説明

ゲムシタビンおよび関連中間体の製造方法

ゲムシタビンまたはその塩の製造方法であって、N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのαアノマーの少なくとも大部分をそのアノマー混合物から除去する工程;3’位のエステル、5’位のエステル、およびN-保護基を除去する工程;ならびに場合によって塩を形成させる工程を含む方法を提供する。3’位のエステルおよび5’位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。特に限定されないが2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを含む新規な中間体、およびこのような中間体の製造方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジェムザール(Gemzar)(登録商標)という商品名でイーライリリーより市販されているゲムシタビンHClは、抗腫瘍活性を有するヌクレオシド類似体であり、代謝拮抗剤として公知の化学療法薬剤の一般的なグループに属する。ゲムシタビンは、核酸の合成を妨げることによって細胞のDNAおよびRNA合成を阻止し、これにより、癌細胞の増殖を停止させ、その死滅を引き起こす。
【背景技術】
【0002】
ゲムシタビンは、シトシンの合成グルコシド類似体であり、化学的に、4-アミノ-1-(2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-β-D-リボフラノシル)-ピリミジン-2(1H)-オンまたは2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジン(β異性体)と記述される。ゲムシタビンHClは下記の構造を有する。
【化1】

【0003】
ジェムザール(登録商標)は、滅菌形態の塩酸塩としてバイアルで、静脈注射用にのみ提供され、200mgまたは1gのいずれかのゲムシタビンHCl(遊離塩基として算出)を含有し、マンニトール(それぞれ200mgまたは1g)および酢酸ナトリウム(それぞれ12.5mgまたは62.5mg)と共に滅菌凍結乾燥粉末として処方される。塩酸および/または水酸化ナトリウムが、pH調整のために加えられ得る。
【0004】
米国特許第4,808,614号(「'614特許」)は、ゲムシタビンを合成的に製造する方法を開示しており、この方法は典型的にスキーム1で図示される。
【0005】
【化2】

【0006】
D-グリセルアルデヒド ケタール2を、活性亜鉛の存在下でブロモジフルオロ酢酸エチルエステル(BrCF2COOEt)と反応させて、2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオン酸エチル3を、3-R-および3-S-異性体混合物として得る。3-R異性体と3-S異性体との比は約3:1である。3-R異性体は、所望のエリスロ(3-R)リボース構造を製造するために必要な立体化学を有し、クロマトグラフィーによって3-S異性体から分離され得る。
【0007】
結果として生じる生成物を、Dowex 50W-X12などの酸性イオン交換樹脂を用いた処理によって環化して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペンタン酸-γ-ラクトン4を得る。ラクトンのヒドロキシ基をtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)保護基で保護して、保護ラクトン3,5-ビス-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-2-デオキシ2,2-ジフルオロ-1-オキソリボース5を得、さらにこの生成物を還元して、3,5-ビス-(tert-ブチルジメチルシリル)-2-デオキシ2,2-ジフルオロリボース6を得る。
【0008】
例えば化合物6を塩化メタンスルホニルと反応させることにより形成される、メタンスルホニルオキシ(メシレート)などの脱離基の導入によって、糖の1位を活性化して、3,5-ビス-(tert-ブチルジメチルシリルオキシ)-1-メタンスルホニルオキシ-2-デオキシ-2,2-ジフルオロリボース7を得る。例えばトリフルオロメタンスルホニルオキシトリメチルシラン(トリメチルシリルトリフレート)などの反応開始剤の存在下で、化合物7をN,O-ビス-(トリメチルシリル)-シトシン8と反応させることによって、塩基環を糖にカップリングさせる。保護基の除去およびクロマトグラフィーによる精製によって、ゲムシタビン遊離塩基を得る。
【0009】
米国特許第4,526,988号は、3-ジオキソラニル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-プロピオン酸アルキルを酸性イオン交換樹脂で加水分解することによって環化を行う同様の方法を開示している。Hertelらの J. Org. Chem. 53, 2406 (1998)も参照されたい。
【0010】
米国特許第4,965,374号(「'374特許」)は、下記式:
【化3】

の中間体3,5-ジベンゾイルリボ保護ラクトンからゲムシタビンを製造する方法を開示している。ここで、所望のエリスロ異性体は、エリスロ-およびスレオ-異性体混合物から、結晶形態で単離することができる。'374特許で開示されたこの方法は、一般にスキーム2で概説される。
【0011】
【化4】

【0012】
3級アミンまたは触媒(例えば、4-ジメチルアミノピリジンもしくは4-ピロリジノピリジンなど)の存在下で、塩化ベンゾイル、臭化ベンゾイル、ベンゾイルシアニド、ベンゾイルアジド等(例、PhCOX(式中、X=Cl、Br、CN、またはN3))との反応によって、化合物3の3-ヒドロキシ基をベンゾイル保護基でエステル化し、2,2-ジフルオロ-3-ベンゾイルオキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)プロピオン酸エチル9を得る。
【0013】
例えば、エタノール中、濃硫酸などの強酸を用いることによって、9のイソアルキリデン保護基を選択的に除去して、2,2-ジフルオロ-3-ベンゾイルオキシ-4,5-ジヒドロキシペンタン酸エチル9Aを製造する。この生成物を環化させてラクトン10とし、ジ安息香酸エステルに変換して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジ安息香酸ラクトン11をエリスロ-およびスレオ-異性体混合物として製造する。この'374特許は、少なくともエリスロ異性体の一部の、混合物からの選択的な沈殿による単離を開示する。Chou et al., Synthesis, 565-570, (1992)も参照されたい。
【0014】
その後、化合物11を還元して2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノースジベンゾエート12のαおよびβアノマーの混合物を得、塩化メタンスルホニルで活性化して、メシレートである2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノシル-3,5-ジ-O-ベンゾイル-1-O-β-メタンスルホネート13のアノマー混合物を得、さらにN,O-ビス(トリメチルシリル)-シトシン8とカップリングさせて、ジ安息香酸エステルであるシリル保護ヌクレオシド14を、α-およびβ-アノマーの混合物(約1:1のα/βアノマー比)として得る。エステルおよびシリル保護基の除去により、βアノマー(ゲムシタビン)およびα-アノマーの混合物(約1:1α/βアノマー比)がもたらされる。この'374特許は、アノマー混合物の塩(例、塩酸塩もしくは臭化水素酸塩)を形成させることによってβ-アノマー(ゲムシタビン)を選択的に単離する工程、および選択的に沈殿させて、2'-デオキシ-2',2'-ジフルオロシチジンを1:4のα/β比の塩として得る工程を開示する。この'374特許はまた、わずかに塩基性の水性溶液中の遊離塩基形態のβ-アノマーを選択的に沈殿させる工程を開示する。このような方法の1つは、熱酸性水(pHを2.5〜5.0に調整)中に1:1のα/βアノマー混合物を溶解する工程、混合物が十分に溶解すると直ぐにpHを7.0〜9.0に上げる工程、および溶液を放冷して結晶を製造する工程を含み、この結晶をろ過により単離する。
【0015】
アルキルスルホネート中間体のアノマー混合物を分離する方法も開示されている。米国特許第5,256,797号および同第4,526,988号は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノシル-1-アルキルスルホネートのアノマーを分離する方法を開示し、米国特許第5,256,798号は、α-アノマーが富化されたリボフラノシルスルホネートを得る方法を開示している。
【0016】
ゲムシタビンを調製するのに役立ち得る、他の中間体が開示されている。例えば、米国特許第5,480,992号は、例えば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノシル-3,5-ジ-O-ベンゾイル-1-O-β-メタンスルホネートを、アジ化リチウムなどのアジド求核試薬と反応させて、アジドを得ることによって調製することができる、アジ化2,2-ジフルオロリボシルおよび対応するアミン中間体のアノマー混合物を開示している。アジドの還元により対応するアミンを製造し、これを合成的にヌクレオシドに変換し得る。米国特許第5,541,345号および同第5,594,155号も参照されたい。
【0017】
他の公知の中間体には、例えば、1-アルキルスルホニル-2,2-ジフルオロ-3-カルバモイルリボースおよび関連ヌクレオシド中間体(米国特許第5,521,294号)、トリチル化中間体(米国特許第5,559,222号)、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-β-D-リボ-ペントピラノース(米国特許第5,602,262号)、2-置換-3,3-ジフルオロフラン中間体(米国特許第5,633,367号)、およびα,α-ジフルオロ-β-ヒドロキシチオールエステル(米国特許第5,756,775号および同第5,912,366号)が挙げられる。
【0018】
ゲムシタビンを調製する他の方法は、例えば、国際公開第2006/070985号および同第2006/071090号に、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジンの立体選択的な調製について開示されている。これらの方法は、一般に下記スキーム3で概説される。
【0019】
【化5】

【0020】
この方法は、2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-D-リボフラノシル-3,5-ジエステル12Aをジフェニルクロロホスフェートで活性化する工程、次いで異性体を単離する工程、その後対応する1-ブロモ-リボフラノース中間体を得る工程を含み、この中間体をN,O-ビス-(トリメチルシリル)-シトシン8とカップリングさせた後、脱保護してゲムシタビンを得る。しかし、この方法は、スキーム2で概説した方法と比較して、追加的な工程を必要とし、このことが工業的な実施に対する魅力を損なっている。
【特許文献1】米国特許第4,808,614号
