説明

グラフトパターン形成方法、感光性組成物、硬化物パターン形成方法、及び硬化物パターン材料

【課題】グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が鮮明なパターンを形成することのできるグラフトパターン形成方法を提供すること。
【解決手段】支持体上に、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、該硬化性層の未硬化部を現像により除去し、前記硬化性層の残存部と前記支持体の露出部によるパターンを形成する工程と、該パターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、前記硬化性層の残存部上にグラフトポリマーを生成させて、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成する工程と、を有するグラフトパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物を用いたパターン形成方法に関し、より詳細には、種々の用途に応用し得るグラフトパターン形成方法、硬化物パターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の分野において、微細なパターンを形成する技術が注目されている。
例えば、微細な親/疎水性パターン形成方法が知れられており、このような親/疎水性パターンの形成方法としては、例えば、表面に凸状パターンを有するスタンプを成形し、該凸部に疎水性分子を付着させた後、該疎水性分子を基板に転写し、また、転写されていない部分に親水性分子を付着させることで、親/疎水性領域からなるパターンを形成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。このようにして作製された親/疎水性パターンは、各種機能デバイス、DNAチップなどに有用である。しかしながら、この技術によれば、微細で緻密なパターンを形成することはできるが、特殊な材料を用いる必要があり、かつ、大面積の画像形成などへの応用が困難であった。
【0003】
そこで、大面積の画像形成への応用に関する技術としては、疎水的な基板の全面に親水性のグラフト重合体からなる親水性層を形成させた後、レーザー露光により画像様に基板表面から親水性層をアブレーションにより除去することで、親水性層と疎水的な基板表面とからなるパターン(画像部及び非画像部)が形成される方法が知られている(例えば、特許文献2参照。)。この方法によれば、パターンの転写の工程を必要としないため、作製された親/疎水性パターンにインキと水を付着させて、大面積の平版印刷版材料として使用することができる。しかしながら、この親/疎水性パターン形成方法は、親水性層を除去するのに高エネルギーを要するため高価な高出力レーザーが必要であり、更に、形成された画像の画質や解像度も満足のいくものではなかった。
【0004】
この課題に対し、より低エネルギーでパターンを形成する方法としては、基板の全面に、酸、熱、又は光により極性変換可能なグラフトポリマーを形成させた後、画像様に酸、熱、又は光を付与し極性変換させ、親水性グラフトポリマーと疎水性グラフトポリマーとからなる親水性部と親油性(疎水性部)とからなるパターンを形成し、該パターンにより画像を形成する技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、この方法では、極性変換可能なグラフトポリマーを形成するための特殊なモノマーが必要となり、作業工程に手間がかかるという問題点があった。
【0005】
また、基板上に、1.アミノ基含有感光性組成物を塗布し、画像様に露光、現像することにより、未露光部を除去し、アミノ基を画像様に基板に固定化した後に、2.アミノ基をアンカーとして光開始剤を化学結合させ、光開始剤を画像様に固定化し、更に、3.画像様に固定化された光開始剤に、重合性基を有する化合物を接触させ、光を照射することにより、グラフト重合させることで、グラフトポリマー生成領域と非生成領域とからなる親/疎水性パターンを形成する技術が知られている(例えば、非特許文献1参照。)。しかしながら、この方法では、光開始剤を画像様に固定化する工程が複数あり、煩雑であるという問題を有していた。加えて、アンカーであるアミノ基が膜内部に潜り込んでしまう傾向があり、固定化できる光開始剤の絶対量が減少し、グラフトポリマーの生成量も少なくなるため、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が不鮮明となる問題を有していた。
以上のことから、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が鮮明なパターンをより低エネルギーで形成する技術が望まれているのが、現状である。
【特許文献1】特開2002−283530号公報
【特許文献2】特開平11−119413号公報
【特許文献3】特開平2001−117223号公報
【非特許文献1】松田 武久著“Macromolecules”、1994年、27巻、7809頁〜7814頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、上記問題点を考慮してなされた本発明の第1の目的は、高エネルギーを必要とすることなく、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が鮮明なパターンを形成することのできるグラフトパターン形成方法を提供することである。
また、本発明の第2の目的は、前記グラフトパターン形成方法に好適であり、可視光及び紫外光のそれぞれによって重合反応が生起する感光性組成物を提供することである。
更に、本発明の3の目的は、前記感光性組成物を用い、膜強度の高い硬化物パターンを形成することのできる硬化物パターン形成方法、及び該方法により得られた硬化物パターン材料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討した結果、重合開始剤を特定の組合せで2種含む感光性組成物を用いることで、上記目的が達成されることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明のグラフトパターン形成方法は、支持体上に、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、該硬化性層の未硬化部を現像により除去し、前記硬化性層の残存部と前記支持体の露出部によるパターンを形成する工程と、該パターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、前記硬化性層の残存部上にグラフトポリマーを生成させて、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明のグラフトパターン形成方法において、(a)増感剤が、電子移動型増感剤、又は三重項増感剤であることが好ましく、また、(b1)重合開始剤、及び(b2)重合開始剤のいずれか一方が、エネルギー移動型開始剤であり、他方が電子移動型開始剤であることが好ましい。
また、本発明のグラフトパターン形成方法において、画像様に可視光を照射する手段として、波長400〜900nmを照射するレーザーを用いることが好ましい態様である。
【0010】
更に、本発明のグラフトパターン形成方法において、グラフトポリマー前駆体が親水性基を有することが好ましい態様である。
ここで、支持体として表面が疎水性のものを用い、グラフトポリマー前駆体として親水性基を有するものを用いることで、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを親/疎水性パターンとすることができる。
【0011】
本発明の感光性組成物は、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有することを特徴としている。
本発明の感光性組成物において、(a)増感剤が、電子移動型増感剤、又は三重項増感剤であること、また、(b1)重合開始剤、及び(b2)重合開始剤のいずれか一方が、エネルギー移動型開始剤であり、他方が電子移動型開始剤であることが好ましい態様である。
【0012】
本発明の硬化物パターン形成方法は、支持体上に、本発明の感光性組成物からなる硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、該硬化性層の未硬化部を現像により除去する工程と、前記硬化性層の硬化部に対し紫外光を照射して、硬化物の存在領域と非存在領域とからなる硬化物パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする。
なお、画像様に可視光を照射する手段として、波長400〜900nmを照射するレーザーを用いることが好ましい。
【0013】
本発明の硬化物パターン材料は、本発明の硬化物パターン形成方法により得られたものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高エネルギーを必要とすることなく、グラフトポリマー生成領域と非生成領域との境界が鮮明なパターンを形成することのできるグラフトパターン形成方法を提供することができる。
また、本発明によれば、前記グラフトパターン形成方法に好適であり、可視光及び紫外光のそれぞれによって重合反応が生起する感光性組成物を提供することができる。
更に、前記感光性組成物を用い、膜強度の高い硬化物パターンを形成することのできる硬化物パターン形成方法、及び該方法により得られた硬化物パターン材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
≪グラフトパターン形成方法、硬化物パターン形成方法≫
本発明のグラフトパターン形成方法は、(1)支持体上に、(a)可視域に感度を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、(2)該硬化性層の未硬化部を現像により除去し、前記硬化性層の残存部と前記支持体の露出部によるパターンを形成する工程と、(3)該パターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、前記硬化性層の残存部上にグラフトポリマーを生成させて、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0016】
本発明の硬化物パターンの形成方法は、(i)支持体上に、前記(a)〜(d)成分を含有する感光性組成物(本発明の感光性組成物)からなる硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、(ii)該硬化性層の未硬化部を現像により除去する工程と、(iii)前記硬化性層の硬化部に対し紫外光を照射して、硬化物の存在領域と非存在領域とからなる硬化物パターンを形成する工程と、を有することを特徴とする。
【0017】
以下、本発明のグラフトパターン形成方法における(1)〜(3)の工程、及び、本発明の硬化物パターンの形成方法における(i)〜(iii)の工程について説明する。
なお、グラフトパターン形成方法における(1)及び(2)工程と、本発明の硬化物パターンの形成方法における(i)及び(ii)工程は、ほぼ同様の工程であるため、併せて説明する。
【0018】
<(1),(i)の工程>
まず、(1),(i)の工程における、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する硬化性層に、硬化部と未硬化部とを形成する方法について説明する。
より具体的には、
(1,i−1)支持体上に、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する感光性組成物(本発明の感光性組成物)を全面塗布し、
(1,i−2)可視光を用いて所望の画像様に露光を行う、
という段階を経ることで、上述のような硬化部と未硬化部とが形成される。
この方法の各段階について、以下に詳細に説明する。
【0019】
〔(1,i−1)支持体上に感光性組成物を全面塗布する〕
支持体上に塗布される感光性組成物としては、露光部が硬化し、かつ、未露光部(未硬化部)が現像される、ネガ型にパターンを形成することができ得る感光性組成物(以下、適宜、ネガ型感光性組成物と称する。)が用いられる。かかるネガ型感光性組成物は、(a)可視域に吸収を有する増感剤(以下、単に「(a)増感剤」と称する場合がある。)、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤(以下、単に「(b1)重合開始剤」と称する場合がある。)、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤(以下、単に「(b2)重合開始剤」と称する場合がある。)、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物(以下、単に「(c)重合性化合物」と称する場合がある。)を必須成分として含み、更に、膜性向上のためのアルカリ可溶性高分子化合物や、必要に応じて他の添加物を含むことが好ましい。
【0020】
なお、本発明において、(b2)増感剤により増感されない重合開始剤の「増感されない」とは、実際の評価条件において露光した場合、重合を生起するだけのラジカルを発生しないことを意味する。具体的には、例えば、この増感されない重合開始剤のみを使用した感光性組成物は、その増感されない波長の露光では硬化物を得ることができない。また、より具体的には、増感されない重合開始剤の露光により分解する割合は、10%以下、好ましくは5%以下ものを意味する。
一方、(b1)増感剤により増感される重合開始剤とは、増感反応により40%以上、このましくは60%以上、更には80%以上分解するものである。
【0021】
本発明における硬化性層に対し、(1),(i)の工程で可視光が照射されると、硬化性層に含まれる2種の重合開始剤のうち(b1)重合開始剤は、(a)増感剤による増感反応により消費されるが、(b2)重合開始剤は、(a)増感剤に対して不活性(増感されない)であるため、増感、分解されずに、そのまま層中に残存することになる。
そして、この残存した(b2)重合開始剤は、本発明のグラフトパターン形成方法であれば、後述する(3)の工程における紫外線の照射に対して作用し、分解するため、グラフトポリマーを生成させることができる。つまり、後述する(3)の工程に供される際、硬化性層中には開始点(開始剤)が十分に多く残存していることから、重合度の高い、グラフトポリマーを高密度で生成させることができ、その結果、膜厚の大きなグラフトポリマー層が得られる。
また、本発明の硬化物パターン形成方法であれば、層中に残存した(b2)重合開始剤は、後述する(iii)の工程における紫外線の照射に対して作用し、分解するため、強度の高い硬化物を作成することができる。つまり、後述する(iii)の工程に供される際、硬化性層中には開始点(開始剤)が十分に多く残存していることから、硬化性層中の硬化反応が更に進行し、架橋度の高い硬化物が得られる。その結果、耐摩耗性、膜強度の高い硬化物パターンの形成が可能となり、例えば、この硬化物パターンを印刷版などで使用した場合には、耐刷性の向上など顕著な効果をもたらす。
【0022】
以上のことから、(a)増感剤、(b1)重合開始剤、(b2)重合開始剤、及び(c)重合性化合物を含有する本発明の感光性組成物は、可視光と紫外光とのそれぞれの光によって活性種(ラジカル等)が発生し、それぞれ重合反応が生起するものであり、本発明のグラフトパターン形成方法、及び本発明の硬化物パターン形成方法に好ましく用いられる。また、本発明の感光性組成物は、レジスト材料、三次元造形材料としても用いることができる。
【0023】
ここで、本発明において、(a)増感剤、(b1)重合開始剤、(b2)重合開始剤の組み合わせについて説明する。
一般的に、増感剤及び重合開始剤には、それぞれ、エネルギー移動型と電子移動型があり、それぞれ同じ型の増感剤と重合開始剤とを組み合わせないと分解反応は起こらない。即ち、エネルギー移動型の増感剤は、エネルギー移動型の重合開始剤と組み合わせないと増感が起こらず、電子移動型の重合開始剤と組み合わせても増感は起こらない。同様に、電子移動型の増感剤は、電子移動型の重合開始剤と組み合わせないと増感が起こらない。
本発明においては、(a)増感剤としてエネルギー移動型の増感剤を用いた場合には、(b1)重合開始剤としてエネルギー移動型の重合開始剤を用い、(b2)重合開始剤として電子移動型の重合開始剤を用いればよい。また、(a)増感剤として電子移動型の増感剤を用いた場合には、(b1)重合開始剤として電子移動型の重合開始剤を用い、(b2)重合開始剤としてエネルギー移動型の重合開始剤を用いればよい。
以下、本発明におけるネガ型感光性組成物(本発明の感光性組成物)を構成する各成分について説明する。
【0024】
「(a)増感剤」
本発明における(a)可視域に吸収を有する増感剤としては、可視域(本発明においては波長400〜900nmの範囲、好ましくは波長400〜700の範囲)に吸収を有していれば、従来公知のエネルギー移動型の増感剤や、電子移動型の増感剤を用いることができる。
エネルギー移動型の増感剤の例としては、300nm以上の範囲で実際に充分な光吸収を可能にするような極大吸収を有する三重項増感剤が好ましい。
そのような増感剤としては、具体的には、ベンゾフェノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、キノン類、芳香族ニトロ化合物、ナフトチアゾリン誘導体、ベンゾチアゾリン誘導体、チオキサントン類、アクリドン類,ナフトチアゾール誘導体、ケトクマリン化合物、ベンゾチアゾール誘導体、ナフトフラノン化合物、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等を挙げることができる。より具体的には、ミヒラーケトン、N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンズアンスロン、(3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズ)アンスロンピクラミド、5−ニトロアセナフテン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、メチルチオキサントン−1−エチルカルボキシレート、N−n−ブチルクロロアクリドン,2−ニトロフルオレン、2−ジベンゾイルメチレン−3−メチルナフトチアゾリン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2,4,6−トリフェニルチアピリリウムパークロレート、2−(p−クロルベンゾイル)ナフトチアゾールなどを挙げることができる。
【0025】
また、特に、有効なものとしては、特許第2632069号明細書に記載のジチオール系の増感剤である。
以下、本発明に好適なジチオール系の増感剤について説明する。
本発明におけるジチオール系の増感剤としては、下記一般式(a−1)で表される化合物が好ましい。
【0026】
【化1】

