説明

グラデーション模様付きボトルと、ボトル成形用のプリフォーム

【課題】 2軸延伸ブロー成形ボトルおよびその成形用プリフォームであって、ベース樹脂材料と色装飾樹脂材料とを一体的に射出した際に、プリフォーム成形用の金型内における、ベース樹脂材料の流動による色装飾樹脂材料の層の厚みの漸減現象を利用することにより、色の濃淡変化によるグラデーション模様を現出するボトルおよび、このボトルを確実に成形できるプリフォームを得ることを目的とする。
【解決手段】 胴筒部10の一部を、ベース樹脂材料で成形された本体層6と、ベース樹脂材料とは異なる色の色装飾樹脂材料で成形された色装飾層7との積層構造として、色装飾層7により色装飾部11を現出させ、胴筒部10に位置する色装飾層7の端部である、徐々に肉厚を薄くする肉薄端部8によりグラデーション部12を現出させた合成樹脂製のグラデーション模様付きボトルを、2軸延伸ブロー成形手段により成形することにより、高い装飾効果を発揮するグラデーション模様を現出させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色の濃淡変化によるグラデーション模様を現出する合成樹脂製の2軸延伸ブロー成形ボトルと、このボトルに成形される、有底円筒形状に射出成形されたプリフォームに関するものである。
【背景技術】
【0002】
内容物、特に液状内容物の収納容器として、安価にかつ大量生産に適している点から合成樹脂製ボトルが各分野で大量に使用されているが、この合成樹脂製ボトルは、貼着されるラベル等により装飾を施すのが一般で、ボトル自体に色変化などの装飾を施すことが殆どなく、その外観体裁は、色装飾の点から、到底満足することのできないものであった。
【0003】
特に、最近大量に使用されている、PETボトルに代表される2軸延伸ブロー成形ボトルの内、有底円筒形状に射出成形されたプリフォームから2軸延伸ブロー成形されるボトルにあっては、一次成形品であるプリフォームが射出成形品であることから、得られる色装飾模様は、基本的には、成形樹脂材料の流れに沿った帯状模様に限定されている。
【0004】
この2軸延伸ブロー成形ボトルにおける色装飾に対する不満を解消するものとして、プリフォームを射出成形する際に、主成形材料である透明なベース樹脂材料と、このベース樹脂材料とは色の異なる透明な色装飾樹脂材料とを共射出し、単位時間における色装飾樹脂材料の射出量を増減変化させることにより、色装飾樹脂材料が形成する色装飾層の厚みを増減変化させ、これによりプリフォームをボトルに成形した際に、ボトルに色の濃淡変化による色模様を現出させようとする技術がある。
【特許文献1】特開平02−098409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記した従来技術にあっては、色装飾層の厚みを増減変化させた状態で連続した構造であるので、色模様として現出される色の濃淡変化は、この色装飾層が成形する色装飾部エリア内における濃淡変化となり、このため濃淡変化が強調され難く、特に淡い色変化であるグラデーション模様を現出するのは難しい、と云う問題があった。
【0006】
また、成形樹脂材料は、射出機から金型内に射出される際に、その流れを大きく変化させるため、射出機内で形成された色装飾樹脂材料の太さの増減変化を、そのまま金型内における色装飾樹脂材料の層の厚みの増減変化として再現できるとは限らず、このため色の濃淡変化による装飾を得るのが難しく、また得られたとしても現出される色の濃淡変化の形態が一定せず、商品化することがきわめて困難である、と云う問題がある。
【0007】
さらに、射出機内で、色装飾樹脂材料の射出量を増減変化させると云うことは、この増減変化がベース樹脂材料の射出動作に影響を与えることになるので、ベース樹脂材料の射出動作と色装飾樹脂材料の射出動作とを、適正に対応させる必要があり、このため射出機の動作制御が面倒で、難しいものとなる、と云う問題がある。
【0008】
そこで、本発明は、上記した従来技術における問題点を解消すべく創案されたもので、ベース樹脂材料と色装飾樹脂材料とを一体的に射出した際に、プリフォーム成形用の金型内における、ベース樹脂材料の流動による色装飾樹脂材料の層の厚みの漸減現象を利用することを技術的課題とし、もって色の濃淡変化によるグラデーション模様を現出するボトルを得ること、およびこのボトルを確実に成形できるプリフォームを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項1記載の発明の手段は、
