説明

ゲイン補正回路、位相同期回路及びフィルタ回路

【課題】製造バラツキ又は温度変化等による特性変化を補償するとともに、広い入力レンジを確保すること。
【解決手段】異なる電圧電流変換ゲインGm1,Gm2を有するトランスコンダクタンス回路12,14を備え、選択した1のトランスコンダクタンス回路12,14により電圧電流変換を行い、入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部10と、トランスコンダクタンス回路12,14に供給されるバイアス電流I−Icontを制御し、電圧電流変換ゲインGm1,Gm2を一定値に制御する補正回路部30と、バイアス電流I−Icontと所定の基準電流Irefとを比較する電流コンパレータ56と、比較の結果に基づいて、電圧電流変換を行うトランスコンダクタンス回路12,14を電圧電流変換ゲインGm1,Gm2が異なる他のトランスコンダクタンス回路12,14へ切換えるスイッチ回路22と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲイン補正回路、位相同期回路及びフィルタ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電圧を電流に変換する電圧電流変換回路(トランスコンダクタンス回路)として、例えば非特許文献1に記載されている回路が知られている。図21は、非特許文献1に記載されたトランスコンダクタンス回路を模式的に示す図である。このトランスコンダクタンス回路は、バイアス電流Iを流す電流源を備え、入力電圧Vinp,Vinnを受けて電流Ioutを出力するものである。
【0003】
トランスコンダクタンス回路により電圧を電流に変換する場合、広い入力レンジで電圧電流変換ゲイン(トランスコンダクタンス)Gmが一定であることが望ましい。しかし、図21のトランスコンダクタンス回路において、回路全体の電圧電流変換ゲインGmは、トランジスタの製造誤差、温度変化による特性バラツキ等によって影響を受ける。具体的には、トランジスタM1〜M6のゲート幅、ゲート長、ゲート酸化膜の膜厚COXなどの寸法誤差によって、Gmの値は変動する。また、温度変化によりキャリアの移動度が変化すると、やはりGmの値は変動してしまう。
【0004】
非特許文献2には、製造バラツキ、温度変化に起因するトランスコンダクタンスGmのバラツキを補償する技術が記載されている。図22は、非特許文献2に記載された回路を模式的に示す図である。図22は、レプリカのトランスコンダクタンス回路900を用いた補償技術であり、V/I変換回路910のゲインをA、トランスコンダクタンス回路900の電圧電流変換ゲインをGm外部抵抗をRext、トランスコンダクタンス回路900とV/I変換回路910の非反転入力に入力する電圧をV、トランスコンダクタンス回路900のバイアス電流となるV/I変換回路910の出力電流をIbとすれば、次の式が成り立つ。
【0005】
【数1】

