説明

ケイ素含有アダマンタン化合物

【課題】 耐熱性や耐候性に優れることが期待されるアダマンタン骨格を有するポリマーであって、硬すぎることは無く、操作性にも優れるポリマーを与えるようなアダマンタン化合物を提供すること。
【解決手段】 例えば、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンとジヘキシルシランをヒドロシリル化触媒の存在下反応させることによって得られる1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタンのような下記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物。該化合物は、1,4−ジエチニルベンゼンなどの不飽和結合含有化合物とヒドロシリル化することにより耐熱性ポリマーを与える。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性材料や電子材料用の封止剤、コーティング剤、各種工業品の原料として有用な新規なケイ素含有アダマンタン化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED)等の封止剤においては、近年、透明性を維持したまま、より耐熱性が高いものが要求されてきており、特に近紫外、白色LEDの封止剤では、高出力化に伴う高熱と400nm以下の紫外光劣化に耐えられる材料が望まれている。これまで、このような封止剤材料にはエポキシ樹脂が使用されているが、前記した高熱と400nm以下の紫外光劣化に耐えうるエポキシ樹脂が開発されておらず、エポキシ樹脂の代替品としてシリコン樹脂の使用が検討されてきている。
【0003】
一方、アダマンタン誘導体は、優れた耐熱性及び透明性を有することから耐熱性高分子等の高機能性材料や半導体用レジスト等の電子材料への応用が期待できる。このようなアダマンタンを主鎖骨格に有する重合体としては、例えば、アダマンタン同士が連なった化合物が挙げられる(例えば、非特許文献1)。該ポリマーは比較的高い熱重量減少温度を示すものの、主鎖が剛直であるため、樹脂として使用するのには極端に硬く、樹脂使用は機械的強度や操作性等の面からも困難であることが予想される。
【0004】
【非特許文献1】Macromolecules、2004年、37巻、7069−7071ページ
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、アダマンタン骨格を有するポリマーは耐熱性及び透明性の観点から優れたLEDの封止剤材料となり得る可能性を有していると考えられるが、現在のところそのようなポリマーは実用化されていない。
【0006】
そこで、本発明は、耐熱性や耐候性に優れることが期待されるアダマンタン骨格を有するポリマーであって、硬すぎることは無く、操作性にも優れるポリマーを与えるようなアダマンタン化合物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、シリコン樹脂にアダマンタン骨格を導入すれば上記目的が達成できるのではないかと考え、鋭意検討を行った。その結果、アリルオキシ基を有するアダマンタン誘導体とヒドロシラン化合物をハイドロシリレーションすることにより得られる新規なケイ素含有アダマンタン化合物は、不飽和結合含有化合物とヒドロシリル化反応させることによりポリマー化できること、更にこのようにして得られたポリマーは耐熱性が高く、LED用の封止剤を始めとして様々な耐熱性を要求される用途に使用できる可能性があることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0008】
即ち、第一の本発明は、下記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物である。
【0009】
【化1】

【0010】
〔式中、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子であり、R、及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(2)で示される基である。
【0011】
【化2】

【0012】
{式中、R、R、及びRは、各々前記式(1)におけるR、R、及びRと同義である。}〕
上記第一の本発明のケイ素含有アダマンタン化合物としては、下記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物を挙げることができる。
【0013】
【化3】

【0014】
〔式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子であり、R、Rは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(4)で示される基である。
【0015】
【化4】