【特許文献2】米国特許第4,965,374号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ゲムシタビンの製造に関して、特に、異性体の製造および分離を必要とする方法において、商業規模では製造収量が乏しい傾向にあるという内在的な問題が存在する。従って、ゲムシタビンの製造を特に商業規模で容易にする、ゲムシタビンおよびその中間体の調製の改良方法が必要とされている。本発明は、本明細書における本発明の記述から明らかなように、このような方法および中間体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、ゲムシタビンまたはその塩の製造方法であって、好ましくは、
N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物からαアノマーの少なくとも大部分を除去して、βアノマーが少なくとも富化された生成物を製造する工程;
前記3’位のエステル、5’位のエステル、およびN-保護基を除去する工程;ならびに
場合によって、前記生成物を塩に変換する工程
を含む方法を提供する。
【0023】
前記3’位のエステルおよび5’位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【0024】
前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルは、任意の適切な方法によって製造することができる。好ましくは、
2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを還元して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを製造する工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを、塩基の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートを得る工程;ならびに
N-1位が保護されたシトシンを前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートとカップリングさせて、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルを得る工程
を含む方法によって、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物を製造する。
【0025】
前記3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【0026】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、任意の適切な方法によって製造することができる。好ましくは、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物から生成物を分離することによって得られる。前記3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の、保護された2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、ゲムシタビンの商業的な規模での製造に特に有用である。これらのD-エリスロ誘導体は、結晶性物質であり、D-エリスロ-およびL-スレオ-異性体混合物からの分離(例えば、沈殿)によって精製することができる。本発明のこれらの中間体および方法は、ゲムシタビンの全合成を容易にし、取り扱いが簡単であり、文献に記載された方法より高い収率を実現する。
【0028】
本発明は、ゲムシタビンまたはその塩の製造方法であって、好ましくは、
N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物からαアノマーの少なくとも大部分を除去して、βアノマーが少なくとも富化された生成物を製造する工程;
前記3’位のエステル、5’位のエステル、およびN-保護基を除去する工程;ならびに
場合によって、前記生成物を塩に変換する工程
を含む方法を提供する。
【0029】
前記3’位のエステルおよび5’位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【0030】
前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルは、任意の適切な方法によって製造することができる。好ましくは、
2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを還元して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルのアノマー混合物を製造する工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを、塩基の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートを得る工程;ならびに
N-1位が保護されたシトシンを前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートとカップリングさせて、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルを得る工程
を含む方法によって、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物を製造する。
【0031】
前記3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【0032】
本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、任意の適切な方法によって製造することができる。好ましくは、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物から生成物を分離することによって得ることができる。この3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、好ましくは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである。
【0033】
本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物は、任意の適切な方法によって製造することができる。1つの実施態様では、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物をエステル化することによって製造する。3位のエステルおよび5位のエステルが同じである場合、この3位のエステルおよび5位のエステルは、シンナモイル、1-ナフトイル、または1-ナフチルメチルカルボニルであることが好ましい。この2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物は、任意の適切な方法、例えば、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-S-および3-R-異性体混合物を環化させることによって製造することができる。好適なアルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート中間体には、例えば、C1〜6アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート中間体〔例えば、エチル-2,2-ジフルオロ-3 -ヒドロキシ-3 -(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〕が含まれる。
【0034】
別の実施態様では、本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物をエステル化することによって製造される。この2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルのエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体の混合物は、任意の適切な方法、例えば、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-S-および3-R-異性体混合物をエステル化させ、この生成物を環化させる方法によって製造することができる。環化は、任意の適切な条件を用いて、例えば、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物を適切な酸で処理することによって、行わせることができる。この実施態様では、3位のエステルおよび5位のエステルが異なる場合、この3位のエステルまたは5位のエステルのいずれかは、シンナモイル、ベンゾイル、または1-ナフチルメチルカルボニルであることが好ましい。好適なアルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート中間体には、例えば、C1〜6アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〔例えば、エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〕が含まれる。
【0035】
驚くべきことに、本発明によれば、特定のエステル基(例えば、シンナモイルおよび1-ナフチルメチルカルボニル等)が、3,5-リボジエステルラクトンの好ましい異性体の形成を可能にするだけでなく、単純な結晶化または沈殿技術を用いることによって、3,5-キシロジエステルラクトン異性体から3,5-リボジエステルラクトン異性体を分離することを可能にする安定な結晶性物質を形成する。
【0036】
本発明によれば、リボ保護ラクトンの3-位または5-位におけるエステル基は、同じであっても異なっていても良い。すなわち、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、3-位または5-位に同じエステル保護基を有していてもよく、異なるエステル保護基を有していてもよい。
【0037】
本発明の特に好ましい実施態様を、スキーム4に一般的に表す。
【0038】
【化6】

【0039】
スキーム4によれば、N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステル(N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジンであることが好ましい)のαおよびβアノマーの分離は、溶媒混合物、好ましくは1,2-ジクロロエタンおよびメタノールの混合物からαアノマーを選択的に沈殿させることによって実施することができる。ゲムシタビンは、以下の工程を実施することによって得られる。
a) ラクトン15を、有機溶媒中、適切な還元剤を用いて還元して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル16を約1:1の異性体混合物として得る工程;
b) 化合物16を、塩基の存在下、塩化メタンスルホニルと反応させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-l-メタンスルホネート17を得る工程;
c) 化合物17を、有機溶媒中、触媒を用い、好ましくは周囲温度にてビス(トリメチルシリル)-N-アセチルシトシンとカップリングさせて、N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのαおよびβアノマーの混合物を得る工程;