【0006】
V/I変換回路910のゲインAが非常に大きい場合、(1)式は以下の(2)式のように変形することができる。
【0007】
【数2】

【0008】
このように、図22の回路では、Gmの値が外部抵抗Rextの逆数(=1/Rext)に常に一致するようにIが制御される。従って、温度、製造バラツキによる影響を抑えて、Gmを一定値にすることが可能となる。
【0009】
【非特許文献1】FRANCOISKRUMENACHER AND NORBERT JOEHL “A 4-MHz CMOSContinuous-Time Filter with On-Chip Automatic Tuning”IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL. 23,NO. 3, JUNE 1988, p750-758
【非特許文献2】David Johns AND Ken Martin“Analog Integrated Circuit Design”John Wiley & Sons Inc, November 15, 1996;p629〜 ISBN-13: 978-0471144489
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記従来の技術では、Gmの値が一定となる入力レンジは限られており、温度変化によって入力レンジが減少するという問題が発生する。例えば、動作環境が高温になってトランジスタの能力が低下した場合、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低下するようにばらついた場合には、Gmの値は、常温でトランジスタが設計通りに形成された時の規定値より小さくなる。このため、図22の補償技術では、バイアス電流Iを増加させるように制御が行われる。Iを増加させた場合に問題となるのが図21の電流源を構成するトランジスタのオーバードライブ電圧が高くなってしまうことで、トランスコンダクタンス回路の入力電圧低下時に有効入力レンジを狭めてしまうという問題が発生する。
【0011】
一方、動作環境が低温になり、製造誤差によりトランジスタの能力が設計値よりも高くなるようにばらついた場合、常温の設計値よりも高くなったGmの値を下げるようにVcontは低くなりIを減少させる。このとき、トランスコンダクタンス回路の最大出力電流がIに依存するため、Gmの値を一定に保てたとしても、Iが減少することによって、入力レンジは減少してしまう。
【0012】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、製造バラツキ、または温度変化等による特性変化を補償するとともに、広い入力レンジを確保することが可能な、新規かつ改良されたゲイン補正回路と、このゲイン補正回路を備えた位相同期回路及びフィルタ回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の前記電圧電流変換回路により電圧電流変換を行い、入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、前記電圧電流変換回路に供給されるバイアス電流を制御し、前記電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、を備えるゲイン補正回路が提供される。
【0014】
上記構成によれば、電圧電流変換部は、異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により電圧電流変換が行われ、入力電圧が電流に変換される。補正回路部は、電圧電流変換回路に供給されるバイアス電流を制御し、電圧電流変換ゲインが一定値に制御される。そして、比較部によりバイアス電流と所定の基準電流とが比較され、比較の結果に基づいて、電圧電流変換を行う電圧電流変換回路が電圧電流変換ゲインの異なる他の電圧電流変換回路へ切換えられる。従って、最適な電圧電流変換ゲインを有する電圧電流変換回路により電圧電流変換を行うことが可能となり、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためのバイアス電流の調整量を最小限に抑えることが可能となる。従って、入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを抑止できる。
【0015】
また、前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えるものあっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に、バイアス電流が大きく低下させる制御が不要となり、入力レンジの減少を抑えることが可能となる。
【0016】
また、前記比較部は、前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換回路を切換えた後、再度電圧電流ゲインの異なる他の電圧電流回路への切換えが行われることを回避でき、回路動作を安定させることができる。
【0017】
また、前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたものであってもあってもよいので良い。かかる構成によれば、入力電圧の入力レンジに基づいて基準電流の値が定められるため、電圧電流変換回路を切換えた後、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0018】
また、前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されるものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためにバイアス電流を増加させる場合に、電流源を構成する第1及び第2導電型のトランジスタを常に飽和領域で動作させることが可能となる。従って、電流源を構成するトランジスタが非飽和領域で動作することによる入力レンジの減少を確実に抑えることができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、外部から入力される入力デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、容量素子を有し、駆動電流に応じて前記容量素子の一端に生成される入力電圧を電流に変換して出力するループフィルタ部と、前記位相検出部から出力された位相検出結果を示す信号に基づいて前記駆動電流を生成し、前記ループフィルタ部を駆動する駆動部と、前記ループフィルタ部から出力された電流信号に基づき、前記入力デジタル信号の位相に同期する発振信号を出力する発振部と、を備え、
前記ループフィルタ部は、異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により前記容量素子の一端に生成される前記入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、選択された前記電圧電流変換回路に供給するバイアス電流を制御し、当該電圧電流変換回路の電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換部が選択する前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、を備える位相同期回路が提供される。
【0020】
上記構成によれば、ループフィルタ部から出力された電流信号に基づいて入力デジタル信号の位相に同期する発振信号を出力する位相同期回路のループフィルタ部において、電圧電流変換部は、異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により電圧電流変換が行われ、入力電圧が電流に変換される。補正回路部は、電圧電流変換回路に供給されるバイアス電流を制御し、電圧電流変換ゲインが一定値に制御される。そして、比較部によりバイアス電流と所定の基準電流とが比較され、比較の結果に基づいて、電圧電流変換を行う電圧電流変換回路が電圧電流変換ゲインの異なる他の電圧電流変換回路へ切換えられる。従って、最適な電圧電流変換ゲインを有する電圧電流変換回路により電圧電流変換を行うことが可能となり、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためのバイアス電流の調整量を最小限に抑えることが可能となる。従って、位相同期回路のループフィルタ部の電圧電流変換回路への入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを抑止できる。
【0021】
また、前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えるものあっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に、バイアス電流が大きく低下させる制御が不要となり、入力レンジの減少を抑えることが可能となる。
【0022】
また、前記比較部は、前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換回路を切換えた後、再度電圧電流ゲインの異なる他の電圧電流回路への切換えが行われることを回避でき、回路動作を安定させることができる。
【0023】
また、前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたものであってもあってもよいので良い。かかる構成によれば、入力電圧の入力レンジに基づいて基準電流の値が定められるため、電圧電流変換回路を切換えた後、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0024】
また、前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されるものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためにバイアス電流を増加させる場合に、電流源を構成する第1及び第2導電型のトランジスタを常に飽和領域で動作させることが可能となる。従って、電流源を構成するトランジスタが非飽和領域で動作することによる入力レンジの減少を確実に抑えることができる。
【0025】
上記課題を解決するために、本発明の他の観点によれば、入力電圧を電流に変換する電圧電流変換器と容量素子とを備え、前記電圧電流変換器の電圧電流変換ゲインと前記容量素子の容量値で表される伝達関数で規定されるフィルタ回路であって、前記電圧電流変換器は、異なる前記電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、選択された前記電圧電流変換回路に供給するバイアス電流を制御し、当該電圧電流変換回路の電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換部が選択する前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、を備えるフィルタ回路が提供される。
【0026】
上記構成によれば、電圧電流変換器の電圧電流変換ゲインと容量素子の容量値で表される伝達関数で規定されるフィルタ回路において、電圧電流変換器は、異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により電圧電流変換が行われ、入力電圧が電流に変換される。補正回路部は、電圧電流変換回路に供給されるバイアス電流を制御し、電圧電流変換ゲインが一定値に制御される。そして、比較部によりバイアス電流と所定の基準電流とが比較され、比較の結果に基づいて、電圧電流変換を行う電圧電流変換回路が電圧電流変換ゲインの異なる他の電圧電流変換回路へ切換えられる。従って、最適な電圧電流変換ゲインを有する電圧電流変換回路により電圧電流変換を行うことが可能となり、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためのバイアス電流の調整量を最小限に抑えることが可能となる。従って、フィルタ回路の電圧電流変換器への入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを抑止できる。
【0027】
また、前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えるものあっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に、バイアス電流が大きく低下させる制御が不要となり、入力レンジの減少を抑えることが可能となる。
【0028】
また、前記比較部は、前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換回路を切換えた後、再度電圧電流ゲインの異なる他の電圧電流回路への切換えが行われることを回避でき、回路動作を安定させることができる。
【0029】
また、前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたものであってもあってもよいので良い。かかる構成によれば、入力電圧の入力レンジに基づいて基準電流の値が定められるため、電圧電流変換回路を切換えた後、電圧電流変換ゲインを一定値に制御する際に入力電圧の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0030】
また、前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されるものであっても良い。かかる構成によれば、電圧電流変換ゲインを一定値に制御するためにバイアス電流を増加させる場合に、電流源を構成する第1及び第2導電型のトランジスタを常に飽和領域で動作させることが可能となる。従って、電流源を構成するトランジスタが非飽和領域で動作することによる入力レンジの減少を確実に抑えることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、製造バラツキ、または温度変化等による特性変化を補償するとともに、広い入力レンジを確保することが可能な、新規かつ改良されたゲイン補正回路と、このゲイン補正回路を備えた位相同期回路及びフィルタ回路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0033】
(第1の実施形態)
[光ディスク装置の主要構成]
先ず、図1に基づいて、本発明の第1の実施形態について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置100の構成を示す模式図である。本実施形態の光ディスク装置100は、光ディスク200に付加情報を記録し、また、光ディスク200に記録されている情報を読み取るためのレーザ光源を具備した光ピックアップ300を備える。
【0034】
光ディスク200としては、CD(コンパクトディスク)やCD-ROM(Read Only Memory)などのいわゆる再生専用の光ディスクのほか、たとえばCD-R(Recordable)のような追記型光ディスクや、CD-RW(Rewritable )のような書き換え可能型光ディスクが用いられる。また、CD系の光ディスクに限らず、MO(光磁気ディスク)であってもよいし、通常のDVD(Digital Video またはVersatile Disk)や、ブルーレイ(Blu-ray )あるいはHD-DVD(High Definition DVD )などの次世代DVDといったDVD系の光ディスクであってもよい。また、現行のCDフォーマットを踏襲しながら、記録密度を現行フォーマットの約2倍とした、いわゆる2倍密度のCD(DDCD;DD=Double Density)やCD-RあるいはCD-RWであってもよい。
【0035】
光ディスク装置100は、音楽などの再生すべき情報が記録された光ディスク200を回転させるスピンドルモータ150を備える。光ピックアップ300は、公知の半導体レーザ、光学系、フォーカスアクチュエータ、トラックアクチュエータ、受光素子、およびポジションセンサなどを内蔵しており、光ディスク200の記録面にレーザ光を照射し、また反射光を受光して電気信号に変換するように構成されている。光ピックアップ300の半導体レーザは、レーザドライバ(不図示)により駆動され、このレーザドライバの駆動によって、データ再生時には所定の再生パワーの光ビームを出射し、情報の記録時には所定の記録パワーの光ビームを出射する。
【0036】
また、光ディスク装置100は、記録・再生系として、光ピックアップ300を介して情報を記録する情報記録部および光ディスク200に記録されている情報を再生する情報再生部の一例である記録・再生信号処理部400を備える。
【0037】
また、光ディスク装置100は、制御部600を備えている。制御部600は、スピンドルモータ150を駆動するためのスピンドルモータ制御部610と、光ピックアップ300の光ディスク100に対する位置を制御するピックアップ制御部620とを備える。
【0038】
また、光ディスク装置100は、コントローラ系として、制御部600または記録・再生信号処理部400の動作を制御するコントローラ650と、光ディスク装置100を利用した各種の情報処理を行なう情報処理装置の一例であるパーソナルコンピュータ750との間のインタフェース(接続)機能をなすインタフェース部700とを備える。
【0039】
このような構成の光ディスク装置100においては、再生処理時には、光ディスク200から光ピックアップ300で読み出された光信号が光ピックアップ300に内蔵された受光素子で電気信号に変換され、その電気信号が、スピンドルモータ150や光ピックアップ300の制御を行なう制御部600と、データの記録・再生を行なう記録・再生信号処理部400とに送られる。
【0040】
スピンドルモータ制御部610およびピックアップ制御部620は、コントローラ650の制御の元で、この電気信号を元にしてスピンドルモータ150の回転数や、光ピックアップ300のフォーカシングおよびトラッキングを調整する。
【0041】
これとともに、記録・再生信号処理部400では、取得したアナログの電気信号をデジタルデータに変換し復号化を行ない、パーソナルコンピュータ750、DVDプレーヤなどの光ディスク装置100を利用する装置本体に渡す。パーソナルコンピュータ750などの装置では、復号化されたデータに基づき、画像・音声データとして再生する。また、光ディスク200へデータを記録する場合は、再生時とは逆にデータの符号化をして、電気信号を光信号に変換して光ディスク200に記録する。
【0042】
また、光ディスク200へデータを記録する記録処理時には、スピンドルモータ制御部610およびピックアップ制御部620は、コントローラ650の制御の元で、一定速度で光ディスク200を回転させる。これとともに、記録・再生信号処理部400では、再生とは逆に、データを符号化して光ピックアップ300に内蔵のレーザダイオードなどに供給することで、電気信号を光信号へ変換して、光ディスク200に情報を記録する。
【0043】
[記録・信号処理部の構成]
図2は、記録・再生信号処理部400の構成を示す模式図である。記録・再生信号処理部400は、RFアンプ402、イコライザー404、A/D変換器406、DSP(Digital Signal Processor)408、PLL(Phase Locked Loop;位相同期回路)500、書き込みストラテジー410、レーザダイオードドライバ412、を有して構成されている。RFアンプ402は、光ピックアップ300で検出された微小なRF(高周波)信号を所定レベルに増幅する。イコライザー404は、RFアンプ402から出力された信号の波形整形等を行う。A/D変換器406はイコライザー404の出力をデジタル信号に変換し、そのデジタル信号はDSP(Digital Signal Processor)408においてデータの復合化が行われる。また、書き込みストラテジー410は、光ディスク200の材質と記録速度に応じて光出力パワーをマルチパルス変調する。レーザダイオードドライバ412は、光ピックアップ300内にあるレーザ光源から発せられるレーザ光の光出力(光強度、光出力パワー)を一定値に保持するためのAPC(Auto Power Control)制御回路を備えるものである。
【0044】
図3は、記録・再生信号処理部400内のPLL500の構成を示す模式図である。PLL500は、A/D変換器406で使用されるクロックを生成する機能を有し、データ信号に同期(ロック)してクロック信号を生成することから、データリカバリPLLと呼ばれる。PLL500は、再生したクロック信号をADクロック(サンプリングクロック)CKadとしてA/D変換器406へ供給したり、その他の機能部に供給したりする。A/D変換器406は、このADクロックCKadに基づいてアナログ信号をデジタルデータに変換する。
【0045】
PLL500の性能としては、低ジッタ、アクイジション時間の短縮が求められ、このためには帯域を広帯域にする必要があるが、上述したように光ディスク200の規格は複数存在し、各規格毎に複数の動作モード(録画モードなど)が存在するため、各規格、各動作モードに対して帯域を設定する必要がある。光ピックアップ装置100を各規格、各動作モードに対応させるためには、PLL500により、数多くの帯域のクロック生成を可能にする必要がある。
【0046】
PLL500は、位相検出器(位相比較器)510、チャージポンプ520a,520b、ループフィルタ530、CCO(Current Controlled Oscillator)540、ドライバ550、を備えている。ループフィルタ530は、電圧電流変換器532、外部容量534を備えている。位相検出器510は、A/D変換器406から入力されたデジタル信号の位相を検出し、その結果に応じた信号を出力する。チャージポンプ520a,520bは、位相検出器510から出力された信号に応じた駆動電流を入出力する。電圧電流変換器532は、チャージポンプ520aから出力されたチャージポンプ電流に基づいて外部容量534の一方の端子に生成されるチャージポンプ電圧を電圧電流変換ゲイン(トランスコンダクタンス)Gmに従って電流信号に変換して出力する。すなわち、チャージポンプ520aは、チャージポンプ電流によってループフィルタ530を駆動する駆動部として機能する。そして、電圧電流変換器532の出力電流とチャージポンプ520bの駆動電流によりCCO540を発振させ、A/D変換器406からの受信データに位相が同期したADクロックCKadが取得される。
【0047】
CCO540は入力された電流に応じて発振周波数を制御するため、ループフィルタ530は、CCO540の入力に対応するため電流出力に対応した構成とされている。ループフィルタ530では、チャージポンプ520aから出力されたチャージポンプ電流に基づいて、外部容量534の一方の端子(電圧電流変換器532の入力)に電圧信号が生成される。外部容量534では充放電動作が行われるため、ループフィルタ530は、位相検出器510からの信号中の所定のカットオフ周波数以上の周波数成分を減衰させて、CCO540に供給される電流を平滑化するように、少なくとも1つのカットオフ周波数を有する低域通過フィルタとして機能する。
【0048】
PLL500の帯域ωnとダンピングファクタζは次のように表される。
【0049】
【数3】

