説明

クリーム状洗浄剤組成物

【課題】 経時安定性に優れ、さらに適度な硬さを有し、すばやく泡立ち(速泡性があり)かつ起泡性に優れ、クリーミィな泡質を提供できる組成物であり、肌に対して低刺激性であり、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与えることができるクリーム状洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】 (a)炭素数8〜18の脂肪酸(FA1)と炭素数19〜22の脂肪酸(FA2)とを、5〜200の質量比(FA1/FA2)で含む混合脂肪酸;(b)炭素数2〜6の二価アルコール;(c)アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤;(d)キレート剤;および(e)アルカリ金属水酸化物を含有するクリーム状洗浄剤組成物であって、該クリーム状洗浄剤組成物中に該(a)混合脂肪酸が20〜50質量%、該(b)二価アルコールが5〜15質量%、該(c)非イオン性界面活性剤が0.5〜4質量%、および該(d)キレート剤が0.1〜2質量%含まれ、そして該(e)アルカリ金属水酸化物が該(a)混合脂肪酸に対して0.65〜0.9モル当量含まれるクリーム状洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボディーシャンプー、ハンドソープおよび洗顔料などの皮膚用のクリーム状洗浄剤組成物に関する。詳しくは、経時安定性に優れ、さらに適度な硬さを有し、すばやく泡立ち(速泡性があり)かつ起泡性に優れ、クリーミィな泡質を提供できる組成物であり、肌に対して低刺激性であり、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与えることができるクリーム状洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボディーシャンプーや洗顔料などの皮膚洗浄剤組成物の主成分は、高級脂肪酸アルカリ塩である石けんである。石けんは洗浄後に独特のさっぱり感を与えるだけでなく生分解性も良好であり、環境に対しても優しい洗浄基剤であることから現在でも広く使われている。
【0003】
特に使用感が敏感に感じられる顔用の洗浄剤(洗顔料)では、洗浄後にさっぱりとする感触が好まれるとともに、アクネなどを効果的に防止することが望まれる。そのため、洗顔料は、石けん系の処方とすることが最適である。そして、使用性、感触などの面からクリーム状とした洗顔料が好まれて使用されている。
【0004】
ところが、このクリーム状の洗顔料は遊離の脂肪酸を添加する(過脂肪の系である)ことが一般的である。そのため、過脂肪酸系の洗顔料は、長時間しかも幅広い温度範囲で安定に保つことが特に困難であり、経時で「たれ」が生じたり、硬くなったりするという問題が生じ易い。
【0005】
また、この過脂肪系においては、過脂肪分である遊離脂肪酸および石けんから、一般的に酸性石けんと称する水に難溶性の塩が形成される。そのため、低温(0℃〜5℃)や高温(40℃)の特定温度での静置保存により、この酸性石けんの結晶が成長して「ダマ」や「粒」が生じるなど、問題が多い。
【0006】
クリーム状洗浄剤として、粘土鉱物を配合した石けんに、キレート剤および炭素数20以上の脂肪酸を配合する洗浄剤(特許文献1)、石けんおよび保湿剤に特定量の油分を配合したクリーム状洗浄剤(特許文献2)、石けんを含むアニオン界面活性剤および特定の陽イオン性高分子を配合したクリーム状洗浄剤(特許文献3)、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸を特定の比率で配合し、炭素数18以上の脂肪酸を含有しないことを特徴とするクリーム状洗浄剤(特許文献4)、および炭素数12以下の脂肪酸含有率を1%以下とした組成の石けんと、アニオン性または両性界面活性剤とを組み合わせたクリーム状皮膚洗浄剤(特許文献5)が開示されている。
【0007】
しかし、いずれのクリーム状洗浄剤も、酸性石けんの生成を必ずしも十分抑制できず、前記の特定の温度で静置保存すると「粒」が発生する場合があった。さらに、速泡性および起泡性が充分でなく、スティンギング性(ひりひり感)を有しているうえ、洗浄後の肌にはりを与えることはできない場合がある。
【特許文献1】特開平1−149715号公報(特許第2526609号)
【特許文献2】特公平4−75279号公報
【特許文献3】特公平6−31412号公報
【特許文献4】特開平10−182419号公報
