説明

コア及びその製造方法

【課題】電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強度を向上させ得るコア、その製造方法、並びにこれを用いた電動機用ロータ、電動機用ステータ及び電動機を提供すること。
【解決手段】電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられるコア10である。強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体12と、アモルファス薄膜14と、を有する。アモルファス薄膜は、コア成形体の応力集中部12bの表面に形成されている。コア成形体上に、アモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して、アモルファス薄膜を形成するに当たり、アモルファス金属粉末噴射前にコア成形体の温度を昇温させるコアの製造方法である。コアを用いた電動機用ロータ、電動機用ステータ及び電動機である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア及びその製造方法に係り、更に詳細には、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられるコア、その製造方法、並びにこれを用いた電動機用ロータ、電動機用ステータ及び電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転自在に保持されたロータを具備する電動機において、そのロータを構成するロータコアの磁石穴に内蔵された磁石に対して、電動機の作動に伴う遠心力が作用したときに、ロータコアの磁石周辺に応力集中が発生することが知られている。この応力集中部を分散させるために、ロータコアの磁石外周に円弧部を設けることが提案されている(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−16809号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載のロータにおいては、磁石穴とロータ外周との間の薄肉部が狭くなるため、強度が低下し易いなどの問題点があった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強度を向上させ得るコア、その製造方法、並びにこれを用いた電動機用ロータ、電動機用ステータ及び電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体の応力集中部の表面にアモルファス薄膜を形成することなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明のコアは、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体と、アモルファス薄膜と、を有し、該アモルファス薄膜は、該コア成形体の応力集中部の表面に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明のコアの好適形態は、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体と、強磁性元素を含有するアモルファス薄膜と、を有し、該アモルファス薄膜は、該コア成形体の応力集中部の表面に形成されていることを特徴とする。
【0008】
更に、本発明のコアの他の好適形態は、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体と、非磁性元素を含有するアモルファス薄膜と、を有し、該アモルファス薄膜は、該コア成形体の応力集中部の表面に形成されていることを特徴とする。
【0009】
更にまた、本発明のコアの製造方法は、上記本発明のコアを製造する方法であって、コア成形体上に、アモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して、アモルファス薄膜を形成するに当たり、アモルファス金属粉末噴射前にコア成形体の温度を昇温させることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電動機用ロータは、上記本発明のコアを用いた電動機用ロータであって、電動機用ロータに用いられるコアと、該コアの内部及び/又は表面に装着された磁石と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の電動機用ステータは、上記本発明のコアを用いた電動機用ステータであって、電動機用ステータに用いられるコアと、該コアに巻回装着されたコイルと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
更にまた、本発明の電動機は、上記本発明の電動機用ロータ又は上記本発明の電動機用ステータを少なくとも備えたことを特徴とする。
なお、このような電動機は、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用電動機として好適に用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体の応力集中部の表面にアモルファス薄膜を形成することなどとしたため、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強度を向上させ得るコア、その製造方法、並びにこれを用いた電動機用ロータ、電動機用ステータ及び電動機を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明のコアについて詳細に説明する。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、含有量や濃度などについての「%」は、特記しない限り質量百分率を表すものとする。
上述の如く、本発明のコアは、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体と、アモルファス薄膜と、を有するものである。
そして、かかるアモルファス薄膜は、かかるコア成形体の応力集中部の表面に形成されている。
このような構成とすることにより、アモルファス薄膜は降伏強度が高いこともあり、亀裂が発生し難くなり、強度が向上する。
また、アモルファス金属薄膜は、結晶質の金属薄膜と比較して、高比抵抗である場合が多く、磁束通過のときに発生する渦電流による損失を抑制することができるという副次的効果も得られる。
なお、本発明の範囲には、電動機用ステータに用いられるコア(電動機用ステータコア)においては、一体型のステータコアが含まれるだけでなく、複数のピースに分けられ、これらが適宜組み合わされて又はこれらが電動機の外装等に組み込まれて、電動機用ステータコアとして機能する場合には、そのうちの一つのステータコアピースも含まれる。
