説明

グルココルチコイド受容体、AP−1、および/またはNF−κB活性の調整剤およびその用途

本発明は、グルココルチコイド受容体、AP-1、および/またはNF-κB活性の調整に関連する疾患(肥満、糖尿病、炎症性疾患および免疫疾患を含む)を処置するのに有用であり、式(I)または(II):


[式中、QはN、O、およびSから選択され;Yはアリールまたはヘテロアリールであり;ZはH、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、またはアルコキシであり;A、B、R、Ra、Rb、RcおよびRdは明細書に定義する]
の構造(その立体異性体の全て、その互変異性体を全て含む)を持つ一群の新しい非ステロイド化合物、またはそのプロドラッグ、またはその医薬的に許容できる塩を提供する。また、前記化合物を含む医薬組成物、ならびに肥満、糖尿病および炎症性疾患または免疫関連疾患を処置する方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2005年1月13日に出願された米国仮特許出願第60/643,463号に基づく優先権の利益を主張し、その全ては参照により本明細書に組み入れられる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、グルココルチコイド受容体、AP-1、および/またはNF-κB活性のとりわけ有効な調整剤であり、したがって肥満、糖尿病および炎症性疾患または免疫関連疾患などの疾患の処置に役立つ、一群の新しい非ステロイド化合物、ならびにこれらの疾患および関連疾患を処置するためにそのような化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
転写因子NF-κBおよびAP-1は、炎症応答および免疫応答の媒介に関与するいくつかの遺伝子の発現調節に関与する。NF-κBは、TNF-α、IL-1、IL-2、IL-6、接着分子(例えばE-セレクチン)およびケモカイン(例えばRantes)を含む遺伝子の転写を調節する。AP-1は、サイトカインTNF-α、IL-1、IL-2、ならびにマトリックスメタロプロテアーゼの産生を調節する。TNF-α(その発現がNF-κBとAP-1の両方によって調節される遺伝子)を標的とする薬物療法は、慢性関節リウマチおよびクローン病を含むいくつかの炎症性ヒト疾患に、著しく有効であることが示されている。したがってNF-κBおよびAP-1は、炎症性障害および免疫障害の開始および永続化に重要な役割を果たしている。Baldwin, AS, Journal of Clin. Investigation, 107, 3 (2001);Firestein, G.S.およびManning, A.M., Arthritis and Rheumatism, 41, 609 (1999);およびPeltz, G., Curr. Opin, in Biotech. 8, 467 (1997)を参照されたい。
【0004】
AP-1およびNF-κBの上流には多くのシグナリング分子(キナーゼおよびホスファターゼ)が存在し、それらは潜在的な治療薬標的である。キナーゼJNKは、AP-1複合体(fos/c-jun)を構成するサブユニットの一つであるc-junのリン酸化とそれに続く活性化の調節に、欠かすことのできない役割を果たす。JNKを阻害する化合物は、炎症性疾患の動物モデルで有効であることが示されている。Manning AMおよびDavis RJ, Nature Rev. Drug Disc, V.2, 554 (2003)を参照されたい。NF-κBの活性化に極めて重要なキナーゼは、IκBキナーゼ(IKK)である。このキナーゼは、IκBのリン酸化に重要な役割を果たす。IκBはひとたびリン酸化されると分解を起こし、それが、核内に移行して上述した遺伝子の転写を活性化することのできるNF-κBの放出につながる。IKKの阻害剤BMS-345541は、炎症性疾患の動物モデルで有効であることが示されている。Burke JR., Curr Opin Drug Discov Devel., Sep;6(5), 720-8, (2003)を参照されたい。
【0005】
グルココルチコイド受容体は、NF-κBおよびAP-1の活性化に関与するシグナリングカスケードを阻害することの他に、直接の物理的相互作用によってNF-κBおよびAP-1の活性を阻害することも示されている。グルココルチコイド受容体(GR)は、転写因子の核内ホルモン受容体ファミリーのメンバーであり、転写因子のステロイドホルモンファミリーのメンバーである。グルココルチコイド受容体タンパク質のアフィニティラベリングによって、受容体に対する抗体の産生が可能になり、それにより、グルココルチコイド受容体のクローニングが容易になった。ヒトでの結果については、Weinbergerら, Science 228, 640-742, (1985);Weinbergerら, Nature, 318, 670-672 (1986)を、またラットでの結果については、Miesfeld, R., Nature, 312, 779-781, (1985)を参照されたい。
【0006】
GRと相互作用するグルココルチコイドは、50年以上にわたって炎症性疾患の処置に使用されてきた。グルココルチコイドは、GRによる転写因子NF-κBおよびAP-1の阻害を介して、その抗炎症活性を発揮することが、明確に示されている。この阻害は転写抑制(transrepression)と呼ばれる。GRによるこれらの転写因子の阻害に関する主要な機序は、直接の物理的相互作用によるものであることが示されている。この相互作用は転写因子複合体を変化させて、NF-κBおよびAP-1の転写刺激能力を阻害する。Jonat, Cら, Cell, 62, 1189 (1990);Yang-Yen, H.F.ら, Cell, 62, 1205 (1990);Diamond, M.I.ら, Science 249, 1266 (1990);およびCaldenhoven, E.ら, Mol. Endocrinol, 9, 401 (1995)を参照されたい。GRによる共役活性化因子の隔離などといった他の機序も提案されている。Kamer Yら, Cell, 85, 403 (1996);およびChakravarti, D.ら, Nature, 383, 99 (1996)を参照されたい。
【0007】
グルココルチコイドとGRとの相互作用は、転写抑制を引き起こすことの他に、GRによる、ある種の遺伝子の転写の誘導を引き起こす場合もある。この転写の誘導は転写活性化(transactivation)と呼ばれる。転写活性化にはGRの二量体化およびグルココルチコイド応答配列(GRE)への結合が必要である。
【0008】
DNAを結合することができないトランスジェニックGR二量体化欠損マウスを使った最近の研究により、GRの転写活性化(DNA結合)活性はGRの転写抑制(非DNA結合)作用から分離できることが示されている。これらの研究は、DNA結合を必要としない転写抑制が炎症の抑制につながるのに対して、グルココルチコイド療法の副作用の多くは、代謝に関与するさまざまな遺伝子の転写を誘導するというGRの能力によるものであることも示している。Tuckermann, J.ら, Cell, 93, 531 (1998)およびReichardt, HM, EMBO J., 20, 7168 (2001)を参照されたい。
【0009】
本願出願人に譲渡された2004年1月29日公開のPCT出願WO 2004/009017(参照によりその全てが本明細書に組み入れられる)には、肥満、糖尿病および炎症性疾患または免疫関連疾患などの疾患の処置に有用な置換ビシクロオクタン化合物が記載されている。
【0010】
AP-1および/またはNFκB活性を調整する化合物は有用であるだろう。なぜなら、そのような化合物は、炎症性疾患および免疫疾患、ならびに変形性関節症、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、喘息、炎症性腸疾患、移植拒絶および移植片対宿主病などの障害の処置に役立つだろうからである。
【0011】
また、グルココルチコイド受容体経路に関して、グルココルチコイドは強力な抗炎症剤であるが、それらの全身使用は副作用によって制限されることも知られている。糖尿病、骨粗鬆症および緑内障などの副作用を最小限に抑えつつもグルココルチコイドの抗炎症効力を保っている化合物は、炎症性疾患を持つ極めて多数の患者にとって、著しく有益であるだろう。
【0012】
さらに、GRに関して、当技術分野では、転写活性化を拮抗する化合物も必要とされている。そのような化合物は、グルココルチコイドレベルの増加に関連する代謝性疾患、例えば糖尿病、骨粗鬆症および緑内障などの処置に役立ちうる。
【0013】
さらに、GRに関して、当技術分野では、転写活性化を引き起こす化合物も必要とされている。そのような化合物は、グルココルチコイドの不足に関連する代謝性疾患の処置に役立ちうる。そのような疾患には例えばアジソン病がある。
【0014】
また、GR、AP-1、および/またはNF-κB活性の既知の調整剤と比較して改善された活性を持つ新しい化合物も、必要とされている。また、例えば以下に挙げるような1以上のカテゴリー(ただしこれらに限定されるわけではない)で有利な改善された特徴を持つ化合物を見出すことも、望ましく、好ましい:(a)薬学的性質;(b)所要量;(c)血中濃度のピーク対トラフ(peak-to-trough)特性を軽減する因子;(d)受容体における活性薬の濃度を増加させる因子;(e)臨床的薬物間相互作用に対する寄与を低下させる因子;(f)有害副作用の可能性を低下させる因子;(g)製造コストまたは製造可能性を改善する因子、および(h)望ましい物理特性(例えば親水性と親油性の望ましいバランスを含む)をもたらす因子。
【発明の開示】
【0015】
(詳細な記載)
本発明は、グルココルチコイド受容体、AP-1、および/またはNF-κB活性のとりわけ有効な調整剤であり、したがって肥満、糖尿病および炎症性疾患または免疫関連疾患などの疾患の処置に役立つ、一群の新しい非ステロイド化合物に関する。また、医薬組成物ならびに肥満、糖尿病および炎症性疾患または免疫関連疾患を処置する方法も提供する。
【0016】
本発明によれば、式IまたはII:
【化1】

[式中、
Qは、N、O、およびSから選択される;
Yは、アリールまたはヘテロアリールである;
Zは、H、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、またはアルコキシである;
Rは、水素、アミノ、置換アミノ、シアノ、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アリールオキシアルキル、またはヒドロキシアリールである;
R1は、水素またはC1-4アルキルである;
R2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NHC(O)ReRf、NHCOg、NHCONReRf、NHSOpRg、-SO2NReRf、NReSO2NReRf、またはNReSOpRgである;
Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、アルキルオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NReRf、NHCORg、NHCONReRfまたはNHSO2Rgである;
Rbは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、アルキルオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NReRf、NHCORg、NHCONReRfまたはNHSO2Rgである;
RcおよびRdは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、NReRf、アリール、ヒドロキシ、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、ヒドロキシアリール、およびアリールオキシアルキルから独立して選択される;
ReおよびRfは、水素、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択される(ただし、ReおよびRfが両方ともアルコキシまたはアミノであることはないものとする)か、または
ReおよびRfは、それらが結合している窒素と共に全体として、N、OまたはSであることができる1、2または3個のヘテロ原子を含有する5員、6員または7員ヘテロアリールまたはシクロヘテロアルキル環を形成することができる;
Rgは、水素、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルから選択される;
A環は、飽和、部分飽和または不飽和6員炭素環式または複素環式環を表す;
B環は、飽和、部分飽和または不飽和6員炭素環式または複素環式環を表す]
の構造を持つ化合物(その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩を含む)が提供される。
【0017】
具体的に列挙するかどうかにかかわらず、本明細書に記載する好ましい化合物は全て、そのプロドラッグまたはその溶媒和物、ならびにその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩を包含する。好ましい化合物には、このすぐ下に列挙する項目(1)〜(16)に記述する化合物が含まれる。
【0018】
(1)A環が、構造:
【化2】

を持ち、B環が構造:
【化3】

を持ち[式中、X1、X2、X3およびX4は、CH、CH2、CHR15、CR16、CR16R17、N、NH、NR18、OおよびSから独立して選択され;X5、X6、X7およびX8は、CH、CH2、CHR19、CR20、CR20R21、N、NH、NR22、OおよびSから独立して選択される]、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21およびR22が、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびシクロヘテロアルキルから独立して選択され、前記A環および前記B環のそれぞれが、多くて二つの窒素環原子、多くて二つの酸素環原子および多くて一つの硫黄環原子を含有する、
上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0019】
(2)A環およびB環が炭素環式不飽和6員環である式を持つ、上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0020】
(3)Rが、Hまたはアルキルであり;
RaおよびRbが、水素、ハロゲン、アルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、ホルミル、CO2アルキル、CONReRfおよびCH2NReRfから独立して選択される、
上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0021】
(4)R2が、水素、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、シアノ、ニトロ、またはNH2であり;
Ra、RcおよびRdが、それぞれ水素である、
上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0022】
(5)Rが、C1-4アルキルであり;
Rbが、水素、ハロ、CN、NO2、NH2またはCHOである、
上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0023】
(6)式(IA):
【化4】

[式中、Zは、H、シクロアルキル、C2-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、またはアルコキシである]
の構造を持つ、上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0024】
(7)Rが、C1-4アルキルであり;
Zが、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環(各環は、R3から選択される1〜3個の基で置換される)であり、
R3が、出現位置ごとに独立して、
(i)Hもしくはハロ;または
(ii)アルキル、アルケニル、OR5、アリール、およびヘテロアリール(これらの各基は、R4から選択される1〜2個の基で置換される)
であり、
R4が、H、フェニル、S(O)2R5、NHC(O)R5、N(R5)2であり;
R5が、出現位置ごとに独立して、HまたはC1-4アルキルであり;
Rbが、シアノまたはニトロである、
上に定義した項目(6)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0025】
(8)Zが、
【化5】

【化6】

から選択される、
上に定義した項目(6)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0026】
(9)式(IIA):
【化7】

[式中、Yは、アリールまたはヘテロアリールである]
の構造を持つ、上に定義した式IまたはIIの範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0027】
(10)Rが、C1-4アルキルであり;
Qが、SまたはNHである、
上に定義した項目(9)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0028】
(11)Yが、フェニルまたはピリジル環(これらの各基はR6から選択される1〜3個の基で置換される)であり;
R6が、H、アミノアルキル、またはアルコキシであり;
Rbが、ニトロである、
上に定義した項目(9)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0029】
(12)Yが、
【化8】