【特許文献5】特開平7−309742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、経時安定性に優れ、さらに適度な硬さを有し、すばやく泡立ち(速泡性があり)かつ起泡性に優れ、クリーミィな泡質を提供できる組成物であり、肌に対して低刺激性であり、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与えることができるクリーム状洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、(a)炭素数8〜18の脂肪酸(FA1)と炭素数19〜22の脂肪酸(FA2)とを、5〜200の質量比(FA1/FA2)で含む混合脂肪酸;(b)炭素数2〜6の二価アルコール;(c)アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤;(d)キレート剤;および(e)アルカリ金属水酸化物を含有するクリーム状洗浄剤組成物であって、該クリーム状洗浄剤組成物中に該(a)混合脂肪酸が20〜50質量%、該(b)二価アルコールが5〜15質量%、該(c)非イオン性界面活性剤が0.5〜4質量%、および該(d)キレート剤が0.1〜2質量%含まれ、そして該(e)アルカリ金属水酸化物が該(a)混合脂肪酸に対して0.65〜0.9モル当量含まれる。
【0010】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、さらに(f)ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が0.1〜5質量%含まれる。
【0011】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、さらに(g)式(I)で示されるアルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤:
【0012】
【化1】

【0013】
(式中のRは炭素数8〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示し;mおよびnはそれぞれ独立して1または2であり;そしてMおよびMはそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属原子である)、および/または(h)硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤が0.5〜8質量%含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、経時安定性に優れ、さらに適度な硬さを有し、すばやく泡立ち(速泡性があり)かつ起泡性に優れ、クリーミィな泡質を提供できる組成物であり、肌に対して低刺激性であり、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物には、(a)混合脂肪酸、(b)二価アルコール、(c)アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤、(d)キレート剤、および(e)アルカリ金属水酸化物が含まれる。
【0016】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、さらに(f)ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が含まれる。
【0017】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、さらに(g)アルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤、および/または(h)硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤が含まれる。
【0018】
以下、本発明のクリーム状洗浄剤の成分について順次説明する。
【0019】
(各成分)
(a)混合脂肪酸
本発明のクリーム状洗浄剤組成物に用いられる混合脂肪酸(以下、a成分という場合がある)は、炭素数8〜22の脂肪酸で構成されており、炭素数8〜18の脂肪酸(FA1)と炭素数19〜22の脂肪酸(FA2)とを含む。FA1とFA2との質量比(FA1/FA2)は5〜200、好ましくは7〜150、さらに好ましくは10〜100である。FA1とFA2との質量比が5未満の場合は速泡性、起泡性および使用性が悪くなる。また、FA1とFA2との質量比が200を超える場合には安定性が悪くなる。
【0020】
FA1としては、カプリル酸(C8)、カプリン酸(C10)、ラウリン酸(C12)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、およびオレイン酸(C18)などが挙げられる。FA2としては、ベヘニン酸(C20)などが挙げられる。
【0021】
さらに、クリーム状洗浄剤組成物としてより高い機能を発揮するために、上記混合脂肪酸(a成分)は、FA1(炭素数8〜18の脂肪酸)成分として、ラウリン酸(a1)、ミリスチン酸(a2)、パルミチン酸(a3)、およびステアリン酸(a4)を用い、FA2(炭素数19〜22の脂肪酸)の成分として、ベヘニン酸(a5)を用いることが好ましい。必要に応じて、上記a1〜a5以外の炭素数8〜22の脂肪酸を、FA1/FA2の比が5〜200となるように添加してもよい。
【0022】
