説明

クーラント再生方法

【課題】高い歩留まりでクーラントを再生し、回転体に付着したスラッジを除去する機能を有するクーラント再生方法の提供することを課題とする。
【解決手段】クーラント再生方法1は、縦型遠心分離装置に洗浄液を吐出する洗浄液吐出工程S0’と、洗浄液の吐出される縦型遠心分離装置の回転体を遠心分離工程時の回転数よりも低速で回転させ、縦型遠心分離装置に付着したスラッジを洗浄及び除去するスラッジ洗浄工程S0”と、縦型遠心分離装置を有する遠心分離ユニットに使用済クーラントを供給するクーラント供給工程S1と、遠心分離ユニットに供給された使用済クーラントをシリコン切削屑を含む固形分と遠心分離液とに遠心分離する遠心分離工程S2と、遠心分離ユニットの縦型遠心分離装置を稼動させた状態で使用済クーラントの供給を間欠的に制御する間欠制御工程S3とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クーラント再生方法に関するものであり、特にシリコン材料を切断するスライシング工程で使用された使用済クーラントを再利用可能に再生するクーラント再生方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体素子や太陽電池パネルに使用される太陽電池素子等の各種製品を製造するために、多結晶或いはアモルファス性のシリコン材料が生産されている。生産されたシリコン材料は、一般的に塊状を呈しており、上記各素子として使用するためには予め規定されたサイズにカットする必要がある。このとき、シリコン材料をカットする工程(スライシング工程、または切断工程等)では、極細のワイヤーを利用したワイヤーソー切断装置が主に用いられている。係るワイヤーソー切断装置は、所定の張力で張設されたワイヤーを高速で稼動させ、シリコン材料と接触させることにより、互いが接触した部位で切断を行うものである。このとき、高速で稼動するワイヤーによって上記接触部位では摩擦熱が発生する。そのため、当該摩擦熱によってワイヤー自体が焼付けを起こし、破断や破損したり、熱変形することがあり、シリコン材料の切断精度を低下させる等のトラブルの要因となっていた。そこで、クーラントと呼ばれる有機液体をワイヤー及びシリコン材料の接触部位に連続的に供給し、発生した摩擦熱を除去することが行われている。なお、シリコン材料を切断するための硬質の砥粒をワイヤーに貼着した「固定砥粒方式」の他に、上記クーラントに砥粒を混入しクーラントと同時に接触部位に供給する「遊離砥粒方式」が行われることがある。
【0003】
接触部位に供給された使用後のクーラントは、使用済クーラントとして回収される。この使用済クーラントは、スライシング加工の際にシリコン材料から発生した微細な屑(シリコン切削屑)が多量に混入している。なお、先に説明した「遊離砥粒方式」の場合、クーラントと共に供給される硬質ダイヤモンド等の砥粒も混在している。その結果、シリコン切削屑及びその他物質が混在した使用済クーラントを回収したままの状態で再利用することはできず、上記シリコン切削屑等を除去する処理を行う必要があった。例えば、周知の遠心分離装置を利用した遠心分離処理や膜分離フィルタを利用した膜分離処理等を用い、液体及び固体の混在した使用済クーラントから固体のシリコン切削屑等を除去し、再利用可能なクーラントを生成する再生技術についての開発が行われている(例えば、引用文献1及び引用文献2参照)。さらに、使用済クーラントを加熱し蒸留することによって、蒸留後のクーラントを再利用する試みもなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、使用済クーラントから再利用可能なクーラントを再生する場合、以下に掲げる問題点を生じることがあった。すなわち、使用済クーラントからシリコン切削屑を含む固形分を除去する際にクーラントと固形分との比重差を利用した遠心分離装置を用いることが一般的であった。このとき、遠心分離装置を構成する回転体の回転体内壁には、使用済クーラントから分離された固形分がスラッジとして堆積していた。