また、電動機用ロータに用いられるコア(電動機用ロータコア)においては、通常、その表面及び内部の一方又は双方に磁石を装着し得る磁石装着部を有している。
【0015】
また、本発明において、コアが有するアモルファス薄膜は、例えばコア成形体にアモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して形成することができるが、アモルファス薄膜の形成方法はこれに限定されるものではない。
【0016】
ここで、上述した形成方法における現時点において推定されるアモルファス薄膜の形成メカニズムについて説明する。
噴射されたアモルファス粉末が被薄膜形成体に衝突すると同時に、アモルファス粉末が持っていた運動エネルギーは熱エネルギーに瞬時に変換されて、アモルファス粉末自体が加熱される。
その加熱によって、アモルファス粉末の温度がアモルファス粉末の過冷却温度領域に達したときに、アモルファス粉末はニュートン流体に近い特性を示し、被薄膜形成体の表面において薄く延ばされ、薄膜が形成される。
その際に、被薄膜形成体に熱エネルギーが放出されて急冷されるため、形成された薄膜がアモルファス状態を有することとなる。
【0017】
このような形成メカニズムを想定した場合には、アモルファス粉末の粒径が小さい場合には、噴射速度が遅くてもアモルファス薄膜が形成されると推測される。
つまり、アモルファス粉末が持っていた内部エネルギーと表面エネルギーとの関係から、粒径が小さくなることで、粉末の体積に対する表面積の割合が大きくなり、アモルファス粉末は活性なものになる。このような状態であれば、小さな運動エネルギーであってもアモルファス粉末の温度は上昇し易くなる。
図1は、アモルファス粉末の粒径とアモルファス薄膜が形成されるアモルファス粉末の最小噴射速度との関係を示すグラフ図である。グラフ図中に描かれた曲線より上の領域(最小噴射速度より速い領域)で処理することによって、アモルファス薄膜を形成することができる。
【0018】
更に、本発明において、コアが有するアモルファス薄膜を形成する際に用いるアモルファス金属粉末は、次式(1)
ΔTx=Tx−Tg…(1)
(式中のTxは結晶化開始温度、Tgはガラス転移温度を示す。)で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上であることが好ましく、35K以上であることがより好ましく、45K以上であることが更に好ましい。
過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上のアモルファス金属粉末を用いると、粉末の付着率が向上して好ましい。
【0019】
また、本発明において、アモルファス薄膜は、強磁性元素を含有するものであることが飽和磁束密度などの磁気特性に優れることなどの観点から望ましく、このような強磁性元素としては、例えば鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)などを挙げることができる。
そして、本発明において、アモルファス薄膜にFe、Ni及びCoがそれぞれ単独で又は複数組み合わされて含有されていることが、飽和磁束密度や透磁率などの磁気特性に優れることからより望ましく、これらのうちの一つが又は合わせたものが主成分であることが更に望ましい。
なお、「アモルファス薄膜において主成分」とは、アモルファス薄膜において最も含有量の多い元素をいい、アモルファス薄膜を形成する際のアモルファス金属粉末の組成を調整することなどによって、適宜調整することができる。
例えば、このようなアモルファス金属薄膜としては、鉄(Fe)、ガリウム(Ga)、リン(P)、炭素(C)、ホウ素(B)、及びケイ素(Si)などを含みFeを主成分とするようなものや、ニッケル(Ni)、ジルコニウム(Zr)、及びホウ素(B)などを含みNiを主成分とするもの、コバルト(Co)、鉄(Fe)、Nb(ニオブ)及びホウ素(B)などを含みCoを主成分とするものなどを挙げることができる。
【0020】
更に、本発明において、アモルファス薄膜は、非磁性元素を含有するものであることがコアが装着する磁石の磁化方向側面の漏れ磁束を抑制できることなどの観点から望ましく、このような非磁性元素としては、例えばチタン(Ti)、銅(Cu)、マグネシウム(Mg)などを典型的なものとして挙げることができる。
【0021】
更にまた、詳しくは後述するが、表面にアモルファス薄膜を形成する応力集中部は、電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられるコアの形状によって、異なるだけでなく、複数存在する場合もあり、このような場合には、アモルファス薄膜に含まれる上述した元素を適宜選択して、アモルファス薄膜の磁気特性等を設定することにより、強度をより向上させ得るものとなるだけでなく、電動機の限界回転数を向上させるなど電動機の性能を向上させることも可能となる。
例えば、応力集中部が複数存在する場合には、その部位ごとに磁気特性が異なるアモルファス薄膜を形成してもよく、同一部位に磁気特性が異なるアモルファス薄膜を積層形成してもよい。
【0022】
一方、本発明において、コア成形体を構成する金属粒が含有する強磁性元素の好適例としては、FeやNi、Coなどを挙げることができる。これらはそれぞれ単独で又は複数組み合わされて含有されていることが、磁気特性などの観点から望ましく、これらのうちの一つが又は合わせたものが主成分であることが更に好ましい。
ここで、「コア成形体において主成分」とは、コア成形体における含有量が50%以上であることをいい、その含有量は、例えばコア成形体を形成する際の磁性粒となる磁性粉末の組成、具体的には、金属粒となる金属粉末の組成やその表面に形成される絶縁物薄膜の厚み等を調整することなどによって、適宜調整することができる。
【0023】
また、本発明において、コア成形体を構成する金属粒は、結晶構造を主相とするものであっても、非晶質構造(非晶質状態部分)を主相とするものであってもよい。
例えば、非晶質(アモルファス)状態部分を主相とするものである場合には、コア成形体の材質とコア成形体の応力集中部に形成される薄膜の材質とが同じようなアモルファス状態であるため、例えば電動機に組み込まれて作動するときであって、温度上昇したときに、温度上昇による線膨張係数を近似ないし一致させることができ、応力の発生を未然に抑制することができ、結晶構造を主相とするものよりも強度を向上させることができる。
【0024】
そして、本発明においては、コア成形体を構成し、非晶質構造(非晶質状態部分)を主相とする金属粒において、次式(1)
ΔTx=Tx−Tg…(1)
(式中のTxは結晶化開始温度、Tgはガラス転移温度を示す。)で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上であることが好ましく、35K以上であることがより好ましい。