これらの脂肪酸を用いる場合、ラウリン酸(a1)が2〜13質量%、好ましくは3〜12質量%;ミリスチン酸(a2)が40〜75質量%、好ましくは45〜70質量%;パルミチン酸(a3)が2〜15質量%、好ましくは3〜13質量%;ステアリン酸(a4)が10〜35質量%、好ましくは10〜30質量%;およびベヘニン酸(a5)が1〜10質量%、好ましくは1〜8質量%である。そして、a3およびa4の合計質量と、a5の質量の割合((a3+a4)/a5)が3〜30、好ましくは5〜30で、かつ上記a1〜上記a5の合計質量が80〜100質量%、好ましくは90〜100質量%である混合脂肪酸であることが望ましい。
【0023】
a1が2質量%未満の場合は速泡性および起泡性が悪くなりやすく、13質量%を超える場合は刺激性が強くなったり泡質が悪くなったりすることがある。a2が40質量%未満の場合は起泡性が悪くなることがあり、75質量%を超える場合は使用性および安定性に影響を与えることがある。a3が2質量%未満の場合は泡質および安定性が悪くなることがあり、15質量%を超える場合は洗願後の肌の感触が悪くなりやすい。a4が10質量%未満の場合は安定性が悪くなることがあり、35質量%を超える場合は起泡性、使用性、および洗願後の肌の感触が悪くなりやすい。a5が1質量%未満の場合は安定性が悪くなることがあり、10質量%を超える場合は使用性や速泡性が悪くなることがある。
【0024】
また、a3およびa4の合計質量と、a5の質量の割合((a3+a4)/a5)が3未満の場合は使用性や速泡性が悪くなることがあり、30を超える場合は安定性が悪くなりやすい。さらに、a1〜a5の合計質量(a1+a2+a3+a4+a5)が80質量%未満の場合は、洗願後の肌の感触、刺激性、および洗願後の肌のはりが悪くなることがある。
【0025】
(b)二価アルコール
本発明のクリーム状洗浄剤組成物に用いられる二価アルコール(以下、b成分という場合がある)は、炭素数が2〜6であって、1分子内に2個の水酸基を有する水溶性の化合物である。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,2−ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、およびジプロピレングリコールなどが挙げられる。これらの中でもメイク汚れに対する洗浄性および泡質の点から、1,2−ペンタンジオール、1,3−ブチレングリコール、およびジプロピレングリコールが好ましい。
【0026】
(c)アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤
本発明のクリーム状洗浄剤組成物に用いられるアルカノールアミド型非イオン性界面活性剤(以下、c成分という場合がある)は、脂肪酸とアルカノールアミンとの縮合反応、および油脂とアルカノールアミンとのアミノリシス反応などにより調製される。これらの脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ひまわり油脂肪酸、および硬化牛脂脂肪酸などが挙げられ、アルカノールアミンの具体例としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、およびモノイソプロパノールアミンなどが挙げられる。
【0027】
(d)キレート剤
本発明のクリーム状洗浄剤組成物に用いられるキレート剤(以下、d成分という場合がある)は、水中の重金属イオンやアルカリ土類金属イオンをキャッチする金属イオン封鎖剤であり、一般に有機系キレート剤および無機系のキレート剤がある。有機系のキレート剤として代表的なものはアミノカルボン酸系キレート剤であり、具体例として、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルイミノジ酢酸(HIDA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸(EHDTA)、ジエチレントリアミンペンタ酢酸(DTPA)、トリエチレンテトラアミンヘキサ酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタミン酸(GLDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミンテトラ酢酸(PDTA)、および1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパンテトラ酢酸(DPTA−OH);およびそれらの塩類などがある。また、その他のキレート剤の具体例としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、クエン酸、およびアスコルビン酸;およびそれらの塩類などがある。その中でも泡立ち、泡質、および安定性の点でEDTA、PDTA、DPTA−OH、HEDPおよびそれらの塩類が好ましく、特にEDTAまたはその塩と、HEDPまたはその塩とを併用することが好ましく、モル比(EDTA/HEDP)は10/1〜1/2を満足する範囲が好ましい。
【0028】
(e)アルカリ金属水酸化物
本発明のクリーム状洗浄剤組成物に用いられるアルカリ金属水酸化物(以下、e成分という場合がある)としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムが好ましい。製品の硬さや使用時の溶解性、速泡性、安定性、および泡質の点で、水酸化カリウムと水酸化ナトリウムとを併用することが好ましく、モル比は90/10〜98/2を満足する範囲が好ましい。
