合、あるいは全面に若干のトナーが残留している場合。
×:全面に筋状あるいは多量のトナーが残留している場合。
【0033】
表1より、硬度が等しく80[°]前後で、反発弾性が30[%]以下のブレード(3)、(7)、(9)、(10)は、クリーニング時の実クリーニング角の変動量dθが約20[°]以下で、スティックスリップ運動の振幅が小さく、クリーニング性が良好となることを示している。一方、反発弾性が約35[%]以上のブレードでは、dθが大きくなり、クリーニング性も悪くなっていることから、低反発弾性のブレードとすることによって、クリーニング性が有利になると考えられる。
そして、表1はクリーニングブレード2のスティックスリップ運動による実クリーニング角の変動量dθが小さく、クリーニングブレードの先端挙動が安定しているほど、球形トナーのクリーニングに有利であることを示している。
一方、表1のブレード(1)、(6)、(8)の様に、実クリーニング角の変動量dθが20°以下で、ブレードニップ部が安定している場合でも、クリーニング性が良好にならない場合がある。
この点に関して、明らかにする為に、表1で示した(1)〜(12)のブレードについて、初期接触角β0=20[°]で、食い込み量1.0[mm]の時の線圧と、食い込み量0.7[mm]の時の線圧とを測定し、それぞれの食い込み量についてクリーニング性を評価し、その結果を表2に示す。
【表2】
【0034】
ここで、反発弾性の値が近いにも関わらず、表1ではクリーニング性に差があった、ブレード(1)と(3)、ブレード(6)と(7)、ブレード(8)と(9)について検討する。
ブレード(1)と(3)とを比較した場合、(1)の線圧は0.49[N/cm](50[gf/cm])、(3)の線圧0.7938[N/cm](81[gf/cm])となった。
また、ブレード(6)と(7)とを比較した場合、(6)の線圧は0.6762[N/cm](69[gf/cm])、(7)の線圧は0.833[N/cm](85[gf/cm])となった。
また、ブレード(8)と(9)とを比較した場合、(8)の線圧が0.7154[N/cm](73[gf/cm])、(9)の線圧が0.784[N/cm](80[gf/cm])となった。
いずれの場合も、ブレード硬度が下がることにより、線圧が低下していると考えられる。
【0035】
ブレードのスティックスリップを低減し、安定したブレードニップとなった場合でも、ブレード線圧が低い場合には、球形トナーが弾性体であるクリーニングブレードを押し上げ、ブレードニップ部に侵入し、クリーニング不良となる。したがって、トナーのブレードニップ部への侵入を阻止するための荷重(線圧)をブレードに付与する必要がある。
球形トナーは、従来の粉砕トナーに比べてブレードニップにもぐり込みやすい為、球形トナーのもぐり込みを抑制するためには、従来の粉砕トナーに比べて、より大きな荷重をかける必要がある。
【0036】
ブレード(4)は、硬度78[°]で線圧が0.9604[N/cm](98[gf/cm])であり、球形トナーのブレードに潜り込む力を押さえるには十分な線圧が付与されている。しかし、反発弾性が50[%]で高いために、スティックスリップが大きく、不安定なブレードニップとなり、球形トナーをクリーニングすることができないと考えられる。
ブレード(11)もブレード(4)と同様に、線圧0.7938[N/cm](81[gf/cm])は十分であるが、反発弾性が35[%]であり、ブレードのスティックスリップ運動が大きい為に、クリーニング不良となると考えられる。
一方、ブレードの反発弾性が20%以下で、食い込み量dが1.0[mm]の時は良好なクリーニング性を示したブレード(3)、(7)でも、ブレードの像担持体への食込み量dを1.0[mm]から0.7[mm]にした場合には、クリーニング不良が発生した。これは、食い込み量dを小さくしたことで、線圧が0.784[N/cm](80g[f/cm])以下になってしまい、球形トナーのすり抜けを防ぐために必要な線圧が得られなかったためである。
以上の事から、像担持体表面の摩擦係数がμ=0.3〜0.6(オイラーベルト法で測定)の像担持体上から球形トナーをクリーニングする為には、反発弾性が8.0〜30%(23℃)、硬度70〜90°、線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])以上であることが必要である。
【0037】
次に、クリーニングブレード2の形状について検討する。
上述の実験1で用いたブレード支持部材としての金属支持板3に短冊形状のクリーニングブレード2を張り合わせた形状のブレード(以後、従来形状と呼ぶ)を図5に示す。
従来形状のクリーニングブレード2を用いてクリ−ニングを行う場合には、クリーニングブレード2の金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍の部分である図中2Sに応力が集中してしまう。応力が集中する部分の強度が充分ではないと、クリーニングブレード2や他の部材について想定された寿命に達する前に、応力が集中する部分でクリーニングブレード2が座屈してしまう恐れがある。クリーニングブレード2が座屈してしまうと、クリーニングブレード2と感光体ドラム1とが当接する部分に十分な押しつけ力が付与できず、当接部での線圧も維持できず、球形トナーのもぐり込みを阻止できない。
例えば、表1に記載のブレード(1)の場合には、硬度70[°]のために、食込み量d=1.0[mm]、初期当接角β=20[°]の場合には、線圧が0.49[N/cm](50[gf/cm])となり、球形トナーのもぐり込みを阻止するのに十分な線圧が得られない。そこで、応力が集中する部分に補強手段としての補強構造を設け、座屈を抑制するクリーニングブレードについて説明する。
【0038】
図1は実施形態1に適用するクリーニングブレード2を感光体ドラム軸方向から見たときの拡大図であり、図6は図1中のクリーニングブレード2の説明図である。図6に示す様に、弾性体であるクリーニングブレード20の断面の形態が概ね凸形状となるようにほぼ中央部に肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとからなる。そして、肉厚部20γとブレード根元側肉薄部20βとの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着して接着されることで支持される形状(以後、補強形状と呼ぶ)となっている。図6に示すように、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍で従来形状のブレードであれば応力が集中していた箇所にかかる応力を分散させて、クリーニングブレード2を補強する補強構造とすることにより、クリーニングブレードの座屈を抑制することができる。
【0039】
[実験2]
実験1で従来形状のブレードでは十分な線圧が得られなかったゴム材料について、補強構造とした場合の線圧を測定した。実験条件は、ブレードの形状が異なる以外は実験1と同じである。
実験2の結果を表1に示す。
実験1の
ブレード(1)と同じ硬度70[°]、反発弾性8.0[%]
ブレード(6)と同じ硬度71[°]、反発弾性17[%]
ブレード(8)と同じ硬度72[°]、反発弾性23[%]
上記3つのウレタンエラストマーを用いて、図6のような形状とした場合に、線圧を測定した。
図5及び図6の図中tで示した各部分の長さはそれぞれ、t0=1.6[mm]、t1=2.0[mm]、t2=7.0[mm]、t3=11[mm]、t4=4.0[mm]、t5=1.6[mm]である。
【表3】
【0040】
表3に示すように、従来形状に比べて、補強形状としたことにより、ブレード(1)、(6)、(8)共に、容易にブレード線圧をあげることが可能となり、本発明において球形トナーのもぐり込みを阻止するのに必要な線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])以上の線圧を得ることが出来、良好なクリーニングが可能となる。
また、実験1で良好なクリーニング性を示したブレードよりも、クリーニングブレード自体の硬度が低いため、硬度が高いものよりも感光体ドラムに密着することが出来、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0041】
しかしながら、表3の食い込み量d=1.0[mm]の時の線圧は、何れのブレードにおいても1.176[N/cm](120[gf/cm])を越えるほど高い線圧になっている。クリーニングブレード20と感光体ドラム1との当接部の線圧が高すぎると、感光体ドラム1の駆動トルクが高くなったり、摺擦されること各部材の寿命が短くなったりする恐れがあり、好ましくない。よって、クリーニングブレード20と感光体ドラム1との当接部での線圧は1.176[N/cm](120[gf/cm])とする。実施形態1では表3のブレード(1)で食い込み量d=0.7[mm]のブレードを採用する。
図5のようにクリーニングブレード2が従来形状の場合には、低硬度の弾性部材のクリーニングブレード2を用いた場合には、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍となるクリーニングブレード2の応力集中部2Sで座屈が発生し、十分な線圧がブレード先端にかからなかった。しかしながら、図6では、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍となるクリーニングブレード2の部分にかかる応力を分散させて、クリーニングブレード2を補強する補強構造としての肉厚部20γを設けている。これにより、低硬度の弾性部材であるブレード(1)を用いた場合にも、クリーニングブレード先端に十分な線圧が付与することが可能となり、クリーニング不良の発生が抑制できる。
【0042】
次に、実施形態1に用いられる感光体ドラム1の構成について、その一例を記す。
感光体ドラム1は負帯電性の有機感光体であり、直径30[mm]のドラム状導電性支持体50上に感光層等を設けたものである。図8は、実施形態1に用いた感光体ドラム1を表す断面図である。基層としての導電性支持体50上に、絶縁層である下引き層51が設けられている。そして、その上に感光層としての電荷発生層(CGL)52、電荷輸送層(CTL)53が設けられている。さらにその上に表面保護層(FR)54が積層されている。
【0043】
導電性支持体50としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものを用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体50として用いることができる。
この他にも、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても導電性支持体50として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N −ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体50として良好に用いることができる。
【0044】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層52と電荷輸送層53とからなる積層構成の場合から述べる。
電荷発生層52は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層52には公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ、これらは有用に用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合して用いることも可能である。
電荷発生層52は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体50上、あるいは下引き層51上に塗布し、乾燥することにより形成される。
電荷発生層52には、必要に応じて結着樹脂中に上記電荷発生物質を分散させることができる。用いることができる結着樹脂の例としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2 種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層52は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層52の膜厚は、0.01〜5[μm]程度が適当であり、好ましくは0.1〜2[μm]である。
【0045】
次に、電荷輸送層53について、説明する。電荷輸送層53は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層52上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2 種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層53の膜厚は解像度・応答性の点から、25[μm]以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5[μm]以上が好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0046】
次に感光層が単層構成の場合について述べる。感光層は、前述の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを導電性支持体50上ないし下引き層51上に塗布、乾燥することによって形成できる。電荷輸送物質を含有させずに、電荷発生物質と結着樹脂とから構成してもよい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては先に電荷輸送層53で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層52で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに50〜150重量部であるればより好ましい。
感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25[μm]程度が適当である。
【0047】
次に、下引き層51について説明する。実施形態1に係る感光体ドラム1においては、導電性支持体50と感光層との間に下引き層51を設けることができる。下引き層51は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。下引き層51にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。また、これらの下引き層51は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に実施形態1の下引き層51として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、実施形態1の下引き層51には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層51の膜厚は0〜5[μm]が適当である。
【0048】
次に、保護層54の一つ目の実施例としてFR−OPCを採用した構成について説明する。
感光体の最表面層に機械的磨耗を防止するために保護層54を設けることも可能である。例えば耐磨耗性を向上させるためにアモルファスシリコンで表面コートした感光体や、電荷輸送層53のさらに表面にアルミナや酸化スズ等を分散させた最表面層を設けた有機感光体などを用いる事もできる。
