グラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法
【課題】エピタキシャルグラフェン層を他の任意の基板上に再現性よく転写させるグラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法を提供する。
【解決手段】グラフェン層の剥離方法において、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備える。
【解決手段】グラフェン層の剥離方法において、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラフェン(Graphene)の転写方法については、スコッチテープ法等により、高配向性のグラファイト(HOPG:Highly Oriented Pyrolytic Graphite)から機械的にSiO2/Si基板上ヘグラファイト層1層からなるグラフェンを転写したことが英国マンチェスター大学のA.Gaim等により2004年に報告されている。
【0003】
グラフェンは、マスレスフェルミンオン系として特異なバンド構造を持つ新たな材料であり、筒状構造のカーボンナノチューブが持つバリスティック伝導やその他の興味深い電気特性は、ほぼすべて備えている。また、グラフェンは、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano-Tube)とは異なり、シート状構造であることから、従来のLSIの微細加工技術が適用でき、集積化が容易であるという特徴を持つ新たな材料である。
【0004】
しかしながら、現実にはグラフェンは、発見以来これまで、HOPGからの剥離を用いる方法でしか良質のグラフェンが得られなかったために、大面積のグラフェンは得られていない。したがって、このグラフェンに集積デバイスプロセスを適用することが困難であった。
【0005】
また、SiC基板を高温水素エッチィング処理と真空での高温加熱処理することとによってシート状のエピタキシャルグラフェン(グラフェンシート)層の形成方法及び転写方法については、例えば、特許文献1に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−62247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SiC基板上のエピタキシャルグラフェン層は、原子レベルで平坦であり極めて安定な化学結合を持つ結晶表面を有していることから、従来の種々の接着剤をはじめとする化学的接着法を用いてエピタキシャルグラフェン層をSiC基板から剥離しようとしても、SiC基板全表面から一括に剥離することができなかった。したがって、さらにこのエピタキシャルグラフェン層を一括に他の任意の基板へ転写することも困難であった。
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、エピタキシャルグラフェン層を他の任意の基板上に再現性よく転写させるグラフェン層の剥離工程、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の第1のグラフェン層の剥離方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1のグラフェンウエハの製造方法は、請求項1に記載の剥離方法と、前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記目的を達成するために、本発明の第2のグラフェン層の剥離方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層がパターン成形される工程と、前記成形されたグラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、さらに、前記目的を達成するために、本発明の第2のグラフェンウエハの製造方法は、請求項7に記載の剥離方法と、前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
そして、前記目的を達成するために、本発明のグラフェンウエハは、基板の表面に単層又は2層以上の剥離されたグラフェン層を備えたことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、前記目的を達成するために、本発明のグラフェン素子の製造方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と前記グラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成した接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程と、前記グラフェン層がパターン成形される工程と、前記成形されたグラフェン層の表面に電極が形成される工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エピタキシャルグラフェン層を他の任意の基板上に再現性よく転写させるグラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態のエピタキシャルグラフェン基板を説明するための図であり、(a)は、エピタキシャルグラフェン層の結晶構造を示す模式図であり、(b)は、エピタキシャルグラフェン基板の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その1)を説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その2)を説明するための断面図であり、(a)は、剥離工程を説明するための断面図であり、(b)は、その他の剥離工程を説明するための断面図である。
【図4】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その3)を説明するための断面図であり、(a)は、接合工程を説明するための断面図であり、(b)は、その他の接合工程を説明するための断面図である。
【図5】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その4)を説明するための断面図であり、(a)は、接着用金属層の除去工程を説明するための断面図であり、(b)グラフェンウエハを得る工程を説明するための断面図である。
【図6】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の積層グラフェン層を有するグラフェンウエハの製造工程を説明するための断面図であり、(a)は、接合工程を説明するための断面図であり、(b)は、積層グラフェン層を有するグラフェンウエハの構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その1)を説明するための図であり、(a)は、グラフェンパターンを説明するための平面図であり、(b)は、剥離工程を説明するための断面図である。
【図9】第2の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その2:接合工程)を説明するための断面図である。
【図10】第2の実施形態のグラフェンウエハの構造を説明するための図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態のグラフェン素子(ボトムゲート型のグラフェンTFT)の製造方法の製造工程(その1)を説明するための図であり、(a)は、グラフェンウエハの構造を説明するための断面図であり、(b)は、グラフェンパターンを形成する工程を説明するための平面図であり、(c)は、(b)の断面図である。
【図12】第3の実施形態のグラフェン素子(ボトムゲート型のグラフェンTFT)の製造方法の製造工程(その2)を説明するための図であり、(a)は、電極形成工程(ソース・ドレイン電極)を示す平面図であり、(b)は、(a)の断面図であり、(c)は、電極形成工程(ゲート電極)の断面図である。