【0050】
ここで、KccoはCCO540における入力電流−発振周波数への変換ゲイン、Gmは電圧電流変換器532の電圧-電流変換ゲイン、Irdは直接CCO540の入力に接続されるチャージポンプ520bからのチャージポンプ電流である。従って、PLL500では、(4)式のIrd/(Icp・Gm)の値を調整することで、ダンピングファクタζを一定にしたままで帯域を変えることが可能となる。これにより、ダンピングファクタζを一定にしてPLL500を安定して動作させるとともに、PLL500を数多くの帯域に対応させることが可能となる。
【0051】
[関連技術の問題点]
図21のトランスコンダクタンス回路と図22のレプリカ技術を応用すると、演算増幅器を使用して図4のような電圧電流変換器532を実現することができる。図4の回路では、PLL500での電圧電流変換を実際に行う電圧電流変換部110(図21の回路に相当)と隣接して、電圧電流変換部110と構成が同一であり、同一のGm値を有するレプリカのトランスコンダクタンス回路を含む補正回路部130(図22の回路に相当)が設けられる。
【0052】
補正回路部130では、図22の回路と異なり、レプリカのトランスコンダクタンス回路の反転入力端子は接地されておらず、あるバイアス電圧Vrefが加えられている。これに伴い、補正回路部130は図22の回路図とは若干相違しているが、補正回路部130の動作原理は図22と同様であり、補正された後のGmは(2)式と同一になる。
【0053】
そして、補正回路部130の演算増幅器からは、Gmの値を一定値(=1/Rext)に制御するため、電流源のトランジスタM47、M48にバイアス電流Iを流すための電圧Vcontが出力される。このため、図4の回路では、補正回路部130から電圧Vcontを取得して、この電圧Vcontを電圧電流変換部110に供給することで、電流源のトランジスタM57、M58にバイアス電流Iを流し、電圧電流変換部110のGmの値を一定値に制御する。
【0054】
補正回路部130のトランジスタM41とM42、トランジスタM43とM44、トランジスタM45とM46、トランジスタM47とM48はそれぞれ同サイズである。また、電圧電流変換部110のトランジスタM51とM52、トランジスタM53とM54、トランジスタM55とM56、トランジスタM57とM58はそれぞれ同サイズである。6つのトランジスタM51〜M56も同サイズである。Mnのゲート幅をW、ゲート長をLn、キャリアの移動度をμ、ゲート酸化膜の静電容量をCoxとすれば、電圧電流変換部110の回路全体のトランスコンダクタンスGmは次のように表される。
【0055】
【数4】

【0056】
(5)式よりトランスコンダクタンス回路のGmの値は√Iに比例している。図4の補正回路部130では、トランジスタの製造ばらつきによる寸法変化や温度変化に起因してk1,k3に関係するパラメータが変化し、Gmの値が規定値(=1/Rext)より小さくなる場合は、出力電圧Vcontが上昇してIの量を増加するように補正動作が行われる。また、Gmの値が規定値より大きくなる場合は、出力電圧Vcontが低下してIの量を減らすように補正動作が行われる。(5)式に示されるように、Gmの値は√Iに比例しているため、製造ばらつき、温度変化によりGmの値が規定値から1/2〜2倍に変化した場合、Iの量は1/4〜4倍に変化することになる。
【0057】
しかしながら、図4の補正動作では、Gmの値が規定値より小さい場合にVcontが上昇し、Gmの値が規定値より大きい場合にIbの量を減らすため、いずれの場合においても入力レンジを大きく減少させてしまう問題がある。
【0058】
図5は、図4の電圧電流変換部110のトランスコンダクタンス回路の入力レンジを示す特性図である。図5において、実線の特性は、動作環境が常温であり、トランジスタが設計通りの寸法で形成され、トランジスタの能力が設計通り(ideal)の場合の入力レンジの特性を示している。
【0059】
このように、Gmの値が一定となる入力レンジは限られており、その有効な入力レンジで回路を使用しなければならない。図3に示すPLL500で使用している電圧電流変換器532の場合、有効な入力レンジから外れた電位にループフィルタ電圧が移動すると、電圧電流変換器532のGmの値は規定の値から大きくずれてしまい、帯域ωnとダンピングファクタζも規定の値から大きく外れてしまう。このため、電圧電流変換部110の入力レンジは可能な限り広い方が望ましい。
【0060】
一方、図5に示す破線の特性は、動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計時よりも低下(slow)するようにばらついた場合の入力レンジを示している。Gmの値は常温でトランジスタの寸法がばらつかない設計時の規定の値より小さくなるため、補正回路部130の動作により、Iを増加させるようにVcontは上昇する。Vcontが上昇した場合に問題となるのが図4のトランジスタM57,M58のオーバードライブ電圧が高くなってしまうことで、電圧電流変換部110の有効入力レンジを狭めてしまう。特に、入力電圧Vinの値が低下した場合は、トランジスタM57のドレイン−ソース間電圧が低下し、ピンチオフ電圧以下となるため、M57のトランジスタが飽和領域で動作しなくなり、この問題が顕著となる。
【0061】
より詳細には、トランジスタM51のゲート・ソース間電圧をVgs1、 閾値電圧をVth1,M57の閾値電圧をVth7とするとM51,M57が飽和領域で動作するためには、次の式が成り立つ必要がある。
【0062】
【数5】

【0063】
(7)式から、補正動作によりVcontとIが増加するとトランジスタM57が飽和領域で動作できる入力電圧Vinの下限電圧が上昇してしまうことがわかる。
【0064】
またIが増加することによって、トランスコンダクタンス回路の入力電圧Vinが上昇した場合は、トランジスタM55のドレイン電圧が下がり、有効入力レンジも狭めてしまう問題が生じる。トランジスタM55のゲート・ソース間電圧をVgs5、閾値電圧をVth5、回路の電源電圧をVDDとすればトランジスタM51が飽和領域で動作するためには次の式を満たす必要がある。
【0065】
【数6】

