説明

コンクリート吹付機

【課題】インペラヘッドに直接的に大きな荷重が作用しないようにして該インペラヘッドの変形を防止し得るコンクリート吹付機を提供する。
【解決手段】高速回転するインペラ17によりコンクリート7を打撃投射するインペラヘッド6をロボットアーム3の先端部に備え、前記インペラヘッド6へコンクリート配管(マテリアルホース5、Y字管16、コンクリート投入管13)を介してコンクリート7を圧送するようにしたコンクリート吹付機に関し、前記コンクリート配管(図1の例ではY字管16)をインペラヘッド6に到る間際でロボットアーム3の先端部に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル内面等にコンクリートをライニングするためのコンクリート吹付機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、山岳トンネル掘削時等の吹付けコンクリート施工には、コンクリートポンプにより圧送されてきたコンクリートに途中から圧縮空気を供給して吹付けるエア吹付け方式が採用されてきたが、発生する粉塵により塵肺に罹患する虞れがあるため、近年においては、高速回転するインペラによりコンクリートを打撃投射するエアレス吹付け方式が採用されるようになってきている。
【0003】
図3はエアレス吹付け方式で吹付けコンクリート施工を行い得るコンクリート吹付機の一例を示すもので、図3中1は自走式の主機を示し、該主機1の後部にコンクリートポンプ2が設けられていると共に、前記主機1の前部には多関節式のロボットアーム3が設けられている。
【0004】
そして、コンクリート配管を成す鋼管配管4及びマテリアルホース5を介しコンクリートポンプ2からロボットアーム3の先端部のインペラヘッド6へとコンクリート7を圧送し、前記インペラヘッド6内で高速回転するインペラによりコンクリート7を打撃して投射するようになっている。
【0005】
図4に拡大して示す如く、前記インペラヘッド6は、ロボットアーム3の先端部の一側面にベースプレート9を介して固定され、該ベースプレート9に一緒に固定された油圧モータ10により回転駆動されるようになっており、この油圧モータ10には、前記主機1に搭載された油圧ユニット8からの油圧が動力源として供給されるようになっている。
【0006】
そして、前記インペラヘッド6には、互いに回動自在に接続された一対のベント管11,12から成るコンクリート投入管13と、急結剤14をコンクリート7に混合するための枝管15を備えたY字管16とを介し前記マテリアルホース5が接続されるようになっている。
【0007】
尚、図4中における符号17は油圧モータ10により回転軸Oを中心に回転するインペラ、18は該インペラ17を覆うケーシング、19は該ケーシング18に形成されたコンクリート7を打撃吐出するためのノズルを夫々示している。
【0008】
また、この種のエアレス吹付け方式のコンクリート吹付機に関連する先行技術文献情報としては、例えば下記の特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第3537047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、斯かる従来のコンクリート吹付機においては、コンクリート7の圧送時にマテリアルホース5内が全てコンクリート7で満たされ、該コンクリート7の重量とマテリアルホース5の自重とが、Y字管16及びコンクリート投入管13を介しインペラヘッド6に偏りを持った大きな荷重として作用することになるため、マテリアルホース5の中途部をロボットアーム3の中途部から鎖C(図3参照)で吊り下げて荷重を緩和する措置を採ってはいるものの、インペラヘッド6に対し大きなモーメントが作用して該インペラヘッド6を変形させる虞れがあった。
【0011】
また、ロボットアーム3によりインペラヘッド6のノズル19の向きを小刻みにスイング操作した際に、慣性によりマテリアルホース5側からの衝撃荷重がインペラヘッド6に直接伝わったり、ロボットアーム3によりインペラヘッド6のノズル19を移動した際に、コンクリート7の充填により重くなったマテリアルホース5が地面に引きずられてインペラヘッド6に大きな荷重が直接伝わったりすることがあり、このような場合にインペラヘッド6に変形が生じる虞れもあった。
【0012】
更には、トンネルの下部にコンクリート7を吹付けるためにロボットアーム3を下げた際に、マテリアルホース5が地面に押し付けられてインペラヘッド6に大きな反力が加わることがあり、このような反力によってもインペラヘッド6に変形が生じる虞れがあった。
【0013】
そして、インペラヘッド6に変形が生じる事態となれば、回転体のインペラ17と、それを覆うケーシング18との間に程良く保たれていたクリアランスに偏りが生じ、これによりインペラヘッド6内で主要な部品が接触又は衝突して破壊してしまい、その部品交換により部品コストが嵩むと共に、交換作業により施工作業が中断されて吹付け施工の効率が下がるという問題を招くこととなった。
【0014】