以上説明したように、実施形態1に用いることができる感光体1の構成は特定の構成に限定されるものではない。導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層のみを設けた1層構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53とが積層された構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層を設け、その上に更に保護層を設けた構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53とを積層し、その電荷輸送層53の上に保護層を設けた構成や、導電性支持体50の上に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53と電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52とを積層し、その電荷発生層52の上に保護層を設けた構成など、種々の層構成を有する感光体に適用可能である。
【0049】
次に、保護層54の2つ目の実施例としてsuper−FR−OPCを採用した構成について説明する。
保護層54のバインダー構成として、架橋構造からなる保護層も有効に使用される。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
電気的な安定性、耐刷性、寿命の観点から、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、保護層としての機能を十分に発現することが可能となる。
電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、同一分子中に電荷輸送性成分と加水分解性の置換基を有する珪素原子とを少なくとも1つずつ以上含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とヒドロキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とカルボキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とエポキシ基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とイソシアネート基とを含有する化合物等が挙げられる。これら反応性基を有する電荷輸送性材料は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
さらに好ましくは、電荷輸送能を有するモノマーとして、電気的・化学的安定性が高いこと、キャリアの移動度が速いこと等から、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層53の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することができる。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
また本発明においては、熱または光を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行うが、熱により重合反応を行う際には、熱エネルギーのみで重合反応が進行する場合と重合開始剤が必要となる場合があるが、より低い温度で効率よく反応を進行させるためには、開始剤を添加することが好ましい。
光により重合させる場合は、光として紫外線を用いることが好ましいが、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。この場合の重合開始剤とは、主には波長400nm以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成し、重合を開始させるものである。なお、本発明においては、上述した熱及び光重合開始剤を併用することも可能である。
このように形成した網目構造を有する電荷輸送層53は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する保護層を形成しても良い。
【0050】
感光体ドラム1において、保護層塗工液および膜厚・作成条件を下記のように代えた以外は実施形態1と同様にして作成してもよい。
メチルトリメトキシシラン:182部、ジヒドロキシメチルトリフェニルアミン:40部、2−プロパノール:225部、2%酢酸:106部、アルミニウムトリスアセチルアセトナート:1部を混合し、保護層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層53の上に塗布・乾燥し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、膜厚3μmの保護層を形成した。
【0051】
感光体ドラム1において、保護層塗工液および膜厚・作成条件を下記のように代えた以外は実施形態1と同様にして作成してもよい。
化学式1に示す正孔輸送性化合物を30部、化学式2に示すアクリルモノマー及び光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)0.6部を、モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層54用塗料を調製した。この塗料をスプレーコーティング法により先の電荷輸送層53上に塗布し、メタルハライドランプを用いて500mW/cm2の光強度で30秒間硬化させることによって、膜厚5μmの表面保護層54を形成した。
【化1】
【化2】
【0052】
次に、実施形態1に用いられる帯電装置7の構成について、その一例を示す。
帯電手段として、従来よりコロナ放電を利用したコロナ帯電方式を用いるものがあった。コロナ帯電方式は、チャージワイヤを被帯電体に近接して配設し、チャージワイヤに高電圧を印加することにより、チャージワイヤと被帯電体との間にコロナ放電を起こし、これによって被帯電体を帯電するものである。しかしながら、コロナ帯電方式の場合には、コロナ放電に伴いオゾンや窒素酸化物(NOx)などの放電生成物質が発生する。放電生成物質は、感光体方面に画像形成の際に悪影響を及ぼす硝酸又は硝酸塩の膜を形成する恐れがあるため、できればその発生を回避したいところである。
そこで、近年ではコロナ帯電方式に代えて放電生成物質の発生が少なく、低電力で帯電ができる接触帯電方式又は近接帯電方式の開発が盛んである。これらの方式は、ローラ、ブラシ、又はブレード等の帯電部材を感光体等の被帯電体に接触又は近接して対向させ、帯電部材に電圧を印加することによって被帯電体の表面を帯電させるものである。この方式によれば、コロナ帯電方式に比して、放電生成物質の発生が少なく低電力化を実現することができるため有用性が高い。また、大掛かりな帯電装置を必要としないため装置の小型化が可能であり、装置の小型化が望まれているニーズに合致する。
【0053】
実施形態1においては、上記のような低電力化、低ハザード化、小型化のニーズを達成する一例として、以下にしめす非接触ローラ帯電方式を用いた例をしめす。
球形トナーを用いた場合、上記のように、従来の粉砕トナーに比べてクリーニング不良が発生しやすい。実施形態1のように、球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1をすり抜けることを抑制した画像形成装置においても、万が一クリーニング不良が発生した場合でも、非接触ローラ帯電方式であれば、クリーニングブレード2をすり抜けた球形トナーが帯電装置7に付着することが無い為、帯電異常による異常画像の発生が起きないという利点がある。
実施形態1に係る帯電装置7は非接触となるよう近接させて対向配置した帯電部材による交流印加放電により感光体を帯電せしめている。なお、接触させて対向配置した帯電部材による交流印加放電により感光体を帯電せしめる方法がある。この方法を適用する場合には、感光体表面と帯電部材との接触性を向上させ、かつ感光体に機械的ストレスを与えない弾性部材を用いることが好ましい。ただし、弾性部材を用いると、帯電ニップ幅が広くなり、これに起因して帯電ローラ側に保護物質が付着しやすくなることがある。よって、被帯電体の高耐久化には非接触により帯電させる方が有利である。
【0054】
図9は、帯電装置7と感光体ドラム1との概略説明図である。帯電装置7は、帯電部材としての帯電ローラ7a、スペーサ22、スプリング15、電源16とからなる。帯電ローラ7aには、軸部21aと帯電部としてのローラ部21bとがある。このうちローラ部21bは、感光体ドラム1に対向して感光体ドラム1の表面を帯電する機能を担っており、軸部21aの回転によって回動可能なように構成されている。帯電ローラ7a表面の帯電部21bが感光帯表面に対して微小な間隙で対向配置するよう帯電ローラに間隙保持部材であるスペーサ22を設けている。このスペーサ22により、感光体ドラム1表面のうち画像が形成される画像形成領域11に対向する部分は感光体ドラム1と非接触となるよう配設されている。ローラ部21bの長手方向の寸法は、感光体ドラム1の画像形成領域よりも長く設定されており、感光体ドラム1の非画像形成領域12にスペーサ22を当接せしめることにより、上記微小なギャップ14を形成している。このスペーサ22 を介して帯電ローラ7a は、感光体ドラム1表面に連れまわって回転するようになっている。微小ギャップ14は、帯電ローラ部21bと感光体ドラム1との最近接部が1〜100[μm]となるように構成されている。
この最近接距離は、30〜65[μm]であることがさらに好ましい。実施形態1の装置では、50[μm]となるように配設した。軸部21aには、帯電ローラ7aを被帯電体へ向けて押圧するためのスプリング15が取り付けられている。これにより上記微小ギャップ14を精度良く維持することが可能となる。
帯電ローラ7aは、帯電用の電源16が接続されており、感光体ドラム1表面と帯電ローラ7a表面との間の微小な空隙において、交流印加放電により感光体ドラム1表面を均一に帯電せしめる。実施形態1では、直流成分であるDC電圧に交流成分であるAC電圧が重畳された交番電圧が帯電ローラ7aの帯電部へ印加されるようになっている。交番電圧を用いることにより、微小なギャップ変動に起因する帯電電位のバラツキなどの影響が抑制され、均一な帯電が可能となる。
【0055】
帯電ローラ7aは、円柱状を呈する導電性支持体としての芯金と、この芯金の外周面上に形成された抵抗調整層とから構成される。実施形態1では、帯電ローラ7aの直径を10[mm]とした。
帯電ローラ7aの表面は、例えばゴム部材などの既知の材料を用いることができるが、樹脂材料で構成することがより好ましい。ゴム部材を用いると、ゴムの吸水や、たわみの発生により、感光体ドラム1との微小な間隙を維持することが困難となるからである。作像条件によっては帯電ローラ7aの中央部のみが感光体表面に突発的に接触する可能性がある。このような局所的、突発的な帯電ローラ7aの感光体ドラム1への接触による感光体表面層の乱れに対応することは困難である。従って、非接触帯電方式により感光体を帯電する場合には、帯電ローラ7aと感光体ドラム1との微小間隙を均一に維持することができる硬質の材料を用いることがより好ましい。
【0056】
次に、帯電ローラ7aの表層について説明する。
帯電ローラ7aの表面が硬質な材料としては、例えば、以下のようなものを用いることができる。抵抗調整層として、高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものなどである。硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行うことができる。あるいは、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成してもよい。
【0057】
また、実施形態1の画像形成装置100は、図10に示すように、少なくともクリーニングブレード2と感光体ドラム1とを一体に備えたプロセスカートリッジ200を有している。プロセスカートリッジ200とすることにより、ブレード寿命、像担持体寿命が来た場合にも、容易にユーザーが交換することが出来る。
また、プロセスカートリッジ200は断熱構造を有しており、クリーニングブレード2の使用環境であるプロセスカートリッジ200内の温度変動を小さくする構成としている。クリーニングブレード2はウレタンゴムなどを用いる場合には、特に環境変動により、ゴムの反発弾性が変化することで、クリーニング性に影響がでる。よって、プロセスカートリッジ200が断熱構造を有することにより、環境変動によるクリーニング性の低下を最小限に防ぐことが出来る。断熱構造としては、各種断熱シートや、発泡材をカートリッジケース内に張るなどの方法が簡易的であるが、前記方法に限らない。
【0058】
以上、実施形態1によればクリーニングブレード2の断面の形態が概ね凸形状となるように、ほぼ中央部に補強手段としてブレード厚を厚くした肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとからなる。そして、金属支持板3はブレード根元側肉薄部20βのブレード側面に密着して接着されている。そして、肉厚部20γの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着して接着されることで支持される形状(以後、補強形状と呼ぶ)となっている。図6に示すように、図5で示す従来形状であれば応力が集中していた図5中応力集中部2Sにかかっていた応力を段差面20δと金属板の先端面との接触部に分散する補強構造を設けることにより、クリーニングブレード2の座屈を抑制することができる。さらに、クリーニングブレード2の23℃における反発弾性が8.0[%]で8.0[%]以上30[%]以下の範囲内であり、JISA硬度が70[°]で70[°]以上90[°]以下の範囲内であり、感光体ドラム1との当接部における線圧が1.0682[N/cm](109gf/cm)で0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)の範囲内である。このような物性値を示すクリーニングブレードを用いることにより、球形トナーのすり抜けを抑制することが出来、良好なクリーニングを行うことができる。
また、クリーニングブレード2を形成する弾性体として、ポリウレタンエラストマーを用いることにより、良好なクリーニングを行うことができる。
また、感光体ドラム1がアルミナや酸化スズ等の無機微粒子を分散させ、含有させた保護層54を有することにより、感光体ドラム1表面の耐磨耗性が向上し、トナーのすり抜け防止のために線圧を高くしても、感光体ドラム1の部材寿命を維持することができる。
また、感光体ドラム1の保護層54のバインダー樹脂が架橋構造を有することにより、感光体ドラム1の耐磨耗性が向上し、トナーのすり抜け防止のために線圧を高くしても、感光体ドラム1の部材寿命を維持することができる。さらに、バインダー樹脂の構造中に電荷輸送部位を有することにより、保護層54の性能が向上し、感光体ドラム1の部材寿命をさらに維持することができる。
また、少なくともクリーニングブレード2と感光体ドラム1とを一体にし、プロセスカートリッジ200とすることにより、ブレード寿命、像担持体寿命が来た場合にも、容易にユーザーが交換することが出来る。
また、プロセスカートリッジ200を耐熱性の構造とすることにより、特に温度変化に起因する環境変動により、ゴムの反発弾性が変化することで、クリーニング性に影響がでて、環境変動によるクリーニング性の低下となることを最小限に防ぐことが出来る。
【0059】
[変形例1]
実施形態1では補強構造として、クリーニングブレード20の中心部付近に肉厚部20γを設け、座屈の発生を抑制していたが、補強構造はこれに限るものではない。補強構造としては、応力が集中する図5中の応力集中部2Sからクリーニングブレード2先端方向に補強部材を設ける構成としてもよい。クリーニングブレード2の補強部材を設けた構成を図7(a)、図7(b)に示す。