【0016】
{式中、R、及びRは、各々前記式(3)におけるR、及びRと同義である。}〕
また、第二の本発明は、下記式(5)
【0017】
【化5】

【0018】
(式中、R10、及びR11は、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリルオキシ基、フェニル基、フッ素原子、又は塩素原子である。)
で示されるアリルオキシ化合物と、ヒドロシラン化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下にヒドロシリル化反応させることを特徴とする前記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物の製造方法である。
【0019】
さらに、第三の本発明は、前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物と不飽和結合含有化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下ヒドロシリル化反応を行うことを特徴とするアダマンタン含有ケイ素ポリマーの製造方法である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は、該化合物のケイ素原子に結合した官能基を利用してポリマーを与えることができる。たとえば、それ自体が縮重合してポリマー化することもできる。また、ヒドロシリル基(Si−H基)を有する本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は、不飽和結合含有化合物とヒドロシリル化反応させることによりポリマー化することもできる。そして、このようにして得られたポリマーは、アダマンタン骨格を有することに起因する優れた特性(たとえば高耐熱性)を有し、しかも主鎖においてアダマンタン骨格は直接連結していないため硬くなりすぎず、取り扱いが容易である。また、不飽和結合含有化合物を選定することによって得られるポリマーの各種物性を制御することも可能である。したがって、本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は、各種機能性材料や電子材料用の封止剤、コーティング剤などの各種工業用ポリマー材料の原料として有用である。さらに、本発明のケイ素含有アダマンタン化合物のうち3官能以上のものは架橋剤として使用することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は、新規な化合物であり、各々対応するアダマンタン類を原料として用い、製造することができる。
【0022】
以下、本発明のケイ素含有アダマンタン化合物及びその製造方法で使用する反応物、反応条件や反応手順、生成物等について詳しく説明する。
本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は下記式(1)で示される。
【0023】
【化6】

【0024】
上記式(1)におけるR、R、Rは、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子である。炭素数1〜12のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基が挙げられる。これらの中でも特に、化合物の取り扱いの良さより、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基が好ましく、特に、メチル基、エチル基、ヘキシル基が好ましい。炭素数1〜12のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基が挙げられる。これらの中でも特に、化合物の反応性の高さより、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基が好ましく、特に、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
【0025】
また、前記式(1)におけるR、Rは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(2)で示される基である。
【0026】
【化7】

【0027】
{式中、R、R、Rは、式(1)のR、R、Rと同義である。}
炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられ、これらの中でも特に、化合物の取り扱いの良さより、メチル基、エチル基が好ましい。また、炭素数1〜5のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基が挙げられ、化合物の取り扱いの良さより、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が好ましい。
【0028】
本発明において、前記式(1)で示される化合物の内、好適な化合物を具体的に例示すると、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(トリメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(トリクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(トリメトキシシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエトキシシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(トリクロロシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(トリメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(トリクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(トリメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(トリエトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(トリクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン等が挙げることができる。
【0029】
本発明においては、前記式(1)で示される化合物の中でも、ハイドロシリレーションが可能であるという観点から、下記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物が好適である。
【0030】
【化8】

【0031】
上記式(3)におけるR、Rは、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子である。炭素数1〜12のアルキル基、及び炭素数1〜12のアルコキシ基としては、前記式(1)におけるR乃至Rと同様のものが挙げられる。
【0032】
また、前記式(3)におけるRおよびRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(4)で示される基である。
【0033】
【化9】

【0034】
{式中、RおよびRは、前記式(3)のRおよびRと同義である}
本発明において、前記式(3)で示される化合物の内、好適な化合物を具体的に例示すると、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジエチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジメトキシシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5,7−テトラキス{3−(ジクロロシリル)プロポキシ}アダマンタン等が挙げることができる。これらの中でも特に、取り扱いの良さより、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3−ビス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジメチルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタン、1,3,5−トリス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンが好ましい。
【0035】
本発明のケイ素含有アダマンタン化合物の製造方法は特に限定されないが、例えば次のような方法により好適に製造することができる。
【0036】
即ち、下記式(5)で示されるアリルオキシ化合物と、下記式(6)で示されるヒドロシラン化合物と、をヒドロシリル化触媒の存在下、反応させることで製造することができる。
【0037】
【化10】

【0038】
(式中、R10、R11は、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリルオキシ基、フェニル基、フッ素原子、又は塩素原子である。)
【0039】
【化11】