胴筒部の一部を、ベース樹脂材料で成形された本体層と、ベース樹脂材料とは異なる色の色装飾樹脂材料で成形された色装飾層との積層構造とすること、
この色装飾層により色装飾部を現出させること、
胴筒部に位置する色装飾層の端部である、徐々に肉厚を薄くする肉薄端部によりグラデーション部を現出させること、
2軸延伸ブロー成形された合成樹脂製のボトルであること、
にある。
【0010】
この請求項1記載の発明にあっては、グラデーション模様を現出するグラデーション部が、色装飾層の肉薄端部により成形されるので、色装飾層の肉薄端部における肉厚変化に伴う色の濃淡変化が、本体層の色を背景として強調される。
【0011】
また、ボトルのグラデーション部は、プリフォームにおける色装飾層の肉薄端部が2軸延伸ブロー変形して成形されるものであるので、色装飾層の肉薄端部は、肉薄化された状態となってグラデーション部を現出することになる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の構成に、本体層の成形材料であるベース樹脂材料および、色装飾層成形材料である色装飾樹脂材料を透明とした、ことを加えたものである。
【0013】
この請求項2記載の発明にあっては、グラデーション部における、色のわずかな濃淡変化をも視覚することができるので、グラデーション部の範囲を無理なく広げることができる。
【0014】
上記技術的課題を解決する本発明の内、請求項3記載の発明の手段は、
底部中央にゲート跡を有する有底円筒形状に射出成形され、ボトルに2軸延伸ブロー成形されるプリフォームであること、
このプリフォームの略全体を形成する、ベース樹脂材料で成形された本体層と、この本体層に積層して、少なくともプリフォームの胴部の一部を形成する、ベース樹脂材料とは異なる色の色装飾樹脂材料で成形された色装飾層とから構成されること、
色装飾層の胴部に位置する端部を、ベース樹脂材料の流れ動作により、徐々に肉厚を薄くする肉薄端部としたこと、
にある。
【0015】
この請求項3記載の発明にあっては、射出機から金型内に射出された色装飾樹脂材料は、ベース樹脂材料と一緒に流動しながら、金型内で周方向に無端な筒状に変形し、ベース樹脂材料が形成する本体層に対して、この本体層に対して積層状に位置する色装飾層を形成する。
【0016】
プリフォームの胴部を成形する金型の成形空間部分は、金型内に射出された成形樹脂材料の通路部分ともなっているので、ベース樹脂材料および色装飾樹脂材料共に、活発に流動し、相互に影響を及ぼし合うのであるが、特に色装飾層の端部(成形樹脂材料の流れ方向に沿った下流端部および/または上流部)に対しては、ベース樹脂材料の流れ動作が強く影響するので、この色装飾層の端部は、端縁に近づくに従って徐々に肉厚を薄くする肉薄端部に形成される。
【0017】
このように、プリフォームは、その胴部に位置している色装飾層の端部が、厚みを徐々に減少させる肉薄端部とした構成となっているので、このプリフォームがボトルに2軸延伸ブロー成形されると、色装飾層の肉薄端部は、肉薄化が促進されて、色の濃淡変化か連続して淡く変化する色装飾部分であるグラデーション部を現出させることになる。
【0018】
色装飾層は、色装飾樹脂材料の射出タイミングにより、プリフォームの胴部における肉薄端部の位置を略正確に設定されることになり、これにより一定したグラデーション色模様を現出するボトル成形用のプリフォームを、安定して得ることができることになる。
【0019】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に、色装飾層を本体層の中に位置させた、ことを加えたものである。
【0020】
この請求項4記載の発明にあっては、色装飾層が現出する色模様状態に、本体層の色とか透明程度が、影響を与えることになる。
【0021】
請求項5記載の発明は、請求項3記載の発明の構成に、本体層の内側と外側に色装飾層を位置させた、ことを加えたものである。
【0022】