から選択される、
上に定義した項目(9)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0030】
(13)Rがメチルであり、QがSである、上に定義した項目(9)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0031】
(14)Rがメチルであり、QがNHである、上に定義した項目(9)の範囲に包含される化合物、その立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【0032】
上述した好ましい実施形態の諸態様(個々の可変部または可変部群を含む)で、他の実施形態の関連する態様を置き換えることにより、本発明の他の好ましい実施形態を形成させることができる。
【0033】
本発明のもう一つの実施形態では、内分泌障害、リウマチ障害、膠原病、皮膚病、アレルギー疾患、眼疾患、呼吸器疾患、血液疾患、胃腸疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、糖尿病、肥満、および新生物疾患の処置ならびに本明細書に記載する他の用途に有用な医薬組成物であって、治療有効量(用途に依存)の本発明の式(IまたはII)の化合物と、医薬的に許容できる担体とを含む組成物が提供される。
【0034】
さらにもう一つの実施形態として、本発明は、内分泌障害、リウマチ障害、膠原病、皮膚病、アレルギー疾患、眼疾患、呼吸器疾患、血液疾患、胃腸疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、糖尿病、肥満、および新生物疾患、すなわち、グルココルチコイド受容体によってその転写が刺激または抑制される遺伝子の発現産物に関連する疾患、またはAP-1および/もしくはNF-κB(とくにAP-1)誘導性転写に関連する疾患、またはAP-1および/もしくはNFκB(特にAP-1)依存性遺伝子発現に関連する疾患を処置する方法であって、疾患が、AP-1および/またはNF-κB(特にAP-1)の調節制御を受ける遺伝子の発現に関連し(炎症性疾患および免疫疾患ならびに後述する障害を含む)、治療有効量の本発明の式(IまたはII)の化合物を、患者に投与するステップを含む方法を提供する。
【0035】
本発明のもう一つの実施形態は、グルココルチコイド受容体によってその転写が刺激または抑制される遺伝子の発現産物に関連する疾患もしくは障害を処置する方法、またはAP-1および/もしくはNF-κB(特にAp-1)誘導性転写に関連する疾患もしくは障害を処置する方法、またはAP-1および/もしくはNF-κB(特にAP-1)依存性遺伝子発現に関連する疾患または障害を処置する方法であって、疾患が、AP-1および/またはNF-κB(特にAP-1)の調節制御を受ける遺伝子の発現に関連する(例えば炎症性障害および免疫障害、癌および腫瘍障害、例えば固形腫瘍、リンパ腫および白血病、ならびに真菌感染症、例えば菌状息肉腫である)方法に関わる。
【0036】
本明細書で使用する「GR転写活性化に関連する疾患」という用語は、その転写がGRによる転写活性化を受ける遺伝子の転写産物に関連する疾患を指す。そのような疾患には、例えば骨粗鬆症、糖尿病、緑内障、筋減少、顔面腫脹、人格変化、高血圧、肥満、うつ病、およびAIDS、創傷治癒の状態、一次性または二次性副腎皮質不全、およびアジソン病などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0037】
本明細書で使用する用語「処置」(treat、treating、treatment)は、どの文法的形式でも、ある疾患、障害、または状態の予防、低減、または改善、部分的なもしくは完全な軽減、または治癒を指し、この場合、予防とは、そのような疾患、障害または状態を発達させる危険がある人の処置を示す。
【0038】
本明細書で使用する「グルココルチコイド受容体」および「GR」という用語は、グルココルチコイドを結合して転写を刺激または抑制する転写因子の核内ホルモン受容体(「NHR」)ファミリーのメンバーを指すか、またはGR-βを指す。本明細書で使用するこれらの用語は、任意の供給源に由来するグルココルチコイド受容体を指し、限定するわけではないが、以下に挙げるものを包含する:ヒトグルココルチコイド受容体(Weinbergerら Science 228, p640-742 (1985)およびWeinbergerら Nature, 318, p670-672 (1986)に開示されているもの);ラットグルココルチコイド受容体(Miesfeld, R. Nature, 312, p779-781 (1985)に開示されているもの);マウスグルココルチコイド受容体(Danielson, M.ら EMBO J., 5, 2513に開示されているもの);ヒツジグルココルチコイド受容体(Yang, K.ら J. Mol. Endocrinol. 8, p173-180 (1992)に開示されているもの);マーモセットグルココルチコイド受容体(Brandon, D.D.ら, J. Mol. Endocrinol. 7, p89-96 (1991)に開示されているもの);およびヒトGR-β(Hollenberg, SM.ら Nature, 318, p635, 1985、Bamberger, CM.ら J. Clin Invest. 95, p2435 (1995)に開示されているもの)。
【0039】
本明細書で使用する「AP-1および/またはNF-κBに関連する疾患または障害」という用語は、AP-1および/またはNF-κBの調節制御を受ける遺伝子の発現産物に関連する疾患を指す。そのような疾患には、例えば炎症性および免疫性の疾患および障害;癌および腫瘍障害、例えば固形腫瘍、リンパ腫および白血病;ならびに真菌感染症、例えば菌状息肉腫などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0040】
「炎症性または免疫関連性の疾患または障害」という用語は、本明細書においては、炎症成分または免疫成分を持つ任意の状態、疾患、または障害を包含するために用いられ、以下に挙げる状態のそれぞれを包含するが、これらに限定されるわけではない:移植拒絶(例えば腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(例えば島細胞)、骨髄、角膜、小腸、皮膚アログラフト、皮膚ホモグラフト(例えば熱傷の処置に使用されるもの)、心臓弁異種移植片、血清病、および移植片対宿主病)、自己免疫疾患、例えば慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、I型およびII型糖尿病、若年性糖尿病、肥満、喘息、炎症性腸疾患(例えばクローン病および潰瘍性大腸炎)、壊疽性膿皮症、狼蒼(全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症、乾癬、皮膚炎、皮膚筋炎;湿疹、脂漏、肺炎症、眼のぶどう膜炎、肝炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット症候群またはシェーグレン症候群(眼球乾燥/口内乾燥)、悪性貧血または免疫性溶血性貧血、アテローム性動脈硬化、アジソン病(副腎の自己免疫疾患)、特発性副腎不全、多腺性自己免疫疾患(多腺性自己免疫症候群とも呼ばれる)、糸球体腎炎、強皮症、モルヘア、扁平苔癬、白斑(皮膚の色素脱失)、円形脱毛症、自己免疫性脱毛症、自己免疫性下垂体機能低下症、ギラン・バレー症候群、および肺胞炎;T細胞媒介性過敏性疾患、例えば接触過敏症、遅延型過敏症、接触皮膚炎(ツタウルシによるものを含む)、じんま疹、皮膚アレルギー、呼吸器アレルギー(枯草熱、アレルギー性鼻炎)およびグルテン過敏性腸症(セリアック病)など;炎症性疾患、例えば変形性関節症、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸窮迫症候群、セザリー症候群、ならびに炎症成分および/または増殖成分を持つ血管疾患、例えば再狭窄、狭窄およびアテローム性動脈硬化(artherosclerosis)。炎症性または免疫関連性の疾患または障害には、以下に挙げるものも含まれるが、これらに限定されるわけではない:内分泌障害、リウマチ障害、膠原病、皮膚病、アレルギー疾患、眼疾患、呼吸器疾患、血液疾患、胃腸疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、先天性副腎皮質過形成、非化膿性甲状腺炎、癌に関連する高カルシウム血症、若年性慢性関節リウマチ、強直性脊柱炎、急性および亜急性滑液包炎、急性非特異性腱鞘炎、急性通風性関節炎、外傷後変形性関節症、変形性関節症の滑膜炎、上顆炎、急性リウマチ性心臓炎、天疱瘡、水胞性疱疹状皮膚炎、重症多形紅斑、剥脱性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、季節性または通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬物過敏症反応、アレルギー性結膜炎、角膜炎、眼部帯状ヘルペス、虹彩炎および虹彩毛様体炎、脈絡網膜炎、視神経炎、症候性サルコイドーシス、劇症または播種性肺結核化学療法、成人の特発性血小板減少性紫斑病、成人の二次性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、成人の白血病およびリンパ腫、小児急性白血病、限局性腸炎、自己免疫性脈管炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、固形臓器移植拒絶、敗血症。好ましい処置には、移植拒絶、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬および慢性肺疾患の処置が含まれる。
【0041】
さらにまた、本発明によれば、AP-1誘導性および/またはNF-κB誘導性転写(特にAP-1誘導性転写)に関連する疾患を処置する方法であって、AP-1誘導性および/またはNF-κB誘導性転写(特にAP-1誘導性転写)のNHR転写抑制を誘導し、その結果としてその疾患を処置するために、その疾患にかかる危険がある患者に、本発明の式(IまたはII)の化合物を治療有効量で投与する方法も提供される。
【0042】
本方法では、他の治療剤(例えば後述するもの)を本発明の化合物と一緒に使用することができる。本発明の方法では、そのような他の治療剤を、本発明の化合物の投与に先だって投与するか、本発明の化合物の投与と同時に投与するか、本発明の化合物の投与後に投与することができる。
【0043】
特定の実施形態では、本発明の化合物が、上述した代表的障害の処置に、その病因にかかわらず(例えば移植拒絶、慢性関節リウマチ、炎症性腸疾患、およびウイルス感染症などの処置に)役立つ。
【0044】
(製造方法)
本発明の化合物は、有機化学分野の当業者が利用することのできる多くの方法によって合成することができる。本発明の化合物を製造するための本発明による一般合成スキームを以下に説明する。これらのスキームは例示であって、本明細書に開示する化合物を製造するために当業者が使用することのできる実行可能な技法を限定しようとするものではない。本発明の化合物を製造するための異なる方法は当業者には明白であるだろう。また、合成時のさまざまなステップは、所望の化合物または化合物群を得るために、別の順序で行ってもよい。一般スキームで説明する方法によって製造される本発明の化合物の例を、後述の製造例および実施例に記載する。
【0045】
式(I)の化合物
本発明の式Iの化合物は、以下のスキームおよび実施例で説明するように製造される。以下のスキームにおいて、種々の基A、B、R1、R2、R3は上述したものに相当する。
【0046】
スキーム1
【化9】

式Iの化合物を合成するための典型的な方法をスキーム1に図解する。アミノトリアゾール類は、エステルを市販のアミノグアニジンと反応させることによって製造した。Naitoら J. Med. Chem. 39(15), 3027, (1996)参照。トリアゾール類と酸2[WO 04009017に記述されているように製造したもの]とのカップリングは、当業者によく知られている数多くのアミド化法の一つによって(例えば1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、N-エチル-N,N-ジイソプロピルアミンおよび1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDCI)ならびに溶媒としての無水アセトニトリルを使って)行うことができる。このカップリングによって環アシル化生成物3が得られ、これを、アルゴン下で加熱するか、NaHで処理することによって、式Iの化合物に異性化させることができる。本発明のエステルは市販されているか、当技術分野で知られている手法(Larock, R.C.「Comprehensive Organic Transformations」第2版, VCH Publishers, Inc. (1999)に詳述されている手法を含む)を使って製造することができる。
【0047】
スキーム2
【化10】

式Iの化合物を製造するもう一つの方法をスキーム2に示す。酸2を塩化オキサリルまたはジフェニルホスホリルアジドで活性化し、S-メチルイソチオ尿素と反応させることにより、アシルイソチオ尿素4を得る。変法を使ってアシルイソチオ尿素4をヒドラジドと反応させると、式Iの化合物が得られる。Demirayakら, Eur. J. Med. Chem. 35, 1037-1040, (2000)参照。
【0048】
式(II)の化合物
本発明の式(II)の化合物は以下のスキームおよび実施例で説明するように製造される。以下のスキームにおいて、種々の基A、B、Q、Y、R1、R2、Ra、Rb、Rc、Rdは、式(II)について上述したものに相当する。
【0049】
スキームC
【化11】

スキームCに示すように、化合物2(WO04009017に従って製造)を、当業者によく知られている数多くのアミド化法の一つ(例えば化合物2を、アセトニトリルなどの適当な溶媒中で、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)、1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール、トリエチルアミンおよびアミン5で処理する方法など)でアミン5と反応させることにより、本発明の式(II)の化合物を得ることができる。
【0050】
スキームD
【化12】

あるいは、スキームDに図解するように、当業者によく知られている数多くのアミド化法の一つで、化合物2とアミン6(式中、Xはハロゲンまたはトリフラートである)とのカップリング反応を行って化合物7を得ることにより、式(II)の化合物を製造することもできる。化合物7は、当業者によく知られている数多くの方法の一つ(例えば化合物7および化合物8を、水とTHFまたはDMFとの混合溶媒中またはトルエン中、触媒量のPd(0)、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)の存在下に、60〜200℃の温度で、通常加熱またはマイクロ波照射下に、K3PO4またはNa2CO3などの塩基で処理する方法など)を使って、式8の化合物との鈴木カップリング反応を行うことにより、本発明の式IIの化合物に変換することができる(式中、Yはアリールまたはヘテロアリールであり、R3はHまたは低級アルキルである)。
【0051】
(用語の定義)
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルキル」「アルキル」または「alk」という用語は、ノルマル鎖(normal chain)中に1〜20個の炭素、好ましくは1〜10個の炭素、より好ましくは1〜8個の炭素を含有する直鎖および分枝鎖炭化水素をどちらも包含し、要すれば、ノルマル鎖中に酸素または窒素を含んでもよい。そのような鎖の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、イソヘキシル、ヘプチル、4,4-ジメチルペンチル、オクチル、2,2,4-トリメチルペンチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、それらのさまざまな分枝鎖異性体などの基、ならびに1〜4個の置換基(例えばハロ(F、Br、ClまたはIを含む)、CF3、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、アリール(アリール)またはジアリール、アリールアルキル、アリールアルキルオキシ、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキルオキシ、アミノ、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アシル、ヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、HO-N=、シクロヘテロアルキル、アルキルオキシカルボニル、アルコキシオキシミル(alkoxyoximyl)、アリールヘテロアリール、アリールアルコキシカルボニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルコキシ、アリールオキシアルキル、アリールオキシアリール、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、ヒドロキシアルキル(アルキル)アミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、ハロアルキル、トリハロアルキルおよび/またはアルキルチオおよび/またはアリール用置換基のいずれか)を含むそのような基が挙げられる。
【0052】
記号「C」の後ろに数字が下付きで示されている場合、その下付き文字は、その基が含有しうる炭素原子の数を、より具体的に定義している。下付き文字「0」は結合を表す。例えば「アリールアルキル」のように、「アルキル」という用語が別の基と一緒に使用される場合、この連係は、アルキルが含有するであろう置換基の少なくとも一つを、より具体的に定義している。例えば「アリールアルキル」または「(アリール)アルキル」は、置換基の少なくとも一つがアリール(例えばベンジル)であるような上に定義したアルキル基を指す。また、「アリール(C0-4)アルキル」という用語は、少なくとも一つのアリール置換基を持つ低級アルキルを包含すると共に、別の基に直接結合したアリール(すなわちアリール(C0)アルキル)も包含する。
【0053】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「シクロアルキル」という用語は、1〜3個の環を含有する飽和環状炭化水素基(単環式アルキル、二環式アルキルおよび三環式アルキルを含む)であって、その環を形成する炭素を全部で3〜20個、好ましくは3〜10個含有し、1または2個の芳香環(以下に定義)に縮合していてもよいものを包含する。したがって「シクロアルキル」という用語は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロデシルおよびシクロドデシル、シクロヘキセニル、
【化13】

などの基、ならびに1〜4個の置換基(例えばハロゲン、アルキル、アルコキシ、ヒドロキシ、アリール、アリールオキシ、アリールアルキル、シクロアルキル、アルキルアミド、アルカノイルアミノ、オキソ、アシル、アリールカルボニルアミノ、アミノ、ニトロ、シアノ、チオールおよび/またはアルキルチオ、および/またはアルキル用置換基のいずれか)を含むそのような基を包含する。
【0054】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「シクロアルケニル」という用語は、3〜12個の炭素(好ましくは5〜10個の炭素)と、1個または2個の二重結合とを含有する環状炭化水素を指す。代表的なシクロアルケニル基には、例えばシクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、シクロヘキサジエニル、およびシクロヘプタジエニルなどがあり、それらは、要すれば、シクロアルキルについて定義したように置換されていてもよい。
【0055】
本明細書で使用する「シクロアルキレン」という用語は、遊離の結合を含む「シクロアルキル」を指し、したがって例えば
【化14】

などの連結基であって、要すれば、「シクロアルキル」について上に定義したように置換されていてもよい。
【0056】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「アルカノイル」という用語は、カルボニル基に連結されたアルキルを指す。
【0057】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルケニル」または「アルケニル」という用語は、ノルマル鎖中に1〜6個の二重結合を含む、ノルマル鎖中の炭素数が2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは1〜8である直鎖または分枝鎖基を指し、要すれば、ノルマル鎖中に酸素または窒素を含んでもよい。したがって「低級アルケニル」または「アルケニル」という用語は、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル、4,8,12-テトラデカトリエニルなどの基、ならびに1〜4個の置換基(例えばハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アミノ、ヒドロキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、アルカノイルアミノ、アルキルアミド、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、アルキルチオおよび/または本明細書に記載するアルキル用置換基のいずれか)を含むそのような基を包含する。
【0058】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルキニル」または「アルキニル」という用語は、ノルマル鎖中に一つの三重結合を含む、ノルマル鎖中の炭素数が2〜20、好ましくは2〜12、より好ましくは2〜8である直鎖または分枝鎖基を指し、要すれば、ノルマル鎖中に酸素または窒素を含んでもよい。したがって「低級アルキニル」または「アルキニル」という用語は、2-プロピニル、3-ブチニル、2-ブチニル、4-ペンチニル、3-ペンチニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、2-ヘプチニル、3-ヘプチニル、4-ヘプチニル、3-オクチニル、3-ノニニル、4-デシニル、3-ウンデシニル、4-ドデシニルなどの基、ならびに1〜4個の置換基(例えばハロゲン、ハロアルキル、アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アミノ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヒドロキシ、アルカノイルアミノ、アルキルアミド、アリールカルボニルアミノ、ニトロ、シアノ、チオール、および/またはアルキルチオ、および/または本明細書に記載するアルキル用置換基のいずれか)を含むそのような基を包含する。
【0059】
単独でまたは別の基の一部として使用する「アリールアルケニル」および「アリールアルキニル」という用語は、アリール置換基を持つ上述のアルケニル基およびアルキニル基を指す。
【0060】
「アルキレン」という用語は、1〜12個の炭素原子、好ましくは1〜8個の炭素原子を持つ二価の直鎖または分枝鎖炭化水素基、例えば{-CH2-}n(式中、nは1〜12、好ましくは1〜8である)を指す。「メチレン」などの低級アルキレン基、すなわち炭素原子数1〜4のアルキレン基は、最も好ましい。「アルケニレン」および「アルキニレン」という用語は、それぞれ、上に定義したアルケニル基およびアルキニル基の二価の基を指す。置換アルケニル、アルキニル、アルキレン、アルケニレン、またはアルキニレン基に言及する場合、これらの基は、置換アルキル基について上に定義した1〜3個の置換基で置換される。
【0061】
上に定義したアルケニル基および上に定義したアルキニル基が、それぞれ、取り付けるための単結合を二つの異なる炭素原子に持つ場合、それらは、それぞれ「アルケニレン基」および「アルキニレン基」と呼ばれ、要すれば、「アルケニル」および「アルキニル」について上に定義したように置換されていてもよい。
【0062】
(CH2)pおよび(CH2)qは、本明細書で定義するアルキレン、アレニル、アルケニレンまたはアルキニレン基を包含し、これらはそれぞれ、要すれば、ノルマル鎖中に酸素または窒素を含んでもよく、要すれば、アルキル、アルケニル、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、チオアルキル、ケト、C3-C6シクロアルキル、アルキルカルボニルアミノまたはアルキルカルボニルオキシを含む1、2、または3個の置換基を含んでもよい。またアルキル置換基は、(CH2)pまたは(CH2)q基中の1個または2個の炭素に取り付けられてそれと共にシクロアルキル基を形成しうる炭素数1〜4のアルキレン部分であってもよい。
【0063】
(CH2)p、(CH2)q、アルキレン、アルケニレンおよびアルキニレンの例には、
【化15】