【0040】
(式中、R12、R13、R14は、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子である。)
前記式(5)で示されるアリルオキシ化合物を具体的に例示すれば、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−エチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジエチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−フルオロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジフルオロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−クロロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジクロロアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−エチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−フルオロアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−クロロアダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(アリルオキシ)アダマンタン等を挙げることができる。この内特に、ケイ素含有アダマンタン化合物の耐熱性の高さより、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−メチルアダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(アリルオキシ)アダマンタンが好ましく特に、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタンが好ましい。
【0041】
前記式(6)で示されるヒドロシラン化合物を具体的に例示すれば、ジメチルシラン、トリメチルシラン、ジエチルシラン、トリエチルシラン、ジヘキシルシラン、トリヘキシルシラン、ジフェニルシラン、トリフェニルシラン、ジクロロシラン、トリクロロシラン等を挙げることができる。この内特に、ケイ素含有アダマンタン化合物の耐熱性の高さより、ジヘキシルシラン、ジフェニルシランが好ましい。ヒドロシラン化合物の使用量は、得られる化合物の有用性の観点より、アリルオキシ化合物がビスアリルオキシ化合物の場合、ビスアリルオキシ化合物1モルに対し、1.5〜2.5モル、特に1.7〜2.2モル使用するのが好ましく、トリスアリルオキシ化合物の場合、トリスアリルオキシ化合物1モルに対し、2.5〜3.5モル、特に2.7〜3.2モル使用するのが好ましく、テトラキスアリルオキシ化合物の場合、テトラキスアリルオキシ化合物1モルに対し、3.5〜4.5モル、特に3.7〜4.2モル使用するのが好ましい。
【0042】
また、ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化触媒として使用される公知の化合物が制限なく使用できるが、ヒドロシリル化の効率の良さから、ロジウム系触媒、白金系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられる。この内特に入手の容易さ等より、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)、ジクロロパラジウム(II)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物等を上げることができる。ヒドロロシリル化触媒の使用量は、得られるケイ素含有アダマンタン化合物の有用性の観点より、使用するアリルオキシ化合物1モルに対し、0.00025〜0.05モル、特に0.0005モル〜0.025モル使用するのが好ましい。
【0043】
アリルオキシ化合物のヒドロシリル化は、操作性の良さより、有機溶媒の存在下行うのが好ましい。この時に使用する有機溶媒としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものが好ましく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。この内特に、操作性の良さより、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類が好ましく、特にトルエン、テトラヒドロフランが好ましい。有機溶媒の使用量は特に制限はされないが、操作性の良さより使用するアリルオキシ化合物に対し、1〜100質量倍、得に、2〜50質量倍であるのが好ましい。
【0044】
このときの反応は、好ましくは溶媒中で各反応試剤を混合することにより行なわれる。反応温度は特に制限はされないが、通常0〜120℃で十分な転化率を得ることができる。反応時間も特に制限はされないが、通常1〜60時間で十分な転化率を得ることができる。
【0045】
このようにして得られたケイ素含有アダマンタン化合物の粗体を精製する方法は、特に制限はされないが、例えば、再結晶、蒸留、再沈殿、カラムクロマトグラフィー等の手法により精製することができる。
【0046】
また、前記式(5)で示されるアリルオキシ化合物は、前記式(6)で示されるヒドロシラン化合物以外のヒドロシラン化合物を使用した場合でも、ヒドロシリル化反応を行うことが可能である。
【0047】
本発明の前記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物は、アルコキシ基、塩素原子、水素原子などが結合した反応性シリル基を有しているため、自己縮合反応や他の化合物との縮合反応、付加反応等により、多種多様なポリマーの形成が可能な化合物であり、非常に有用性が高い。例えば、前記式(1)において、アルコキシシリル基を有する化合物は、アルコキシシラン化合物に一般的に適用される縮合方法で、酸触媒、又は塩基触媒、及び水の存在下で、加水分解、続く脱水縮合による自己縮合反応を行うことが可能である。また、テトラエトキシシランのようなアルコキシシラン化合物とも同様の縮合反応を行うことができ、多架橋ポリマーの構築も可能である。その他にも、チタニウムテトライソプロポキサイド等の金属アルコキシド化合物とも同様の縮合反応を行うことができるため、異なる金属原子を含有するアダマンタン含有ポリマーの構築も可能である。
【0048】
更に、前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物は、不飽和結合含有化合物とヒドロシリル化触媒の存在下にヒドロシリル化反応することによりアダマンタン含有ケイ素ポリマーを与える。この時に使用される不飽和結合含有化合物としては、不飽和結合を含有する公知の化合物が制限なく使用できるが、得られるポリマーの性能の良さより、下記式(7)で示される1,4−ジエチニルベンゼン化合物、下記式(8)で示される1,3−ジエチニルベンゼン化合物、下記式(9)で示される1,4−ジビニルベンゼン化合物、下記式(10)で示される1,3−ジビニルベンゼン化合物、下記式(11)で示される2,5−ノルボルナジエン化合物、及び下記式(5)で示されるアリルオキシ化合物が好適に使用される。
【0049】
【化12】

