説明

クリーニング方法、及び、液体吐出装置

【課題】キャップに付着した液体等の拭き残しを低減すること。
【解決手段】ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッドのノズル開口形成面に当接可能なキャップのクリーニング方法であって、キャップが有する面のうち、ノズル開口形成面に当接する当接面であり、凸部が形成されている当接面を、伸ばすことと、キャップの当接面を伸ばした状態で、当接面に当接するワイパー部材により当接面を払拭することと、を有することを特徴とするクリーニング方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出ヘッドのキャップのクリーニング方法、及び、液体吐出装置に関す
る。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、ノズル開口からインク(液体)を吐出するヘッドを有するインク
ジェットプリンター(以下、プリンター)が知られている。このようなプリンターでは、
例えば、ノズル開口から長時間に亘ってインクが吐出されないと、ノズル開口からインク
溶媒が蒸発し、ノズルに目詰まりが生じてしまう。そのため、ヘッドを長時間使用しない
ときは、ヘッドのノズル開口形成面にキャップを密着させるとよい。
【0003】
ただし、ヘッドに対向するキャップの面(当接面)にインク等が付着していると、ヘッ
ドとキャップの密着が不完全になってしまう。そこで、キャップの当接面に付着したイン
ク等をワイパー部材で拭き取る処理(ワイピング)を実行することが提案されている(例
えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−226985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、キャップの当接面に凸部を形成することにより、ヘッドとキャップを密着さ
せる際のヘッドに対するキャップの位置ずれを低減することができる。ただし、キャップ
の当接面に凸部が形成されていると、当接面に付着したインク等をワイパー部材で拭き取
りきれない虞がある。
【0006】
そこで、本発明では、キャップに付着した液体等の拭き残しを低減することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為の主たる発明は、ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッド
のノズル開口形成面に当接可能なキャップのクリーニング方法であって、前記キャップが
有する面のうち、前記ノズル開口形成面に当接する当接面であり、凸部が形成されている
前記当接面を、伸ばすことと、前記キャップの前記当接面を伸ばした状態で、前記当接面
に当接するワイパー部材により前記当接面を払拭することと、を有することを特徴とする
クリーニング方法である。
本発明の他の特徴は、本明細書、及び添付図面の記載により、明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1Aはプリンターの全体構成ブロック図であり、図1Bはプリンターの概略斜視図である。
【図2】インクの流路を示す図である。
【図3】図3A及び図3Bは比較例のキャップを説明する図である。
【図4】本実施形態のキャップを説明する図である。
【図5】キャップを上下方向に昇降移動させる機構を説明する図である。
【図6】図6Aから図6Cはキャップがヘッドに密着する様子を説明する図である。
【図7】印刷処理を再開する時のフローを示す。
【図8】図8Aはキャップの上面をワイパー部材が払拭する様子を示す図であり、図8Bは自然状態におけるキャップの一部を示す図であり、図8Cはキャップを移動方向に引っ張った状態を示す図である。
【図9】図9A及び図9Bはキャップを湾曲させてキャップの上面を伸ばす様子を示す図である。
【図10】変形例のキャップを説明する図である。
【図11】図11A及び図11Bは変形例のキャップを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
===開示の概要===
本明細書の記載、及び添付図面の記載により、少なくとも次のことが明らかとなる。
【0010】
即ち、ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッドのノズル開口形成面に当接可能な
キャップのクリーニング方法であって、前記キャップが有する面のうち、前記ノズル開口
形成面に当接する当接面であり、凸部が形成されている前記当接面を、伸ばすことと、前
記キャップの前記当接面を伸ばした状態で、前記当接面に当接するワイパー部材により前
記当接面を払拭することと、を有することを特徴とするクリーニング方法である。
このようなクリーニング方法によれば、キャップに付着した液体等の拭き残しを低減す
ることができる。
【0011】
かかるクリーニング方法であって、前記当接面の面方向に前記キャップを引っ張ること
で、前記当接面を伸ばすこと。
このようなクリーニング方法によれば、当接面を伸ばすことができ、キャップに付着し
た液体等の拭き残しを低減することができる。
【0012】
かかるクリーニング方法であって、前記キャップは、前記当接面と交差する方向に前記
当接面に対向する面であり、前記当接面よりも前記交差する方向の一方側に位置する面で
ある反対側面を有し、前記反対側面に当接可能な当接部材に対する前記キャップの相対位
置を前記交差する方向の前記一方側に移動し、前記当接面を湾曲することで、前記当接面
を伸ばすこと。
このようなクリーニング方法によれば、当接面を伸ばすことができ、キャップに付着し
た液体等の拭き残しを低減することができる。
【0013】
かかるクリーニング方法であって、前記凸部が有する側面のうち、前記凸部以外の前記
当接面の部位に交わる前記側面と交差する方向に、前記当接面を伸ばすこと。
このようなクリーニング方法によれば、角部の角度を大きくすることができ、ワイパー
部材を角部に当接させ易くすることができ、角部に付着した液体等をワイパー部材に拭き
取らせることができる。
【0014】
かかるクリーニング方法であって、前記液体吐出ヘッド内の液体を加圧することで、前
記キャップの前記当接面に向けて前記ノズル開口から強制的に液体を吐出させる前記液体
吐出ヘッドのクリーニングを実行した後に、前記ワイパー部材により前記キャップの前記