図7(a)は、金属支持板3と同じ厚さの補強部材30Aを設け、弾性体であるクリーニングブレード30の自由長t6=3.0[mm]となるようにしている。補強部材30Aは、金属支持板3とは異なる材料でも、同じ材料でもよく、少なくともクリーニングブレード2側面に密着し、接着している。補強部材30Aの材料としては金属支持板3よりも硬度が低く、クリーニングブレード30よりも硬度が高い材料を用いることが望ましい。自由長t6の長さは適宜選択すればよく、上述の限りではない。
また、図7(b)では、金属支持板3の厚さよりも薄い補強部材40Aを弾性体であるクリーニングブレード40に貼り付けている。図では、クリーニングブレード40の最先端まで補強部材40Aを貼り付けているが、この限りではなく、補強部材40Aの長さは任意に設定すれば良い。
図7(a)や図7(b)で示した変形例1の構成は、図5で示した従来形状のクリーニングブレード2に補強構造として補強部材を設けた構成である。この構成であれば、従来のクリ−ニングブレード2に補強部材を設けるという容易な構成で、従来のクリーニングブレードのクリーニング性を向上することができる。
また、図6及び図7で示した補強構造は、実験1で硬度が低かったためにクリーニング性が充分ではなかった材料に限らず、クリーニング性が充分であった材料を用いても良い。硬度が高い材料を用いた場合でも座屈する恐れはあるので、上述の補強構造を採用することにより、より信頼性の高いクリーニング装置とすることができる。
【0060】
[変形例2]
さらには、図5に示した従来形状において、厚さをt1=2[mm]から2.5[mm]以上の厚さ:例えば2.8[mm]、3.0[mm]、3.6[mm]などにし、適宜食込み量dを調整することにより、ブレード(1)、(6)、(8)等で用いたウレタンエラストマーにより形成したブレードでも、球形トナーのクリーニングに必要な線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])を得る事が出来る。
【0061】
[変形例3]
実施形態1では、反発弾性の低い部材を用いることで、クリ−ニングブレードのスティックスリップ運動を抑制していたが、これに限るものではない。以下、像担持体である感光体ドラム1表面の低摩擦係数化することで、スティックスリップの低減を図る変形例3について説明する。
図11は、感光体ドラム1表面の摩擦係数を低くするために、潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置10を設けた変形例3に係るプリンタ全体の概略構成図である。
実施形態1では、クリーニングブレードのスティックスリップ運動を低減するために、クリーニングブレードの反発弾性、硬度をそれぞれ従来の粉砕トナー用ブレードに比べて、低反発、高硬度にすることにより、球形トナーのクリーニング性を良好にしている。
一方、変形例3では、潤滑剤を固形状に成型して固形潤滑剤32とし、固形潤滑剤32を加圧バネ33で回転するファーブラシ31に押圧して、ファーブラシ31を介して感光体ドラム1に塗布している。像担持体としての感光体ドラム1表面に潤滑剤を塗布し、摩擦係数を低減することにより、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動を実施形態1の構成によりも、さらに抑制する構成としている。球形トナーを用いる時に特に問題となるクリーニングブレード2のスティックスリップ運動の振幅は、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との間の摩擦力に大きく依存する。よって、感光体ドラム1表面の低摩擦係数化により、クリーニングブレード2のスティックスリップを大幅に抑制することができる。
【0062】
[実験3]
下記の実験条件のもとで、表2のブレード(1)、(6)の補強形状、表1のブレード(3)、(7)の従来形状で、感光体に潤滑剤を塗布した場合と同様の表面状態でのクリーニング時の実クリーニング角θの変動量dθを測定した。ここで、補強形状とは、実施形態1の図62示した形状を用いた。
実験条件:
表面移動体表面:μ=0.2以下(オイラーベルト法による)
表面移動体線速:100mm/s
初期接触角β=20°
表4は、実験3で測定したクリーニング角の変動量dθと、表面移動体の摩擦係数を低下させた点以外は同じ条件の実験1または2でのクリーニング角の変動量dθを比較したものである。
【表4】
実験1、2より、球形トナーがクリーニング可能な条件を満たす表4に示すブレードについて、低摩擦係数化する前の像担持体と、低摩擦係数化した像担持体での実クリーニング角dθを測定した。その結果、各ブレードとも、低摩擦係数化した像担持体を用いることにより、スティックスリップが抑制され、dθが小さくなることが分かる。
これは、像担持体の低摩擦係数化により、クリーニングブレードと像担持体間の摩擦力が小さくなり、スティックスリップ運動が低減されているからである。
【0063】
潤滑剤としてはステアリン酸亜鉛のようなラメラ結晶紛体を使用すると好適である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があると考えられる。その他にも、各種の脂肪酸塩、ワックス、シリコーンオイル等他の物質を潤滑材 として用いることも可能である。
脂肪酸としてはウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンダデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、アラキドン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸などが挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0064】
以上のように、像担持体である感光体ドラム1表面上に、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤を塗布するより、スティックスリップ運動を抑制することが出来、より安定したブレードニップを形成することができるため、トナーのすり抜けを抑制し、クリーニング性の向上を図ることができる。
また、トナーの像担持体に対する付着力を低減することができるため、球形トナーのクリーニングがより容易になる。
【0065】
変形例3では、像担持体表面を低摩擦係数化するために、潤滑剤を塗布するものについて説明したが、これに限るものではなく、像担持体表層に低摩擦係数化物質を内添したり、トナーに潤滑物質を添加して、トナーを介して像担持体表面に塗布したりしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1に係るプリンタが備えたクリーニング装置が有するクリーニングブレードを感光体ドラム軸方向から見たときの拡大図。
【図2】実施形態1に係るプリンタ全体の概略構成図。
【図3】(a)及び(b)は、円形度の測定方法を説明するための説明図。
【図4】(a)、(b)及び(c)は、実クリーニング角θと変化量dθを説明するための説明図。
【図5】従来形状のブレードの説明図。
【図6】実施形態1に係る補強形状のブレードの説明図。
【図7】(a)及び(b)は変形例1に係る補強形状のブレードの説明図。
【図8】感光体の断面図。
【図9】帯電装置と感光体との概略説明図。
【図10】実施形態1に係るプリンタに着脱可能なプロセスカートリッジの概略構成を示す断面図。。
【図11】変形例3に係るプリンタ全体の概略構成図。
【図12】従来の、感光体ドラム(像担持体)に対するクリーニングブレードの配置を説明するための説明図。
【図13】感光体ドラムを静止させた状態で同クリーニングブレードを食込み量で当接させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図。
【図14】図13に示した状態において感光体ドラム1を図中矢印Aの方向へ表面移動させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 感光体ドラム
2 クリーニングブレード
3 金属支持板
4 現像装置
5 転写装置
6 定着装置
7 帯電装置
8 除電装置
9 クリーニング装置
10 潤滑剤塗布装置
100 画像形成装置
200 プロセスカートリッジ
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光体等の像担持体上に付着した球形トナーをクリーニングブレードによってクリーニングする複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置及びこれに用いるプロセスカートリッジに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の画像形成装置としては、転写工程後の像担持体表面に残留した転写残トナーをクリーニングブレードで掻き取ってクリーニングするものが広く知られている。このクリーニングブレードとしては、金属製のもの、ウレタンゴムなどの弾性材で形成されたものが知られている。前者のクリーニングブレードは、像担持体表面との当接部分が変形しにくいため、像担持体表面に当接するブレード先端部の加工精度が低い場合や像担持体表面の微小な凹凸がある場合には、ブレード先端部と像担持体表面との間を密着させることができない。そのため。ブレード先端部と像担持体表面との当接部分に微小な隙間が形成されてしまう。このような微小な隙間があると、その隙間を通じてトナーがすり抜け、クリーニング不良が生じやすい。これに対し、後者のクリーニングブレードは、像担持体表面との当接部分が像担持体表面に沿って変形するため、ブレード先端部の加工精度が多少低くても、また像担持体表面に微小な凹凸があっても、像担持体表面と密着することができる。よって、前者のクリーニングブレードに比べて、トナーがすり抜けにくくクリーニング性能に優れていると言える。したがって、クリーニングブレードとしては、ゴムなどの弾性材で形成されたものが広く実用化されている。
【0003】
また、近年、電子写真方式の画像形成装置の画像品質に対する要求が強くなっている。画像品質を向上させる為には、トナーの小粒径化、球形化がその有力な手段であり、重合法等により形成された球形に近いトナー(以下、「球形トナー」という。)を用いることとが主流となりつつある。この球形トナーは、従来の粉砕トナー(異形トナー)に比べて転写効率が高いなどの特徴があり、近年の高画質化の要求に応えることが可能であることが知られている。しかし、球形トナーは、従来の粉砕トナーをクリーニングするためのクリーニングブレードを用いて像担持体表面から除去しようとしても十分に除去することが困難であり、クリーニング不良が発生してしまうという問題を有している。
ここで、従来からのクリーニングブレードによるクリーニングについて説明する。クリーニングブレードは、像担持体の回転方向に対してカウンタ方向に当接しており、転写工程後に像担持体上に残留した転写残トナーがクリーニングブレードのエッジ部に達すると、これを像担持体上から掻き落す。
クリーニングブレードにはウレタンゴムのような弾性体を用いることから、弾性体と像担持体だけでは非常に高い摩擦係数となり、そのままでは、クリーニングブレードは像担持体に対して滑ることが出来ず、ブレードの巻き込みやビビリが発生してしまう。しかしながら、電子写真装置で用いられる現像剤や、現像剤の帯電制御、流動性制御の為に添加される小粒径の微粉体がブレードと像担持体の間に介在することにより、像担持体がクリーニングブレードに対して摺動可能となる。また、クリーニングブレードによって像担持体上から掻き落された転写残トナーの一部は像担持体の回転によって、ブレードエッジに滞留する。ブレードエッジに転写残トナーが滞留することによって、クリーニングブレードと像担持体との間に働く摩擦力が低下することにより、クリーニングブレードのメクレなどのない安定したクリーニング性が得られる。
一方、球形トナーを用いた場合には、ブレードエッジに球形トナーが滞留することが出来ず、クリーニングブレードと像担持体との間に働く摩擦力を低減することが出来なくなる。摩擦力が低減されないと、像担持体表面が削れて粉体が発生し、その削れた粉体がクリーニングブレードと像担持体との当接部に凝集し、この当接部が不安定になりトナーのすり抜けが発生する。
【0004】
特許文献1には、形状係数SF−1が100〜140でかつ形状係数SF−2が100〜120である真円度の高い球形トナーを用い、これを像担持体表面移動方向に対してカウンタ方向に当接させたクリーニングブレードによってクリーニングする画像形成装置が開示されている。この画像形成装置では、球形トナーを用いた場合にクリーニングブレードと像担持体表面との当接部分で発生するトナーのすり抜けを抑制するために、各種パラメータの数値範囲を規定している。具体的には、クリーニングブレードと像担持体表面との当接部分の線圧を、20[gf/cm]〜60[gf/cm](0.196[N/cm]〜0.588[N/cm])未満としている。また、クリーニングブレードの硬度は50〜80[°]であり、その反発弾性は10〜50[%]である。
【0005】
【特許文献1】特開2001−312191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、本発明者らによる鋭意研究の結果、特許文献1に記載されているように線圧が60[gf/cm](0.588N/cm)未満では、上述した球形トナーのすり抜けを十分に阻止できず、クリーニング不良の発生を十分に抑制できないことが判明した。そこで、本発明者らは、球形トナーのすり抜けによるクリーニング不良の発生メカニズムを独自に解明すべく種々の実験を行った。そして、このクリーニング不良の発生メカニズムは次のようなものであるとの結論に達した。以下、そのメカニズムについて説明する。
【0007】
図12は、像担持体としての感光体ドラム1に対する弾性ブレードとしてのクリーニングブレード2の配置を説明するための図である。このクリーニングブレード2は、感光体ドラム1の表面移動方向Aに対してその先端部分がカウンタ方向となるように感光体ドラム1表面に当接している。このときの初期接触角度はθであり、かつ、その食込み量はdである。ここで、「初期接触角」とは、次のように定義されるものである。すなわち、感光体ドラム1の軸方向から見て、感光体ドラム1が無いとしたときにクリーニングブレード2先端部分(図中二点鎖線)の感光体ドラム1表面移動方向Aの下流側側面(以下、単に「下流側側面」という。)2aが位置することになる仮想線Fと、感光体ドラム1の表面との交点Cにおける感光体ドラム1表面部分の接線Gをとる。そして、この接線Gと仮想線Fとのなす角θを、初期接触角と定義する。また、「食込み量」とは、次のように定義されるものである。すなわち、感光体ドラム1の軸方向から見て、接線Gと、感光体ドラム1が無いとしたときに、弾性ブレードの先端稜線であるクリーニングブレード2先端面の感光体ドラム表面移動方向Aの下流側縁部(以下、単に「ブレードエッジ」という。)2bが位置することになる仮想点を通る接線Gに平行な仮想線Hとの距離dを、食込み量と定義する。このようなクリーニングブレード2の配置を実現する場合、例えば、まず、ブレードエッジ2bを感光体ドラム1表面に接触させる。そして、その状態から、感光体ドラム1表面に対するクリーニングブレード2の相対的な姿勢を変えないように、その接触点における感光体ドラム1表面部分の法線方向に沿ってクリーニングブレード2を感光体ドラム1表面側へ移動させて、図12に示す状態にする。
【0008】
