説明

クリーニング機能付き搬送部材と基板処理装置のクリーニング方法


【課題】 基板処理装置内に搬送して装置内に付着する異物をより確実に除去できるクリーニング機能付き搬送部材を提供する。


【解決手段】 搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、上記のクリーニング層が設けられる搬送部材表面のヘイズ値が0.2ppm以下であることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材、特に上記のクリーニング層が活性エネルギーにより硬化された粘着剤からなるか、あるいはジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた耐熱性樹脂からなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーニング機能付き搬送部材と、これを使用した基板処理装置のクリーニング方法とに関するものである。

【背景技術】
【0002】
半導体、フラットパネルディスプレイ、プリント基板等の製造装置や検査装置等、金属不純物等の異物を嫌う基板処理装置では、各搬送系と基板とを物理的に接触させながら搬送する。その際、基板や搬送系に異物が付着していると、後続の基板をつぎつぎに汚染するため、定期的に装置を停止して洗浄処理する必要があった。このため、稼働率の低下や多大な労力が必要になるという問題があった。

【0003】
これらの問題を解決するため、基板処理装置内に、クリーニング層として粘着性物質を固着した基板を搬送して、装置内に付着する異物を粘着性物質に吸着させてクリーニング除去する方法(特許文献1参照)や、板状部材を搬送して、基板の裏面に付着する異物を除去する方法(特許文献2参照)が提案されている。
【特許文献1】特開平10−154686号公報(第2〜4頁)
【特許文献2】特開平11−87458号公報(第2〜3頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の提案方法は、装置を停止して洗浄処理する必要がなく、稼動率の低下や多大な労力を回避する有効な方法であり、特にクリーニング層として粘着性物質を固着した基板を搬送する方法は、異物の除去性によりすぐれている。

しかし、本発明者らの研究によると、上記クリーニング層として粘着性物質を固着した基板を搬送する方法でも、基板とクリーニング層(粘着性物質)との間に気泡が混入して基板に対しクリーニング層を良好に固着できなったり、クリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度が大きくなることがあり、これらのことが原因で基板処理装置内への搬送性が悪くなったり異物の除去効果が低下する場合があることが判明した。

【0005】
本発明は、このような事情に照らし、基板処理装置内に搬送して装置内に付着する異物をより確実に除去できるクリーニング機能付き搬送部材と、これを使用した基板処理装置のクリーニング方法を提供することを課題としている。

【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対する検討過程において、まず、基板とクリーニング層との間に気泡が混入したり、クリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度が大きくなるのは、基板の表面形状に起因すること、つまり基板の表面粗度が大きくなって基板表面に凹凸が存在すると上記現象が起こりやすいことがわかった。

この知見をもとに、さらに検討を加えた結果、搬送部材である基板の表面形状としてヘイズ値が特定値以下となるように規制すると、これとクリーニング層との間の気泡の混入が減少し、またクリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度も小さくなり、基板処理装置内への搬送性や異物の除去効果を向上できることを見出し、本発明を完成した。

【0007】
すなわち、本発明は、搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、クリーニング層が設けられる搬送部材表面のヘイズ値が0.2ppm以下であることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材に係るものである。

特に、本発明は、クリーニング層が活性エネルギーにより硬化された粘着剤からなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材、クリーニング層がジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた耐熱性樹脂からなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材、上記ジアミンがアルキレンオキシドから構成されたポリエーテル構造を含む末端ジアミンからなる上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を、それぞれ、提供できるものである。

また、本発明は、基板処理装置内に、上記各構成のクリーニング機能付き搬送部材を搬送して、上記装置内に付着する異物を上記搬送部材のクリーニング層に吸着させてクリーニング除去することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法と、このクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置を、提供できるものである。