【0027】
上記一般式(a−1)中、R及びRは、各々独立に、アルキル基、アリール基、又はアルケニル基を表し、G及びGは、各々独立に、水素原子、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はフルオロアルキルスルホニル基を表す。但し、GとGとが同時に水素原子となることはない。また、nは、0、1、又は2を表す。
更に、RとRとはそれぞれが結合している硫黄原子と共に非金属元素からなる環を形成していてもよい。GとGとはそれぞれが結合している炭素原子と共に非金属元素からなる環を形成していてもよい。
【0028】
前記R及びRで表されるアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基などの炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、このアルキル基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)、ハロゲン原子(例えば、Cl、Brなど)、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、スルホニル基、フェニル基、p−ニトロフェニル基などのアリール基、ビニル基、メチルビニル基、シンナミル基などの置換基が挙げられる。
【0029】
前記R及びRで表されるアリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。このアリール基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)、ハロゲン原子(例えば、Cl、Brなど)、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、スルホニル基などの置換基が挙げられる。
【0030】
前記R及びRで表されるアルケニル基としては、例えば、ビニル基が好ましい。このアルケニル基は置換されていてもよく、置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜18のアリール基が挙げられ、これらの置換基もメチル基など炭素数1〜10のアルキル基で置換されていてもよい。
【0031】
一般式(a−1)において、RとRとはそれぞれが結合している硫黄原子と共に非金属元素からなる環を形成していてもよく、形成される環としては、5員環、6員環、若しくは芳香族環が縮環した5員環、6員環が例示される。また、これらの環は、アルキル基、アリール基、置換アルキル基、置換アリール基、ヒドロキシ基、シアノ基、アルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、スルホニル基などの置換基を有していてもよい。
【0032】
前記G及びGとしてのアルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アリールカルボニル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、又はフルオロアルキルスルホニル基中のアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、また、アリール基としては、フェニル基、又はナフチル基が好ましい。これらのアルキル基及びアリール基は、置換基を有していてもよく、例えば、炭素数1〜10のアルキル基、ヒドロキシ基、シアノ基、炭素数1〜10のアルコキシ基、ハロゲン原子、カルボキシル基、カルボアルコキシ基、スルホニル基、スルホアルコキシ基、炭素数6〜18のアリール基、アシル基、ビニル基、シンナミル基が挙げられる。
【0033】
一般式(a−1)において、GとGとはそれぞれが結合している炭素原子と共に非金属元素からなる環を形成していてもよく、形成される環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるもので、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0034】
1,3−ジカルボニル核、例えば、1,3−インダンジオン、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン、
ピラゾリノン核、例えば、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾリル)−3−メチル−2−ビラゾリン−5−オン、
イソオキサゾリノン核、例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン、
オキシインドール核、例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール、
【0035】
2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核、例えば、バルビツル酸、又は2−チオバルビツル酸とその誘導体(かかる誘導体としては、1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−3−アリール体等が挙げられる。)
2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、例えば、ローダニンとその誘導体(かかる誘導体としては、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルスーダニン等の3−アリールローダニン等が挙げられる。)
【0036】
2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン)核、例えば、2−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン、
チアナフテノン核、例えば、3(2H)−チアナフテノン及び3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド、
2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン、
2,4−チアゾリジンジオン核、例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン、
チアゾリジノン核、例えば、4−チアゾリジノン、3−エチル−4−チアゾリジノン、
【0037】
4−チアゾリノン核、例えば、2−エチルメルカプト−5−チアゾリン−4−オン、2−アルキルフェニルアミノ−5−チアゾリン−4−オン、
2−イミノ−2−オキソゾリン−4−オン(凝ヒダントイン)核、
2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核、例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン、
2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核、例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、
2−イミダゾリン−5−オン核、例えば、2−n−プロピル−メルカプト−2−イミダゾリン−5−オン、
フラン−5−オン、
【0038】
4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン核若しくは4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン核、例えばN−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン、N−n−ブチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−キノリノン、N−メチル−4−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジノン、
置換若しくは非置換の4−ヒドロキシ−2H−ピラン−2−オン、4−ヒドロキシクマリン、
置換若しくは非置換のチオインドキシル、例えば、5−メチルチオインドキシル、等である。
【0039】
前記一般式(a−1)で表される化合物の中でも、下記一般式(a−2)で表される化合物が好ましい。
【0040】
【化2】