当接面を払拭すること。
このようなクリーニング方法によれば、キャップに付着した液体等を拭き取り易くする
ことができ、また、クリーニングに使用した液体を有効に利用することができる。
【0015】
また、ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッドと、前記液体吐出ヘッドのノズル
開口形成面に当接可能であり、前記ノズル開口形成面に当接する当接面に凸部が形成され
ているキャップと、前記キャップの前記当接面を伸ばした状態で、前記当接面に当接する
ワイパー部材により前記当接面を払拭するクリーニング機構と、を有することを特徴とす
る液体吐出装置である。
このような液体吐出装置によれば、キャップに付着した液体等の拭き残しを低減するこ
とができる。
【0016】
===印刷システムについて===
液体吐出装置をインクジェットプリンター(以下、プリンター)とし、プリンターとコ
ンピューターが接続された印刷システムを例に挙げて、実施形態を説明する。
【0017】
図1Aは、プリンター1の全体構成ブロック図であり、図1Bは、プリンター1の概略
斜視図である。コンピューター70は、プリンター1と通信可能に接続されており、プリ
ンター1に画像を印刷させるための印刷データをプリンター1に出力する。
【0018】
コントローラー10は、プリンター1の制御を行うための制御ユニットである。インタ
ーフェース部11はコンピューター70とプリンター1との間でデータの送受信を行うた
めのものである。CPU12はプリンター1全体の制御を行うための演算処理装置である
。メモリー13はCPU12のプログラムを格納する領域や作業領域等を確保するための
ものである。CPU12はユニット制御回路14により各ユニットを制御する。なお、プ
リンター1内の状況を検出器群60が監視し、その検出結果に基づいて、コントローラー
10は各ユニットを制御する。
【0019】
搬送ユニット20は、媒体S(例:用紙、布など)を印刷可能な位置に送り込み、印刷
時には搬送方向に所定の搬送量で媒体Sを搬送するためのものである。
キャリッジユニット30は、ヘッド41を保持したキャリッジ31を、搬送方向と交差
する移動方向に移動するためのものである。
ヘッドユニット40は、ノズル開口からインクを吐出するヘッド41を有する。ヘッド
41の下面に複数のノズル開口Nzが形成されており、ヘッド41の下面がノズル開口形
成面に相当する。なお、ノズル開口形成面には、同色のインクを吐出する複数のノズル開
口が搬送方向に所定間隔おきに並んだノズル列が形成されている。
【0020】
図2は、ある色のインクを貯留するインクカートリッジ42からヘッド41に流れるイ
ンクの流路を示す図である。インクカートリッジ42は第1供給チューブ441を介して
サブタンク43と連通し、第1供給チューブ441の途中に開閉弁45と供給ポンプP1
が設けられている。供給ポンプP1の稼働により、インクカートリッジ42内のインクが
サブタンク43に供給される。
【0021】
サブタンク43は第2供給チューブ442を介してヘッド41と連通している。ヘッド
41内のインクが消費されると、加圧ポンプP2から空気供給チューブ443を介してサ
ブタンク43内に空気が供給される。そうすると、サブタンク43内の空気が加圧され、
サブタンク43内のインクが第2供給チューブ442に押し出される。その結果、サブタ
ンク43内のインクがヘッド41に供給される。なお、この時、インクカートリッジ42
側の開閉弁45を閉じた状態にし、サブタンク43からインクカートリッジ42へのイン
クの逆流を防止する。
【0022】
サブタンク43からのインクは、まず、ヘッド41の共通インク室411に供給される
。共通インク室411は、ノズルごとに対応した複数のインク室412と連通し、各イン
ク室412はインクが充填された状態となっている。そして、コントローラー70からの
信号により各ノズルに対応した駆動素子が駆動し、ノズル開口Nzからインクが吐出され
る。なお、駆動素子(ピエゾ素子)に電圧をかけてインク室412を膨張・収縮させるこ
とによりインクを吐出させるピエゾ方式でもよいし、駆動素子(発熱素子)によりノズル
内に気泡を発生させ、その気泡でインクを吐出させるサーマル方式でもよい。
【0023】
メンテナンスユニット50は、ヘッド41から良好にインクが吐出されるようにホーム
ポジションHP(非印刷領域)にてヘッド41を保守するためのものであり、キャップユ
ニット80とクリーニングユニット90を有する(詳細は後述)。
【0024】
このようなプリンター1では、移動方向に沿って移動するヘッド41から媒体Sに対し
てインクが吐出される画像形成動作と、媒体Sが搬送方向に搬送される搬送動作と、が繰
り返される。その結果、先の画像形成動作により形成されたドットの位置とは異なる媒体
S上の位置に、後の画像形成動作にてドットが形成されるため、媒体S上に2次元の画像
が印刷される。
【0025】
===キャッピング処理===
非印刷時や電源オフ時など、ヘッド41が長時間に亘って使用されないと、即ち、ノズ
ル開口Nzから長時間に亘ってインクが吐出されないと、ノズル開口Nzからインク溶媒
が蒸発してインクが増粘したり、ノズル開口Nzに異物(紙粉や埃など)が付着したりし
てしまう。そうすると、ノズルに目詰まりが生じ、ノズル開口Nzからインクが吐出され
るべき時にインクが吐出されず、画像の画質が劣化してしまう。
【0026】
そこで、プリンター1のコントローラー10は、次の印刷ジョブが無い時や電源オフ時
など、ヘッド41を暫くの間使用しない時には、キャップユニット80に「キャッピング
処理」を実行させる。キャピング処理とは、ホームポジションHPに退避したヘッド41
のノズル開口形成面41aに、弾性材料(例えば、ゴムや熱可塑性エラストマー)で形成
されたキャップ82を密着させる処理である。そうすることで、ノズル開口Nzはキャッ
プ82に覆われ、ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0027】
<比較例のキャップ81>
図3A及び図3Bは、比較例のキャップ81を説明する図である。まず、本実施形態の
キャップとは異なる比較例のキャップ81について説明する。比較例のキャップ81は、
略長方体形状であり、上面81a(図3Aにて太線で示す面)が平らである。ヘッド41