【発明の効果】
【0008】
このように、本発明では、クリーニング層が設けられる搬送部材表面のヘイズ値が0.2ppm以下となるようにしたことにより、搬送部材とクリーニング層との間の気泡の混入が減少し、またクリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度も小さくなり、これにより基板処理装置内への搬送性や異物の除去効果を向上できるので、基板処理装置内に付着する異物をより確実に除去できる実用性の高いクリーニング機能付き搬送部材と、これを使用した基板処理装置のクリーニング方法を提供することができる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明のクリーニング機能付き搬送部材は、クリーニング層が設けられる搬送部材の表面ヘイズ値が0.2ppm以下であることを特徴としており、特に好ましくは0.01〜0.1ppm、さらに好ましくは0.01〜0.05ppmであるのがよい。このような搬送部材を使用することにより、基板処理装置内への搬送性を向上ささせることができ、また異物の除去効果を大きく向上させることができる。

【0010】
これに対して、搬送部材の表面ヘイズ値が0.2ppmより大きくなると、クリーニング層を設ける工程において、例えば、クリーニング層を有するクリーニングシートを搬送部材に貼り合わせる場合は、搬送部材とクリーニング層との間に気泡が混入して、貼り合わせ不良が多発するおそれがある。

また、クリーニング層を搬送部材上にスピンコート法、円コート法、スプレーコート法等で直接形成する場合は、クリーニング層が搬送部材の表面形状に追従して形成されるため、クリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度が大きくなり、異物の除去性能が低下したり、搬送性不良となる等の問題を起こしやすい。

【0011】
なお、上記の表面ヘイズ値は、表面粗度(粗さ)を定量する測定方法のひとつであり、この表面ヘイズ値が小さいほど表面粗度が大きくなり、一般にミラーポリッシュ面と呼ばれる状態となる。一方、この表面ヘイズ値が大きくなると表面粗度も大きくなり、一般に粗面(エッチング面)と呼ばれる状態となる。

この表面ヘイズ値の測定は、搬送部材として半導体ウエハを用いる場合、ウエハ欠陥検査装置(パーティクルカウンター)を用いて行われる。パーティクルカウンターは、パーティクルの測定と同時に暗視野検査で発生する低周波信号であるヘイズをモニタでき、ヘイズの解析により均一性や粗さ等の微細なばらつきを測定できる。

【0012】
搬送部材としては、表面ヘイズ値が上記範囲内であれば、特に限定はなく、異物除去の対象となる基板処理装置の種類に応じて、各種の基板が用いられる。

具体的には、半導体ウエハ,LCD,PDP等のフラットパネルディスプレイ用基板,その他コンパクトディスク,MRヘッド等の基板が挙げられる。特に、本発明のクリーニング機能付き搬送部材は、半導体処理装置用として好適に用いられることから、主として半導体ウエハを使用することが多い。

また、搬送部材の厚さとしては、基板処理装置内に投入でき、クリーニング性能に影響を与えない範囲であれば、特に限定されない。

【0013】
このような搬送部材の表面ヘイズ値を前記特定値以下にする方法としては、特に限定されず、公知の技術を広く使用できる。例えば、搬送部材の表面を研磨加工して表面粗度を小さくする方法、酸やアルカリ等のエッチング液により搬送部材表面をエッチング処理して表面粗度を小さくする方法、搬送部材表面に酸化膜や窒化膜等の膜を形成して表面粗度を小さくする方法等が用いられる。

【0014】
本発明のクリーニング機能付き搬送部材において、上記搬送部材上に設けられるクリーニング層の厚さとしては、その材料構成により、広範囲の厚さを選択することができる。通常は、5〜50μmの厚さとするのが望ましい。

また、クリーニング層は、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じて測定)が0.20N/10mm幅以下、好ましくは0.01〜0.1N/10mm幅程度であるのがよい。このような低粘着ないし非粘着とする、つまり実質的に粘着力を有しない構成とすることにより、基板処理装置内への搬送時に装置内の接触部と接着せず、搬送トラブルを引き起こすことがない。

【0015】
さらに、クリーニング層の引っ張り弾性率(試験法:JIS K7127に準ずる)は10MPa以上、好ましくは10〜2,000MPaであるのがよい。引っ張り弾性率を10MPa以上とすると、ラベル切断時のクリーニング層のはみ出しや切断不良が抑えられ、プリカット方式において汚染のないクリーニング機能付きラベルシートを製造でき、また基板処理装置内に搬送したときに装置内の接触部に接着して搬送トラブルを引き起こすという心配がない。また、引っ張り弾性率を2,000MPa以下とすると、基板処理装置に付着する異物の除去性に好結果が得られる。