【0066】
(9)式からも、Iが増加することによってトランジスタM51が飽和領域で動作できる上限電圧は低下することがわかる。
【0067】
また、図5の一点鎖線の特性は、動作環境が低温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも高く(fast)なるようにばらついた場合の入力レンジを示している。この場合は常温、トランジスタの寸法が設計値通りの場合よりもGmの値が高くなり、Gmの値を下げるように補正回路部130が動作し、Vcontを低下させてIを減少させる。Vcontが低くなるため、トランジスタM57,M58のオーバードライブ電圧も低下し動作領域は拡大する。しかし、Iが減少することによって、電圧電流変換部110の入力レンジは図5の一点鎖線の特性のように減少する。これはトランスコンダクタンス回路の最大出力電流がIに依存するためで、電圧電流変換部110のトランスコンダクタンス回路は当然ながら2I以上電流を出力することができない。よってトランスコンダクタンス回路の出力電流範囲は−2I〜2Iとなる。これより以下の式が成り立つ。
【0068】
【数7】

【0069】
(11)式によれば、Gmの値を補正回路で一定に保てたとしてもIが減少すればトランスコンダクタンス回路の有効入力レンジは減少することがわかる。
【0070】
有効入力レンジを広く確保したままGmの値を補正することはPLL500にトランスコンダクタンス回路を適用した場合だけでなく、フィルタに適用した場合も非常に重要で、トランスコンダクタンス回路の能力でフィルタの特性はほぼ決定しまう。
【0071】
[本実施形態に係る電圧電流変換器532の構成]
図6は、本実施形態に係る電圧電流変換器532の構成を詳細に示す模式図である。図6に示すように、電圧電流変換器532は、電圧電流変換部10と補正回路部30を備えている。電圧電流変換部10には、図3のチャージポンプ520aからのチャージポンプ電流に基づいて外部容量534の一端に生成される入力電圧信号Vinが入力され、電流に変換されてIoutが出力される。
【0072】
電圧電流変換部10は、Gmの値が異なる2つのトランスコンダクタンス回路(電圧電流変換回路)12,14を備えている。トランスコンダクタンス回路12,14の構成は、図4の電圧電流変換部110のトランスコンダクタンス回路と同一である。トランスコンダクタンス回路12の電圧電流変換ゲインはGm1であり、トランスコンダクタンス回路14の電圧電流変換ゲインはGm2である。ここで、同一のバイアス電流が供給された場合に、Gm1>Gm2となるように(5)式の各パラメータが調整されている。
【0073】
電圧電流変換部10と隣接して、電圧電流変換部10にバイアス電流を流すための電流源16が設けられている。電流源16は、固定電流源18と可変電流源20とから構成されている。また、電圧電流変換部10と隣接して、スイッチ回路22が設けられている。スイッチ回路22は、トランスコンダクタンス回路12と電流源16を接続するスイッチ24、及びトランスコンダクタンス回路14と電流源16を接続するスイッチ26から構成されている。
【0074】
補正回路部30は、電圧電流変換部10と同様に、Gmの値が異なる2つのトランスコンダクタンス回路32,34を備えている。トランスコンダクタンス回路32は、電圧電流変換部10のトランスコンダクタンス回路12と同一に構成されている。また、トランスコンダクタンス回路34は、電圧電流変換部10のトランスコンダクタンス回路14と同一に構成されている。すなわち、トランスコンダクタンス回路32はトランスコンダクタンス回路12のレプリカであり、その電圧電流変換ゲインはGm1である。また、トランスコンダクタンス回路34はトランスコンダクタンス回路14のレプリカであり、その電圧電流変換ゲインはGm2である。
【0075】
補正回路部30は、オペアンプ35を備えている。また、補正回路部30は固定抵抗Rextを備えている。オペアンプの非反転入力端子には固定電圧VBが入力され、反転入力端子にはトランスコンダクタンス回路32、およびトランスコンダクタンス回路34のいずれか一方の出力電流によって固定抵抗Rextの一端に生成された電圧値が入力される。
【0076】
従って、補正回路部30によれば、図4の補正回路部130と同様に、トランスコンダクタンス回路32,34のGmの値を規定値(=1/Rext)に制御するための電圧Vcontがオペアンプ35から出力される。
【0077】
補正回路部30と隣接して、補正回路部30にバイアス電流を流すための電流源36が設けられている。電流源36は、固定電流源38と可変電流源40とから構成されている。また、補正回路部30と隣接して、スイッチ回路42が設けられている。スイッチ回路42は、トランスコンダクタンス回路32と電流源36を接続するスイッチ44、及びトランスコンダクタンス回路34と電流源36を接続するスイッチ46から構成されている。
【0078】
また、電流源36と隣接して、電圧電流変換部10、及び補正回路部30に供給されるバイアス電流をモニターする電流モニター回路50が設けられている。電流モニター回路50は、固定電流源52と可変電流源54とから構成されている。
【0079】
固定電流源18、固定電流源38、及び固定電流源52の構成は同一である。固定電流源18,38,52のそれぞれには、所定の電圧Vが印加され、固定電流Ibが流れる。また、可変電流源20、可変電流源40、及び可変電流源54の構成は同一である。可変電流源20,40,54のそれぞれには、補正回路部30のオペアンプ35からの出力電圧Vcontが印加され、電圧Vcontに応じた可変電流Icontが流れる。
【0080】
トランスコンダクタンス回路12,14は、スイッチ回路22を介して、固定電流源18と可変電流源20を接続するラインと接続されている。また、トランスコンダクタンス回路32,34は、スイッチ回路42を介して固定電流源38と可変電流源40を接続するラインと接続されている。従って、トランスコンダクタンス回路12,14には、固定電流源18及び可変電流源20によってバイアス電流I−Icontが供給される。また、トランスコンダクタンス回路32,34には、固定電流源38及び可変電流源40によって、トランスコンダクタンス回路12,14と同一のバイアス電流I−Icontが供給される。
【0081】
また、電圧電流変換器532は、電流コンパレータ56、RSラッチ回路58、インバータ回路60を備えている。電流コンパレータ56の反転入力端子は、電流モニター回路50の固定電流源52と可変電流源54を接続するラインに接続されている。固定電流源52に固定電流Ibが流れ、可変電流源54に可変電流Icontが流れると、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34に供給されるバイアス電流と同一のバイアス電流I−Icontが電流コンパレータ56の反転入力端子に供給される。
【0082】
また、電流コンパレータ56の非反転入力端子には、所定の基準電流Irefが入力される。従って、電流コンパレータ56によれば、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34に供給されるバイアス電流と同一のバイアス電流I−Icontをモニタすることができ、基準電流Irefとの比較の結果に応じた比較信号(“ロー(Low)”または“ハイ(High)”の信号)を出力することができる。特に、電流源16,36と近接して電流モニター回路50を配置することで、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34に供給されるバイアス電流I−Icontと同一の電流値を電流コンパレータ56によって精度良く判定することが可能である。
【0083】
電流コンパレータ56からの出力信号は、RSラッチ回路58に送られる。RSラッチ回路58は、電流コンパレータ56から出力された信号を保持する回路である。RSラッチ回路58にリセット(RESET)信号が入力された場合は、RSラッチ回路58がリセットされ、RSラッチ回路58の出力が“ロー(Low)”となる。
【0084】
インバータ回路60は、RSラッチ回路58の出力を反転させる。図6に示すように、インバータ回路60の出力は、トランスコンダクタンス回路12,32に接続されたスイッチ24,44に入力されており、RSラッチ回路58の出力は、トランスコンダクタンス回路14,34に接続されたスイッチ26,46に入力されている。従って、スイッチ24とスイッチ44は同一の動作を行い、また、スイッチ26とスイッチ46は同じ動作を行う。また、インバータ回路60により、スイッチ24,44とスイッチ26,46は互いに逆の動作を行う。
【0085】
図7は、図6の補正回路部30及びその周辺を詳細に示す模式図である。本実施形態において、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34のGm1,Gm2は、Gm1∝(Iα,Gm2∝(Iα(αは定数)であるものとする。
【0086】
電圧電流変換器532の回路動作の開始時には、RSラッチ回路58にリセット(Reset)信号が入力され、RSラッチ回路58からの出力は“ロー(Low)”に設定される。このとき、補正回路部130では、“ロー(Low)”の信号を受けたスイッチ46がオフとなり、インバータ回路60で反転されたハイの信号を受けたスイッチ44がオンとなり、電圧電流変換ゲインの大きいトランスコンダクタンス回路32が選択される。また、電圧電流変換部10では、“ロー(Low)”の信号を受けたスイッチ26がオフとなり、インバータ回路60で反転されたハイの信号を受けたスイッチ24がオンとなり、電圧電流変換ゲインの大きいトランスコンダクタンス回路12が選択される。
【0087】
回路動作が開始すると、RSラッチ回路58のリセット(Reset)信号が解除され、電流モニタ回路50から入力されたバイアス電流I−Icontと基準電流値Irefの大小関係が、電流コンパレータ56によって判定される。そして、I−Icont>Irefの場合は、電流コンパレータ56の出力は“ロー(Low)”となり、I−Icont<Irefであれば“ハイ(High)”となる。I−Icont>Irefのときは、電流コンパレータ56の出力が“ロー(Low)”であるため、スイッチ44,46の接続状態に変化がなく、トランスコンダクタンス回路32が引き続き選択される。一方、I−Icont<Irefのときは、電流コンパレータ56の出力が“ハイ(High)”であるため、スイッチ44がオフになり、スイッチ46がオンになる。これにより、トランスコンダクタンス回路34が選択される。
【0088】
このように、2つのトランスコンダクタンス回路32,34には、いずれか一方のみにバイアス電流I−Icontが供給され、2つのトランスコンダクタンス回路32,34に同時にバイアス電流が供給されることはない。
【0089】
そして、スイッチ24とスイッチ44は同じ動作をし、スイッチ26とスイッチ46は同じ動作をするため、補正回路部30でトランスコンダクタンス回路32からトランスコンダクタンス回路34への切り換えが行われると、電圧電流変換部10においてもトランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14への切り換えが行われる。
【0090】
従って、温度変化、製造バラツキ等によるバイアス電流I−Icontの変化に応じて、異なるトランスコンダクタンス値Gm1,Gm2を有する2つのトランスコンダクタンス回路12,14の一方を選択することが可能となる。これにより、動作環境が低温になり、製造時にトランジスタの能力が設計時よりも高くなるようにばらついた場合は、トランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14への切り換えが行われ、Gmの値がGm1よりも値の小さいGm2に切り換わるため、Gmの値を一定に保つためにバイアス電流I−Icontを大きく減少させる制御が不要となる。従って、バイアス電流の減少により電圧電流変換部10の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することが可能となる。
【0091】
また、固定電流源18と可変電流源20とから構成される電流源16によって電圧電流変換部10に電流を供給するため、動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低下するようにばらつきが生じた場合であっても、電流源16を構成するトランジスタのオーバードライブ電圧が高くなってしまうことを抑止できる。この点については、後で詳細に説明する。
【0092】
トランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14に切り換わった場合、トランスコンダクタンス値がGm2となり、その値が小さくなる。一方、補正回路部30は、Gm2を規定値(=1/Rext)に制御するため、Vcontの値を上昇させてバイアス電流I−Icontを増加させる。従って、Gm2に切り換わった後、電流モニター回路50の出力電流がI−Icont>Irefとなり電流コンパレータ56の出力は再び“ロー(Low)”に戻る。しかし、トランスコンダクタンス回路14に切り換わった時点の電流コンパレータ56の出力(判定結果)はRSラッチ回路58で保持されているため、RSラッチ回路58にリセット(Reset)信号が入力されない限り、引き続きラッチ回路58からの出力は“ハイ(High)”となり、引き続きトランスコンダクタンス回路14を選択して動作させることができる。これにより、トランスコンダクタンス回路14に切り換わった後、再度トランスコンダクタンス回路12への切り換えが行われることが抑止される。従って、煩雑に切り換えが行われることを抑え、PLL500を安定して動作させることができる。
【0093】
[トランスコンダクタンス回路の動作、Gm1,Gm2の値の設定について]
図8は、補正回路部30の動作シーケンスを示すタイミングチャートである。ここで、図8(a)は高温動作時を、図8(b)は低温動作時を示している。時刻t0でリセット(Reset)信号が“ロー(Low)”になり、リセット信号が解除されると、補正回路部30が動作を開始する。回路動作開始直後は電圧電流変換部10ではトランスコンダクタンス回路12が選択され、補正回路部30ではトランスコンダクタンス回路32が選択されている。
【0094】
高温動作時には、トランジスタの能力低下を補い、Gm1の値を増加させるため、Vcontの値が上昇し、バイアス電流I−Icontが増加する。従ってI−Icont>Irefの状態が維持され、図8(a)に示すように、電流コンパレータ56の出力は“ロー(Low)”のままである。
【0095】
低温動作時は、トランジスタの能力が高くなり、Gm1の値を低下させるため、Vcontの値が低下し、バイアス電流I−Icontが減少する。そして、I−Icont<Irefとなると、図8(b)に示すように、電流コンパレータ56の出力は“ハイ(High)”になり、トランスコンダクタンス回路12,32からトランスコンダクタンス回路14,34への切り換えが行われる。
【0096】
この後、上述したようにトランスコンダクタンス回路34に切り換わったことにより、電流モニター回路50の出力電流が増加するため、I−Icont>Irefとなる。このため、時刻t1で電流コンパレータ56の出力は“ロー(Low)”となるが、RSラッチ回路58の出力は“ハイ(High)”のままであるため、時刻t0で電流コンパレータ56の出力が“ハイ(High)”になった後、図7に示す補正ループ62の帯域で決まるセトリング時間(Settling Time)の間、トランスコンダクタンス回路34に供給されるバイアス電流I−Icontは増加し、一定の値にセトリングする。このため、バイアス電流I−Icontが一定値となった後、電圧電流変換部10のトランスコンダクタンス回路14を使用するのが好適である。
【0097】
次に、基準電流Irefを決定する方法を説明する。トランスコンダクタンス回路14に切り換わった後、トランスコンダクタンス回路14に供給される電流量が基準電流Irefと一致した場合の最大出力電流は、(10)式、(11)式と同様に考えれば±2Irefである。従って、補正後のGmの値をGm_idealとすると電圧電流変換部10の入力レンジは次のように表される。
【0098】
【数8】