そして、所定の時間を経過した後は、回転体の回転を停止し、当該スラッジをスクレーパ等を利用して掻落とす作業が必要であった。ここで、一般的な遠心分離操作によって回転体内壁に堆積した固形分は、遠心分離作用によってクーラントを構成する有機液体が分離しているものの、依然として多くの水分(液体成分)が残存していた。特に、縦型遠心分離装置を有する遠心分離ユニットの場合、使用済クーラントが連続的に供給されるため、固形分に多くの液体成分を含んでおり、泥状(スラリー状)となっていた。そのため、回転体の回転時に、回転体内壁に堆積したスラッジ(固形分)が周囲に飛散し、遠心分離装置自体及び室内を汚すことがあった。さらに、スラッジに含まれる液体成分の含有量が多い場合、投入される使用済クーラントに対し、回収されるクーラントの回収率(歩留まり)が低くなる可能性があった。さらに、また、スクレーパー等を利用して固形分の掻落としを行った場合でも、回転体内壁の一部などに掻落とし部分が存在し、依然として固形分が飛散する要因となっていた。
【0005】
そこで、本発明は上記実情に鑑み、使用済クーラントからシリコン切削屑を含む固形分を遠心分離するものであり、回転体に堆積するスラッジ(固形分)の液体成分の含有量を低下させ、高い歩留まりでクーラントを再生することが可能なクーラント再生方法の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明のクーラントは、「ワイヤーソーでシリコン材料を切断する際に発生するシリコン切削屑を含む使用済クーラントから前記シリコン切削屑を除去した再利用可能なクーラントの再生方法であって、縦型遠心分離装置を有する遠心分離ユニットに前記使用済クーラントを連続的に供給するクーラント供給工程と、前記遠心分離ユニットに供給された前記使用済クーラントを前記シリコン切削屑を含む固形分と遠心分離液とに遠心分離する遠心分離工程と、前記遠心分離ユニットの前記縦型遠心分離装置を稼動させた状態で前記使用済クーラントの供給を間欠的に制御する間欠制御工程と」を具備して主に構成されている。
【0007】
ここで、使用済クーラントは、ワイヤーソー切断装置を利用してシリコン材料を切断するスライシング工程の際に利用される有機液体を回収したものであり、切断の際に発生するシリコン切削屑を含んで構成されるものである。使用済クーラントは、一般に6%〜10重量%程度のシリコン切削屑が含まれ、流動性を有する泥状(スラリー状)の液体の態様を呈している。なお、本明細書中において、使用済クーラントは、所謂「固定砥粒方式」のワイヤーソー切断装置で使用されたクーラントを回収したものに加え、クーラント中に予め砥粒を分散させた「遊離砥粒方式」のワイヤーソー切断装置で使用されたクーラントを回収したものを含むものとする。「遊離砥粒方式」の場合、クーラントに分散された砥粒を予め周知の遠心分離装置によって除去したものが使用されている。ここで、砥粒は、クーラント及びシリコン切削屑に比べ比重差が著しいため、上記遠心分離装置によって容易に分離することができる。
【0008】
また、遠心分離ユニットは、開口部を下方に向けたボウル状の回転体を備えて構成される縦型遠心分離装置を有している。これにより、回転体の上面に連結された回転軸に従って高速で回転体を軸回転させることにより、回転体の内空間に遠心力を発生させ、当該内空間に吐出された使用済クーラントを遠心分離作用によって分離する機能を有している。ここで、吐出されたクーラントは液体であり、回転体内壁に向けて噴出されることにより、上記内空間に発生した遠心力の作用を受けることになる。このとき、比重の大きな固形分(シリコン切削屑)等は、回転体の内壁面に移動して堆積し、スラッジとして回収される。一方、比重の比較的小さな成分(液体成分、クーラント)は、遠心力の影響をそれほど強く受けることがないため、回転体の内空間の回転軸心付近に滞留している。そして、同じく開口部から挿入され、先端が開口した液相取込口を有する液相回収部によって回収される。