説明

ケラチン反応性ポリマー構造体、その合成及び使用

アクリルシリコン、ポリグリコール、多糖又は天然高分子鎖の少なくとも一部を含んでなる(コ)ポリマー構造体であって、一般式
【化1】


(式中、[C-A]は、アクリルシリコン、ポリグリコール、多糖高分子構造体から、又は天然高分子から選ばれるポリマー又はコポリマー鎖の一部であり、及びXは、室温及び生物についての使用に適する反応条件下で反応し、ポリマー鎖自体の早期の変性を生ずることなく、ケラチンとイオン結合又は共有結合を形成する1以上のスルホン基、カルボキシル基、アミノ酸基又はエポキシド基から選ばれる官能基である)で表される複数個の官能化ユニットを含んでなる(コ)ポリマー構造体に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチンと反応するポリマー構造体、その合成、用途及び使用に関する。
【0002】
本発明は、さらに詳述すれば、生物についての使用、特に、ヒトについて使用に関して安全な条件下で、ヒトケラチン、特に、毛髪、睫毛及び眉毛、皮膚、唇、口腔粘膜及び外生殖器の組織を形成するケラチンと化学結合、イオン結合又は共有結合を形成することを可能にする官能基が存在する新規なポリマー又はコポリマー((コ)ポリマーと表示する)構造体に関し、さらに、このような(コ)ポリマー構造体の合成及びその化粧品の分野における使用に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、爪、毛髪及び皮膚用の製品に係る多くの研究では、その主な目的の中でも、物質、基質、有効成分又は染料の、多少の差異はあるが、身体の外表面及び髪に係るケラチンマトリックスとの相互作用を行うことの必要性が示されている。多くの化粧品の機能は、実際、表面の外観の変化と、機械的及び化学的機能の両方を持つ特定の官能性構造体をケラチン表面に担持又は固着させる必要性との両方に関連する。このような開発対象の機能の中でも、下記のものが挙げられる:
‐ヘアコンディショナーの被膜形成能
‐ヘアスタイルの固定性
‐毛髪、皮膚、爪用の保護被膜形成性
‐日焼け関連製品の水抵抗性及び磨耗抵抗性
‐爪(エナメル)、毛髪(染料)、皮膚(メーキャップ)における染料及び顔料の固着能
【0004】
爪用の製品の多くは、カラーリング、又は爪を強化するために支持構造体を塗布することを目的とする。これに対して、皮膚及び毛髪用の製品は、異なった機能及び目的を有する。毛髪再生(trichorogical)の分野では、被膜形成剤の使用は、皮膚関連製品の場合において、水抵抗性日焼け関連製品又は「バリヤー効果」クリームが開発されたと同様に、ケラチン表面に塗付された構造体の持続性をできる限り増大させるとの明確な目的をもって開発されている。
【0005】
国際公開WO 2007/072521(本願出願人に係る先願ではあるが、本願の優先日以降に公開された)は、-SH及びケラチンに存在するNH2基によって置換されうる離脱基から選ばれる官能基を有するポリマーを開示するものである。-SH基の使用は、ジスルフィド結合を破壊することによるケラチンの予防的変化を必要とするとの課題を有し、これに対して、求核性置換用の離脱基の使用は、一般に強烈すぎる反応条件を必要とする。
【0006】
仏国特許第2760359号は、毛髪ケラチンのジスルフィド結合を還元して、-SH反応サイトを創製する工程、及び続いて、外部因子保護剤等からの少なくとも1の活性化合物(例えば、染料、補強剤)を、前記反応性サイトとの共有結合によって固定する工程を含んでなる毛髪繊維の処理法を開示している。
【0007】
米国特許出願公開第20050268405号は、ケラチン繊維を染色するための化合物に係り、この化合物は、顔料及び2種類のポリマー(PA+PB)を含有し、これらポリマーは、それぞれ、-COOH及びエポキシド基(これら2個の基は共有結合を形成できる)のような、少なくとも1の官能基(A又はB)を有する。毛髪への塗付後、2個のポリマーは反応し、2個のポリマー(PA及びPB)間の反応は不溶性の網状化ポリマーを生成する(ポリマーはケラチン繊維上に集合する)。
【0008】
米国特許第5935560号は、-SH基(これ自体、共有結合によって毛髪繊維と結合する)によって官能化されたシリコーンポリマーを含んでなる化合物に関する。チオール基(0.1〜3モル%)は、官能化シリコーンをチオール基によって共有結合様式で毛髪に結合させる反応性基を与える。化合物は、さらにシリコーンを毛髪に結合させるサイトを提供し毛髪にコンディショニング特性を付与するアミン基(-NH2)を含有することもできる。
【0009】
欧州特許第1192932号は、より良好な固着持続性及びより良好な水分に対する抵抗性を持つヘアスタイリング用毛髪固定ジェルの開発を開示している。このような性能は、ポリマーの被膜形成特性及びポリマー構造体とケラチン表面との間の相互作用によって達成される。被膜形成能は、ポリマーとケラチンとの間の接触表面を増大させ、ファンデルワールス結合及び双極子‐双極子相互作用又は水素結合の効力を増大させる(ポリマーの接着を確実なものとする)。
【0010】
米国特許出願公開第2004146471号は、3つの被膜形成性ポリマーの使用による高い固定能及び高い抵抗性を有する組成物に関する。
【0011】