などがある。
【0064】
本明細書において単独でまたは別の基の一部(例えばCF3はハロアルキル基である)として使用する「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、塩素、臭素、フッ素、およびヨウ素を指し、塩素、フッ素または臭素は好ましい。
【0065】
「金属イオン」という用語は、ナトリウム、カリウムまたはリチウムなどのアルカリ金属イオン、マグネシウムおよびカルシウムなどのアルカリ土類金属イオン、ならびに亜鉛およびアルミニウムを指す。
【0066】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「アリール」という用語は、環部分に6〜10個の炭素を含有する単環式および二環式芳香族基(例えばフェニルまたはナフチル(1-ナフチルおよび2-ナフチルを含む))を指し、要すれば、炭素環式環または複素環式環(例えばアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはシクロヘテロアルキル環)に縮合した1〜3個の追加の環を含んでもよい。したがって「アリール」という用語は、例えば
【化16】

を包含し、要すれば、水素、ハロ、ハロアルキル、アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、アルケニル、トリフルオロメチル、トリフルオロメトキシ、アルキニル、シクロアルキル-アルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、アリールオキシ、アリールオキシアルキル、アリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アリールカルボニル、アリールアルケニル、アミノカルボニルアリール、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールアゾ、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールヘテロアリール、ヘテロアリールオキシ、ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、アミノ、置換アミノ(この場合、アミノは1個または2個の置換基(これはアルキル、アリール、またはこの定義で言及する他のアリール化合物のいずれかである)を含む)、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アリールチオアルキル、アルコキシアリールチオ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルキルカルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アリールスルフィニル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアミノまたはアリールスルホンアミノカルボニル、カルボキシ、シクロアルキル、アリールアルコキシ、アリールオキシカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアルキルアミノカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルコキシアルキルアミノカルボニル、ヘテロアリールアミノカルボニル、ヘテロアリールアルキルアミノカルボニル、アリールアルキルアミノカルボニル、N-ヒドロキシアルキル(N-アルキル)アミノカルボニル、シクロヘテロアルキルアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルアルキルアミノカルボニル、N-アリール(N-アルキル)アミノカルボニル、N-アリールアルキル(N-シアノアルキル)アミノカルボニル、ジアルキルアミノアルキルアミノカルボニル、ジアルキルアミノカルボニル、アルキル-、アリールアルキル-またはアリール-シクロヘテロアルキルアミノカルボニル、N-ジアルキルアミノアルキル(N-アルキルまたはN-アリールアルキル)アミノカルボニル、N-ヘテロアリールアルキル(N-アルキル)アミノカルボニル、N-アリールアルキル(N-アルキル)アミノカルボニル、N-ジアルキルアミノ(N-アリールアルキル)アミノカルボニル、N-ヒドロキシアルキル(N-アリールアルキル)アミノカルボニル、アミノアルキルオキシカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、N=N=N、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、ヘテロアリールアミノスルホニル、および/または本明細書に記載するアルキル用置換基のいずれかから選択される1、2または3個の基で、利用可能な炭素原子を介して置換されていてもよい。
【0067】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルコキシ」「アルコキシ」「アリールオキシ」または「アラルコキシ」という用語は、酸素原子に連結された上記アルキル、アラルキルまたはアリール基のいずれをも包含する。
【0068】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「置換アミノ」という用語は、1個の置換基または同じであっても異なってもよい2個の置換基(例えばアルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ハロアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキルまたはチオアルキル)で置換されたアミノを指す。これらの置換基は、要すれば、カルボン酸および/または上述したアルキル用置換基のいずれかで、さらに置換されていてもよい。また、アミノ置換基は、それらが結合している窒素原子と共に全体として、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、1-アゼピニル、4-モルホリニル、4-チアモルホリニル、1-ピペラジニル、4-アルキル-1-ピペラジニル、4-アリールアルキル-1-ピペラジニル、4-ジアリールアルキル-1-ピペラジニル、1-ピロリジニル、1-ピペリジニル、または1-アゼピニル(これらは、アルキル、アルコキシ、アルキルチオ、ハロ、トリフルオロメチルもしくはヒドロキシで置換されていてもよい)を形成してもよい。
【0069】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルキルチオ」「アルキルチオ」「アリールチオ」または「アラルキルチオ」という用語は、硫黄原子に連結された上記アルキル、アラルキルまたはアリール基のいずれをも包含する。
【0070】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「アシル」という用語は、本明細書の定義では、カルボニル
【化17】

基に連結される有機基を指す。カルボニルに取り付けられたR基、例えばアルカノイル、アルケノイル、アロイル、アラルカノイル、ヘテロアロイル、シクロアルカノイル、シクロヘテロアルカノイルなどは、いずれもアシル基の例である。
【0071】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「低級アルキルアミノ」「アルキルアミノ」「アシルアミノ」「アリールアミノ」または「アリールアルキルアミノ」という用語は、窒素原子に連結された上記アルキル、アリール、アリールアルキル、またはアシル基のいずれをも包含する。「アシルアミノ」という用語は、例えば、基-NHC(O)アルキルを包含する。
【0072】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「シクロヘテロアルキル」という用語は、炭素原子またはヘテロ原子によって(可能な場合は、要すれば、リンカー(CH2)p(式中、pは0、1、2または3である)を介して)連結された、1個または2個のヘテロ原子(例えば窒素、酸素および/または硫黄)を含む5員、6員または7員の飽和または部分不飽和環、例えば
【化18】

などを指す。上記の基は、1〜4個の置換基(例えばアルキル、ハロ、オキソおよび/または本明細書に記載するアルキル用またはアリール用置換基のいずれか)を含んでもよい。また、シクロヘテロアルキル環はいずれも、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはシクロヘテロアルキル環に縮合させることができる。
【0073】
別段の表示がない限り、本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「ヘテロアリール」という用語は、炭素原子またはヘテロ原子によって(可能な場合は、要すれば、リンカー(CH2)q(式中、qは0、1、2または3である)を介して)連結された、1、2、3または4個のヘテロ原子(例えば窒素、酸素または硫黄)を含む5員、6員または7員芳香環、およびアリール、シクロアルキル、ヘテロアリールまたはシクロヘテロアルキル環に縮合しているそのような環(例えばベンゾチオフェニル、インドリル)を指し、考えうるN-オキシドを包含する。ヘテロアリール基は、要すれば、1〜4個の置換基(例えば上述したアルキル用またはアリール用置換基のいずれか)を含んでもよい。ヘテロアリール基の例には、以下に挙げるものがある:
【化19】

など。
【0074】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「シクロヘテロアルキルアルキル」という用語は、(CH2)p鎖にC原子またはヘテロ原子によって連結された、上に定義したシクロヘテロアルキル基を指す。
【0075】
本明細書において単独でまたは別の基の一部として使用する「ヘテロアリールアルキル」または「ヘテロアリールアルケニル」という用語は、上に定義した-(CH2)q-鎖、アルキレンまたはアルケニレンにC原子またはヘテロ原子によって連結された、上に定義したヘテロアリール基を指す。
【0076】
本明細書で使用する「ポリハロアルキル」という用語は、2〜9個(好ましくは2〜5個)のハロ置換基(例えばFまたはCl、好ましくはF)を含む、上に定義した「アルキル」基(例えばCF3CH2、CF3またはCF3CF2CH2)を指す。
【0077】
本明細書で使用する「ポリハロアルキルオキシ」という用語は、2〜9個(好ましくは2〜5個)のハロ置換基(例えばFまたはCl、好ましくはF)を含む、上に定義した「アルコキシ」または「アルキルオキシ」基(例えばCF3CH2O、CF3OまたはCF3CF2CH2O)を指す。
【0078】
化学構造の環内に円を使用することによって芳香族系を表す。したがって、本明細書において、基
【化20】

は、例えば
【化21】

などの互変異性体を含む5員芳香族トリアゾール系であり、基
【化22】

は5員環であって、例えばQ=S、NHまたはOである場合、その環は、それぞれチアゾール、イミダゾールおよびオキサゾールであり、好ましくはチアゾールまたはイミダゾールである(これらの各環は要すれば置換されていてもよい)。
【0079】
「プロドラッグ」という用語は、対象に投与された時に、代謝過程または化学的過程による化学変換を起こして、式(IまたはII)の化合物および/またはその塩および/またはその溶媒和物を与える化合物を表す。例えば、カルボキシ基を含有する化合物は、体内で加水分解されて式(IまたはII)の化合物そのものを与えることによりプロドラッグとして役立つ生理的に加水分解可能なエステルを形成することができる。そのようなプロドラッグは、好ましくは、経口投与される。というのも、多くの場合、加水分解は主として消化酵素の影響を受けて起こるからである。エステルそのものが活性である場合、または加水分解が血液中で起こる場合には、非経口投与を使用することができる。式(IまたはII)の化合物の生理的に加水分解可能なエステルの例には、C1-6アルキルベンジル、4-メトキシベンジル、インダニル、フタリル、メトキシメチル、C1-6アルカノイルオキシ-C1-6アルキル、例えばアセトキシメチル、ピバロイルオキシメチルまたはプロピオニルオキシメチル、C1-6アルコキシカルボニルオキシ-C1-6アルキル、例えばメトキシカルボニル-オキシメチルまたはエトキシカルボニルオキシメチル、グリシルオキシメチル、フェニルグリシルオキシメチル、(5-メチル-2-オキソ-1,3-ジオキソレン-4-イル)-メチル、ならびに例えばペニシリン技術およびセファロスポリン技術などで使用されている他の周知の生理的に加水分解可能なエステルなどがある。
【0080】
プロドラッグエステルの例として、以下の基が挙げられる:
(1-アルカノイルオキシ)アルキル、例えば
【化23】

[式中、Rz、RtおよびRyは、H、アルキル、アリールまたはアリールアルキルである;ただし、RzOがHOであることはできない]。
【0081】
そのようなプロドラッグエステルの例には、
【化24】

などがある。
【0082】
適切なプロドラッグエステルの他の例には、
【化25】

[式中、Rzは、H、アルキル(例えばメチルまたはt-ブチル)、アリールアルキル(例えばベンジル)またはアリール(例えばフェニル)であることができ;Rvは、H、アルキル、ハロゲンまたはアルコキシであり、Ruは、アルキル、アリール、アリールアルキルまたはアルコキシルであり、n1は、0、1または2である]
などがある。
【0083】
プロドラッグ誘導体のさらなる例については、
a)「Design of Prodrugs」H. Bundgaard編(Elsevier, 1985)およびMethods in Enzymology, Vol.112, pp.309-396, K. Widderら編(Academic Press, 1985);
b)「A Textbook of Drug Design and Development」Krosgaard-LarsenおよびH. Bundgaard編, 第5章「Design and Application of Prodrugs」H. Bundgaard著, pp.113-191 (1991);ならびに
c)H. Bundgaard, Advanced Drug Delivery Reviews, 8, 1-38 (1992)
を参照されたい。
【0084】
互変異性体という用語は、互変異性型で存在しうる式(IまたはII)の化合物およびその塩を指し、互変異性型では、水素原子がその分子の他の部分に転位し、その結果、その分子の原子間の化学結合が再編成される。全ての互変異性型は、それらが存在しうる限り、本発明に包含されると理解すべきである。
【0085】
医薬的に許容できる「塩」(saltおよびsalts)という用語は、無機塩基および有機塩基によって形成される塩基性塩を指す。そのような塩には、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えばリチウム、ナトリウムおよびカリウム塩(これらは好ましい);アルカリ土類金属塩、例えばカルシウムおよびマグネシウム塩;有機塩基との塩、例えばアミン様の塩(例えばジシクロヘキシルアミン塩、ベンザチン、N-メチル-D-グルカミン、およびヒドラバミン塩);および例えばアルギニン、リジンのようなアミノ酸との塩;および両性イオン、いわゆる「分子内塩」などがある。無毒性の医薬的に許容できる塩は好ましいが、他の塩も、例えば生成物の単離または精製などに役立つ。
【0086】
医薬的に許容できる「塩」という用語は、酸付加塩も包含する。これらは、例えば、強い無機酸、例えば鉱酸(例:硫酸、リン酸またはHClもしくはHBrなどのハロゲン化水素酸)によって形成されるか、強い有機カルボン酸、例えば1〜4個の炭素原子を持ち、無置換であるか、またはハロゲンなどで置換されている、アルカンカルボン酸(例:酢酸)、例えば飽和または不飽和ジカルボン酸、例えばシュウ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸またはテレフタル酸、例えばヒドロキシカルボン酸、例えばアスコルビン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸またはクエン酸、例えばアミノ酸(例えばアスパラギン酸またはグルタミン酸またはリジンまたはアルギン)、または安息香酸によって形成されるか、有機スルホン酸、例えば無置換であるか、またはハロゲンなどによって置換された、(C1-C4)アルキルまたはアリールスルホン酸、例えばメタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などによって形成される。
【0087】
本発明の化合物の立体異性体は全て、混合物の形態にあるもの、または純粋なもしくは実質的に純粋な形態にあるものが予想される。本発明の化合物は、どの炭素原子(R置換基の任意の炭素原子を含む)にも、不斉中心を持ちうる。したがって、式IまたはIIの化合物は、エナンチオマーもしくはジアステレオマーの形態で存在するか、その混合物として存在することができる。製造工程には、出発物質として、ラセミ体、エナンチオマーまたはジアステレオマーを利用することができる。ジアステレオマー生成物またはエナンチオマー生成物を製造する場合は、それらを、例えばクロマトグラフィーまたは分別結晶などの、通常の方法によって分離することができる。
【0088】
本発明の化合物は遊離型または溶媒和物(例えば水和物)型であることができる。
【0089】
(組み合わせ)
所望であれば、式IまたはIIの化合物を、1以上の他のタイプの治療剤、例えば免疫抑制薬、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、抗血管過剰増殖剤、抗うつ剤、血中脂質降下剤または脂質低下剤または脂質調整剤、抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高血圧剤、血小板凝集阻害剤、および/または抗骨粗鬆症剤などと、組み合わせて使用することができ、それら他のタイプの治療剤は、同じ剤形で経口投与するか、別個の経口剤形で投与するか、または注射によって投与することができる。
【0090】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる免疫抑制薬には、シクロスポリン類、例えばシクロスポリンA、ミコフェノレート、インターフェロン-β、デオキシスペルゴリン(deoxyspergolin)、FK-506または抗IL-2などがある。
【0091】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗癌剤には、アザチプリン(azathiprine)、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、シスプラチン、メトトレキサート、チオテパ、カルボプラチンなどがある。
【0092】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗ウイルス剤には、アバカビル、アシクロビル、ガンシクロビル、ジダノシン(zidanocin)、ビダラビンなどがある。
【0093】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗炎症剤には、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)類、例えばイブプロフェン、cox-2阻害剤、例えばセレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、ナプロキセン、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、ピロキシカム、ステロイド類、例えばプレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、二酢酸トリアムシノロン、金化合物、例えば金チオリンゴ酸ナトリウム、TNF-α阻害剤、例えばテニダップ、抗TNF抗体または可溶性TNF受容体、およびラパマイシン(シロリムスまたはラパミューン(Rapamune))またはその誘導体、インフリキシマブ(レミケード(Remicade(登録商標)), Centocor, Inc.)、CTLA-4Ig、LEA29Y、抗体、例えば抗ICAM-3、抗IL-2受容体(抗Tac)、抗CD45RB、抗CD2、抗CD3(OKT-3)、抗CD4、抗CD80、抗CD86、モノクローナル抗体OKT3、CD40とCD154(別名「gp39」)の間の相互作用を遮断する薬剤、例えばCD40および/またはCD154に特異的な抗体、融合タンパク質、例えばエタネルセプト、CD40および/またはCD154gp39から構築される融合タンパク質(例:CD40IgおよびCD8gp39)、NF-κB機能の阻害剤、例えば核内移行阻害剤、例えばデオキシスペルグアリン(DSG)などがある。
【0094】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗真菌剤には、フルコナゾール、ミコナゾール、アンホテリシンBなどがある。
【0095】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗生物質には、ペニシリン、テトラサイクリン、アモキシシリン、アンピシリン、エリスロマイシン、ドキシサイクリン、バンコマイシン、ミノサイクリン、クリンダマイシンまたはセファレキシンなどがある。
【0096】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と共に使用することができる抗血管過剰増殖剤には、メトトレキサート、レフルノミド、FK506(タクロリムス、プログラフ(Prograf))などがある。
【0097】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる血中脂質降下剤または脂質低下剤または脂質調整剤としては、1、2、3またはそれ以上のMTP阻害剤、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、スクアレンシンテターゼ阻害剤、フィブリン酸誘導体、ACAT阻害剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、回腸Na+/胆汁酸共輸送体阻害剤、LDL受容体活性の上方調節剤、胆汁酸吸着剤、ならびに/またはニコチン酸およびその誘導体を挙げることができる。
【0098】
ここで使用されるMTP阻害剤として、米国特許第5,595,872号、米国特許第5,739,135号、米国特許第5,712,279号、米国特許第5,760,246号、米国特許第5,827,875号、米国特許第5,885,983号および米国特許出願第09/175,180号(1998年10月20日出願;現在は米国特許第5,962,440号)に開示されているMTP阻害剤が挙げられる。上記の特許および特許出願のそれぞれに開示されている好ましいMTP阻害剤はそれぞれ好ましい。
【0099】
上記の特許および特許出願は全て参照により本明細書に組み入れられる。
【0100】
本発明に従って使用される最も好ましいMTP阻害剤として、米国特許第5,739,135号および同第5,712,279号、ならびに米国特許第5,760,246号に記載されている好ましいMTP阻害剤が挙げられる。
【0101】
最も好ましいMTP阻害剤は、9-[4-[4-[[2-(2,2,2-トリフルオロエトキシ)ベンゾイル]アミノ]-1-ピペリジニル]ブチル]-N-(2,2,2-トリフルオロエチル)-9H-フルオレン-9-カルボキサミド
【化26】