【0029】
(f)ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤
本発明のクリーム状洗浄剤組成物には、安定性向上および泡質を改善するために、必要に応じてソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤(以下、f成分という場合がある)が含まれる。ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤は、通常ソルビタンおよび脂肪酸をモル比1:1〜1:4でエステル化して製造される。ここで、使用される脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸などの直鎖脂肪酸;イソステアリン酸などの分岐飽和脂肪酸;およびヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、パーム油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、および硬化牛脂脂肪酸などの混合脂肪酸が挙げられる。これらの中でも泡質および泡もちの点で、パルミチン酸およびステアリン酸が好ましい。
【0030】
(g)アルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤
本発明のクリーム状洗浄剤組成物には、より刺激性低下と泡立ちの改善、および洗浄後の感触向上のために、必要に応じて式(I)で示されるアルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤(以下、g成分という場合がある)が含まれる。式(I)中のRは炭素数8〜20の直鎖または分岐のアルキル基、好ましくは炭素数10〜16の直鎖飽和アルキル基である。mおよびnはそれぞれ独立して1または2であるが、nおよびmがどちらも1である場合が好ましい。そして、MおよびMはカルボン酸の対イオンを示し、それぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属原子である。
【0031】
(h)硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、より刺激性低下と泡立ちの改善、および洗浄後の感触向上のために、必要に応じて硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤(以下、h成分という場合がある)を含んでもよい。硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤とは、親水基として硫酸基を有し、その硫酸基は親油基に対し直接またはエステルとして結合し、一般的にはサルフェートまたはスルホネートと称される化合物である。具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸塩、アミドエーテル硫酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびアシルアルキルタウリン塩などが挙げられる。そして、これらのアニオン性界面活性剤の対イオンを形成する原子または基はアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、アンモニウム、有機アミンおよび塩基性アミノ酸のカチオン性残基であり、例えば、ナトリウム原子、カリウム原子、マグネシウム原子、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびメチルタウリンなどが挙げられる。具体的には、アルキルエーテル硫酸塩として、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムおよびポリオキシエチレン(3モル)ヤシアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミンなど;アミドエーテル硫酸塩として、ポリオキシエチレン(3モル)ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド硫酸ナトリウムなど;アシルイセチオン酸塩として、ヤシ油脂肪酸アシルイセチオン酸ナトリウムなど;アシルアルキルタウリン塩として、ヤシ油脂肪酸アシルメチルタウリンナトリウムおよびステアリン酸アシルメチルタウリンマグネシウムなどが挙げられる。中でも起泡性、洗浄時および洗浄後の感触、刺激性、および生分解性などから、アルキルエーテル硫酸塩、アミドエーテル硫酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびアシルアルキルタウリン塩が好ましく、アミドエーテル硫酸塩、アシルイセチオン酸塩、およびアシルアルキルタウリン塩がさらに好ましい。
【0032】