ポリマー物質を固着及び官能化する必要性は、欧州特許第1525877号(構造が温度に応じて変化するポリマーの使用による、ヘアスタイルを固定し、長時間維持する能力に関する)に記載されている。
【0012】
米国特許出願公開第2003135004号は、その特別な構造のため、ケラチンとの相互作用によって接着性及び持続性を確実なものとするポリマーの組成物に係る。ポリマーの使用は、顔の皮膚(メーキャップ製品における使用)、爪、毛髪、睫毛又は眉毛への染料の固定に関して記載されている。
【0013】
一時的に毛髪の構造体と反応する-SH基を含有するシリコーンポリマーの使用は、長年にわたって知られている。このようなポリマーの例は、英国特許第1199776号、欧州特許公開第0295780号、欧州特許公開第0437099号及び米国特許第5935560号に述べられている。
【0014】
中でも、一般にケラチン物質に付着することが試みられてきた機能的な成分は顔料であり、一般的には着色物質である。皮膚、爪及び毛髪を着色する化粧品の能力と同様に、化粧品の着色は、ヨーロッパ、米国において及び多くの国において規制されており、従って、許可されたカラーリング剤は、イタリー国L. 713/86及びEU指令76/768/EECの付属書類に記載されているように、明示リストに記載されている。顔料を変性することは容易ではないため、研究は、欧州特許第0960617号に記載されているように、顔料の固定性及び磨耗抵抗性を増大させる物質、多く被膜形成剤を目標とするものであった。
【0015】
欧州特許第1321126号は、ケラチン上に分布される際にのみ、相互に反応して、それらの間で共有結合を形成し、このようにして、すすぎ及び磨耗に対して極めて抵抗性の被膜を形成する2つの相補性ポリマーの使用を開示している。この場合、ケラチンへの固定は、その場での効果的な巨大分子構造体の形成によるものであり、ケラチンとの相互作用、その結果として、非共有接着を増大することを許容する。
【0016】
国際公開WO 2004/098488号では、チオグリコール酸及びその誘導体の代用還元剤として、2個のチオール基の間にC3-C10鎖を含んでなる水溶性ジチオールが使用されており、好適はpH条件下、格別香りの強くない化学剤を使用して、「恒久的」効果(ケラチン中に存在するジスルフィド結合を破壊する)が達成される利点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
上述の処方及びシステムによる課題は、生成された構造体が限られた寿命を有し、いくつかのケースでは、洗浄に耐えられないものであることにある。従って、現在可能なものよりも長い有効期間を有することができる毛髪用の処方を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
従って、本発明の目的は、上述の課題を解消し、効果を長期間提供できる、特に毛髪の処理、一般的には爪及び皮膚の処理のための処方を提供することにある。
【0019】
このような目的は、請求項1に記載の化粧品用(コ)ポリマーに係る本発明によって達成される。
【0020】
さらに詳述すれば、本発明の目的は、化粧品の部門において、特に、毛髪、睫毛、眉、体毛、爪、粘膜及び皮膚のケア又はトリートメント用製品の処方において適用される一種の(コ)ポリマーにあり、この(コ)ポリマーは、温和な条件下(ヒトについての使用に要求される必須の安全性と両立する)、溶媒及び化学剤(その毒物学的プロフィールが、予めケラチンの構造的結合を変性することなく、特に、毛髪にダメージを与える、ペプチド結合及びジスルフィドブリッジへの変性を生ずることなく、生物、特にヒトについての使用を許容する)の存在下で、化学結合(イオン結合又は共有結合)を形成できる反応性官能基の存在によって特徴付けられる。
【0021】
本発明による(コ)ポリマーは、それ自体で、及びこのようにして構造的、保護的、美的又は再建的作用を構成及び提供するか、又はケラチン表面に、例えば、顔料及び染料のような機能剤、酸化防止剤、UV吸収剤及び日焼け防止剤又は抗菌剤のような保護剤、又はボリューム化作用、潤滑化作用、もつれをほぐす作用、光沢化作用、着色作用及びその他同様の作用を持つ化学構造体を固着させるための基材を構成できる。従って、本発明の目的は、さらに機能剤を備えた一般式(I)の(コ)ポリマーにあると共に、さらに、それ自体又は医療用の医薬活性を持つ分子を備えた一般式(I)のポリマー構造体にある。従って、本発明の目的は、分子又は機能剤の固定において有用な本発明のコポリマー構造体における他の官能基の存在にある。この具体例では、かかる固定は、ポリマー合成の後に生ずる。
本発明の他の目的は、ポリマーマトリックス上への、染料、酸化防止剤、光沢剤、ボリューム化剤、日焼けフィルター剤、顔料等のような前記機能剤を固定させるための新規な方法にある。
【0022】
本発明の他の目的は、一般式(I)のポリマー構造体の化粧品での使用にある。
【0023】
本発明の他の目的は、このようなポリマーマトリックスを含有する化粧品及び革新的化粧製品としての使用条件及び使用形態にある。
【0024】
本発明の他の目的は、上述の用途に適する(コ)ポリマーの合成にある。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のコポリマー構造体は、一般式(I)
【化1】