【0050】
(式中、R15、R16、R17、R18は、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フッ素原子、又は塩素原子である。)
【0051】
【化13】

【0052】
{式中、R19、R20、R21及びR22は、前記式(7)におけるR15、R16、R17及びR18と同義である。}
【0053】
【化14】

【0054】
{式中、R15、R16、R17及びR18は、前記式(7)におけるR15、R16、R17及びR18と同義である。}
【0055】
【化15】

【0056】
{式中、R19、R20、R21及びR22は、前記式(7)におけるR15、R16、R17及びR18と同義である。}
【0057】
【化16】

【0058】
{式中、R23、R24、R25及びR26は、前記式(7)におけるR15、R16、R17、R18と同義である。}
【0059】
【化17】

【0060】
(式中、R10、R11は、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリルオキシ基、フェニル基、フッ素原子、又は塩素原子である。)
前記式(7)で示される1,4−ジエチニルベンゼン化合物の内、好適なものを例示すれば、1,4−ジエチニルベンゼン、2−メチル−1,4−ジエチニルベンゼン、2,6−ジメチル−1,4−ジエチニルベンゼン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジエチニルベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジエチニルベンゼン、2,6−ジフルオロ−1,4−ジエチニルベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジエチニルベンゼン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、1,4−ジエチニルベンゼンが好ましい。
【0061】
前記式(8)で示される1,3−ジエチニルベンゼン化合物の内、好適なものを例示すれば、1,3−ジエチニルベンゼン、2−メチル−1,3−ジエチニルベンゼン、4−メチル−1,3−ジエチニルベンゼン、5−メチル−1,3−ジエチニルベンゼン、2,5−ジメチル−1,3−ジエチニルベンゼン、4,5−ジメチル−1,3−ジエチニルベンゼン、2,4,5,6−テトラメチル−1,3−ジエチニルベンゼン、2−フルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン、4−フルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン、5−フルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン、2,5−ジフルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジエチニルベンゼン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、1,3−ジエチニルベンゼンが好ましい。
【0062】
前記式(9)で示される1,4−ジビニルベンゼン化合物の内、好適なものを例示すれば、1,4−ジビニルベンゼン、2−メチル−1,4−ジビニルベンゼン、2,6−ジメチル−1,4−ジビニルベンゼン、2,3,5,6−テトラメチル−1,4−ジビニルベンゼン、2−フルオロ−1,4−ジビニルベンゼン、2,6−ジフルオロ−1,4−ジビニルベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロ−1,4−ジビニルベンゼン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、1,4−ジビニルベンゼンが好ましい。
【0063】
前記式(10)で示される1,3−ジビニルベンゼン化合物の内、好適なものを例示すれば、1,3−ジビニルベンゼン、2−メチル−1,3−ジビニルベンゼン、4−メチル−1,3−ジビニルベンゼン、5−メチル−1,3−ジビニルベンゼン、2,5−ジメチル−1,3−ジビニルベンゼン、4,5−ジメチル−1,3−ジビニルベンゼン、2,4,5,6−テトラメチル−1,3−ジビニルベンゼン、2−フルオロ−1,3−ジビニルベンゼン、4−フルオロ−1,3−ジビニルベンゼン、5−フルオロ−1,3−ジビニルベンゼン、2,5−ジフルオロ−1,3−ジビニルベンゼン、4,5−ジフルオロ−1,3−ジビニルベンゼン、2,4,5,6−テトラフルオロ−1,3−ジビニルベンゼン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、1,3−ジビニルベンゼンが好ましい。
【0064】
前記式(11)で示される2,5−ノルボルナジエン化合物の内、好適なものを例示すれば、2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、2,5−ノルボルナジエンが好ましい。