である。
【0102】
血中脂質降下剤はHMG CoAレダクターゼ阻害剤であることができ、これには、米国特許第3,983,140号に開示されているメバスタチンおよび関連化合物、米国特許第4,231,938号に開示されているロバスタチン(メビノリン)および関連化合物、プラバスタチンおよび関連化合物、例えば米国特許第4,346,227号に開示されているもの、米国特許第4,448,784号および同第4,450,171号に開示されているシンバスタチンおよび関連化合物などがあるが、これらに限定されるわけではない。ここで使用することができる他のHMG CoAレダクターゼ阻害剤には、米国特許第5,354,772号に開示されているフルバスタチン、米国特許第5,006,530号および同第5,177,080号に開示されているセリバスタチン、米国特許第4,681,893号、同第5,273,995号、同第5,385,929号および同第5,686,104号に開示されているアトルバスタチン、米国特許第5,011,930号に開示されているイタバスタチン(日産/三共のニスバスタチン(NK-104))、米国特許第5,260,440号に開示されている塩野義-Astra/Zenecaのビサスタチン(visastatin)(ZD-4522)、および米国特許第5,753,675号に開示されている関連スタチン化合物、米国特許第4,613,610号に開示されているメバロノラクトン誘導体のピラゾール類似体、PCT出願WO 86/03488に開示されているメバロノラクトン誘導体のインデン類似体、米国特許第4,647,576号に開示されている6-[2-(置換-ピロール-1-イル)-アルキル]ピラン-2-オン類およびその誘導体、SearleのSC-45355(3-置換ペンタン二酸誘導体)ジクロロ酢酸塩、PCT出願WO 86/07054に開示されているメバロノラクトンのイミダゾール類似体、フランス特許第2,596,393号に開示されている3-カルボキシ-2-ヒドロキシ-プロパン-ホスホン酸誘導体、欧州特許出願第0221025号に開示されている2,3-二置換ピロール、フランおよびチオフェン誘導体、米国特許第4,686,237号に開示されているメバロノラクトンのナフチル類似体、オクタヒドロナフタレン類、例えば米国特許第4,499,289号に開示されているもの、欧州特許出願第0,142,146号A2に開示されているメビノリン(ロバスタチン)のケト類似体、ならびに米国特許第5,506,219号および同第5,691,322号に開示されているキノリンおよびピリジン誘導体などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0103】
さらにまた、ここでの使用に適した、HMG CoAレダクターゼの阻害に役立つホスフィン酸化合物が、GB 2205837に開示されている。
【0104】
ここでの使用に適したスクアレンシンテターゼ阻害剤には、米国特許第5,712,396号に開示されているα-ホスホノ-スルホン酸類、Billerら, J. Med. Chem., Vol.31, No.10, pp.1869-1871 (1988)に開示されているもの、例えばイソプレノイド(ホスフィニル-メチル)ホスホン酸類、ならびに例えば米国特許第4,871,721号および同第4,924,024号ならびにBiller, S.A., Neuenschwander, K., Ponpipom, M.M.およびPoulter, C.D., Current Pharmaceutical Design, 2, 1-40 (1996)などに開示されている他の既知のスクアレンシンテターゼ阻害剤があるが、これらに限定されるわけではない。
【0105】
さらにまた、ここでの使用に適した他のスクアレンシンテターゼ阻害剤として、P. Ortiz de Montellanoら, J. Med. Chem., 1977, 20, 243-249に開示されているテルペノイドピロリン酸類、CoreyおよびVolante, J. Am. Chem. Soc., 98, 1291-1293 (1976)に開示されているファルネシル二リン酸類似体Aおよびプレスクアレンピロリン酸(PSQ-PP)類似体、McClard, R.W.ら, J. Am. Chem. Soc., 109, 5544 (1987)に報告されているホスフィニルホスホン酸類、ならびにCapson,T.L.博士論文(ユタ大学医化学部)のアブストラクト、目次、16頁、17頁、40〜43頁、48〜51頁、要約(1987年6月)に報告されているシクロプロパン類も挙げられる。
【0106】
ここでの使用に適した他の血中脂質降下剤には、フィブリン酸誘導体、例えばフェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラート、クリノフィブラートなど、プロブコール、および米国特許第3,674,836号に開示されている関連化合物(プロブコールおよびゲムフィブロジルは好ましい)、胆汁酸吸着剤、例えばコレスチラミン、コレスチポールおよびDEAE-セファデックス(セコレックス(Secholex(登録商標))、ポリセキシド(Policexide(登録商標))およびコレスタゲル(cholestagel)(三共/Geltex)、ならびにリポスタビル(Rhone-Poulenc)、エーザイE-5050(N-置換エタノールアミン誘導体)、イマニキシル(HOE-402)、テトラヒドロリプスタチン(THL)、イスチグマスタニルホスホリルコリン(istigmastanylphosphorylcholine)(SPC, Roche)、アミノシクロデキストリン(田辺製薬)、味の素AJ-814(アズレン誘導体)、メリナミド(住友)、Sandoz 58-035、American Cyanamid CL-277,082およびCL-283,546(二置換尿素誘導体)、ニコチン酸(ナイアシン)、アシピモックス、アシフラン、ネオマイシン、p-アミノサリチル酸、アスピリン、ポリ(ジアリルメチルアミン)誘導体、例えば米国特許第4,759,923号に開示されているもの、4級アミンポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、およびイオネン類、例えば米国特許第4,027,009号に開示されているもの、ならびに他の公知の血清コレステロール降下剤などがあるが、これらに限定されるわけではない。
【0107】
血中脂質降下剤は、ACAT阻害剤、例えばDrugs of the Future, 24, 9-15 (1999)(アバシミベ(Avasimibe));「The ACAT inhibitor, Cl-1011 is effective in the prevention and regression of aortic fatty streak area in hamsters(ACAT阻害剤Cl-1011はハムスターにおける大動脈線状脂肪沈着領域の予防および退縮に有効である)」Nicolosiら, Atherosclerosis (Shannon, Irel), 137(1), 77-85 (1998);「The pharmacological profile of FCE 27677: a novel ACAT inhibitor with potent hypolipidemic activity mediated by selective suppression of the hepatic secretion of ApoB100-containing lipoporotein(FCE27677の薬理学的プロファイル:ApoB100含有リポタンパク質の肝分泌の選択的抑制によって媒介される強力な血中脂質降下活性を持つ新規ACAT阻害剤)」Ghiselli, Giancarlo, Cardiovasc. Drug Rev. (1998), 16(1), 16-30;「RP 73163: a bioavailable alkylsulfinyl-diphenylimidazole ACAT inhibitor(RP73163:バイオアベイラブルなアルキルスルフィニル-ジフェニルイミダゾールACAT阻害剤)」Smith,C.ら, Bioorg. Med. Chem. Lett, 6(1), 47-50 (1996);「ACAT inhibitor: physiologic mechanisms for hypolipidemic and anti-atherosclerotic activities in experimental animals(ACAT阻害剤:実験動物における血中脂質降下活性および抗アテローム性動脈硬化活性の生理学的機序)」Krauseら編:Ruffolo, Robert R., Jr.;Hollinger, Mannfred A.「Inflammation: Mediators Pathways」173-98 (1995), 発行社:CRC(フロリダ州ボカラトン);「ACAT inhibitor: potential anti-atherosclerotic agents(ACAT阻害剤:抗アテローム性動脈硬化剤候補)」Sliskovicら, Curr. Med. Chem., 1(3), 204-25 (1994);「Inhibitor of acyl-CoA:cholesterol O-acyl transferase (ACAT) as hypocholesterolemic agents. 6. The first water-soluble ACAT inhibitor with lipid-regulating activity. Inhibitors of acyl-CoA:cholesterol acyltransferase (ACAT). 7. Development of a series of substituted N-phenyl-N'-[(1-phenylcyclopentyl)-methy]ureas with enhanced hypocholesterolemic activity(血中コレステロール降下剤としてのアシル-CoA:コレステロールO-アシルトランスフェラーゼ(ACAT)の阻害剤.6. 脂質調節活性を持つ初の水溶性ACAT阻害剤. アシル-CoA:コレステロールアシルトランスフェラーゼ(ACAT)の阻害剤.7. 強化された血中コレステロール降下活性を持つ一連の置換N-フェニル-N'-[(1-フェニルシクロペンチル)-メチル]尿素類の開発)」Stoutら, Chemtracts: Org. Chem., 8(6), 359-62 (1995)に開示されているもの、またはTS-962(大正製薬)であってもよい。
【0108】
血中脂質降下剤は、LD2受容体活性の上方調節剤、例えばMD-700(大正製薬)およびLY295427(Eli Lilly)であってもよい。
【0109】
血中脂質降下剤はコレステロール吸収阻害剤、好ましくはSchering-Ploughのエゼチミベ(SCH58235)およびSCH48461、ならびにAtherosclerosis 115, 45-63 (1995)およびJ. Med. Chem. 41, 973 (1998)に開示されているものであってもよい。
【0110】
血中脂質降下剤は、回腸Na+/胆汁酸共輸送体阻害剤、例えばDrugs of the Future, 24, 425-430 (1999)に開示されているものであってもよい。
【0111】
脂質調整剤として、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤、例えばPfizerのCP529,414(WO/0038722およびEP818448)ならびにPharmaciaのSC-744およびSC-795を挙げることができる。
【0112】
本発明の組合せに使用することができるATPクエン酸リアーゼ阻害剤としては、例えば米国特許第5,447,954号に開示されているものを挙げることができる。
【0113】
好ましい血中脂質降下剤は、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチン、セリバスタチン、イタバスタチンおよびビサスタチンならびにZD-4522である。
【0114】
上述の米国特許は参照により本明細書に組み入れられる。使用する量および投薬量は「医師用卓上参考書」および/または上述の特許に示されているとおりになるだろう。
【0115】
本発明の式IまたはIIの化合物は、血中脂質降下剤(存在する場合)に対して、約500:1〜約1:500、好ましくは約100:1〜約1:100の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0116】
投与量は、患者の年齢、体重および状態、ならびに投与経路、剤形、投薬レジメンおよび所望する結果に応じて、注意深く調節しなければならない。
【0117】
血中脂質降下剤の投薬量および製剤は、上述したさまざまな特許および特許出願に開示されているとおりになるだろう。
【0118】
使用される他の血中脂質降下剤の投薬量および製剤は、該当するものがあれば、「医師用卓上参考書」の最新版に記載されているとおりになるだろう。
【0119】
経口投与の場合は、MTP阻害剤を、約0.01mg〜約500mg(好ましくは約0.1mg〜約100mg)の範囲の量で、毎日1〜4回使用することにより、満足できる結果が得られるだろう。
【0120】
錠剤またはカプセル剤などの好ましい経口剤形は、毎日1〜4回、約1〜約500mg、好ましくは約2〜約400mg、より好ましくは約5〜約250mgの量のMTP阻害剤を含有するだろう。
【0121】
経口投与の場合、HMG CoAレダクターゼ阻害剤(例えばプラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチンまたはセリバスタチンなど)を、「医師用卓上参考書」に表示されている使用量(例えば約1〜2000mg、好ましくは約4〜約200mgの範囲の量)で使用することにより、満足できる結果が得られるだろう。
【0122】
スクアレンシンテターゼ阻害剤は約10mg〜約2000mg(好ましくは約25mg〜約200mg)の範囲の量の投薬量で使用することができる。
【0123】
錠剤またはカプセル剤などの好ましい経口剤形は、HMG CoAレダクターゼ阻害剤を約0.1〜約100mg、好ましくは約0.5〜約80mg、より好ましくは約1〜約40mgの量で含有するだろう。
【0124】
錠剤またはカプセル剤などの好ましい経口剤形は、スクアレンシンテターゼ阻害剤を約10〜約500mg、好ましくは約25〜約200mgの量で含有するだろう。
【0125】
血中脂質降下剤は、15-リポキシゲナーゼ(15-LO)阻害剤、例えばWO 97/12615に開示されているベンズイミダゾール誘導体、WO 97/12613に開示されている15-LO阻害剤、WO 96/38144に開示されているイソチアゾロン類、ならびにSendobryら「Attenuation of diet-induced atherosclerosis in rabbits with a highly selective 15-lipoxygenase inhibitor lacking significant antioxidant properties(有意な抗酸化剤性を持たない高度に選択的な15-リポキシゲナーゼ阻害剤によるウサギにおける食餌誘発性アテローム動脈硬化の減少)」Brit. J. Pharmacology 120, 1199-1206 (1997)およびCornicelliら「15-Lipoxygenase and its Inhibition: A Novel Therapeutic Target for Vascular Disease(15-リポキシゲナーゼおよびその阻害:血管病の新しい治療標的)」Current Pharmaceutical Design, 5, 11-20 (1999)に開示されている15-LO阻害剤を含むリポキシゲナーゼ阻害剤であってもよい。
【0126】
式IまたはIIの化合物と血中脂質降下剤は、同じ経口剤形で、または同時に服用される個別の経口剤形で、一緒に使用することができる。
【0127】
上述の組成物は、上述の剤形で、1回量として、または毎日1〜4回の分割量として、投与することができる。低用量の組み合わせで処置を開始して、徐々に高用量の組み合わせに上げていくことが望ましいだろう。
【0128】
好ましい血中脂質降下剤はプラバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、アトルバスタチン、フルバスタチンまたはセリバスタチン、ならびにナイアシンおよび/またはコレスタゲルである。
【0129】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる他の抗糖尿病剤として、1、2、3またはそれ以上の抗糖尿病剤もしくは抗高血糖剤(インスリン分泌促進剤またはインスリン抵抗性改善剤を含む)、または他の抗糖尿病剤(好ましくは本発明の式IまたはIIの化合物とは異なる作用機序を持つもの)を挙げることができ、これには例えば、ビグアニド類、スルホニル尿素類、グルコシダーゼ阻害剤、PPARγアゴニスト、例えばチアゾリジンジオン類、aP2阻害剤、ジペプチジルペプチダーゼIV(DP4)阻害剤、SGLT2阻害剤、および/またはメグリチニド類、ならびにインスリン、および/またはグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)を含めることができる。
【0130】
他の抗糖尿病剤は、経口抗高血糖剤、好ましくはメトホルミンもしくはフェンホルミンまたはその塩(好ましくはメトホルミンHCl)などのビグアニドであることができる。
【0131】
抗糖尿病剤がビグアニドである場合、構造IまたはIIの化合物は、ビグアニドに対して約0.001:1〜約10:1、好ましくは約0.01:1〜約5:1の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0132】
また、他の抗糖尿病剤は、スルホニル尿素、例えばグリブリド(グリベンクラミドとも呼ばれる)、グリメピリド(米国特許第4,379,785号に開示されている)、グリピジド、グリクラジドまたはクロロプロパミド、他の既知のスルホニル尿素、またはβ細胞のATP依存性チャネルに作用する他の抗高血糖剤であることも好ましく(グリブリドおよびグリピジドは好ましい)、これらは同じ経口剤形または別個の経口剤形に入れて投与することができる。
【0133】
構造IまたはIIの化合物は、スルホニル尿素に対して、約0.01:1〜約100:1、好ましくは約0.02:1〜約5:1の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0134】
経口抗糖尿病剤は、例えばアカルボース(米国特許第4,904,769号に開示されている)またはミグリトール(米国特許第4,639,436号に開示されている)などのグルコシダーゼ阻害剤であってもよく、これらは同じまたは別個の経口剤形に入れて投与することができる。
【0135】
構造IまたはIIの化合物は、グルコシダーゼ阻害剤に対して、約0.01:1〜約100:1、好ましくは約0.05:1〜約10:1の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0136】
構造IまたはIIの化合物は、PPARγアゴニスト、例えばチアゾリジンジオン経口抗糖尿病剤、または他のインスリン抵抗性改善剤(NIDDM患者においてインスリン抵抗性改善効果を有するもの)、例えばトログリタゾン(米国特許第4,572,912号に開示されているWarner-Lambertのレズリン(Rezulin(登録商標)))、ロジグリタゾン(SKB)、ピオグリタゾン(武田)、三菱のMCC-555(米国特許第5,594,016号に開示されている)、Glaxo-WelcomeのGL-262570、エングリタゾン(CP-68722, Pfizer)またはダルグリタゾン(CP-86325、Pfizer)、イサグリタゾン(isaglitazone)(MIT/J&J)、JTT-501(JPNT/P&U)、L-895645(Merck)、R-119702(三共/WL)、NN-2344(Dr. Reddy/NN)もしくはYM-440(山之内)など(好ましくはロジグリタゾンおよびピオグリタゾン)と併用することができる。