(式中、[C-A]は、アクリルシリコン、ポリグリコール、多糖高分子構造体から、又は天然高分子から選ばれるポリマー又はコポリマー鎖の一部であり、及び
Xは、室温又は生物についての使用に適する反応条件下で反応し、ポリマー鎖自体の早期の変性を生ずることなく、ケラチンとイオン結合又は共有結合を形成する、1以上のスルホン基、カルボキシル基、アミノ酸基又はエポキシド基から選ばれる官能基である)で表される。
【0026】
本発明によれば、ケラチン構造体との反応に適するポリマーの分子量は、5,000〜10,000、好ましくは10,000〜100,000ダルトンの範囲である。
【0027】
本発明の他の態様によれば、ポリマー鎖において、スルホン基、カルボキシル基、アミノ酸基又はエポキシ基から選ばれる官能基を持つモノマーは、本発明によるポリマー合成に使用するモノマーの総モルについて、少なくとも30モル%、好ましくは、少なくとも40モル%、さらに好ましくは、50〜90モル%の範囲に相当する。
【0028】
好適な具体例では、分子量は10,000〜100,000ダルトンの範囲であり、官能化されたものの量(モル)は、鎖の合成に使用するモノマーの総モルの50〜90%の範囲である。
【0029】
驚くべきことには、上記の特性を有するポリマーは、水中、室温又はいずれにしても45〜50℃を越えない温度(従って、温和な加熱によって得られる)において、ポリペプチド基及び-NH2のようなケラチン官能基と反応できるとの知見が得られた。さらに、既に述べたように、本発明のポリマーとケラチン構造体との間の反応は、活性剤及びケラチン構造体の変性剤の不存在下で生ずる。
【0030】
好ましくは、Xが-COOH又はエポキシ基である場合、(コ)ポリマー鎖は、アクリル及びポリグリコール構造体から得られるが、(コ)ポリマーが分子、すなわち、当該構造体に結合する官能剤が付与される場合には、このような免責事項、すなわち、制限は課されない(詳細な説明については後に示す)。
【0031】
本発明の1具体例では、ポリマー構造体は、一般式(II)
【化2】