【0041】
前記一般式(a−2)中、R11及びR12は、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アシル基、又はハロゲン原子を表し、R13及びR14は、各々独立に、水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。また、Xは、硫黄原子、又は酸素原子を表す。
また、R11とR12とは互いに結合して芳香族環を形成してもよく、この芳香族環上には、アルキル基、アルキルオキシ基、ハロゲン原子を有してもよく、また、この芳香族環にヘテロ環が縮合していてもよい。
【0042】
前記R11及びR12で表されるアルキル基としては、炭素数1〜13のアルキル基が好ましい。
また、前記R11及びR12で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
これらのアルキル基及びアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、アルコキシカルボニル基、ハロゲン原子、アルコキシ基等が挙げられる。
【0043】
前記R13及びR14で表されるアルキル基としては、炭素数1〜13のアルキル基が好ましい。
また、前記R13及びR14で表されるアリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が好ましい。
【0044】
以下、前記一般式(a−1)で表される化合物、及び前記一般式(a−2)で表される化合物の具体例(No.1〜No.35)を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、下記具体例中の「t−Bu」はtert−ブチル基を、「Ph」はフェニル基を、「Et」はエチル基を、「Me」はメチル基を示す。
【0045】
【化3】

【0046】
【化4】

【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
上記のような前記一般式(a−1)で表される化合物、及び前記一般式(a−2)で表される化合物は、特許第2632069号明細書の7頁の左下欄から8頁の左下欄までに記載の合成方法により得ることができる。
【0050】
これらのエネルギー移動型の増感剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
一方、電子移動型の増感剤の例としては、公知のクマリン(ケトクマリン又はスルホノクマリンも含まれる。)色素、メロスチリル色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素等のケト色素;非ケトポリメチン色素、トリアリールメタン色素、キサンテン色素、アントラセン色素、ローダミン色素、アクリジン色素、アニリン色素、アゾ色素等の非ケト色素;アゾメチン色素、シアニン色素、カルボシアニン色素、ジカルボシアニン色素、トリカルボシアニン色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素等の非ケトポリメチン色素;アジン色素、オキサジン色素、チアジン色素、キノリン色素、チアゾール色素等のキノンイミン色素等が含まれる。より具体的には、例えば、特開昭62−143044号、特開平3−20260号、特開平1−84245号、特開平1−138204号、特開平1−100536号、特開平9−188686号、特表平6−505287号等の各公報に記載の分光増感色素を挙げることができる。
その他、電子移動型の増感剤の例として、ピレン、フェナンスレン、ジフェニルアントラセンなどの多核芳香族化合物も挙げることができる。
【0052】
以下、本発明における電子移動型の増感剤の具体例〔(1)〜(12)〕を以下に示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0053】
【化7】

【0054】
【化8】

【0055】
これらの電子移動型の増感剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明における(a)可視域に吸収を有する増感剤の含有量は、エネルギー移動型、電子移動型のいずれの場合も、ネガ型感光性組成物中の全固形分に対して、0.01〜30質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0057】
「(b1)重合開始剤、及び(b2)重合開始剤」
本発明における(b1)重合開始剤、及び(b2)重合開始剤としては、従来公知のエネルギー移動型の重合開始剤や、電子移動型の重合開始剤を用いることができる。
本発明において、前述のように、(a)増感剤の種類によって、エネルギー移動型の重合開始剤、及び電子移動型の重合開始剤は、一方が(b1)重合開始剤として、他方が(b2)重合開始剤として機能することになる。
【0058】
エネルギー移動型の重合開始剤の例としては、オキシムエステル系開始剤を挙げることができる。
オキシムエステル系開始剤の重合開始剤として具体的な化合物は、特開昭60−166306号公報に記載のオキシムエステル、特表2006−516246号公報に記載のヘテロ芳香族基を有するオキシムエステル、及び下記一般式(b−1)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【化9】

【0060】
上記一般式(b−1)中、Rは、アシル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、Rは、アルキル基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子、又はアルキルオキシカルボニル基を表し、Arは、芳香族環、又は複素芳香族環を表し、Aは、4員環、5員環、6員環、又は7員環表す。mは、0以上の整数を表す。
前記R1で表されるアシル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基、及びAで表される環は、更に置換されていてもよく、その置換基としては、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキル基、アリール基等が挙げられる。
また、前記mが2以上の整数を表す場合、前記Rは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。前記mとしては、2〜4が好ましい。
【0061】
前記Rで表されるアルキルオキシカルボニル基としては、アセチル基、プロピオニル基等が挙げられる。
また、Rで表されるアリールオキシカルボニル基としては、ベンソイル基等が挙げられる。
【0062】
前記Rで表されるアルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
前記Rで表されるアルキルオキシ基としては、炭素数1〜10のアルキル基を含むアルキルオキシ基が好ましい。
前記Rで表されるアリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等が挙げられる。
前記Rで表されるアルキルチオ基としては、炭素数1〜10のアルキル基を含むアルキルチオ基が好ましい。
前記Rで表されるアリールチオ基としては、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
前記Rで表されるアルキルオキシカルボニル基としては、アセチルオキシ基、プロピオニルオキシ基など炭素数1〜10のアルキル基を含むアルキルオキシカルボニル基が好ましい。
【0063】
前記Arで表される芳香族環、複素芳香族環としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基等の炭素数6〜18の芳香族環、ピリジル基、イミダソイル基、ピコリン基、キノリン基などの少なくとも炭素数4〜18の炭素原子と1個〜4個の窒素原子とを含む複素芳香族環が好ましい。
【0064】
以下、前記一般式(b−1)で表される化合物の具体例〔構造(1)〜構造(28)〕を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。
なお、下記具体例中の「Ac」はアセチル基を、「Ph」はフェニル基を、「Et」はエチル基を、「Me」はメチル基を示す。
【0065】
【化10】