【図13】第3の実施形態のグラフェン素子(トップゲート型のグラフェンTFT)の構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図1乃至図13を参照して説明する。各図は、本発明の特徴が明確になるように表記しており、寸法関係等は必ずしも実際のものに忠実に描いていないため、本発明を何ら制約するものではない。なお、各図で同じ構成要素には同一の符号を付している。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
まず、図1(a)及び図1(b)を参照して、エピタキシャルグラフェン基板100を構成するSiC基板101とエピタキシャルグラフェン層110について説明する。
【0019】
エピタキシャルグラフェン層110の構成を、図1(a)の模式図を参照して説明する。このエピタキシャルグラフェン層110は、炭素原子C(図1(a)に黒丸、点柄丸及び白丸で示す)が蜂の巣状に6角形のネットワークを組んで2次元のシートを形成するグラファイト(黒鉛)結晶の単層又は複数層を備えて構成される。図1(a)では、例えば、黒丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111a、点柄丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111b及び白丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111cの3層構成のエピタキシャルグラフェン層110を示している。本実施形態では、SiC基板101の表面を高温水素エッチング処理と真空での高温加熱処理を行うことによってエピタキシャルグラフェン層110を形成した。
【0020】
図1(b)は、エピタキシャルグラフェン層110を形成したエピタキシャルグラフェン基板100の構成の断面図を示している。このエピタキシャルグラフェン基板100は、第1の基板としてSiC基板101を用いて、このSiC基板101の表面を高温水素エッチング処理と真空での高温加熱処理とを行うことによって形成したエピタキシャルグラフェン層110を備えて構成されている。本実施形態では、例えば、SiC基板101の表面に順次エピタキシャルグラフェン層111c、エピタキシャルグラフェン層111b、及びエピタキシャルグラフェン層111aが3層構成で形成されている。
【0021】
次いで、図2乃至図3は、SiC基板101上に形成したエピタキシャルグラフェン層110から、1層のエピタキシャルグラフェン層(以後、「グラフェン層」と称する)111aを剥離させる方法を説明するための工程断面図である。
【0022】
図2に示すように、グラフェン層110の最上層であるグラフェン層111aの表面に接着用金属層120、支持体接着層122、及び支持体124を順次形成した構成とすることが本実施形態の要件の一つである。
【0023】
前記したように、グラフェン層110は、上層との間で極めて化学結合を持ちにくい安定な表面を有し、原子レベルで平坦であることから、従来の種々の接着剤をはじめとする化学的接着法で剥離しようとしても均一に大面積での剥離は困難である。そのため、本実施形態の特徴は、グラフェン層111aの表面に、このグラフェン層111aの表面から内部に拡散しやすい接着用金属層120を設けたことにある。
【0024】
グラフェン層111aの表面から内部に拡散しやすい金属元素から成る接着用金属層120としては、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される金属を含む金属層が好適である。そして、この接着用金属層120は、真空蒸着法やスパッタ法等によって形成することができる。さらに、接着用金属層120は、少なくとも剥離するグラフェン層111aの表面全面を被覆することが望ましい。これは、3層のグラフェン層から、大面積の連続したグラフェン層111aのみを剥離するためである。したがって、少なくともグラフェン表面全面を被覆するに十分な膜厚の金属層を接着用金属層120として形成する必要がある。
【0025】
また、接着用金属層120上には、接着用金属層120の表面と高い密着性を確保する支持体接着層122を形成する。この支持体接着層122と接着用金属層120との接着力は、少なくともグラフェン層110を構成する3層構成のグラフェン層111aとグラフェン層111bとの間、及び、グラフェン層111bとグラフェン層111cとの間の分子間力よりも大きいことが望ましい。また、この支持体接着層122は、接着用金属層120の表面全面を被覆することが望ましい。支持体接着層122は、エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリイミド系接着剤等の接着剤、熱硬化接着剤、UV硬化接着剤、有機塗布材料、半田材料等の接着性を有する材料が好適である。
【0026】
接着用金属層120の表面には凹凸があり、この凹凸に接着性材料が侵入し、いわゆるアンカー効果による強固な接着が得られる。支持体接着層122の形成方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレイコート法、ディスペンス法等、使用する接着性の材料の特性に適合した手段を適宜適用することができる。
【0027】
次いで、作業者は、支持体接着層122の表面に、支持体124を接着する。この支持体124は、剥離したグラフェン層111aを支持する機能があり、支持体接着層122との接着強度を少なくともグラフェン層110間の分子間力強度よりも大きくすることができる接着強度を備えていればよい。支持体124としては、ガラス基板、セラミックス基板、石英基板、Si等の半導体基板、等が好適である。
【0028】
後記するように、剥離したグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)の表面に接合した後に、グラフェン層111aからその上層の接着用金属層120、支持体接着層122、及び、支持体124を除去するために、接着用金属層120を酸やアルカリの薬液によってエッチング除去する工程を経る場合に、支持体124は、接着用金属層120をエッチング除去するエッチング液に対して耐食性を備えている材料を使用することが望ましい。接着用金属層120をエッチング除去するエッチング液に対して耐食性を備えている材料を使用することにより、支持体124を再利用することができる。
【0029】
そして、図3(a)に示すように、支持体124の表面側から少なくともグラフェン層110間の分子間力よりも大きい力(F)で引き上げる。これにより、グラフェン層111aと111bとの間で剥離する。引き上げる力はグラフェン層110間の分子間力よりも大きい力でよいため、大面積のグラフェン層を一括してSiC基板から剥離する場合であっても、本発明の方法によれば容易に剥離することができる。例えば、図3(b)に示すように、支持体124表面側から真空吸着126を行って引き上げることにより、剥離することができる。
【0030】
次いで、作業者は、グラフェン層111aの剥離された剥離面側の表面を、図4(a)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面に直接密着させ接合し固定する。このとき、密着する別の基板(第2の基板)130の表面とグラフェン層111aの剥離面側の表面との間は、分子間力によって接合される。また、この接合工程において、図4(b)に示すように、別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層132の表面に直接密着させ分子間力によって接合してもよい。
【0031】
この接合の場合、接合面同士をナノメータオーダに近接させ、分子間力によって接合面同士を接合し固定するために、グラフェン層111aの表面の平坦性と、別の基板(第2の基板)の表面あるいは別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層の表面の平坦性とが、少なくともナノメータオーダの平坦性を備えていることが望ましい。
【0032】
ここで、ナノメータオーダの平坦性とは、分子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で測定した表面粗さ(山−谷の最大高低差:Rrv)が1桁の数値のナノメートルであること、すなわち、Rrvが10nmよりも小さい値であることを意味する。より好ましくは、別の基板(第2の基板)の表面のRrv、すなわち、別の基板(第2の基板)の表面に形成する接合層の表面のRrvは、3nm以下であることが望ましい。