に対してキャップ81が上昇すると、キャップ81の上面81aがヘッド41のノズル開
口形成面41aに押し付けられて密着する。そうすることで、ノズルの目詰まりを防止す
ることができる。
【0028】
ただし、比較例のキャップ81のように上面81aが平らであると、ヘッド41とキャ
ップ81を密着させるために、ヘッド41のノズル開口形成面41aにキャップ81を押
し付けた際に、変形しようとするキャップ81の部位の逃げ場がない。特に、キャップ8
1の上面81aの中央部ほど変形する時の逃げ場がない。
【0029】
よって、キャップ81がヘッド41に押し付けられると、キャップ81の上面81aの
中央部から周縁部に向けて(即ち、ノズル開口形成面41aの外側に向けて)、キャップ
81の上面81aがノズル開口形成面41aに添って面方向にずれようとする力が働く。
これは、キャップ81がヘッド41に押し付けられると、図3Bに示すように、キャップ
81の上下方向に沿う側面81c,81dが湾曲し、キャップ81の一部がノズル開口形
成面41aの外側にはみ出ることからも分かる。
【0030】
そのため、比較例のキャップ81がヘッド41に押し付けられると、ヘッド41のノズ
ル開口形成面41aに対するキャップ81の上面81aの位置が最初に当接した位置から
ずれてしまう。つまり、キャップ81の上面81aがヘッド41のノズル開口形成面41
aを擦ってしまう。そうすると、ノズル開口形成面41aに傷が付いてしまう。
【0031】
通常、ノズル開口形成面41aには、インクの付着を防止し、また、ノズル開口Nzか
ら吐出されるインクの直進性を確保するために、撥水処理膜が設けられている。そのため
、キャップ81がノズル開口形成面41aを擦ってしまうと、ノズル開口形成面41aの
撥水処理膜が磨耗してしまう。そうすると、ノズル開口形成面41aがインクで汚れたり
、ノズル開口Nzからのインク吐出に悪影響が及んで画像の画質が劣化したりしてしまう
。特に、顔料インクを使用する場合、顔料によりノズル開口形成面41a(撥水処理膜)
がより磨耗し易い。
【0032】
<本実施形態のキャップ82>
図4は、本実施形態のキャップ82を説明する図であり、図5は、キャップ82を上下
方向に昇降移動させる機構を説明する図であり、図6Aから図6Cは、キャップ82がヘ
ッド41(ノズル開口形成面41a)に密着する様子を説明する図である。図4の上図は
キャップ82を搬送方向から見た断面図であり、図4の下図はキャップ82を上方から見
た図であり、図5及び図6はキャップ82やヘッド41等を搬送方向から見た断面図であ
る。なお、本実施形態のキャップ82は、図5に示すように移動方向に長い部材であるが
、図4及び図6ではヘッド41に当接する領域(以下、ヘッド当接領域)のキャップ82
の部位を主に示す。
【0033】
キャッピング処理を実行するキャップユニット80は、図5に示すように、キャップ8
2と、キャップ82を下方から支持する支持部材83と、シリンダー84と、支持台85
と、を有する。シリンダー84は、本体部841と、本体部841に対して上下方向に伸
縮可能なロッド部842を有し、ロッド部842の上方側の端部に支持台85が取り付け
られている。そして、支持台85の上に支持部材83が載置され、支持部材83の上にキ
ャップ82が載置されている。
【0034】
本実施形態のキャップ82は、比較例のキャップ81(図3)と同様に、弾性材料で形
成された略長方体形状の部材である。ただし、比較例のキャップ81では上面81aが平
らであるのに対して、本実施形態のキャップ82では、ヘッド当接領域の上面82aに、
上方に(ヘッド41側に)突出した「凸部821」が形成されている。本実施形態では、
搬送方向に延びた5つの凸部821が移動方向に所定の間隔おきに並んで形成されている
キャップ82を例に挙げる。そして、ヘッド当接領域におけるキャップ82の上面82a
のうち、凸部821の間の部位、即ち、凸部821よりも上下方向の高さが低い部位を、
「凹部822」と呼ぶ。
【0035】
このように、本実施形態のキャップ82では、ヘッド当接領域の上面82aにて凸部8
21と凹部822が移動方向に交互に並び、上面82aが凹凸形状を成している。なお、
凸部821の形状、数、及び、配置は、これに限らず、例えば、移動方向に伸びた凸部が
形成されているキャップでもよいし、凸部が1つのキャップでもよい。
【0036】
以下、本実施形態のキャップ82がヘッド41に密着する過程について説明する。
前述のように、プリンター1のコントローラー10は、ヘッド41を暫くの間使用しな
い時には、ヘッド41をホームポジションHPに移動し、図6Aに示すように、ヘッド当
接領域のキャップ82の上面82aと、ヘッド41のノズル開口形成面41aとを対向さ
せる。そして、コントローラー10は、シリンダー84のロッド部842を上方に伸ばし
、保持台85、支持部材83、及び、キャップ82を上方に移動させる。そうすると、図
6Bに示すように、キャップ82の上面82aに形成されている凸部821がヘッド41
のノズル開口形成面41aに当接する。
【0037】
そして、コントローラー10がシリンダー84のロッド部842を更に上方に伸ばすと
、キャップ82(凸部821)がヘッド41のノズル開口形成面41aに押し付けられる
。支持部材83はヘッド当接領域のキャップ82を支持しているため、ヘッド当接領域の
キャップ82はヘッド41と支持部材83の間に挟まれて上下方向に圧縮される。即ち、
支持部材83によりキャップ82をより強く圧縮することができる。
【0038】
そうすると、キャップ82は弾性材料で形成されているため、ノズル開口形成面41a
に当接している凸部821が変形する。この時、ヘッド当接領域のキャップ82の上面8
2aは凹凸形状を成しているため、圧縮されて変形する凸部821が移動方向に隣接する
凹部822に逃げることができる。よって、圧縮されて変形しようとする凸部821がノ
ズル開口形成面41aに沿って面方向にずれようとする力が抑制される。つまり、凸部8
21がノズル開口形成面41aに最初に当接した位置からのずれが抑制される。
【0039】
そして、コントローラー10は、最終的に、図6Cに示すように、凸部821が潰れて
、凹部822がノズル開口形成面41aに当接して密着するまで、シリンダー84のロッ
ド部842を伸ばし、キャップ82を上下方向に圧縮する。つまり、コントローラー10
は、凹部822とノズル開口形成面41aとの間に空間が無くなるように、ノズル開口形