【0016】
このようなクリーニング層は、材料構成に関し特に限定はないが、代表的なものとして活性エネルギーにより硬化された粘着剤、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた耐熱性樹脂、特に上記ジアミンがアルキレンオキシドから構成されたポリエーテル構造を含む末端ジアミンからなる耐熱性樹脂が挙げられる。

上記の活性エネルギーにより硬化された粘着剤とは、紫外線や熱等の活性エネルギーを受けて硬化して分子構造が三次元網状化し、これにより硬化前の粘着性が実質的になくなるものである。このような性質を有することにより、基板処理装置に搬送する際に装置接触部と強く接着せず、すぐれた搬送性が得られる。

【0017】
活性エネルギーにより硬化させる前の粘着剤は、例えば、感圧接着性ポリマーに分子内に不飽和二重結合を1個以上有する化合物(以下、重合性不飽和化合物という)および重合開始剤と、必要により架橋剤等を含ませてなる硬化型の粘着剤であり、活性エネルギーとして特に紫外線により硬化するものが望ましい。

感圧接着性ポリマーには、例えば、(メタ)アクリル酸および/または(メタ)アクリル酸エステルを主モノマーとしたアクリル系ポリマーが挙げられる。このアクリル系ポリマーの合成にあたり、共重合モノマーとして分子内に不飽和二重結合を2個以上有する化合物を用いたり、合成後のアクリル系ポリマーに分子内に不飽和二重結合を有する化合物を官能基間の反応で化合結合させる等して、アクリル系ポリマーの分子内に不飽和二重結合を導入してもよい。この導入でアクリル系ポリマー自体も活性エネルギーによる重合硬化反応に関与させることもできる。

【0018】
重合性不飽和化合物としては,不揮発性でかつ重量平均分子量が10,000以下の低分子量体であるのがよく、特に硬化時の三次元網状化が効率良くなされるように、5,000以下の分子量を有しているのが好ましい。

このような重合性化合物には、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、オリゴエステル(メタ)アクリレート等があり、これらの中から、1種または2種以上が用いられる。

【0019】
重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものを使用できる。

例えば、活性エネルギーに熱を用いる場合は、ベンゾイルパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等の熱重合開始剤、また光を用いる場合は、ベンゾイル、ベンゾインエチルエーテル、シベンジル、イソプロピルベンゾインエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン、クロロチオキサントン、ドデシルチオキサントン、シメチルチオキサントン、アセトフェノンジエチルケタール、ベンジルジメチルケタール、α−ヒドロキシシクロヒキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシメチルフェニルプロパン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン等の光重合開始剤が挙げられる。

【0020】
また、上記のジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた耐熱性樹脂とは、上記の両成分を適宜の有機溶媒中で反応させて中間体としてのポリアミック酸樹脂溶液をつくり、これを加熱乾燥して有機溶剤を除去したのち、高温で熱処理して閉環(イミド化)することにより、ポリイミド樹脂としたものである。

上記の有機溶剤には、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド等が用いられるが、原材料や樹脂の溶解性を調整するため、トルエンやキシレン等の非極性の溶剤を適宜、混合して用いてもよい。

【0021】
また、ジアミンとしては、アルキレンオキシドから構成されたポリエーテル構造を含む末端ジアミン(以下、これをPEジアミンという)がクリーニング層の貯蔵弾性率の制御を容易にするため、特に好ましく用いられる。

このようなPEジアミンは、つぎの式(1)〜(4)で表されるようなジアミン、つまりエチレンオキシド、プロピレンオキシド、ポリテトラメチレングリコール、ポリアミンまたはこれらの混合体を含む構造からなるジアミンが挙げられる。これらジアミンの分子量は特に限定されないが、平均分子量が通常200〜5,000であるのがよい。