【0025】
次に、本発明のコアの製造方法について詳細に説明する。
上述の如く、本発明のコアの製造方法は、上記本発明のコアを製造する方法であって、コア成形体上に、アモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して、アモルファス薄膜を形成するに当たり、アモルファス金属粉末噴射前にコア成形体の温度を昇温させるものである。
このような構成とすることにより、コア成形体とアモルファス薄膜との間に発生し得る熱応力を低減させることができる。
また、噴射されるアモルファス金属粉末の運動エネルギー量が少なくて済むため、噴射速度を小さくして温和な条件でコア成形体の表面にアモルファス薄膜を形成することができる。
なお、本発明のコアは、このような製造方法により作製されたものに必ずしも限定されるものではない。
【0026】
次に、本発明の電動機用ロータについて詳細に説明する。
上述の如く、本発明の電動機用ロータは、上記本発明のコアを用いたものであって、電動機用ロータに用いられるコア(電動機用ロータコア)と、該コアの内部及び表面のいずれか一方又は双方に装着された磁石と、を備えたものである。
このような構成とすることにより、これを用いた電動機は、高回転数まで回転可能なものとなる。
なお、電動機用ロータコアの磁石穴などの磁石装着部に装着される磁石としては、例えばネオジム−鉄−ホウ素(Nd−Fe−B)やサマリウム−コバルト(Sm−Co)などの磁石を用いることができ、特に出力密度の観点からNd−Fe−Bを好適に用いることができるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0027】
次に、本発明の電動機用ステータについて詳細に説明する。
上述の如く、本発明の電動機用ステータは、上記本発明のコアを用いたものであって、電動機用ステータに用いられるコア(電動機用ステータコア)と、該コアに巻回装着されたコイルと、を備えたものである。
このような構成とすることにより、これを用いた電動機は、高回転数まで回転可能なものとなる。
なお、電動機用ステータコアに巻回装着されるコイルとしては、例えばポリイミドコート電線などのワイヤを用いることが好適であり、電動機用ステータコアの突極部に巻回されて用いられることが一般的であるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0028】
次に、本発明の電動機について詳細に説明する。
上述の如く、本発明の電動機は、上記本発明の電動機用ロータ又は電動機用ステータを少なくとも備えたものである。
このように、本発明の電動機用ロータ及び電動機用ステータのいずれか一方又は望ましくは双方を備えることにより、高回転数まで回転可能なものとなる。
【0029】
また、本発明の電動機は、その用途として特に限定されるものではないが、トルクの向上が図れ、駆動力の増大により加速性能を向上させることができるため、電気自動車やハイブリッド自動車の駆動用電動機として好適に用いることができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明のコア及びその製造方法について、若干の実施例を図面に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
(実施例1)
図2は、実施例1に係る電動機用ロータに用いられるコア(電動機用ロータコア)の斜視図である。
同図に示すように、電動機用ロータコア10は、図示しない永久磁石を挿入して内部に装着するための磁石穴12aを複数備えている。
【0032】
図3(a)は、従来例に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図である。
同図(a)に示すように、従来例の電動機用ロータコア50は、電動機に組み込まれて作動するときには回転しており、磁石穴52aの一部には備える永久磁石30に作用する遠心力を支えるために、応力集中が起こる。同図(a)においては、上面から見た永久磁石30の長手方向両端のR部分に応力が集中し、応力集中部52bとなる。
従来においては、この応力集中部におけるRの大きさを調整して応力のピークを抑制していたが、磁石のサイズや磁気回路上の制約からRの大きさは制限されている。
【0033】
一方、同図(b)は、実施例1に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図である。
同図(b)に示すように、本例の電動機用ロータコア10は、電動機に組み込まれて作動するときには回転しており、磁石穴12aの一部には備える永久磁石30に作用する遠心力を支えるために、応力集中が起こり得るが、本例の電動機用ロータコア10においては、電動機用ロータコア成形体12の応力集中部12bの表面である磁石穴12aの内面に詳しくは後述するアモルファス粉末を用いてアモルファス薄膜14が形成されている。
【0034】
ここで、本例の電動機用ロータコアの製造方法について詳細に説明する。
まず、用いた電動機用ロータコア成形体の製造方法について説明する。
電動機用ロータコア成形体は、純鉄粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末を圧縮成形機(ヘガネス社製、Somaloy500)にて、圧縮成形(成形圧力:800MPa、成形温度:440℃)して製造される。
このような電動機用ロータコア成形体は、各磁性粒の表面が絶縁物薄膜で絶縁されており、例えば交番磁界が通過するときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
【0035】
次に、用いたアモルファス粉末について説明する。
これは、例えば必要となる母材合金をアーク溶解などで溶解してインゴットを製造し、次いで、このインゴットをアトマイザを用いて粉末化して製造される。
【0036】
図4は、アトマイザの一例を示す概略図である。同図に示すように、アトマイザ100は、溶解チャンバ101と、石英管102と、高周波電源103と、加熱コイル104と、回収チャンバ105と、アルゴンポンプ106と、アトマイズガスノズル107と、真空ポンプ108と、を備える。
溶解チャンバ101内に配置された石英管102内に図示しないインゴットが投入され、石英管102内のインゴットは、高周波磁界を印加可能な高周波電源103に接続された加熱コイル104によって、加熱され、溶解される。
インゴットが溶解された後、石英管102に接続されたアルゴンポンプ106からアルゴン(Ar)ガスが注入され、回収チャンバ105内に石英管102から溶湯が噴射される。そのとき、石英管102から噴射された溶湯に対して、アルゴンポンプ106に接続されているアトマイズガスノズル107からArガスが吹き付けられることにより、溶湯が微細化されると共に、急冷され、アモルファス粉末Aが製造される。