(式中、Xは、上述のように、-SO3H、-COOH、アミノ酸基及びエポキシ基から選ばれるものであり、Gは結合であるか、Aとは別に又はAと共に、アクリル及びメタクリル、ビニル、スチレン、ブタジエン、テルペン残基及び無水マレイン酸及びその誘導体から選ばれる)の複数個の官能化ユニットを有する。
【0032】
G及びAの定義は、特に、下記の化合物を含む:
G=アクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸の誘導体及びそれらのメチル、エチルエステル及びC3〜C30アルキル基を持つエステル、アクリロイルモルホリン及びその誘導体、スチレン、o-、m-、p-位にハロゲンを持つスチレン及びその誘導体、塩化ビニル及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジメチルアクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジエチルアクリルアミド及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたアクリルアミド、ビニルピロリドン及びその誘導体、ブタジエン及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたシアノアクリレート又はシアノメタクリレート、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、フランカルボン酸及びその誘導体、ビニルカルバゾール及びその誘導体、塩化ビリデン及びその誘導体、ビニルアルコール及びその誘導体、テルペン及び変性テルペン、及び無水マレイン酸及びその誘導体。
A=アクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸及びそれらのメチル、エチルエステル及びC3〜C30アルキル基を持つエステル、アクリロイルモルホリン及びその誘導体、スチレン、o-、m-、p-位にハロゲンを持つスチレン及びその誘導体、塩化ビニル及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジメチルアクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジエチルアクリルアミド及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたアクリルアミド、ビニルピロリドン及びその誘導体、ブタジエン及びその誘導体、シアノアクリレート又はシアノメタクリレート、フランカルボン酸及びその誘導体、ビニルカルバゾール及びその誘導体、塩化ビリデン及びその誘導体、ビニルアルコール、テルペン及び変性テルペン、及び無水マレイン酸及びその誘導体。
【0033】
特に、Gは、単結合又は-CH2-(アルケニル)以外であって、上述のリストに含まれるものである場合、下記のように、ポリマー合成反応に関与するように利用される二重結合を有することができる。
【化3】

【0034】
本発明によるポリマー構造体は、室温及びヒトについての使用に適合する反応条件下において、ケラチンと一緒にイオン結合又は共有結合を形成できる。
【0035】
温和な条件下でケラチンと反応するポリマーを得るため、毛髪と一緒に安定な化学結合を形成できる4種の官能基(一般式におけるXとして示される)が特定された:
1.スルホン酸基(スルホン酸基を持つモノマーに由来する)
2.カルボキシル基(1以上のカルボキシル基を持つ官能性モノマーの重合に由来する)
3.誘導された重合可能なアミノ酸(好適に官能化される際に重合可能な基を持つアミノ酸に由来する)、及び
4.エポキシド基(エポキシド基を持つモノマーに由来する)。
【0036】
4種の官能基は結合(イオン結合又は共有結合)を形成できるが、ただし、異なる機構による。
【0037】
スルホン酸基又はカルボキシル基を持つポリマーは、ポリマーが、イオン‐共有相互反応によって、毛髪のケラチンとの結合を形成することを許容にする。
【0038】
本発明は、上述の従来技術の文献のいかなるものとも相違するものである。本発明に最も近似するものである文献は国際公開WO 2007/072521である。当該発明は、上述したように、求核置換による、又は先制的に処理したケラチン構造体とのより一般的な-SH結合によるポリマーとケラチンとの間での結合の形成に基づくものである。これに対して、本発明のポリマーは特別な官能基を有するものであり、このような官能基は縮合反応によって反応して、アミド又はスルホンアミド結合及び/又はイオン結合を形成するため、処理前にケラチンを処理する必要がなく、これによって、ケラチンにダメージを与えることがない。
【0039】
以下において詳述するように、反応は、水又は実質的に水性溶媒中において、極めて温和な条件下で行われる。
【0040】
スルホン酸基及びカルボキシル基の使用によって達成される主な利点は、部分的又は全体的な変化を提供する相当量のケラチン官能基のため、ポリマーと毛髪との単なる接触によって、イオン‐共有性の相互反応が容易に生ずることにある。このように、温和な条件下でケラチン構造体と結合できるが、通常の洗浄条件下では、毛髪から除去されないポリマーが完成される。
【0041】
第1の具体例では、主としてイオン結合を介してケラチンに結合するために有用なポリマー(本発明の目的である)は、-SO3H基又は-COOH基の存在によって特徴付けられるものであり、その合成は、概略的に、下記のように示される:
【化4】