【0066】
【化11】

【0067】
【化12】

【0068】
これらのエネルギー移動型の重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0069】
一方、電子移動型の重合開始剤としては、ジフェニルヨードニウム、トリフェニルヨードニウムなどのオニウム塩型開始剤、ビスイミダゾール系開始剤、トリクロロメチルトリアジン系開始剤などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいのは、トリアジン系開始剤である。
【0070】
特に、本発明において好ましいトリアジン系開始剤としては、例えば、特開平2−63054号公報、5頁右下欄から6頁左上欄に記載の一般式(I)で表される化合物のように、トリクロロメチル基を有するトリアジン系開始剤が好ましい。
以下、このようなトリアジン開始剤の具体例(T−1、T−2)を挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
【化13】

【0072】
これらの電子移動型の重合開始剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
本発明における(b1)増感剤により増感される重合開始剤(硬化性層を硬化させる際に用いられる重合開始剤)の含有量は、ネガ型感光性組成物中の全固形分に対して、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
一方、本発明における(b2)増感剤により増感されない重合開始剤(グラフトポリマーを生成させる際、より架橋度の高い硬化物(強固な架橋物)を形成する際に用いられる重合開始剤)の含有量は、ネガ型感光性組成物中の全固形分に対して、0.1〜30質量%の範囲であることが好ましく、1〜10質量%の範囲であることがより好ましい。
【0074】
本発明において、(a)増感剤、(b1)重合開始剤、(b2)重合開始剤の好ましい組み合わせは、「(a)エネルギー移動型の増感剤、(b1)エネルギー移動型の重合開始剤、(b2)電子移動型の重合開始剤」か、「(a)電子移動型の増感剤、(b1)電子移動型の重合開始剤、(b2)エネルギー移動型の重合開始剤」であり、組合せの選択性が多いという観点から、後者の組み合わせが好ましい。
また、より好ましい組み合わせとしては、(a)電子移動型の増感剤として、メロシアニン色素、シアニン色素、クマリン系色素を用い、(b1)電子移動型の重合開始剤として、トリクロロメチルトリアジン系開始剤、ビスイミダゾール系開始剤を用い、(b2)エネルギー移動型の重合開始剤として、オキシムエステル系開始剤を用いる組み合わせである。この組み合わせによる開始系の機構は、まず、可視域の画像様露光により(a)電子移動型の増感剤の作用で、例えば、トリアジン系開始剤が分解し、ラジカルを発生することで、重合反応が起こる。そして、硬化性層の現像を行い未硬化部が除去された後、紫外光による全面露光にて、オキシムエステル系開始剤が分解し、本発明のグラフトパターン形成方法であれば硬化性層上にグラフトポリマーが生成し、また、本発明の硬化物パターン形成方法であれば、硬化性層中において不完全にしか架橋していなかった部分が更に硬化し、実用的な架橋度(強度)を備えた硬化物が形成される。
【0075】
「(c)重合性不飽和結合を有する化合物(重合性化合物)」
本発明におけるネガ型感光性組成物に含まれる、(c)重合性不飽和結合を有する化合物(重合性化合物)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができる。例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつものである。
【0076】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド等が挙げられる。
【0077】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0078】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタアクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0079】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
【0080】
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
更に、前述のエステルモノマーは、混合物しても用いることができる。
【0081】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
【0082】
その他の例としては、特公昭48−41708号公報中に記載されている、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記の一般式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加せしめた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0083】
CH=C(R)COOCHCH(R)OH 一般式(A)
(ただし、R及びRは、各々独立に、H或いはCHを示す。)
【0084】
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。更に、日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。なお、これらの使用量は、全成分に対して5〜70質量%、好ましくは10〜50質量%である。
【0085】
更に、例えば、米国特許第2,760,863号、同第3,060,023号、特開昭62−121448号等に記載の2個又はそれ以上の末端エチレン基を有する付加重合性不飽和化合物をも好適に用いられる。
【0086】
本発明において、重合性不飽和結合を有する化合物の含有量は、ネガ型感光性組成物の全固形分に対して、5〜95質量%程度であり、5〜80質量%が好ましい。
【0087】
「(d)アルカリ可溶性高分子化合物」
本発明におけるネガ型感光性組成物には、膜性向上のため、(d)アルカリ可溶性高分子化合物が含まれることが好ましい。かかるアルカリ可溶性高分子化合物としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン類、ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体、アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマー、アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマー等が挙げられる。ここでアルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、イミド基等が挙げられる。
【0088】
また、ポリ−p−ヒドロキンスチレン、ポリ−m−ヒドロキンスチレン、p−ヒドロキシスチレン−N−置換マレイミド共重合体、p−ヒドロキシスチレン−無水マレイン酸共重合体等のヒドロキシスチレン系ポリマーを用いる場合には質量平均分子量が2,000〜500,000、更に、4,000〜300,000のものが好ましい。
【0089】
アルカリ可溶性基を有するアクリル系ポリマーの例としては、メタクリル酸−ベンジルメタクリレート共重合体、ポリ(ヒドロキシフェニルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)、ポリ(2、4−ジヒドロキシフェニルカルボニルオキシエチルアクリレート)や、特願平8−211731明細書に記載のポリマー等が挙げられる。これらのアクリル系ポリマーは質量平均分子量が2,000〜500,000、好ましくは4,000〜300,000のものが好ましい。
【0090】
アルカリ可溶性基を有するウレタン型ポリマーの例としては、ジフェニルメタンジイソシアネートとヘキサメチレンジイソシアネート、テトラエチレングリコール、2、2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を反応させて得られる樹脂等が挙げられる。
これらのアルカリ可溶性ポリマーのうち、ヒドロキシスチレン系ポリマー及びアルカリ可溶性基を有するアクリル系共重合体は現像性の点で好ましい。
【0091】
本発明において、アルカリ可溶性高分子化合物は、酸分解性基で保護されていてもよく、該酸分解性基としては、エステル基、カーバメイト基等が挙げられる。
【0092】
本発明において、これらのアルカリ可溶性高分子化合物の含有量は、ネガ型感光性組成物の全固形分中、10〜90質量%程度であり、20〜85質量%が好ましく、30〜80質量%が更に好ましい。アルカリ可溶性高分子化合物の含有量が10質量%未満であると硬化性層の耐久性が悪化する場合があり、また、90質量%を越えると感度、硬化性層の耐久性の両面で好ましくない。
また、これらのアルカリ可溶性高分子化合物は、1種類のみで使用してもよいし、或いは2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0093】
また、アルカリ可溶性高分子化合物としては、線状有機高分子重合体を用いてもよい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とする水或いは弱アルカリ水可溶性又は膨潤性である線状有機高分子重合体が選択される。線状有機高分子重合体は、組成物の皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性線状有機高分子重合体を用いると水現像が可能になる。
【0094】
このような線状有機高分子重合体としては、側鎖にカルボン酸基を有する付加重合体、例えば、特開昭59−44615号、特公昭54−34327号、特公昭58−12577号、特公昭54−25957号、特開昭54−92723号、特開昭59−53836号、特開昭59−71048号に記載されているもの、即ち、メタクリル酸共重合体、アクリル酸共重合体、イタコン酸共重合体、クロトン酸共重合体、マレイン酸共重合体、部分エステル化マレイン酸共重合体等がある。また同様に、側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体をも用いることができる。この他に水酸基を有する付加重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0095】