成面41aの全面に亘ってキャップ82の上面82aを密着させる。
【0040】
その結果、ノズル開口形成面41aに形成されている全ノズル開口Nzがキャップ82
の上面82a(凸部821と凹部822)に覆われ、全ノズル開口Nzが大気と連通して
いない状態となる。そのため、ノズル開口Nzからのインク溶媒の蒸発やノズル開口Nz
への異物の付着を防止することができ、ノズルの目詰まりを防止することができる。
【0041】
なお、図6Cに示すように、凸部821を潰して凹部822もノズル開口形成面41a
に密着させるために、キャップ82の硬度や、凸部821の上下方向の高さ、シリンダー
84によるキャップ82の押し上げ力(圧力)を調整するとよい。
【0042】
このように、キャップ82の上面82aに凸部821を形成することで、ヘッド41に
キャップ82を密着させる時のヘッド41に対するキャップ82の位置ずれを低減するこ
とができる。その結果、キャップ82がヘッド41のノズル開口形成面41a(撥水処理
膜)に傷を付けてしまうことを抑えることができる。
【0043】
また、顔料インクを使用し、ノズル開口形成面41aに傷が付き易い場合であっても、
ヘッド41に対するキャップ82の位置ずれが低減される本実施形態のキャップ82を使
用することで、ノズル開口形成面41aに傷を付き難くすることができる。
【0044】
なお、ここまで、ヘッド41を暫くの間使用しない時に、ヘッド41とキャップ82を
密着させる場合を例に挙げているが、これに限らない。例えば、色材として顔料インクを
使用する場合、顔料が沈殿し、インクの濃度が不均一になり易いので、インクカートリッ
ジ42内のインクやヘッド41内のインクを循環し、インクを攪拌する。この時にも、ヘ
ッド41にキャップ82を密着させる。また、粘度の高いインク(例:紫外線硬化型イン
ク)を使用する場合、ヒーターによりインクの温度を調整する等して、ノズル開口Nzか
ら吐出するインクの粘度を調整する。この時にも、ヘッド41にキャップ82を密着させ
る。
【0045】
===クリーニング処理===
図7は、印刷処理を再開する時のフローを示す。前述のように、ヘッド41を使用しな
い時は、ヘッド41にキャップ82を密着させて、ノズル開口Nzが大気と連通しない状
態にする(図6C)。ただし、ヘッド41にキャップ82を密着させても、ノズル開口N
zからのインク溶媒の蒸発や異物の付着を完全に防止することは難しい。よって、ヘッド
41を長時間使用しない間にノズルが目詰まりしている虞がある。
【0046】
そこで、コントローラー10は、印刷停止時に印刷ジョブを受信すると(S01)、印
刷処理を実行する前に、ヘッド41のクリーニング処理を実行する(S02)。以下、ヘ
ッド41のクリーニング処理について説明する。
【0047】
<ヘッド41のクリーニング処理>
コントローラー10は、まず、ヘッド41とキャップ82が密着している状態(図6C
)から、シリンダー84のロッド部842を縮めてキャップ82を下方に移動し、図2に
示すように、ヘッド41とキャップ82を離間させる。このように、ヘッド41とキャプ
82が離間し、ヘッド41のノズル開口形成面41aとキャップ82の上面82aが対向
している状態で、ヘッド41のクリーニング処理が実行される。
【0048】
次に、コントローラー10は、インクカートリッジ42とサブタンク43の間の開閉弁
45を閉じ、加圧ポンプP2によりサブタンク43内の空気を加圧する。コントローラー
10は、この時(クリーニング時)の方が、インクが消費された為にヘッド41にインク
を供給する時よりも、加圧ポンプP2がサブタンク43内の空気を加圧する力を強くする

【0049】
そうすると、サブタンク43内のインクがヘッド41に勢いよく流れ込み、ヘッド41
内のインクを強く加圧することができる。その結果、ヘッド41内のインクに存在してい
た気泡が潰れたり、増粘したインクや異物と共にノズル開口Nzから強制的にインクが吐
出されたりする。よって、ノズルの目詰まりを解消することができ、適正な量のインクが
吐出されなかった不良ノズルを、正常にインクを吐出するノズルに回復することができる
。つまり、クリーニングユニット90が加圧ポンプP2と空気供給チューブ443とサブ
タンク43と第2供給チューブ442を有することで、上述のヘッド41のクリーニング
処理を実行することができる。
【0050】
また、ヘッド41のノズル開口形成面41aとキャップ82の上面82aが対向した状
態でヘッド41内のインクを加圧するため、キャップ82の上面82aがノズル開口Nz
から吐出されたインクを受け止めることができる。よって、プリンター1の内部を汚して
しまうことを防止できる。
【0051】
なお、印刷処理の再開時にヘッド41のクリーニング処理を実行するに限らず、印刷処
理中に定期的にヘッド41のクリーニング処理を実行してもよい。また、ノズル開口Nz
からインクを吐出した後に、ワイパー部材によりヘッド41のノズル開口面41aを払拭
し、ノズル開口面41aに付着したインク等を取り除くようにしてもよい。また、ヘッド
41内のインクを加圧する方法は、図2に示す方法に限らず、例えば、インクカートリッ
ジ42とヘッド41を繋ぐインク供給チューブの途中にポンプを設け、そのポンプよりも
下流側のインク供給チューブ内のインクを加圧することにより、ヘッド41内のインクを
加圧するようにしてもよい。
【0052】
また、ノズルの目詰まりの度合いが高い時には、例えば、ヘッド41とキャップ82を
密着させた状態でヘッド41内のインクをより強く加圧してインク内の気泡を潰した後に
、ヘッド41とキャップ82を離間して、ノズル開口Nzから増粘したインク等を吐出す
るようにしてもよい。また、ヘッド41とサブタンク43の間に差圧弁(チョークバルブ
)を設けてもよい。この場合、吸引ポンプ等でヘッド41側を負圧にして差圧弁を閉じた
後に、加圧ポンプP2を稼働して差圧弁を開く。そうすることで、ヘッド41側の負圧に
よりヘッド41内にインクが勢いよく流れ込み、ヘッド41内のインクをより強く加圧す
ることができる。
【0053】
<キャップ82のクリーニング処理>
図8Aは、キャップ82の上面82aをワイパー部材91が払拭する様子を示す図であ
り、図8Bは、自然状態におけるキャップ82の一部を示す図であり、図8Cは、キャッ
プ82を移動方向に引っ張った状態(キャップ82の上面82aを移動方向に伸ばした状
態)を示す図である。