この請求項5記載の発明にあっては、現出される色模様状態が、本体層の色とか透明程度に影響されることなく、色装飾層に忠実に対応したものとなる。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
請求項1記載の発明にあっては、2軸延伸ブロー成形ボトルにおいて、色の濃淡変化によるグラデーション模様を明確に現出することができ、これによりグラデーション模様による高い装飾効果を得ることができる。
【0024】
また、現出されるグラデーション模様範囲を広くすることができ、これによりグラデーション模様を現出する色の濃淡変化を緩やかなものとすることができ、もって淡い装飾効果を現出するグラデーション模様を得ることができる。
【0025】
請求項2記載の発明にあっては,グラデーション部の範囲を無理なく広げることができるので、大きなグラデーション模様を簡単に得ることができる。
【0026】
請求項3記載の発明にあっては、胴部に位置する色装飾層の端部を、ベース樹脂材料の流動動作の影響により肉薄端部に成形するので、この肉薄端部の成形を必然的に達成することができる。
【0027】
また、色装飾層の肉薄端部を、色装飾樹脂材料の射出タイミングにより、略正確にかつ確実にプリフォームの胴部に位置させることができるので、胴筒部にグラデーション色模様を現出するボトル成形用のプリフォームを安定して確実にそして簡単に成形することができる。
【0028】
請求項4記載の発明にあっては、現出される色装飾状態が、色装飾層により特定されることなく、変化に富んだものとすることが可能となる。
【0029】
請求項5記載の発明にあっては、色装飾状態を、色装飾層で設計される状態に忠実に現出させることができ、これにより色装飾層による高い装飾効果を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1は、本発明によるボトル9の第一の実施形態例を示す一部拡大断面図示した全体図で、有底円筒形状をした胴筒部10の上端に肩部を介して、外周面に螺条を刻設し、下端に外鍔状のネックリング5を周設した口筒部4を連設して構成され、胴筒部10の下半分を本体層6と色装飾層7との積層構造とし、この色装飾層7により現出される下半分の色装飾部11の上端部を、肉薄端部8により現出されるグラデーション部12としている。
【0032】
この図1図示実施形態例にあっては、グラデーション部12が、最も目立つ胴筒部10の中央部に位置するので、グラデーション装飾が、より効果的に発揮されている。
【0033】
図2は、本発明によるプリフォーム1の第一の実施形態例を示す、不規則半縦断面図で、このプリフォーム1は、通常のものと同様に、下端を、中央にゲート跡を有して半球弧殻状の底部3で塞いだ円筒形状の胴部2の上端に、外周面に螺条を刻設すると共に、胴部2との境界部に外鍔状のネックリング5を周設した円筒状の口筒部4を連設して構成され、無色透明なベース樹脂材料と有色透明な色装飾樹脂材料とを射出して、色装飾樹脂材料により色装飾層7を成形しており、色装飾層7の上端部である肉薄端部8が胴部2に位置するようにしている。
【0034】
色装飾層7の下端部は、やや肉薄となっているものの、底部3に位置しているので、ボトル9の外観に色装飾を現出する部分とはなり得ず、またプリフォーム1の底部3は殆ど延伸変形しないので、延伸変形による肉薄化の促進を受けることができず、装飾部分として有効に機能するものとはならない。
【0035】
図3は、本発明によるプリフォーム1の第二の実施形態例を示す、不規則半縦断面図で、その基本構造は第一の実施形態例と同じであるが、プリフォーム1の成形樹脂材料は、ベース樹脂材料、色装飾樹脂材料、そして再びベース樹脂材料の順で位置しており、最初のベース樹脂材料および色装飾樹を設定することにより、色装飾層7の上下両端部の位置、特に色装飾層7の胴部2における上端部である肉薄端部8の位置を設定する。
【0036】
この第二の実施形態例にあっては、色装飾層7は、胴部2の内周面と外周面とに、二分されて成形され、外周面に位置する色装飾層7が、ベース樹脂材料による本体層6で覆われることなく、露出した状態となるので、全く同じ色装飾樹脂材料を使用しても、第一の実施形態例に比べて第二の実施形態例の方が、色装飾樹脂材料の色が強く現出されることになる。
【0037】
