説明

グラデーション照明装置

【課題】細かい部分も滑らかで美しいグラデーション効果が得られ、しかも、グラデーション状の照明の照明状態を可変とするグラデーション照明装置を提供する。
【解決手段】本発明のグラデーション照明装置では、メータパネル2が、面発光光源6からの光を略平面状に発光させる発光面Sを有する拡散板2Cと、複数の遮光性傾斜リング部材2B1〜2B5とを有し、傾斜リング部材2B1〜2B5が発光面Sに対して傾斜した状態で、発光面Sに沿って一定間隔で並設され、かつ各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5が正面側から見て各々オーバーラップした状態で配置されて、発光面Sから放射された光が各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5の隙間Gを通過して、傾斜リング部材2B1〜2B5の伸びる方向に沿って正面側に導光され、正面側から見て各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5上のオーバーラップしていない複数の視認可能領域Vを斜め方向から間接照明することにより、各視認可能領域Vが各々グラデーション状に照明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用メータのメータパネルをグラデーション状に発光させるグラデーション照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両用メータのメータパネルをグラデーション状に発光させるグラデーション照明装置が知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の車両用表示装置では、メータパネルの文字盤に、細かいドット状の印刷が、場所によってドット密度を連続的に変えて印刷されており、この文字盤を背面側から透過照明することによって文字盤をグラデーション状に発光させている。
【特許文献1】特開2007−93368号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の車両用表示装置では、グラデーション状に発光する部分において、明るく発光する部分は、暗く発光する部分に比べてドット密度が疎な状態となっているので、明るく発光する部分はドットの印刷が視認可能となって、メータパネルの見映えが損なわれるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明では、細かい部分も滑らかで美しいグラデーション効果が得られ、しかも、グラデーション状の照明の照明状態を可変とするグラデーション照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、車両用メータのメータパネルと該メータパネルを背面側から透過照明する光源とからなるグラデーション照明装置であって、前記メータパネルが、前記光源からの光を略平面状に発光させる発光面を有する発光体と、複数の遮光性傾斜板とを有し、該複数の傾斜板が前記発光面に対して傾斜した状態で該発光面に沿って一定間隔で並設され、かつ各隣接する前記傾斜板が正面側から見て各々オーバーラップした状態で配置されて、前記発光面から放射された光が前記各隣接する傾斜板の隙間を通過して、該複数の傾斜板の伸びる方向に沿って正面側に導光され、正面側から見て前記各隣接する傾斜板上のオーバーラップしていない複数の視認可能領域を斜め方向から間接照明することにより、該複数の各視認可能領域が各々グラデーション状に照明されるグラデーション照明装置を特徴としている。
【0007】
そして、請求項2に記載された発明は、前記発光面から放射される照射光の強度を変化させることにより、前記各視認可能領域に対するグラデーション状の照明の照明状態を変化させる請求項1に記載のグラデーション照明装置を特徴としている。
【0008】
また、請求項3に記載された発明は、前記複数の傾斜板が、それぞれ互いに径の異なるリング状を呈すると共に該複数の傾斜板が正面側から見て同心円状に隣接配置されている請求項1または請求項2に記載のグラデーション照明装置を特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
このように構成された本発明の請求項1の発明では、複数の視認可能領域を斜め方向から間接照明することにより、これらの各視認可能領域が各々グラデーション状に照明されるので、ドット状の印刷のドット密度を場所によって変える従来例の車両用表示装置とは異なり、細かい部分であっても滑らかで美しいグラデーション効果が得られる。
【0010】