【0065】
前記式(5)で示されるアリルオキシ化合物のうち、好適なものを例示すれば、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−エチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジエチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−フルオロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジフルオロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−クロロアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジクロロアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−メチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−エチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−フルオロアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−クロロアダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(アリルオキシ)アダマンタン等を挙げることができる。この内特に、入手の容易さ等より、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5−メチルアダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)−7−メチルアダマンタン、1,3,5,7−テトラキス(アリルオキシ)アダマンタンが好ましく特に、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン、1,3−ビス(アリルオキシ)−5,7−ジメチルアダマンタン、1,3,5−トリス(アリルオキシ)アダマンタンが好ましい。
【0066】
これら不飽和結合含有化合物は、ヒドロシリル基を2つ有するビスヒドロシリル体である前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物と反応させる場合、得られるポリマーの有用性の観点から、ビスヒドロシリル体1モルに対し、0.5〜1.5モル、特に0.75〜1.25モル使用するのが好ましい。また、ヒドロシリル基を3つ有するトリスヒドロシリル体である前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物と反応させる場合、得られるポリマーの有用性の観点から、トリスヒドロシリル体1モルに対し、0.3〜1.0モル、特に0.4〜0.8モル使用するのが好ましい。また、ヒドロシリル基を4つ有するテトラキスヒドロシリル体である前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物と反応させる場合、得られるポリマーの有用性の観点から、テトラキスヒドロシリル体1モルに対し、0.05〜0.8モル、特に0.1〜0.7モル使用するのが好ましい。
【0067】
また、ヒドロシリル化触媒としては、ヒドロシリル化触媒として使用される公知の化合物が制限なく使用できるが、ヒドロシリル化の効率の良さから、ロジウム系触媒、白金系触媒、パラジウム系触媒等が挙げられる。この内特に入手の容易さ等より、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)、ジクロロパラジウム(II)、ヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物等を上げることができる。ヒドロロシリル化触媒の使用量は、得られるアダマンタン含有ケイ素ポリマーの有用性の観点より、使用するケイ素含有アダマンタン化合物1モルに対し、0.00025〜0.05モル、特に0.0005モル〜0.025モル使用するのが好ましい。
【0068】
ケイ素含有アダマンタン化合物と不飽和結合含有化合物とのハイドロシリレーションは、ヒドロシリル化触媒の存在下、無溶媒で行っても良く、有機溶媒中で行っても良い。有機溶媒を使用する場合の有機溶媒としては、ヒドロシリル化反応を阻害しないものが好ましく、具体的に例示すれば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。この内特に、操作性の良さより、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類が好ましく、特にトルエン、テトラヒドロフランが好ましい。有機溶媒の使用量は特に制限はされないが、操作性の良さより使用するアリルオキシ化合物に対し、1〜100質量倍、得に、2〜50質量倍であるのが好ましい。