特に、これらの中で、〔ベンジル(メタ)アクリレート/(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体及び〔アリル(メタ)アクリレート(メタ)アクリル酸/必要に応じてその他の付加重合性ビニルモノマー〕共重合体が、膜強度、感度、現像性のバランスに優れており、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
また、特開平11−171907号公報記載のアミド基を有し、アルカリ水に可溶性である高分子バインダーも、優れた現像性と膜強度を併せ持ち、アルカリ可溶性高分子化合物として好適である。
【0096】
好ましい実施様態において、アルカリ可溶性高分子化合物としては、実質的に水不溶で、かつ、アルカリ可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないか、若しくは、非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはアルカリ可溶性高分子化合物の酸価(ポリマー1gあたりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は、膜強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は、3000から50万の範囲で、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0であり、分子量が、1万から30万の範囲である。
【0097】
「その他の成分」
本発明におけるネガ型感光性組成物には、種々の特性を付与するため、必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。
【0098】
(熱重合禁止剤)
本発明におけるネガ型感光性組成物には、硬化性層の製造中或いは保存中において、重合性不飽和結合を有する化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩等が挙げられる。熱重合禁止剤の添加量は、ネガ型感光性組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、ネガ型感光性組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0099】
本工程においては、以上説明した、ネガ型感光性組成物の各成分を溶媒に溶かして硬化性層形成用塗布液を調製し、この塗布液を後述する支持体上に全面塗布する。ここで使用する溶媒としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるがこれに限定されるものではない。これらの溶媒は単独或いは混合して使用される。溶媒中の上記成分(添加剤を含む全固形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0100】
硬化性層形成用塗布液の塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。塗布量が少なくなるにつれて、見かけの感度は大になるが、皮膜特性は低下する。
【0101】
本発明における硬化性層形成用塗布液には、塗布性を良化するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、塗布液の全固形分中、0.01〜1質量%、更に好ましくは0.05〜0.5質量%である。
【0102】
硬化性層形成用塗布液の塗布量は、乾燥後の質量で、0.1〜20g/mが好ましく、更に、2〜15g/mが好ましい。塗布量0.lg/m未満では十分な重合開始能を発現できず、グラフト重合が不十分となり、所望の強固なグラフト構造が得られない懸念があり、塗布量が20g/mを超えると膜性が低下する傾向になり、膜剥がれを起こしやすくなるため、いずれも好ましくない。
また、形成される硬化性層の厚みは、0.05〜50μmの範囲が好ましく、0.5〜5μmの範囲がより好ましい。
【0103】
〔支持体〕
本発明において、上述の硬化性層が設けられる支持体には、特に制限はなく、寸度的に安定な板状物であり、必要な可撓性、強度、耐久性等を満たせばいずれのものも使用できるが、例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上記のごとき金属がラミネート若しくは蒸着された、紙若しくはプラスチックフィルム等が挙げられる。
【0104】
本発明に用いられる支持体としては、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が好ましく、ポリエステルフィルムがより好ましい。更に、アルミニウムがラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルムも好ましい。
【0105】
〔(1,i−2)所望の画像様に露光を行う〕
支持体上にネガ型感光性組成物を全面塗布してなる層に、所望の画像様に露光を行うことにより、その露光部では、(a)増感剤の作用により(b1)重合開始剤が分解してラジカルが発生し、この発生したラジカルにより(c)重合性化合物が重合反応を生起する。これにより、露光部が重合反応により硬化して硬化部となり、未露光部がそのまま未硬化部となる。
【0106】
本発明において、画像様に露光を行う際には、可視光を用いることを要する。
可視光による画像様の露光には、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
この露光の光源としては、例えば、主たる波長が400nm以上900nm以下であるものを用いることが好ましく、具体的には、405nmの半導体レーザー、488nmのアルゴンイオンレーザー、633nmのHe−Neレーザー、780−900nmのIR−LDレーザー等が用いられる。
【0107】
また、レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。ネガ型にパターンを形成する硬化性層に照射されるエネルギーは0.05〜100mJ/cmであることが好ましい。
【0108】
<(2)硬化性層の未硬化部を現像により除去し、硬化性層の残存部と支持体の露出部によるパターンを形成する工程、(ii)硬化性層の未硬化部を現像により除去する工程>
(2),(ii)の工程では、前記(1),(i)の工程により支持体の全面に形成されたネガ型感光性組成物からなる硬化性層における未硬化部(未露光部)を現像することで、硬化性層を画像様にすることができる。
かかる現像方法について以下に説明する。
【0109】
〔未硬化部(未露光部)を現像する〕
このようにネガ型感光性組成物を含有する硬化性層は、以下の現像液及び補充液を用いて現像される。
本工程において用いられる現像液及び補充液としては、従来より知られているアルカリ水溶液が使用できる。例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、第3リン酸ナトリウム、第3リン酸カリウム、第3リン酸アンモニウム、第2リン酸ナトリウム、第2リン酸カリウム、第2リン酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、ほう酸ナトリウム、ほう酸カリウム、ほう酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化リチウムなどの無機アルカリ塩が挙げられる。また、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジンなどの有機アルカリ剤も用いられる。
これらのアルカリ剤は単独若しくは2種以上を組み合わせて用いられる。
かかる現像液や補充液には、必要に応じて、種々の界面活性剤や有機溶剤、消泡剤、硬水軟化剤のような添加剤を含有させることもできる。
【0110】
本工程を経ることで、支持体上に硬化性層が画像様となり、硬化性層の残存部と支持体の露出部によるパターンを形成することができる。
なお、この画像様の硬化性層中には、後述する(3)工程で使用される(b2)重合開始剤が残存する。
なお、パターン露光及び現像後、必要に応じて、加熱処理を行ってもよい。
【0111】
<(3)パターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、前記硬化性層の残存部上にグラフトポリマーを生成させて、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成する工程>
本発明のグラフトパターン形成方法では、本工程において、グラフトポリマーを生成させる方法は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を用いる。以下、この表面グラフト重合について説明する。
【0112】
〔グラフト重合〕
グラフト重合とは、高分子化合物鎖上に活性種を与え、この活性種によって重合を開始する別の単量体を更に結合及び重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に、活性種を与える高分子化合物(鎖)が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
なお、本発明においては、活性種が与えられる高分子化合物(鎖)は、前記(2)工程で形成された画像様の硬化性層を構成する高分子化合物(鎖)となる。
【0113】
本工程における表面グラフト重合は、前記(2)工程により形成されたパターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、支持体上に残存する硬化性層中の(b2)重合開始剤から活性種(ラジカル)を発生させ、この活性種とグラフトポリマー前駆体とが反応することにより、グラフトポリマーを生成させるものである。
このグラフトポリマーは硬化性層の残存部上にのみ生成するため、支持体上には、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成することができる。
【0114】
なお、パターン上にグラフトポリマー前駆体を接触させる方法としては、硬化性層の残存部と支持体の露出部によるパターンが形成された支持体を、グラフトポリマー前駆体を含有する溶液中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、前記パターン上に、グラフトポリマー前駆体をそのまま接触させるか、グラフトポリマー前駆体を含有する溶液を塗布して塗膜を形成する方法、更には、その塗膜を乾燥して、パターン上にグラフトポリマー前駆体を含有する層(グラフトポリマー前駆体層)を形成することにより行うことが好ましい。
【0115】
〔紫外線の照射〕
本工程では、硬化性層に活性種を与えるために、紫外線の照射を行う。