【0137】
構造IまたはIIの化合物は、チアゾリジンジオンに対して、約0.01:1〜約100:1、好ましくは約0.05〜約10:1の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0138】
約150mg未満の量のスルホニル尿素およびチアゾリジンジオンは、構造IまたはIIの化合物と共に単一の錠剤に組み入れることができる。
【0139】
構造IまたはIIの化合物は、抗高血糖剤(例えばインスリン)、またはグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、例えばGLP-1(1-36)アミド、GLP-1(7-36)アミド、GLP-1(7-37)(Habenerの米国特許第5,614,492号に開示されているもの、この特許の開示は参照により本明細書に組み入れられる)、ならびにAC2993(Amylin)およびLY-315902(Lilly)などと併用することもでき、それらは注射によって、鼻腔内に、吸入によって、または経皮もしくはバッカル装置によって、投与することができる。
【0140】
メトホルミン、スルホニル尿素(例えばグリブリド、グリメピリド、グリピリド(glipyride)、グリピジド、クロロプロパミドおよびグリクラジドなど)、およびグルコシダーゼ阻害剤アカルボースもしくはミグリトール、またはインスリン(注射、肺、バッカルまたは経口用)が存在する場合、それらは、「医師用卓上参考書」(PDR)に表示されている量および投与法で、上述のような製剤として使用することができる。
【0141】
メトホルミンまたはその塩が存在する場合、それらは約500〜約2000mg/日の範囲の量で使用することができ、その量を1回量として、または毎日1〜4回の分割量で投与することができる。
【0142】
チアゾリジンジオン抗糖尿病剤が存在する場合、それは約0.01〜約2000mg/日の範囲の量で使用することができ、その量を1回量として、または1日あたり1〜4回の分割量で投与することができる。
【0143】
インスリンが存在する場合、それは「医師用卓上参考書」に示されている製剤、量および用法で使用することができる。
【0144】
GLP-1ペプチドが存在する場合、それは、米国特許第5,346,701号(TheraTech)、同第5,614,492号および同第5,631,224号(これらは参照により本明細書に組み入れられる)に記載されているように、経口バッカル製剤として、または鼻腔投与によって、または非経口的に投与することができる。
【0145】
また、他の抗糖尿病剤は、PPARα/γ二重アゴニスト、例えばAR-HO39242(Astra/Zeneca)、GW-409544(Glaxo-Wellcome)、KRP297(杏林Merck)、ならびにMurakamiら「A Novel Insulin Sensitizer Acts As a Coligand for Peroxisome Proliferation-Activated Receptor Alpha (PPAR alpha) and PPAR gamma. Effect on PPAR alpha Activation on Abnormal Lipid Metabolism in Liver of Zucker Fatty Rats(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α(PPARα)およびPPARγのコリガンドとして作用する新規インスリン抵抗性改善剤.ズッカー肥満ラットの肝臓における脂質代謝異常に対するPPARα活性化の影響)」Diabetes 47,1841-1847(1998)に開示されているものであることもできる。
【0146】
抗糖尿病剤は、2000年10月4日出願の米国特許出願第09/679,027号に開示されているようなSGLT2阻害剤を、そこに記載されている投薬量で使用するものであってもよい。上記の出願において好ましいとされている化合物は好ましい。
【0147】
抗糖尿病剤は、1999年9月7日出願の米国特許出願第09/391,053号および2000年3月6日出願の米国特許出願第09/519,079号に開示されているようなaP2阻害剤を、そこに記載されている投薬量で使用するものであってもよい。上記の出願において好ましいとされている化合物は好ましい。
【0148】
抗糖尿病剤は、DP4阻害剤、例えば2001年2月16日出願の米国特許出願第09/788,173号、WO99/38501、WO99/46272、WO99/67279(PROBIODRUG)、WO99/67278(PROBIODRUG)、WO99/61431(PROBIODRUG)に開示されているもの、Hughesら,Biochemistry, 38(36), 11597-11603, (1999)に開示されているNVP-DPP728A(1-[[[2-[(5-シアノピリジン-2-イル)アミノ]エチル]アミノ]アセチル]-2-シアノ-(S)-ピロリジン)(Novartis)(好ましい)、TSL-225(トリプトフィル-1,2,3,4-テトラヒドロ-イソキノリン-3-カルボン酸(Yamadaら, Bioorg. & Med. Chem. Lett. 8 1537-1540 (1998)に開示されている))、Ashworthら, Bioorg. & Med. Chem. Lett. Vol.6, No.22, pp.1163-1166およびpp.2745-2748 (1996)に開示されている2-シアノピロリジド類および4-シアノピロリジド類を、上記の文献に記載されている投薬量で使用するものであってもよい。
【0149】
要すれば本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができるメグリチニドとして、レパグリニド、ナテグリニド(Novartis)またはKAD1229(PF/キッセイ)を挙げることができ、レパグリニドは好ましい。
【0150】
式IまたはIIの化合物は、メグリチニド、PPARγアゴニスト、PPARα/γ二重アゴニスト、aP2阻害剤、DP4阻害剤またはSGLT2阻害剤に対して、約0.01:1〜約100:1、好ましくは約0.05:1〜約10:1の範囲の重量比で使用されるだろう。
【0151】
要すれば式IまたはIIの化合物と共に使用することができる他のタイプの治療剤は、β3アドレナリンアゴニスト、リパーゼ阻害剤、セロトニン(およびドーパミン)再取り込み阻害剤、aP2阻害剤、甲状腺受容体アゴニストおよび/または食欲抑制剤を含む、1、2、3またはそれ以上の抗肥満剤であってもよい。
【0152】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができるβ3アドレナリンアゴニストとして、AJ9677(武田/大日本)、L750355(Merck)もしくはCP331648(Pfizer)、または米国特許第5,541,204号、同第5,770,615号、同第5,491,134号、同第5,776,983号および同第5,488,064号に開示されている他の既知のβ3アゴニストを挙げることができ、AJ9677、L750,355およびCP331648は好ましい。
【0153】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができるリパーゼ阻害剤として、オルリスタットまたはATL-962(Alizyme)を挙げることができ、オルリスタットは好ましい。
【0154】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができるセロトニン(およびドーパミン)再取り込み阻害剤として、シブトラミン、トピラメート(Johnson & Johnson)またはアキソカイン(axokine)(Regeneron)を挙げることができ、シブトラミンおよびトピラメートは好ましい。
【0155】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる甲状腺受容体アゴニストとして、WO97/21993(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)、WO99/00353(KaroBio)、WO2000039077(KaroBio、特に優先権文書GB98/284425)および米国仮特許出願第60/183,223号(2000年2月17日出願)に開示されている甲状腺受容体リガンドを挙げることができ、KaroBio出願の化合物および上記米国仮特許出願の化合物は好ましい。
【0156】
要すれば式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる食欲抑制剤として、デキサンフェタミン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミンまたはマチンドールをあげることができ、デキサンフェタミンは好ましい。
【0157】
上述したさまざまな抗肥満剤は、式IもしくはIIの化合物と同じ剤形で、または異なる剤形で、当技術分野またはPDRで広く知られている投薬量およびレジメンで使用することができる。
【0158】
本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗高血圧剤には、例えばACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、NEP/ACE阻害剤、ならびにカルシウムチャネル遮断剤、βアドレナリン遮断剤および他のタイプの抗高血圧剤(利尿剤を含む)がある。
【0159】
ここで使用することができるアンギオテンシン変換酵素阻害剤には、メルカプト(-S-)部分を含有するもの、例えば置換プロリン誘導体、例えば上記Ondettiらの米国特許第4,046,889号に開示されているもの(カプトプリル、すなわち1-[(2S)-3-メルカプト-2-メチルプロピオニル]-L-プロリンは好ましい)、および置換プロリンのメルカプトアシル誘導体、例えば米国特許第4,316,906号に開示されているもの(ゾフェノプリルは好ましい)などがある。
【0160】
ここで使用することができるメルカプト含有ACE阻害剤の他の例には、Clin. Exp. Pharmacol. Physiol. 10:131 (1983)に開示されているレンチアプリル(フェンチアプリル(fentiapril)、参天)ならびにピボプリルおよびYS980がある。
【0161】
ここで使用することができるアンギオテンシン変換酵素阻害剤の他の例には、上記米国特許第4,374,829号に開示されているもの(N-(1-エトキシカルボニル-3-フェニルプロピル)-L-アラニル-L-プロリン、すなわちエナラプリルは好ましい)、米国特許第4,452,790号に開示されているホスホン酸置換アミノ酸もしくはイミノ酸または塩((S)-1-[6-アミノ-2-[[ヒドロキシ-(4-フェニルブチル)ホスフィニル]オキシ]-1-オキソヘキシル]-L-プロリンまたは(セロナプリル)は好ましい)、上記米国特許第4,168,267号に開示されているホスフィニルアルカノイルプロリン(フォシノプリルは好ましい)、米国特許第4,337,201号に開示されているホスフィニルアルカノイル置換プロリン、および上述の米国特許第4,432,971号に開示されているホスホンアミデートがある。
【0162】
ここで使用することができるACE阻害剤の他の例には、欧州特許出願第80822号および同第60668号に開示されているBeechamのBRL36,378;C.A. 102:72588vおよびJap. J. Pharmacol. 40:373 (1986)に開示されている中外のMC-838;英国特許第2103614号に開示されているCiba-GeigyのCGS14824(3-([1-エトキシカルボニル-3-フェニル-(1S)-プロピル]アミノ)-2,3,4,5-テトラヒドロ-2-オキソ-1-(3S)-ベンゾアゼピン-1酢酸HCl)および米国特許第4,473,575号に開示されているCGS16,617(3(S)-[[(1S)-5-アミノ-1-カルボキシペンチル]アミノ]-2,3,4,5-テトラヒドロ-2-オキソ-1H-1-ベンゾアゼピン-1-エタン酸);Eur. Therap. Res. 39:671 (1986);40:543 (1986)に開示されているセタプリル(アラセプリル、大日本);欧州特許第79-022号およびCurr. Ther. Res. 40:74 (1986)に開示されているラミプリル(Hoechsst);Arzneimittelforschung 34:1254 (1985)に開示されているRu44570(Hoechst)、J. Cardiovasc. Pharmacol. 9:39 (1987)に開示されているシラザプリル(Hoffman-LaRoche);FEBS Lett. 165:201 (1984)に開示されているR31-2201(Hoffman-LaRoche);リシノプリル(Merck)、米国特許第4,385,051号に開示されているインダラプリル(indalapril)(デラプリル);J. Cardiovasc. Pharmacol. 5:643, 655 (1983)に開示されているインドラプリル(Schering)、Acta. Pharmacol. Toxicol. 59 (Supp. 5):173 (1986)に開示されているスピラプリル(Schering);Eur. J. clin. Pharmacol. 31:519 (1987)に開示されているペリンドプリル(Servier);米国特許第4,344,949号に開示されているキナプリル(Warner-Lambert)およびPharmacologist 26:243, 266 (1984)に開示されているCI925(Warner-Lambert)([3S-[2[R(*)R(*)]]3R(*)]-2-[2-[[1-(エトキシ-カルボニル)-3-フェニルプロピル]アミノ]-1-オキソプロピル]-1,2,3,4-テトラヒドロ-6,7-ジメトキシ-3-イソキノリンカルボン酸HCl)、J. Med. Chem. 26:394 (1983)に開示されているWY-44221(Wyeth)がある。
【0163】
好ましいACE阻害剤は、カプトプリル、フォシノプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、ベナゼプリル、フェンチアプリル、ラミプリルおよびモエキシプリルである。
【0164】
NEP/ACE阻害剤は中性エンドペプチダーゼ(NEP)阻害剤活性およびアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤活性を持つので、ここではこれらも使用することができる。ここでの使用に適したNEP/ACE阻害剤の例には、米国特許第5,362,727号、同第5,366,973号、同第5,225,401号、同第4,722,810号、同第5,223,516号、同第4,749,688号、米国特許第5,552,397号、米国特許第5,504,080号、米国特許第5,612,359号、米国特許第5,525,723号、欧州特許出願第0599,444号、同第0481,522号、同第0599,444号、同第0595,610号、欧州特許出願第0534363号A2、同第534,396号および同第534,492号、ならびに欧州特許出願第0629627号A2に開示されているものがある。
【0165】
上記の特許/特許出願において好ましいとされているNEP/ACE阻害剤およびその投薬量は好ましく、それらの米国特許は参照により本明細書に組み入れられる。オマパトリラート、BMS189,921([S-(R*,R*)]-ヘキサヒドロ-6-[(2-メルカプト-1-オキソ-3-フェニルプロピル)アミノ]-2,2-ジメチル-7-オキソ-1H-アゼピン-1-酢酸(ゲモパトリラート))およびCGS30440は、最も好ましい。
【0166】
ここでの使用に適したアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト(本明細書ではアンギオテンシンIIアンタゴニストまたはAIIアンタゴニストともいう)には、イルベサルタン、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、タソサルタンまたはエプロサルタンなどがあり、イルベサルタン、ロサルタンまたはバルサルタンは好ましいが、これらに限定されるわけではない。
【0167】
錠剤またはカプセル剤などの好ましい経口剤形は、ACE阻害剤またはAIIアンタゴニストを、約0.1ないし約500mg、好ましくは約5〜約200mg、より好ましくは約10〜約150mgの範囲の量で含有するだろう。
【0168】
非経口投与の場合、ACE阻害剤、アンギオテンシンIIアンタゴニストまたはNEP/ACE阻害剤は、約0.005mg/kg〜約10mg/kg、好ましくは約0.01mg/kg〜約1mg/kgの範囲の量で使用されるだろう。
【0169】
薬物を静脈内投与する場合は、その薬物が、通常のビヒクル、例えば蒸留水、食塩水、リンゲル液または他の通常の担体などに調剤されるだろう。
【0170】
本明細書に開示するACE阻害剤およびAIIアンタゴニストならびに他の抗高血圧剤の好ましい投薬量が「医師用卓上参考書」(PDR)の最新版に記載されているとおりになることは、理解されるだろう。
【0171】
ここでの使用に適した好ましい抗高血圧剤の他の例には、オマパトリラート(バンレブ(Vanlev(登録商標))、ベシル酸アムロジピン(ノルバスク(Norvasc(登録商標))、プラゾシンHCl(ミニプレス(Minipress(登録商標))、ベラパミル、ニフェジピン、ナドロール、ジルチアゼム、フェロジピン、ニソルジピン、イスラジピン、ニカルジピン、アテノロール、カルベジロール、ソタロール、テラゾシン、ドキサゾシン、プロプラノロール、およびクロニジンHCl(カタプレス(Catapres(登録商標))がある。
【0172】
式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる利尿剤には、例えばヒドロクロロチアジド、トラセミド、フロセミド、スピロノラクトン、およびインダパミドがある。
【0173】
本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用することができる抗血小板剤には、例えばアスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモール、アブシキシマブ、チロフィバン、エプチフィバチド、アナグレリド、およびイフェトロバンがあり、クロピドグレルおよびアスピリンは好ましい。
【0174】
抗血小板薬はPDRに示されている量で使用することができる。イフェトロバンは米国特許第5,100,889号に記載の量で使用することができる。
【0175】
本発明の式IまたはIIの化合物と組み合わせて使用するのに適した抗骨粗鬆症剤には、副甲状腺ホルモンまたはビスホスホネート類、例えば MK-217(アレンドロネート)(フォサマックス(Fosamax(登録商標))などがある。
【0176】