クリーニングブレード2は、感光体ドラム1表面に当接する先端部とは反対側の端部(後端部)が図示しないケーシングに固定された支持部材としての金属支持板3に接着されている。このようなクリーニングブレード2は、その厚さt1が0.5[mm]以上2.0[mm]以下であり、金属支持板3に接着されていない部分(自由端部分)の長さt2が3.0[mm]以上10.0[mm]以下であるのが一般的である。また、クリーニングブレード2の材料としては、ゴムなどの弾性部材が用られ、硬度が65[°]以上80[°]以下であり、反発弾性が20[%]以上60[%]以下であるポリウレタンでが広く用いられている。
【0009】
図13は、感光体ドラム1を静止させた状態でクリーニングブレード2のブレード先端部を食込み量dで当接させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム1軸方向から見た断面図である。このときのブレード先端部は、図示のように、その下流側側面が感光体ドラム1表面と接触した状態になる。この状態を「スリップ状態」という。
図14は、図13に示した状態において感光体ドラム1を図中矢印Aの方向へ表面移動させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図である。感光体ドラム1が図中矢印Aの方向へ表面移動すると、感光体ドラム表面に接触していたブレード先端部の下流側側面部分(ブレードエッジ2bを含む)が、感光体ドラム表面との摩擦力によって図中矢印Aの方向へ引っ張られる。これにより、ブレードエッジ2bが移動し、最終的には、図14に示すように、ブレードエッジ2bを含むブレード先端面の一部が感光体ドラム表面に接触し、ブレードニップを形成した状態となる。この状態を「スティック状態」という。このスティック状態におけるブレードエッジ2b周囲の弾性変形は、感光体ドラム1の表面移動中は、その弾性変形による復元力とその当接部分の動摩擦力とが平衡状態になるところで維持され、感光体ドラム1の表面移動停止中は、その弾性変形による復元力よりも大きい当接部分の静止摩擦力によって維持される。したがって、感光体ドラム1の表面移動中に当接部分の動摩擦力が変動せず、かつ、当接部分の静止摩擦力がスティック状態におけるブレード先端面のブレードエッジ2b周囲の弾性変形に対する復元力よりも大きい場合には、スティック状態が一定に維持される。
【0010】
上記スティック状態においては、上記スリップ状態の場合に比べて、クリーニングブレード2と感光体ドラム1表面とが当接している部分の面積が小さい。しかも、スティック状態においては、感光体ドラム1表面から受ける摩擦力により、スリップ状態では起きない、ブレードエッジ2b周囲がブレード先端面の法線方向に圧縮変形する。そして、この圧縮変形に対する復元力は、クリーニングブレード2と感光体ドラム1表面との当接圧を高める向きに働く。このように、スティック状態においては、感光体ドラム1表面との当接面積が小さく、かつ、圧縮による反発弾性力がクリーニングブレード2と感光体ドラム1表面との当接圧を高める向きに働くことから、上記スリップ状態の場合に比べて、その当接圧が高い状態になり、トナーのすり抜けが起きにくい。よって、トナーのすり抜けを抑制するためには、クリーニング時に安定してスティック状態を維持することが重要である。
【0011】
本発明者らは、実験により、感光体ドラム1に当接するクリーニングブレード2が部分的にスティック状態とスリップ状態とを往復する運動(以下、スティックスリップ運動という。)をしていることが分かった。この実験では、まず、感光体ドラム1表面と同様の摩擦特性を有する透明な表面移動部材の表面にクリーニングブレード2を当接させる。そして、この表面移動部材をその表面に球形トナーを付着させた状態で表面移動させ、そのときのクリーニングブレード2と表面移動部材との当接部分を、表面移動部材の裏面からカメラで撮影し、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動の様子を観察した。これは、スティック状態で安定している時に、部分的に感光体ドラム1表面の摩擦係数が変化し、感光体ドラム1表面とクリーニングブレード2との間の摩擦力が変化することにより発生する。具体的には、部分的に摩擦係数が下がると感光体ドラム1とク−ニングブレード1との間に働く摩擦力よりもクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力が大きくなり、スリップ状態になる。スリップ状態になると復元力が摩擦力よりも小さくなるため、感光体ドラム1の表面移動と共にスティック状態に戻される。一方、部分的に摩擦係数が大きくなると、感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力がクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力よりも大きくなり、ブレード先端部の下流側側面部分がさらに図中矢印A方向に引っ張られる。そして、摩擦係数が大きい部分が通過すると感光体ドラム1とク−ニングブレード2との間に働く摩擦力よりもクリーニングブレード2の弾性変形に対する復元力が大きくなり、スリップ状態になる。そして、スリップ状態になると復元力が摩擦力よりも小さくなるため、感光体ドラム1の表面移動と共にスティック状態に戻される。
そして、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動において、クリーニングブレード2がスリップしている時に多くの球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1との間をすり抜けている様子が観察された。
一方、クリーニングブレード2によるクリーニングが容易な粉砕トナーをクリーニングした場合には、ブレードエッジ2bと感光体ドラム1との当接部にトナーが滞留し、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との間に働く摩擦力が低下する。摩擦力が低下することにより、スティックスリップ現象の少ない安定したブレードニップが形成されており、良好なクリーニング性を得ることが出来た。
そして、球形トナーを用いた場合には、ブレードエッジに球形トナーが滞留することが出来ないため、クリーニングブレード2は感光体ドラム1との摩擦力によって、スティックスリップを繰り返す。これにより、不安定なブレードニップとなり、球形トナーがすり抜け、クリーニング不良となる。
【0012】
ここまでは、スティックスリップ運動によりトナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良について述べたが、図12で示した従来のクリーニングブレード2における不具合はそれだけではない。金属支持板3のクリーニングブレード2と接触する先端稜線である支持板エッジ3bの近傍のクリーニングブレード2に応力が集中し、この応力が集中する部分(以下、応力集中部)2Sで座屈が生じる恐れがあった。
クリーニングブレード2と感光体ドラム3との当接部で、球形トナーがすり抜けるのを防ぐのに必要な線圧を得るため、クリーニングブレード2は食い込み量dの分、感光体ドラム1に対して外側に曲がり、曲げ応力が生じている。そして、この曲げ応力は応力集中部2Sで最大となる。また、クリーニングブレード2に加わる応力は上述した曲げ応力に限らず、図中仮想線Fと平行な方向に圧縮応力が働くことも考えられる。これらの応力によって、応力集中部2Sに加わる応力が限界に達すると、クリーニングブレード2は座屈してしまう。座屈が発生すると、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との当接部で、所望の線圧を得ることが出来なくなる。所望の線圧を得ることが出来ないと、一度に多くのトナーのすり抜けが発生し、クリーニング不良となる。
【0013】
本発明は、以上の背景に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、球形トナーを用いた場合であっても、弾性ブレードと像担持体表面との当接部分を一度に多くのトナーがすり抜けを抑制し、良好なクリーニングを行うことができる画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、表面にトナー像を担持して表面移動する像担持体と、その先端稜線を含む所定の範囲が該像担持体表面と当接するように、支持部材で支持された弾性ブレードを用いて該像担持体表面に付着した不要トナーを該像担持体表面から除去するクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、該像担持体の表面移動方向に対して該弾性ブレードがカウンタ方向に当接するように配置されており、該支持部材の該弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の該弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて該弾性ブレード部分を補強する補強手段を設け、該弾性ブレードを形成する弾性体が23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下であり、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下であり、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力(以下、線圧と呼ぶ。)が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記弾性ブレード後端から先端にいたる途中から少なくとも部分的に肉厚を厚くし、肉厚を厚くした部分の厚みの段差面が、上記支持部材の先端面に密着するように該弾性ブレードを該支持部材に取り付け、該肉厚を厚くした部分によって上記補強手段を構成したことを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1の画像形成装置において、上記弾性ブレードの上記支持部材側の側面に、その後端面が該支持部材の先端面と密着するように、上記補強手段としての補強部材を固設したことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3の画像形成装置において、上記弾性ブレードを形成する弾性体がポリウレタンエラストマーであることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記トナー像を形成するトナーに潤滑剤を添加することを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設けたことを特徴とするものである。
また、請求項7の発明は、請求項1乃至4の画像形成装置において、上記像担持体の最表層に潤滑物質を内添することを特徴とするものである。
また、請求項8の発明は、請求項1乃至7の画像形成装置において、上記像担持体が無機微分粒子を含有した保護層を有することを特徴とするものである。
また、請求項9の発明は、請求項1乃至7の画像形成装置において、上記像担持体には保護層が設けられ、保護層のバインダー樹脂が架橋構造を有することを特徴とするものである。
また、請求項10の発明は、請求項9の画像形成装置において、上記保護層の上記架橋構造を有する上記バインダー樹脂の構造中に、電荷輸送部位を有することを特徴とするものである。
また、請求項11の発明は、請求項1乃至10の画像形成装置において、上記像担持体と上記クリーニング装置とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジを有することを特徴とするものである。
また、請求項12の発明は、請求項11の画像形成装置において、上記プロセスカートリッジが断熱構造を有することを特徴とするものである。
【0015】
上記請求項1乃至12の画像形成装置においては、像担持体に当接し、像担持体上の転写残トナーをクリーニングする弾性ブレードの各種パラメータの数値範囲が次のようになっている。
23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下、JISA硬度が70[%]以上90[°]以下、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下。
弾性ブレードの各種パラメータの数値範囲が上記範囲内とすることにより、スティックスリップ運動を抑制することが出来、ブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することが出来る。
また、支持部材の弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて補強する補強手段を設けることにより、弾性ブレードの一部に応力が集中し、弾性ブレードが座屈することを防止することが出来る。弾性ブレードの座屈を防止することで、座屈して線圧が維持できないことに起因するブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
請求項1乃至12の発明によれば、ブレード当接部におけるトナーのすり抜けを抑制することができるので、球形トナーを用いた場合であっても良好なクリーニングを行うことができるという優れた効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
[実施形態1]
以下、本発明を、電子写真方式の画像形成装置であるプリンタに適用した一実施形態(以下、実施形態1と呼ぶ)について説明する。
まず、実施形態1に係るプリンタ全体の構成及び動作について説明する。
図2は、実施形態1に係るプリンタ全体の概略構成図である。このプリンタは、図中矢印Aの方向に回転する像担持体としての感光体ドラム1を備えている。感光体ドラム1は、アルミニウム基体の外周面に有機感光体からなる感光層を形成したものを用い、そのドラム表層がポリカーボネート製のもので、オイラーベルト法の測定により測定した摩擦係数μが0.3≦μ≦0.6の範囲内のものである。この感光体ドラム1の周囲には、帯電手段としての帯電装置7と、潜像形成手段としての露光装置3、現像手段としての現像装置4、転写手段としての転写装置5、クリーニング手段としてのクリーニング装置9及び除電手段としての除電装置8が配置されている。また、転写装置5により転写が行われる転写領域に対して、紙などの記録材Pが搬送される記録材搬送方向(図中矢印Bの方向)の下流側には、記録材P上のトナー像を定着させる定着手段としての定着装置6が配置されている。
【0018】
帯電装置7は、感光体ドラム1の表面を一様に帯電するものである。この帯電装置7は、帯電部材を感光体ドラム1の表面に接触させ、又は感光体ドラム1の表面と微小な空隙を空けて配置し、これに帯電バイアスを印加することによって感光体ドラム1表面を所望の極性及び所望の電位に一様帯電する。この帯電部材としては、例えば弾性体からなる帯電ローラや、ワイヤー電極とグリッド電極を用いたスコロトロン帯電器などを用いることができる。なお、帯電装置7としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0019】
露光装置3は、帯電装置7によって帯電された感光体ドラム1の表面に、画像データに応じた静電潜像を形成するものである。この露光装置3は、例えば、発光素子としてLD(Laser Diode)あるいはLED(Light Emitting Diode)を使用し、一様に帯電された感光体ドラム1表面に対して画像データに基づく光を照射することにより、その感光体ドラム1表面に静電潜像を形成する。なお、露光装置3としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0020】