【0033】
別の基板(第2の基板)130としては、例えば、Si基板、AlN基板等の半導体基板や、セラミックス基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、等が好適である。また、別の基板(第2の基板)の表面に形成する接合層132は、例えば、SiO2、SiN、SiON、PSG、BSG、SOG等の薄膜が好適である。そして、この接合層132は、プラズマCVD法、CVD法、スパッタ法等により形成することができる。
【0034】
前記のように、グラフェン層111aを、別の基板(第2の基板)130の表面あるいは別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合した後に、図5(a)及び図5(b)に示すように、グラフェン層111aの接着用金属層120側から接着用金属層120を除去する。例えば、酸又はアルカリのエッチング液を使用して、接着用金属層120を化学的にエッチングすることができる。接着用金属層120を化学的にエッチング除去する場合には、使用する別の基板(第2の基板)130及び接合層132の材料により、接着用金属層120はエッチングされるが、別の基板(第2の基板)130及び接合層132は、エッチングされないエッチング液を使用する。
【0035】
以上のようにすることで、別の基板(第2の基板)130の表面あるいは別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合したグラフェン層111aを有するグラフェンウエハ150を得ることができる。
【0036】
なお、図6に、本実施形態を説明するための主な製造工程のフローチャートを示す。製造工程としては、第1の基板の表面にグラフェン層を形成する(ステップS1)、グラフェン層の表面に接着用金属層、支持体接着層及び支持体を形成する(ステップS2)、接着用金属層を介してグラフェン層を第1の基板から剥離する(ステップS3)、別の基板(第2の基板)の表面又は別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層の表面にグラフェン層を接合する(ステップS4)、そして、接着用金属層を除去し、グラフェンウエハを得る(ステップS5)、である。
【0037】
さらに、図7(a)乃至図7(b)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合したグラフェン層111aの表面に、さらに、グラフェン層111bを接合することもできる。グラフェン層111aの表面へのグラフェン層111bの接合は、前記グラフェン層111aを、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合する工程を繰り返すことによって行うことができる。
【0038】
この工程を、順次繰り返すことにより、図7(b)に示すように、例えば、所望の層数のグラフェン層111a、グラフェン層111b及びグラフェン層111cを所望の構成で積層した積層グラフェン層140を、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に、形成したグラフェンウエハ151を得ることも可能である。
【0039】
本発明の第1の実施形態では、第1の基板(SiC基板)101の表面に形成したグラフェン層111aの表面に、グラフェン層111aの内部に拡散しやすい金属材料からなる接着用金属層120をグラフェン層111aの表面全面に設け、さらに、接着用金属層120と接着性に優れた支持体接着層122及び支持体124を設けて、支持体124を引き上げることによって、第1の基板(SiC基板)101からグラフェン層111aを剥離する工程を備え、さらに、剥離したグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に分子間力接合する工程、及び、接着用金属層120を選択的に化学的エッチングによって除去する工程を設けたので、大面積のグラフェン層111aを所定の別の基板(第2の基板)の表面に接合した大面積グラフェンウエハ150を製造することができる。さらに、複数層の積層グラフェン層140を備えた大面積のグラフェンウエハ151を製造することができる。
【0040】
(変形例)
本実施形態では、第1の基板101としてSiC基板を用いてグラフェン層110を形成する実施形態を述べたが、グラフェン層を形成する第1の基板は、SiC基板に限定されず、グラフェン層を形成することができる別の材料の基板、例えば、SiC薄膜が形成されたSi基板を第1の基板101として用いることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態で述べた大面積のグラフェンウエハの製造方法が、連続した大面積のグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合する実施形態であるのに対して、本実施形態では、所定のパターン成形されたグラフェン層を接合する実施形態である点が、第1の実施形態と異なる。以下、図8乃至図10を参照して本実施形態を説明する。
【0042】
図8(a)に示すように、第1の基板としてSiC基板101の表面に形成したグラフェン層110(図示せず)を、フォトリソグラフィ工程及びO2プラズマを使ったドライエッチング工程によって、グラフェン層110をパターニングして、所定のグラフェンパターン210を形成する。図8(a)には、一例として、形成されたグラフェンパターン210がラインパターンを示しているが、任意のパターン成形が可能である。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、第1の実施形態で述べた工程と同様の工程で、例えば、グラフェン層111a、グラフェン層111b及びグラフェン層111cから構成されたグラフェン層110をパターン成形したグラフェンパターン210a、グラフェンパターン210b及びグラフェンパターン210cから構成されるグラフェンパターン210の最表面のグラフェンパターン210aの表面に、接着用金属層220、支持体接着層222、及び、支持体224を順次設け、支持体324を引き上げてグラフェンパターン層210aをSiC基板101側から剥離する。
【0044】
また、SiC基板(第1の基板)101の表面に形成したグラフェン層110をパターン成形して、グラフェンパターン210を形成しその最表面のグラフェンパターン210aを剥離する工程を説明したが、グラフェン層110をパターン成形する工程を、接着用金属層220、支持体接着層222、及び、支持体224を形成した後に、これ等接着用金属層220乃至支持体224とグラフェン層110とを一括してパターン成形してグラフェンパターン210を形成してもよい。
【0045】
グラフェン層110の表面に接着用金属層220を設けることを基本とし、その他、グラフェン層110のパターン成形及び支持体接着層220と支持体224の設置については、種々の変形が可能である。
【0046】
つぎに、図9に示すように、第1の実施形態の工程と同様に、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に、グラフェンパターン210aを直接密着させ分子間力接合により接合し固定する。
【0047】
次に、第1の実施形態で図5を参照して説明した剥離工程と同様に、グラフェンパターン210の接着用金属層220側から接着用金属層220を除去する。接着用金属層220を選択的にエッチング除去することにより、図10(a)及び図10(b)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合した、グラフェンパターン210aを有するグラフェンウエハ200を得ることができる。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、パターン成形したグラフェンパターン210aの表面に金属接着層220、支持体接着層222及び支持体224を順次設け、グラフェンパターン210aの第1の基板101基板側の面からグラフェンパターン210aを剥離し、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面にグラフェンパターン210aを接合する工程を備えるので、任意のパターンのグラフェンパターンを容易に、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に形成することができる。