【0069】
このとき反応は、好ましくは溶媒中で各反応試剤を混合することにより行なわれる。反応温度は特に制限はされないが、通常0〜200℃で十分な転化率を得ることができる。反応時間も特に制限はされないが、通常1〜60時間で十分な転化率を得ることができる。また、反応の温度は、使用するケイ素含有アダマンタン化合物、及び不飽和結合含有化合物の特性に応じ、段階的に温度を上昇させるなどして、反応速度を任意に調整しながら行うこともできる。
【0070】
本発明においてアダマンタン含有ケイ素ポリマーを調製する際には、必要に応じて、充填剤、カップリング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、染料、顔料、香料等の各種添加剤や安定剤を混合して使用することができる。
【0071】
このような方法により得られるアダマンタン含有ケイ素ポリマーは、ケイ素原子とアダマンタン骨格を含有しているため耐熱性に優れると共に、比較的柔軟なプロピレンユニットを有するため、得られる樹脂も適度な柔軟性を有している。このため、樹脂を使用する際の操作性が良いという利点も有する。
【0072】
本発明のケイ素含有アダマンタン化合物は、上記特性を活かして、各種プラスチック基板原料、コーティング剤原料、接着剤原料、封止剤原料等に好適に使用することができる。
【0073】
以下、本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
製造例1
窒素気流下で、1000mlの4つ口フラスコに、1,3−アダマンタンジオールを100g(0.594mol)、N,N−ジメチルホルムアミドを500ml、臭化アリルを原料の1,3−アダマンタンジオールの3モル倍である215.7g(1.783mol)加え、室温で攪拌した。そこへ、原料の1,3−アダマンタンジオールの2.5モル倍である59.5g(1.485mol)の60%水素化ナトリウム(油性)をn−ヘキサンで洗浄し、反応が暴走しないように慎重に加えた。4時間攪拌後に反応液を、ガスクロマトグラフィー(以下、GCと称す)にて分析を行なった結果、GC純度で原料の1,3−アダマンタンジオールは検出されず、1−アリルオキシ−3−ヒドロキシアダマンタンが2%、構造不明の不純物が1%、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンが97%であった。反応液を10℃以下まで冷却し、水道水300mlを反応液の温度が20℃を越えないよう注意深く滴下した。その後、塩化メチレン700mlを加え、分液操作を行った後、塩化メチレン層をイオン交換水300mlで4回洗浄した。塩化メチレン層を減圧濃縮し、178gの黄色オイルを得た。得られた黄色オイルに、重合禁止剤として住友化学(株)製商品名「スミライザーGM」を0.32g、「スミライザーTP−D」を0.32g、「スミライザーWX−R」を0.32g加えた。減圧蒸留(120℃/1mmHg)を行い、透明液体を138g(1,3−アダマンタンジオール換算の収率で94%)で得た。この液体をGCにより分析した結果、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンの含有量はGC純度98%であった。
【0075】
実施例1
100mlの2つ口フラスコに、製造例1で得られた1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン0.82g(3.31mmol)、ジヘキシルシランを1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンの2.1モル倍である1.38g(6.91mmol)、ヒドロシリル化触媒としてクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)を原料の1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンの0.0015モル倍である0.0046g(0.0049mmol)、トルエンを10ml加え、室温で3時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて、ヒドロシリル化触媒を除去し、溶液を減圧濃縮し、1.77gの無色液体を得た。得られた無色液体のH−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、元素分析を行った結果、目的の1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタンが確認された。測定結果を以下に示す。なお、H−NMRスペクトルの帰属は、下記式(12)の構造式に基づいて帰属を行い、13C−NMRスペクトルに関しては、下記式(13)の構造式に基づいて帰属を行った。
【0076】
【化18】