現像装置4は、感光体ドラム1の表面に形成された静電潜像にトナーを付着させて現像を行うものである。この現像装置4は、固定配置された磁界発生手段としてのマグネットローラを内部に有する現像剤剤担持体としての現像ローラ4aを備えている。この現像ローラ4aは、表面に現像剤を担持しながら回転することによって、現像剤を感光体ドラム1と対向する現像領域へ搬送する。実施形態1では、現像剤としてトナーとキャリアからなる二成分現像剤を用い、マグネットローラの磁力により現像領域でキャリアを穂立ちさせてブラシ状にして現像を行う磁気ブラシ現像方式を採用している。なお、現像剤としては、キャリアを用いずにトナーのみからなる一成分現像剤を用いてもよい。上記現像ローラ4aには、現像バイアス電源から現像バイアスが印加される。これにより、現像領域において、現像ローラ4a表面の電位と感光体ドラム1表面の静電潜像部分における電位との間に電位差が生じ、この電位差によって形成される現像電界の作用を受けて、現像剤中のトナーが静電潜像へ付着する。これにより、感光体ドラム1上の静電潜像がトナー像になる。なお、現像装置4としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。
【0021】
転写装置5は、感光体ドラム1上のトナー像を、図中矢印Bの方向に搬送されてくる記録材P上へ転写するものである。この転写装置5は、転写ローラ等の転写部材を感光体ドラム1の表面に所定の押圧力で接触させ、その転写部材と感光体ドラム1との間に転写ニップを形成する。そして、この転写ニップで記録材Pを挟み込んだ状態で、転写バイアス電源からトナーとは逆極性の転写バイアスを転写部材に印加することによって形成される転写電界により、感光体ドラム1表面上のトナー像を記録材P上へ転写させる。なお、転写部材としては、例えば弾性体からなる転写ローラや転写ベルト、あるいは、ワイヤー電極とグリッド電極を用いたスコロトロン帯電器などを用いることができる。なお、転写装置5としては、このような構成に限らず、広く公知のものを利用することができる。このようにしてトナー像が転写された記録材Pは、定着装置6へ搬送され、ここでトナー像が定着された後、機外へ排出される。
【0022】
クリーニング装置9は、転写されずに感光体ドラム1の表面に残留した転写残トナーを感光体ドラム1の表面から除去するものである。このクリーニング装置9は、弾性ブレードとしてのクリーニングブレード2によって感光体ドラム1表面上の転写残トナーを掻き取って除去する。クリーニングブレード2の先端に溜まった転写残トナーは、クリーニング装置9の内部に落下する。そして、図示しないトナー搬送機構により廃トナーとして図示しない廃トナーボトルへ搬送され、ここに蓄えられる。このようにして廃トナーボトルに蓄えられた廃トナーは、サービスマンなどにより回収される。なお、クリーニング装置9の内部に落下した転写残トナーを、リサイクルトナーとして現像装置4などに搬送し、再度現像に使用するようにしてもよい。
【0023】
上記除電装置8は、感光体ドラム表面の残留電荷を除去するものである。残留電荷が除去された感光体ドラム1の表面は、次の画像形成に寄与することになる。なお、この除電装置8は、LEDなどを用いた光除電方式を採用しているが、これに限られるものではない。
【0024】
近年、トナーを用いて画像形成を行う画像形成装置100においては、より高精度で高精細な画像を形成すべく、高解像度の要求が高まっている。高解像度を達成する方法としては、粒径が小さく、かつ、球形に近い球形トナーを用いるのが効果的であることが知られている。そこで、実施形態1では、画質向上のために、トナーの粒径が2.0μm〜10μmで、円形度が0.98以上の球形トナーを使用している。ここでいう「円形度」は、フロー式粒子像分析装置FPIA−2000(東亜医用電子株式会社製、商品名)により計測した平均円形度である。具体的には、容器中の予め不純固形物を除去した水100〜150[ml]中に、分散剤として界面活性剤好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜0.5[ml]加え、更に測定試料(トナー)を0.1〜0.5[g]程度加える。その後、このトナーが分散した懸濁液を、超音波分散器で約1〜3分間分散処理し、分散液濃度が3000〜1[万個/μl]となるようにしたものを上記分析装置にセットして、トナーの形状及び分布を測定する。そして、この測定結果に基づき、図3(a)に示す実際のトナー投影形状の外周長をL1、その投影面積をSとし、この投影面積Sと同じ図3(b)に示す真円の外周長をL2としたときのL2/L1を求め、その平均値を円形度とした。
【0025】
球形トナーとしては、従来から広く用いられている粉砕法により形状が歪な異形のトナー(粉砕トナー)を加熱処理等して球形化したものや、重合法により製造されたトナーなどを用いることができ、その製造方法に限定されない。このような球形トナーにおいては、上述したように、粉砕トナーを感光体ドラム1表面から除去するために用いられていた従来のクリーニングブレード2では、球形トナーを感光体ドラム1表面から十分に除去しきれず、クリーニング不良が発生するという問題がある。
【0026】
そこで、本発明者らは、球形トナーをクリーニングブレード2でクリーニングする際に、球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1との当接部をすり抜けてクリーニング不良が発生する問題を解決するために、カウンタ方式のクリーングブレード2において、球形トナーを用いた場合にクリーニング不良が発生する原因について、鋭意検討を重ねた。
その結果、クリーニングブレード2の先端の微小振動(スティックスリップ)が球形トナーのクリーニング不良と大きく関係していることが分かった。スティックスリップは、感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力(Fbp)と、弾性体であるクリーニングブレード2の復元力(Fbr)との大小関係によって発生する。
感光体ドラム1とクリーニングブレード2との間に働く摩擦力Fbpと、クリーニングブレード2の弾性力Fbrにおいて、Fbp>Fbrの場合、クリーニングブレード2の先端は感光体ドラム1の表面移動方向に沿って移動する(スティック)。
また、Fbp<Fbrとなった場合には、感光体ドラム1の表面移動方向とは反対方向に向かって移動(スリップ)する。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動において、クリーニングブレード2がスリップしている時にクリーニングブレード2と感光体ドラム1とのブレードニップ部を球形トナーがすり抜けている様子が観察された。
【0027】
一方、クリーニングブレード2によるクリーニングが容易な粉砕トナーをクリーニングした場合には、スティックスリップの発生頻度が少なく、ブレードニップが安定している様子が観察された。すなわち、球形トナーをクリーニングする時に発生するスティックスリップを低減し、微小振動の少ない、安定したブレードニップを形成することによって球形トナーがクリーニング可能となる。具体的には、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動で往復する距離が短く、スティックスリップの発生頻度を少なくすることにより、球形トナーのすり抜けを防ぐことが出来る。しかしながら、ウレタンゴムなどの弾性部材からなるクリーニングブレード2を感光体ドラム1に押しつける場合には、多かれ少なかれ、必ずスティックスリップ運動が発生する。そこで、我々はスティックスリップが起きる場合にも、球形トナーがクリーニング可能な場合を検討した。
【0028】
スティックスリップ運動を詳しく調べる為に、クリーニングブレード2と感光体ドラム1が当接するブレードエッジ2bに着目し、高倍率のレンズを用いて観察を行った。図4(a)に観察結果の概要を示す。ブレードエッジ2bは、感光体ドラム1との当接によって、先端めくれ部分2cが形成され、このめくれ部分2cにクリーニングブレード2を感光体ドラム1に押しつける為に付与した荷重が集中する。表面移動する感光体ドラム1とブレードエッジ2bとの間に働く摩擦力によって、クリーニングブレード2はスティック状態となり、感光体ドラム1表面移動方向に沿って移動する。クリーニングブレード2の復元力が摩擦力より大きくなったところで、スリップ状態に移行し、感光体ドラム1の表面移動方向と反対向きに移動する。このようなスティックスリップ運動により、ブレードエッジ2bは感光体ドラム1の表面移動方向に対して、往復運動をする。この時、クリーニングブレード2と感光体ドラム1とのなす角度θ(実クリーニング角度:以下で定義する)も変化する。スティック状態になるにつれ、感光体ドラム1の表面移動方向にそってブレードエッジ2bが引っ張られる場合には、θは小さくなる。一方、スリップ運動中は、θはスティック状態に比べ大きくなる。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動の振幅が小さいほど、θの値の変化(=dθ)は小さくなる。本発明者等は、クリーニングブレード2によるクリーニングの安定性とスティックスリップ運動に相関があると考え、
安定性∝(1/dθ)
とした。
ここで、実クリーニング角θと変化量dθを次のように定義する。
実クリーニング角θは、ブレード先端部を観察した画像から規定した。すなわち、図4(a)に示すように、基準となる球形トナーとブレードとの接線と、球形トナーと感光体との接線がなす角度を実クリーニング角度θとした。ここで、粒径が7μmの球形トナーTを基準とした。具体的には、観察画像中に7μmの円を当てはめ、接点、接線を求め、実クリーニング角度θを求めた。
また、図4(b)、(c)に示すように、実クリーニング角の変化量dθは、クリーニング動作時の実クリーニング角θの最大値θmax、最小値θminから次式のように定義する。
dθ=θmax−θmin
【0029】
球形トナーをクリーニングする場合には、ブレードエッジ2bと感光体ドラム1とのブレードニップ部にトナーが滞留しにくいため、滞留トナーによって摩擦力が軽減し、スティックスリップ抑制する効果が働きにくい。そのため、粉砕トナーをクリーニングする場合に比べ、スティックスリップが激しくなる傾向がある。クリーニングブレード2のスティックスリップ運動は、少なくともクリーニングブレード2、感光体ドラム1、トナーの三体の影響が複雑に関係している。
【0030】
そこで、本発明者等は、クリーニングブレード2がスティックスリップ運動をしにくいブレードについて検討を行った。ブレード特性の中で、スティックスリップと密接な関係にある反発弾性と硬度に着目した。反発弾性は、高反発弾性であるほど、スティックスリップ運動が激しくなり、低反発弾性であるほど、スティックスリップ運動は抑制される傾向にある。また、硬度が高いほど、ブレードの変形が抑制され、スティックスリップ運動は抑制される傾向にある。
【0031】
[実験1]
ブレードの物性値を変更によってスティックスリップ低減を図るために、以下の実験を行い、ブレードの物性値とスティックスリップ運動との関係を明らかにした。図12に示した形状のクリーニングブレード2を感光体ドラム1と同等の摩擦係数を有する透明な表面移動部材に当接し、この表面移動体に球形トナーを付着させ、クリーニングブレード2でクリーニングを行いその時のクリーニング性を評価した。また、反発弾性・硬度と実クリーニング角変動量dθとの関係を明らかにすべく、下記の実験条件のもとで、ブレード(1)〜(12)のクリーニング時の実クリーニング角θの変動量dθを測定した。
実験条件:
食込み量d=1.0[mm]
表面移動体:μ=0.3〜0.6(オイラーベルト法による)
表面移動体線速:100[mm/s]
初期接触角β=20[°]
クリーニングブレード厚さt1=2.0[mm]
自由長t2=7.0[mm]
【表1】
【0032】
表1のクリーニング性は、クリーニング後の像担持体表面の残トナー量を下記の基準で判別した。
○:完全にクリーニングされた場合。
△:部分的に筋状のクリーニング不良が発生した場合、あるいは全面に若干のトナーが残留している場合。
×:全面に筋状あるいは多量のトナーが残留している場合。
【0033】
表1より、硬度が等しく80[°]前後で、反発弾性が30[%]以下のブレード(3)、(7)、(9)、(10)は、クリーニング時の実クリーニング角の変動量dθが約20[°]以下で、スティックスリップ運動の振幅が小さく、クリーニング性が良好となることを示している。一方、反発弾性が約35[%]以上のブレードでは、dθが大きくなり、クリーニング性も悪くなっていることから、低反発弾性のブレードとすることによって、クリーニング性が有利になると考えられる。
そして、表1はクリーニングブレード2のスティックスリップ運動による実クリーニング角の変動量dθが小さく、クリーニングブレードの先端挙動が安定しているほど、球形トナーのクリーニングに有利であることを示している。
一方、表1のブレード(1)、(6)、(8)の様に、実クリーニング角の変動量dθが20°以下で、ブレードニップ部が安定している場合でも、クリーニング性が良好にならない場合がある。
この点に関して、明らかにする為に、表1で示した(1)〜(12)のブレードについて、初期接触角β0=20[°]で、食い込み量1.0[mm]の時の線圧と、食い込み量0.7[mm]の時の線圧とを測定し、それぞれの食い込み量についてクリーニング性を評価し、その結果を表2に示す。
【表2】
【0034】
ここで、反発弾性の値が近いにも関わらず、表1ではクリーニング性に差があった、ブレード(1)と(3)、ブレード(6)と(7)、ブレード(8)と(9)について検討する。
ブレード(1)と(3)とを比較した場合、(1)の線圧は0.49[N/cm](50[gf/cm])、(3)の線圧0.7938[N/cm](81[gf/cm])となった。
また、ブレード(6)と(7)とを比較した場合、(6)の線圧は0.6762[N/cm](69[gf/cm])、(7)の線圧は0.833[N/cm](85[gf/cm])となった。
また、ブレード(8)と(9)とを比較した場合、(8)の線圧が0.7154[N/cm](73[gf/cm])、(9)の線圧が0.784[N/cm](80[gf/cm])となった。
いずれの場合も、ブレード硬度が下がることにより、線圧が低下していると考えられる。
【0035】
ブレードのスティックスリップを低減し、安定したブレードニップとなった場合でも、ブレード線圧が低い場合には、球形トナーが弾性体であるクリーニングブレードを押し上げ、ブレードニップ部に侵入し、クリーニング不良となる。したがって、トナーのブレードニップ部への侵入を阻止するための荷重(線圧)をブレードに付与する必要がある。
球形トナーは、従来の粉砕トナーに比べてブレードニップにもぐり込みやすい為、球形トナーのもぐり込みを抑制するためには、従来の粉砕トナーに比べて、より大きな荷重をかける必要がある。
【0036】
ブレード(4)は、硬度78[°]で線圧が0.9604[N/cm](98[gf/cm])であり、球形トナーのブレードに潜り込む力を押さえるには十分な線圧が付与されている。しかし、反発弾性が50[%]で高いために、スティックスリップが大きく、不安定なブレードニップとなり、球形トナーをクリーニングすることができないと考えられる。
ブレード(11)もブレード(4)と同様に、線圧0.7938[N/cm](81[gf/cm])は十分であるが、反発弾性が35[%]であり、ブレードのスティックスリップ運動が大きい為に、クリーニング不良となると考えられる。
一方、ブレードの反発弾性が20%以下で、食い込み量dが1.0[mm]の時は良好なクリーニング性を示したブレード(3)、(7)でも、ブレードの像担持体への食込み量dを1.0[mm]から0.7[mm]にした場合には、クリーニング不良が発生した。これは、食い込み量dを小さくしたことで、線圧が0.784[N/cm](80g[f/cm])以下になってしまい、球形トナーのすり抜けを防ぐために必要な線圧が得られなかったためである。