この紫外線の照射には、主たる波長が250nm以上370nm以下である光源が好ましく用いられ、具体的には、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、蛍光ランプ、キセノンランプ、カーボンアークランプ、タングステン白熱ランプなどが挙げられる。
紫外線の照射時間は、グラフトポリマーの生成量及び使用する光源により異なるが、通常数秒〜24時間である。
【0116】
〔グラフトポリマー前駆体〕
本工程において用いられるグラフトポリマー前駆体について説明する。グラフトポリマー前駆体としては、重合性基を有していればよく、公知のモノマー、マクロモノマー、及び重合性基を有するポリマーのいずれもが使用できる。
なお、グラフトポリマー前駆体の構造を選択することで、生成されるグラフトポリマーに機能性を持たせることができる。例えば、極性基(親水性基)やヘテロ環基を有するグラフトポリマー前駆体を用いることにより、生成されるグラフトポリマーに機能性材料を吸着させる機能を付与することができる。また、親水性基や疎水性基を有するグラフトポリマー前駆体を用い、親水性を有するグラフトポリマーや疎水性を有するグラフトポリマーを生成させることもできる。
特に、疎水的表面を有する支持体を用い、且つ、親水性基を有するグラフトポリマー前駆体を用いてグラフトポリマーを生成させた場合には、ラフトポリマーの生成領域が親水性を示し、また、その非生成領域が支持体露出部となり疎水性を示すことになり、親/疎水性パターンを得ることができる。また、親水性表面を有する支持体を用い、且つ、疎水性基を有するグラフトポリマー前駆体を用いてグラフトポリマーを生成させた場合には、グラフトポリマーの生成領域が疎水性を示し、また、その非生成領域が支持体露出部となり親水性を示すことになり、親/疎水性パターンを得ることができる。
【0117】
以下、親/疎水性パターンを形成する際に用いられる親水性基を有するグラフトポリマー前駆体、及び疎水性基を有するグラフトポリマー前駆体について説明する。
【0118】
(親水性モノマー)
本発明において用いられる親水性モノマーとは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、親水性基とを有するモノマーである。
この親水性モノマーが有する親水性基としては、カルボン酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、アミノ基及びその塩、アミド基、水酸基、エーテル基、ポリオキシエチレン基などを挙げることができる。
【0119】
本発明において特に有用な親水性モノマーの具体例としては、次のモノマーを挙げることができる。例えば、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、スチレンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチレン(メタ)アクリレート、3−スルホプロピレン(メタ)アクリレート若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート若しくはそれらの塩、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリレート、3−トリメチルアンモニウムプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)アンモニウムクロライド、などを使用することができる。また、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ビニルピロリドン、N−ビニルアセトアミド、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなども有用である。
【0120】
(親水性マクロモノマー)
本発明で用いられる親水性マクロモノマーとは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、親水性基とを有するマクロモノマーである。
本発明において特に有用な親水性マクロモノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド系マクロモノマー、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミドなどのN−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。また、ポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも、本発明のマクロモノマーとして有用に使用することができる。
【0121】
これらのマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。
これらの重合性基含有親水性マクロモノマーのうち有用なものの分子量は、250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0122】
(重合性基を有する親水性ポリマー)
また、本発明で用いられる重合性基を有する親水性ポリマー(以下、重合性基含有親水性ポリマーと称する。)とは、分子内に、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基と、親水性基とを有するポリマーである。
本発明において用いられる重合性基含有親水性ポリマーの具体例としては、例えば、上述の重合性基含有親水性モノマーや重合性基含有親水性マクロモノマーの具体例から選ばれる少なくとも一種を用いて得られる親水性ホモポリマー若しくはコポリマーに、エチレン付加重合性不飽和基が導入されたものが挙げられる。
なお、重合性基を有する化合物として、重合性基含有親水性ポリマーを用いる場合には、硬化性層表面にグラフト重合する際に、必ずしも連鎖重合反応を必要とするものではなく、少量の重合性基が反応するだけでもよい。
【0123】
(疎水性基を有するグラフトポリマー前駆体)
疎水性基を有するグラフトポリマー前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、スチレンなどの疎水性モノマーが用いられる。
【0124】
(溶媒)
上述のグラフトポリマー前駆体を含有する溶液を得るための溶媒としては、グラフトポリマー前駆体や必要に応じて添加される添加剤が溶解可能ならば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましい。また、この溶液には、更に界面活性剤を添加してもよい。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和しうる溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0125】
上述のようにして生成したグラフトポリマーにより形成されるグラフト層の厚さは、0.001〜10g/mの範囲であることが好ましく、0.01〜5g/mの範囲であることがより好ましい。このグラフト層の厚さが0.001g/m未満であると、親水性の特性が効果的に発現できない場合がある。また、このグラフト層の厚さが10g/mより大きいと、作製されたパターン形成材料を光透過型の画像形成材料として用いる場合、透過度が減少してしまう場合がある。
【0126】
上述のようにして生成したグラフトポリマーは、硬化性層と直接結合しているものであるため、耐久性に優れたものとなる。
【0127】
なお、前述のように、親水性基を有するグラフトポリマー前駆体を用いて親水性のグラフトポリマーを生成させる場合、グラフトポリマーの生成領域が優れた親水性を示す。
本発明における「優れた親水性」とは、水との接触角に換算して20゜以下の水濡れ性を呈する状態をいう。接触角の測定方法は、公知の方法が適用でき、例えば、協和界面科学(株)製、CA−Zなどの市販の装置を用いて接触角(空中水滴)を測定する方法などを適用することができる。この方法で、接触角に換算して20゜以下であれば、本発明の好ましい親水性が達成されていると判断することができる。
【0128】
本発明のグラフトパターン形成方法によれば、支持体上に、予め硬化性層を画像様に設け、その硬化性層上に、グラフトポリマーを生成させるという方法を用いている。また、硬化性層を硬化させる際に用いる重合開始剤と、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる重合開始剤と、をが別種であり、硬化性層を硬化させた後も、グラフトポリマーを生成させる際に用いられる重合開始剤が残存するため、効率よく、また、高密度に、硬化性層上にグラフトポリマーが生成することになる。
その結果、本発明のグラフトパターン形成方法により形成されたグラフトパターンは、生成領域と非生成領域との間に明確な境界を付与することができるため、そのため、緻密さや精細さを求められるような、種々の用途に応用することが容易になる。
【0129】
<(iii)硬化性層の硬化部に対し紫外光を照射して、硬化物の存在領域と非存在領域とからなる硬化物パターンを形成する工程>
本発明の硬化物パターン形成方法では、本工程において、硬化性層の架橋度を更に向上させ、耐摩耗性、膜強度の高い硬化物パターンを形成する。
なお、本発明の硬化物パターン形成方法における(iii)の工程で行われる紫外光の照射は、本発明のグラフトパターン形成方法における(3)の工程で行われる紫外光の照射と同一であり、好ましい態様も同様である。
【0130】
〔グラフトパターン、硬化物パターンの応用〕
前述の方法で形成されたグラフトパターン、硬化物パターンは、例えば、グラフトポリマーの生成領域又は非生成領域、或いは、硬化物の存在領域と非存在領域に色材を付着させて、画像形成材料を得ることができる。
特に、グラフトパターンや硬化物パターンが親/疎水性パターンである場合、親水性領域又は疎水性領域に可視画像形成可能な色材を付着させることで可視画像が形成される。
ここで、グラフトパターン(親/疎水性パターン)に吸着させる色材は、可視画像を形成しうる物質であれば、無機化合物でも、有機化合物あってもよい。なお、可視像を形成しうる物質とは、可視波長領域に吸収を有する物質を指し、具体的には、例えば、有色の染料或いは顔料、光非透過性の各種顔料、金属微粒子などが挙げられる。
なお、グラフトパターンが親/疎水性パターンである場合には、その親水性領域又は疎水性領域を形成しているグラフトポリマーの性質により、付着させる色材を選択することが好ましい。
【0131】
(親水性のグラフトポリマーと色材との関係)
具体的には、グラフトポリマーが有する親水性基がスルホン酸塩やカルボン酸塩などの負の電荷を有する場合、正の電荷を有する分子、例えば、カチオン染料などを吸着させることで可視画像を形成することができる。