【0022】

2 N−CHCH2 −(OCH2 CH2 )n−NH2 …(1)
| |
CH3 CH3

H2N-CHCH2 −(OCHCH2 ) a−(OCH2CH2) b−(OCH2CH) c−NH2 …(2)
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CH3 CH3 CH3

H2N-CHCH2 −(OCH2CH2CH2CH2 )n-CH2CH−NH2 …(3)
| |
CH3 CH3

2 N−(CH2CH2OCH2CH2OCH2CH2N)n−H …(4)



【0023】
上記のPEジアミンは、テトラカルボン酸二無水物に対して化学両論的に最大等量まで配合できるが、通常は5〜60%となるように配合するのが望ましい。その場合、他のジアミンとして各種の脂肪族ジアミンや芳香族ジアミンを併用し、テトラカルボン酸二無水物に対して等量となるように配合する。なお、場合により、上記PEジアミンを全く使用しないで、上記他のジアミンのみを使用することもできる。

他のジアミンのうち、脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、1,12−ジアミノドデカン、1,3−ビス(3−アミノプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン等が挙げられる。

【0024】
また、芳香族ジアミンとしては、例えば、4,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,4′−ジアミノジフェニルエーテル、3,3′−ジアミノジフェニルエーテル、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルプロパン、3,3′−ジアミノジフェニルプロパン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、3,3′−ジアミノジフェニルメタン、4,4′−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3′−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4′−ジアミノジフェニルスルホン、3,3′−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)−2,2−ジメチルプロパン、4,4′−ジアミノベンゾフェノン等が挙げられる。

【0025】
上記のジアミンと反応させるテトラカルボン酸二無水物としては、例えば、3,3′,4,4′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2′,3,3′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4′−オキシジフタル酸二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、ピロメリット酸二無水物、エチレングリコールビストリメリット酸二無水物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。

【0026】
このように構成されるクリーニング層を搬送部材上に設ける方法は、特に限定はなく、クリーニング層形成材料に応じて、適宜の方法を採用できる。

例えば、前記した硬化型の粘着剤では、通常は、支持体を使用し、この支持体の片面に硬化型の粘着剤を塗布し、これに活性エネルギーを照射することにより、硬化された粘着剤からなるクリーニング層を形成すると共に、その裏面側に通常の粘着剤層を形成して、クリーニングシートを作製する。このクリーニングシートを、裏面側の粘着剤層を介して搬送部材(の前記ヘイズ値に設定された表面)に貼り合わせればよい。また、場合により搬送部材の上記表面に硬化型の粘着剤を直接塗布し、活性エネルギーを照射することにより、硬化された粘着剤からなるクリーニング層を形成してもよい。

【0027】
上記の支持体は、特に限定されず,例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート等からなるプラスチックフィルムが挙げられる。

これら支持体フィルムは、1種または2種以上を組み合わせて使用してもよく、また、片面または両面にコロナ処理等の表面処理を施したものであってもよい。支持体フィルムの厚さとしては、通常10〜100μmであるのがよい。

【0028】
支持体の裏面側に設ける粘着剤層は、その材料構成について、特に限定はなく、アクリル系やゴム系等、通常の粘着剤からなるものがいずれも使用できる。その中でも、アクリル系の粘着剤として、重量平均分子量が10万以下の成分が10重量%以下であるアクリル系ポリマーを主剤としたものが、特に好ましい。

上記のアクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを主モノマーとしこれに必要により共重合可能な他のモノマーを加えたモノマー混合物を、重合反応させることにより、合成することができる。このような粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜50μmであるのがよい。

この粘着剤層は、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180度引き剥がし粘着力が、0.01〜10N/10mm幅、好ましくは0.05〜5N/10mm幅であるのがよい。粘着力が高すぎると、クリーニングシートを搬送部材等から剥離除去する際に、支持体フィルムが裂けるおそれがある。