以上の事から、像担持体表面の摩擦係数がμ=0.3〜0.6(オイラーベルト法で測定)の像担持体上から球形トナーをクリーニングする為には、反発弾性が8.0〜30%(23℃)、硬度70〜90°、線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])以上であることが必要である。
【0037】
次に、クリーニングブレード2の形状について検討する。
上述の実験1で用いたブレード支持部材としての金属支持板3に短冊形状のクリーニングブレード2を張り合わせた形状のブレード(以後、従来形状と呼ぶ)を図5に示す。
従来形状のクリーニングブレード2を用いてクリ−ニングを行う場合には、クリーニングブレード2の金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍の部分である図中2Sに応力が集中してしまう。応力が集中する部分の強度が充分ではないと、クリーニングブレード2や他の部材について想定された寿命に達する前に、応力が集中する部分でクリーニングブレード2が座屈してしまう恐れがある。クリーニングブレード2が座屈してしまうと、クリーニングブレード2と感光体ドラム1とが当接する部分に十分な押しつけ力が付与できず、当接部での線圧も維持できず、球形トナーのもぐり込みを阻止できない。
例えば、表1に記載のブレード(1)の場合には、硬度70[°]のために、食込み量d=1.0[mm]、初期当接角β=20[°]の場合には、線圧が0.49[N/cm](50[gf/cm])となり、球形トナーのもぐり込みを阻止するのに十分な線圧が得られない。そこで、応力が集中する部分に補強手段としての補強構造を設け、座屈を抑制するクリーニングブレードについて説明する。
【0038】
図1は実施形態1に適用するクリーニングブレード2を感光体ドラム軸方向から見たときの拡大図であり、図6は図1中のクリーニングブレード2の説明図である。図6に示す様に、弾性体であるクリーニングブレード20の断面の形態が概ね凸形状となるようにほぼ中央部に肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとからなる。そして、肉厚部20γとブレード根元側肉薄部20βとの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着して接着されることで支持される形状(以後、補強形状と呼ぶ)となっている。図6に示すように、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍で従来形状のブレードであれば応力が集中していた箇所にかかる応力を分散させて、クリーニングブレード2を補強する補強構造とすることにより、クリーニングブレードの座屈を抑制することができる。
【0039】
[実験2]
実験1で従来形状のブレードでは十分な線圧が得られなかったゴム材料について、補強構造とした場合の線圧を測定した。実験条件は、ブレードの形状が異なる以外は実験1と同じである。
実験2の結果を表1に示す。
実験1の
ブレード(1)と同じ硬度70[°]、反発弾性8.0[%]
ブレード(6)と同じ硬度71[°]、反発弾性17[%]
ブレード(8)と同じ硬度72[°]、反発弾性23[%]
上記3つのウレタンエラストマーを用いて、図6のような形状とした場合に、線圧を測定した。
図5及び図6の図中tで示した各部分の長さはそれぞれ、t0=1.6[mm]、t1=2.0[mm]、t2=7.0[mm]、t3=11[mm]、t4=4.0[mm]、t5=1.6[mm]である。
【表3】
【0040】
表3に示すように、従来形状に比べて、補強形状としたことにより、ブレード(1)、(6)、(8)共に、容易にブレード線圧をあげることが可能となり、本発明において球形トナーのもぐり込みを阻止するのに必要な線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])以上の線圧を得ることが出来、良好なクリーニングが可能となる。
また、実験1で良好なクリーニング性を示したブレードよりも、クリーニングブレード自体の硬度が低いため、硬度が高いものよりも感光体ドラムに密着することが出来、良好なクリーニング性を得ることができる。
【0041】
しかしながら、表3の食い込み量d=1.0[mm]の時の線圧は、何れのブレードにおいても1.176[N/cm](120[gf/cm])を越えるほど高い線圧になっている。クリーニングブレード20と感光体ドラム1との当接部の線圧が高すぎると、感光体ドラム1の駆動トルクが高くなったり、摺擦されること各部材の寿命が短くなったりする恐れがあり、好ましくない。よって、クリーニングブレード20と感光体ドラム1との当接部での線圧は1.176[N/cm](120[gf/cm])とする。実施形態1では表3のブレード(1)で食い込み量d=0.7[mm]のブレードを採用する。
図5のようにクリーニングブレード2が従来形状の場合には、低硬度の弾性部材のクリーニングブレード2を用いた場合には、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍となるクリーニングブレード2の応力集中部2Sで座屈が発生し、十分な線圧がブレード先端にかからなかった。しかしながら、図6では、金属支持板3の支持板エッジ3bの近傍となるクリーニングブレード2の部分にかかる応力を分散させて、クリーニングブレード2を補強する補強構造としての肉厚部20γを設けている。これにより、低硬度の弾性部材であるブレード(1)を用いた場合にも、クリーニングブレード先端に十分な線圧が付与することが可能となり、クリーニング不良の発生が抑制できる。
【0042】
次に、実施形態1に用いられる感光体ドラム1の構成について、その一例を記す。
感光体ドラム1は負帯電性の有機感光体であり、直径30[mm]のドラム状導電性支持体50上に感光層等を設けたものである。図8は、実施形態1に用いた感光体ドラム1を表す断面図である。基層としての導電性支持体50上に、絶縁層である下引き層51が設けられている。そして、その上に感光層としての電荷発生層(CGL)52、電荷輸送層(CTL)53が設けられている。さらにその上に表面保護層(FR)54が積層されている。
【0043】
導電性支持体50としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すものを用いることができる。例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を、蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいは、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを、押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体50として用いることができる。
この他にも、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても導電性支持体50として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、またアルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などがあげられる。また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N −ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体50として良好に用いることができる。
【0044】
次に感光層について説明する。感光層は単層でも積層でもよいが、説明の都合上、先ず電荷発生層52と電荷輸送層53とからなる積層構成の場合から述べる。
電荷発生層52は、電荷発生物質を主成分とする層である。電荷発生層52には公知の電荷発生物質を用いることが可能であり、その代表として、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、キナクリドン系顔料、キノン系縮合多環化合物、スクアリック酸系染料、他のフタロシアニン系顔料、ナフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩系染料等が挙げられ、これらは有用に用いられる。これら電荷発生物質は単独でも、2種以上混合して用いることも可能である。
電荷発生層52は、電荷発生物質を必要に応じて結着樹脂とともに適当な溶剤中にボールミル、アトライター、サンドミル、超音波などを用いて分散し、これを導電性支持体50上、あるいは下引き層51上に塗布し、乾燥することにより形成される。
電荷発生層52には、必要に応じて結着樹脂中に上記電荷発生物質を分散させることができる。用いることができる結着樹脂の例としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリスルホン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド、ポリビニルベンザール、ポリエステル、フェノキシ樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリフェニレンオキシド、ポリアミド、ポリビニルピリジン、セルロース系樹脂、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。結着樹脂の量は、電荷発生物質100重量部に対し0〜500重量部、好ましくは10〜300重量部が適当である。結着樹脂の添加は、分散前あるいは分散後どちらでも構わない。
ここで用いられる溶剤としては、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチルセルソルブ、酢酸エチル、酢酸メチル、ジクロロメタン、ジクロロエタン、モノクロロベンゼン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、リグロイン等が挙げられるが、特にケトン系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が良好に使用される。これらは単独で用いても2 種以上混合して用いてもよい。
電荷発生層52は、電荷発生物質、溶媒及び結着樹脂を主成分とするが、その中には、増感剤、分散剤、界面活性剤、シリコーンオイル等のいかなる添加剤が含まれていても良い。
塗布液の塗工法としては、浸漬塗工法、スプレーコート、ビートコート、ノズルコート、スピナーコート、リングコート等の方法を用いることができる。電荷発生層52の膜厚は、0.01〜5[μm]程度が適当であり、好ましくは0.1〜2[μm]である。
【0045】
次に、電荷輸送層53について、説明する。電荷輸送層53は、電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層52上に塗布、乾燥することにより形成できる。また、必要により単独あるいは2 種以上の可塑剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。
電子輸送物質としては、例えばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ベンゾキノン誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。
正孔輸送物質としては、ポリ−N−ビニルカルバゾールおよびその誘導体、ポリ−γ−カルバゾリルエチルグルタメートおよびその誘導体、ピレン−ホルムアルデヒド縮合物およびその誘導体、ポリビニルピレン、ポリビニルフェナントレン、ポリシラン、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの電荷輸送物質は単独、または2種以上混合して用いられる。
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。また、電荷輸送層53の膜厚は解像度・応答性の点から、25[μm]以下とすることが好ましい。下限値に関しては、使用するシステム(特に帯電電位等)に異なるが、5[μm]以上が好ましい。
ここで用いられる溶剤としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトンなどが用いられる。これらは単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。
【0046】
次に感光層が単層構成の場合について述べる。感光層は、前述の電荷発生物質、電荷輸送物質、結着樹脂等を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを導電性支持体50上ないし下引き層51上に塗布、乾燥することによって形成できる。電荷輸送物質を含有させずに、電荷発生物質と結着樹脂とから構成してもよい。また、必要により可塑剤やレベリング剤、酸化防止剤等を添加することもできる。
結着樹脂としては先に電荷輸送層53で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層52で挙げた結着樹脂を混合して用いてもよい。もちろん、先に挙げた高分子電荷輸送物質も良好に使用できる。結着樹脂100重量部に対する電荷発生物質の量は5〜40重量部が好ましく、電荷輸送物質の量は0〜190重量部が好ましく、さらに50〜150重量部であるればより好ましい。
感光層は、電荷発生物質、結着樹脂を電荷輸送物質とともにテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジクロロエタン、シクロヘキサン等の溶媒を用いて分散機等で分散した塗工液を、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコートなどで塗工して形成できる。感光層の膜厚は、5〜25[μm]程度が適当である。
【0047】
次に、下引き層51について説明する。実施形態1に係る感光体ドラム1においては、導電性支持体50と感光層との間に下引き層51を設けることができる。下引き層51は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。下引き層51にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。また、これらの下引き層51は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に実施形態1の下引き層51として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、実施形態1の下引き層51には、Al2O3を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層51の膜厚は0〜5[μm]が適当である。
【0048】
次に、保護層54の一つ目の実施例としてFR−OPCを採用した構成について説明する。
感光体の最表面層に機械的磨耗を防止するために保護層54を設けることも可能である。例えば耐磨耗性を向上させるためにアモルファスシリコンで表面コートした感光体や、電荷輸送層53のさらに表面にアルミナや酸化スズ等を分散させた最表面層を設けた有機感光体などを用いる事もできる。