d) αアノマー18を沈殿させて、2つのアノマーを濾過によって分離する工程;ならびに
e) 保護基を加水分解によって除去して、ゲムシタビンを得る工程。
【0040】
ラクトン15の還元は、例えばスキーム4に示したように、任意の適切な還元剤、例えば、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、または、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムなどから選択される1種以上の還元剤を用いて実施することができる。還元は、例えばスキーム4に示したように、特に商業的規模での製造では、好ましくは水素化リチウムアルミニウムを用いて実施する。これは、特に、その低分子量および比較的高い還元容量(1分子あたり4つの水素原子が得られる)のためである。還元はまた、水素化ジイソブチルアルミニウムを用いても実施することができる(例えば、米国特許第4,808,614号、およびChouら、Synthesis, 565-570 (1992)において教示されている)。水素化ジイソブチルアルミニウムは、その分子量、および還元に利用できる水素原子を1つしか持たないという事実の点であまり好ましくない。
【0041】
カップリング反応は、例えばスキーム4に示したように、任意の好適な溶媒(例えば、アセトニトリル、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、トルエン、およびキシレン等から選択される1種以上の有機溶媒が含まれる)中で実施することができる。1つの実施形態において、カップリング反応は1,2-ジクロロエタン中で実施される。場合により、カップリング反応は、好適な触媒試薬〔例えば、トリメチルシリルトリフレート(Me3SiOTf)等〕を用いることによって促進することができる。
【0042】
保護基の除去は、例えばスキーム4に示したように、任意の好適な条件〔例えば、塩基性加水分解(例えば、メタノール中のアンモニア)が含まれる〕を用いることにより実施することができる。
【0043】
本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルは、任意の方法で製造することができる。スキーム5および6は、本発明の典型的な2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを得るための2つの好ましい方法(方法AおよびBで示す)をそれぞれ表す。
【0044】
スキーム5に示した方法は、3位のエステルと5位のエステルとが同じである本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステル(例えば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメート)の製造に特に有用である。この場合において、2つの異性体を沈殿によって分離することにより、エリスロ異性体を99.9%の純度および少なくとも99.6%のeeで得る。
【0045】
【化7】

【0046】
スキーム5によれば、以下の工程を含む方法によって、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを得ることができる。
a) アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(例えば、3)を環化させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース4を製造する工程;
b) 2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース4を、有機溶媒中、塩基の存在下で適切な酸クロライドと反応させて、エリスロおよびスレオ異性体の混合物としての2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステル21を得る工程;ならびに
c) この異性体を選択的な沈殿によって分離する工程。
【0047】
好ましくは、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(例えば、化合物3)を、酸の存在下、溶媒混合物中で出発物質を還流させ、次いで蒸留することによって環化させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース4を製造する。この環化は、米国特許第4,808,614号に従って、イオン交換樹脂を用いて実施することができる(スキーム1も参照されたい)。
【0048】
環化は、例えばスキーム5に示したように、中間体9Aを経由して実施することもできる(スキーム2)。アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(例えば、化合物3)を、適切な溶媒混合物中、酸の存在下で還流させ、次いで蒸留することによって、ChouらのSynthesis, 565-570, (1992)に記載されている通りに実施することができるが、この方法には1つの追加的な工程が加わる。しかし、この還流/蒸留による方法は、工業的用途の場合により経済的であるため商業的な観点から有利である。イオン交換樹脂ルートは、最高で4日間までの反応時間が要求される場合があり、商業的な用途のためには現実的ではない。
【0049】
アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化させるための典型的な方法は、以下の工程を含む。
a) 粗エチル-2,2-ジフルオロ-3 -ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、酸を含有する溶媒混合物に溶解させ、反応を完結させるのに十分な時間、加熱する工程;
b) 前記溶液の体積を蒸留によって減らす工程;
c) 有機溶媒を添加してさらに還流させる工程;
d) 溶媒混合物を蒸留によって除いてオイルを得る工程;および
e) 場合によって、前記オイルを減圧下で蒸留して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを製造する方法。
【0050】
好ましくは、酸を含有する前記溶媒は、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸の混合物である。好ましくは、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比が、それぞれ約150:12:2.2(v/v/v)である。
【0051】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースは、例えばスキーム5に示したように、任意の適切なエステル化剤を用いてエステル化することができる。1つの実施態様では、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを、有機溶媒中、塩基の存在下で酸クロライドを用いて、以下の工程を含む方法によってエステル化する。
a) 2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースの有機溶媒中の溶液を準備する工程;
b) 塩基および酸クロライドを、任意に周囲温度にて滴下により添加する工程;
c) 前記反応混合物を、反応を実質的に完結させるのに十分な時間還流させる工程;
d) この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にする工程;ならびに
e) 溶媒を蒸発させて、粗ジエステルを得る工程。
【0052】
本発明によれば、ヒドロキシ基のエステル化に有用な適切な酸クロライドには、シンナモイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、1-ナフチルアセチルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、4-メチルフェニルアセチルクロライドなどから選択される1種以上の酸クロライドが含まれる。
【0053】
本発明によれば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロおよびスレオ異性体(例えば、3位および5位のエステル基が同じである場合)を、結晶化法によって粗混合物から分離することができる。このような結晶化法の1例には、以下の工程が含まれる。
a) 第一の有機溶媒を、粗混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
b) 第二の有機溶媒を撹拌しながら添加する工程;
c) 沈殿させるために十分な時間、冷却する工程;ならびに
d) 濾過して、所望の生成物を得る工程。
【0054】
第一の溶媒には、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、またはこれらの混合物から選択される1種以上の溶媒が含まれる。第二の溶媒には、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、および石油エーテルから選択される1種以上の溶媒またはこれらの混合物が含まれる。1つの実施態様では、第一の溶媒が酢酸エチルであり、第二の溶媒がヘキサンである。
【0055】
スキーム6(方法B)に示した方法は、3位および5位のエステル基が異なる本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルの製造に特に有用である。
【0056】
【化8】

【0057】
スキーム6によれば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステル(場合によって、3位および5位に同じではないエステル基を有する)は、以下の工程を含む方法によって得ることができる。
a) アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〔例えば、エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート3〕の3-ヒドロキシル基をエステル化して、エチル-2,2-ジフルオロ-3-アセトキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート22を製造する工程;
b) エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、例えば還流させ、次いで蒸留することによって環化させ、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルを、エリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体混合物23として得る工程(この場合において、得られる主生成物は、エリスロ異性体である);
c) 23の5位のヒドロキシ基をエステル化して、同じであるかまたは異なっているエステル基を3位および5位に有するジエステル24を得る工程;ならびに
d) エリスロ異性体24を、反応混合物から選択的に沈殿させて、単離する工程。
【0058】
本発明の2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルは、(3位および5位のエステル基が同じであるか異なっているかに関わらず)、選択的な沈殿による所望の異性体の簡便な分離を可能にし、ひいては2つの異性体を濾過によって分離することを可能にする。本発明によれば、エリスロ異性体、例えば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートを、少なくとも99%のeeで得ることができる。