図4は、図2に示したプリフォーム1の第一の実施形態例、または図3に示したプリフォーム1の第二の実施形態例から2軸延伸ブロー成形されたボトル9の第一の実施形態例の全体正面図を示すもので、成形された胴筒部11の下半部分には、プリフォーム1の色装飾層7による色装飾部11が現出されており、この色装飾部11は、その上端部の、上端に近づくに従って徐々に色が薄くなる、色の濃淡変化を装飾効果として発揮するグラデーション部12を形成している。
【0038】
図5は、プリフォーム1の第三の実施形態例を示すもので、色装飾層7は、プリフォーム1の上端である口筒部4上端縁から胴部2の中央部まで伸びており、この胴部2の中央部に位置した色装飾層7の下端部を肉薄端部8としている。
【0039】
このプリフォーム1の第三の実施形態例は、色装飾樹脂材料の射出タイミングを設定することにより、肉薄端部8を胴部2に正確に位置させる。
【0040】
図6は、図5に示したプリフォーム1の第三の実施形態例から2軸延伸ブロー成形されたボトル9の第二の実施形態例の全体正面図を示すもので、成形されたボトル9の上半分には、プリフォーム1の色装飾層7による色装飾部11が現出されており、胴筒部10の中央に位置する色装飾部11の下端部は、下端に近づくに従って徐々に色が薄くなるグラデーション部12となっており、ボトル9に現出される色装飾部11の形態は、図4図示実施例の場合と上下が逆となっている。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明のボトルの第一実施形態を示す、一部拡大断面した全体図である。
【図2】本発明のプリフォームの第一実施形態を示す、不規則半縦断正面図である。
【図3】本発明のプリフォームの第二実施形態を示す、不規則半縦断正面図である。
【図4】本発明のボトルの第一実施形態を示す、全体図である。
【図5】本発明のプリフォームの第三実施形態を示す、不規則半縦断正面図である。
【図6】本発明のボトルの第二実施形態を示す、全体図である。
【符号の説明】
【0042】
1 ; プリフォーム
2 ; 胴部
3 ; 底部
4 ; 口筒部
5 ; ネックリング
6 ; 本体層
7 ; 色装飾層
8 ; 肉薄端部
9 ; ボトル
10; 胴筒部
11; 色装飾部
12; グラデーション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴筒部(10)の一部を、ベース樹脂材料で成形された本体層(6)と、前記ベース樹脂材料とは異なる色の色装飾樹脂材料で成形された色装飾層(7)との積層構造として、該色装飾層(7)により色装飾部(11)を現出させ、前記胴筒部(10)に位置する色装飾層(7)の端部である、徐々に肉厚を薄くする肉薄端部(8)によりグラデーション部(12)を現出させた、2軸延伸ブロー成形された合成樹脂製のグラデーション模様付きボトル。
【請求項2】
本体層(6)の成形材料であるベース樹脂材料および、色装飾層(7)の成形材料である色装飾樹脂材料を透明とした請求項1記載のグラデーション模様付きボトル。
【請求項3】
底部(3)中央にゲート跡を有する有底円筒形状に射出成形され、ボトル(9)に2軸延伸ブロー成形されるプリフォーム(1)であって、該プリフォーム(1)の略全体を形成する、ベース樹脂材料で成形された本体層(6)と、該本体層(6)に積層して、少なくとも前記プリフォーム(1)の胴部(2)の一部を形成する、前記ベース樹脂材料とは異なる色の色装飾樹脂材料で成形された色装飾層(7)とから成り、前記色装飾層(7)の胴部(2)に位置する端部を、前記ベース樹脂材料の流れ動作により、徐々に肉厚を薄くする肉薄端部(8)とした、グラデーション模様付きボトルに2軸延伸ブロー成形されるプリフォーム。
【請求項4】
色装飾層(7)を本体層(6)の中に位置させた請求項3記載のプリフォーム。
【請求項5】
本体層(6)の内側と外側に色装飾層(7)を位置させた請求項3記載のプリフォーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−306470(P2006−306470A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−132961(P2005−132961)
【出願日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】