【0054】
ヘッド41のクリーニング処理では、ノズル開口Nzから増粘したインク等がキャップ
82の上面82aに向けて吐出される。また、プリンター1内を浮遊するインクミストや
異物がキャップ82の上面82aに付着する。インクや異物が付着したキャップ82をそ
のまま放置すると、キャップ82の上面82aにおいて、固化したインクが堆積したり、
異物(紙粉や埃など)が固着したりしてしまう。
【0055】
この状態で、ヘッド41のノズル開口形成面41aにキャップ82の上面82aを密着
させると、密着度合いが悪く、ノズルの目詰まりを防止できない虞がある。また、固化し
たインクや乾燥した異物により、ノズル開口形成面41a(撥水処理膜)に傷が付いてし
まう。
【0056】
そこで、本実施形態では、ワイパー部材91でキャップ82の上面82aを擦り、キャ
ップ82の上面82aに付着したインクや異物を拭き取る「ワイピング処理」を定期的に
実行し、キャップ82をクリーニングする。本実施形態では、図7のフローに示すように
、印刷再開のためにヘッド41のクリーニング処理を実行した後に、キャップ82のワイ
ピング処理を実行し(S03、S04)、印刷処理を実行する(S05)。
【0057】
ところで、本実施形態のキャップ82では、ヘッド41にキャップ82を密着させる時
のヘッド41に対するキャップ82の位置ずれを低減するために、上面82aに凸部82
1が形成されている。キャップ82の上面82aに凸部821が形成されていると、上面
82aに付着したインク等をワイパー部材91で拭き取れない虞がある。
【0058】
例えば、図8Bに示すように、凹部822が深いと(凸部821が高いと)、ワイパー
部材91が凹部822の底面822aに当接し難く、凹部822に付着したインク等を拭
き取れない虞がある。
また、凸部821の側面821cと凹部822の底面822aが成す角部の角度θ1が
直角や鋭角であったりすると、ワイパー部材91が角部に当接し難く、角部に付着したイ
ンク等を拭き取れない虞がある。なお、凸部821の側面とは上下方向に沿う面であり、
また、キャップ82の上面82aのうちの凸部821以外の面が凹部822の底面822
aである
また、凸部821の間隔D1が狭いと(即ち、凹部822の開口が狭いと)、ワイパー
部材91が凹部822に入り込み難く、凹部822に付着したインク等を拭き取れない虞
がある。
【0059】
そこで、本実施形態のワイピング処理(キャップ82のクリーニング処理)では、凸部
821が形成されているキャップ82の上面82a(当接面に相当)を伸ばし(図7のS
03)、キャップ82の上面82aを伸ばした状態で、キャップ82の上面82aに当接
するワイパー部材91によりキャップ82の上面82aを払拭する(S04)。
【0060】
以下、キャップ82のワイピング処理について具体的に説明する。なお、ワイパー部材
91は、弾性材料やフェルト等で形成された略板状の部材である。ここでは、図5に示す
ように、ワイパー部材91の下方側端部(キャップ82に当接する側の端部)が、ワイパ
ー部材91が移動する側(右側)に湾曲しており、キャップ82に付着したインク等を除
去し易くなっている。ただし、これに限らず、例えば、真っ直ぐなワイパー部材91でも
よい。また、ワイパー部材91は、ワイピング処理時以外の時は、図5に示すように、キ
ャップ82に接触しないように移動方向の左側にずれて位置する。
【0061】
また、本実施形態では、図5に示すように、キャップ82の移動方向左側の端部が第1
駆動ローラー92aに固定して取り付けられており、キャップ82の移動方向右側の端部
が第2駆動ローラー92bに固定して取り付けられている。
【0062】
コントローラー10は、キャップ82がヘッド41から離間した状態であり、また、ワ
イパー部材91とキャップ82の上面82aが当接するように、キャップ82の上下方向
の位置が調整された状態で、ワイピング処理を実行する。
【0063】
まず、コントローラー10は、図8Aに示すように、キャップ82の移動方向左側の部
位が移動方向の左側へ引っ張られるように、第1駆動ローラー92aを反時計回りに回転
し、逆に、キャップ82の移動方向右側の部位が移動方向の右側へ引っ張られるように、
第2駆動ローラー92bを時計回りに回転する。
【0064】
そうすることで、キャップ82(特にヘッド当接領域のキャップ82の部位)を、キャ
ップ82の上面82aの面方向に沿って、移動方向に、引っ張ることができる。その結果
、キャップ82の上面82aが移動方向に伸びる。なお、キャップ82を移動方向の両側
から引っ張るに限らず、キャップ82の移動方向一端側の端部を固定し、他端側の端部だ
けを引っ張るようにしてもよい。
【0065】
次に、コントローラー10は、図8Aに示すように、ワイパー部材91の下方側端部を
キャップ82の上面82aに当接させながら、ワイパー部材91を移動方向の左側から右
側へ移動し、キャップ82の上面82aに付着したインク等をワイパー部材91に拭き取
らせる。なお、図8Aではワイパー部材91を移動方向に移動する機構を省略する。
【0066】
また、ここでは、ワイパー部材91の搬送方向の長さがキャップ82の搬送方向の長さ
以上であるとする。よって、ワイパー部材91を移動方向にのみ移動することで、ワイパ
ー部材91は、キャップ82の搬送方向一端側の端部から他端側の端部までの全域を拭き
取ることができる。また、キャップ82に対してワイパー部材91を移動するに限らず、
ワイパー部材91に対してキャップ82を移動するようにしてもよい。
【0067】
キャップ82を移動方向に引っ張り、キャップ82の上面82aを移動方向に伸ばすこ
とで、キャップ82は図8Bに示す状態(自然状態)から図8Cに示す状態となる。引っ
張られたキャップ82(図8C)は、自然状態のキャップ82(図8B)に比べて、厚さ
が薄くなり(h1>h2)、キャップ82(上面82a)が平坦化する。言い換えると、
凸部821の高さが低くなり、凹部822の深さが浅くなる。よって、ワイパー部材91
が凹部822の底面822aに当接し易くなり、凹部822に付着したインク等を拭き取
ることができる。
【0068】
また、引っ張られたキャップ82では、自然状態のキャップ82に比べて、凸部821
の側面821cと凹部822の底面822aとが成す角部の角度が大きくなる(θ1<θ
2)。よって、ワイパー部材91が角部に当接し易くなり、角部に付着したインク等を拭
き取ることができる。