また、複数の傾斜板が発光面に対して傾斜した状態で並設されているので、正面側から見た際にメータパネルに奥行き感を表現することができる。
【0011】
そして、本発明の請求項2の発明では、発光面から放射される照射光の強度を変化させることにより、各視認可能領域に対するグラデーション状の照明の照明状態を変化させることができるので、グラデーション照明装置自体の構成を変更することなく、簡単にグラデーション状の照明の照明状態を変化させることができる。
【0012】
例えば、車両用メータが車両のタコメータである場合には、エンジンの回転数に応じて発光面から放射される照射光の強度を変化させることにより、様々な視覚的効果や意匠上の効果を提供できる。
【0013】
さらに、本発明の請求項3の発明では、それぞれ互いに径の異なる複数のリング状の傾斜板が同心円状に隣接配置されているので、各傾斜板が発光面に対して同心円の半径方向内側に向かって傾斜している構成では、各視認可能領域が外周部から中心部に向けて徐々に暗くなるようなグラデーション状の照明効果が得られる。
【0014】
また、各傾斜板が発光面に対して同心円の半径方向外側に向かって傾斜している構成では、各視認可能領域が中心部から外周部に向けて徐々に暗くなるようなグラデーション状の照明効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る実施の形態の実施例に基づいて、本発明のグラデーション照明装置を説明する。
【実施例1】
【0016】
〈構成〉
図1において、符号1は車両のメータ装置、符号2は本実施例に係るメータパネル、符号3は目盛りが印刷されたメータパネル2の目盛部、符号4はグラデーション状に発光するメータパネル2のグラデーション発光部、符号5はメータ装置1の指針部である。
【0017】
また、図2(b)または図2(c)において、符号6は例えば有機ELなどの面発光光源、符号7は面発光光源6を支持する基板である。
【0018】
本実施例のグラデーション照明装置は、メータパネル2と、このメータパネル2を透過照明する面発光光源6とによって構成されている。
【0019】
図2(b)に示すように、メータパネル2と面発光光源6と基板7とは、この順で当接配置されており、これらは図示が省略されたメータ装置1のハウジング部に固定されている。
【0020】
図2(c)に示すように、メータパネル2は、リング状の目盛部材2Aと、5個の遮光性傾斜リング部材2B1〜2B5と、拡散板2Cとによって構成されている。
【0021】
拡散板2Cは、傾斜リング部材2B1〜2B5を支持すると共に、背面に配置された面発光光源6からの光を拡散し、略平面状の発光面Sから放射させる。
【0022】
目盛部材2Aは透明な樹脂によって形成されており、目盛部材2Aの表面側には、目盛部3の文字部分が光を透過するように白抜きの印刷が施されている。
【0023】
傾斜リング部材2B1〜2B5は、遮光性を有し、かつ光をよく反射する樹脂、例えば白色の樹脂などにより形成されている。
【0024】
傾斜リング部材2B1〜2B5は、それぞれ互いに径の異なるリング状で傾斜角20°の略裁頭円錐側面形状を呈しており、これらは、この順に径が大きくなっている。
【0025】
目盛部材2Aの内径は傾斜リング部材2B5の外径より大きく、目盛部材2Aの内周縁には傾斜角20°の逆テーパーが施されている。
【0026】
傾斜リング部材2B1〜2B5の各拡径側端部には、縮径側から拡径側に向かって延びる円筒状の嵌合部2B1a〜2B5aがそれぞれ形成されており、拡散板2Cの表面側には、嵌合部2B1a〜2B5aに対応する位置に、円形の嵌合溝2C1b〜2C5bが、それぞれ同心円状に形成されている。
【0027】
また、拡散板2Cには、指針部5用の軸穴2Caが上記同心円の中心位置に形成されており、面発光光源6と基板7とには、軸穴2Caに対応する位置に、それぞれ軸穴6a,7aが形成されている。
【0028】
そして、傾斜リング部材2B1〜2B5の各嵌合部2B1a〜2B5aが、それぞれ嵌合溝2C1b〜2C5bに嵌合固定されている。
【0029】
したがって、正面側から見ると、傾斜リング部材2B1〜2B5は、この順に内側から外側へと同心円状にかつ等間隔に隣接配置されており、傾斜リング部材2B5のさらに外側には、上記同心円と同心に目盛部材2Aが配置されている。
【0030】
また、図2(b)に示すように、図2(a)のA−A断面を見ると、傾斜リング部材2B1〜2B5は発光面Sに対して傾斜した状態で、この発光面Sに沿って一定間隔で拡散板2Cに並設されている。
【0031】
そして、各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5および目盛部材2Aは、それぞれオーバーラップした状態で配置されている。
【0032】