したがって、本発明の実施形態には、式(I)または(II)の化合物と、免疫抑制薬、抗癌剤、抗ウイルス剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗生物質、抗血管過剰増殖剤、抗うつ剤、脂質低下剤、脂質調整剤、抗糖尿病剤、抗肥満剤、抗高血圧剤、血小板凝集阻害剤、および/または抗骨粗鬆症剤とを含む医薬的組み合わせであって、抗糖尿病剤が、ビグアニド、スルホニル尿素、グルコシダーゼ阻害剤、PPARγアゴニスト、PPARα/γ二重アゴニスト、SGLT2阻害剤、DP4阻害剤、aP2阻害剤、インスリン抵抗性改善薬、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、インスリンおよび/またはメグリチニドの1、2、3またはそれ以上であり、抗肥満剤が、β3アドレナリンアゴニスト、リパーゼ阻害剤、セロトニン(およびドーパミン)再取り込み阻害剤、甲状腺受容体アゴニスト、aP2阻害剤および/または食欲抑制剤であり、脂質低下剤が、MTP阻害剤、HMG CoAレダクターゼ阻害剤、スクアレンシンテターゼ阻害剤、フィブリン酸誘導体、LDL受容体活性の上方調節剤、リポキシゲナーゼ阻害剤、またはACAT阻害剤であり、抗高血圧剤が、ACE阻害剤、アンギオテンシンII受容体アンタゴニスト、NEP/ACE阻害剤、カルシウムチャネル遮断薬および/またはβ-アドレナリン遮断薬である医薬的組み合わせが包含される。抗糖尿病剤が、メトホルミン、グリブリド、グリメピリド、グリピリド、グリピジド、クロルプロパミド、グリクラジド、アカルボース、ミグリトール、ピオグリタゾン、トログリタゾン、ロジグリタゾン、インスリン、Gl-262570、イサグリタゾン、JTT-501、NN-2344、L895645、YM-440、R-119702、AJ9677、レパグリニド、ナテグリニド、KAD1129、AR-HO39242、GW-409544、KRP297、AC2993、LY315902、P32/98および/またはNVP-DPP-728Aの1、2、3またはそれ以上であり、抗肥満剤がオルリスタット、ATL-962、AJ9677、L750355、CP331648、シブトラミン、トピラメート、アキソカイン、デキサンフェタミン、フェンテルミン、フェニルプロパノールアミン、および/またはマジンドールであり、脂質低下剤が、プラバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、イタバスタチン、ビサスタチン、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、アバシミベ、TS-962、MD-700、コレスタゲル、ナイアシンおよび/またはLY295427であり、抗高血圧剤が、カプトプリル、フォシノプリル、エナラプリル、リシノプリル、キナプリル、ベナゼプリル、フェンチアプリル、ラミプリルまたはモエキシプリルであるACE阻害剤;オマパトリラート、[S[(R*,R*)]-ヘキサヒドロ-6-[(2-メルカプト-1-オキソ-3-フェニルプロピル)アミノ]-2,2-ジメチル-7-オキソ-1H-アゼピン-1-酢酸(ゲモパトリラート)またはCGS 30440であるNEP/ACE阻害剤;イルベサルタン、ロサルタンまたはバルサルタンであるアンギオテンシンII受容体アンタゴニスト;ベシル酸アムロジピン、プラゾシンHCl、ベラパミル、ニフェジピン、ナドロール、プロプラノロール、カルベジロール、またはクロニジンHClであり、血小板凝集阻害剤が、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジン、ジピリダモールまたはイフェトロバンであり;免疫抑制薬がシクロスポリン、ミコフェノレート、インターフェロン-β、デオキシスペルゴリン、FK-506または抗IL-2であり;抗癌剤が、アザチプリン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、シスプラチン、メトトレキサート、チオテパ、またはカルボプラチンであり;抗ウイルス剤が、アバカビル、アシクロビル、ガンシクロビル、ジダノシン、またはビダラビンであり;抗炎症薬が、イブプロフェン、セレコキシブ、ロフェコキシブ、アスピリン、ナプロキセン、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、インドメタシン、ピロキシカム、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、または二酢酸トリアムシノロンである医薬的組み合わせは、より好ましい。
【0177】
上記の薬物については「医師用卓上参考書」に記載されているとおりの投薬量が使用されるだろう。
【0178】
(医薬製剤)
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物と一緒に対象に投与することができ、その薬理活性を破壊しない、医薬的に許容できる担体、佐剤またはビヒクルを含む。本発明の医薬組成物に使用することができる医薬的に許容できる担体、佐剤およびビヒクルには、例えば以下に挙げるものがある(ただしこれらに限定されるわけではない):イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、自己乳化型薬物送達システム(「SEDDS」)、例えばd(-トコフェロールポリエチレングリコール1000スクシネート)、医薬剤形に使用される界面活性剤、例えばツイーン(Tween)または他の類似するポリマー型送達マトリックス、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩類または電解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロースに基づく物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ロウ類、ポリエチレン-ポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリエチレングリコール、および羊毛脂。シクロデキストリン類、例えばα-、β-およびγ-シクロデキストリン、または化学修飾誘導体、例えばヒドロキシアルキルシクロデキストリン(2-および3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む)、または他の可溶化誘導体も、本発明の調整剤の送達を増進するために使用することができる。
【0179】
本発明の組成物は、後述するように、他の治療剤を含有してもよく、また例えば通常の固形または液状のビヒクルまたは希釈剤、ならびに所望する投与様式に適したタイプの医薬添加剤(例えば賦形剤、結合剤、保存剤、安定剤、香料など)を使用することなどにより、医薬製剤分野において周知である技法をはじめとする技法に従って調剤することができる。
【0180】
本発明の化合物は任意の適切な手段によって、経口的に、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、または散剤などの形態で;舌下に;口腔内に;非経口的に、例えば皮下、静脈内、筋肉内、または胸骨内注射または注入技法などによって(例えば滅菌された注射可能な水性または非水性の溶液または懸濁液として);鼻に、例えば吸入スプレーなどによって;局所外用により、例えばクリーム剤または軟膏などの形態で;または直腸に、例えば坐剤などの形態で;無毒性の医薬的に許容できるビヒクルまたは希釈剤を含有する投薬単位製剤として投与することができる。本発明の化合物は、例えば、即時放出または持続放出に適した形態で投与することができる。即時放出または持続放出は、本発明の化合物を含む適切な医薬組成物を使用するか、または、特に持続放出の場合には、皮下インプラントもしくは浸透圧ポンプなどの装置の使用によって達成することができる。本発明の化合物は、リポソームを使って投与することもできる。
【0181】
代表的な経口投与用組成物として、例えば増量用の微結晶セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、増粘剤としてのメチルセルロース、および当技術分野で知られているような甘味剤または着香剤などを含有してもよい懸濁液;ならびに例えば微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはラクトースおよび/または当技術分野で知られているような他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および潤滑剤などを含有しうる即時放出錠剤が挙げられる。本発明の化合物は、舌下投与および/または口腔内投与により、口腔を通して送達することもできる。湿製錠剤、圧縮錠剤または凍結乾燥錠剤は、使用することのできる代表的な剤形である。代表的な組成物として、速溶性希釈剤(例えばマンニトール、ラクトース、ショ糖および/またはシクロデキストリン類)を使って本発明の化合物を調剤したものが挙げられる。また、これらの製剤には、セルロース(Avicel(アビセル))またはポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量賦形剤を含めることもできる。また、これらの製剤は、粘膜付着を助けるための賦形剤、例えばヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えばガントレズ(Gantrez))、および放出を制御するための薬剤、例えばポリアクリル系コポリマー(例えばカーボポール(Carbopol)934)も含みうる。また、製造および使用が容易になるように、潤滑剤、流動促進剤、香料、着香剤および安定剤を加えてもよい。
【0182】
代表的な鼻エアロゾル投与用または吸入投与用の組成物としては、例えばベンジルアルコール、または他の適切な保存剤、生物学的利用能を向上させるための吸収促進剤、および/または他の可溶化もしくは分散剤、例えば当業者に知られているものなどを含有してもよい食塩水中の溶液が挙げられる。
【0183】
代表的な非経口投与用組成物としては、例えば適切な無毒性かつ非経口的に許容できる希釈剤もしくは溶剤(例えばマンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、等張食塩溶液)、または他の適切な分散もしくは湿潤および懸濁化剤(例えば合成モノグリセリドまたはジグリセリド)、および脂肪酸(例えばオレイン酸)などを含有しうる注射可能な溶液または懸濁液が挙げられる。本明細書で使用する「非経口」という用語は、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、動脈内、滑液包内、胸骨内、髄腔内、病巣内および頭蓋内注射または注入技法を包含する。
【0184】
代表的な直腸投与用組成物としては、例えば、常温では固体であるが直腸腔内では液化および/または溶解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤(例えばカカオ脂、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコール)などを含有しうる坐剤が挙げられる。
【0185】
局所外用のための代表的な組成物は、プラスチベース(Plastibase)(ポリエチレンでゲル化した鉱油)などの局所外用担体を含む。
【0186】
本発明の化合物の有効量は、当業者が決定することができ、成人の場合、代表的な投薬量は、1日あたり体重1kgあたり約0.1〜500mgの活性化合物を含むか、または1日あたり5〜2000mgの活性性化合物を含み、この量を単回投与によって投与するか、または例えば1日に1〜5回の分割投与の形で投与することができる。個別の対象に対する具体的な用量レベルおよび投薬頻度はさまざまであり、使用する具体的化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、対象の種、年齢、体重、全体的健康、性別および食餌、投与様式および投与時間、排出速度、併用薬、およびその状態の重症度を含むさまざまなな因子に依存するであろうことは理解されるだろう。好ましい処置対象としては、動物、最も好ましくは哺乳動物種、例えばヒトおよび家畜、例えばイヌ、ネコなどが挙げられる。
【0187】
典型的な経口投与用カプセル剤は、構造IまたはIIの化合物(250mg)、ラクトース(75mg)およびステアリン酸マグネシウム(15mg)を含有する。この混合物を60メッシュの篩に通し、No.1のゼラチンカプセルに充填する。
【0188】
典型的な注射用調製物は、構造IまたはIIの化合物250mgをバイアルに無菌的に入れ、凍結乾燥し、密封することによって製造される。使用するには、そのバイアルの内容物を2mLの生理食塩水と混合して、注射用調製物を作る。
【0189】
本発明の式(IまたはII)の化合物は、GR結合アッセイにおけるそのグルココルチコイド受容体結合能力、または細胞転写抑制アッセイで示されるそのAP-1活性阻害能力が表すように、グルココルチコイド受容体調整剤であり、細胞転写アッセイで示されるように、転写活性化を全くまたはほとんど引き起こさない。
【0190】
本発明の化合物は、本明細書の実施例に記述する化合物を含めて、以下に説明するアッセイの少なくとも一つで試験されており、グルココルチコイド受容体(GR)/デキサメタゾン(Dex)阻害活性(10μMで>25%、好ましくは10μMで>95%)および/またはAP-1阻害活性(15μM未満のEC50)を持つ。
【0191】
同一のおよび/または類似するアッセイが、2002年7月18日に出願された同時係属中の仮特許出願第60/396,907号に記述されており、この特許出願は、参照により、その全てが本明細書に組み入れられる。
【0192】
GR(Dex)結合アッセイ
グルココルチコイド受容体上の部位Iへの化合物の結合を測定するために、市販のキットを使用した(グルココルチコイド受容体競合アッセイキット, Panvera Co., ウィスコンシン州マディソン)。簡単に述べると、組換え発現させたヒト完全長グルココルチコイド受容体を含有する細胞溶解液を、蛍光標識グルココルチコイド(4nM FITC-デキサメタゾン)±試験分子と混合した。室温で1時間後に、試料の蛍光偏光(FP)を測定した。受容体、蛍光プローブ(すなわちFITC-デキサメタゾン)および1mMデキサメタゾンの混合物のFPがバックグラウンド蛍光または100%阻害を表し、一方、デキサメタゾンを含まない混合物のFPを100%結合と解釈した。次に、試験分子の阻害百分率を、1mMデキサメタゾンを含む試料と比較し、デキサメタゾンを100%、阻害なしを0%とする%相対結合活性として表した。試験分子は0.1nM〜40μMの濃度範囲で分析した。
【0193】
どのNHR(核内ホルモン受容体)でも、上記と同様にして、部位I結合アッセイが行われる。適当な細胞溶解液または精製NHRを、NHRの供給源として使用する。蛍光プローブおよび非標識競合剤は、そのNHRに適当なもの、すなわちそのNHRのリガンドである。
【0194】
細胞転写抑制アッセイ
AP-1誘導性転写活性を阻害する試験分子の能力を測定するために、本発明者らは、ルシフェラーゼ遺伝子が後続している7×AP-1 DNA結合部位を含有するプラスミド(pAP-1-Lucプラスミド, Stratagene Co., カリフォルニア州ラホーヤ)で安定にトランスフェクトされたA549細胞を使用した。10ng/mlのミリスチン酸ホルボール(PMA)±試験分子で細胞を7時間活性化した。7時間後に、ルシフェラーゼ試薬を加えて、細胞内のルシフェラーゼ酵素活性を測定した。ルシフェラーゼ試薬を細胞と共に10分間インキュベートした後、TopCount発光カウンターで発光を測定した。AP-1活性の抑制を、PMAのみによって誘導されるシグナルの減少百分率として計算した。試験分子は0.1nM〜40μMの濃度範囲で分析した。エクセルフィット(Excel fit)(Microsoft Co.)などの標準的なカーブフィッティング方法を使って、EC50を決定した。EC50は、転写の最大阻害の50%抑制、すなわちAP-1活性の50%低下が起こるような、試験分子濃度である。
【0195】
細胞転写抑制アッセイには、他のレポーターおよび細胞株も使用することができる。NF-κB活性を測定する同様のアッセイが行われる。NF-κB DNA結合部位を含有するプラスミド、例えばpNF-kB-Luc(Stratagene, カリフォルニア州ラホーヤ)を使用し、PMAまたは他の刺激、例えばTNF-αまたはリポ多糖を使って、NF-κB経路を活性化する。Yamamoto K.,ら., J Biol Chem Dec 29;270(52):31315-20 (1995)に記載されているものと同様のNF-κBアッセイを使用することができる。
【0196】
上述の細胞転写抑制アッセイは、任意のNHRによる転写抑制を測定するために使用することができる。アッセイが、AP-1またはNF-κBによって媒介される転写を誘導するであろう刺激(例えばPMA、リポ多糖、TNF-αなど)などの成分の添加を必要としうることは、当業者には理解されるだろう。さらにまた、ARが媒介する転写抑制は、Palvimo JJ,ら. J Biol Chem Sep 27;271(39):24151-6 (1996)に記載のアッセイによって測定することができ、PRが媒介する転写抑制は、Kalkhoven E.,ら. J Biol Chem Mar 15;271(11):6217-24 (1996)に記載のアッセイによって測定することができる。
【0197】
(略号)
本明細書では、明細書と実施例の全体にわたって、以下の略号を使用する。
Ph=フェニル
Bn=ベンジル
t-Bu=3級ブチル
Me=メチル
Et=エチル
TMS=トリメチルシリル
TMSN3=トリメチルシリルアジド
TBS=tert-ブチルジメチルシリル
FMOC=フルオレニルメトキシカルボニル
Boc=tert-ブトキシカルボニル
Cbz=カルボベンジルオキシまたはカルボベンゾキシまたはベンジルオキシカルボニル
THF=テトラヒドロフラン
Et2O=ジエチルエーテル
hex=ヘキサン類
EtOAc=酢酸エチル
DMF=ジメチルホルムアミド
MeOH=メタノール
EtOH=エタノール
i-PrOH=イソプロパノール
DMSO=ジメチルスルホキシド
DME=1,2-ジメトキシエタン
DCE=1,2-ジクロロエタン
HMPA=ヘキサメチルリン酸トリアミド
HOAcまたはAcOH=酢酸
TFA=トリフルオロ酢酸
TFAA=無水トリフルオロ酢酸
i-Pr2NEt=ジイソプロピルエチルアミン
Et3N=トリエチルアミン
NMM=N-メチルモルホリン
DMAP=4-ジメチルアミノピリジン
NaBH4=水素化ホウ素ナトリウム
NaBH(OAc)3=トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム
DIBALH=水素化アルミニウムジイソブチル
LAHまたはLiAlH4=水素化アルミニウムリチウム
n-BuLi=n-ブチルリチウム
LDA=リチウムジイソプロピルアミド
Pd/C=パラジウム炭素
PtO2=酸化白金
KOH=水酸化カリウム
NaOH=水酸化ナトリウム
LiOH=水酸化リチウム
K2CO3=炭酸カリウム
NaHCO3=重炭酸ナトリウム
DBU=1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン
EDC(もしくはEDC.HCl)またはEDCI(もしくはEDCI.HCl)またはEDAC=3-エチル-3'-(ジメチルアミノ)プロピル-カルボジイミド塩酸塩(または1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩)
HOBTまたはHOBT.H2O=1-ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物
HOAT=1-ヒドロキシ-7-アザベンゾトリアゾール
BOP試薬=ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート
NaN(TMS)2=ナトリウムヘキサメチルジシラジドまたはナトリウムビス(トリメチルシリル)アミド
Ph3P=トリフェニルホスフィン
Pd(OAc)2=酢酸パラジウム
(Ph3P)4Pdo=テトラキストリフェニルホスフィンパラジウム
DEAD=アゾジカルボン酸ジエチル
DIAD=アゾジカルボン酸ジイソプロピル
Cbz-Cl=クロロギ酸ベンジル
CAN=硝酸セリウムアンモニウム
SAX=強陰イオン交換体
SCX=強陽イオン交換体
Ar=アルゴン
N2=窒素
min=分
hまたはhr=時間
L=リットル
mL=ミリリットル
μL=マイクロリットル
g=グラム
mg=ミリグラム
mol=モル
mmol=ミリモル
meq=ミリ当量
RT=室温
satまたはsat'd=飽和
aq.=水性
TLC=薄層クロマトグラフィー
HPLC=高速液体クロマトグラフィー
LC/MS=高速液体クロマトグラフィー/質量分析
MSまたはMass Spec=質量分析
NMR=核磁気共鳴
NMRスペクトルデータ:s=一重線;d=二重線;m=多重線;br=幅広;t=三重線
mp=融点
【実施例】
【0198】
以下の実施例は、本発明の化合物および出発物質を例示するものであって、特許請求の範囲を限定しようとするものではない。
【0199】
(実施例1)
15-メチル-N-[3-(1-ナフチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド
【化27】