【0069】
また、引っ張られたキャップ82では、自然状態のキャップ82に比べて、凸部821
の間隔が広くなる(D1<D2)。即ち、凹部822の開口が広くなり、ワイパー部材9
1が凹部822に入り込み易くなるため、凹部822に付着したインク等を拭き取ること
ができる。
【0070】
このように、キャップ82を移動方向に引っ張り、キャップ82の上面82aを移動方
向に伸ばした状態で、ワイパー部材91によりキャップ82の上面82aを払拭すること
で、キャップ82に付着したインク等の拭き残しを低減することができる。つまり、キャ
ップ82の上面82aをきれいにすることができる。よって、ヘッド41とキャップ82
の密着度合いが増し、ノズルの目詰まりを防止することができる。また、ノズル開口形成
面41a(撥水処理膜)に傷が付いてしまうことを防止できる。
【0071】
また、自然状態のキャップ82(図8B)では、特に、凸部821の側面821cと凹
部822の底面822aとが成す角部に、ワイパー部材91が当接し難い。そこで、凸部
821が有する側面のうち、凹部822の底面822a(即ち、凸部821以外の上面8
2aの部位)に交わる側面821cと交差する方向に、キャップ82の上面82aを伸ば
すとよい。
【0072】
そうすることで、図8Cに示すように、凸部821の側面821cと凹部822の底面
822aが成す角部の角度θ2を大きくすることができ、ワイパー部材91を角部に当接
させ易くすることができる。また、凸部821の間隔D2も広くすることができるので、
ワイパー部材91を凹部822に入り込ませ易くすることができる。
【0073】
本実施形態のキャップ82の凸部821は、図4に示すように、キャップ82の搬送方
向一端側の端部から他端側の端部まで延びている。よって、凸部821が有する側面のう
ち、搬送方向に沿う側面だけが凹部822の底面と交わり、角部を形成し、移動方向に沿
う側面は凹部822の底面と交わらない。即ち、搬送方向に沿う角部だけが形成され、移
動方向に沿う角部は形成されない。そのため、本実施形態では、搬送方向と交差する移動
方向にキャップ82を引っ張る。
【0074】
また、ここで仮に、キャップ82に対してワイパー部材91を搬送方向に移動したとす
る。そうすると、ワイパー部材91の幅(移動方向の長さ)が凹部822の幅よりも広い
場合、ワイパー部材91は凹部822に入り込むことが出来ず、凹部822に付着したイ
ンク等を拭き取ることが出来ない。
【0075】
そこで、キャップ82を引っ張った方向、即ち、キャップ82の上面82aを伸ばした
方向(ここでは移動方向)に、ワイパー部材91を移動するとよい。言い換えると、凸部
821が有する側面のうち、凹部822の底面822aに交わる側面821cと交差する
方向に、ワイパー部材91を移動するとよい。そうすることで、ワイパー部材821は凹
部822に入り込むことができ、凹部822に付着したインク等を拭き取ることができる
。また、凸部821の側面821cと凹部822の底面822aが成す角部にワイパー部
材91が当接し易くなるため、角部に付着したインク等を拭き取ることができる。
【0076】
また、本実施形態では、ヘッド41のクリーニング処理を実行した後に、キャップ82
のワイピング処理を実行する。つまり、ヘッド41内のインクを加圧することで、キャッ
プ82の上面82aに向けてノズル開口Nzから強制的にインクを吐出させるヘッド41
のクリーニングを実行した後に、ワイパー部材91によりキャップ82の上面82aを払
拭する。
【0077】
そうすることで、キャップ82の上面82aが液体状のインクにより濡れた状態でワイ
ピング処理を実行することができる。キャップ82の上面82aにて固化していたインク
は液体状のインクに溶解する。よって、キャップ82の上面82aにて固化していたイン
クをワイパー部材91は容易に拭き取ることができる。また、キャップ82の上面82a
にこびり付いた異物も液体状のインクにより剥がれ易くなるため、キャップ82の上面8
2aにこびり付いていた異物をワイパー部材91は容易に拭き取ることができる。つまり
、キャップ82の上面82aをよりきれいにすることができる。
【0078】
また、液体状のインクにより、ワイパー部材91はキャップ82の上面82a上を滑り
易くなる。よって、ワイパー部材91は比較的に弱い力でキャップ82の上面82aを払
拭することができ、ワイパー部材91によるキャップ82の磨耗を抑えることができる。
【0079】
また、ヘッド41のクリーニング(不良ノズルの解消)のためにノズル開口Nzからキ
ャップ82の上面82aに向けて吐出されたインクを利用して、キャップ82の上面82
aのインク等を拭き取り易くする。よって、キャップ82のワイピング処理のためだけに
キャップ82の上面82aに向けてインクが吐出される場合に比べ、インクを有効に利用
することができ、インク消費量を削減することができる。
【0080】
以上をまとめると、本実施形態のプリンター1は、ノズル開口Nzからインクを吐出す
るヘッド41と、ヘッド41のノズル開口形成面41aに当接可能であり、ノズル開口形
成面41aに当接するキャップ82の上面82aに凸部821を備えるキャップ82と、
キャップ82の上面82aを伸ばした状態で、ワイパー部材91によりキャップ82の上
面82aを払拭するクリーニングユニット90(クリーニング機構)と、を有するプリン
ター1である。なお、クリーニングユニット90がワイパー部材91とワイパー部材91
を移動する機構と第1駆動ローラー92aと第2駆動ローラー92bを有することで、上
述のキャップ82のクリーニング処理(ワイピング処理)を実行することができる。
【0081】
また、キャップ82を移動方向に引っ張るに限らず、例えば、搬送方向に引っ張っても
よいし、移動方向の斜め方向に引っ張ってもよい。そうすることで、自然状態のキャップ
82(図8B)に比べてキャップ82を平坦化することができ、ワイパー部材91による
取り残しを低減することができる。また、ワイパー部材91を移動方向に移動するに限ら
ず、搬送方向に移動してもよい。
【0082】
===変形例===
図9A及び図9Bは、キャップ82を湾曲させてキャップ82の上面82aを伸ばす様
子を示す図である。なお、前述の実施形態と同様に、図9のキャップ82にも搬送方向に
延びた凸部821が形成されているとし、ここでも、キャップ82の上面82aを移動方
向に伸ばす。