上記a〜h成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、洗浄剤に常用されている添加剤(以下、i成分という場合がある)を配合することも可能である。添加剤の具体例としては、エタノールおよびイソプロピルアルコールなどの低級アルコール;流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン、ワセリン、および固形パラフィンなどの炭化水素系油;牛脂、豚脂、および魚油などの天然油脂類;トリ2−エチルヘキサン酸グリセリルなどの合成トリグリセライド;ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、オレイン酸エチル、オレイン酸オレイル、およびミリスチン酸オクチルドデシルなどのエステル油;ミツロウおよびカルナバロウなどのロウ類;直鎖および環状のジメチルポリシロキサン、ポリエーテル変性ジメチルポリシロキサン、およびアミノ変性ジメチルポリシロキサンなどのシリコーン誘導体;セラミド、コレステロール、蛋白誘導体、ラノリン、ラノリン誘導体、およびレシチンなどの油性基剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリエチレングリコールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、およびアルキルポリグルコシドなどの非イオン性界面活性剤;塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤;アルキルジメチルアミンオキシドなどの半極性界面活性剤;アルギン酸、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびキサンタンガムなどの水溶性高分子;ピロリドンカルボン酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、および食塩などの有機または無機塩類;殺菌剤;抗酸化剤;紫外線吸収剤;動植物由来の天然エキス;色素;および香料などを配合できる。
【0033】
(クリーム状洗浄剤組成物)
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は、上記a成分〜e成分を必須成分として含み、必要に応じて、f成分〜h成分を含む。すなわち、混合脂肪酸(a成分)、二価アルコール(b成分)、アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤(c成分)、キレート剤(d成分)、およびアルカリ金属水酸化物(e成分)を特定の割合で含み、必要に応じて、ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤(f成分)、アルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤(g成分)、および上記硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤(h成分)を含有し得る。また、任意で添加剤(i成分)を含有し得る。
【0034】
a成分は、クリーム状洗浄剤組成物中に20〜50質量%、好ましくは25〜45質量%、さらに好ましくは27〜40質量%含まれる。20質量%未満の場合は安定性に問題を生じ、かつ十分な起泡力が得られない。また、50質量%を超える場合には使用性および泡質が悪くなり、かつ洗浄後につっぱり感を有する。a成分の構成は上記の通りである。
【0035】
b成分は、クリーム状洗浄剤組成物中に5〜15質量%、好ましくは5〜13質量%、さらに好ましくは6〜12質量%含まれる。5質量%未満の場合はつっぱり感を有して洗い上がりの感触が悪くなり、かつ洗浄後の肌にはりを与える効果が弱くなる。また、15質量%を超える場合は経時安定性が悪くなる。なお、b成分は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0036】
c成分は、クリーム状洗浄剤組成物中に0.5〜4質量%、好ましくは0.5〜3質量%含まれる。0.5質量%未満の場合は泡質および安定性が悪くなる。また、4質量%を超える場合は速泡性、洗浄時および洗浄後の感触が悪くなる。なお、c成分は単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0037】
d成分は、クリーム状洗浄剤組成物中に0.1〜2質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%含まれる。0.1質量%未満の場合は速泡性および起泡性が悪くなり、かつ安定性が悪くなる。2質量%を超える場合は洗いあがりの感触が悪くなる。
【0038】
e成分は、a成分に対して0.65〜0.9当量、好ましくは0.7〜0.87当量、さらに好ましくは0.75〜0.85当量含まれる。0.65当量未満の場合は泡立ちおよび経時安定性が悪くなり、かつたれなどの問題を生じる。また、0.9当量を超える場合は使用性が悪くなり、かつ肌にはりを与える効果が悪くなるだけでなく、刺激性を有することがある。
【0039】