【0059】
3-ヒドロキシル基のエステル化の典型的な例は、スキーム6に示したように、以下の工程を含む。
a) エチル-2,2-ジフルオロ-3 -ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを有機溶媒に溶解させる工程;
b) 塩基および適切な酸クロライドを、任意に周囲温度にて滴下により添加する工程;
c) この混合物を、反応を完結させるために十分な時間、還流させる工程;ならびに
d) 反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にして、エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを固形物として得る工程。
【0060】
3-ヒドロキシル基のエステル化は、任意の適切なアルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(例えば、本明細書に記載されたもの)を用いて実施することができ、対応するアルキル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〔例えば、アルキル基がC1〜6アルキル(例えば、エチル)であり、3-アシロキシ基がRCO2-であるアルキル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート〕を製造することができる。この場合において、Rは、任意の適切な置換基であり、これらだけに限定されないが、2-フェニルエテニル(シンナモイルエステルを形成する)、フェニル、1-ナフチル、1-ナフチルメチル、2-メチルベンジル、4-メチルベンジル等を含む。
【0061】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの環化は、スキーム6に示したように、還流させ、次いで蒸留することによって達成することができる。典型的な環化法には、以下の工程が含まれる。
a) 粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの、酸を含有する溶媒混合物中の溶液を加熱して、環化させる工程;
b) 前記溶媒の体積を蒸留によって減らす工程;
c) 溶媒混合物を添加し、還流させる工程;
d) この溶媒混合物を、混合物の内部温度が約90〜100℃に達するまで蒸留によって除き、前記温度に約1時間保つ工程;ならびに
e) 残った溶媒混合物を、場合により減圧下で蒸発させて、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルをエリスロ(3-R)およびスレオ(3-S)異性体混合物として得る工程。
【0062】
酸を含有する反応溶媒は、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸の混合物であることが好ましい。好ましくは、アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比は、約75:3.7:0.65(v/v/v)である。溶媒の体積を蒸留によって減らす工程の後に添加する前記有機溶媒は、トルエンであることが好ましい。方法Bは、環化(例えば、反応混合物を還流させた後蒸留することによる環化)後に得られた生成物が、驚くべきことにエリスロ異性体を主成分として与え、したがって、所望する異性体に選択的である場合に特に有利である。
【0063】
5-ヒドロキシル基のエステル化は、例えばスキーム6に示したように、適切な方法を用いて実施することができ、場合によって3位および5位に同じではないエステル基を有するジエステルを得ることができる。1つの実施態様では、5-ヒドロキシルは、以下の工程を含む方法によってエステル化することができる。
a) 2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステル23を有機溶媒に溶解させる工程;
b) 塩基および酸クロライドを、任意に周囲温度にて滴下により添加する工程;
c) 前記混合物を、反応を実質的に完結させるのに十分な時間還流させる工程;ならびに
d) この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にして、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを固形物として得る工程。この場合において、RおよびR’は、同じであっても異なっていてもよい。
【0064】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体の分離は、例えばスキーム6に示したように、任意の適切な方法を用いて実施することができ、例えば、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを得ることができる。好ましくは、以下の工程を含む方法によって分離を実施する。
a) 溶媒を粗混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
b) 沈殿させるために冷却する工程;ならびに
c) 濾過によって生成物を分離する工程。
【0065】
典型的な溶媒には、例えば、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、およびこれらの混合物から選択される1種以上の溶媒が含まれ得る。好ましくは、溶媒は、酢酸エチルとヘプタンの混合物である。
【0066】
本発明によれば、3位のエステルと5位のエステルが異なる場合、3位および5位のエステルの少なくとも1つ(あるいは3’位および5’位のエステルの少なくとも1つ)は、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルであり、残りのエステルは、任意の適切なエステルであってよく、これらだけに限定されないが、シンナモイルエステル、ナフトイルエステル、ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルを含む。他の適切なエステルには、例えば、アルキルエステル〔例えば、C1〜6アルキルエステル(例えば、アセチル)〕および芳香族エステル(例えば、安息香酸およびその誘導体のエステル)が含まれ得る。方法Bを用いる場合には、置換基Rを注意深く選択するべきである。これは、いくつかの場合において、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル、ナフチルアセチル、およびアセチルは、加水分解により除かれて化合物4を生成するのに対し、他のエステル(例えばシンナモイル等)は、化合物23のままであるからである。
【0067】
以下の実施例により、本発明をさらに説明するが、当然ながら、いかなる点においても、これらが本発明の範囲を限定するものと解されるべきではない。
【実施例】
【0068】
[実施例1]
本実施例は、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジシンナメートの製造を示す。
【0069】
500 mlの丸底フラスコに、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメート(10 g、23.36 mmol)を添加し、無水THF(100 ml)に溶解し、0〜5℃に冷却した。LiAlH4(0.46 g、12.1 mmol)を5分間に亘って添加した後、この混合物をさらに1時間撹拌した。水(10 ml)を撹拌しながら添加した。溶媒の大部分を蒸留によって除き、残量(約30 ml)に、1N HCl(50 ml)を加えると、約2のpH値を有する透明溶液が形成された。酢酸エチル(100 ml)を添加し、有機相を5%NaHCO3(50 ml)、水(50 ml)、および塩水(50 ml)で洗浄した。酢酸エチルの相をMgSO4で無水にし、減圧下で濃縮して粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジシンナメートをオイルとして得た。収率:8.52 g(19.8 mmol、84.8%、α/β異性体比約1/1)。
【0070】
[実施例2]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ- D-リボフラノース-3,5-ジシンナメート-1-メタンスルホネートの製造を示す。
【0071】
100 mlの丸底フラスコに、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ- D-リボフラノース-3,5-ジシンナメート(2.5 g、5.8 mmol)をジクロロメタン(20 ml)に溶解し、トリエチルアミン(0.7 g、6.9 mmol)を添加した。塩化メタンスルホニル(0.79 g、6.9 mmol)を、0〜5℃に冷却しながら滴下により添加した。この混合物をさらに1時間撹拌し、1N HCl(15 ml)、5%NaHCO3(15 ml)で洗浄し、MgSO4により無水にした。溶媒を、減圧下で蒸留によって除き、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ- D-リボフラノース-3,5-ジシンナメート-1-メタンスルホネートを軽質油として得た。収率:2.82 g(5.55 mmol)、95.7%、純度99.2%。純粋なアノマーを、分取HPLCを用いて得た。
1H-NMR(CDCl3、300MHz)β-アノマー:δ= 3.14(CH3、3H)、4.52(H-4,5、3H)、5.75(H-1、1H)、5.98(H-3、1H)、6.50(シンナモイル、2H)、7.40(芳香族、6H)、7.54(芳香族、4H)、7.79(シンナモイル、2H)。
【0072】
[実施例3]
本実施例は、N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジンの製造を示す。
【0073】
1,2-ジクロロエタン(50 ml)を、ビス(トリメチルシリル)-N-アセチルシトシン(2.2 g)に添加して、透明な溶液とし、次いで、トリメチルシリルトリフレート(Me3SiOTf)(2.2 ml、2.75 g)を添加し、30分間撹拌した。2-デオキシ-2,2-ジフルオロ- D-リボフラノース-3,5-ジシンナメート-1-メタンスルホネート(2.6 g、5.1 mmol)の1,2-ジクロロエタン(10 ml)溶液を、滴下により添加し、混合物を一晩撹拌した。冷却後、混合物を、水(30 ml)、5%NaHCO3(30 ml)、および塩水(20 ml)で洗浄し、MgSO4で無水にした。溶媒を蒸留によって除いて、粗N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジンを淡黄色固体として得た(2.4 g、4.24 mmol、83%)。この粗N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジン(2 g、3.5 mmol)を、周囲温度にて1,2-ジクロロエタン(4 ml)に溶解し、メタノール(120 ml)を、撹拌しながら滴下により添加した。
【0074】