【0099】
トランスコンダクタンス回路14に必要な入力レンジを(13)式が満たせるようにIrefを決定する。従って、基準電流Irefを最適値に設定することで、これにより、トランスコンダクタンス回路14に供給される電流量がI−Icont<Irefとなることを回避でき、バイアス電流の供給不足によって入力レンジを確保できない事態が生じることを確実に抑止できる。
【0100】
図9は、一定の固定バイアス電流をトランスコンダクタンス回路12,14に加えた場合のGmの値を示している。ここで、図9(b)は、常温時であり、かつトランスコンダクタンス回路12,14が設計値通りに形成された場合に、Gm1の値が規定値となるようにバイアス電流I−Icont(ideal、常温)を加えた場合を示している。また、図9(a)は、図9(b)のバイアス電流値のままで動作環境が高温になり、トランジスタ能力が低下した場合(slow、高温)を示している。また、図9(c)は、動作環境が低温になり、トランジスタ能力が高くなった場合(fast、低温)において、トランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14に切り換わった場合を示している。
【0101】
図9(a)に示すように、高温でトランジスタ能力が低下した場合は、Gm1の値を規定値(=1/Rext)にするため、I−Icontの値がI−Icont(ideal、常温)よりも増加するように補正回路部30による調整が行われる。また、図9(c)に示すように、低温でトランジスタ能力が高くなった場合は、Gm2の値を規定値(=1/Rext)にするため、I−Icontの値が増加するように調整が行われる。
【0102】
図10は、低温でトランジスタ能力が高くなった場合にGm2を調整する方法を示す模式図である。低温でトランジスタ能力が高くなり、I−Icont<Irefとなった場合は、トランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14への切り換えが行われる。そして、図10(a)に示すように、切り換えた直後にGm2の値が規定値(=1/Rext)よりも減少している場合は、Gm2の値が規定値になるようにI−Icontを増加させる制御が行われる。また、図10(b)に示すように、Gm2の値が規定値よりも増加している場合は、Gm2の値が規定値になるようにI−Icontを減少させる制御が行われる。図10(a)及び図10(b)の場合は、切り換わった直後のGm2の値と規定値との差が少ないため、いずれの場合もトランスコンダクタンス回路14に切り換わった後のバイアス電流は、I−Icont>Irefとなる。
【0103】
一方、図10(c)に示すように、Gm2の値とGm1の値との差が少ない場合は、トランスコンダクタンス回路14に切り換わった後、バイアス電流I−Icontを大きく減少させる必要があるため、I−IcontがIrefの値を下回る可能性がある。(13)式で説明したように、入力レンジはIrefで規定されるため、I−Icont<Irefとなると、入力レンジが狭くなってしまう。このため、Gm2に切り換わった後I−IcontがIrefの値を下回ることが無いように、Gm2,Irefの値を設定する必要がある。好適には、Gm1:Gm2=3:2程度とすることが望ましいが、Gm2に切り換わった後にI−Icont>Irefとなる条件を満たせば、Gm1とGm2の値を近づけることは可能である。
【0104】
[電圧電流変換回路の具体例及びその動作]
次に、電圧電流変回路の具体例を示す。図11は、図7に示す回路構成の具体例を示す模式図であり、図7と同様に補正回路部30とその周辺部分のみを抜き出したものである。トランスコンダクタンス回路32は、トランジスタM11,M12,M13,M14のみがトランスコンダクタンス回路34のトランジスタM21,M22,M23,M24と相違しており、他のトランジスタM5,M6,M7,M8,M9,M10はトランスコンダクタンス回路32とトランスコンダクタンス回路34とで共通に用いることができる。Gmの値は(5)式で規定されるため、トランジスタM11,M12,M13,M14に対してトランジスタM21,M22,M23,M24のゲート幅W、ゲート長を適宜に設定することで、他のトランジスタM5,M6,M7,M8,M9,M10を共通にした状態で、トランスコンダクタンス回路32,34を構成することができる。ここで、トランジスタM11〜M14,M21〜M24,M5,M6,M11はnチャネルMOSトランジスタから構成され、トランジスタM7,M8,M9,M10,M12はpチャネルMOSトランジスタから構成されている。
【0105】
このように、トランジスタM5,M6,M7,M8,M9,M10をトランスコンダクタンス回路32,34で共通に用いることで、最小限の構成で2つのトランスコンダクタンス回路32,34を構成することができる。そして、トランスコンダクタンス回路32,34のそれぞれに同じバイアス電流が供給された場合に、Gm1>Gm2となるように(5)式のパラメータが調整されている。
【0106】
図11の回路では、トランジスタM5,M6が図7の固定電流源38として機能し、トランジスタM7,M8が図7の可変電流源40として機能する。また、トランジスタM11が図7の電流モニタ回路50の固定電流源52として機能し、トランジスタM12が電流モニタ回路50の可変電流源54として機能する。
【0107】
また、RSラッチ回路58の出力に応じてトランスコンダクタンス回路32,34の一方を選択するため、トランスコンダクタンス回路32,34の各入力端子にスイッチ回路62,64,66,68が接続されている。図11に示す状態では、RSラッチ回路58から“ロー(Low)”の信号が出力されて、トランスコンダクタンス回路32が選択され、トランスコンダクタンス回路32にバイアス電流I−Icontが供給されている。この状態では、トランスコンダクタンス回路32のトランジスタM11のゲート端子が、スイッチ回路62により電圧V+Vrefを出力する電源70と接続される。また、トランスコンダクタンス回路32のトランジスタM12のゲート端子が、スイッチ回路64により電圧Vrefを出力する電源72と接続される。また、トランスコンダクタンス回路34のトランジスタM21のゲート端子はスイッチ回路66により接地され、トランジスタM22のゲート端子はスイッチ回路68により接地される。
【0108】
従って、トランジスタM5,M8からなる電流源によってトランスコンダクタンス回路32のトランジスタM11にバイアス電流I−Icontが流れ、トランジスタM6,M7からなる電流源によってトランスコンダクタンス回路32のトランジスタM12にバイアス電流I−Icontが流れる。一方、トランスコンダクタンス回路34では、トランジスタM21,M22の各ゲート端子が接地されているため、トランジスタM5〜M8によるバイアス電流I−Icontは流れない。
【0109】
図11の回路構成において、トランスコンダクタンス回路32,34に供給される電流はI−Icontであるので、(5)式からGmの値は次のように表される。
【0110】
【数9】