【0077】
【化19】

【0078】
H−NMRスペクトル(CDCl中):δ3.66(m、2H、H)、δ3.34(t、4H、H)、δ2.28(s、2H、H)、1.47−1.74(m、16H、H、H、H、H、H)、1.23−1.29(m、32H、H、H、H、H)、δ0.86(t、12H、H)0.51−0.59(m、12H、H、H
13C−NMRスペクトル(CDCl中):δ74.09(C10)、δ63.06(C)、δ30.80、35.49、40.73、45.52(C11、C12、C13、C14)、δ11.24、14.12、22.59、24.59、31.56、33.03(C、C、C、C、C、C)、δ25.84(C)、δ7.44(C
元素分析値:C4080Siとして
計算値:C;74.00、H;12.42
実測値:C;73.70、H;12.43
実施例2
100mlの2つ口フラスコに、製造例1で得られた1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタン0.82g(3.31mmol)、ジフェニルシランを1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンの2.0モル倍である1.22g(6.63mmol)、ヒドロシリル化触媒としてクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)を原料の1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンの0.0016モル倍である0.0049g(0.0052mmol)、トルエンを5ml加え、室温で2時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにて、ヒドロシリル化触媒を除去し、溶液を減圧濃縮し、1.77gの無色液体を得た。得られた無色液体のH−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、元素分析を行った結果、目的の1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンが確認された。測定結果を以下に示す。なお、H−NMRスペクトルの帰属は、下記式(14)の構造式に基づいて帰属を行い、13C−NMRスペクトルに関しては、下記式(15)の構造式に基づいて帰属を行った。
【0079】
【化20】

【0080】
【化21】

【0081】
H−NMRスペクトル(CDCl中):δ7.35、7.30−7.38(m、20H、H、H、H)、δ4.84(t、2H、H)、δ3.35(s、4H、H)、δ2.24(s、2H、H)、1.44−1.71(m、16H、H、H、H、H、H)、1.09−1.15(m、4H、H
13C−NMRスペクトル(CDCl中):δ127.94、129.51、134.35、135.13(C、C、C、C)、δ74.10(C)、δ62.55(C)、δ30.72、35.40、40.61、45.38(C、C10、C11、C12)、δ25.48(C)、δ8.49(C
元素分析値:C4048Siとして
計算値:C;77.87、H;7.84
実測値:C;77.60、H;8.00
実施例3
50mlの2つ口フラスコに、実施例1で得られた1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタンを0.46g(0.71mmol)、不飽和結合含有化合物として、1,4−ジエチニルベンゼンを1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタンと等モル倍の0.09g(0.71mmol)、ヒドロシリル化触媒としてクロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)を1,3−ビス{3−(ジヘキシルシリル)プロポキシ}アダマンタンの0.0025モル倍である0.0017g(0.0018mmol)、トルエンを5ml加え、70℃で24時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりヒドロシリル化触媒を除去し、溶液を減圧濃縮した後、クロロホルム−メタノールにより再沈殿を行い、透明なオイル0.26gを得た。得られたポリマーの構造は、下記式(16)に示すものであると考えられる。
【0082】
【化22】

【0083】
(式中のHexはヘキシル基を示し、nは分子量に相当する数量である。)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、重量平均分子量(Mw)と分子量分散(Mw/Mn;重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの)をポリスチレン換算により算出した結果、Mwが9664、Mw/Mnが1.81であった。
【0084】
実施例4
50ml2つ口フラスコに、実施例2で得られた1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンを1.85g(3.00mmol)、不飽和結合含有化合物として、1,4−ジエチニルベンゼンを1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンと等モル倍の0.38g(3.02mmol)、ヒドロシリル化触媒としてヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物を1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンの0.0093モル倍である0.015g(0.0028mmol)、イソプロピルアルコールを1滴、テトラヒドロフランを4ml加え、室温で20時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりヒドロシリル化触媒を除去し、溶液を減圧濃縮した後、クロロホルム−エタノールにより再沈殿を行い、黄褐色の固体1.73gを得た。得られたポリマーの構造は、下記式(17)に示すものであると考えられる。
【0085】
【化23】