なお、得られるアモルファス粉末は、各種粒径が混在しているため、50μmメッシュの篩で分級して粒径が50μm以下のアモルファス粉末を使用した。
また、真空ポンプは拡散ポンプで、0.07Paまでの能力を有している。
【0037】
次に、アモルファス薄膜の形成方法について説明する。
アモルファス薄膜は、上記アモルファス粉末を上記電動機用ロータコア成形体に噴射して、層状に配置して形成される。
【0038】
図5は、粉末噴射装置の一例を示す概略図である。同図に示すように、粉末噴射装置200は、粉末タンク201と、高圧エアポンプ202と、ノズル203と、を備える。
高圧エアポンプ202から圧送されるエアに、粉末タンク201に蓄えられていた図示しないアモルファス粉末が混合され、ノズル203から高速でアモルファス粉末Aが噴射される。
アモルファス粉末の噴射速度は概ね300m/秒以上であるが、上述したアモルファス粉末や電動機用ロータコア成形体の材質などによって、適宜調整することができる。
【0039】
図6は、電動機用ロータコア成形体の表面にアモルファス薄膜を形成している様子を示す説明図である。同図に示すように、図示しない永久磁石を磁石穴12aに装着する場合(図3参照。)に、電動機用ロータコア成形体12の応力集中部12bとなり得る部分の表面に、粉末噴射装置200によってアモルファス粉末Aを噴射する。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
【0040】
(実施例2)
図7は、実施例2に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図である。
同図に示すように、本例の電動機用ロータコア10は、電動機用ロータコア成形体12の応力集中部12bの表面である磁石穴12aの内面に、詳しくは後述するアモルファス金属粉末を用いて強磁性アモルファス薄膜14aが形成されている。なお、磁石穴12aには永久磁石30が装着されている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ロータコアは、軟磁気特性が得られるため、電動機の磁気回路の妨げとならず、電動機出力性能を落とすことなく、高強度化が可能となる。
【0041】
本例の電動機用ロータコアの製造方法について詳細に説明する。
Fe、Ga、B、Si、Fe−C合金、Fe−P合金を所定量秤量した後に、高周波溶解炉を用いてArガス中で溶解して、組成がFe77Ga9.5Si2.5のインゴットを製造した。このインゴットを用いた以外は、実施例1のアモルファス粉末の製造方法と同様の操作を繰り返して、アモルファス粉末を製造し、更に、実施例1のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、強磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ロータコアを得た。
【0042】
(実施例3)
図8は、実施例3に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの断面の様子を示す部分拡大図である。
同図に示すように、本例の電動機用ロータコア10は、電動機用ロータコア成形体12の応力集中部12bの表面である磁石穴12aの内面に、詳しくは後述するアモルファス金属粉末を用いて非磁性アモルファス薄膜14bが形成されている。なお、磁石穴12aには永久磁石30が装着されている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ロータコアは、これを用いた電動機用ロータにおいて、同図に示すように磁石近傍を流れる漏れ磁束が流れ難くなり、磁石磁束の有効利用が可能となり、磁束量が増大することによって、電動機の性能が向上することとなる。同一の磁石サイズで比較した場合に、より高出力な電動機となる。
【0043】
本例の電動機用ロータコアの製造方法について詳細に説明する。
ここで用いる非磁性金属ガラスはチタン(Ti)基の材料であり、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)及びタンタル(Ta)を所定量秤量した後に、アーク溶解法によりArガス中で溶解して、組成がTi50Ni15Cu25SnTaのインゴットを製造した。このインゴットを用いた以外は、実施例1のアモルファス粉末の作製方法と同様の操作を繰り返して、アモルファス粉末を製造し、更に、実施例1のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、非磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ロータコアを得た。
【0044】
(実施例4)
本例の電動機用ロータコアの製造方法について詳細に説明する。
実施例2において用いたアモルファス金属粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末をSPS焼結装置(SPSシンテックス社製、SPS511S)にて、圧縮成形(成形圧力:600MPa、成形温度:420〜440℃)して製造される電動機用ロータコア成形体を用いた以外は、実施例2のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、強磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ロータコアを得た。
なお、コア成形体の製造に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは48K、強磁性アモルファス薄膜の形成に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは48Kであった。
上述した電動機用コアロータ成形体においても、各磁性粒の表面が絶縁されており、例えば交番磁界が印加されたときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ロータコアは、軟磁気特性が得られるため、電動機の磁気回路の妨げとならず、電動機出力性能を落とすことなく、高強度化が可能となる。
更に、このような電動機用ロータコアは、コア成形体を構成する金属粒及びそのコア成形体に被覆する薄膜の双方がアモルファス状態であるため、熱応力による応力が発生し難く、より信頼性の高い電動機を提供することができる。
【0045】
図9は、SPS焼結装置の一例を示す概略図である。同図に示すように、SPS焼結装置300は、本体301と、油圧ポンプ302と、シリンダ303と、取替え可能な焼結型304と、加熱用電源305と、を備える。
本体301と、油圧ポンプ302と、シリンダ303と、焼結型304とは協働してプレス部として機能し、シリンダ303と焼結型304と、加熱用電源305とは協働して通電部として機能する。