(式中、Xは-SO3H、-COOHであり、及びG及びAは上記の意義を有し、すなわち、ポリマーはポリアクリル構造を有する。)
【0042】
好適に活性化された直鎖状又は環状のポリマー、多糖及び毛髪に対してポリマー構造体を化学的に結合させるために、後述の目的のための活性基によって容易に官能化される天然のポリマーによっても、同様の官能化及び同様の目的が達成される。
【0043】
Xが-COOHである場合、誘導された重合可能なアミノ基を持つモノマー、すなわち、好適に官能化される際に重合可能な基を持つアミノ酸に由来のモノマーが、本発明の(コ)ポリマーの合成に有利に使用される。
【0044】
誘導されるアミノ酸を使用することによる主な利点は、毛髪の(ペプチド)ケラチン構造体に対するそれらの親和性、イオン‐共有性の相互作用が、ポリマーと毛髪との単なる接触によって生ずるとの容易性によるものであり、このようにして、ケラチン構造体に結合するが、洗浄によっては簡単に除去されないポリマーを生成できる。
【0045】
その合成は、概略的に、下記のように示される:
【化5】

[式中、G-COOHは、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、チロキシンの誘導体であり(このようなモノマーは、主として、アミノ酸と好適なアクリル剤(アクリル酸、塩化アクリロイル等)との反応によって達成されている);Aは上述の意義を有する。]
【0046】
本発明の他の具体例によれば、ケラチンに対する(コ)ポリマー構造体の結合官能基はエポキシド基であり、エポキシド基を持つモノマーを介して(コ)ポリマー鎖に導入される。
【0047】
エポキシド官能基を持つモノマーを使用することによる主な利点は、毛髪のケラチン(ペプチド)構造体との反応性、及び特に、極めて温和な条件下で、共有結合を形成するオキシラン基と反応する、ケラチン上に存在する求核性官能基によるものである。
【0048】
これらの(コ)ポリマーの合成は、概略的に、下記のように示される:
【化6】

(式中、G及びAは上述の意義を有し、すなわち、
【化7】

は、アクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸の誘導体及びそれらのメチル、エチルエステル及びC3〜C30アルキル基を持つエステル、アクリロイルモルホリン及びその誘導体、スチレン、o-、m-、p-位にハロゲンを持つスチレン及びその誘導体、塩化ビニル及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジメチルアクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジエチルアクリルアミド及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたアクリルアミド、ビニルピロリドン及びその誘導体、ブタジエン及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたシアノアクリレート又はシアノメタクリレート、フランカルボン酸及びその誘導体、ビニルカルバゾール及びその誘導体、塩化ビリデン及びその誘導体、ビニルアルコール及びその誘導体、テルペン及び変性テルペン、及び無水マレイン酸及びその誘導体から選ばれ、
Aは、1以上のアクリル酸、メタクリル酸又はイタコン酸及びそれらのメチル、エチルエステル及びC3〜C30アルキル基を持つエステル、アクリロイルモルホリン及びその誘導体、スチレン、o-、m-、p-位にハロゲンを持つスチレン及びその誘導体、塩化ビニル及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジメチルアクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジエチルアクリルアミド及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたアクリルアミド、ビニルピロリドン及びその誘導体、ブタジエン及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたシアノアクリレート又はシアノメタクリレート、フランカルボン酸及びその誘導体、ビニルカルバゾール及びその誘導体、塩化ビリデン及びその誘導体、ビニルアルコール及びその誘導体、テルペン及び変性テルペン、及び無水マレイン酸及びその誘導体から選ばれる。)
【0049】
下記の表は、本発明によるポリマーの合成において有用ないくつかの化合物をリストするものである。
【0050】
【表1−1】