ここで、固液成分を含む液体状のクーラントが吐出された回転体の内空間での当該クーラントの滞留時間を長くすることにより、固形分及び液体成分の分離効率を向上させることができる。そのため、液体状のクーラントの吐出量(供給量)或いは吐出間隔を調整することにより、上記滞留時間が長くなるように設定が行われる。これにより、比重差を利用して固液分離(或いは液液分離)が可能となり、かつ開口部を下方に向けた回転体を有する縦型遠心分離装置であるため、使用済クーラントを回転体に連続的に供給し、分離後の液相の使用済クーラントを連続的に回収することができるため、従来に比して遠心分離処理を長時間に亘って継続することができる。その結果、従来型(バッチ式)の遠心分離装置に比べて処理効率が向上する。なお、回転体の回転体内壁に堆積した比重の大きな固形分(スラッジ)は、そのままの状態では遠心分離性能に影響を与えるため、例えば、所定時間毎にスクレーパー等を利用して回転体内壁から掻落とされ、回収される。回収されるスラッジは、クーラントを主成分とする液分率が30〜60%程度の粘土状物質である。さらに、固定砥粒方式の使用済クーラントから得られるスラッジのシリコン純度は、液分を除いた状態で2〜3Nの値を示すことが確認されている。したがって、スラッジ自体も取扱性に優れ、かつ再生利用にも適している。
【0009】
さらに、間欠制御工程とは、縦型遠心分離装置を有する遠心分離ユニットの回転体に対し、使用済クーラントの供給を間欠的にする処理を行う。すなわち、縦型遠心分離装置の回転体の回転を継続した状態で使用済クーラントの供給を一時的に停止する制御が行われる。係る間欠制御は、例えば、使用済クーラントの供給を5秒〜10秒間継続した後に、20〜30秒間停止し、再び供給を開始する処理を繰り替えすのが好ましい。係る間欠制御工程を実施することにより、遠心分離作用によって回転体の内壁面に堆積した固形分(シリコン切削屑)と液体成分との分離を行うことが可能となる。これにより、回転体の回転体内壁に堆積したスラッジの水分量を可能な限り減らすことができる。その結果、水分を多く含まないスラッジは装置周囲に飛散しなくなる。
【0010】
さらに、本発明のクーラント再生方法は、上記構成に加え、「前記クーラント供給工程より前に実行され、前記縦型遠心分離装置に洗浄液を吐出する洗浄液吐出工程と、前記洗浄液の吐出される前記縦型遠心分離装置の回転体を前記遠心分離工程時の回転数よりも低速で回転させ、前記縦型遠心分離装置に付着したスラッジを洗浄及び除去するスラッジ洗浄工程と」を具備するものであっても構わない。
【0011】
洗浄液吐出工程とは、縦型遠心分離装置に対するクーラントの供給前に、それ以前のクーラント再生処理によって回転体の内壁面に付着したシリコン切削屑等の固形分を除去するために、水またはクーラント等の液体を洗浄液として吐出する処理が行われる。一方、スラッジ洗浄工程とは、洗浄液の吐出時に洗浄対象の遠心分離装置の回転体を回転させることにより、洗浄液を回転体の内壁に満遍なく当てて固形分を洗い流す処理が行われる。このとき、回転体の回転数は通常の遠心分離処理時の回転数よりも低く抑えられ、例えば、500rpmから2000rpm以下の範囲に設定されている。これにより、吐出された洗浄液が回転体の回転によって遠心分離作用を受けることがない。
【0012】
さらに、本発明のクーラント再生方法は、上記構成に加え、「前記洗浄液吐出工程は、前記縦型遠心分離装置に1リットル/分以上、120リットル/分以下の前記洗浄液を1秒以上、120秒以下の間継続して供給する」ものであっても構わない。
【0013】
したがって、本発明のクーラント再生方法によれば、洗浄液の吐出量が1リットル/分以上、120リットル/分以下、さらに好ましくは、50リットル/分以上、80リットル分以下に設定される。また、洗浄液の吐出時間も1秒以上、120秒以下、さらに好ましくは、30秒以上、60秒以下で継続される。ここで、吐出量が1リットル/分以下の場合、洗浄液による勢いが小さいため、回転体の内壁面に付着した固形分の除去が困難となる。一方、吐出量が120リットル/分以上の場合、吐出に使用する吐出ポンプ等に過剰な負荷が課せられるとともに、洗浄時の振動や騒音、及び洗浄液の周囲への飛散等が問題となる。そのため、上記範囲に設定されるのが好適となる。一方、洗浄液の供給時間が短い場合は、十分な洗浄効果を得ることが難しく、さらに供給時間が長い場合には、クーラント再生処理に要する全体の時間が長くなる。そのため、洗浄液の吐出量及び供給時間の調整が適宜行われる。