具体的には、本体301が具備する油圧ポンプ302によって加圧力を発生させ、焼結型304中に充填された図示しない磁性粉末をシリンダ303によって加圧する。また、加熱用電源305からシリンダ303を介して焼結型304に通電して、焼結型304中に充填された図示しない磁性粉末を直流パルス通電によって加熱する。
焼結条件は、成形圧力を600MPaとして、焼結型の温度が420〜440℃程度となるように直流パルス通電の電流及び電圧を制御した。
【0046】
(実施例5)
本例の電動機用ロータコアの製造方法について詳細に説明する。
実施例2において用いたアモルファス金属粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末をSPS焼結装置(SPSシンテックス社製、SPS511S)にて、圧縮成形(成形圧力:600MPa、成形温度:420〜440℃)して作製される電動機用ロータコア成形体を用いた以外は、実施例3のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、非磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ロータコアを得た。
なお、コア成形体の製造に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは45K、非磁性アモルファス薄膜の形成に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは40Kであった。
上述した電動機用コアロータ成形体においても、各磁性粒の表面が絶縁されており、例えば交番磁界が印加されたときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ロータコアは、これを用いた電動機用ロータにおいて、磁石近傍を流れる漏れ磁束が流れ難くなり、磁石磁束の有効利用が可能となり、磁束量が増大することによって、電動機の性能が向上することとなる。同一の磁石サイズで比較した場合に、より高出力な電動機となる。
更に、このような電動機用ロータコアは、コア成形体を構成する金属粒及びそのコア成形体に被覆する薄膜の双方がアモルファス状態であるため、熱応力による応力が発生し難く、より信頼性の高い電動機を提供することができる。
【0047】
(実施例6)
実施例1と同様の電動機用ロータコア成形体を用いて、これを150℃に加熱して、実施例1と同様のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ロータコアを得た。
上述した電動機用コアロータ成形体においても、各磁性粒の表面が絶縁されており、例えば交番磁界が印加されたときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
永久磁石ロータなどは、永久磁石の脱磁する温度が150℃前後であり、この温度近辺が使用限界となっている。この温度近傍で噴射することにより、アモルファス薄膜と電動機用ロータコア成形体の間の温度差による熱応力は小さくなり、電動機の回転中に余計な応力が作用することが無くなるという利点がある。
【0048】
図10は、電動機用ロータコア成形体を加熱している様子を示す模式的な説明図である。同図に示すように、電動機用ロータコア成形体にアモルファス金属粉末を噴射し、アモルファス薄膜を形成する前に、ホットプレートなどの外部の加熱装置400により電動機用ロータコア成形体12を加熱した。また、図示しないが、熱処理炉で加熱したものを取り出してきてもよい。
【0049】
図11は、アモルファス金属粉末を噴射する際のコア成形体の温度と得られたロータコアの回転限界との関係を示すグラフ図である。同図に示すように、高温で処理することにより、回転限界が向上していることが分かる。
【0050】
(実施例7)
図12は、実施例7に係る電動機用ステータに用いられるコア(電動機用ステータコア)のピースの斜視図である。
同図に示すように、電動機用ステータコアピース20は、T字型形状をしており、ステータ突極部22aと、その先端に形成された鍔部22cと、を備えている。
【0051】
図13(a)は、従来例に係る電動機用ステータコアピースの突極部にステータコイルを巻回装着した電動機用ステータピースの断面における説明図である。
同図(a)に示すように、従来例の電動機用ステータコアピース60は、電動機に組み込まれて作動するときには、ステータ突極部62aに巻回装着されたステータコイル70を備え、図示しない回転する電動機用ロータの周りに複数個用いられ、円形に組み立てられて、電動機用ステータを形成している。そして、電動機用ロータと電動機用ステータとの間に作用する斥力や引力を支えるために、又は鍔部に作用する反トルクを支えるために、応力集中が起こる。そして、従来例の電動機用ステータコアピース60においては、ステータ突極部62aの根元近傍62bや鍔部62cに応力が集中し、応力集中部62d及び62eとなる。
【0052】
一方、同図(b)は、実施例7に係る電動機用ステータコアピースの突極部にステータコイルを巻回装着した電動機用ステータピースの断面における説明図である。
同図(b)に示すように、本例の電動機用ステータコアピース20は、電動機に組み込まれて作動するときには、ステータ突極部22aに巻回装着されたステータコイル70を備え、図示しない回転する電動機用ロータの周りに複数個(9又は12個)用いられ、円形に組み立てられて、電動機用ステータを形成している。そして、電動機用ロータと電動機用ステータとの間に作用する斥力や引力を支えるために、又は鍔部に作用する反トルクを支えるために、応力集中が起こり得る。そして、本例の電動機用ステータコアピース20においては、電動機用ステータコアピース成形体22の応力集中部22d及び22eの表面であるステータ突極部22aの表面及び鍔部22cの背面等に後述するアモルファス粉末を用いてアモルファス薄膜24が形成されている。
【0053】
ここで、本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
まず、用いた電動機用ステータコアピース成形体の製造方法について説明する。
電動機用ステータコアピース成形体は、純鉄粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末を圧縮成形機(ヘガネス社製、Somaloy500)にて、圧縮成形(成形圧力800MPa、成形温度:440℃)して作製される。
このような電動機用ステータコアピース成形体は、各磁性粒の表面が絶縁物薄膜で絶縁されており、例えば交番磁界が通過するときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
【0054】