【0111】
補正回路部30では、トランスコンダクタンス回路32,34のGmの値が一定となるようにバイアス電流I−Icontを制御する。動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低くなるようにばらついた場合は、Gmの値の低下を抑えるように(14)式のI−Icontの量が増加し、Gmの値が増加される。
【0112】
図12は高温、トランジスタ能力が低下したときの補正回路部30の動作を示しており、バイアス電流I−Icontの量を増加させるために、可変電流源40として機能するトランジスタM7,M8を流れる電流Icontの量を減少させるようにオペアンプ35の出力電圧Vcontは上昇する。
【0113】
図13は、高温、トランジスタ能力が低下した場合に、図11の補正回路部30に接続された電圧電流変換部10のトランスコンダクタンス回路12,14の動作を示している。トランスコンダクタンス回路12,14及びその電流源は、図11と同様に構成され、トランジスタM11〜M14,M21〜M24,M5〜M10から構成されている。また、電圧電流変換部10は、補正回路部30と同様にスイッチ62,64,66,68を備えている。ここで、スイッチ62,66には、電圧電流変換器532への入力Vinが接続されており、図11の電源70が接続されていない点で、図13と図11のスイッチ62,66は相違している。トランスコンダクタンス回路12,14においても、補正回路部30と全く同じようにVcontは上昇するため、電流Icontの量を減少し、トランスコンダクタンス回路12,14に流れるバイアス電流I−Icontの量が増加する。従って、高温、トランジスタ能力が低下した場合であっても、Gmの値の低下を抑止でき、Gmの値を規定値に維持することができる。
【0114】
ここで、トランスコンダクタンス回路12,14に供給される電流は、補正回路部30と同様に、固定電流源18としてのnMOS型トランジスタM5,M6と、可変電流源20としてのpMOS型トランジスタM7,M8との組み合わせによる電流源から供給される。そして、高温時にトランジスタ能力が低下した場合は、オペアンプ35からの出力の増加を受けて、pMOS型トランジスタM7,M8を流れる電流Icontが減少することによって、バイアス電流I−Icontの量を増加させる。
【0115】
オペアンプ35からの出力電圧Vcontが上昇した場合、pMOS型トランジスタM7,M8では、オーバードライブ電圧が下がるため、飽和領域で確実にトランジスタを動作させることが可能となる。また、固定電流源18としてのnMOS型トランジスタM5,M6では、電圧Vcontによって特性が変化しないため、オーバードライブ電圧は一定であり、飽和領域での動作を継続して行うことができる。従って、nMOS型トランジスタM5,M6と、pMOS型トランジスタM7,M8の組み合わせから電流源を構成した場合、いずれのトランジスタも電圧Vcontの上昇によって非飽和領域で動作することがないため、動作領域的に狭くなることがなく、オーバードライブ電圧の上昇によりトランジスタが非飽和領域で動作することを確実に抑止できる。
【0116】
従って、図4のようにnMOS型トランジスタの単体で電流源のトランジスタM57,M58を構成した場合は、ゲート端子への電圧Vcontの上昇によって電流源のトランジスタM57,M58のオーバードライブ電圧が上昇してしまうが、図11〜図13の構成ではオペアンプ35からの電圧Vcontの上昇した場合であっても、電流源を構成するトランジスタM5,M6,M7,M8のオーバードライブ電圧の上昇を抑えることができ、トランジスタM5,M6,M7,M8を常に飽和領域で動作させることが可能となる。
【0117】
より詳細には、図13のトランジスタM11とM12、トランジスタM13とM14、トランジスタM5とM6、トランジスタM7とM8はそれぞれ同サイズのトランジスタから構成され、トランジスタM7の閾値電圧をVth7とし、トランジスタM5が飽和領域で動作することのできる最小ドレイン・ソース間電圧をVdsat5とすればトランジスタM7が飽和領域で動作するためには以下の式を満たす必要がある。
【0118】
【数10】

【0119】
高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低くなるようにばらついた場合は、オペアンプ35の出力電圧Vcontが上昇するため、(15)式の左辺は、常温でトランジスタの能力が設計値通りの場合よりも小さくなる。従って、動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低くなるようにばらついた場合であっても、トランジスタM7は飽和領域動作を維持することができる。
【0120】
また、トランジスタM11のゲート・ソース間電圧をVgs1、閾値電圧をVth1とすれば、トランジスタM5が飽和領域で動作するためには次の式を満たす必要がある。
【0121】
【数11】