【0029】
また、クリーニング層形成材料として、前記した耐熱性樹脂形成材料であるポリアミック酸樹脂溶液を使用する場合は、通常は、搬送部材(の前記ヘイズ値に設定された表面)にスピンコート法、スプレー法等にて直接塗布するか、あるいは、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリイミドフィルム等の耐熱性支持体上に、コンマコート法、ファウンテン法、グラビア法等で塗布したのち、これを搬送部材(の前記ヘイズ値に設定された表面)に転写したり、支持体ごとラミネートすればよい。

これらの方法において、上記した各塗布後に有機溶剤を加熱乾燥し、その後さらに高温で熱処理することにより、耐熱性樹脂(ポリイミド樹脂)からなるクリーニング層を形成する。その際の熱処理温度は200℃以上がよく、樹脂の酸化劣化を防ぐため、窒素雰囲気下や真空中等の不活性な雰囲気下で処理するのが望ましい。このような処理により、樹脂中に残った揮発成分を完全に除去することができる。

【0030】
このようにして搬送部材上に設けられたクリーニング層は、搬送部材の表面ヘイズ値が0.2ppm以下であることにより、搬送部材とクリーニング層との間の気泡の混入が少なく、またクリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度も小さい。

このような特徴を持つクリーニング層の表面には、このクリーニング層の保護のため、必要により、保護フィルムを貼り合わせておくことができる。保護フィルムの厚さとしては、通常10〜100μm程度であるのがよい。

【0031】
保護フィルムは、特に限定されず、シリコーン系、長鎖アルキル系、フツ素系、脂肪酸アミド系、シリカ系等の剥離剤で剥離処理された、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート等からなるプラスチックフィルムが用いられる。

また、ポリエチレン、ポリプロヒレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系フィルムは、剥離剤を使用しなくとも剥離性を有するため、それ単体を保護フィルムとして使用できる。

【0032】
また、前記したクリーニングシートにおいて、支持体の裏面側に設ける粘着剤層の表面にも、このシートを搬送部材へ貼り付けるまでの間、その取り扱い性を良くしたり、粘着面の保護のため、保護フィルムを貼り合わせておくのがよい。この保護フィルムは、クリーニング層上に貼り合わせる前記の保護フィルムと同じもの、つまり、各種の剥離剤で剥離処理されたプラスチックフィルムやポリオレフィン系フィルムが用いられる。この保護フィルムの厚さは、通常10〜100μm程度であるのがよい。

【0033】
本発明においては、基板処理装置内に、上記構成のクリーニング機能付き搬送部材を、搬送して、基板処理装置内に付着する異物を上記搬送部材のクリーニング層に吸着させることにより、クリーニング除去する。

ここで、搬送部材とクリーニング層との間の気泡の混入が少なく、またクリーニング層の厚さのばらつきや表面粗度も小さいために、搬送中にクリーニング層の脱落等の支障をきたさず、良好な搬送性を維持できると共に、上記異物の吸着効果がより良く発現され、その結果、基板処理装置内に付着する異物を確実に除去できる。

【0034】
本発明において、クリーニングの対象となる基板処理装置には、特に限定はなく、例えば、露光装置、レジスト塗布装置、現像装置、アッシング装置、ドライエッチング装置、イオン注入装置、PVD装置、CVD装置、外観検査装置、ウエハプローバ等の公知の各種の基板処理装置が挙げられる。

本発明においては、上記のクリーニング方法によりクリーニングされた上記の各基板処理装置を、提供できるものである。

【0035】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例にのみ限定されるものではない。なお、以下において、部とあるのは重量部を意味する。また、除塵性(異物除去性)および搬送性は、東京エレクトロン社製のドライエッチャーを使用して、下記のように行った。

【0036】
<除塵性(異物除去性)および搬送性の評価方法>
除塵性は、あらかじめ新品のシリコンウエハをミラー面を下にして搬送し、初期のパーティクル数(0.2μm)を測定しておき、その後、クリーニング機能付き搬送部材を投入して、再度新品のシリコンウエハをミラー面を下にして搬送し、パーティクル数を測定し、その差により除塵率を求めた。また、搬送性は、クリーニング機能付き搬送部材の装置内における挙動を観察したものである。