次に、用いたアモルファス粉末について説明する。
これは、例えば必要となる母材合金をアーク溶解などで溶解してインゴットを作製し、次いで、このインゴットをアトマイザで粉末化して作製される。本例においては、実施例1と同様の手法により作製した。
【0055】
次に、アモルファス薄膜の形成方法について説明する。
アモルファス薄膜は、上記アモルファス粉末を上記電動機用ステータコアピース成形体に噴射して、層状に配置して形成される。本例においては、実施例1と同様の手法により作製した。
【0056】
図14は、電動機用ステータコアピース成形体の表面にアモルファス薄膜を形成している様子を示す説明図である。同図に示すように、図示しないステータコイルをステータ突極部22aに装着して、これに電流を流して磁束を発生させて、電動機を作動させる場合(図13参照。)に、電動機用ステータコアピース成形体22のステータ突極部22aの応力集中部22d及び22eとなり得る部分(ステータ突極部の根元近傍部22b及び鍔部22c)の表面に、粉末噴射装置200によってアモルファス粉末Aを噴射する。
なお、アモルファス粉末Aの噴射は、電動機用ステータコアピース成形体22を治具500に固定して行った。鍔部22cへのアモルファス粉末Aの噴射においては、噴射圧が作用するため、図示するような治具500を用いることによって、鍔部22cの破損を防ぐことが可能となる。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
【0057】
(実施例8)
図15は、実施例8に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。同図に示すように、本例の電動機用ステータコアピース20においては、電動機用ステータコアピース成形体22の応力集中部22eの表面である鍔部22cの背面に強磁性アモルファス薄膜24aが形成されている。
【0058】
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
電動機用ステータコア成形体は、応力集中部となり得る鍔部の背面に対して、実施例2と同様のアモルファス粉末を用いて、アモルファス薄膜を形成して、本例の電動機用ステータコアピースを得た。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ステータコアピースは、軟磁気特性が得られるため、電動機の磁気回路の妨げとならず、電動機出力性能を落とすことなく、高強度化が可能となる。
【0059】
(実施例9)
図16は、実施例9に係る電動機用ステータコアの断面における説明図である。同図に示すように、本例の電動機用ステータコアピース20においては、電動機用スタータコアピース成形体22の応力集中部22dの表面であるステータ突極部22aの根元近傍部22bの表面に強磁性アモルファス薄膜24aが形成されている。
また、根元近傍部22bは磁束が最も集中し易い部分であり、発熱量が局所的に高い部分でもある。図中の矢印Bは根元近傍部22bにおける磁束を示すものである。
【0060】
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
電動機用ステータコア成形体は、応力集中部となり得るステータ突極部の根元近傍部の表面に対して、実施例2と同様のアモルファス粉末を用いて、アモルファス薄膜を形成して、本例の電動機用ステータコアピースを得た。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ステータコアピースは、軟磁気特性が得られるため、電動機の磁気回路の妨げとならず、電動機出力性能を落とすことなく、高強度化が可能となる。
更に、アモルファス金属薄膜は、結晶質の金属薄膜と比較して、高比抵抗であるため、磁束通過のときに発生する渦電流による損失を抑制することもできる。
【0061】
(実施例10)
図17は、実施例10に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。同図に示すように、本例の電動機用ステータコアピース20は、電動機用ステータコアピース成形体22の応力集中部22eの表面である鍔部22cの背面に非磁性アモルファス薄膜24bが形成されている。
【0062】
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
電動機用ステータコア成形体は、応力集中部となり得る鍔部の背面に対して、実施例3と同様のアモルファス粉末を用いて、アモルファス薄膜を形成して、本例の電動機用ステータコアピースを得た。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
通常強磁性アモルファス薄膜の膜厚は10〜100μmであるが、膜厚を厚く(例えば、膜厚は100〜200μm。)すると、磁気回路幅が増えすぎて隣接する極の鍔部に迂回する磁束が増加してしまう。一方、非磁性アモルファス薄膜を適用すると、迂回する磁束が増加することはないため、例えば膜厚は500〜1000μmとすることができ、迂回する磁束の流れを妨げつつ、鍔部の強度を向上させることができる。
また、鍔部の設計自由度が向上するので、電動機の性能を向上させ易いという利点もある。
更に、アモルファス金属薄膜は、結晶質の金属薄膜と比較して、高比抵抗であるため、磁束通過のときに発生する渦電流による損失を抑制することもできる。
【0063】
(実施例11)
図18は、実施例11に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。同図に示すように、本例の電動機用ステータコアピース20は、電動機用ステータコアピース成形体22の応力集中部22eの表面である鍔部22cの背面及び側面に非磁性アモルファス薄膜24bが形成されている。
【0064】
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
電動機用ステータコア成形体は、応力集中部となり得る鍔部の背面及び側面に対して、実施例3と同様のアモルファス粉末を用いて、アモルファス薄膜を形成して、本例の電動機用ステータコアピースを得た。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
通常強磁性アモルファス薄膜の膜厚は10〜100μmであるが、膜厚を厚く(例えば、膜厚は500〜1000μm。)すると、磁気回路幅が増えすぎて隣接する極の鍔部に迂回する磁束が増加してしまう。一方、非磁性アモルファス薄膜を適用すると、迂回する磁束が増加することはないため、例えば膜厚は100μmとすることができ、迂回する磁束の流れを妨げつつ、鍔部の強度を向上させることができる。
更に、アモルファス金属薄膜は、結晶質の金属薄膜と比較して、高比抵抗であるため、磁束通過のときに発生する渦電流による損失を抑制することもできる。
【0065】