【0049】
例えば、グラフェンパターンの配線パターン成形を行い、配線電極パターンとして使用すれば、グラフェンの特性である銅の100倍の電流密度を許容できるので、大電流密度を有する高密度グラフェン配線等を実現することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した大面積のグラフェンウエハを使うことによって製造することができるグラフェン素子の製造方法について、図11乃至図13を参照して説明する。
【0051】
本実施形態では、大面積のグラフェンウエハを用いたグラフェン素子としてグラフェン薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の製造方法について説明する。
【0052】
図11(a)は、大面積のグラフェン層310を形成したグラフェンウエハ300を示している。ここで用いるグラフェンウエハ300は、n+−Si基板301の表面には、接合層としてのSiO2膜302、そして、このSiO2膜302の表面に分子間力接合したグラフェン層310が形成されている。接合層であるSiO2膜302は、例えば、熱酸化膜を用いることができる。
【0053】
次いで、図11(b)及び図11(c)に示すように、フォトリソグラフィ工程及びO2プラズマを使ったドライエッチング工程によって、グラフェン層310をパターン成形して、所定のグラフェンパターン310aを形成する。なお、図11(c)は平面図であり、図11(b)の断面図である。
【0054】
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、周知技術の素子作製工程であるフォトリソ工程、金属薄膜形成工程、及び、金属薄膜のリフトオフ工程によって、ソース電極314及びドレイン電極316を形成する。なお、図12(b)は、図12(a)の断面図である。
【0055】
そして、図12(c)に示すように、n+−Si基板301の裏面側にゲート電極320を形成することによりボトムゲート型のグラフェンTFT400を作製することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ボトムゲート型のグラフェンTFT400を説明したが、図13に示すように、パターン成形したグラフェン層310aの表面にゲート絶縁膜352を形成し、ソース電極362、ゲート電極364、ドレイン電極366を形成し、トップゲート型のグラフェンTFT410を作製することもできる。なお、この場合、TFT構造からn+−Si基板301を用いる必要はなく、通常のキャリア濃度を有する汎用のSi基板を用いることができる。
【0057】
本実施形態によれば、大面積のグラフェンウエハを使って、標準的なSi−LSI製造技術(フォトリソ、エッチング、絶縁膜形成、電極・配線形成プロセス等)を使ってグラフェン層を所定のサイズ・形状に加工成形し、電極を形成することができるため、デバイス設計にしたがってグラフェン素子を容易に作製することができる。さらに、本発明の大面積のグラフェンウエハを使ってグラフェン素子の集積化を行うこともできる。
【0058】
以上説明したように、本発明のグラフェンウエハの製造方法並びにグラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法によれば、次世代エレクトロニクス材料として注目されているカーボンナノチューブ(CNT)の電子特性等をほぼすべて有することができる。
【0059】
また、マスレスディラックフェルミオンとして、高移動速度等の従来にない特徴を有する全く新しい電子材料を形成することが可能となり、従来のSi集積素子で支えられてきたエレクトロニクスをグラフェン集積素子ですべて置き換えることも可能となる。
【符号の説明】
【0060】
100 エピタキシャルグラフェン基板
101 SiC基板(第1の基板)
110、111a、111b、111c エピタキシャルグラフェン層(グラフェン層)
120、220 接着用金属層(金属層)
122、222 支持体接着層
124、224 支持体
126 真空吸着
130 別の基板(第2の基板)
132 接合層
140 積層グラフェン層
150、151、200、300 グラフェンウエハ
210、210a、210b、210c、310a グラフェンパターン
301 n+−Si基板(別の基板、第2の基板)
302 SiO2膜(接合層)
310 グラフェン層
352 ゲート絶縁膜
314、362 ソース電極
316、366 ドレイン電極
320、364 ゲート電極
400、410 グラフェンTFT(グラフェン素子)
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グラフェン(Graphene)の転写方法については、スコッチテープ法等により、高配向性のグラファイト(HOPG:Highly Oriented Pyrolytic Graphite)から機械的にSiO2/Si基板上ヘグラファイト層1層からなるグラフェンを転写したことが英国マンチェスター大学のA.Gaim等により2004年に報告されている。
【0003】
グラフェンは、マスレスフェルミンオン系として特異なバンド構造を持つ新たな材料であり、筒状構造のカーボンナノチューブが持つバリスティック伝導やその他の興味深い電気特性は、ほぼすべて備えている。また、グラフェンは、カーボンナノチューブ(CNT:Carbon Nano-Tube)とは異なり、シート状構造であることから、従来のLSIの微細加工技術が適用でき、集積化が容易であるという特徴を持つ新たな材料である。
【0004】
しかしながら、現実にはグラフェンは、発見以来これまで、HOPGからの剥離を用いる方法でしか良質のグラフェンが得られなかったために、大面積のグラフェンは得られていない。したがって、このグラフェンに集積デバイスプロセスを適用することが困難であった。
【0005】
また、SiC基板を高温水素エッチィング処理と真空での高温加熱処理することとによってシート状のエピタキシャルグラフェン(グラフェンシート)層の形成方法及び転写方法については、例えば、特許文献1に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−62247号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、SiC基板上のエピタキシャルグラフェン層は、原子レベルで平坦であり極めて安定な化学結合を持つ結晶表面を有していることから、従来の種々の接着剤をはじめとする化学的接着法を用いてエピタキシャルグラフェン層をSiC基板から剥離しようとしても、SiC基板全表面から一括に剥離することができなかった。したがって、さらにこのエピタキシャルグラフェン層を一括に他の任意の基板へ転写することも困難であった。
【0008】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、エピタキシャルグラフェン層を他の任意の基板上に再現性よく転写させるグラフェン層の剥離工程、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の第1のグラフェン層の剥離方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の第1のグラフェンウエハの製造方法は、請求項1に記載の剥離方法と、前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程とを備えることを特徴とする。
【0011】
さらに、前記目的を達成するために、本発明の第2のグラフェン層の剥離方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層がパターン成形される工程と、前記成形されたグラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、さらに、前記目的を達成するために、本発明の第2のグラフェンウエハの製造方法は、請求項7に記載の剥離方法と、前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程とを備えることを特徴とする。