このような画像形成に用い得るカチオン性の色材としては、カチオン染料やカチオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にカチオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得るカチオン染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このようなカチオン染料は、前記スルホン酸基、カルボン酸基などの極性変換基である酸性基の機能により電気的にグラフトポリマーに引き寄せられ、グラフトポリマーからなる層の表面のみならず内部へも浸透して最終的に酸性基と結合して画像が形成されるものと考えられる。この画像はイオン性の相互作用によるため、強固に吸着し、少ない染料で堅牢度の高い高濃度の画像が形成される。
【0132】
カチオン染料としては、具体的には、発色団の末端にアルキルアミノ、アラルキルアミノ結合を有する染料、スルホン酸アルキルアミド結合などの酸アミド結合を有する染料、カチオンを形成し得る基を有するアゾ染料、メチン染料、チアゾール・アゾ染料などの複素環化合物などが挙げられる。また、カチオン染料の骨格としては、トリフェニルメタン、ジフェニルメタン、キサンテン、アクリジン、アジン、チアジン、チアゾール、オキサジン、アゾなどが挙げられ、このような染料は、例えば、「新染料化学」細田 豊著、技報堂、(1957年)の第316頁〜322頁に詳述されている。
【0133】
他の画像形成機構として、例えば、グラフトポリマーが有する親水性基がアンモニウム基などのカチオン性の電荷をもつ場合、負の電荷をもつ分子、例えば、酸性染料などを吸着して可視画像が形成される。
このような画像形成に用い得るアニオン性の色材としては、酸性染料やアニオン性に帯電させた無機顔料、金属微粒子及び表面にアニオン性の表面層を形成してなる被覆顔料、被覆金属微粒子などが挙げられる。
ここで、用い得る酸性染料としては、公知の染料を色調や画像濃度などの目的に応じて適宜選択して使用することができる。このような酸性染料としては、アゾ系、アントラキノン系、トリフェニルメタン系、キサンテン系、アジン、キノリンなどの染料が挙げられ、これらのいずれでも任意に用いることができる。具体的には、例えば、C.I.Acid Yellow 1、C.I.Acid Orange 33、C.I.Acid Red 80、C.I.Acid Violet 7、C.I.Acid Blue 93などが挙げられ、このような染料は、例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編、丸善、(1970年)の第392頁〜471頁に詳述されている。
【0134】
可視画像の形成に用いられる色材は1種のみならず、必要に応じて複数種を併用することができる。また、所望の色調を得るため、予め複数の色材を混合して用いることもできる。
【0135】
色材を、グラフトパターン(親/疎水性パターン)に付着させる方法としては、色材分子を溶解又は分散させた液を、上述の(1)、(2)、及び(3)の工程を経て得られたグラフトパターン(親/疎水性パターン)上に塗布する方法、及び、これらの溶液又は分散液中にグラフトパターン(親/疎水性パターン)が形成された支持体を浸漬する方法などが挙げられる。塗布、浸漬のいずれの場合にも、過剰量の色材を供給し、十分な付着がなされるために、溶液又は分散液とグラフトパターン(親/疎水性パターン)との接触時間は、10秒から60分程度であることが好ましく、1分から20分程度であることが更に好ましい。
色材は、親/疎水性領域に付着し得る最大量付着されることが、画像の鮮鋭度、色調及び耐久性の点で好ましい。また、付着の効率からは、溶液、分散液の濃度は、少なくとも10〜20質量%程度が好ましい。
【0136】
これらの色材の使用量は、画像形成機構やその目的に応じて適宜選択することができるが、イオン性の吸着により導入される場合には、一般的な画像形成材料に用いる発色材料、有色材料の使用量に比較して、少量で、高濃度、高鮮鋭度の画像を形成することができる。
【0137】
また、他の画像形成機構として、グラフトパターンである親/疎水性パターンの疎水性領域に、例えば、油性インクの如き疎水性の色材を付着させる方法が挙げられる。このような画像形成機構を用いる場合には、親水性表面を有する支持体と疎水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターンを用い、該疎水性グラフトポリマーに疎水性の色材を付着させる方法や、疎水性表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとからなる親/疎水性パターン材料を用い、親水性グラフトポリマーが形成されていない疎水性領域表面(つまり、疎水性支持体の露出部)に色材を付着させる方法のいずれかが適用できる。
【0138】
また、疎水性ポリマー含有する樹脂フィルムを支持体として用い、無機顔料や金属顔料などの光非透過性の材料を付着(吸着)させる、或いは、光透過性の有色染料を付着(吸着)させる、という画像形成機構を用いた場合には、OHPや街頭における電飾のごとき光透過性のパターン形成材料、ディスプレイ材料をも容易に得ることができる。
【0139】
(平版印刷版への応用)
本発明のグラフトパターン形成方法を用いて得られたグラフトパターンが親/疎水性パターンである場合、また、本発明の硬化物パターン形成方法を用いて得られた硬化物パターンが親/疎水性パターンである場合、これを平版印刷版として用いることもできる。
つまり、グラフトパターン又は硬化物パターンが親/疎水性パターンである場合、そのパターン面に湿し水と油性インクとを供給することで、湿し水は形成された親水性領域に吸着して非画像部を形成し、疎水性領域は疎水性の油性インク受容領域となり、画像部を形成する。
【0140】
例えば、疎水性表面を有する支持体と親水性グラフトポリマーとの組み合わせからなる親/疎水性パターンの場合、パターン面に湿し水と油性インクとを供給することで、湿し水は形成された親水性領域(グラフトポリマーからなる領域)に吸着して非画像部を形成し、疎水性領域(支持体表面からなる領域)は疎水性の油性インク受容領域となり、画像部を形成する。親水性領域は親水性グラフトポリマーが直接支持体と結合しており、高い親水性に起因する保水性及びその耐久性に優れるため、非画像部の汚れの発生が効果的に抑制される。また、画像部は疎水性表面を有する支持体より構成されるが、親水性領域の高い親水性とあいまって、親水性領域と疎水性領域との差が大きくなり、優れた画質の画像を形成することができ、更には、印刷版としての耐刷性に優れる。
【0141】
また、例えば、親水性表面を有する支持体と疎水性硬化物との組み合わせからなる親/疎水性パターンの場合、パターン面に湿し水と油性インクとを供給することで、湿し水は形成された親水性領域(支持体表面からなる領域)に吸着して非画像部を形成し、疎水性領域(硬化物の存在領域)は疎水性の油性インク受容領域となり、画像部を形成する。ここで、画像部(インク受容領域)である疎水性領域は、架橋度が高く、耐摩耗性及び膜強度に優れる硬化物から構成されているため、機械的強度が高く、印刷版としての耐刷性に優れることになる。
【0142】
なお、平版印刷版に用いられる支持体としては、前述の支持体と同様のものを用いることができるが、特に、平版印刷版に用いる場合には、寸度安定性の観点から、PETなどのポリエステルフィルムや、平版印刷版用支持体で一般的に行われる表面処理(例えば、粗面化処理、陽極酸化処理等)が施されたアルミニウム板、アルミニウム板表面に疎水性ポリマー層(疎水性樹脂層)を形成したものが好適に用いられる。
【0143】
以上のように、本発明のグラフトパターン形成方法により得られたグラフトパターンは、画質及び解像度に優れた鮮鋭な画像を形成することが可能であり、更には、形成された画像の耐久性が良好であるため、多用な目的に好適に使用しうるという利点を有する。これにより、目的に応じた種々の画像が容易に形成でき、また、大面積での画像形成も容易なため、平版印刷版や材料ディスプレイなどに好適に適用しうるなど、広い用途が期待される。
また、本発明の硬化物パターン形成方法により得られた硬化物パターン材料は、前述の平版印刷版の他、表面凹凸部材、レジスト材料、三次元造形材料などに適用することができる。
【実施例】
【0144】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
まず、下記に示すような4種類の硬化性層形成用塗布液1〜4を調製した。
【0145】
(硬化性層形成用塗布液1)
・(a)増感剤:下記構造の増感色素1 0.04g
(電子移動型の増感剤、極大吸収波長410nm)
・(b1)重合開始剤:下記構造のトリアジン系開始剤1 0.08g
(電子移動型の重合開始剤)
・(b2)重合開始剤:下記構造のオキシムエステル系開始剤1 0.04g
(エネルギー移動型の重合開始剤)
・(c)重合性化合物:下記化合物c−1 0.4g
・(d)アルカリ可溶性高分子化合物:下記化合物d−1 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 5g
【0146】
(硬化性層形成用塗布液2)
・(a)増感剤:下記構造の増感色素1 0.04g
(電子移動型の増感剤、極大吸収波長410nm)
・(b1)重合開始剤:下記構造のトリアジン系開始剤2 0.08g
(電子移動型の重合開始剤)
・(b2)重合開始剤:下記構造のオキシムエステル系開始剤1 0.04g
(エネルギー移動型の重合開始剤)
・(c)重合性化合物[下記化合物c−1] 0.4g
・(d)アルカリ可溶性高分子化合物[下記化合物d−1] 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 5g
【0147】
(硬化性層形成用塗布液3)
・(a)増感剤:下記構造の増感色素2 0.04g
(電子移動型の増感剤、極大吸収波長380nm)
・(b1)重合開始剤:下記構造のトリアジン系開始剤1 0.08g
(電子移動型の重合開始剤)
・(b2)重合開始剤:下記構造のオキシムエステル系開始剤2 0.04g
(エネルギー移動型の重合開始剤)
・(c)重合性化合物[下記化合物c−1] 0.4g
・(d)アルカリ可溶性高分子化合物[下記化合物d−1] 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 5g
【0148】
(硬化性層形成用塗布液4)
・(a)増感剤:下記構造の増感色素1 0.04g
(電子移動型の増感剤、極大吸収波長410nm)
・(b1)重合開始剤:下記構造のトリアジン系開始剤1 0.08g
(電子移動型の重合開始剤)
・(c)重合性化合物[下記化合物c−1] 0.4g
・(d)アルカリ可溶性高分子化合物[下記化合物d−1] 0.4g
・プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG) 5g
【0149】
【化14】