【0086】
(式中のPhはフェニル基を示し、nは分子量に相当する数量である。)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、重量平均分子量(Mw)と分子量分散(Mw/Mn;重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの)をポリスチレン換算により算出した結果、Mwが6079、Mw/Mnが1.52であった。また窒素気流下において、熱重量分析により5%熱重量減少温度(Td)、10%熱重量減少温度(Td10)の測定を行った結果、Tdが265℃、Td10が359℃であった。
【0087】
実施例5
実施例4において使用したヒドロシリル化触媒を、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(I)に変更した以外は同様に操作を行い、黄褐色の固体1.48gを得た。得られたポリマーの構造は、実施例4と同様であると考えられる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、重量平均分子量(Mw)と分子量分散(Mw/Mn;重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの)をポリスチレン換算により算出した結果、Mwが6440、Mw/Mnが1.60であった。また窒素気流下において、熱重量分析により5%熱重量減少温度(Td)、10%熱重量減少温度(Td10)の測定を行った結果、Tdが341℃、Td10が384℃であった。
【0088】
実施例6
50ml2つ口フラスコに、実施例2で得られた1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンを1.77g(2.87mmol)、不飽和結合含有化合物として、1,3−ビス(アリルオキシ)アダマンタンを1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンの1.05モル倍の0.74g(3.01mmol)、ヒドロシリル化触媒としてヘキサクロロ白金(IV)酸六水和物を1,3−ビス{3−(ジフェニルシリル)プロポキシ}アダマンタンの0.014モル倍である0.021g(0.041mmol)、イソプロピルアルコールを1滴、テトラヒドロフランを10ml加え、室温で45時間攪拌した。シリカゲルカラムクロマトグラフィーによりヒドロシリル化触媒を除去し、溶液を減圧濃縮した後、クロロホルム−エタノールにより再沈殿を行い、黄褐色の固体0.73gを得た。得られたポリマーの構造は、下記式(18)に示すものであると考えられる。
【0089】
【化24】

【0090】
(式中のPhはフェニル基を示し、nは分子量に相当する数量である。)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、重量平均分子量(Mw)と分子量分散(Mw/Mn;重量平均分子量を数平均分子量で割ったもの)をポリスチレン換算により算出した結果、Mwが3780、Mw/Mnが1.25であった。また窒素気流下において、熱重量分析により5%熱重量減少温度(Td)、10%熱重量減少温度(Td10)の測定を行った結果、Tdが340℃、Td10が371℃であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物。
【化1】

〔式中、R、R、及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子であり、R、及びRは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(2)で示される基である。
【化2】

{式中、R、R、及びRは、各々前記式(1)におけるR、R、及びRと同義である。}〕
【請求項2】
下記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物。
【化3】

〔式中、R及びRは、各々独立に炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、又は塩素原子であり、R、Rは、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、フェニル基、フッ素原子、塩素原子、又は下記式(4)で示される基である。
【化4】

{式中、R、及びRは、各々前記式(3)におけるR、及びRと同義である。}〕
【請求項3】
下記式(5)
【化5】

(式中、R10、及びR11は、各々独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルコキシ基、アリルオキシ基、フェニル基、フッ素原子、又は塩素原子である。)
で示されるアリルオキシ化合物と、ヒドロシラン化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下にヒドロシリル化反応させることを特徴とする前記式(1)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物の製造方法。
【請求項4】
前記式(3)で示されるケイ素含有アダマンタン化合物と不飽和結合含有化合物とを、ヒドロシリル化触媒の存在下ヒドロシリル化反応を行うことを特徴とするアダマンタン含有ケイ素ポリマーの製造方法。

【公開番号】特開2007−308397(P2007−308397A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137187(P2006−137187)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000003182)株式会社トクヤマ (839)
【Fターム(参考)】