【0013】
そして、前記目的を達成するために、本発明のグラフェンウエハは、基板の表面に単層又は2層以上の剥離されたグラフェン層を備えたことを特徴とする。
【0014】
さらにまた、前記目的を達成するために、本発明のグラフェン素子の製造方法は、第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と前記グラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成した接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、前記金属層が除去される工程と、前記グラフェン層がパターン成形される工程と、前記成形されたグラフェン層の表面に電極が形成される工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エピタキシャルグラフェン層を他の任意の基板上に再現性よく転写させるグラフェン層の剥離方法、グラフェンウエハの製造方法、グラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態のエピタキシャルグラフェン基板を説明するための図であり、(a)は、エピタキシャルグラフェン層の結晶構造を示す模式図であり、(b)は、エピタキシャルグラフェン基板の構成を示す断面図である。
【図2】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その1)を説明するための断面図である。
【図3】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その2)を説明するための断面図であり、(a)は、剥離工程を説明するための断面図であり、(b)は、その他の剥離工程を説明するための断面図である。
【図4】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その3)を説明するための断面図であり、(a)は、接合工程を説明するための断面図であり、(b)は、その他の接合工程を説明するための断面図である。
【図5】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その4)を説明するための断面図であり、(a)は、接着用金属層の除去工程を説明するための断面図であり、(b)グラフェンウエハを得る工程を説明するための断面図である。
【図6】第1の実施形態のグラフェンウエハの製造工程を説明するためのフローチャートである。
【図7】第1の実施形態の積層グラフェン層を有するグラフェンウエハの製造工程を説明するための断面図であり、(a)は、接合工程を説明するための断面図であり、(b)は、積層グラフェン層を有するグラフェンウエハの構造を示す断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その1)を説明するための図であり、(a)は、グラフェンパターンを説明するための平面図であり、(b)は、剥離工程を説明するための断面図である。
【図9】第2の実施形態のグラフェンウエハの製造工程(その2:接合工程)を説明するための断面図である。
【図10】第2の実施形態のグラフェンウエハの構造を説明するための図であり、(a)は、平面図であり、(b)は、断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態のグラフェン素子(ボトムゲート型のグラフェンTFT)の製造方法の製造工程(その1)を説明するための図であり、(a)は、グラフェンウエハの構造を説明するための断面図であり、(b)は、グラフェンパターンを形成する工程を説明するための平面図であり、(c)は、(b)の断面図である。
【図12】第3の実施形態のグラフェン素子(ボトムゲート型のグラフェンTFT)の製造方法の製造工程(その2)を説明するための図であり、(a)は、電極形成工程(ソース・ドレイン電極)を示す平面図であり、(b)は、(a)の断面図であり、(c)は、電極形成工程(ゲート電極)の断面図である。
【図13】第3の実施形態のグラフェン素子(トップゲート型のグラフェンTFT)の構造を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態について、図1乃至図13を参照して説明する。各図は、本発明の特徴が明確になるように表記しており、寸法関係等は必ずしも実際のものに忠実に描いていないため、本発明を何ら制約するものではない。なお、各図で同じ構成要素には同一の符号を付している。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態を図1乃至図7を参照して説明する。
まず、図1(a)及び図1(b)を参照して、エピタキシャルグラフェン基板100を構成するSiC基板101とエピタキシャルグラフェン層110について説明する。
【0019】
エピタキシャルグラフェン層110の構成を、図1(a)の模式図を参照して説明する。このエピタキシャルグラフェン層110は、炭素原子C(図1(a)に黒丸、点柄丸及び白丸で示す)が蜂の巣状に6角形のネットワークを組んで2次元のシートを形成するグラファイト(黒鉛)結晶の単層又は複数層を備えて構成される。図1(a)では、例えば、黒丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111a、点柄丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111b及び白丸炭素原子Cから構成されるエピタキシャルグラフェン層111cの3層構成のエピタキシャルグラフェン層110を示している。本実施形態では、SiC基板101の表面を高温水素エッチング処理と真空での高温加熱処理を行うことによってエピタキシャルグラフェン層110を形成した。
【0020】
図1(b)は、エピタキシャルグラフェン層110を形成したエピタキシャルグラフェン基板100の構成の断面図を示している。このエピタキシャルグラフェン基板100は、第1の基板としてSiC基板101を用いて、このSiC基板101の表面を高温水素エッチング処理と真空での高温加熱処理とを行うことによって形成したエピタキシャルグラフェン層110を備えて構成されている。本実施形態では、例えば、SiC基板101の表面に順次エピタキシャルグラフェン層111c、エピタキシャルグラフェン層111b、及びエピタキシャルグラフェン層111aが3層構成で形成されている。
【0021】
次いで、図2乃至図3は、SiC基板101上に形成したエピタキシャルグラフェン層110から、1層のエピタキシャルグラフェン層(以後、「グラフェン層」と称する)111aを剥離させる方法を説明するための工程断面図である。
【0022】
図2に示すように、グラフェン層110の最上層であるグラフェン層111aの表面に接着用金属層120、支持体接着層122、及び支持体124を順次形成した構成とすることが本実施形態の要件の一つである。
【0023】
前記したように、グラフェン層110は、上層との間で極めて化学結合を持ちにくい安定な表面を有し、原子レベルで平坦であることから、従来の種々の接着剤をはじめとする化学的接着法で剥離しようとしても均一に大面積での剥離は困難である。そのため、本実施形態の特徴は、グラフェン層111aの表面に、このグラフェン層111aの表面から内部に拡散しやすい接着用金属層120を設けたことにある。
【0024】
グラフェン層111aの表面から内部に拡散しやすい金属元素から成る接着用金属層120としては、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される金属を含む金属層が好適である。そして、この接着用金属層120は、真空蒸着法やスパッタ法等によって形成することができる。さらに、接着用金属層120は、少なくとも剥離するグラフェン層111aの表面全面を被覆することが望ましい。これは、3層のグラフェン層から、大面積の連続したグラフェン層111aのみを剥離するためである。したがって、少なくともグラフェン表面全面を被覆するに十分な膜厚の金属層を接着用金属層120として形成する必要がある。