【実施例1】
【0037】
アクリル酸2−エチルヘキシル75部、アクリル酸メチル20部およびアクリル酸5部からなるモノマー混合物から得たアクリル系ポリマー(重量平均分子量70万)100部に対して、ポリエチレングリコール200ジメタクリレート(新中村化学製の商品名「NKエステル4G」)200部、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」)3部、エポキシ系化合物(三菱瓦斯化学社製の商品名「テトラツドC」)2部および光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(チバ・スペシャリティケミカルズ社製の商品名「イルガキュアー651」)3部を、均一に混合して、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを調製した。

【0038】
これとは別に、温度計、撹拌機、窒素導入管および還流冷却管を備えた内容量が500mlの3つ口フラスコ型反応器内に、アクリル酸2−エチルヘキシル73部、アクリル酸n−ブチル10部、N,N−ジメチルアクリルアミド15部およびアクリル酸5部からなるモノマー混合物と、重合開始剤として2,2′−アゾビスイソブチロニトリル0.15部、酢酸エチル100部を、全体が200gになるように配合して投入し、窒素ガスを約1時間導入しながら撹拌し、内部の空気を窒素で置換した。その後、内部の温度を58℃にし、この状態で約4時間保持して重合を行い、粘着剤ポリマー溶液を得た。この粘着剤ポリマー溶液100部に、ポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン工業社製の商品名「コロネートL」)3部を、均一に混合して、粘着剤溶液Aを調製した。

【0039】
片面がシリコーン系剥離剤で剥離処理された長尺ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ38μm、幅250mm)からなる保護フィルムAのシリコーン系剥離処理面に、上記の粘着剤溶液Aを乾燥後の厚さが30μmとなるように塗布し、乾燥後、その粘着剤層上に、支持体として、長尺ポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム社製、厚さ25μm、幅250mm)を積層した。

さらに、この長尺ポリエステルフィルム(支持体)上に、上記の紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを、乾燥後の厚さが40μmとなるように塗布し、乾燥後、その表面に、前記同様の保護フィルムA(片面がシリコーン系剥離剤で剥離処理された長尺ポリエステルフィルム)のシリコーン系剥離処理面を貼り合わせて、積層シートAとした。

【0040】
この積層シートAに対して、中心波長365nmの紫外線を積算光量1,000mJ/cm2 照射して、紫外線硬化型の粘着剤溶液Aを硬化させ、硬化された粘着剤からなるクリーニング層を形成し、クリーニングシートAを作製した。

このクリーニングシートAのクリーニング層側の保護フィルムAを剥がし、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じる)を測定したところ、0.06N/10mm幅であった。また、引っ張り弾性率(JIS K7127に準じる)を測定したところ、440Mpaであった。

【0041】
このクリーニングシートAの通常の粘着剤層側の保護フィルムAを剥がし、搬送部材である8インチシリコンウエハのミラー面にハンドローラで貼り付けて、クリーニング機能付き搬送部材Aを作製した。

なお、上記の搬送部材(8インチシリコンウエハ)のミラー面の表面ヘイズ値を、KLA−Tencor社製のパーティクルカウンター「サーフスキャンSP−1」を用いて、DCN(Darkfield Composite Normal)条件下で測定した結果、0.15ppmであった。

【0042】
このような方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Aを、連続して100枚作製したところ、83枚は気泡の混入もなく、作製可能であることがわかった。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Aを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したところ、問題なく搬送できた。また、除塵率は80%以上であり、除塵性も高いものであることがかった。

【実施例2】
【0043】
搬送部材として、表面ヘイズ値が0.04ppmである8インチシリコンウエハを使用した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Bを作製した。

この方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Bを、連続して100枚作製したところ、98枚は気泡の混入もなく、作製可能であることがわかった。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Bを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したところ、問題なく搬送できた。また、除塵率は80%以上であり、除塵性も高いものであることがかった。