【0083】
図9では、キャップ82の移動方向の両端部が把持部93a,93bにて把持され、把
持部93a,93bはそれぞれシリンダー84のロッド部842の上方側端部に取り付け
られている。よって、ロッド部842の伸縮により、キャップ82は、上下方向に移動し
、ヘッド41に密着したり、ヘッド41から離間したりすることができる。
【0084】
そして、キャップ82が下方に移動した際にキャップ82の底面82bに当接する当接
部材94が、キャップ82よりも下方に設置されている。なお、当接部材94は、ヘッド
当接領域のキャップ82の底面82bに当接可能であり(即ち、凸部821が形成されて
いる上面82aの部位に対向する底面82bの部位に当接可能であり)、当接部材94の
方がキャップ82よりも移動方向の長さ(キャップ82を伸ばす方向の長さ)が短い。
【0085】
そのため、キャップ82の移動方向の端部(把持部93a,93b)が当接部材94の
上面94aよりも下方に移動しても、ヘッド当接領域のキャップ82は、底面82bが当
接部材94の上面94aに当接してしまうので、当接部材94の上面94aよりも下方に
移動することが出来ない。
【0086】
その結果、図9Bに示すように、ヘッド当接領域のキャップ82の部位が上方に突出し
て、キャップ82が湾曲する。よって、キャップ82(特に、当接部材94に当接するキ
ャップ82の部位、即ち、ヘッド当接領域のキャップ82の部位)を移動方向に伸ばすこ
とができる。なお、当接部材に当接しないキャップ82の部位は、当接部材94の移動方
向の端部と把持部93a,93bとを結ぶ仮想線(不図示)に沿った方向に伸びる。
【0087】
つまり、この変形例では、キャップ82が有する面のうち、上下方向(キャップ82の
上面82aと交差する方向)に上面82aに対向する面であり、上面82aよりも上下方
向の下方側(一方側)に位置する面である底面82b(反対側面)に、当接可能な当接部
材94を設け、当接部材94に対するキャップ82の相対位置を上下方向の下方側に移動
し、キャップ82の上面82aを湾曲することで、キャップ82の上面82aを伸ばす。
【0088】
そうすることで、図8Cに示すように、キャップ82を平坦化したり、凸部821の側
面821cと凹部822の底面822aとが成す角部を緩やかにしたり、凸部821の間
隔を広くしたりすることができ、キャップ82の上面82aに付着したインク等の拭き残
しを低減することができる。
【0089】
なお、クリーニングユニット90がワイパー部材91とワイパー部材91を移動する機
構と当接部材94とシリンダー84を有することで、上述のキャップ82のクリーニング
処理(ワイピング処理)を実行することができる。つまり、当接部材94をキャップ82
の下方に設置するという簡単な構成により、キャップ82の上面82aを伸ばすことがで
きるため、プリンター1のコストダウンを図ることができる。
【0090】
また、このようにキャップ82を湾曲させる場合には、キャップ82の上面82aにワ
イパー部材91が当接するように、キャップ82の上面82aに沿って(例えば、図中に
示す点線に沿って)ワイパー部材91を移動するよい。また、当接部材94を上下方向に
伸縮可能とし、ヘッド41とキャップ82が密着する際には当接部材94を上方に伸ばす
ようにしてもよい。そうすることで、当接部材94とヘッド41でキャップ82を挟み込
むことができ、キャップ82をより強く圧縮することができる。また、当接部材94の幅
(移動方向の長さ)を短くすることで、キャップ82の湾曲度合いを強くすることができ
る。
【0091】
図10は、変形例のキャップ82を説明する図である。前述の実施形態のキャップ82
(図4)では凸部821が搬送方向に延びているが、これに限らない。図10に示すよう
に、搬送方向の長さが短い凸部821が、移動方向及び搬送方向に所定の間隔おきに形成
されているキャップ82でもよい。このキャップ82であっても、ヘッド41に密着する
際の位置ずれを低減することができる。
【0092】
また、ヘッド当接領域のキャップ82の周縁に、上方に突出した連続する凸部である周
縁部86を形成してもよい。キャップ82とヘッド41が当接した際に、周縁部86は、
ノズル開口Nzを囲い、キャップ82の上面82aとノズル開口形成面41aとの間に密
閉空間を形成する。そのため、キャップ82とヘッド41を密着させる際に凸部821が
完全に潰れずに、凹部822がノズル開口形成面41aに当接しない場合があっても、ノ
ズル開口Nzは周縁部86の外部の大気と連通しなくなる。よって、ノズル開口Nzから
のインク溶媒の蒸発を抑制することができる。
【0093】
このようなキャップ82の場合、凸部821又は周縁部86が有する側面のうち、搬送
方向に沿う側面と移動方向に沿う側面が共に、凹部822の底面と交わり、角部を形成す
る。即ち、キャップ82の上面82aには、搬送方向に沿う角部と、移動方向に沿う角部
が形成されている。よって、キャップ82を移動方向と搬送方向に引っ張るとよい。また
、このようなキャップ82の場合、ワイパー部材91を移動方向と搬送方向に移動させた
り、凸部821の位置に応じてワイパー部材91に切り込みをいれたりするとよい。
【0094】
図11A及び図11Bは、変形例のキャップ82を説明する図である。図11Aの上図
はキャップ82を搬送方向から見た断面図であり、図11Aの下図はキャップ82を上か
ら見た図である。また、図11Bの上図は自然状態のキャップ82を示す図であり、図1
1Bの下図は移動方向に引っ張られた状態のキャップ82を示す図である。このように、
キャップ82の上面82aに、半球状の凹部822が移動方向及び搬送方向に所定の間隔
おきに形成されているキャップ82でもよい。このキャップ82であっても、ヘッド41
に密着する際の位置ずれを低減することができる。
【0095】
このようなキャップ82の場合、前述の実施形態のキャップ82(図8B)で形成され
ているような角部は形成されない。しかし、キャップ82を引っ張ったり湾曲したりする
ことで、図11Bの下図に示すように、凹部822の底面822aの湾曲度合いを小さく
することができる。具体的には、凹部822を浅くしたり(h3>h4)、凹部822の
開口(凸部821の間隔)を広くしたりすることができる(D3<D4)。よって、キャ
ップ82の上面82aに付着したインク等の拭き残しを低減することができる。
【0096】