形成された白色固体を濾過によって集め、乾燥した(約0.5 gのN-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジン、α-アノマーを含有する)。残った液体を濃縮して、粗N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジン、βアノマーを、淡黄色固体(1.6 g、2.8 mmol)として、80%、ee 90%で得た。N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジン
、β-アノマー:1H-NMR CDCl3:δ= 2.23(CH3、3H)、4.52(H-4、1H)、4.62(H-5、2H)、4.79(シチジン-H、1H)、5.50(H-3、1H)、6.47-6.53(シンナモイル+ H-l、3H)7.43(芳香族、6H)、7.54(芳香族、4H)、7.78(シチジン-H + シンナモイル、3H)、9.2-9.35(NHブロードな1H)。
【0075】
[実施例4]
本実施例は、ゲムシタビン塩酸塩の製造を示す。
【0076】
アンモニア(約20%、40 ml)中のメタノールの溶液に、粗N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロ-3’,5’-ジシンナモイル-シチジンβアノマー(1.5 g、2.6 mmol)を添加し、周囲温度にて一晩撹拌した。この混合物を、濃縮して軽質黄色オイルとし、1N HCl(20 ml)を添加した後、ジクロロメタン(20 ml)を撹拌しながら添加した。水相を分離し、活性炭(0.2 g)を添加し、この混合物を75℃にて30分間加熱した。濾過後、残った液体を濃縮し、減圧下で乾燥させて、ゲムシタビン塩酸塩を固体として得た(1 g)。この固体を、周囲温度にて水(1 ml)に溶解させ、アセトン(40 ml)を、撹拌しながら滴下により添加した。30分後、沈殿を濾過によって集め、70℃にて乾燥して、粗ゲムシタビンを得た。収率:0.3 g、38.5%。純度:95%、ee 95%。
【0077】
[実施例5]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースの製造を示す。
【0078】
還流冷却器を備えた500 mlのガラスフラスコに、粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(30 g、0,118 mol)を添加し、アセトニトリル(150 ml)、水(12 ml)、およびトリフルオロ酢酸(2.2 ml)の混合物に溶解させた。3時間還流させた後、還流冷却器を常圧蒸留に対応させて、130〜150 mlの体積の溶媒を蒸留により除いた。トルエン(70 ml)を添加し、混合物をさらに3時間還流させ、濃縮して20.2 gのオイルを得た。これを、減圧下で蒸留(140℃/2 mm Hg)して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを12.2 g(0.073 mol)、61.9%の収率で得た。
【0079】
[実施例6]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートの製造を示す。
【0080】
還流冷却器を備えた1リットルのガラスフラスコに、新たに蒸留した2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース(2-デオキシ-2,2-ジフルオロペンタン酸-γ-ラクトンとも呼ばれる)(19.5 g、0.116 mol)を加え、酢酸エチル(200 ml)に溶解させた。ピリジン(37 ml、0.458 mol)を添加し、混合物を周囲温度にて撹拌した。シンナモイルクロライド(56 g、0.336 mol)の酢酸エチル(100 ml)溶液を、周囲温度にて滴下により添加し、この混合物を4時間還流させた。冷却後、混合物を、水(100 ml)、1M HCl(100 ml)、5%NaHCO3(100 ml)、水(100 ml)、および塩水(100 ml)で洗浄した。有機相をMgSO4で無水にし、ロータリーエバポレーターによって濃縮し、46 gの粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートをオイルとして得た。得られたオイルに、酢酸エチル(80 ml)を添加し、混合物を周囲温度にて撹拌した後、ヘキサン(150 ml)を撹拌を続けながら添加した。約30分後に、この混合物(2相)を、-7℃〜-10℃の温度範囲にて一晩冷却した。沈殿を、濾過によって集めて、26 g(60.7 mmol)の固体の粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートを、52.3%の収率、純度99.9%、および99.6%のeeで得た。
1H-NMR CDCl3:δ= 4.59(H-5、2H)、4.88(H-4、1H)、5.63(H-3、1H)、6.50(シンナモイル、2H)、7.44(芳香族、6H)、7.55(芳香族、4H)、7.75-7.88(シンナモイル、2H)。
【0081】
[実施例7]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジナフトエートの製造を示す。
【0082】
還流冷却器を備えた100 mlのガラスフラスコに、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース(2.2 g、13 mmol)を、無水THF(15 ml)に溶解させ、無水ピリジン(3 ml、37 mmol)を添加した。2-ナフトイルクロライド(チオニルクロライド中で2-ナフトエ酸を加熱することによって得られる)の無水THF(10 ml)溶液を滴下により添加した。2時間還流させた後、混合物を冷却し、水(10 ml)、1M HCl(10 ml)、5%NaHCO3(10 ml)、水(10 ml)、および塩水(10 ml)で洗浄した。有機相をNa2SO4で無水にし、ロータリーエバポレーターによって濃縮して残渣を得た。これを結晶化させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジナフトエートの白色固体を、純度98%、90%のeeで得た。
【0083】
[実施例8]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジ-2-ナフチルアセテートの製造を示す。
【0084】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース(0.82 g)およびピリジン(0.85 ml)を、ジクロロメタン(10 ml)中で混合し、2-ナフチルアセチルクロライド(2-ナフチル酢酸をオキサリルクロライドと反応させることによって得られる)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下により添加した。2時間還流させた後、混合物を冷却し、水(10 ml)、1M HCl(10 ml)、5%NaHCO3(10 ml)、水(10 ml)、および塩水(10 ml)で洗浄した。有機相をNa2SO4で無水にし、ロータリーエバポレーターによって濃縮して固体を得た。これをクロマトグラフィーによって精製して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジ-2-ナフチルアセテートのオイルを、エリスロおよびスレオ異性体の混合物として得た。
【0085】
[実施例9]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジ-4-メチルフェニルアセテートの製造を示す。
【0086】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース(1.61 g)、ピリジン(1.7 ml)、および4-(ジメチルアミノ)-ピリジン(DMAP)(300 mg)をジクロロメタン(15 ml)中で混合し、4-メチル-フェニルアセチルクロライド(4-メチルフェニル酢酸3 gおよびオキサリルクロライド5 mlから得られる)のジクロロメタン(10 ml)溶液を滴下により添加した。2時間還流させた後、混合物を冷却し、水(10 ml)、1M HCl(10 ml)、5%NaHCO3(10 ml)、水(10 ml)、および塩水(10 ml)で洗浄した。有機相をNa2SO4で無水にし、ロータリーエバポレーターによって濃縮して残渣を得た。これをクロマトグラフィーによって精製して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジ-4-メチルフェニルアセテートのオイルを、エリスロおよびスレオ異性体の混合物として得た。
【0087】
[実施例10]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメートの製造を示す。
【0088】
還流冷却器を備えた1リットルのガラスフラスコに、粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-シンナモイルオキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(43 g、0.0112 mol)を加え、CH3CN:H2O:CF3CO2Hが、25:1.25:0.125(v/v/v)である溶媒混合物(400 ml)に溶解させ、4時間還流させた。この還流冷却器を、常圧蒸留に対応させて、約50 mlの溶媒を蒸留によって除いた。その後、トルエン(50 ml)を添加し、混合物の内部温度が95℃〜100℃になるまで蒸留を続けた。この温度にてさらに1時間加熱した後、混合物を濃縮して、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメート(33 g、0.0112 mol)を、99%の収率で得た。
1H-NMR CDCl3:δ= 4.0(H-5、2H)、4.6(H-4、1H)、5.69(H-3、1H)、6.50(シンナモイル、1H)、7.44(芳香族、3H)、7.56(芳香族、2H)、7.83(シンナモイル、1H)。
【0089】
[実施例11]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートの製造を示す。
【0090】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメート(33 g)を、酢酸エチル(350 ml)に溶解させ、ピリジン(66 ml、0.816 mmol)を添加し、混合物を周囲温度にて撹拌した。シンナモイルクロライド(40 g、0.24 mol)の酢酸エチル(150 ml)溶液を周囲温度にて滴下により添加し、この混合物を4時間撹拌した。冷却後、混合物を、水(150 ml)、1M HCl(150 ml)、5%NaHCO3(150 ml)、水(150 ml)、および塩水(150 ml)で洗浄した。有機相をNa2SO4で無水にし、ロータリーエバポレーターによって濃縮して粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートを、固体として得た(11.3 g、23.5%)。これを、酢酸エチル-ヘキサンから結晶化させ、石油エーテルで洗浄して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメート8.9 g(0.0208 mol)を、18.7%の収率および99%のeeで得た。
【0091】
[実施例12]
本実施例は、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメート-5-ベンゾエートの製造を示す。
【0092】