【0014】
さらに、本発明のクーラント再生方法は、上記構成に加え、「前記洗浄液は、前記使用済クーラントが使用される」ものであっても構わない。
【0015】
したがって、本発明のクーラント再生方法によれば、洗浄液として使用済クーラントが使用される。ここで、使用済クーラントは、シリコン切削屑を含む固形分濃度が10%以下のものがほとんどであり、洗浄液として十分な機能を有している。さらに、洗浄後は速やかに遠心分離処理を行うことが可能であり、洗浄液を除去する処理が必要でない。そのため、効率的に洗浄及び遠心分離を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のクーラント再生方法の効果によれば、使用済クーラントの供給を間欠的に制御することによって回収されるスラッジに含まれる水分量を低減することができ、遠心分離処理前に回転体を洗浄することで、付着したスラッジを装置外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】クーラント再生方法の流れを模式的に示す説明図である。
【図2】遠心分離ユニットの概略構成を示す説明図である。
【図3】遠心分離ユニットの間欠運転条件及び通常運転条件の比較を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態であるクーラント再生方法1について、図1乃至図3に基づいて主に説明する。ここで、図1はクーラント再生方法1の流れを模式的に示す説明図であり、図2は遠心分離ユニット2の概略構成を示す説明図であり、図3は遠心分離ユニット2の間欠運転条件及び通常運転条件の比較を示す説明図である。ここで、本実施形態のクーラント再生方法1は、ワイヤーソー切断装置を利用してブロック状のシリコンインゴット(シリコン材料)を予め規定されたサイズに切断するスライシング工程で発生する使用済クーラント3を回収し、再利用可能なクーラント4に再生するものについて例示する。なお、本実施形態のクーラント再生方法1において、スライシング工程で回収される使用済クーラント3は、ワイヤーソー自体に硬質ダイヤモンド等の砥粒が貼着された「固定砥粒方式」のワイヤーソー切断装置から回収されたものを想定している。そのため、使用済クーラント3から砥粒を回収する前工程が不要となっている。
【0019】
本実施形態のクーラント再生方法1は、図1乃至図3にそれぞれ示すように、縦型遠心分離装置5を有する遠心分離ユニット2を利用して使用済クーラント3を遠心分離することによって、シリコン切削屑16を含む固形分17と遠心分離液19とに分離するものであり、回収され貯留タンク(図示しない)に貯留された使用済クーラント3を遠心分離ユニット2に導出し縦型遠心分離装置5の回転体9に供給するクーラント供給工程S1と、供給された使用済クーラント3を回転体9によって発生させた遠心力を利用し比重差によって固形分17及び遠心分離液19に分離する遠心分離工程S1と、遠心分離処理によって分離した遠心分離液8を回収する遠心分離液回収工程S3と、縦型遠心分離装置5による使用済クーラント3の吐出条件を制御し、回転体9に対する使用済クーラント3の吐出を間欠的に制御する間欠制御工程S4とを主に具備するものである。さらに、本実施形態のクーラント再生方法1は、クーラント供給工程の前に実施され、縦型遠心分離装置5の回転体9に洗浄液(ここでは、使用済クーラント3が使用される)を吐出する洗浄液吐出工程S0’と、洗浄液吐出工程S0’の際に回転体9を通常の遠心分離よりも低い回転数で回転させることによりスラッジを洗浄及び除去するスラッジ洗浄工程S0”とを具備している。