【0025】
また、接着用金属層120上には、接着用金属層120の表面と高い密着性を確保する支持体接着層122を形成する。この支持体接着層122と接着用金属層120との接着力は、少なくともグラフェン層110を構成する3層構成のグラフェン層111aとグラフェン層111bとの間、及び、グラフェン層111bとグラフェン層111cとの間の分子間力よりも大きいことが望ましい。また、この支持体接着層122は、接着用金属層120の表面全面を被覆することが望ましい。支持体接着層122は、エポキシ系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ウレタン樹脂系接着剤、フェノール樹脂系接着剤、ポリイミド系接着剤等の接着剤、熱硬化接着剤、UV硬化接着剤、有機塗布材料、半田材料等の接着性を有する材料が好適である。
【0026】
接着用金属層120の表面には凹凸があり、この凹凸に接着性材料が侵入し、いわゆるアンカー効果による強固な接着が得られる。支持体接着層122の形成方法としては、例えば、ドクターブレード法、スピンコート法、スプレイコート法、ディスペンス法等、使用する接着性の材料の特性に適合した手段を適宜適用することができる。
【0027】
次いで、作業者は、支持体接着層122の表面に、支持体124を接着する。この支持体124は、剥離したグラフェン層111aを支持する機能があり、支持体接着層122との接着強度を少なくともグラフェン層110間の分子間力強度よりも大きくすることができる接着強度を備えていればよい。支持体124としては、ガラス基板、セラミックス基板、石英基板、Si等の半導体基板、等が好適である。
【0028】
後記するように、剥離したグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)の表面に接合した後に、グラフェン層111aからその上層の接着用金属層120、支持体接着層122、及び、支持体124を除去するために、接着用金属層120を酸やアルカリの薬液によってエッチング除去する工程を経る場合に、支持体124は、接着用金属層120をエッチング除去するエッチング液に対して耐食性を備えている材料を使用することが望ましい。接着用金属層120をエッチング除去するエッチング液に対して耐食性を備えている材料を使用することにより、支持体124を再利用することができる。
【0029】
そして、図3(a)に示すように、支持体124の表面側から少なくともグラフェン層110間の分子間力よりも大きい力(F)で引き上げる。これにより、グラフェン層111aと111bとの間で剥離する。引き上げる力はグラフェン層110間の分子間力よりも大きい力でよいため、大面積のグラフェン層を一括してSiC基板から剥離する場合であっても、本発明の方法によれば容易に剥離することができる。例えば、図3(b)に示すように、支持体124表面側から真空吸着126を行って引き上げることにより、剥離することができる。
【0030】
次いで、作業者は、グラフェン層111aの剥離された剥離面側の表面を、図4(a)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面に直接密着させ接合し固定する。このとき、密着する別の基板(第2の基板)130の表面とグラフェン層111aの剥離面側の表面との間は、分子間力によって接合される。また、この接合工程において、図4(b)に示すように、別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層132の表面に直接密着させ分子間力によって接合してもよい。
【0031】
この接合の場合、接合面同士をナノメータオーダに近接させ、分子間力によって接合面同士を接合し固定するために、グラフェン層111aの表面の平坦性と、別の基板(第2の基板)の表面あるいは別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層の表面の平坦性とが、少なくともナノメータオーダの平坦性を備えていることが望ましい。
【0032】
ここで、ナノメータオーダの平坦性とは、分子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)で測定した表面粗さ(山−谷の最大高低差:Rrv)が1桁の数値のナノメートルであること、すなわち、Rrvが10nmよりも小さい値であることを意味する。より好ましくは、別の基板(第2の基板)の表面のRrv、すなわち、別の基板(第2の基板)の表面に形成する接合層の表面のRrvは、3nm以下であることが望ましい。
【0033】
別の基板(第2の基板)130としては、例えば、Si基板、AlN基板等の半導体基板や、セラミックス基板、ガラス基板、石英基板、プラスチック基板、金属基板、等が好適である。また、別の基板(第2の基板)の表面に形成する接合層132は、例えば、SiO2、SiN、SiON、PSG、BSG、SOG等の薄膜が好適である。そして、この接合層132は、プラズマCVD法、CVD法、スパッタ法等により形成することができる。
【0034】
前記のように、グラフェン層111aを、別の基板(第2の基板)130の表面あるいは別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合した後に、図5(a)及び図5(b)に示すように、グラフェン層111aの接着用金属層120側から接着用金属層120を除去する。例えば、酸又はアルカリのエッチング液を使用して、接着用金属層120を化学的にエッチングすることができる。接着用金属層120を化学的にエッチング除去する場合には、使用する別の基板(第2の基板)130及び接合層132の材料により、接着用金属層120はエッチングされるが、別の基板(第2の基板)130及び接合層132は、エッチングされないエッチング液を使用する。
【0035】
以上のようにすることで、別の基板(第2の基板)130の表面あるいは別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合したグラフェン層111aを有するグラフェンウエハ150を得ることができる。
【0036】
なお、図6に、本実施形態を説明するための主な製造工程のフローチャートを示す。製造工程としては、第1の基板の表面にグラフェン層を形成する(ステップS1)、グラフェン層の表面に接着用金属層、支持体接着層及び支持体を形成する(ステップS2)、接着用金属層を介してグラフェン層を第1の基板から剥離する(ステップS3)、別の基板(第2の基板)の表面又は別の基板(第2の基板)の表面に形成した接合層の表面にグラフェン層を接合する(ステップS4)、そして、接着用金属層を除去し、グラフェンウエハを得る(ステップS5)、である。
【0037】
さらに、図7(a)乃至図7(b)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合したグラフェン層111aの表面に、さらに、グラフェン層111bを接合することもできる。グラフェン層111aの表面へのグラフェン層111bの接合は、前記グラフェン層111aを、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合する工程を繰り返すことによって行うことができる。
【0038】
この工程を、順次繰り返すことにより、図7(b)に示すように、例えば、所望の層数のグラフェン層111a、グラフェン層111b及びグラフェン層111cを所望の構成で積層した積層グラフェン層140を、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に、形成したグラフェンウエハ151を得ることも可能である。
【0039】
本発明の第1の実施形態では、第1の基板(SiC基板)101の表面に形成したグラフェン層111aの表面に、グラフェン層111aの内部に拡散しやすい金属材料からなる接着用金属層120をグラフェン層111aの表面全面に設け、さらに、接着用金属層120と接着性に優れた支持体接着層122及び支持体124を設けて、支持体124を引き上げることによって、第1の基板(SiC基板)101からグラフェン層111aを剥離する工程を備え、さらに、剥離したグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に分子間力接合する工程、及び、接着用金属層120を選択的に化学的エッチングによって除去する工程を設けたので、大面積のグラフェン層111aを所定の別の基板(第2の基板)の表面に接合した大面積グラフェンウエハ150を製造することができる。さらに、複数層の積層グラフェン層140を備えた大面積のグラフェンウエハ151を製造することができる。