また、前述の実施形態では、印刷再開のためにヘッド41のクリーニング処理を実行し
た後に、即ち、キャップ82の上面82aに向けてノズル開口Nzからインクを吐出させ
た後に、キャップ82のワイピング処理を実行しているが、これに限らない。例えば、ヘ
ッド41にキャップ82を密着する前にキャップ82のワイピング処理を実行してもよい
し、キャップ82のワイピング処理の前にキャップ82の上面82aに向けてインクを吐
出しなくてもよいし、クリーニング処理のためではなくキャップ82のワイピング処理の
ためだけにキャップ82の上面82aに向けてインクを吐出するようにしてもよい。
【0097】
また、キャップ82のワイピング処理の前に、例えば、駆動素子に信号を印加すること
でキャップ82の上面82aに向けてノズル開口Nzから強制的にインクを吐出させるク
リーニング処理(所謂フラッシング処理)を実行してもよい。
【0098】
===その他の実施の形態===
上記の実施形態は、主としてキャップのクリーニング方法について記載されているが、
液体吐出装置等の開示が含まれている。また、上記の実施形態は、本発明の理解を容易に
するためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その
趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる
ことはいうまでもない。
【0099】
<プリンターについて>
前述の実施形態では、移動方向に沿って移動するヘッドからインクを吐出する動作と、
媒体を搬送方向に搬送する搬送動作と、が繰り返されるプリンター1を例に挙げているが
、これに限らない。例えば、紙幅方向に固定されて並んだ複数のヘッドの下を、紙幅方向
と交差する方向に媒体が通過する際に、ヘッドから媒体に向けてインクを吐出するプリン
ター(所謂ラインヘッドプリンター)であってもよい。また、例えば、印刷領域に搬送さ
れた連続用紙に対して、ヘッドを媒体搬送方向に移動しながら画像を形成する動作と、ヘ
ッドを紙幅方向に移動する動作と、を繰り返して画像を形成し、その後、未だ印刷されて
いない媒体部分を印刷領域に搬送するプリンターであってもよい。
【0100】
<液体吐出装置について>
前述の実施形態では、液体吐出装置としてインクジェットプリンターを例示しているが
、これに限らない。液体吐出装置は、様々な工業用装置に適用可能であり、例えば、布地
に模様をつけるための捺染装置、カラーフィルター製造装置や有機ELディスプレイ等の
ディスプレイ製造装置等であっても、本件発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 プリンター、10 コントローラー、11 インターフェース部、
12 CPU、13 メモリー、14 ユニット制御回路、
20 搬送ユニット、30 キャリッジユニット、31 キャリッジ、
40 ヘッドユニット、41 ヘッド、41a ノズル開口形成面、
411 共通インク室、412 インク室、Nz ノズル開口、
42 インクカートリッジ、43 サブタンク、
P1 供給ポンプ、P2 加圧ポンプ、441 第1供給チューブ、
442 第2供給チューブ、443 空気供給チューブ、45 開閉弁、
50 メンテナンスユニット、60 検出器群、70 コンピューター、
80 キャップユニット、81 キャップ(比較例)、82 キャップ、
821 凸部、822 凹部、82a 上面、83 支持部材、
84 シリンダー、841 本体部、842 ロッド部、85 保持台、
90 クリーニングユニット、91 ワイパー部材、
92a 第1駆動ローラー、92b 第2駆動ローラー、
93a 把持部、93b 把持部、94 当接部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッドのノズル開口形成面に当接可能なキャッ
プのクリーニング方法であって、
前記キャップが有する面のうち、前記ノズル開口形成面に当接する当接面であり、凸部
が形成されている前記当接面を、伸ばすことと、
前記キャップの前記当接面を伸ばした状態で、前記当接面に当接するワイパー部材によ
り前記当接面を払拭することと、
を有することを特徴とするクリーニング方法。
【請求項2】
請求項1に記載のクリーニング方法であって、
前記当接面の面方向に前記キャップを引っ張ることで、前記当接面を伸ばす、
クリーニング方法。
【請求項3】
請求項1に記載のクリーニング方法であって、
前記キャップは、前記当接面と交差する方向に前記当接面に対向する面であり、前記当
接面よりも前記交差する方向の一方側に位置する面である反対側面を有し、
前記反対側面に当接可能な当接部材に対する前記キャップの相対位置を前記交差する方
向の前記一方側に移動し、前記当接面を湾曲することで、前記当接面を伸ばす、
クリーニング方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のクリーニング方法であって、
前記凸部が有する側面のうち、前記凸部以外の前記当接面の部位に交わる前記側面と交
差する方向に、前記当接面を伸ばす、
クリーニング方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のクリーニング方法であって、
前記液体吐出ヘッド内の液体を加圧することで、前記キャップの前記当接面に向けて前
記ノズル開口から強制的に液体を吐出させる前記液体吐出ヘッドのクリーニングを実行し
た後に、前記ワイパー部材により前記キャップの前記当接面を払拭する、
クリーニング方法。
【請求項6】
ノズル開口から液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
前記液体吐出ヘッドのノズル開口形成面に当接可能であり、前記ノズル開口形成面に当
接する当接面に凸部が形成されているキャップと、
前記キャップの前記当接面を伸ばした状態で、前記当接面に当接するワイパー部材によ
り前記当接面を払拭するクリーニング機構と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−192656(P2012−192656A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59049(P2011−59049)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】