【0020】
さらに具体的に説明すると、遠心分離ユニット2は、図2に示すように、略筐体状に形成された装置本体5aと、装置本体5aの内部に収容され開口部8を下方に向けた状態で配設されたボウル状の回転体9と、回転体9の上面と連結し一部を装置本体5aから突設させた回転軸10、当該回転軸10に従って回転体9を高速で軸回転させる回転力を発生する回転モータ11a、及び回転モータ11aの回転を回転軸10に伝達する回転伝達部11bを有する回転体駆動部11と、回転体駆動部11を制御し回転体9の回転数等を電気的に制御する回転体制御部(図示しない)と、開口部8から回転体9の内空間12に送出された吐出ノズル13の先端から遠心分離対象の使用済クーラント3を吐出するクーラント吐出部14と、回転体9の回転によって内空間12に発生する遠心力を利用して遠心分離され、回転体内壁15に堆積したシリコン切削屑16を含む固形分17(スラッジに相当)を掻落とすスクレーパ18を有し、内空間12でスクレーパ18の位置を変位させるスクレーパ変位機構部(図示しない)と、開口部8から回転体9の内空間12に挿入され、回転体9の上面近傍に開口した液相取込口20aを有し、遠心分離によって固形分17と分離した液相の遠心分離液19を回収する液体回収部20とを主に具備する縦型遠心分離装置5を備えている。
【0021】
ここで、回転体駆動部11によって軸回転するボウル状の回転体9は、高速で回転することにより内空間12内に100Gから3000G程度の遠心力を発生させることができる。これにより、内空間12に吐出された液体は、比重差を利用して遠心分離され、比重の大きな成分(例えば、固形分17等)が回転体内壁15に向かって押付けられ、一方、比重の小さな成分(液体の遠心分離液19等)が開口部8から落下し液体回収部20に回収される。これにより、固体成分及び液体成分を含む使用済クーラント3をそれぞれの成分に分離することができる。なお、使用済クーラント3の固形分濃度(=シリコン含有率に相当)やシリコン切削屑16のサイズ、種類等に応じ、高速で回転させて発生する遠心力の強さを適宜変更することができる。さらに、回転体9の開口部8の下方にはスクレーパ18によって回転体内壁15から掻落とされた固形分17を回収するスラッジ回収部(図示しない)等の周知の構成を備えるものであっても構わない。
【0022】
さらに、本実施形態のクーラント再生方法1において使用される遠心分離ユニット2は、クーラント吐出部14から回転体9に向けて吐出される使用済クーラント3の吐出を間欠的に制御する間欠制御部21を具備している。これにより、例えば、使用済クーラント3の吐出を7秒間行い、その後、23秒間供給を停止する等のサイクルを繰返すことができる。なお、間欠制御の際であっても、回転体制御部による回転体9の回転は継続されている。これにより、使用済クーラント3の液体成分及び固体成分の分離が明確に行われる。
【0023】
加えて、遠心分離ユニット2のクーラント吐出部14は、使用済クーラント3を洗浄液として回転体9の回転体内壁15に向けて吐出する洗浄液吐出機能を有し、さらに回転体制御部は、上記洗浄液吐出時に通常時よりも低速の回転数で回転体9を回転するように制御する低速回転機能を有している。これにより、低速で回転する回転体9の回転体内壁15に洗浄液として使用済クーラント3が吐出されることにより、回転体内壁15に堆積し、或いはスクレーパ18によって除去しきれなかったスラッジ(固形分17)を使用済クーラント3の処理前に除去することができる。
【0024】