還流冷却器を備えた500 mlのガラスフラスコに、粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-シンナモイルオキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネート(10 g)を加え、アセトニトリル(75 ml)、水(3.7 ml)、およびトリフルオロ酢酸(0.65 ml)の混合物に溶解させた。還流させて3時間加熱した後、トルエン(75 ml)を添加し、混合物を、混合物の内部温度が99〜100℃になるまで蒸留した。この混合物を濃縮して、粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメート(7.73 g)を得た。これを、THF(50 ml)、ピリジン(4.5 ml)、および4-(ジメチルアミノ)-ピリジン(DMAP)(0.317 g)の混合物に溶解させた。新たに再蒸留したベンゾイルクロライド(4.8 g)を、0〜10℃にて撹拌しながら滴下により添加した。この混合物を、20〜30℃にて2時間撹拌した後、濃縮して乾燥させた。酢酸エチル(30 ml)を添加し、形成された固体を濾過によって除き、残った液体を濃縮してオイルを得た。酢酸エチルとヘキサンとの溶媒混合物を加え、形成された溶液を-7℃〜-10℃にて一晩冷却した。沈殿を濾過により集めて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-シンナメート-5-ベンゾエート(エリスロ異性体、0.5 g)の固体を得た。
1H-NMR (CDCl3):δ= 4.66-4.74(H-5、2H)、4.92(H-4、1H)、5.65(H-3、1H)、6.49(シンナモイル、1H)、7.42-7.48(芳香族、5H)、7.54-7.62(芳香族、3H)、7.82(シンナモイル、1H)、8.03(芳香族、2H)。
【0093】
本明細書で引用した刊行物、特許出願、および特許を含む全ての参考文献が、各参考文献が、参照することにより本明細書中に組み込まれることが個々にかつ明確に示されており、本明細書中にその全体が示されているとした場合と同じ程度まで、参照により本明細書中に組み込まれるものとする。
【0094】
本発明を説明する上で(とりわけ添付した特許請求の範囲に関して)、用語「a」、「an」および「the」並びに同様な指示対象の使用は、別段本明細書中で示される場合または内容により明らかに矛盾する場合を除き、単数形および複数形の両方をカバーすると解釈されるものとする。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含む(containing)」は、特に示さない限り、制限のない単語(すなわち、「〜を含むがこれに限定されるものではない」を意味する)として解釈されるものとする。本明細書中の値の範囲の列挙は、別段本明細書中で示される場合を除き、単に、該範囲内に収まる各離れた値に個々に言及する簡便な方法として働くことを意図し、さらに、あたかもそれらが本明細書中に個々に列挙されるかのように、各離れた値が本明細書に組み込まれる。本明細書に記載の全ての方法は、別段示される場合または内容により明らかに矛盾する場合を除き、任意の好適な順序によりなされ得る。本明細書中に提供される、任意のおよび全ての例、または例示的な語(例えば「such as」)の使用は、単に本発明をよりよく説明することを意図し、別段要求されない限り、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中のいかなる語も、任意の請求されていない構成要素を本発明の実施に不可欠なものとして示すものと解釈されるべきではない。
【0095】
本発明の好ましい実施形態は、本発明者らが知りうる中で本発明を実施する最良の形態を含め、本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の説明を読むことにより当業者に明らかとなり得る。本発明者らは当業者がそのようなバリエーションを必要に応じて用いることを予期し、かつ本発明者らは、本発明が本明細書記載の具体例とは別の態様で実施されることを意図する。従って、本発明は、準拠法の許す限り、本明細書添付の特許請求の範囲記載の対象の、全ての変形および等価物を含む。さらに、本明細書中で別段示される場合または内容により明らかに矛盾する場合を除き、その可能な全バリエーションにおける上記の構成要素の任意の組み合わせが、本発明に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲムシタビンまたはその塩の製造方法であって、
N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物からαアノマーの少なくとも大部分を除去して、βアノマーが少なくとも富化された生成物を製造する工程;
前記3’位のエステル、5’位のエステル、およびN-保護基を除去する工程;ならびに
場合によって、前記生成物を塩に変換する工程
(この場合において、3’位のエステルおよび5’位のエステルは、同じであるかまたは異なっていて、これらのエステルの少なくとも1つは、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである)
を含む、方法。
【請求項2】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを還元して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを製造する工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを、塩基の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートを得る工程;ならびに
N-1位が保護されたシトシンを前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートとカップリングさせて、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルを得る工程
(この場合において、3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっている)
を含む方法によって、前記N-1位が保護された2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのアノマー混合物を製造する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの前記エステルが、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、1-ナフチルメチルカルボニルエステル、2-メチルベンジルカルボニルエステル、4-メチルベンジルカルボニルエステル、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルエステルである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルが、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物(この場合において、3位のエステルおよび5位のエステルは、請求項2に定義した通りである)からの分離によって得られる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物をエステル化する工程によって製造する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物を環化する工程によって製造する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記3位のエステルと5位のエステルとが同じである、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
3位のエステルおよび5位のエステルが、シンナモイルエステル、1-ナフトイルエステル、または1-ナフチルメチルカルボニルエステルである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物をエステル化する工程によって製造する、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
アルキル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物をエステル化して、アルキル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを製造する工程と、
前記アルキル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化させて、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を製造する工程と
を含む方法によって、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルのエリスロ-(3-R-)およびスレオ-(3-S-)異性体混合物を製造する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記3位のエステルと5位のエステルとが異なる、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記3位のエステルまたは5位のエステルが、シンナモイルエステル、ベンゾイルエステル、1-ナフトイルエステル、または1-ナフチルメチルカルボニルエステルである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを、有機溶媒中で還元剤を用いて還元して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを製造する工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステルを、塩基の存在下で塩化メタンスルホニルと反応させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートを得る工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-リボフラノース-3,5-ジエステル-1-メタンスルホネートを、有機溶媒中、場合によって触媒の存在下で、ビス(トリメチルシリル)-N-アセチルシトシンとカップリングさせて、N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルを製造する工程;
前記N-1-トリメチルシリルアセチル-2’-デオキシ-2’,2’-ジフルオロシチジン-3’,5’-ジエステルのα異性体を沈殿させて濾過して、β異性体を単離する工程;ならびに
加水分解によって前記N-1-トリメチルシリルアセチル、3’位のエステル、および5’位のエステルを除去して、ゲムシタビンを製造する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記還元剤が、水素化アルミニウムリチウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、または、水素化ビス(2-メトキシエトキシ)アルミニウムナトリウムである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記還元剤が、水素化アルミニウムリチウムである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒が、トリメチルシリルトリフレート(Me3SiOTf)である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