(実施例12)
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
実施例2において用いたアモルファス金属粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末をSPS焼結装置(SPSシンテックス社製、SPS511S)にて、圧縮成形(成形圧力:600MPa、成形温度:420〜440℃)して製造される電動機用ステータコアピース成形体を用いた以外は、実施例2のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、強磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ステータコアピースを得た。
なお、コアピース成形体の製造に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは48K、強磁性アモルファス薄膜の形成に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは48Kであった。
上述した電動機用ステータコアピース成形体においても、各磁性粒の表面が絶縁されており、例えば交番磁界が印加されたときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ステータコアは、軟磁気特性が得られるため、電動機の磁気回路の妨げとならず、電動機出力性能を落とすことなく、高強度化が可能となる。
更に、このような電動機用ステータコアピースは、コアピース成形体を構成する金属粒及びそのコアピース成形体に被覆する薄膜の双方がアモルファス状態であるため、熱応力による応力が発生し難く、より信頼性の高い電動機を提供することができる。
【0066】
(実施例13)
本例の電動機用ステータコアピースの製造方法について詳細に説明する。
実施例2において用いたアモルファス金属粉末の表面に酸化ケイ素(SiO)の絶縁物薄膜が形成された磁性粉末をSPS焼結装置(SPSシンテックス社製、SPS511S)にて、圧縮成形(成形圧力:600MPa、成形温度:420〜440℃)して作製される電動機用ステータコアピース成形体を用いた以外は、実施例3のアモルファス薄膜の形成方法と同様の操作を繰り返して、非磁性アモルファス薄膜を形成し、本例の電動機用ステータコアを得た。
なお、コアピース成形体の製造に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは40K、非磁性アモルファス薄膜の形成に用いたアモルファス金属粉末の過冷却液体領域の温度間隔ΔTは45Kであった。
上述した電動機用ステータコアピース成形体においても、各磁性粒の表面が絶縁されており、例えば交番磁界が印加されたときに発生する渦電流を効果的に遮断することができ、鉄損を低減することが可能となっている。
このようにして形成されるアモルファス薄膜は、緻密であるため、応力集中によってもクラックが入り難くなり、これを用いた電動機は高回転まで回転可能となる。また、電動機の強度信頼性がより向上する。
また、このような電動機用ステータコアピースは、これを用いた電動機用ロータにおいて、磁石近傍を流れる漏れ磁束が流れ難くなり、磁石磁束の有効利用が可能となり、磁束量が増大することによって、電動機の性能が向上することとなる。同一の磁石サイズで比較した場合に、より高出力な電動機となる。
更に、このような電動機用ステータコアピースは、コアピース成形体を構成する金属粒及びそのコア成形体に被覆する薄膜の双方がアモルファス状態であるため、熱応力による応力が発生し難く、より信頼性の高い電動機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】アトマイズ粉末の粒径とアモルファス薄膜が形成されるアモルファス粉末の最小噴射速度との関係を示すグラフ図である。
【図2】実施例1に係る電動機用ロータコアの斜視図である。
【図3】従来例及び実施例1に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図(a)及び(b)である。
【図4】アトマイザの一例を示す概略図である。
【図5】粉末噴射装置の一例を示す概略図である。
【図6】電動機用ロータコア成形体の表面にアモルファス薄膜を形成している様子を示す説明図である。
【図7】実施例2に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図である。
【図8】実施例3に係る電動機用ロータコアの磁石穴に永久磁石を挿入して内部に装着した電動機用ロータの一部の説明図である。
【図9】SPS焼結装置の一例を示す概略図である。
【図10】電動機用ロータコア成形体を加熱している様子を示す模式的な説明図である。
【図11】アモルファス金属粉末を噴射する際のコア成形体の温度と得られたロータコアの回転限界との関係を示すグラフ図である。
【図12】実施例7に係る電動機用ステータコアピースの斜視図である。
【図13】従来例及び実施例7に係る電動機用ステータピースの断面における説明図(a)及び(b)である。
【図14】電動機用ステータコアピース成形体の表面にアモルファス薄膜を形成している様子を示す説明図である。
【図15】実施例8に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。
【図16】実施例9に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。
【図17】実施例10に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。
【図18】実施例11に係る電動機用ステータコアピースの断面における説明図である。
【符号の説明】
【0068】
10 電動機用ロータコア
12 電動機用ロータコア成形体
12a 磁石穴
12b 応力集中部
14 アモルファス薄膜
14a 強磁性アモルファス薄膜
14b 非磁性アモルファス薄膜
20 電動機用ステータコアピース
22 電動機用ステータコアピース成形体
22a スタータ突極部
22b ステータ突極部根元近傍部
22c 鍔部
22d 応力集中部
22e 応力集中部
24 アモルファス薄膜
24a 強磁性アモルファス薄膜
24b 非磁性アモルファス薄膜
30 永久磁石
50 電動機用ロータコア
52a 磁石穴
52b 応力集中部
60 電動機用ステータコアピース
62 電動機用ステータコアピース成形体
62a スタータ突極部
62b ステータ突極部根元近傍部
62c 鍔部
62d 応力集中部
62e 応力集中部
70 ステータコイル
100 アトマイザ
101 溶解チャンバ
102 石英管
103 高周波電源
104 加熱コイル
105 回収チャンバ
106 アルゴンポンプ
107 アトマイズガスノズル