【0051】
【表1−2】

【0052】
本発明のさらに他の利点は、得られた(コ)ポリマー上に分子又は官能剤を共有結合できることである。換言すれば、本発明の(コ)ポリマーを介して、ケラチンに対して官能剤又は分子(PF)を化学的に結合すること(ケラチン自体の外観を保護又は変更する必要性に適合する)が可能である。このような官能剤のポリマー鎖への結合は、各種の方法で達成される。
【0053】
一般的な方法は、古典的な合成の原則に従って、ポリマー上に存在する好適な反応性の基を、官能性成分の構造及び官能性を危うくすることがないPF上において、対応するいくつかの試薬と反応させることからなる。
【0054】
本発明では、好適な条件下において、ラジカル重合の間に、少なくとも1つのPFをモノマー混合物に付加することによって、(コ)ポリマー構造体を官能化できる他の方法を特定し、実験を行った。
【0055】
フリーラジカル開始剤を介するポリマー鎖の成長反応は直鎖状では生じないが、同時に、反応環境には、多数の種類のラジカルが存在するため、ラジカルの転移を介して、PFの構造体内及び同時に構造体上に位置する成長反応鎖上において、ラジカルを生成できるとの状況を生ずることが可能である。このようは方法では、共有結合の形成を介する2種類のラジカルの消滅は容易な反応であり、この反応によって、このようなPFをポリマー鎖に挿入するための有効かつ実際的な方法が達成される。
【0056】
この発明による主な利点は官能成分の共有結合及び下記スキームに示すようなシングル合成ステップにおけるポリマーの形成法にある。
【化8】

(式中、G及びAは上述の意義を有し、PFは分子又は官能剤であり、すなわち、化合物は、ポリマー及びケラチン(ポリマーが固定されなければならない)の特性を変性できる実用的な機能を有する、このタイプの官能剤の例は、染料、酸化防止剤、光沢剤、充填剤、日焼けフィルター剤、顔料である。)
【0057】
続いて、X基を挿入できるが、X基はモノマー上に既に存在していること、すなわち、化合物
【化9】

(式中、Xは、-SO3H、-COOH、-H及びエポキシド基から選ばれる)がポリマー合成混合物において直接使用されることが好ましい。
【0058】
次に、実施例を参照して、本発明をさらに詳述するが、これら実施例は単に説明のためのものであり、発明を制限するものではない。
【実施例1】
【0059】
毛髪のケラチンと強力に相互作用する基及び官能剤(分子)を持つ(コ)ポリマーの形成
反応(a):ポリマーAの合成
適量の溶媒(THF 100 ml)中に官能性モノマー(2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸)18g及びN,N-ジメチルアクリルアミド4g及び染料(Sudan III)300 mgを含有する液を反応容器に入れた。開始剤(AIBN 40mg、すなわち、ラジカル開始剤:2,2'-アゾ-ビス-イソブチロニトリル)を添加した後、60℃において、24時間撹拌下に放置した。
反応完了後、アクリル酸をベースとするポリマーをエチルエーテル中で沈殿させ、乾燥した。-SO3HでなるG置換基、所望のケラチンとの化学結合を有するポリマーが生成され、このポリマーは、さらに、直接、染料(Sudan III)からなる官能剤を側鎖に有していた。
反応(b):ポリマーBの合成
適量の溶媒(THF 100 ml)中に官能性モノマー(アクリル酸)18g及びアクリルアミド4g及び染料(Sudan III)300 mgを含有する液を反応容器に入れた。開始剤(AIBN 400 mg、すなわち、ラジカル開始剤:2,2'-アゾ-ビス-イソブチロニトリル)を添加した後、60℃において、24時間撹拌下に放置した。
反応完了後、アクリル酸をベースとするポリマーをエチルエーテル中で沈殿させ、乾燥した。
ポリマー形成反応は、一般に、各種のモノマー、特に、上述のリストに記載のものを使用して、及び各種の溶媒中及び各種の温度条件下で行うことができる。反応の一般的スキームは次のとおりである:
【化10】

(式中、G-A、A及びPFは上記の意義を有する。)
反応(c):コポリマーCの合成
適量の溶媒(THF 100g)中に官能性モノマー(G-A=グリシルメタクリレート)18g及びアクリルアミド4g及び染料(Sudan III)300 mgを含有する液を反応容器に入れた。開始剤(AIBN 400 mg、すなわち、ラジカル開始剤:アゾ-イソブチロニトリル)を添加した後、60℃において、24時間撹拌下に放置した。
反応完了後、アクリル酸をベースとするポリマーをエチルエーテル中で沈殿させ、乾燥した。
ポリマー形成反応は、一般に、各種のモノマー、特に、上述のリストに記載のものを使用して、及び各種の溶媒中及び各種の温度条件下で行うことができる。反応の一般的スキームは次のとおりである:
【化11】