1,2-ジクロロエタンとメタノールとを含む溶媒混合物中でαアノマーを沈殿させる工程を含む方法によって、前記αアノマーとβアノマーとを分離する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
メタノール性アンモニアの存在下で、前記N-1-トリメチルシリルアセチル、3’位のエステル、および5’位のエステルを加水分解する工程を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
エチル-2,2-ジフルオロ-3 -ヒドロキシ-3 -(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化させて、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを製造する工程;
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを、有機溶媒中、塩基の存在下、酸クロライドでエステル化して、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を製造する工程;ならびに
前記異性体の1つを選択的に沈殿させる工程
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記環化が、
前記エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、酸を含有する溶媒混合物に溶解させ、加熱して、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを製造する工程;
前記溶液の体積を蒸留によって減らす工程;
有機溶媒を添加して還流させる工程;
溶媒混合物を蒸留によって除いてオイルを得る工程;および
場合によって、前記オイルを減圧下で蒸留する工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記反応溶媒が、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比が、それぞれ約150:12:2.2(v/v/v)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記エステル化が、
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを、有機溶媒に溶解させる工程;
塩基または他の酸スカベンジャーと、酸クロライドとを、任意に周囲温度にて添加する工程;
この反応混合物を還流させて前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程;
この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にする工程;ならびに
溶媒を蒸発させて前記粗2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを単離する工程
を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、4-メチルフェニルアセチルクロライド、1-ナフチルアセチルクロライド、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルクロライドである、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
第一の有機溶媒を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルの異性体混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
第二の有機溶媒を撹拌しながら添加する工程;
冷却して、前記異性体の1つを選択的に沈殿させる工程;ならびに
濾過する工程
を含む方法によって、前記エリスロ-およびスレオ-異性体を分離する、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
前記第一の溶媒が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、またはこれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第二の溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、またはこれらの混合物である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルが2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートであり、前記第一の溶媒が酢酸エチルであり、かつ、前記第二の溶媒がヘキサンである、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
2-デオキシ-2,2-ジフルオロ-D-エリスロ-ペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジシンナメートのエリスロ異性体を、少なくとも99.9%の純度および少なくとも99.6%のeeで単離する工程を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物をエステル化して、エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを製造する工程;
前記エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化させて、場合により1:1より大きなエリスロ:スレオ異性体比を有する、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルを製造する工程;
5位のヒドロキシ基をエステル化して2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程(この場合において、3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっている);ならびに
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体を、選択的な沈殿および濾過によって分離する工程
を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項31】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物をエステル化する工程が、
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを有機溶媒に溶解させる工程;
塩基および酸クロライドを、任意に周囲温度にて滴下により添加する工程;
この混合物を還流させて、前記デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルを製造する工程;ならびに
反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にし、固形物を得る工程
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、ベンゾイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、4-メチルフェニルアセチルクロライド、または1-ナフチルフェニルアセチルクロライドである、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記環化が、
粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、酸を含有する溶媒混合物に溶解させ、加熱して環化させる工程;
前記溶媒の体積を蒸留によって減らす工程;
有機溶媒を添加し、還流させる工程;
溶媒混合物を、混合物の内部温度が約90〜100℃に達するまで蒸留によって除き、前記温度に約1時間保つ工程;ならびに
この環化生成物を、場合により減圧下で、蒸発によって濃縮する工程
を含む、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記反応溶媒が、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸の混合物を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比が、それぞれ約75:3.7:0.65(v/v/v)である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
溶液の体積を蒸留によって減らす工程の後に添加する前記溶媒が、酢酸エチル、キシレン、トルエン、またはこれらの混合物である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-ペントフラノース-1-ウロースを有機溶媒に溶解させる工程;
塩基または他の酸スカベンジャーと、酸クロライドとを、任意で周囲温度にて添加する工程;
この混合物を還流させて、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程;
この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にする工程;
溶媒を蒸留して、固体を得る工程;ならびに
場合によって、生成物を結晶化させる工程
を含む方法によって、5位のヒドロキシ基をエステル化する、請求項30に記載の方法。
【請求項38】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、ベンゾイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、または4-メチルフェニルアセチルクロライドである、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
溶媒混合物を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体の粗混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
異性体の1つを選択的に沈殿させるために十分な時間、冷却する工程;ならびに
濾過する工程
を含む方法によって、前記エリスロ-およびスレオ-異性体を分離する、請求項30に記載の方法。
【請求項40】
前記溶媒混合物が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、またはこれらの混合物を含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
1つの異性体が富化された2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルの製造方法であって、