次に、本実施形態のクーラント再生方法1の流れについて主に図1に基づいて説明する。始めに、使用済クーラント3を洗浄液として使用した回転体9の洗浄を行う。すなわち、貯留タンクに貯留された使用済クーラント3をクーラント吐出部14の洗浄液吐出機能を利用して縦型遠心分離装置5の回転体9に向かって吐出する(洗浄液吐出工程S0’)。さらに、使用済クーラント3の吐出と同じタイミングで回転体制御部を制御し、低速回転数で回転体9を回転させる。これにより、回転体9の回転体内壁15に残留するスラッジを使用済クーラント3で洗い流すことができる(スラッジ洗浄工程S0”)。ここで、回転体制御部によって低速回転条件で回転体9が回転しているため、内空間12にはそれほど強い遠心力は発生しない。そのため、遠心分離作用を受けることなく、使用済クーラント3は回転体内壁15に到達し、堆積したスラッジ(固形分17)を洗い落とすことができる。なお、回転体内壁15から洗い落とされたスラッジは使用済クーラント3とともに液体回収部20に回収され、使用済クーラント3の貯留タンクに貯留される。その結果、使用済クーラント3の固形分濃度は若干高めになる。係る処理を予め行うことにより、残存したスラッジが回転体9の高速回転時に飛散することがなく、装置自体及び装置周辺の室内を汚すことがない。さらに、後述する遠心分離時に回転体内壁15にスラッジが堆積しやすくなり、固形分17の回収効率が増加する可能性がある。なお、本実施形態のクーラント再生方法1では、上記洗浄液吐出工程S0’の使用済クーラント3を1分間に40リットル吐出する吐出量に設定し、さらに吐出時間(洗浄時間)を120秒に設定している。これにより、ほとんどのスラッジが除去される。また、回転体9の回転数は500rpmに設定されている。
【0025】
その後、使用済クーラント3によるスラッジの洗浄が行われた後、クーラント吐出部14から回転体9の内空間12に使用済クーラント3の吐出が開始される(クーラント供給工程S1)。これにより、回転体9の内空間12に使用済クーラント3が噴霧される。さらに、係る状態で回転体制御部を制御し、回転体駆動部11及び回転軸10を制御することで回転体9を高速で回転させる。これにより、内空間12の内部に遠心力が発生し、吐出された使用済クーラント3は当該遠心力による作用を受けることになる。その結果、使用済クーラント3中のシリコン切削屑16を含む固形分17と遠心分離液19とに遠心分離される(遠心分離工程S2)。ここで、縦型遠心分離装置5の回転体9は、4000rpmになるように設定されている。さらに、本実施形態のクーラント再生方法1は、間欠制御部21によってクーラント吐出部14による使用済クーラント3の吐出を間欠的に制御している(間欠制御工程S3)。具体的に説明すると、高速で回転する回転体9に対し、1分間に40リットルの吐出量となるように調整された使用済クーラント3を7秒間吐出し、その後、23秒間吐出を停止する。このとき、回転体9の回転は継続している。これにより、7秒間で吐出された使用済クーラント(約4.67リットル)は内空間12で遠心分離作用を受け、固形分17と液体成分(遠心分離液19)とに分離される。ここで、所定量の使用済クーラント3が内空間12に間欠的に供給されるため、固形分17と液体成分との分離速度が向上し、かつ分離性能がアップする。そのため、固形分17と液体成分との分離が完全に行われる。その後、再び、クーラント吐出部14による使用済クーラント3の吐出及び停止の間欠制御を繰返す(図1における矢印A参照)。本実施形態では、上記30秒の1サイクルの処理を所定回数又は所定時間繰り返す。その後、遠心分離処理の完了した遠心分離液19を回収し、再利用可能なクーラント4を生成する(遠心分離液回収工程S4)。なお、所定時間を経過後は、回転体内壁15に堆積した固形分17をスクレーパ18を利用して除去する操作を行う。これにより、間欠制御によって遠心分離速度をアップし、効率的な遠心分離処理が可能となるとともに、液体成分及び固形分17の分離性能も向上する。その結果、使用済クーラント3の投入量に対し、最終的に遠心分離液19として回収され、再利用されるクーラント4の回収率が高くなる。さらに、固形分17の液体成分量を低く抑え、かつ始動前の洗浄によりスラッジの飛散を抑えることができる。さらに、洗浄液として使用済クーラント3を利用することにより、洗浄処理から遠心分離処理への移行が速やかとなり、効率的な遠心分離処理が可能となる。
【0026】