また、f成分は、より安定性向上および泡質を改善するために、クリーム状洗浄剤組成物中に0.1〜5質量%含有することが好ましく、さらに好ましくは0.5〜3質量%含まれる。
【0040】
また、g成分およびh成分は、より刺激性低下と泡立ちの改善、および洗浄後の感触向上のために、クリーム状洗浄剤組成物中に0.5〜8質量%含有することが好ましい。g成分およびh成分を単独で用いてもよいが、g成分およびh成分を併用することが好ましく、併用する場合、g成分およびh成分の重量比(g/h)は、1/2〜5を満足する範囲が好ましい。
【実施例】
【0041】
次に実施例によって、本発明をさらに詳細に説明する。
【0042】
(実施例1〜10および比較例1〜6)
実施例1〜10および比較例1〜6のクリーム状洗浄剤組成物を、表1〜3に示した成分を表1〜3に示す割合で調製した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】

【0046】
調製したクリーム状洗浄剤組成物について、(1)起泡性、(2)使用性および速泡性、(3)泡質、(4)刺激性、(5)すすぎ時の感触、(6)洗顔後の肌の感触、(7)洗顔後の肌のはり、および(8)経持安定性ついて下記の方法により評価した。結果を表4に示す。
【0047】
(1)起泡性(泡高さ)
組成物濃度5質量%の水溶液を調製してロスマイルス法により、25℃で投入直後の泡高さを測定した。泡の投入直後の泡高さが200mm以上のものを起泡性の良好な洗顔料であると評価した。表4においては、泡の投入直後の泡高さが200mm以上を○、200mm未満を×として表した。
【0048】
(2)起泡性(泡の持続率)
組成物濃度5質量%の水溶液を調製してロスマイルス法により、25℃で投入直後の泡高さおよび5分後の泡高さを測定し、泡の持続率を[(5分後の泡高さ)/(試料投入直後の泡高さ)]×100の式で求めた。泡の持続率が90%以上のものを起泡性(泡の持続率)の良好な洗顔料であると評価した。表4においては、泡の持続率が90%以上を○、90%未満を×として表した。
【0049】
(3)使用性および速泡性
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔した時の取り易さ、泡立て易さ、および泡立ちの速さについて下記のように評価した。
2点:手に取った時の硬さがちょうど良く、溶けも早く素早く泡立つと感じた場合。
1点:若干硬いもしくは若干泡立て難く泡立ちがやや遅いと感じた場合。
0点:生地が硬すぎるもしくは溶けが遅く泡立て難いと感じた場合。
20名の平均値を求めて、1.5点以上を使用性および速泡性の良好な洗顔料であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0050】
(4)泡質
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔した時の泡質について下記のように評価した。
2点:泡がクリーミィでかつ程よい硬さであると感じた場合。
1点:泡が若干粗くクリーミィさに欠けると感じた場合。
0点:泡が粗いもしくは頼りないと感じた場合。
20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を泡質の良好な洗顔料であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0051】
(5)刺激性
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔した時の刺激性について下記のように評価した。
2点:洗顔時及び洗顔後の肌にピリピリ感が全く無かった場合。
1点:洗顔時または洗顔後に肌が極僅かピリピリすると感じた場合。
0点:洗顔時または洗顔後に明らかに肌がピリピリすると感じた場合。
20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を刺激性の少ない洗顔料であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0052】
(6)すすぎ時の感触
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔後、すすいでいる時の感触について下記のように評価した。
2点:すすぎ時にぬめり感が無くかつひっかからなくて泡切れも良いと感じた場合。
1点:すすぎ時にややぬめり感があるまたはややひっかかる感じがするもしくはやや泡切れが悪いと感じた場合。
0点:すすぎ時にぬめり感があるまたはひっかかり感があるもしくは泡切れが悪いと感じた場合。
20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上をすすぎ時の感触が良好な洗顔料であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0053】
(7)洗顔後の肌の感触
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔した後の感触について下記のように評価した。