以上説明したように、実施形態1に用いることができる感光体1の構成は特定の構成に限定されるものではない。導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層のみを設けた1層構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53とが積層された構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質と電荷輸送物質を主成分とする感光層を設け、その上に更に保護層を設けた構成や、導電性支持体50の上に電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52と電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53とを積層し、その電荷輸送層53の上に保護層を設けた構成や、導電性支持体50の上に電荷輸送物質を主成分とする電荷輸送層53と電荷発生物質を主成分とする電荷発生層52とを積層し、その電荷発生層52の上に保護層を設けた構成など、種々の層構成を有する感光体に適用可能である。
【0049】
次に、保護層54の2つ目の実施例としてsuper−FR−OPCを採用した構成について説明する。
保護層54のバインダー構成として、架橋構造からなる保護層も有効に使用される。架橋構造の形成に関しては、1分子内に複数個の架橋性官能基を有する反応性モノマーを使用し、光や熱エネルギーを用いて架橋反応を起こさせ、3次元の網目構造を形成するものである。この網目構造がバインダー樹脂として機能し、高い耐摩耗性を発現するものである。
電気的な安定性、耐刷性、寿命の観点から、上記反応性モノマーとして、全部もしくは一部に電荷輸送能を有するモノマーを使用することは非常に有効な手段である。このようなモノマーを使用することにより、網目構造中に電荷輸送部位が形成され、保護層としての機能を十分に発現することが可能となる。
電荷輸送能を有する反応性モノマーとしては、同一分子中に電荷輸送性成分と加水分解性の置換基を有する珪素原子とを少なくとも1つずつ以上含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とヒドロキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とカルボキシル基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とエポキシ基とを含有する化合物、同一分子中に電荷輸送性成分とイソシアネート基とを含有する化合物等が挙げられる。これら反応性基を有する電荷輸送性材料は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
さらに好ましくは、電荷輸送能を有するモノマーとして、電気的・化学的安定性が高いこと、キャリアの移動度が速いこと等から、トリアリールアミン構造を有する反応性モノマーが有効に使用される。これ以外に塗工時の粘度調整、架橋型電荷輸送層53の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能の重合性モノマー及び重合性オリゴマーを併用することができる。これらの重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
また本発明においては、熱または光を用いて正孔輸送性化合物の重合または架橋を行うが、熱により重合反応を行う際には、熱エネルギーのみで重合反応が進行する場合と重合開始剤が必要となる場合があるが、より低い温度で効率よく反応を進行させるためには、開始剤を添加することが好ましい。
光により重合させる場合は、光として紫外線を用いることが好ましいが、光エネルギーのみで反応が進行することはごく稀であり、一般には光重合開始剤が併用される。この場合の重合開始剤とは、主には波長400nm以下の紫外線を吸収してラジカルやイオン等の活性種を生成し、重合を開始させるものである。なお、本発明においては、上述した熱及び光重合開始剤を併用することも可能である。
このように形成した網目構造を有する電荷輸送層53は、耐摩耗性が高い反面、架橋反応時に体積収縮が大きく、あまり厚膜化するとクラックなどを生じる場合がある。このような場合には、保護層を積層構造として、下層(感光層側)には低分子分散ポリマーの保護層を使用し、上層(表面側)に架橋構造を有する保護層を形成しても良い。
【0050】
感光体ドラム1において、保護層塗工液および膜厚・作成条件を下記のように代えた以外は実施形態1と同様にして作成してもよい。
メチルトリメトキシシラン:182部、ジヒドロキシメチルトリフェニルアミン:40部、2−プロパノール:225部、2%酢酸:106部、アルミニウムトリスアセチルアセトナート:1部を混合し、保護層用の塗布液を調製した。この塗布液を前記電荷輸送層53の上に塗布・乾燥し、110℃、1時間の加熱硬化を行い、膜厚3μmの保護層を形成した。
【0051】
感光体ドラム1において、保護層塗工液および膜厚・作成条件を下記のように代えた以外は実施形態1と同様にして作成してもよい。
化学式1に示す正孔輸送性化合物を30部、化学式2に示すアクリルモノマー及び光重合開始剤(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)0.6部を、モノクロロベンゼン50部/ジクロロメタン50部の混合溶媒中に溶解し、表面保護層54用塗料を調製した。この塗料をスプレーコーティング法により先の電荷輸送層53上に塗布し、メタルハライドランプを用いて500mW/cm2の光強度で30秒間硬化させることによって、膜厚5μmの表面保護層54を形成した。
【化1】
【化2】
【0052】
次に、実施形態1に用いられる帯電装置7の構成について、その一例を示す。
帯電手段として、従来よりコロナ放電を利用したコロナ帯電方式を用いるものがあった。コロナ帯電方式は、チャージワイヤを被帯電体に近接して配設し、チャージワイヤに高電圧を印加することにより、チャージワイヤと被帯電体との間にコロナ放電を起こし、これによって被帯電体を帯電するものである。しかしながら、コロナ帯電方式の場合には、コロナ放電に伴いオゾンや窒素酸化物(NOx)などの放電生成物質が発生する。放電生成物質は、感光体方面に画像形成の際に悪影響を及ぼす硝酸又は硝酸塩の膜を形成する恐れがあるため、できればその発生を回避したいところである。
そこで、近年ではコロナ帯電方式に代えて放電生成物質の発生が少なく、低電力で帯電ができる接触帯電方式又は近接帯電方式の開発が盛んである。これらの方式は、ローラ、ブラシ、又はブレード等の帯電部材を感光体等の被帯電体に接触又は近接して対向させ、帯電部材に電圧を印加することによって被帯電体の表面を帯電させるものである。この方式によれば、コロナ帯電方式に比して、放電生成物質の発生が少なく低電力化を実現することができるため有用性が高い。また、大掛かりな帯電装置を必要としないため装置の小型化が可能であり、装置の小型化が望まれているニーズに合致する。
【0053】
実施形態1においては、上記のような低電力化、低ハザード化、小型化のニーズを達成する一例として、以下にしめす非接触ローラ帯電方式を用いた例をしめす。
球形トナーを用いた場合、上記のように、従来の粉砕トナーに比べてクリーニング不良が発生しやすい。実施形態1のように、球形トナーがクリーニングブレード2と感光体ドラム1をすり抜けることを抑制した画像形成装置においても、万が一クリーニング不良が発生した場合でも、非接触ローラ帯電方式であれば、クリーニングブレード2をすり抜けた球形トナーが帯電装置7に付着することが無い為、帯電異常による異常画像の発生が起きないという利点がある。
実施形態1に係る帯電装置7は非接触となるよう近接させて対向配置した帯電部材による交流印加放電により感光体を帯電せしめている。なお、接触させて対向配置した帯電部材による交流印加放電により感光体を帯電せしめる方法がある。この方法を適用する場合には、感光体表面と帯電部材との接触性を向上させ、かつ感光体に機械的ストレスを与えない弾性部材を用いることが好ましい。ただし、弾性部材を用いると、帯電ニップ幅が広くなり、これに起因して帯電ローラ側に保護物質が付着しやすくなることがある。よって、被帯電体の高耐久化には非接触により帯電させる方が有利である。
【0054】
図9は、帯電装置7と感光体ドラム1との概略説明図である。帯電装置7は、帯電部材としての帯電ローラ7a、スペーサ22、スプリング15、電源16とからなる。帯電ローラ7aには、軸部21aと帯電部としてのローラ部21bとがある。このうちローラ部21bは、感光体ドラム1に対向して感光体ドラム1の表面を帯電する機能を担っており、軸部21aの回転によって回動可能なように構成されている。帯電ローラ7a表面の帯電部21bが感光帯表面に対して微小な間隙で対向配置するよう帯電ローラに間隙保持部材であるスペーサ22を設けている。このスペーサ22により、感光体ドラム1表面のうち画像が形成される画像形成領域11に対向する部分は感光体ドラム1と非接触となるよう配設されている。ローラ部21bの長手方向の寸法は、感光体ドラム1の画像形成領域よりも長く設定されており、感光体ドラム1の非画像形成領域12にスペーサ22を当接せしめることにより、上記微小なギャップ14を形成している。このスペーサ22 を介して帯電ローラ7a は、感光体ドラム1表面に連れまわって回転するようになっている。微小ギャップ14は、帯電ローラ部21bと感光体ドラム1との最近接部が1〜100[μm]となるように構成されている。
この最近接距離は、30〜65[μm]であることがさらに好ましい。実施形態1の装置では、50[μm]となるように配設した。軸部21aには、帯電ローラ7aを被帯電体へ向けて押圧するためのスプリング15が取り付けられている。これにより上記微小ギャップ14を精度良く維持することが可能となる。
帯電ローラ7aは、帯電用の電源16が接続されており、感光体ドラム1表面と帯電ローラ7a表面との間の微小な空隙において、交流印加放電により感光体ドラム1表面を均一に帯電せしめる。実施形態1では、直流成分であるDC電圧に交流成分であるAC電圧が重畳された交番電圧が帯電ローラ7aの帯電部へ印加されるようになっている。交番電圧を用いることにより、微小なギャップ変動に起因する帯電電位のバラツキなどの影響が抑制され、均一な帯電が可能となる。
【0055】
帯電ローラ7aは、円柱状を呈する導電性支持体としての芯金と、この芯金の外周面上に形成された抵抗調整層とから構成される。実施形態1では、帯電ローラ7aの直径を10[mm]とした。
帯電ローラ7aの表面は、例えばゴム部材などの既知の材料を用いることができるが、樹脂材料で構成することがより好ましい。ゴム部材を用いると、ゴムの吸水や、たわみの発生により、感光体ドラム1との微小な間隙を維持することが困難となるからである。作像条件によっては帯電ローラ7aの中央部のみが感光体表面に突発的に接触する可能性がある。このような局所的、突発的な帯電ローラ7aの感光体ドラム1への接触による感光体表面層の乱れに対応することは困難である。従って、非接触帯電方式により感光体を帯電する場合には、帯電ローラ7aと感光体ドラム1との微小間隙を均一に維持することができる硬質の材料を用いることがより好ましい。
【0056】
次に、帯電ローラ7aの表層について説明する。
帯電ローラ7aの表面が硬質な材料としては、例えば、以下のようなものを用いることができる。抵抗調整層として、高分子型イオン導電剤が分散する熱可塑性樹脂組成物(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン及びその共重合体等)により形成し、抵抗調整層の表面を硬化剤により硬化皮膜処理されたものなどである。硬化皮膜処理は、例えば、イソシアネート含有化合物を含む処理溶液に抵抗調整層を浸漬させることにより行うことができる。あるいは、抵抗調整層の表面に改めて硬化処理皮膜層を形成してもよい。
【0057】
また、実施形態1の画像形成装置100は、図10に示すように、少なくともクリーニングブレード2と感光体ドラム1とを一体に備えたプロセスカートリッジ200を有している。プロセスカートリッジ200とすることにより、ブレード寿命、像担持体寿命が来た場合にも、容易にユーザーが交換することが出来る。
また、プロセスカートリッジ200は断熱構造を有しており、クリーニングブレード2の使用環境であるプロセスカートリッジ200内の温度変動を小さくする構成としている。クリーニングブレード2はウレタンゴムなどを用いる場合には、特に環境変動により、ゴムの反発弾性が変化することで、クリーニング性に影響がでる。よって、プロセスカートリッジ200が断熱構造を有することにより、環境変動によるクリーニング性の低下を最小限に防ぐことが出来る。断熱構造としては、各種断熱シートや、発泡材をカートリッジケース内に張るなどの方法が簡易的であるが、前記方法に限らない。
【0058】
以上、実施形態1によればクリーニングブレード2の断面の形態が概ね凸形状となるように、ほぼ中央部に補強手段としてブレード厚を厚くした肉厚部20γと両端にブレード先端側肉薄部20αとブレード根元側肉薄部20βとからなる。そして、金属支持板3はブレード根元側肉薄部20βのブレード側面に密着して接着されている。そして、肉厚部20γの段差面20δが金属支持板3の先端面と密着して接着されることで支持される形状(以後、補強形状と呼ぶ)となっている。図6に示すように、図5で示す従来形状であれば応力が集中していた図5中応力集中部2Sにかかっていた応力を段差面20δと金属板の先端面との接触部に分散する補強構造を設けることにより、クリーニングブレード2の座屈を抑制することができる。さらに、クリーニングブレード2の23℃における反発弾性が8.0[%]で8.0[%]以上30[%]以下の範囲内であり、JISA硬度が70[°]で70[°]以上90[°]以下の範囲内であり、感光体ドラム1との当接部における線圧が1.0682[N/cm](109gf/cm)で0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)の範囲内である。このような物性値を示すクリーニングブレードを用いることにより、球形トナーのすり抜けを抑制することが出来、良好なクリーニングを行うことができる。
また、クリーニングブレード2を形成する弾性体として、ポリウレタンエラストマーを用いることにより、良好なクリーニングを行うことができる。
また、感光体ドラム1がアルミナや酸化スズ等の無機微粒子を分散させ、含有させた保護層54を有することにより、感光体ドラム1表面の耐磨耗性が向上し、トナーのすり抜け防止のために線圧を高くしても、感光体ドラム1の部材寿命を維持することができる。
また、感光体ドラム1の保護層54のバインダー樹脂が架橋構造を有することにより、感光体ドラム1の耐磨耗性が向上し、トナーのすり抜け防止のために線圧を高くしても、感光体ドラム1の部材寿命を維持することができる。さらに、バインダー樹脂の構造中に電荷輸送部位を有することにより、保護層54の性能が向上し、感光体ドラム1の部材寿命をさらに維持することができる。
また、少なくともクリーニングブレード2と感光体ドラム1とを一体にし、プロセスカートリッジ200とすることにより、ブレード寿命、像担持体寿命が来た場合にも、容易にユーザーが交換することが出来る。
また、プロセスカートリッジ200を耐熱性の構造とすることにより、特に温度変化に起因する環境変動により、ゴムの反発弾性が変化することで、クリーニング性に影響がでて、環境変動によるクリーニング性の低下となることを最小限に防ぐことが出来る。
【0059】
[変形例1]
実施形態1では補強構造として、クリーニングブレード20の中心部付近に肉厚部20γを設け、座屈の発生を抑制していたが、補強構造はこれに限るものではない。補強構造としては、応力が集中する図5中の応力集中部2Sからクリーニングブレード2先端方向に補強部材を設ける構成としてもよい。クリーニングブレード2の補強部材を設けた構成を図7(a)、図7(b)に示す。