【0040】
(変形例)
本実施形態では、第1の基板101としてSiC基板を用いてグラフェン層110を形成する実施形態を述べたが、グラフェン層を形成する第1の基板は、SiC基板に限定されず、グラフェン層を形成することができる別の材料の基板、例えば、SiC薄膜が形成されたSi基板を第1の基板101として用いることができる。
【0041】
(第2の実施形態)
本発明の第1の実施形態で述べた大面積のグラフェンウエハの製造方法が、連続した大面積のグラフェン層111aを別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合する実施形態であるのに対して、本実施形態では、所定のパターン成形されたグラフェン層を接合する実施形態である点が、第1の実施形態と異なる。以下、図8乃至図10を参照して本実施形態を説明する。
【0042】
図8(a)に示すように、第1の基板としてSiC基板101の表面に形成したグラフェン層110(図示せず)を、フォトリソグラフィ工程及びO2プラズマを使ったドライエッチング工程によって、グラフェン層110をパターニングして、所定のグラフェンパターン210を形成する。図8(a)には、一例として、形成されたグラフェンパターン210がラインパターンを示しているが、任意のパターン成形が可能である。
【0043】
次に、図8(b)に示すように、第1の実施形態で述べた工程と同様の工程で、例えば、グラフェン層111a、グラフェン層111b及びグラフェン層111cから構成されたグラフェン層110をパターン成形したグラフェンパターン210a、グラフェンパターン210b及びグラフェンパターン210cから構成されるグラフェンパターン210の最表面のグラフェンパターン210aの表面に、接着用金属層220、支持体接着層222、及び、支持体224を順次設け、支持体324を引き上げてグラフェンパターン層210aをSiC基板101側から剥離する。
【0044】
また、SiC基板(第1の基板)101の表面に形成したグラフェン層110をパターン成形して、グラフェンパターン210を形成しその最表面のグラフェンパターン210aを剥離する工程を説明したが、グラフェン層110をパターン成形する工程を、接着用金属層220、支持体接着層222、及び、支持体224を形成した後に、これ等接着用金属層220乃至支持体224とグラフェン層110とを一括してパターン成形してグラフェンパターン210を形成してもよい。
【0045】
グラフェン層110の表面に接着用金属層220を設けることを基本とし、その他、グラフェン層110のパターン成形及び支持体接着層220と支持体224の設置については、種々の変形が可能である。
【0046】
つぎに、図9に示すように、第1の実施形態の工程と同様に、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に、グラフェンパターン210aを直接密着させ分子間力接合により接合し固定する。
【0047】
次に、第1の実施形態で図5を参照して説明した剥離工程と同様に、グラフェンパターン210の接着用金属層220側から接着用金属層220を除去する。接着用金属層220を選択的にエッチング除去することにより、図10(a)及び図10(b)に示すように、別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に接合した、グラフェンパターン210aを有するグラフェンウエハ200を得ることができる。
【0048】
本発明の第2の実施形態によれば、パターン成形したグラフェンパターン210aの表面に金属接着層220、支持体接着層222及び支持体224を順次設け、グラフェンパターン210aの第1の基板101基板側の面からグラフェンパターン210aを剥離し、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面にグラフェンパターン210aを接合する工程を備えるので、任意のパターンのグラフェンパターンを容易に、別の基板(第2の基板)130の表面又は別の基板(第2の基板)130の表面に形成した接合層132の表面に形成することができる。
【0049】
例えば、グラフェンパターンの配線パターン成形を行い、配線電極パターンとして使用すれば、グラフェンの特性である銅の100倍の電流密度を許容できるので、大電流密度を有する高密度グラフェン配線等を実現することができる。
【0050】
(第3の実施形態)
第3の実施形態では、第1の実施形態で説明した大面積のグラフェンウエハを使うことによって製造することができるグラフェン素子の製造方法について、図11乃至図13を参照して説明する。
【0051】
本実施形態では、大面積のグラフェンウエハを用いたグラフェン素子としてグラフェン薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)の製造方法について説明する。
【0052】
図11(a)は、大面積のグラフェン層310を形成したグラフェンウエハ300を示している。ここで用いるグラフェンウエハ300は、n+−Si基板301の表面には、接合層としてのSiO2膜302、そして、このSiO2膜302の表面に分子間力接合したグラフェン層310が形成されている。接合層であるSiO2膜302は、例えば、熱酸化膜を用いることができる。
【0053】
次いで、図11(b)及び図11(c)に示すように、フォトリソグラフィ工程及びO2プラズマを使ったドライエッチング工程によって、グラフェン層310をパターン成形して、所定のグラフェンパターン310aを形成する。なお、図11(c)は平面図であり、図11(b)の断面図である。
【0054】
次に、図12(a)及び図12(b)に示すように、周知技術の素子作製工程であるフォトリソ工程、金属薄膜形成工程、及び、金属薄膜のリフトオフ工程によって、ソース電極314及びドレイン電極316を形成する。なお、図12(b)は、図12(a)の断面図である。
【0055】
そして、図12(c)に示すように、n+−Si基板301の裏面側にゲート電極320を形成することによりボトムゲート型のグラフェンTFT400を作製することができる。
【0056】
また、本実施形態では、ボトムゲート型のグラフェンTFT400を説明したが、図13に示すように、パターン成形したグラフェン層310aの表面にゲート絶縁膜352を形成し、ソース電極362、ゲート電極364、ドレイン電極366を形成し、トップゲート型のグラフェンTFT410を作製することもできる。なお、この場合、TFT構造からn+−Si基板301を用いる必要はなく、通常のキャリア濃度を有する汎用のSi基板を用いることができる。
【0057】
本実施形態によれば、大面積のグラフェンウエハを使って、標準的なSi−LSI製造技術(フォトリソ、エッチング、絶縁膜形成、電極・配線形成プロセス等)を使ってグラフェン層を所定のサイズ・形状に加工成形し、電極を形成することができるため、デバイス設計にしたがってグラフェン素子を容易に作製することができる。さらに、本発明の大面積のグラフェンウエハを使ってグラフェン素子の集積化を行うこともできる。
【0058】
以上説明したように、本発明のグラフェンウエハの製造方法並びにグラフェンウエハ、及び、グラフェン素子の製造方法によれば、次世代エレクトロニクス材料として注目されているカーボンナノチューブ(CNT)の電子特性等をほぼすべて有することができる。
【0059】
また、マスレスディラックフェルミオンとして、高移動速度等の従来にない特徴を有する全く新しい電子材料を形成することが可能となり、従来のSi集積素子で支えられてきたエレクトロニクスをグラフェン集積素子ですべて置き換えることも可能となる。
【符号の説明】
【0060】
100 エピタキシャルグラフェン基板
101 SiC基板(第1の基板)
110、111a、111b、111c エピタキシャルグラフェン層(グラフェン層)
120、220 接着用金属層(金属層)
122、222 支持体接着層