【0122】
ここで、(17)は、図4で説明した関連技術における(7)式に対応している。(7)式では右辺にVcontの項が存在するが、(17)式ではVcontの項が存在しない。また、(17)式では、バイアス電流I−Icontが右辺の平方根の中に存在するため、オペアンプ35からの出力電圧Vcontが増加し、バイアス電流I−Icontが増加しても、トランスコンダクタンス回路の下限入力レンジが図4の関連技術のように大幅に狭まることはない。
【0123】
図14は、低温時にトランジスタ能力が高くなった場合の補正回路部30の動作を示している。上述したようにRSラッチ回路58のReset信号を“ハイ(High)”から“ロー(Low)”にしてリセットを解除すれば、I−Icont<Irefの場合、電流コンパレータ56の出力信号“ハイ(High)”がRSラッチ回路58から出力される。この場合、各スイッチ回路62〜68の接続状態が図11と逆になり、トランスコンダクタンス回路34のトランジスタM21のゲート端子が電源70と接続され、トランジスタM22のゲート端子が電源72と接続される。また、トランスコンダクタンス回路32のトランジスタM11,M12のゲート端子は接地される。従って、トランスコンダクタンス回路34のトランジスタM21,M22にバイアス電流I−Icontが流れ、トランスコンダクタンス回路32にはバイアス電流I−Icontが流れない。
【0124】
従って、トランスコンダクタンス回路32からトランスコンダクタンス回路34への切り換えが行われ、Gmの値がGm1からGm2に切り換わる。また、電圧電流変換部10においても、トランスコンダクタンス回路12からトランスコンダクタンス回路14への切り換えが行われ、Gmの値がGm1からGm2に切り換わる。この後、電流コンパレータ56の出力は“ハイ(High)”か“ロー(Low)”のいずれかに変化するが、RSラッチ回路58の出力はReset信号が再び入力されるまで“ハイ(High)”の状態が保たれる。
【0125】
図15は、図11のRSラッチ回路58の具体例を示す模式図である。図15に示すように、RSラッチ回路58はインバータ80,81,82と、CMOSスイッチ84,85と、NANDゲート86,87を組み合わせた構成とされる。電流コンパレータ56からの出力は、セット(SET)信号としてRSラッチ回路58に入力される。図15の構成によれば、CMOSスイッチ84がSet端子に接続されており、リセット(RESET)信号が“ハイ(High)”となったときは、セット(SET)信号がいかなる値であってもNANDゲート86,87からの出力は“ロー(Low)”になる。
【0126】
また、図16は、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34の入力に接続されているスイッチ回路62〜68の具体例を示す模式図である。図16に示すように、スイッチ回路62〜68は、CMOSスイッチ90,92とインバータ94で構成される。Control信号が入力される端子にはRSラッチ回路58の出力、またはその反転出力が入力される。また、図16において、Vinが入力される端子(Vin端子)には、トランスコンダクタンス回路12,14のスイッチ62,66では、電圧電流変換器532への入力Vinが入力され、トランスコンダクタンス回路12,14のスイッチ64,68では、電源72が接続される。また、トランスコンダクタンス回路32,34では、図16のVin端子に電源70又は電源72が接続される。また、図16において、Voutが出力される端子(Vout端子)には、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34の入力端子(トランジスタM11,M12,M21,M22のゲート端子)が接続される。
【0127】
このような構成によれば、Control信号が“ハイ(High)”の場合は、CMOSスイッチ90が導通し、CMOSスイッチ92が非導通となり、Vin端子はVout端子と接続される。従って、電源70,72の出力電圧がトランスコンダクタンス回路12,14,32,34の入力端子に供給される。また、Control信号が“ロー(Low)”の場合は、CMOSスイッチ92が導通し、CMOSスイッチ90が非導通となり、Vout端子はグランド(GND)に接続される。従って、トランスコンダクタンス回路12,14,32,34の入力端子が接地される。
【0128】
図17は、図11に示す電流コンパレータ56の具体例を示す模式図である。図17に示すpチャネルMOSトランジスタM2,M3,M4と、nチャネルMOSトランジスタM6,M7,M8はそれぞれ同じサイズであり、トランジスタM5は抵抗として使用される。入力電流I−Icontは電流モニター回路50からの出力電流である。入力電流Iref−(I−Icont)が0のときは、トランジスタM6のドレイン端子の電圧はほぼ中間電圧となり、トランジスタM7,M8のドレイン端子も同じ電圧となる。この状態からIref−(I−Icont)>0となれば、出力は“ハイ(High)”になり、Iref−(I−Icont)<0となれば出力は“ロー(Low)”となる。Iref−(I−Icont)=0のときはM8のドレイン端子に接続されているインバータ96の閾値を中間電圧からずらしておく必要がある。これによりインバータ96の出力が中間電圧になることを回避できる。
【0129】
なお、上述した実施形態では、電圧電流変換部10、補正回路部30のそれぞれが、2つのトランスコンダクタンス回路12,14、2つのトランスコンダクタンス回路32,34を備えるものとしたが、電圧電流変換部10、補正回路部30がGmの値の異なる3つ以上のトランスコンダクタンス回路を備えていても構わない。この場合においても、バイアス電流I−Icontの値に応じて、複数のトランスコンダクタンス回路の中から最適なGm値を有するトランスコンダクタンス回路を選択することで、入力レンジの減少を抑えることが可能である。
【0130】
以上説明したように第1の実施形態によれば、光ディスク装置100のPLL500における電圧電流変換器532を、Gmの値の異なる2つのトランスコンダクタンス回路12,14から構成したため、温度変化、製造バラツキ等によるバイアス電流の変化に応じて、最適なトランスコンダクタンス値を有するトランスコンダクタンス回路を選択して使用することが可能となる。従って、電圧電流変換器532の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することが可能となり、PLL500の可変周波数レンジをより広げることが可能となる。
【0131】
また、トランスコンダクタンス回路12,14の電流源16を、nMOS型トランジスタからなる固定電流源18と、pMOS型トランジスタからなる可変電流源20とから構成したため、動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低くなるようにばらついた場合であっても、電流源16を構成するトランジスタを飽和領域で動作させることが可能となる。従って、電流源16を構成するトランジスタが非飽和領域で動作することによる入力レンジの減少を確実に抑えることが可能となる。
【0132】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図18は、第2の実施形態にかかるフィルタ装置800を示す模式図である。このフィルタ装置800は、7-pole 2-zeroフィルタであり、伝達関数で7つの極と2つの零点を備えるフィルタである。フィルタ装置800は、3つのバイカッド(Biquad)ブロック810,820,830と、1つの1次のローパスフィルタ840によって実現することができる。フィルタ装置800は、例えば図2で説明した、RFアンプ402からの出力信号の波形整形を行うイコライザー404に適用されるものである。
【0133】
7-pole 2-zeroフィルタからなるフィルタ装置800は、7次の高次フィルタであるため、急峻なカットオフ特性を有し、カットオフ周波数以上の高域ノイズを除去することが可能である。特に、7-pole 2-zeroフィルタの伝達関数が0.05°の“Equiripple Linear Phase Filter”(下記非特許文献3参照)は、高域までグループディレイが一定であり、光ディスク装置、磁気ディスク装置のイコライザーに適用して好適である。
【0134】
図19は、バイカッドブロック810,820,830の構成例を示す模式図である。バイカッドブロック810,820,830は、4つの電圧電流変換器850,852,854,856と、2つの容量858,859から構成することができる。
【0135】
各電圧電流変換器850,852,854,856は、図6で説明した第1の実施形態の電圧電流変換器532と同様に構成されており、電圧電流変換器850,852,854,856のそれぞれは、電圧電流変換部(第1の実施形態の電圧電流変換部10に相当)と補正回路部(第1の実施形態の補正回路部30に相当)を備えている。そして、各電圧電流変換部及び補正回路部は、第1の実施形態と同様に、電圧電流変換ゲインGmの値が異なる2つのトランスコンダクタンス回路を備えている。図19に示すgm1〜gm3の値は、各電圧電流変換部が備える2つのトランスコンダクタンス回路のうち、Gmの値が大きいトランスコンダクタンス回路のGm値を示している。ここで、各バイカッドブロック810,820,830の伝達関数は、次のように表すことができる。
【0136】
【数12】

【0137】
(18)式に示されるように、バイカッドブロック810,820,830は、2次のローパスフィルタと等価のブロックとなる。
【0138】
また、図20は、ローパスフィルタ840の構成例を示す模式図である。ローパスフィルタ840は、2つの電圧電流変換器860,862と容量864から構成することができる。電圧電流変換器860,862の構成も第1の実施形態の電圧電流変換器532と同様であり、電圧電流変換器860,862のそれぞれは、電圧電流変換部と補正回路部を備えている。そして、各電圧電流変換部及び補正回路部は、第1の実施形態と同様に、Gmの値が異なる2つのトランスコンダクタンス回路を備えている。ここで、ローパスフィルタ840の伝達関数は、次のように表すことができる。
【0139】
【数13】