したがって、正面側から見た際に、拡散板2Cからの直接光は傾斜リング部材2B1〜2B5および目盛部材2Aによって遮光される。
【0033】
〈作用効果〉
図3(a)に示すように、発光面Sから放射された光が各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5の隙間Gを通過して、この傾斜リング部材2B1〜2B5の伸びる方向に沿って正面側に導光される。
【0034】
そして、正面側から見て各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5上のオーバーラップしていない複数の視認可能領域Vを斜め方向から間接照明することにより、図3(b)に示すように、各視認可能領域Vが、上記傾斜リング部材2B1〜2B5の伸びる方向に沿って正面側に導光される光によって、それぞれグラデーション状に照明される。
【0035】
このように、本実施例のグラデーション照明装置では、複数の視認可能領域Vを斜め方向から間接照明することにより、これらの各視認可能領域Vが、それぞれグラデーション状に照明されるので、ドット状の印刷のドット密度を場所によって変える従来例の車両用表示装置とは異なり、細かい部分であっても滑らかで美しいグラデーション効果が得られる。
【0036】
特に、本実施例では、各傾斜リング部材2B1〜2B5が発光面Sに対して同心円の半径方向内側に向かって傾斜しているので、各視認可能領域Vが外周部から中心部に向けて徐々に暗くなる複数の同心円状のグラデーション状の照明効果が得られ、グラデーション発光部4には、図1に示すように、外周部から中心部に向けて徐々に暗くなる5つの同心円状のグラデーションリングが浮き出て見える。
【0037】
このように、本実施例のグラデーション照明装置では、中心部への収束感がある立体的なデザインを表現することができる。
【0038】
また、本実施例のグラデーション照明装置では、発光面Sから放射される照射光の強度を変化させることにより、図4(a)〜図4(c)に示すように、各視認可能領域Vに対する見かけのグラデーション状の照明の照明状態を変化させることができるので、グラデーション照明装置自体の構成を変更することなく、簡単にグラデーション状の照明の照明状態を変化させることができ、グラデーション状の発光を一層変化に富んだものとすることができる。
【0039】
例えば、メータ装置1が車両のタコメータである場合には、エンジンの回転数に応じて発光面Sから放射される照射光の強度を変化させることにより、エンジンの回転数に応じてグラデーション状の照明の照明状態を変化させることができる。
【0040】
このように、本実施例のグラデーション照明装置では、車両のメータ装置などに、様々な視覚的効果や意匠上の効果を付与することができる。
【0041】
しかも、本実施例のグラデーション照明装置では、図5に示すように、例えば、傾斜リング部材2B4,2B5に注目すると、これらの間の奥行き距離L1,L2が、車両の乗員の視認角度θvによって変化するので、視認角度θvが変わると奥行き感が変化して見え、見る人には一層の奥行き感が感じられる。
【0042】
このように、本実施例のグラデーション照明装置では、複数の傾斜リング部材2B1〜2B5が、拡散板2Cの発光面Sに対して傾斜した状態で並設されているので、正面側から見た際にメータパネル2に奥行き感を表現することができる。
【実施例2】
【0043】
実施例2のグラデーション照明装置について、実施例1とは異なる部分を中心に説明する。なお、実施例1と同様の構成および、その作用効果については説明を省略する。
【0044】
〈構成〉
実施例2のグラデーション照明装置は、実施例1と光源の構成が異なっている。
【0045】
図6に示すように、実施例2のグラデーション照明装置は、複数のLED6´と回路基板7´とを有しており、複数のLED6´は回路基板7´の表面側に取り付けられている。
【0046】
そして、回路基板7´は、メータパネル2の拡散板2Cの背面側に、拡散板2Cに平行に空隙を設けて対向配置されている。
【0047】
〈作用効果〉
図6に示すように、本実施例のグラデーション照明装置では、LED6´の前方に空隙を介して拡散板2Cが設けられており、LED6´が放射する光は、空隙内で拡がった後、拡散板2Cによって拡散されるので、拡散板2Cの発光面Sは、ほとんど面状に発光する。
【0048】
しかしながら、LED6´は、その特性上、発光光軸を中心とする強い指向性を有しているので、拡散板2Cを介しても、拡散板2CのLED6´の存在する位置が、ある程度点光りしてしまう。
【0049】
本実施例のグラデーション照明装置では、各隣接する傾斜リング部材2B1〜2B5および目盛部材2Aが、正面側から見て、それぞれオーバーラップした状態で配置されており、拡散板2Cの点光りする位置が傾斜リング部材2B1〜2B5および目盛部材2Aによって覆われているので、正面側から直接、点光りは見えない。