124、224 支持体
126 真空吸着
130 別の基板(第2の基板)
132 接合層
140 積層グラフェン層
150、151、200、300 グラフェンウエハ
210、210a、210b、210c、310a グラフェンパターン
301 n+−Si基板(別の基板、第2の基板)
302 SiO2膜(接合層)
310 グラフェン層
352 ゲート絶縁膜
314、362 ソース電極
316、366 ドレイン電極
320、364 ゲート電極
400、410 グラフェンTFT(グラフェン素子)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン層の剥離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離方法と、
前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層を除去する工程と
を備えることを特徴とするグラフェンウエハの製造方法。
【請求項3】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項5】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項6】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項7】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層がパターン成形される工程と、
前記成形されたグラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン層の剥離方法。
【請求項8】
請求項7に記載の剥離方法と、
前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層が除去される工程と
を備えることを特徴とするグラフェンウエハの製造方法。
【請求項9】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項10】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項11】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項12】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項13】
基板の表面に単層又は2層以上の剥離されたグラフェン層を備えた
ことを特徴とするグラフェンウエハ。
【請求項14】
前記グラフェン層は、所定の形状に成形されている
ことを特徴とする請求項13に記載のグラフェンウエハ。
【請求項15】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
前記グラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層が除去される工程と、
前記グラフェン層がパターン成形される工程と、
前記成形されたグラフェン層の表面に電極が形成される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン素子の製造方法。
【請求項16】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項18】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項19】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項1】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン層の剥離方法。
【請求項2】
請求項1に記載の剥離方法と、
前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層を除去する工程と
を備えることを特徴とするグラフェンウエハの製造方法。
【請求項3】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項4】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項5】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項6】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項2に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項7】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層がパターン成形される工程と、
前記成形されたグラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン層の剥離方法。
【請求項8】
請求項7に記載の剥離方法と、
前記剥離されたグラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層が除去される工程と
を備えることを特徴とするグラフェンウエハの製造方法。
【請求項9】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項10】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項11】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項12】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項8に記載のグラフェンウエハの製造方法。
【請求項13】
基板の表面に単層又は2層以上の剥離されたグラフェン層を備えた
ことを特徴とするグラフェンウエハ。
【請求項14】
前記グラフェン層は、所定の形状に成形されている
ことを特徴とする請求項13に記載のグラフェンウエハ。
【請求項15】
第1の基板の表面にグラフェン層が形成される工程と、
前記グラフェン層の表面に金属層が形成される工程と、
前記第1の基板と前記金属層との間で張力が加えられ、前記グラフェン層が前記第1の基板から剥離される工程と
前記グラフェン層が第2の基板の表面又は第2の基板の表面に形成された接合層の表面に分子間力によって接合される工程と、
前記金属層が除去される工程と、
前記グラフェン層がパターン成形される工程と、
前記成形されたグラフェン層の表面に電極が形成される工程と
を備えることを特徴とするグラフェン素子の製造方法。
【請求項16】
前記金属層は、表面に支持体接着層と支持体とが順次設けられ、
前記支持体と前記第1の基板との間に前記張力が加えられる
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項17】
前記第1の基板は、SiC基板又はSi基板である
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項18】
前記金属層は、Ti、Ni、Al、Cu、Cr、In、及び、Pdから選択される一つ又は複数の元素が含まれる金属層である
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【請求項19】
前記接合層は、Siが含まれる酸化物層、窒化物層、及び、酸窒化物層から選択される一つ又は複数層の材料層から構成される
ことを特徴とする請求項15に記載のグラフェン素子の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−6265(P2011−6265A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148308(P2009−148308)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【出願人】(500002571)株式会社沖デジタルイメージング (186)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]