ステップa
5-(ナフタレン-1-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン
【化28】

N-アミノグアニジン硝酸塩(2.74g,20mmol)および無水メタノール(25mL)の混合物を0℃に冷却して撹拌したものに、ナトリウムメトキシド溶液(メタノール中25%,4.57mL,20mmol)を滴下した。得られた混合物を0℃で10分間撹拌してから、1-ナフトエ酸メチル(0.93g,5mmol)を加えた。次にその混合物を0℃で10分間、室温で10分間、70℃で22時間、そして75℃で19時間撹拌した。反応混合物を冷却し、水10mLで希釈した。減圧下で濃縮することにより、わずかに濁った溶液を得て、それを3N HCl水溶液でpH=3〜4に酸性化した。得られた固体を濾過し、水で洗浄し、エタノールで摩砕することにより、0.55g(収率52%)の5-(ナフタレン-1-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-アミンを黄色固体として得た。(M+H)+=211.16。
【0200】
ステップb
1-[(15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-イル)カルボニル]-3-(1-ナフチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-アミン
【化29】

15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(22mg,0.07mmol,WO04009017に従って製造)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(14mg,0.11mmol)、およびN-エチル-N,N-ジイソプロピルアミン(0.25mL)の無水アセトニトリル(2mL)溶液を撹拌したものに、アルゴン下、室温で、EDCI(34mg,0.18mmol)を加えた。その混合物を室温で10分間撹拌した後、5-(ナフタレン-1-イル)-1H-1,2,4-トリアゾール-3-アミン(22mg,0.1mmol)を加えた。反応混合物を室温で終夜撹拌し、80℃で1時間撹拌した。溶媒を除去した後、残渣を塩化メチレンと飽和重炭酸ナトリウム水溶液とに分配した。水溶液を塩化メチレンで抽出した。合わせた有機溶液を乾燥(Na2SO4)し、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーで精製することにより、33mg(収率94%)の標題化合物を白色固体として得た。(M+H)+=502.26。
【0201】
ステップc
1-[(15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-イル)カルボニル]-3-(1-ナフチル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-アミン(6mg,0.01mmol)の無水THF(1.5mL)溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散液,2mg,0.05mmol)を加えた。その混合物を室温で30分間撹拌してから、飽和塩酸アンモニウム(ammonium hydrochloride)水溶液を加えて反応をクエンチした。その混合物を酢酸エチルで抽出した。酢酸エチル層を乾燥(Na2SO4)し、濃縮した。HPLC精製(YMC S5 ODSカラム 20×100mm,10分かけて10-90%水性メタノール(0.1%トリフルオロ酢酸含有),20mL/分,220nmで監視)により、1mg(収率20%)の実施例1を得た。(M+H)+=502.12。1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 11.89 (s, 1H), 9.31 (s, 1H), 8.92 (d, J=8 Hz, 1H), 8.08 (d, J=8Hz, 1H), 7.93 (m, 2H), 7.56 (m, 3H), 7.10-7.29 (m, 8H), 4.31 (s 1H), 3.32 (d, J=12Hz, 1H), 2.03 (d, J=12 Hz, 1H), 1.09 (s, 3H)。
【0202】
(実施例2)
N-[3-(3-ブロモフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-8-シアノ-15-メチルテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド
【化30】

実施例1の手法(a)および(b)に従って製造した16-{[5-アミノ-3-(3-ブロモフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-1-イル]カルボニル}-16-メチルテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-1-カルボニトリル(500mg,0.98mmol)を、3-ピリジンスルホン酸(320mg,2mmol)およびジメチルスルホン(3.2g)で処理し、次にアルゴン下、160℃で2時間加熱した。HPLC精製(YMC S5 ODS カラム 20×100mm,10分かけて10-90%水性メタノール(0.1%トリフルオロ酢酸含有),20mL/分,220nmで監視)により、96mg(収率19%)の標題化合物を白色固体として得た。(M+H)+=512.05。1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 12.69 (s, 1H), 10.88 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 8.01 (d, J=8 Hz, 1H), 7.51-7.62 (m, 4H), 7.31-7.43 (m, 4H), 7.26 (t, J=8 Hz, 1H), 7.15 (t, J=8 Hz, 1H), 5.12 (s, 1H), 3.37 (d, J=12 Hz, 1H), 1.86 (d, J=12 Hz, 1H), 1.32 (s, 3H)。
【0203】
(実施例3)
8-シアノ-15-メチル-N-{3-[3-(1H-ピラゾール4-イル)フェニル]-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル}テトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド
【化31】

N-[3-(3-ブロモフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-8-シアノ-15-メチルテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド(10mg,0.02mmol,実施例2)、4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1H-ピラゾール(12mg,0.06mmol)、リン酸カリウム水溶液(2M,0.02mL,0.04mmol)、フッ化テトラブチルアンモニウム溶液(THF中1M,0.08mL,0.08mmol)、およびDMF(0.3mL)の混合物を5分間窒素パージしてから、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(5mg,0.004mmol)を加えた。得られた混合物を10分間窒素パージしてから、マイクロ波加熱器中、140℃で30分間加熱した。濃縮およびHPLC精製(YMC S5 ODS カラム 20×100mm,10分かけて10-90%水性メタノール(0.1%トリフルオロ酢酸含有),20mL/分,220nmで監視)により、3.5mg(収率30%)の実施例3をトリフルオロ酢酸塩として得た。(M+H)+=498.27。1H-NMR (400 MHz, CD3OD):δ 8.17 (s, 1H), 7.97 (s, 2H), 7.78 (d, J=4 Hz, 1H), 7.34-7.60 (m, 5 H), 7.21-7.28 (m, 3H), 7.03-7.15 (m, 2H、4.71 (s, 1H), 3.26 (d, 1H), 1.67 (d, 1H), 1.12 (s, 3H)。
【0204】
(実施例4)
N-[3-(2-フルオロフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]-15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド
【化32】

ステップa
N-[(15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-イル)カルボニル]イミドチオカルバミン酸メチル
【化33】

15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(618mg,2.0mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(2滴)および無水塩化メチレン(20mL)溶液に、塩化オキサリル(0.44mL,5mmol)を、アルゴン下に室温で滴下した。得られた反応混合物を室温で2時間撹拌してから濃縮した。残渣を塩化メチレンに溶解し、濃縮した。残渣を塩化メチレン(10mL)に再溶解し、S-メチルイソチオ尿素硫酸塩(560mg)、塩化メチレン(10mL)、および水酸化ナトリウム水溶液(1N,5mL,5mmol)の混合物をよく撹拌したものに、0℃で滴下した。混合物を0℃で1時間激しく撹拌した後、水を加えた。その水溶液を塩化メチレンで抽出した。塩化メチレン層を塩水(water brine)で洗浄し、乾燥(Na2SO4)した。濃縮により、735mg(収率99%)の無色固体を得て、それを、これ以上精製せずに、そのまま後続のステップに使用した。(M+H)+=382.18。
【0205】
ステップb
N-[(15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-イル)カルボニル]イミドチオカルバミン酸メチル(15mg,0.04mmol)、2-フルオロベンゾヒドラジド(6mg,0.04mmol)、p-トルエンスルホン酸ピリジニウム(15mg,0.06mmol)、および無水ピリジン(0.02mL)の混合物を、アルゴン下、120℃で20時間加熱した。濃縮およびHPLC精製(YMC S5 ODS カラム 20×100mm,10分かけて10-90%水性メタノール(0.1%トリフルオロ酢酸含有),20mL/分,220nmで監視)により、11mg(収率47%)の実施例4をトリフルオロ酢酸塩として得た。(M+H)+=470.16。1H-NMR (400 MHz, CD3OD):δ 7.91 (t, 1H), 7.44-7.50 (m, 1H), 7.33-7.40 (m, 1H), 7.02-7.30 (m, 9H), 4.72 (s, 1H), 3.49 (d, J=12, 1H), 1.86 (d, J=12 Hz, 1H), 1.11 (s, 3H)。
【0206】
(実施例5)
(S)-8-シアノ-15-メチル-N-[3-(3-ピリジン-3-イルフェニル)-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イル]テトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド
【化34】

ステップa
3-(ピリジン-3-イル)安息香酸メチル
【化35】

無水塩化メチレン(30mL)に懸濁した3-(ピリジン-3-イル)安息香酸(0.8g,4mmol)およびN,N-ジメチルホルムアミド(2滴)に、塩化オキサリル(0.42mL,4.8mmol)を、アルゴン下に、0℃で滴下した。その混合物を室温で3.5時間撹拌してから、濃縮した。得られた黄色固体を0℃の無水メタノール(20mL)に溶解した。室温で30分間撹拌した後、その混合物を濃縮した。残渣を酢酸エチルに溶解し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液、ブラインで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濃縮により、0.84g(収率99%)の3-(ピリジン-3-イル)安息香酸メチルを黄色固体として得た。(M+H)+=214.16。
【0207】
ステップb
3-(ピリジン-3-イル)ベンゾヒドラジド
【化36】

3-(ピリジン-3-イル)安息香酸メチル(190mg,0.89mmol)の無水メタノール(1mL)溶液を撹拌したものに、ヒドラジン(0.07mL)を加えた。その溶液を室温で終夜撹拌してから、エチルエーテルを加えた。固体を濾過し、エチルエーテルで洗浄することにより、67mg(収率35%)の3-(ピリジン-3-イル)ベンゾヒドラジドを白色固体として得た。濾液からさらに120mgの生成物を回収した。(M+H)+=214.13。
【0208】
ステップc
(S)-8-シアノ-15-メチルテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(29mg,0.1mmol,WO04009017)、トリエチルアミン(0.017mL,0.12mmol)の無水トルエン(0.5mL)溶液を撹拌したものに、アルゴン下、0℃で、ジフェニルホスホリルアジド(0.026mL,0.12mmol)を加えた。その混合物を0℃で20分間、室温で1時間撹拌した。得られた透明溶液を、S-メチルイソチオ尿素硫酸塩(35mg)、エチルエーテル(0.5mL)、および水酸化ナトリウム水溶液(1N,0.25mL,0.25mmol)の混合物をよく撹拌したものに、0℃で加えた。その混合物を0℃で1時間、室温で2時間、激しく撹拌した後、水を加え、その水溶液をエチルエーテルで抽出した。エーテル抽出物を乾燥(Na2SO4)し、濃縮した。無色の残渣を3-(ピリジン-3-イル)ベンゾヒドラジド(21mg,0.1mmol)、(1R)-(-)-10-ショウノウスルホン酸(35mg,0.15mmol)、およびピリジン(0.4mL)と混合した。その混合物を120℃で20時間加熱した。濃縮、HPLC精製(YMC S5 ODS カラム 20×100mm,10分かけて10-90%水性メタノール(0.1%トリフルオロ酢酸含有),20mL/分,220nmで監視)、重炭酸ナトリウム水溶液によるトリフルオロ酢酸塩の中和、および酢酸エチルによる抽出により、29mg(収率57%)の実施例5を白色固体として得た。(M+H)+=509.24。1H-NMR (400 MHz, CDCl3):δ 12.79 (s, 1H), 10.95 (s, 1H), 8.97 (s, 1H), 8.64 (s, 1H), 8.34 (s, 1H), 8.09 (m, 2H), 7.74 (d J=8 Hz, 1H), 7.47-7.63 (m, 5H), 7.31-7.40 (m, 3H), 7.23 (t, J=8 Hz, 1H), 7.13 (t, J=8 Hz, 1H), 5.14 (s, 1H), 3.41 (d, J=12 Hz, 1H), 1.87 (d, J=12 Hz, 1H), 1.33 (s, 3H)。
【0209】
(実施例6〜32)
表1に記載の実施例6〜32を、上記実施例1〜5に記述した経路の一つによって製造した。
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0210】
*HPLCの設定:
カラム:
A:YMC S5 CombiScreenカラム 4.6×50mm
B:YMC S5 ODSカラム 4.6×50mm
溶媒:4分間で10-90%水性メタノール(0.2%リン酸含有)
流速:4mL/分
検出:220nmのUV
実施例32(99%ee)は、対応する(R)酸(その製造はWO04009017に記載されている)から製造した。
【0211】
(実施例33)
【化37】