【0050】
以上、図面を参照して、本発明に係る実施の形態の実施例を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれるものである。
【0051】
なお、実施例に係るメータパネル2では、各傾斜リング部材2B1〜2B5が発光面Sに対して同心円の半径方向内側に向かって傾斜している構成であるが、各傾斜リング部材2B1〜2B5が発光面Sに対して同心円の半径方向外側に向かって傾斜している構成としてもよく、この場合、各視認可能領域Vが中心部から外周部に向けて徐々に暗くなるようなグラデーション状の照明効果が得られるので、外周部への広がり感がある立体的なデザインを表現することができる。
【0052】
また、実施例に係る傾斜リング部材2B1〜2B5は、同心円上に配置されたリング状の部材であるが、必ずしもリング状の部材である必要はない。例えば、発光面Sに対して斜めに平行配置された平板状の部材であってもよい。
【0053】
さらに、実施例1では、タコメータの回転数に応じてグラデーション状の照明の照明状態を変化させたが、このような対応は回転数に限るものではなく、各種メータの指示内容に応じてグラデーション状の照明の照明状態を変化させるものであってもよい。
【0054】
また、メータの指示内容とは無関係に、奥行き感の変化や斬新な視覚的効果を演出するために、グラデーション状の照明の照明状態を変化させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施例1および実施例2に係る車両のメータ装置の正面図である。
【図2】実施例1および実施例2に係るメータパネルを示す図であり、図(a)はメータパネルの正面図、図(b)は図(a)のA−A断面の断面図、図(c)は図(b)の分解図である。
【図3】図(a)は図2(b)に対応する図2(a)のA−A断面の断面図であり、図(b)は図1の領域Dの拡大図である。
【図4】図1の領域Dの拡大図であり、図(a)〜図(c)は、この順で、それぞれメータパネルに照射される照射光の強度を増加させた場合のグラデーション状の照明の照明状態の変化の様子を示した図である。
【図5】図2(b)のB部分の拡大図であり、視認角度によって奥行き感が変化する様子を示す図である。
【図6】図(a)および図(b)は、実施例2のグラデーション照明装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 メータ装置(車両用メータ)
2 メータパネル
2B1〜2B5 傾斜リング部材(傾斜板)
2C 拡散板(発光体)
6 面発光光源(光源)
6´ LED(光源)
G 隙間
S 発光面
V 視認可能領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用メータのメータパネルと該メータパネルを背面側から透過照明する光源とからなるグラデーション照明装置であって、
前記メータパネルが、前記光源からの光を略平面状に発光させる発光面を有する発光体と、複数の遮光性傾斜板とを有し、
該複数の傾斜板が前記発光面に対して傾斜した状態で該発光面に沿って一定間隔で並設され、かつ各隣接する前記傾斜板が正面側から見て各々オーバーラップした状態で配置されて、
前記発光面から放射された光が前記各隣接する傾斜板の隙間を通過して、該複数の傾斜板の伸びる方向に沿って正面側に導光され、正面側から見て前記各隣接する傾斜板上のオーバーラップしていない複数の視認可能領域を斜め方向から間接照明することにより、該複数の各視認可能領域が各々グラデーション状に照明されることを特徴とするグラデーション照明装置。
【請求項2】
前記発光面から放射される照射光の強度を変化させることにより、前記各視認可能領域に対するグラデーション状の照明の照明状態を変化させることを特徴とする請求項1に記載のグラデーション照明装置。
【請求項3】
前記複数の傾斜板が、それぞれ互いに径の異なるリング状を呈すると共に該複数の傾斜板が正面側から見て同心円状に隣接配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のグラデーション照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−117321(P2010−117321A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292552(P2008−292552)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】