図3及び図4はクーラント再生方法1による間欠運転条件及び通常運転条件の結果をそれぞれ示すものである。これによると、図3に示されるように、通常運転条件(■)に比べ、間欠運転条件(◆)は、短い運転時間(hr:横軸)で遠心分離液18中のシリコン濃度が低くなる傾向が示された。これにより、間欠運転条件によって、固形分17の遠心分離効率が良くなることが示された。
【0027】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0028】
すなわち、本実施形態のクーラント再生方法1において、固定砥粒方式のワイヤーソー切断装置から回収される砥粒の未混入の使用済クーラント3を使用するものを示したが、これに限定されるものではなく、遊離砥粒方式のワイヤーソー切断装置から回収されたものを用いるものであっても構わない。係る場合、遠心分離ユニット2等を利用して使用済クーラント3から予め砥粒を遠心分離する前工程が必要となる。砥粒は、使用済クーラント3に含まれるシリコン切削屑16等と比べて比重が著しく大きいため、上記遠心分離処理によってほとんどを回収することができる。そのため、本実施形態のクーラント再生方法1によるクーラント4の再生処理に影響を及ぼすことがない。
【符号の説明】
【0029】
1 クーラント再生方法
2 遠心分離ユニット
3 使用済クーラント
4 クーラント
5 縦型遠心分離装置
8 開口部
9 回転体
16 シリコン切削屑
17 固形分
19 遠心分離液
21 間欠制御部
S0’ 洗浄液吐出工程
S0” スラッジ洗浄工程
S1 クーラント供給工程
S2 遠心分離工程
S3 間欠制御工程
S4 遠心分離液回収工程
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】特開2010−253621号公報
【特許文献2】特開2010−253622号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤーソーでシリコン材料を切断する際に発生するシリコン切削屑を含む使用済クーラントから前記シリコン切削屑を除去した再利用可能なクーラントの再生方法であって、
縦型遠心分離装置を有する遠心分離ユニットに前記使用済クーラントを供給するクーラント供給工程と、
前記遠心分離ユニットに供給された前記使用済クーラントを前記シリコン切削屑を含む固形分と遠心分離液とに遠心分離する遠心分離工程と、
前記遠心分離ユニットの前記縦型遠心分離装置を稼動させた状態で前記使用済クーラントの供給を間欠的に制御する間欠制御工程と
を具備することを特徴とするクーラント再生方法。
【請求項2】
前記クーラント供給工程より前に実行され、
前記縦型遠心分離装置に洗浄液を吐出する洗浄液吐出工程と、
前記洗浄液の吐出される前記縦型遠心分離装置の回転体を前記遠心分離工程時の回転数よりも低速で回転させ、前記縦型遠心分離装置に付着したスラッジを洗浄及び除去するスラッジ洗浄工程と
をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のクーラント再生方法。
【請求項3】
前記洗浄液吐出工程は、
前記縦型遠心分離装置に1リットル/分以上、120リットル/分以下の前記洗浄液を1秒以上、120秒以下の間継続して供給することを特徴とする請求項2に記載のクーラント再生方法。
【請求項4】
前記洗浄液は、
前記使用済クーラントが使用されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のクーラント再生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56381(P2013−56381A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194822(P2011−194822)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(301035172)ジー・フォースジャパン株式会社 (6)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】