【実施例2】
【0060】
官能化ポリマーの毛髪への結合反応
G-Aが-COOHであり、側鎖に官能性成分(Sudan III)を持つポリマーBの溶液を、ポリマー100 mgをH2O4mlに溶解することによって調製した。
続いて、金髪のヒト毛髪のサンプル50mgを溶液中に浸漬し、55〜60℃において45分間反応させた。
所望の反応は、ペプチド結合及びアミノ基及びポリマー中に存在するカルボキシル基の間の反応である。このような反応から、新規なイオン‐共有結合の形成が達成された。
反応(毛髪乾燥ヘルメット操作下、ヘアドレッサー処理の際に認められる条件と類似する条件をシミュレートする)後、毛髪を攻撃的な洗剤(pH10のセッケン)及び中性の洗剤で繰り返し洗浄した(各種の洗浄による繰り返しの作用をシミュレートする)。ついで、各種の極性の溶媒で処理し、この処理の間に、超音波に供した。このようなテストにもかかわらず、サンプルは、明らかに且つしっかりと赤色に着色したままであり、下記のスキームに示すように、化学結合が形成したことを証明していた。
【化12】

【実施例3】
【0061】
比較例
同じ毛髪のサンプルについて、同じ時間及び温度条件下において、染料のみ(赤色の着色した毛髪を提供する)を使用し、並行してテストした。このケースでは、洗浄の間に、徐々にではあるが、迅速に退色し、毛髪サンプルの最終の外観は初期の外観と同じであった。
【実施例4】
【0062】
官能化ポリマーの毛髪への結合反応
G-Aが-SO3Hであり、側鎖に官能性成分(Sudan III)を持つポリマーAの溶液を、ポリマー100 mgをH2O4mlに溶解することによって調製した。
続いて、毛髪50mgを溶液中に浸漬し、55〜60℃において45分間反応させた。所望の反応は、ペプチド結合及びアミノ基及びポリマー中に存在するスルホン酸基の間の反応である。このような反応から、下記のスキームに示すような新規な共有結合の形成が達成された。
【化13】

【実施例5】
【0063】
官能化ポリマーの毛髪への結合反応
側鎖に官能性成分(Sudan III)を持つポリマーDの溶液を、ポリマー100 mgをH2O4mlに溶解することによって調製した。
続いて、毛髪50mgを溶液中に浸漬し、55〜60℃において45分間反応させた。所望の反応は、ペプチド結合及びアミノ基及びポリマー中に存在するスルホン酸基の間の反応である。このような反応から、下記のスキームに示すような新規な共有結合の形成が達成された。
【化14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(式中、[C-A]は、アクリルシリコン、ポリグリコール、多糖高分子構造体から、又は天然高分子から選ばれるポリマー又はコポリマー鎖の一部であり、及び
Xは、室温又は生物についての使用に適する反応条件下で反応し、ポリマー鎖自体の早期の変性を生ずることなく、ケラチンとイオン結合又は共有結合を形成する、1以上のスルホン基、カルボキシル基、アミノ酸基又はエポキシド基から選ばれる官能基である)で表されるポリマー構造体。
【請求項2】
官能基Xを持つモノマーの量が、鎖の合成に使用されるモノマーの総モルの少なくとも30モル%である請求項1記載の(コ)リマー。
【請求項3】
官能基Xを持つモノマーの量が、鎖の合成に使用されるモノマーの総モルの50〜90モル%の範囲である請求項2記載の(コ)リマー。
【請求項4】
一般式(II)
【化2】