図7(a)は、金属支持板3と同じ厚さの補強部材30Aを設け、弾性体であるクリーニングブレード30の自由長t6=3.0[mm]となるようにしている。補強部材30Aは、金属支持板3とは異なる材料でも、同じ材料でもよく、少なくともクリーニングブレード2側面に密着し、接着している。補強部材30Aの材料としては金属支持板3よりも硬度が低く、クリーニングブレード30よりも硬度が高い材料を用いることが望ましい。自由長t6の長さは適宜選択すればよく、上述の限りではない。
また、図7(b)では、金属支持板3の厚さよりも薄い補強部材40Aを弾性体であるクリーニングブレード40に貼り付けている。図では、クリーニングブレード40の最先端まで補強部材40Aを貼り付けているが、この限りではなく、補強部材40Aの長さは任意に設定すれば良い。
図7(a)や図7(b)で示した変形例1の構成は、図5で示した従来形状のクリーニングブレード2に補強構造として補強部材を設けた構成である。この構成であれば、従来のクリ−ニングブレード2に補強部材を設けるという容易な構成で、従来のクリーニングブレードのクリーニング性を向上することができる。
また、図6及び図7で示した補強構造は、実験1で硬度が低かったためにクリーニング性が充分ではなかった材料に限らず、クリーニング性が充分であった材料を用いても良い。硬度が高い材料を用いた場合でも座屈する恐れはあるので、上述の補強構造を採用することにより、より信頼性の高いクリーニング装置とすることができる。
【0060】
[変形例2]
さらには、図5に示した従来形状において、厚さをt1=2[mm]から2.5[mm]以上の厚さ:例えば2.8[mm]、3.0[mm]、3.6[mm]などにし、適宜食込み量dを調整することにより、ブレード(1)、(6)、(8)等で用いたウレタンエラストマーにより形成したブレードでも、球形トナーのクリーニングに必要な線圧0.784[N/cm](80[gf/cm])を得る事が出来る。
【0061】
[変形例3]
実施形態1では、反発弾性の低い部材を用いることで、クリ−ニングブレードのスティックスリップ運動を抑制していたが、これに限るものではない。以下、像担持体である感光体ドラム1表面の低摩擦係数化することで、スティックスリップの低減を図る変形例3について説明する。
図11は、感光体ドラム1表面の摩擦係数を低くするために、潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段としての潤滑剤塗布装置10を設けた変形例3に係るプリンタ全体の概略構成図である。
実施形態1では、クリーニングブレードのスティックスリップ運動を低減するために、クリーニングブレードの反発弾性、硬度をそれぞれ従来の粉砕トナー用ブレードに比べて、低反発、高硬度にすることにより、球形トナーのクリーニング性を良好にしている。
一方、変形例3では、潤滑剤を固形状に成型して固形潤滑剤32とし、固形潤滑剤32を加圧バネ33で回転するファーブラシ31に押圧して、ファーブラシ31を介して感光体ドラム1に塗布している。像担持体としての感光体ドラム1表面に潤滑剤を塗布し、摩擦係数を低減することにより、クリーニングブレード2のスティックスリップ運動を実施形態1の構成によりも、さらに抑制する構成としている。球形トナーを用いる時に特に問題となるクリーニングブレード2のスティックスリップ運動の振幅は、クリーニングブレード2と感光体ドラム1との間の摩擦力に大きく依存する。よって、感光体ドラム1表面の低摩擦係数化により、クリーニングブレード2のスティックスリップを大幅に抑制することができる。
【0062】
[実験3]
下記の実験条件のもとで、表2のブレード(1)、(6)の補強形状、表1のブレード(3)、(7)の従来形状で、感光体に潤滑剤を塗布した場合と同様の表面状態でのクリーニング時の実クリーニング角θの変動量dθを測定した。ここで、補強形状とは、実施形態1の図62示した形状を用いた。
実験条件:
表面移動体表面:μ=0.2以下(オイラーベルト法による)
表面移動体線速:100mm/s
初期接触角β=20°
表4は、実験3で測定したクリーニング角の変動量dθと、表面移動体の摩擦係数を低下させた点以外は同じ条件の実験1または2でのクリーニング角の変動量dθを比較したものである。
【表4】
実験1、2より、球形トナーがクリーニング可能な条件を満たす表4に示すブレードについて、低摩擦係数化する前の像担持体と、低摩擦係数化した像担持体での実クリーニング角dθを測定した。その結果、各ブレードとも、低摩擦係数化した像担持体を用いることにより、スティックスリップが抑制され、dθが小さくなることが分かる。
これは、像担持体の低摩擦係数化により、クリーニングブレードと像担持体間の摩擦力が小さくなり、スティックスリップ運動が低減されているからである。
【0063】
潤滑剤としてはステアリン酸亜鉛のようなラメラ結晶紛体を使用すると好適である。ラメラ結晶は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れて滑りやすい。この作用が低摩擦係数化に効果があると考えられる。その他にも、各種の脂肪酸塩、ワックス、シリコーンオイル等他の物質を潤滑材 として用いることも可能である。
脂肪酸としてはウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ペンダデシル酸、ステアリン酸、ヘプタデシル酸、アラキン酸、モンタン酸、オレイン酸、アラキドン酸、カプリル酸、カプリン酸、カプロン酸などが挙げられ、その金属塩としては亜鉛、鉄、銅、マグネシウム、アルミニウム、カルシウムなどの金属との塩が挙げられる。
【0064】
以上のように、像担持体である感光体ドラム1表面上に、潤滑剤塗布装置10によって潤滑剤を塗布するより、スティックスリップ運動を抑制することが出来、より安定したブレードニップを形成することができるため、トナーのすり抜けを抑制し、クリーニング性の向上を図ることができる。
また、トナーの像担持体に対する付着力を低減することができるため、球形トナーのクリーニングがより容易になる。
【0065】
変形例3では、像担持体表面を低摩擦係数化するために、潤滑剤を塗布するものについて説明したが、これに限るものではなく、像担持体表層に低摩擦係数化物質を内添したり、トナーに潤滑物質を添加して、トナーを介して像担持体表面に塗布したりしても同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】実施形態1に係るプリンタが備えたクリーニング装置が有するクリーニングブレードを感光体ドラム軸方向から見たときの拡大図。
【図2】実施形態1に係るプリンタ全体の概略構成図。
【図3】(a)及び(b)は、円形度の測定方法を説明するための説明図。
【図4】(a)、(b)及び(c)は、実クリーニング角θと変化量dθを説明するための説明図。
【図5】従来形状のブレードの説明図。
【図6】実施形態1に係る補強形状のブレードの説明図。
【図7】(a)及び(b)は変形例1に係る補強形状のブレードの説明図。
【図8】感光体の断面図。
【図9】帯電装置と感光体との概略説明図。
【図10】実施形態1に係るプリンタに着脱可能なプロセスカートリッジの概略構成を示す断面図。。
【図11】変形例3に係るプリンタ全体の概略構成図。
【図12】従来の、感光体ドラム(像担持体)に対するクリーニングブレードの配置を説明するための説明図。
【図13】感光体ドラムを静止させた状態で同クリーニングブレードを食込み量で当接させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図。
【図14】図13に示した状態において感光体ドラム1を図中矢印Aの方向へ表面移動させたときのブレード先端部の変形状態を、感光体ドラム軸方向から見た断面図。
【符号の説明】
【0067】
1 感光体ドラム
2 クリーニングブレード
3 金属支持板
4 現像装置
5 転写装置
6 定着装置
7 帯電装置
8 除電装置
9 クリーニング装置
10 潤滑剤塗布装置
100 画像形成装置
200 プロセスカートリッジ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にトナー像を担持して表面移動する像担持体と、
その先端稜線を含む所定の範囲が該像担持体表面と当接するように、支持部材で支持された弾性ブレードを用いて該像担持体表面に付着した不要トナーを該像担持体表面から除去するクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、
該像担持体の表面移動方向に対して該弾性ブレードがカウンタ方向に当接するように配置されており、
該支持部材の該弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の該弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて該弾性ブレード部分を補強する補強手段を設け、
該弾性ブレードを形成する弾性体が23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下であり、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下であり、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力(以下、線圧と呼ぶ。)が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記弾性ブレード後端から先端にいたる途中から少なくとも部分的に肉厚を厚くし、
肉厚を厚くした部分の厚みの段差面が、上記支持部材の先端面に密着するように該弾性ブレードを該支持部材に取り付け、該肉厚を厚くした部分によって上記補強手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
上記弾性ブレードの上記支持部材側の側面に、その後端面が該支持部材の先端面と密着するように、
上記補強手段としての補強部材を固設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の画像形成装置において、
上記弾性ブレードを形成する弾性体がポリウレタンエラストマーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記トナー像を形成するトナーに潤滑剤を添加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記像担持体の最表層に潤滑物質を内添することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の画像形成装置において、
上記像担持体が無機微分粒子を含有した保護層を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の画像形成装置において、
上記像担持体には保護層が設けられ、保護層のバインダー樹脂が架橋構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記保護層の上記架橋構造を有する上記バインダー樹脂の構造中に、電荷輸送部位を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の画像形成装置において、
上記像担持体と上記クリーニング装置とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11の画像形成装置において、
上記プロセスカートリッジが断熱構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
表面にトナー像を担持して表面移動する像担持体と、
その先端稜線を含む所定の範囲が該像担持体表面と当接するように、支持部材で支持された弾性ブレードを用いて該像担持体表面に付着した不要トナーを該像担持体表面から除去するクリーニング装置とを備えた画像形成装置において、
該像担持体の表面移動方向に対して該弾性ブレードがカウンタ方向に当接するように配置されており、
該支持部材の該弾性ブレードと接触する先端稜線の近傍の該弾性ブレード部分にかかる応力を分散させて該弾性ブレード部分を補強する補強手段を設け、
該弾性ブレードを形成する弾性体が23℃における反発弾性が8.0[%]以上30[%]以下であり、JISA硬度が70[°]以上90[°]以下であり、該像担持体表面に当接する所定の範囲に作用させる軸方向単位長さあたりの押圧力(以下、線圧と呼ぶ。)が0.784[N/cm]以上1.176[N/cm]以下(80[gf/cm]以上120[gf/cm]以下)であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
請求項1の画像形成装置において、
上記弾性ブレード後端から先端にいたる途中から少なくとも部分的に肉厚を厚くし、
肉厚を厚くした部分の厚みの段差面が、上記支持部材の先端面に密着するように該弾性ブレードを該支持部材に取り付け、該肉厚を厚くした部分によって上記補強手段を構成したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項3】
請求項1の画像形成装置において、
上記弾性ブレードの上記支持部材側の側面に、その後端面が該支持部材の先端面と密着するように、
上記補強手段としての補強部材を固設したことを特徴とする画像形成装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の画像形成装置において、
上記弾性ブレードを形成する弾性体がポリウレタンエラストマーであることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記トナー像を形成するトナーに潤滑剤を添加することを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記像担持体表面に潤滑剤を塗布する潤滑剤塗布手段を設けたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
請求項1乃至4の画像形成装置において、
上記像担持体の最表層に潤滑物質を内添することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
請求項1乃至7の画像形成装置において、
上記像担持体が無機微分粒子を含有した保護層を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項9】
請求項1乃至7の画像形成装置において、
上記像担持体には保護層が設けられ、保護層のバインダー樹脂が架橋構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項10】
請求項9の画像形成装置において、
上記保護層の上記架橋構造を有する上記バインダー樹脂の構造中に、電荷輸送部位を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項11】
請求項1乃至10の画像形成装置において、
上記像担持体と上記クリーニング装置とを一体に支持し、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項12】
請求項11の画像形成装置において、
上記プロセスカートリッジが断熱構造を有することを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2006−17916(P2006−17916A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−194300(P2004−194300)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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