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化して、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを製造する工程;
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを、塩基の存在下、有機溶媒中、酸クロライドでエステル化して、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体混合物を製造する工程;ならびに
異性体の1つを選択的に沈殿させる工程
を含む、方法。
【請求項42】
前記環化が、
前記エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、酸を含有する溶媒混合物に溶解させ、加熱して前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを製造する工程;
前記溶液の体積を蒸留によって減らす工程;
有機溶媒を添加し、還流させる工程;
溶媒混合物を蒸留によって除き、オイルを得る工程;ならびに
場合によって、前記オイルを減圧下で蒸留する工程
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記反応溶媒が、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比が、それぞれ約150:12:2.2(v/v/v)である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記エステル化が、
2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロースを、有機溶媒に溶解させる工程;
塩基または他の酸スカベンジャーと、酸クロライドとを、任意に周囲温度で添加する工程;
この反応混合物を還流させて前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程;
この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にする工程;ならびに
溶媒を蒸発させて前記粗 2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを単離する工程
を含む、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、4-メチルフェニルアセチルクロライド、1-ナフチルアセチルクロライド、または9-フルオレニルメチルオキシカルボニルクロライドである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第一の有機溶媒を、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルの異性体混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
第二の有機溶媒を撹拌しながら添加する工程;
冷却して、異性体の1つを選択的に沈殿させる工程;ならびに
濾過する工程
を含む方法によって、前記エリスロ-およびスレオ-異性体を分離する、請求項41に記載の方法。
【請求項48】
前記第一の溶媒が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、またはこれらの混合物である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記第二の溶媒が、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、またはこれらの混合物である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
1つの異性体が富化された2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルの製造方法であって、
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物をエステル化して、エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを製造する工程;
エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを環化させて、場合により1:1より大きなエリスロ:スレオ異性体比を有する、2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルを製造する工程;
5位のヒドロキシ基をエステル化して2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程(この場合において、3位のエステルおよび5位のエステルは、同じであるかまたは異なっている);ならびに
前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体を、選択的な沈殿および濾過によって分離する工程
を含む、方法。
【請求項51】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートの3-R-および3-S-異性体混合物をエステル化する工程が、
エチル-2,2-ジフルオロ-3-ヒドロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを有機溶媒に溶解させる工程;
塩基および酸クロライドを、任意に周囲温度にて滴下により添加する工程;
この混合物を還流させて、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3-エステルを製造する工程;ならびに
この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にし、固形物を得る工程
を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、ベンゾイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、4-メチルフェニルアセチルクロライド、または1-ナフチルアセチルクロライドである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記環化が、
粗エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-3-(2,2-ジメチルジオキソラン-4-イル)-プロピオネートを、酸を含有する溶媒混合物に溶解させ、加熱して環化させる工程;
前記溶媒の体積を蒸留によって減らす工程;
有機溶媒を添加し、還流させる工程;
溶媒混合物を、混合物の内部温度が約90〜100℃に達するまで蒸留によって除き、前記温度に約1時間保つ工程;ならびに
前記環化生成物を、場合により減圧下で、蒸発によって濃縮する工程
を含む、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記反応溶媒が、アセトニトリル、水、およびトリフルオロ酢酸を含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記アセトニトリル:水:トリフルオロ酢酸の比が、それぞれ約75:3.7:0.65(v/v/v)である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
溶液の体積を蒸留によって減らす工程の後に添加する前記溶媒が、酢酸エチル、キシレン、トルエン、またはこれらの混合物である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
エチル-2,2-ジフルオロ-3-アシロキシ-ペントフラノース-1-ウロースを有機溶媒に溶解させる工程;
塩基または他の酸スカベンジャーと、酸クロライドとを、任意で周囲温度にて添加する工程;
この混合物を還流させて、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルを製造する工程;
この反応混合物を洗浄し、分離し、その有機相を無水にする工程;
溶媒を蒸留して、固体を得る工程;ならびに
場合によって、生成物を結晶化させる工程
を含む方法によって、5位のヒドロキシ基をエステル化する、請求項50に記載の方法。
【請求項58】
前記酸クロライドが、シンナモイルクロライド、ベンゾイルクロライド、1-ナフトイルクロライド、2-メチルフェニルアセチルクロライド、または4-メチルフェニルアセチルクロライドである、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
溶媒混合物を、前記2-デオキシ-2,2-ジフルオロペントフラノース-1-ウロース-3,5-ジエステルのエリスロ-およびスレオ-異性体の粗混合物に添加し、周囲温度にて撹拌する工程;
異性体の1つを選択的に沈殿させるために十分な時間、冷却する工程;ならびに
濾過する工程
を含む方法によって、前記エリスロ-およびスレオ-異性体を分離する、請求項50に記載の方法。
【請求項60】
前記溶媒混合物が、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、酢酸tert-ブチル、THF、アセトニトリル、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、石油エーテル、またはこれらの混合物を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
下記式:
【化1】

(式中、RおよびR’は、同じであるかまたは異なっていて、それぞれ、2-フェニルエテニル、フェニル、2-メチルベンジル、4-メチルベンジル、1-ナフチル、1-ナフチルメチル、または9-フルオレニルメチルである)
の化合物。
【請求項62】
エリスロ異性体、スレオ異性体、またはこれらの混合物である、下記式:
【化2】

(式中、Rは、2-フェニルエテニル、フェニル、2-メチルベンジル、4-メチルベンジル、または1-ナフチルメチルであり、Alkは、C1〜6アルキルである)
の化合物。
【請求項63】
αアノマー、βアノマー、またはこれらの混合物である、下記式:
【化3】

(式中、RおよびR’は、同じであるかまたは異なっていて、RおよびR’の少なくとも1つは、2-フェニルエテニル、フェニル、2-メチルベンジル、4-メチルベンジル、1-ナフチル、1-ナフチルメチル、または9-フルオレニルメチルであり、残りは、カルボキシレートエステルの残基を表す)
の化合物。
【請求項64】
請求項63に記載の化合物のβアノマーをゲムシタビンに変換する工程を含む、ゲムシタビンの製造方法。

【公表番号】特表2009−506118(P2009−506118A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529146(P2008−529146)
【出願日】平成18年8月28日(2006.8.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/033431
【国際公開番号】WO2007/027564
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(507150954)ケマジス・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】