(式中、Xは、-SO3H、-COOH、アミノ酸基及びエポキシ基から選ばれるものであり、G及びAは、互いに異なる又は同一のものであって、結合、-CH2、アクリル及びメタクリル、ビニル、スチレン、ブタジエン、テルペン及び無水マレイン酸及びその誘導体基又は残基であり、Xが-COOHである場合、G-Xは、-COOH及びアミノ酸から選ばれるものである)の複数個の官能化ユニットを有する請求項1〜3のいずれかに記載の(コ)ポリマー構造体。
【請求項5】
アミノ酸が、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リシン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、チロキシンから選ばれる請求項4記載のポリマー構造体。
【請求項6】
アクリル酸及びメタクリル酸、ビニル、スチレン、テルペン残基が、アクリル酸及びメタクリル酸及びそれらの誘導体、イタコン酸及びそれらのメチル、エチルエステル及びC3〜C30アルキル基を持つエステル、アクリロイルモルホリン及びその誘導体、スチレン、o-、m-、p-位にハロゲンを持つスチレン及びその誘導体、塩化ビニル及びその誘導体、酢酸ビニル及びその誘導体、アクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジメチルアクリルアミド及びその誘導体、N,N-ジエチルアクリルアミド及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたアクリルアミド、ビニルピロリドン及びその誘導体、ブタジエン及びその誘導体、C3〜C30アルキル基によって置換されたシアノアクリレート又はシアノメタクリレート、フランカルボン酸及びその誘導体、ビニルカルバゾール及びその誘導体、塩化ビリデン及びその誘導体、ビニルアルコール及びその誘導体、テルペン及び変性テルペンから選ばれるものである請求項4記載の(コ)ポリマー構造体
【請求項7】
さらに、(コ)ポリマー構造体の特性を変性するために前記(コ)ポリマーに共有結合する1以上の官能剤(PF)を含んでなり、前記官能剤は、前記(コ)ポリマー構造体の官能基(X)とは反応しないものである請求項1〜6のいずれかに記載の(コ)ポリマー構造体。
【請求項8】
官能基が、着色料、酸化防止剤、光沢剤、充填剤、日焼けフィルター剤、顔料、抗菌剤から選ばれる請求項7記載の(コ)ポリマー構造体。
【請求項9】
一般式(I)
【化3】

(式中、[C-A]は、アクリルシリコン、ポリグリコール、多糖高分子構造体から、又は天然高分子から選ばれるポリマー又はコポリマー鎖の一部であり、及び
Xは、室温又は生物についての使用に適する反応条件下で反応し、ポリマー鎖自体の早期の変性を生ずることなく、ケラチンとイオン結合又は共有結合を形成する、1以上のスルホン基、カルボキシル基、アミノ酸基又はエポキシド基から選ばれる官能基である)で表される(コ)ポリマー構造体又は請求項2〜8のいずれかに記載の(コ)ポリマー構造体の、毛髪、体毛、皮膚又は爪の処理における使用。
【請求項10】
賦形剤、溶媒及び化粧品の分野において許容されるキャリヤーと組み合わせて、請求項1〜8のいずれかに記載の(コ)ポリマー構造体を含んでなる化粧品。
【請求項11】
2以上のコポリマー構造体を含んでなり、前記構造体に存在する官能基(X)が、組成物の使用条件下において、これら構造体が互いに反応しないように選択される請求項10記載の化粧品。
【請求項12】
毛髪、体毛、皮膚、粘膜及び爪から選ばれるケラチン構造体を処理する方法であって、前記構造体に、請求項1〜8のいずれかによる化粧品又は請求項10又は11に記載の化粧品を適用して、構造的ケラチン結合の早期の変性を生ずることなく、前記組成物に含有されるコポリマー構造体を、前記ケラチン構造体に、イオン又は共有結合させることを特徴とするケラチン構造体の処理法。
【請求項13】
ポリマー構造体上の官能基とケラチン構造体の遊離の-NH2基との間の縮合反応を介して共有結合を形成する請求項12記載の方法。
【請求項14】
官能剤が、医薬活性を持つ分子によって形成される請求項1〜8のいずれかに記載の医薬分野で使用される(コ)ポリマー構造体。
【請求項15】
請求項1〜8のいずれかに記載のコポリマー構造体を合成する方法であって、一般式
【化4】

(式中、Xは、-SO3H、-COOH、エポキシ基から選ばれ、及びGは、Aとは異なる又は同一のものであって、結合、-CH2、アクリル及びメタクリル、ビニル、スチレン、ブタジエン、テルペン基及び無水マレイン酸及びその誘導体基から選ばれる)の化合物を、化合物Aと反応させることを特徴とする(コ)ポリマー構造体の製法。
【請求項16】
重合反応を、官能特性を持つ1以上の分子の存在下で行い、前記分子を、官能剤としてポリマー鎖に挿入する請求項14記載の方法。

【公表番号】特表2010−526802(P2010−526802A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507020(P2010−507020)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001177
【国際公開番号】WO2008/139312
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509310473)エウデルミク ソチエタ ア レスポンサビリタ リミタータ (1)
【Fターム(参考)】