2点:洗顔後に肌がつっぱらずしかもさっぱりすると感じた場合。
1点:洗顔後に肌がややつっぱるかややさっぱりすると感じた場合。
0点:洗顔後の肌がつっぱるかさっぱり感が無いと感じた場合。
20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を洗顔後の肌の感触が良好な洗顔料であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0054】
(8)洗顔後の肌のはり
20名の女性(22〜37才)をパネラーとし、組成物5gを用いて洗顔した後の感触について下記のように評価した。
2点:洗顔後の肌にはりがでたと感じた場合。
1点:洗顔後の肌にややはりがでたと感じた場合。
0点:洗顔後の肌にはりが無いと感じた場合。
20名の平均値を求めて、平均値1.5点以上を洗顔後の肌にはりとうるおいを与える組成物であると評価した。表4においては、平均点が1.5点以上を○、1.5点未満を×として表した。
【0055】
(9)経時安定性
組成物を透明ガラス容器に密封して2℃、5℃、25℃、40℃で1ヶ月間保存し、その外観を観察して、以下に示す4段階で評価し、◎および○を合格とした。
◎:安定性良好(外観の変化が無く、生地を延ばした時に粒やダマが全く無い。)
○:安定性ほぼ良好(外観の変化がなく、生地を延ばした時に粒やダマが殆ど無い。)
△:安定性やや不良(若干分離または若干変色を生じたり、若干粒やダマが確認される。)
×:安定性不良(分離または変色が著しい。もしくは粒やダマが明確に確認される。)
【0056】
【表4】

【0057】
実施例1〜10の本発明のクリーム状洗浄剤組成物(洗顔料)は、いずれも低刺激性であり、使用性、速泡性、および起泡性に優れ、泡質がクリーミィであって、経時安定性に優れている。また、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与えた。
【0058】
一方、比較例1〜6のクリーム状洗浄剤組成物(洗顔料)は、十分な性能が得られていない。比較例1では、FA2成分が配合されていないので経時安定性が悪くなっている。比較例2では、FA1とFA2の比(FA1/FA2)が本発明の範囲より小さくなっているので速泡性、起泡性、および使用性が悪くなっている。比較例3では、b成分が本発明の範囲より少なく配合されているので洗顔後の肌の感触、および肌のはりが悪くなっている。比較例4および比較例5では、c成分が本発明の範囲より少なく配合されている、または配合されていないので泡質および経時安定性が悪くなっている。比較例6ではd成分が配合されていないので使用性、速泡性、および起泡性が悪く、さらに経時安定性も悪くなっている。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のクリーム状洗浄剤組成物は経時安定性に優れ、さらに適度な硬さを有し、すばやく泡立ち(速泡性があり)かつ起泡性に優れ、クリーミィな泡質を提供できる組成物であり、肌に対して低刺激性であり、洗浄時および洗い上がりの感触が良好であり、かつ洗浄後の肌にはりを与えるので、ボディーシャンプー、ハンドソープおよび洗顔料などとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素数8〜18の脂肪酸(FA1)と炭素数19〜22の脂肪酸(FA2)とを、5〜200の質量比(FA1/FA2)で含む混合脂肪酸;
(b)炭素数2〜6の二価アルコール;
(c)アルカノールアミド型非イオン性界面活性剤;
(d)キレート剤;および
(e)アルカリ金属水酸化物
を含有するクリーム状洗浄剤組成物であって、
該クリーム状洗浄剤組成物中に該(a)混合脂肪酸が20〜50質量%、該(b)二価アルコールが5〜15質量%、該(c)非イオン性界面活性剤が0.5〜4質量%、および該(d)キレート剤が0.1〜2質量%含まれ、そして該(e)アルカリ金属水酸化物が該(a)混合脂肪酸に対して0.65〜0.9モル当量含まれる、クリーム状洗浄剤組成物。
【請求項2】
さらに、(f)ソルビタン脂肪酸エステル型非イオン性界面活性剤が0.1〜5質量%含まれる、請求項1に記載のクリーム状洗浄剤組成物。
【請求項3】
さらに、
(g)式(I)で示されるアルキルアミノジカルボン酸塩型両性界面活性剤:
【化1】

(式中のRは炭素数8〜20の直鎖または分岐のアルキル基を示し;mおよびnはそれぞれ独立して1または2であり;そしてMおよびMはそれぞれ独立して水素原子またはアルカリ金属原子である);および/または
(h)硫酸基を有する陰イオン性界面活性剤
が0.5〜8質量%含まれる、請求項1または2に記載のクリーム状洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2006−96913(P2006−96913A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286240(P2004−286240)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000004341)日本油脂株式会社 (896)
【Fターム(参考)】