ステップ1
Emry(商標)プロセスバイアルに、4-(3-ブロモ-フェニル)-チアゾール-2-イルアミン(100mg,0.392mmol,2-ブロモ-1-(3-ブロモ-フェニル)-エタノンおよびチオ尿素をエタノール中、室温で終夜反応させることによって製造)およびフェニルボロン酸(96mg,0.784mmol)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(46mg,0.04mmol)、2M K2CO3 0.4mL、およびDMF 3mLを投入した。窒素を15分間バブリングすることによって反応混合物を脱気してから密封し、150℃で30分間のマイクロ波照射に付した。反応を冷却し、濾過し、分取用HPLC(カラム:YMC,C-18 Ballistic,30×100mm;10-90%水性CH3OH/0.1%TFA,流速25mL/分,検出波長220nm;以降の化合物についても注記がない限り同じ)で精製することにより、4-ビフェニル-3-イル-チアゾール-2-イルアミン(76mg,収率77%)のTFA塩を得た。LC/MS(m/z 253.22 (M-H)+);HPLC(カラム:島津VP-0DS,C-18 Ballistic;10-90%水性CH3OH/0.1%H3PO4;以降の化合物についても注記がない限り同じ)Rt:2.59分。
【0212】
ステップ2
15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(30mg,0.1mmol,WO04009017に従って製造)のCH3CN(2.5mL)溶液に、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC)(30mg,0.15mmol)および1-ヒドロキシ-7-ベンゾトリアゾール(HOBt)(21mg,0.15mmol)を加えた。5分間撹拌した後、その溶液に、4-ビフェニル-3-イル-チアゾール-2-イルアミンの遊離塩基(25mg,0.1mmol)およびジイソプロピルエチルアミン(47mg,0.063ml,0.364mmol)を加えた。反応を90℃で18時間加熱した。粗生成物混合物を冷却し、濾過し、分取用HPLCで精製することにより、実施例33を白色固体として得た(16.5mg,収率30%)。LC/MS(m/z 544.2 (M+H)+);HPLC Rt: 4.487分。
【0213】
(実施例34)
【化38】

ステップ1
実施例1のステップ2と同様にして、15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(200mg,0.647mmol)と4-(3-ブロモ-フェニル)-チアゾール-2-イルアミン(214mg,0.841mmol)とのカップリング反応により、15-メチル-N-[4-(3-ブロモ-フェニル)-チアゾール-2-イル]-]-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボキサミド(176mg,収率49%)を得た。LC/MS(m/z 548.08 (M+H)+);HPLC Rt:4.385分。
【0214】
ステップ2
実施例1のステップ1と同様にして、実施例2のステップ1で得た臭化物(40mg,0.073mmol)とピリジン-3-イル-ボロン酸(23mg,0.18mmol)との鈴木カップリング反応により、実施例34を白色固体として得た(31.6mg,収率79%)。LC/MS(m/z 545.19(M+H)+);HPLC Rt:3.72分。
【0215】
(実施例35)
【化39】

実施例33のステップ1で述べた方法と同様にして、実施例34のステップ1で得た臭化物(30mg,0.055mmol)とピリジン-4-イル-ボロン酸(17mg,0.14mmol)との鈴木カップリング反応により、実施例35を白色固体として得た(25.4mg,収率85%)。LC/MS(m/z 545.17(M+H)+);HPLC Rt:3.48分。
【0216】
(実施例36)
【化40】

実施例33のステップ1と同様にして、実施例34のステップ1で得た臭化物(30mg,0.055mmol)と[3-(tert-ブトキシカルボニルアミノ-メチル)-フェニル]-ホスホン酸(34mg,0.14mmol)との鈴木カップリング反応により、BOC保護生成物を得た。それを0℃においてトリフルオロ酢酸(0.9ml)で処理し、室温で12時間撹拌した。反応をエバポレートし、分取用HPLCで精製することにより、実施例36(TFA塩)を白色固体として得た(11mg,収率29%)。LC/MS(m/z 573.24(M+H)+);HPLC Rt:3.55分
【0217】
(実施例37)
【化41】

ステップ1
アセチルグアニジン(6.07g,60mmol)のDMF(40ml)溶液に、2-ブロモ-1-(3-ブロモ-フェニル)-エタノンのDMF(20ml)溶液を室温で滴下した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。反応を酢酸エチルおよび水に入れた。分離後、有機層をブラインで洗浄し、乾燥(MgSO4)し、濃縮することにより、粗生成物を得た。粗生成物をフラッシュカラム(シリカゲル,0.3%NH4OHを含むクロロホルム中の3%メタノール)で精製することにより、N-[4-(3-ブロモ-フェニル)-1H-イミダゾール-2-イル]-アセトアミドを白色固体として得た(2.03g,収率36%)。そのアセトアミド(1.5g,5.38mmol)を、メタノール40mlおよび水20mlの溶液に溶解した。濃塩酸をゆっくり加えた。反応を86℃で4時間加熱した。反応を濃縮することにより、4-(3-ブロモ-フェニル)-1H-イミダゾール-2-イルアミン(1.276g,収率86%)のHCl塩を得た。LC/MS(m/z 2378.05,240.06 (M+H)+);HPLC Rt:1.86分。
【0218】
ステップ2
実施例33のステップ1と同様にして、実施例37のステップ1で得た臭化物(126mg,0.31mmol)とピリジン-3-イル-ボロン酸(96mg,0.78mmol)との鈴木カップリング反応により、4-(3-ピリジン-3-イル-フェニル)-1H-イミダゾール-2-イルアミンを、1N水酸化ナトリウム水溶液による洗浄後に、オフホワイト固体として得た(51mg,収率69%)。LC/MS(m/z 237.2 (M+H)+);HPLC Rt:0.81分。
【0219】
ステップ3
実施例33のステップ2と同様にして、15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(50mg,0.163mmol)と4-(3-ピリジン-3-イル-フェニル)-1H-イミダゾール-2-イルアミン(50mg,0.212mmol)とのカップリング反応により、実施例37(TFA塩)を白色固体として得た(27mg,収率31%)。LC/MS(m/z 528.3 (M+H)+);HPLC Rt:2.90分。
【0220】
(実施例38)
【化42】

ステップ1
実施例33のステップ1と同様にして、実施例37のステップ1で得た臭化物(111mg,0.41mmol)と(2-メトキシ-ピリジン-3-イル)-ボロン酸(125mg,0.817mmol)との鈴木カップリング反応により、4-[3-(2-メトキシ-ピリジン-3-イル)-フェニル]-1H-イミダゾール-2-イルアミンを、SPEイオン交換プラグを通した後に、無色のガラス質として得た(37.5mg,収率34.4%)。LC/MS(m/z 267.0 (M+H)+);HPLC Rt:2.2分。
【0221】
ステップ2
実施例33のステップ2と同様にして、15-メチル-8-ニトロテトラシクロ[6.6.2.02,7.09,14]ヘキサデカ-2,4,6,9,11,13-ヘキサエン-15-カルボン酸(43mg,0.14mmol)と4-[3-(2-メトキシ-ピリジン-3-イル)-フェニル]-1H-イミダゾール-2-イルアミン(37.5mg,0.14mmol)とのカップリング反応により、実施例38(TFA塩)を白色固体(16mg,収率20%)として得た。LC/MS(m/z 558.3 (M+H)+);HPLC Rt:3.665分。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)または(II):
【化1】

[式中、
Qは、NH、O、およびSから選択される;
Yは、アリールまたはヘテロアリールである;
Zは、H、C2-6アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、またはアルコキシである;
Rは、水素、シアノ、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールアルキル、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シアノアルキル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、アリールオキシアルキル、またはヒドロキシアリールである;
R1は、水素またはC1-4アルキルである;
R2は、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NHC(O)ReRf、NHCOg、NHCONReRf、NHSOpRg、-SO2NReRf、NReSO2NReRf、またはNReSOpRgである;
Raは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、アルキルオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NReRf、NHCORg、NHCONReRfまたはNHSO2Rgである;
Rbは、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アリール、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シアノ、ヘテロアリールアミノカルボニル、シクロヘテロアルキルカルボニル、シアノアルキル、アルキルアミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、アルキルオキシアルキル、ニトロ、NReRf、CHO、CO2アルキル、ヒドロキシアリール、アリールオキシアルキル、CONReRf、CH2NReRf、CO2H、CH2OH、CH2NReRf、NHCORg、NHCONReRf、またはNHSO2Rgである;
RcおよびRdは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、NReRf、アリール、ヒドロキシ、アリールオキシ、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、ヒドロキシアリール、およびアリールオキシアルキルから独立して選択される;
ReおよびRfは、水素、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキル、およびシクロアルキルアルキルから独立して選択される(ただし、ReおよびRfが両方ともアルコキシまたはアミノであることはないものとする)か、または、
ReおよびRfは、それらが結合している窒素と共に全体として、N、OまたはSであることができる1、2または3個のヘテロ原子を含有する5員、6員または7員ヘテロアリールまたはシクロヘテロアルキル環を形成することができる;
Rgは、水素、アリール、アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシ、アミノ、置換アミノ、アルコキシアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、ヘテロアリール、シクロヘテロアルキル、ヘテロアリールアルキル、シクロヘテロアルキルアルキル、シクロアルキルおよびシクロアルキルアルキルから選択される;
A環は、飽和、部分飽和または不飽和6員炭素環式または複素環式環を表す;
B環は、飽和、部分飽和または不飽和6員炭素環式または複素環式環を表す]
の構造を持つ化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項2】
A環が、構造:
【化2】

を持ち、B環が構造:
【化3】

を持ち[式中、X1、X2、X3およびX4は、CH、CH2、CHR15、CR16、CR16R17、N、NH、NR18、OおよびSから独立して選択され;X5、X6、X7およびX8が、CH、CH2、CHR19、CR20、CR20R21、N、NH、NR22、OおよびSから独立して選択される]、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21およびR22が、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、およびシクロヘテロアルキルから独立して選択され、前記A環および前記B環のそれぞれが、多くて二つの窒素環原子、多くて二つの酸素環原子および多くて一つの硫黄環原子を含有する、請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項3】
A環およびB環が炭素環式不飽和6員環である式を持つ、請求項2に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項4】
RがHまたはアルキルであり;
RaおよびRbが、水素、ハロゲン、アルキル、シアノ、ニトロ、アミノ、ホルミル、CO2アルキル、CONReRf、およびCH2NReRfから独立して選択される、
請求項3に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項5】
R2が、水素、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヒドロキシ、C1-4アルキル、シアノ、ニトロ、またはNH2であり;
Ra、RcおよびRdがそれぞれ水素である、
請求項4に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項6】
RがC1-4アルキルであり;
Rbが水素、ハロ、CN、NO2、NH2、またはCHOである、
請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項7】
式(IA):
【化4】

[式中、Zは、H、シクロアルキル、C2-6アルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、またはアルコキシである]
の構造を持つ、請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項8】
RがC1-4アルキルであり;
Zが、シクロアルキル、アリール、またはヘテロアリール環(各環は、R3から選択される1〜3個の基で置換される)であり;
R3が、出現位置ごとに独立して、
(i)Hもしくはハロ;または
(ii)アルキル、アルケニル、OR5、アリール、およびヘテロアリール(これらの各基は、R4から選択される1〜2個の基で置換される)
であり;
R4が、H、フェニル、S(O)2R5、NHC(O)R5、N(R5)2であり;
R5が、出現位置ごとに独立して、HまたはC1-4アルキルであり;
Rbが、シアノまたはニトロである、
請求項7に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項9】
Zが
【化5】

【化6】

から選択される、請求項8に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項10】
式(IIA):
【化7】

[式中、Yはアリールまたはヘテロアリールである]
の構造を持つ、請求項1に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項11】
RがC1-4アルキルであり;
QがSまたはNHである、
請求項10に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項12】
Yが、フェニルまたはピリジル環(これらの各基はR6から選択される1〜3個の基で置換される)であり;
R6が、H、アミノアルキル、またはアルコキシであり;
Rbがニトロである、
請求項11に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項13】
Yが
【化8】

から選択される、請求項12に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項14】
Rがメチルであり、QがSである、請求項10に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項15】
Rがメチルであり、QがNHである、請求項10に記載の化合物、またはその立体異性体、その互変異性体、またはその医薬的に許容できる塩。
【請求項16】
(i)
【化9】

【化10】

【化11】

または
(ii)(i)の立体異性体、互変異性体、もしくは医薬的に許容できる塩
の構造を持つ、請求項7に記載の化合物。
【請求項17】
(i)
【化12】

または
(ii)(i)の立体異性体、互変異性体、もしくは医薬的に許容できる塩
の構造を持つ、請求項10に記載の化合物。
【請求項18】
グルココルチコイド受容体によってその転写が刺激もしくは抑制される遺伝子の発現産物に関連する炎症性もしくは自己免疫性の疾患もしくは障害を処置する方法、またはAP-1および/もしくはNF-κB誘導性転写に関連する疾患もしくは障害を処置する方法、またはAP-1および/もしくはNF-κB依存性遺伝子発現に関連する疾患もしくは障害を処置する方法であって、疾患または障害が、AP-1および/またはNF-κBの調節制御を受ける遺伝子の発現に関連し、処置を必要とする患者に、治療有効量の、請求項1に記載の化合物を投与することを含み、疾患または障害が、腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓、骨髄、角膜、小腸、皮膚アログラフト、皮膚ホモグラフト、心臓弁異種移植片の移植拒絶、血清病、および移植片対宿主病、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、I型およびII型糖尿病、若年性糖尿病、肥満、喘息、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、壊疽性膿皮症、全身性エリテマトーデス、重症筋無力症、乾癬、皮膚炎、皮膚筋炎;湿疹、脂漏、肺炎症、眼のぶどう膜炎、肝炎、グレーブス病、橋本甲状腺炎、自己免疫性甲状腺炎、ベーチェット症候群またはシェーグレン症候群、悪性貧血または免疫性溶血性貧血、アテローム性動脈硬化、アジソン病、特発性副腎不全、多腺性自己免疫疾患、糸球体腎炎、強皮症、モルヘア、扁平苔癬、白斑、円形脱毛症、自己免疫性脱毛症、自己免疫性下垂体機能低下症、ギラン・バレー症候群、および肺胞炎;接触過敏症、遅延型過敏症、接触皮膚炎、じんま疹、皮膚アレルギー、呼吸器アレルギー、枯草熱、アレルギー性鼻炎およびグルテン過敏性腸症、変形性関節症、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸窮迫症候群、セザリー症候群、再狭窄、狭窄およびアテローム性動脈硬化、先天性副腎皮質過形成、非化膿性甲状腺炎、癌に関連する高カルシウム血症、若年性慢性関節リウマチ、強直性脊柱炎、急性および亜急性滑液包炎、急性非特異性腱鞘炎、急性痛風性関節炎、外傷後変形性関節炎、変形性関節症の滑膜炎、上顆炎、急性リウマチ性心臓炎、天疱瘡、水胞性疱疹状皮膚炎、重症多形紅斑、剥脱性皮膚炎、乾癬、脂漏性皮膚炎、季節性または通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬物過敏症反応、アレルギー性結膜炎、角膜炎、眼部帯状ヘルペス、虹彩炎および虹彩毛様体炎、脈絡網膜炎、視神経炎、症候性サルコイドーシス、劇症または播種性肺結核化学療法、成人の特発性血小板減少性紫斑病、成人の二次性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、成人の白血病およびリンパ腫、小児急性白血病、潰瘍性大腸炎、限局性腸炎、クローン病、シェーグレン症候群、自己免疫脈管炎、多発性硬化症、重症筋無力症、敗血症、および慢性閉塞性肺疾患から選択される方法。
【請求項19】
疾患または障害が、移植拒絶、慢性関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、I型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬および慢性肺疾患から選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
請求項1に記載の化合物と医薬的に許容できる担体とを含む医薬組成物。

【公表番号】特表2008−527006(P2008−527006A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−551460(P2007−551460)
【出願日】平成18年1月13日(2006.1.13)
【国際出願番号】PCT/US2006/001482
【国際公開番号】WO2006/076702
【国際公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(391015708)ブリストル−マイヤーズ スクイブ カンパニー (494)
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL−MYERS SQUIBB COMPANY
【Fターム(参考)】