108 真空ポンプ
200 粉末噴射装置
201 粉末タンク
202 高圧エアポンプ
203 ノズル
300 SPS焼結装置
301 本体
302 油圧ポンプ
303 シリンダ
304 焼結型
305 加熱用電源
400 加熱装置
500 治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機用ロータ又は電動機用ステータに用いられ、強磁性元素を含有する金属粒の表面に絶縁物薄膜を有する磁性粒を圧縮成形して成るコア成形体と、アモルファス薄膜と、を有するコアであって、
上記アモルファス薄膜は、上記コア成形体の応力集中部の表面に形成されていることを特徴とするコア。
【請求項2】
上記アモルファス薄膜は、上記コア成形体にアモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載のコア。
【請求項3】
上記アモルファス金属粉末につき、次式(1)
ΔTx=Tx−Tg…(1)
(式中のTxは結晶化開始温度、Tgはガラス転移温度を示す。)で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上であることを特徴とする請求項2に記載のコア。
【請求項4】
上記アモルファス薄膜は、強磁性元素を含有するものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項5】
上記アモルファス薄膜は、上記強磁性元素として、鉄、ニッケル及びコバルトから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする請求項4に記載のコア。
【請求項6】
上記アモルファス薄膜は、非磁性元素を含有するものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項7】
上記アモルファス薄膜は、上記非磁性元素として、チタン、銅及びマグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする請求項6に記載のコア。
【請求項8】
上記金属粒は、上記強磁性元素として、鉄、ニッケル及びコバルトから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有するものであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項9】
上記金属粒は、結晶構造を主相とするものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項10】
上記金属粒は、非晶質構造を主相とするものであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項11】
上記非晶質構造を主相とする金属粒につき、次式(1)
ΔTx=Tx−Tg…(1)
(式中のTxは結晶化開始温度、Tgはガラス転移温度を示す。)で表される過冷却液体領域の温度間隔ΔTxが20K以上であることを特徴とする請求項10に記載のコア。
【請求項12】
当該コアが電動機用ステータに用いられるコアであって、上記応力集中部が当該コアのステータ突極部の根元近傍部、及び/又はステータ突極部の先端に形成された鍔部であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項13】
当該コアが電動機用ステータに用いられるコアであって、且つ上記応力集中部が当該コアのステータ突極部の先端に形成された鍔部であるときに、そのステータ突極部の先端に形成された鍔部の背面に形成された上記アモルファス薄膜が、鉄、ニッケル及びコバルトから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項12に記載のコア。
【請求項14】
当該コアが電動機用ステータに用いられるコアであって、且つ上記応力集中部が当該コアのステータ突極部の根元近傍部であるときに、そのステータ突極部の根元近傍部の表面に形成された上記アモルファス薄膜が、鉄、ニッケル及びコバルトから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項12又は13に記載のコア。
【請求項15】
当該コアが電動機用ステータに用いられるコアであって、且つ上記応力集中部が当該コアのステータ突極部の先端に形成された鍔部であるときに、そのステータ突極部の先端に形成された鍔部の背面に形成された上記アモルファス薄膜が、チタン、銅及びマグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項12〜14のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項16】
当該コアが電動機用ステータに用いられるコアであって、且つ上記応力集中部が当該コアのステータ突極部の先端に形成された鍔部であるときに、そのステータ突極部の先端に形成された鍔部の背面及び鍔部の側面に形成された上記アモルファス薄膜が、チタン、銅及びマグネシウムから成る群より選ばれた少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項12〜15のいずれか1つの項に記載のコア。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか1つの項に記載のコアの製造方法であって、
コア成形体上に、アモルファス金属粉末を噴射し、層状に配置して、アモルファス薄膜を形成するに当たり、アモルファス金属粉末噴射前にコア成形体の温度を昇温させることを特徴とするコアの製造方法。
【請求項18】
請求項1〜16のいずれか1つの項に記載のコアを用いた電動機用ロータであって、
電動機用ロータに用いられるコアと、該コアの内部及び/又は表面に装着された磁石と、を備えたことを特徴とする電動機用ロータ。
【請求項19】
請求項1〜16のいずれか1つの項に記載のコアを用いた電動機用ステータであって、
電動機用ステータに用いられるコアと、該コアに巻回装着されたコイルと、を備えたことを特徴とする電動機用ステータ。
【請求項20】
請求項18に記載の電動機用ロータ又は請求項19に記載の電動機用ステータを少なくとも備えたことを特徴とする電動機。
【請求項21】
電気自動車又はハイブリッド自動車に用いられることを特徴とする請求項20に記載の電動機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2008−11643(P2008−11643A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179700(P2006−179700)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】