本発明は上述の実情に鑑みてなしたもので、インペラヘッドに直接的に大きな荷重が作用しないようにして該インペラヘッドの変形を防止し得るコンクリート吹付機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、高速回転するインペラによりコンクリートを打撃投射するインペラヘッドをロボットアームの先端部に備え、前記インペラヘッドへコンクリート配管を介してコンクリートを圧送するようにしたコンクリート吹付機において、前記コンクリート配管をインペラヘッドに到る間際でロボットアームの先端部に固定したことを特徴とするコンクリート吹付機、に係るものである。
【0016】
而して、このようにすれば、インペラヘッドへコンクリートを圧送するコンクリート配管がインペラヘッドに到る間際でロボットアームの先端部に固定されているので、コンクリートの固定位置より上流側で生じる様々な荷重が全てロボットアームの先端部で受け持たれ、インペラヘッドに直接的に大きな荷重が作用することが回避されるので、該荷重の直接的な作用によるインペラヘッドの変形が防止される。
【0017】
より具体的には、コンクリートの圧送時にコンクリート配管内が全てコンクリートで満たされて該コンクリートの重量とコンクリート配管の自重とがインペラヘッドに偏りを持った大きな荷重として作用した場合や、ロボットアームによりインペラヘッドのノズルの向きを小刻みにスイング操作した時の慣性によりコンクリート配管側からの衝撃荷重がインペラヘッドに伝わった場合、或いは、ロボットアームによりインペラヘッドのノズルを移動した時にコンクリート配管が地面に引きずられてインペラヘッドに大きな荷重が伝わった場合、更には、ロボットアームを下げた時にコンクリート配管が地面に押し付けられてインペラヘッドに大きな反力が加わった場合等に、これらの荷重負担がロボットアームの先端部側で受け持たれてインペラヘッドの変形が防止される。
【0018】
また、本発明をより具体的に実施するにあたっては、例えば、ロボットアームの先端部の一側面にインペラヘッドを固定する一方、前記ロボットアームの先端部の他側面にコンクリート配管を固定し、該コンクリート配管の固定位置から前記インペラヘッドに到るまでの間を一対のベント管により前記ロボットアームの先端部を迂回してU字状を成すように接続すれば良く、或いは、ロボットアームの先端部の一側面にインペラヘッドを固定する一方、前記ロボットアームの先端部の前面にコンクリート配管を固定し、該コンクリート配管の固定位置から前記インペラヘッドに到るまでの間をベント管によりL字状に接続するようにしても良い。
【発明の効果】
【0019】
上記した本発明のコンクリート吹付機によれば、インペラヘッドへコンクリートを圧送するコンクリート配管をインペラヘッドに到る間際でロボットアームの先端部に固定したことにより、コンクリートの固定位置より上流側で生じる様々な荷重を全てロボットアームの先端部で受け持たせることができ、インペラヘッドに直接的に大きな荷重が作用することを回避して該荷重の直接的な作用によるインペラヘッドの変形を防止することができるので、該変形に起因して起こり得るインペラヘッド内での主要部品の破壊を未然に回避することができ、その部品交換を不要として部品コストの削減や吹付け施工の効率向上を図ることができる等種々の優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明を実施する形態の一例を示す概略図である。
【図2】本発明の別の形態例を示す概略図である。
【図3】従来のコンクリート吹付機の一例を示す概略図である。
【図4】図3の要部を拡大して示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図4と同一の符号を付した部分は同一物を表わしている。
【0023】
本形態例においては、前述した図4の場合と同様に、高速回転するインペラ17によりコンクリート7を打撃投射するインペラヘッド6が、ロボットアーム3の先端部の一側面にベースプレート9を介して固定され、該ベースプレート9に一緒に固定された油圧モータ10により回転駆動されるようになっているが、これまでマテリアルホース5の中途部をロボットアーム3の中途部から鎖C(図3参照)で吊り下げて荷重を緩和する措置しか採られてこなかったコンクリート配管(マテリアルホース5、Y字管16、コンクリート投入管13)に関し、該コンクリート配管のインペラヘッド6に到る間際に位置しているY字管16をブラケット20を介し前記ロボットアーム3の先端部の他側面に固定し、前記Y字管16(コンクリート配管の固定位置)から前記インペラヘッド6に到るまでの間を一対のベント管11,12から成るコンクリート投入管13により前記ロボットアーム3の先端部を迂回してU字状を成すように接続している。
【0024】
尚、ここに図示している例では、Y字管16をロボットアーム3の先端部の他側面に固定したことによりマテリアルホース5がロボットアーム3に近接しすぎてしまうので、Y字管16とマテリアルホース5との間に、該マテリアルホース5をロボットアーム3から離間させるためのベント管21を回転不可の接続状態で介装している。
【0025】
而して、このように構成すれば、コンクリート配管のインペラヘッド6に到る間際の一部分を成しているY字管16がロボットアーム3の先端部に固定されているので、このY字管16より上流側で生じる様々な荷重が全てロボットアーム3の先端部で受け持たれ、インペラヘッド6に直接的に大きな荷重が作用することが回避されるので、該荷重の直接的な作用によるインペラヘッド6の変形が防止される。