【実施例3】
【0044】
ジアミンとして、ポリエーテルジアミン〔サンテクノケミカル社製「XTJ−510(D−4000)」〕66.0gおよびp−フェニレンジアミン38.0gを、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPという)596.1gに溶解した。つぎに、この溶液にピロメリット酸二無水物(以下、PMDAという)45.0gを加えて、反応させることにより、ポリアミック酸樹脂溶液Cを調製した。

ついで、このように調製したポリアミック酸樹脂溶液Cを、搬送部材として実施例1で用いた8インチシリコンウエハのミラー面(表面ヘイズ値:0.15ppm)に塗布し、90℃で20分間乾燥した。その後、窒素雰囲気下、280℃で2時間熱処理することにより、厚さが20μmの耐熱性樹脂(ポリイミド樹脂)からなるクリーニング層を形成し、クリーニング機能付き搬送部材Cを作製した。

【0045】
また、上記のポリアミック酸樹脂溶液Cをガラス板上に塗布し、上記と同様にして、厚さが20μmの耐熱性樹脂(ポリイミド樹脂)からなるクリーニング層を形成した。このクリーニング層をガラス板から剥離して、シリコンウエハ(ミラー面)に対する180°引き剥がし粘着力(JIS Z0237に準じる)を測定したところ、0.04N/10mm幅であった。また、引っ張り弾性率(JIS K7127に準じる)を測定したところ、240Mpaであった。

【0046】
上記の方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Cを、連続して100枚作製したところ、86枚は気泡の混入もなく、作製可能であることがわかった。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Cを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したところ、問題なく搬送できた。また、除塵率は80%以上であり、除塵性も高いものであることがかった。

【実施例4】
【0047】
搬送部材として、表面ヘイズ値が0.04ppmである8インチシリコンウエハを使用した以外は、実施例3と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Dを作製した。

この方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Dを、連続して100枚作製したところ、95枚は気泡の混入もなく、作製可能であることがわかった。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Dを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したところ、問題なく搬送できた。また、除塵率は80%以上であり、除塵性も高いものであることがかった。

【0048】
比較例1
搬送部材として、表面ヘイズ値が0.25ppmである8インチシリコンウエハを使用した以外は、実施例1と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Eを作製した。

この方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Eを、連続して100枚作製したところ、55枚は作製中に気泡が混入してしまい、貼り合わせ不良が多発した。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Eを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したが、除塵率は50%以下となり、除塵性が低下した。

【0049】
比較例2
搬送部材として、表面ヘイズ値が0.25ppmである8インチシリコンウエハを使用した以外は、実施例3と同様にして、クリーニング機能付き搬送部材Fを作製した。

この方法により、上記のクリーニング機能付き搬送部材Fを、連続して100枚作製したところ、53枚は作製中に気泡が混入してしまい、貼り合わせ不良が多発した。また、気泡の混入がなかったクリーニング機能付き搬送部材Fを使用して、基板処理装置であるドライエッチャー装置に投入したが、除塵率は50%以下となり、除塵性が低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部材の少なくとも片面にクリーニング層が設けられているクリーニング機能付き搬送部材において、クリーニング層が設けられる搬送部材表面のヘイズ値が0.2ppm以下であることを特徴とするクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項2】
クリーニング層は、活性エネルギーにより硬化された粘着剤からなる請求項1に記載のクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項3】
クリーニング層は、ジアミンとテトラカルボン酸二無水物とを反応させて得られた耐熱性樹脂からなる請求項1に記載のクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項4】
ジアミンは、アルキレンオキシドから構成されたポリエーテル構造を含む末端ジアミンからなる請求項3に記載のクリーニング機能付き搬送部材。

【請求項5】
基板処理装置内に、請求項1〜4のいずれかに記載のクリーニング機能付き搬送部材を搬送して、上記装置内に付着する異物を上記搬送部材のクリーニング層に吸着させてクリーニング除去することを特徴とする基板処理装置のクリーニング方法。

【請求項6】
請求項5に記載のクリーニング方法によりクリーニングされた基板処理装置。

【公開番号】特開2006−222371(P2006−222371A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−36175(P2005−36175)
【出願日】平成17年2月14日(2005.2.14)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】