【0140】
なお、バイカッドブロック、1次のローパスフィルタを電圧電流変換器から構成した従来例として、以下の非特許文献3が存在する。本実施形態のバイカッドブロック810,820,830、ローパスフィルタ840の基本的な考え方は、この非特許文献3と同様であるが、本実施形態では、各電圧電流変換器850,852,854,856,860,862が電圧電流変換ゲインGmの異なる2つのトランスコンダクタンス回路から構成されており、具体的な構成が相違するものである。
【0141】
【非特許文献3】Geert A. De Veirman and Richard G.Yamasaki“Design of a Bipolar 10-MHZ ProgrammableContinuous-Time 0.05° Equiripple Linear Phase Filter”IEEE JOURNAL OF SOLID-STATE CIRCUITS, VOL. 27,NO. 3, MARCH 1992, p324-331
【0142】
以上のように第2の実施形態では、バイカッドブロック810,820,830、ローパスフィルタ840の各電圧電流変換器850,852,854,856,860,862が第1の実施形態の電圧電流変換器532と同様に構成されるため、温度変化、製造バラツキ等によるトランスコンダクタンス回路へのバイアス電流の変化に応じて、最適な電圧電流変換ゲインGmを有するトランスコンダクタンス回路を選択して使用することが可能となる。従って、動作環境が低温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも高くなるようにばらついた場合は、Gmの値が小さいトランスコンダクタンス回路を選択することで、各電圧電流変換器850,852,854,856,860,862の入力レンジが減少してしまうことを確実に抑止することができ、フィルタ装置800の入力レンジの減少を抑止できる。
【0143】
また、各トランスコンダクタンス回路の電流源を、第1の実施形態と同様に固定電流源と可変電流源から構成することで、動作環境が高温になり、製造時にトランジスタの能力が設計値よりも低くなるようにばらついた場合であっても、電流源を構成するトランジスタを飽和領域で動作させることが可能となる。従って、第1の実施形態と同様に、各電圧電流変換器850,852,854,856,860,862の入力レンジの減少を確実に抑えることが可能となる。
【0144】
なお、上述した各実施形態では、光ディスク装置100のPLL500、フィルタ装置800に本発明を適用した例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、電圧電流変換器を備える各種機器、回路に広く適用することが可能である。
【0145】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る光ディスク装置の構成を示す模式図である。
【図2】記録・再生信号処理部の構成を示す模式図である。
【図3】記録・再生信号処理部内のPLLの構成を示す模式図である。
【図4】図21のトランスコンダクタンス回路と図22のレプリカ技術を応用して得られる関連技術の回路を示す模式図である。
【図5】図4のトランスコンダクタンス回路の入力レンジを示す特性図である。
【図6】第1の実施形態にかかる電圧電流変換器の構成を詳細に示す模式図である。
【図7】図6の補正回路及びその周辺を詳細に示す模式図である。
【図8】補正回路の動作シーケンスを示すタイミングチャートである。
【図9】一定の固定バイアス電流をトランスコンダクタンス回路に加えた場合のGmの値を示す模式図である。
【図10】低温でトランジスタ能力が高くなった場合にGm2を調整する方法を示す模式図である。
【図11】図7に示す回路構成の具体例を示す模式図であり、補正回路とその周辺部分のみを抜き出した模式図である。
【図12】高温、トランジスタ能力が低下したときの補正回路の動作を示す模式図である。
【図13】高温、トランジスタ能力が低下した場合に、図11の補正回路に接続された実使用回路のトランスコンダクタンス回路の動作を示す模式図である。
【図14】低温時にトランジスタ能力が高くなった場合の補正回路の動作を示す模式図である。
【図15】RSラッチ回路の具体例を示す模式図である。
【図16】トランスコンダクタンス回路の入力に接続されているスイッチ回路の具体例を示す模式図である。
【図17】電流コンパレータの具体例を示す模式図である。
【図18】第2の実施形態にかかるフィルタ装置を示す模式図である。
【図19】図18のバイカッドブロックの構成を示す模式図である。
【図20】図18のローパスフィルタの構成を示す模式図である。
【図21】従来のトランスコンダクタンス回路を示す模式図である。
【図22】従来のレプリカトランスコンダクタンス回路を用いた補償技術を示す模式図である。
【符号の説明】
【0147】
10 電圧電流変換部
12,14,32,34 トランスコンダクタンス回路
16 電流源
18 固定電流源
20 可変電流源
22 スイッチ回路
30 補正回路部
56 電流コンパレータ
58 RSラッチ回路
500 PLL
510 位相検出器
520a,520b チャージポンプ
530 ループフィルタ
532,850,852,854,856,860,862 電圧電流変換器
534 外部容量
540 CCO
810,820,830 バイカッドブロック
840 ローパスフィルタ
858,859,864 容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の前記電圧電流変換回路により電圧電流変換を行い、入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、
前記電圧電流変換回路に供給されるバイアス電流を制御し、前記電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、
前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、
前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、
を備えることを特徴とする、ゲイン補正回路。
【請求項2】
前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、
前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えることを特徴とする、請求項1に記載のゲイン補正回路。
【請求項3】
前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、
前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うことを特徴とする、請求項2に記載のゲイン補正回路。
【請求項4】
前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたことを特徴とする、請求項1に記載のゲイン補正回路。
【請求項5】
前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されることを特徴とする、請求項1に記載のゲイン補正回路。
【請求項6】
外部から入力される入力デジタル信号の位相を検出する位相検出部と、
容量素子を有し、駆動電流に応じて前記容量素子の一端に生成される入力電圧を電流に変換して出力するループフィルタ部と、
前記位相検出部から出力された位相検出結果を示す信号に基づいて前記駆動電流を生成し、前記ループフィルタ部を駆動する駆動部と、
前記ループフィルタ部から出力された電流信号に基づき、前記入力デジタル信号の位相に同期する発振信号を出力する発振部と、を備え、
前記ループフィルタ部は、
異なる電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により前記容量素子の一端に生成される前記入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、
選択された前記電圧電流変換回路に供給するバイアス電流を制御し、当該電圧電流変換回路の電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、
前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、
前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換部が選択する前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、
を備えることを特徴とする、位相同期回路。
【請求項7】
前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、
前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えることを特徴とする、請求項6に記載の位相同期回路。
【請求項8】
前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、
前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うことを特徴とする、請求項7に記載の位相同期回路。
【請求項9】
前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたことを特徴とする、請求項6に記載の位相同期回路。
【請求項10】
前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されることを特徴とする、請求項6に記載の位相同期回路。
【請求項11】
入力電圧を電流に変換する電圧電流変換器と容量素子とを備え、前記電圧電流変換器の電圧電流変換ゲインと前記容量素子の容量値で表される伝達関数で規定されるフィルタ回路であって、
前記電圧電流変換器は、
異なる前記電圧電流変換ゲインを有する複数の電圧電流変換回路を備え、選択した1の電圧電流変換回路により入力電圧を電流に変換する電圧電流変換部と、
選択された前記電圧電流変換回路に供給するバイアス電流を制御し、当該電圧電流変換回路の電圧電流変換ゲインを一定値に制御する補正回路部と、
前記バイアス電流と所定の基準電流とを比較する比較部と、
前記バイアス電流と前記基準電流とを比較した結果に基づいて、前記電圧電流変換部が選択する前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインが異なる他の電圧電流変換回路へ切換える切換部と、
を備えることを特徴とする、フィルタ回路。
【請求項12】
前記比較部は、前記バイアス電流が前記基準電流よりも低下した場合に所定の比較信号を出力し、
前記切換部は、前記所定の比較信号が出力された場合に、前記電圧電流変換を行う前記電圧電流変換回路を前記電圧電流変換ゲインがより小さい他の電圧電流変換回路へ切換えることを特徴とする、請求項11に記載のフィルタ回路。
【請求項13】
前記比較部から出力された前記比較信号を保持するラッチ回路を更に備え、
前記切換部は、前記ラッチ回路で保持された前記比較信号に基づいて、前記電圧電流変換回路の切換えを行うことを特徴とする、請求項12に記載のフィルタ回路。
【請求項14】
前記基準電流の値が前記入力電圧の入力レンジに基づいて定められたことを特徴とする、請求項11に記載のフィルタ回路。
【請求項15】
前記バイアス電流は、第1導電型のトランジスタから構成される固定電流源と、前記第1導電型と逆導電型の第2導電型のトランジスタから構成される可変電流源との組み合わせからなる電流源によって供給されることを特徴とする、請求項11に記載のフィルタ回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate


【公開番号】特開2008−219116(P2008−219116A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49803(P2007−49803)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】