【0150】
【化15】

【0151】
〔実施例1〕
(硬化性層の形成)
陽極酸化されたアルミニウム支持体の表面に、前記硬化性層形成用塗布液1を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥させた。
得られた硬化性層の膜厚は、2.0μmであった。
【0152】
(可視光によるパターン露光、及び現像)
得られた硬化性層に、露光機(富士フイルム(株)製、INPLEX)を用い、405nmのレーザ光をパターン状に照射し、その後、富士フイルム(株)製現像液、DP−4(1:8希釈液)で現像した。これにより、支持体上に画像様の硬化性層が形成された。
ここで、パターンを得るための最小露光量(感度)を以下のようにして求めた。
即ち、画像様の硬化性層が得られた最低の露光量を求めることにより算出した。
結果を下記表1に示す。
【0153】
(紫外光の照射)
続いて、得られた画像様の硬化性層に対し、PSライト(高圧水銀灯1000W)を用い、2分間全面露光を行った。
これにより、親水性表面を有するアルミニウム支持体上に、硬化物の存在領域(疎水性領域)と非存在領域(支持体の露出部)とからなる硬化物パターンを得た。
【0154】
(平版印刷版への応用、及び評価)
上記のようにして得られた親/疎水性パターンを有する支持体を平版印刷版として用い、下記の方法で印刷に供した。なお、得られた親/疎水性パターンを有する支持体を平版印刷版として用いる場合には、硬化物の非存在領域(支持体の露出部)が非画像部、硬化物の生成領域が画像部となり、該画像部にインキが付着することになる。
即ち、上記のような硬化物パターンを有する支持体をリスロン印刷機に装着し、湿し水として、富士フイルム(株)製のIF201(2.5%)、IF202(0.75%)を、インクとして、大日本インキ化学工業(株)製のGEOS−G墨を、供給して、通常通り印刷を行った。
この印刷を継続し、画像部のかすれや欠陥が生じるまでの枚数(耐刷性)を求めた。結果を表1に示す。
【0155】
〔実施例2、3、比較例1〕
実施例1において用いた硬化性層形成用塗布液1を、下記表1に記載の硬化性層形成用塗布液2〜4にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、硬化物の存在領域と非存在領域(支持体の露出部)とによる硬化物パターンを得た。また、実施例1と同様の方法で、感度及び耐刷性の評価を行った。結果を表1に示す。
【0156】
【表1】

【0157】
表1によれば、比較例1の硬化性層形成用組成物4を用いた場合と比較して、実施例1〜3の硬化性層形成用組成物1〜3を用いた場合は、感度が同程度であるが、耐刷性が大きく向上することが分かる。
これは、硬化性層形成用組成物1〜3を用いた場合、紫外線の照射前の段階では増感剤で増感されなかった重合開始剤が硬化性層中に残存しており、それが紫外線の照射の際に硬化反応に使用されるため、硬化物層の架橋度が向上し、耐摩耗性、及び膜強度に優れた硬化物が得られる。その結果、耐刷試験に十分耐えうる強度の画像部が形成されたことから、耐刷性に優れるものと推定することができる。
それに対して、硬化性層形成用組成物4を用いた場合は、紫外線の照射の際には硬化性層中に重合開始剤が残存しておらず、硬化反応が十分進行しないために、高い強度の画像部が得られず、耐刷性が低いものと思われる。
【0158】
〔実施例4、5、比較例2〕
(硬化性層の形成)
膜厚0.188mmのポリエチレンテレフタレートフィルム(製品名:M4100、東洋紡社製)を支持体として用い、その表面に下記表2に記載の硬化性層形成用塗布液1、2、及び4を、ロッドバー18番を用いて塗布し、110℃で10分乾燥応させた。
得られた硬化性層の膜厚は、2.0μmであった。
【0159】
(可視光によるパターン露光、及び現像)
得られた硬化性層に対し、実施例1と同様にパターン露光、及び現像を行った。
【0160】
(表面グラフト重合(紫外光の照射))
その後、パターンが形成された支持体を、アクリル酸の10質量%水溶液に浸漬し、PSライト(高圧水銀灯1000W)を使用し、紫外線を30分間照射した。光照射後、支持体をイオン交換水でよく洗浄し、硬化性層表面にアクリル酸がグラフト重合してなるグラフトポリマーを生成させた。
これにより、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンが得られた。なお、このグラフトパターンは、グラフトポリマーの生成領域が親水性を示し、また、非生成領域がポリエチレンテレフタレートフィルムの露出部となり疎水性を示すことから、親/疎水性パターンとなる。
【0161】
(平版印刷版への応用、及び評価)
上記のようにして得られた親/疎水性パターンを有する支持体を平版印刷版として用い、下記の方法で印刷に供した。なお、得られた親/疎水性パターンを有する支持体を平版印刷版として用いる場合には、グラフトポリマーの生成領域が非画像部、グラフトポリマーの非生成領域(ポリエチレンテレフタレートフィルムの露出部)が画像部となり、該画像部にインキが付着することになる。
この平版印刷版をリスロン印刷機に装着し、湿し水として、富士フイルム(株)製のIF201(2.5%)、IF202(0.75%)を、インクとして、大日本インキ化学工業(株)製のGEOS−G墨を、供給して、通常通り印刷を行った。
この印刷を継続し、非画像部に汚れが生じるまでの枚数(耐刷性)を求めた。結果を表2に示す。
【0162】
【表2】

【0163】
表2によれば、実施例4、5では、グラフトポリマーを生成させるために用いられる露光の前の段階では増感剤で増感されなかった重合開始剤が残存しており、それが紫外線の照射によるグラフト重合反応に有効に作用するため、グラフトポリマーが多く生成する。そのため、グラフトポリマーの生成領域は親水性が高く、また、耐刷試験に十分耐えうる多くのグラフトポリマーが生成したため、耐刷性に優れるものと推定することができる。
それに対して、比較例2ではグラフトポリマーを生成させるために用いられる露光の段階で重合開始剤が残存しておらず、グラフトポリマーの生成反応が十分進行しないために、高い親水性が得られず、耐刷性が低いものと思われる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
該硬化性層の未硬化部を現像により除去し、前記硬化性層の残存部と前記支持体の露出部によるパターンを形成する工程と、
該パターン上に、グラフトポリマー前駆体を接触させた後、紫外光を照射して、前記硬化性層の残存部上にグラフトポリマーを生成させて、グラフトポリマーの生成領域と非生成領域とからなるグラフトパターンを形成する工程と、
を有することを特徴とするグラフトパターン形成方法。
【請求項2】
前記(a)増感剤が、電子移動型増感剤、又は三重項増感剤であることを特徴とする請求項1に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項3】
前記(b1)重合開始剤、及び前記(b2)重合開始剤のいずれか一方が、エネルギー移動型開始剤であり、他方が電子移動型開始剤であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項4】
前記画像様に可視光を照射する手段として、波長400〜900nmを照射するレーザーを用いることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項5】
前記グラフトポリマー前駆体が親水性基を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のグラフトパターン形成方法。
【請求項6】
(a)可視域に吸収を有する増感剤、(b1)該増感剤により増感される重合開始剤、(b2)該増感剤により増感されない重合開始剤、及び(c)重合性不飽和結合を有する化合物を含有する感光性組成物。
【請求項7】
前記(a)増感剤が、電子移動型増感剤、又は三重項増感剤であることを特徴とする請求項6に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記(b1)重合開始剤、及び前記(b2)重合開始剤のいずれか一方が、エネルギー移動型開始剤であり、他方が電子移動型開始剤であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の感光性組成物。
【請求項9】
支持体上に、請求項6〜請求項8のいずれか1項に記載の感光性組成物からなる硬化性層を形成し、該硬化性層に対して画像様に可視光を照射して、当該硬化性層に硬化部と未硬化部とを形成する工程と、
該硬化性層の未硬化部を現像により除去する工程と、
前記硬化性層の硬化部に対し紫外光を照射して、硬化物の存在領域と非存在領域とからなる硬化物パターンを形成する工程と、
を有する硬化物パターン形成方法。
【請求項10】
前記画像様に可視光を照射する手段として、波長400〜900nmを照射するレーザーを用いることを特徴とする請求項9に記載の硬化物パターン形成方法。
【請求項11】
請求項10又は請求項11に記載の硬化物パターン形成方法により得られた硬化物パターン材料。

【公開番号】特開2008−203461(P2008−203461A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−38475(P2007−38475)
【出願日】平成19年2月19日(2007.2.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】