【0026】
より具体的には、コンクリート7の圧送時にマテリアルホース5内が全てコンクリート7で満たされて該コンクリート7の重量とマテリアルホース5の自重とがインペラヘッド6に偏りを持った大きな荷重として作用した場合や、ロボットアーム3によりインペラヘッド6のノズル19の向きを小刻みにスイング操作した時の慣性によりマテリアルホース5側からの衝撃荷重がインペラヘッド6に伝わった場合、或いは、ロボットアーム3によりインペラヘッド6のノズル19を移動した時にマテリアルホース5が地面に引きずられてインペラヘッド6に大きな荷重が伝わった場合、更には、ロボットアーム3を下げた時にマテリアルホース5が地面に押し付けられてインペラヘッド6に大きな反力が加わった場合等に、これらの荷重負担がロボットアーム3の先端部側で受け持たれてインペラヘッド6の変形が防止される。
【0027】
従って、上記形態例によれば、コンクリート配管のインペラヘッド6に到る間際の一部分を成しているY字管16をロボットアーム3の先端部に固定したことにより、Y字管16より上流側で生じる様々な荷重を全てロボットアーム3の先端部で受け持たせることができ、インペラヘッド6に直接的に大きな荷重が作用することを回避して該荷重の直接的な作用によるインペラヘッド6の変形を防止することができるので、該変形に起因して起こり得るインペラヘッド6内での主要部品の破壊を未然に回避することができ、その部品交換を不要として部品コストの削減や吹付け施工の効率向上を図ることができる。
【0028】
また、図2は本発明の別の形態例を示すもので、本形態例においては、前述した図1の形態例でY字管16をロボットアーム3の先端部の他側面にブラケット20を介して固定したことに替えて、前記ロボットアーム3の先端部の前面に、コンクリート投入管13の中間部でベント管11,12を繋いでいる連絡管22をブラケット23を介して固定し、前記連絡管22(コンクリート配管の固定位置)から前記インペラヘッド6に到るまでの間をベント管11によりL字状を成すように接続したものであるが、このようにした場合でも、前述した図1の形態例の場合と同様に、コンクリート配管のインペラヘッド6に到る間際の一部分を成している連絡管22をロボットアーム3の先端部に固定したことにより、連絡管22より上流側で生じる様々な荷重を全てロボットアーム3の先端部で受け持たせることができ、インペラヘッド6に直接的に大きな荷重が作用することを回避して該荷重の直接的な作用によるインペラヘッド6の変形を防止することができる。
【0029】
尚、本発明のコンクリート吹付機は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
3 ロボットアーム
4 鋼管配管(コンクリート配管)
5 マテリアルホース(コンクリート配管)
6 インペラヘッド
7 コンクリート
11 ベント管(コンクリート配管)
12 ベント管(コンクリート配管)
13 コンクリート投入管(コンクリート配管)
16 Y字管(コンクリート配管)
17 インペラ
21 ベント管(コンクリート配管)
22 連絡管(コンクリート配管)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高速回転するインペラによりコンクリートを打撃投射するインペラヘッドをロボットアームの先端部に備え、前記インペラヘッドへコンクリート配管を介してコンクリートを圧送するようにしたコンクリート吹付機において、前記コンクリート配管をインペラヘッドに到る間際でロボットアームの先端部に固定したことを特徴とするコンクリート吹付機。
【請求項2】
ロボットアームの先端部の一側面にインペラヘッドを固定する一方、前記ロボットアームの先端部の他側面にコンクリート配管を固定し、該コンクリート配管の固定位置から前記インペラヘッドに到るまでの間を一対のベント管により前記ロボットアームの先端部を迂回してU字状を成すように接続したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート吹付機。
【請求項3】
ロボットアームの先端部の一側面にインペラヘッドを固定する一方、前記ロボットアームの先端部の前面にコンクリート配管を固定し、該コンクリート配管の固定位置から前記インペラヘッドに到るまでの間をベント管によりL字状に接続したことを特徴とする請求項1に記載のコンクリート吹付機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21267(P2012−21267A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157724(P2010−157724)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【特許番号】特許第4763842号(P4763842)
【特許公報発行日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(592068130)リブコンエンジニアリング株式会社 (11)
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