説明

コンクリート型枠材の製造装置

【課題】設備の簡略化が図れ、長期の使用に耐えられるコンクリート型枠材の製造装置を提供する。
【解決手段】表面に多数の切り込み2を形成した木製の基材1を浸漬する液状樹脂4を収容した液槽3と、基材1の表面に付着した液状樹脂4の表面を押圧して均一面にする押圧均一装置5と、押圧均一した液状樹脂4が付着した基材1を乾燥する乾燥装置6と、乾燥した基材1に付着の液状樹脂4の表面に補強仕上材を塗布する補強仕上材塗布装置8、9とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビル、橋梁、ダム等の建築仮設工事用に使用するコンクリート型枠材の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基材がベニヤ板等からなるコンクリート型枠材の従来の製造方法として、基材の表面に該表面から内部へ所定の深さの液状樹脂用のスリットを多数形成したものを真空状態とした容器内に配置した後、液状樹脂を該容器内に封入して基材を該液状樹脂に浸漬すると共に、該容器内を加圧して前記基材の表面に該液状樹脂を含浸し、その後該基材の表面に木材補強剤を塗布して前記スリットを埋め、前記コンクリート型枠材を乾燥してから前記表面に塗膜を形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第2984972号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この従来の方法によれば、基材を真空状態とした容器内に配置した後、液状樹脂を該容器内に封入して基材を該液状樹脂に浸漬すると共に、該容器内を加圧して前記基材の表面に該液状樹脂を含浸するようにしているので、該容器は密封式に形成して該容器内を真空にするための真空ポンプや該容器内を加圧するための加圧ポンプ、更にこれらに接続する配管類等の機器類を必要として設備が複雑になり、又基板の表面への液状樹脂の付着が一様でなく長期の使用に耐えられない問題点があった。
【0004】
本発明はこれらの問題点を解消し設備の簡略化を図り、長期の使用が可能となるコンクリート型枠材の製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記の目的を達成すべく表面に多数の切り込みを形成した木製の基材を浸漬する液状樹脂を収容した液槽と、基材の表面に付着した液状樹脂の表面を押圧して均一面にする押圧均一装置と、押圧均一した液状樹脂が付着した基材を乾燥する乾燥装置と、乾燥した基材に付着の液状樹脂の表面に補強仕上材を塗布する補強仕上材塗布装置とからなる。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、従来の方法において必要とした密封式の真空容器や真空及び加圧の関連設備を不必要にして設備簡略化を図れ、又得られる型枠材は、その表面に均一で強固な被膜層が形成されて長期の使用が可能となる効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明を実施するための最良の形態の1実施例を示す。
【実施例1】
【0008】
本発明の1実施例を図面により説明する。
【0009】
1は基材を示し、該基材1は長方形の平板でラワン材等により積層されたベニヤ板からなっている。
【0010】
2は切り込みを示し、該切り込み2は基材1の表面に該表面から内部へ所定の深さで図1の如く等間隔に千鳥状に形成されている。
【0011】
3は液槽を示し、該液槽3内には図2の如く液状樹脂4が所定の深さに満たされている。
【0012】
ここで該液状樹脂4は好ましくは公知の樹脂エマルジョン、例えば、酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂等の水不溶性樹脂を乳化剤等で水中に分散又は乳化させた樹脂のエマルジョンが使用される。好ましい樹脂エマルジョンは、最低造膜温度が15℃以下であり、且つ形成される膜の耐久性を向上させるために架橋剤を含んでいる(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体エマルジョンである。
【0013】
5は押圧均一装置を示し、該押圧均一装置5は図3に示す如く、基材1を送りながらその両側の面を押圧する上下の金属製のローラ5a、5bと基材1の両側の面に先端辺部が当接する上下の帯板5cとが並設されたユニットが基材1の進行方向に3組並設されて構成されている。
【0014】
ここで前記帯板5cは長辺が基材1の進行方向に横断するように且つ、短辺が基材1に略直角方向になるように支持杆5dにより押圧均一装置5のフレーム(図示せず)に支持され、該支持杆5dはこれに付設した弾性材により前記帯板5cの先端辺部が常に基材1の表面に当接するようにした。
【0015】
5eは流下する液状樹脂を受ける長方形状の受け容器でその下面の脚部に車輪を軸支して移動可能に形成されている。
【0016】
6は乾燥装置を示し、該乾燥装置6は、図4に示す如く乾燥室6aとヒータ6bと該ヒータ6bを経由して該乾燥室6a内に熱風を送るファン6cとからなる。
【0017】
7は仕上材の裏面塗布装置を示し、該裏面塗布装置7は、図5に示す如く上側のウレタンゴム製の塗布ローラ7aと下側の鉄製のローラ7bと上側の塗布ローラ7aと周面において互に接する鉄製で小径の補助ローラ7cと、これらローラ7aとローラ7cの周接個所の上方でスリット状に開口する仕上材の流出管7dとからなる。
【0018】
8は補強材塗布装置を示し、該補強材塗布装置8は図6に示す如く上下の金属製の押圧ローラ8a、8bを前後に並設すると共に後方の押圧ローラ8a、8bの更に後方に位置して上側のウレタンゴム製の塗布ローラ8cと下側の金属製ローラ8dを並設し、更に該上側の塗布ローラ8cに周面において互いに接する鉄製の小径の補助ローラ8eを並設すると共に、これら塗布ローラ8cと補助ローラ8eの周接個所の上方でスリット状に開口する補強材の流出管8fを設けて構成されている。
【0019】
9は仕上材塗布装置を示し、該仕上材塗布装置9も図7に示す如く前記補強材塗布装置8と同様に上下の金属製の押圧ローラ9a、9bを前後に並設すると共に後方の押圧ローラ9a、9bの更に後方に位置して上側のウレタンゴム製の塗布ローラ9cと下側の金属製ローラ9dを並設し、更に該上側の塗布ローラ9cに周面において互いに接する鉄製の小径の補助ローラ9eを並設すると共に、これら塗布ローラ9cと補助ローラ9eの周接個所の上方でスリット状に開口する補強材の流出管9fを設けて構成されている。
【0020】
次に型枠材の製造方法を図2乃至図7により説明する。
【0021】
先ず作業員が基材1の支持セット体10に多数の基材1を等間隔に立てた状態にセットしてから、第1工程として図2に示す如く液槽3内の液体樹脂4中に該支持セット体10と共に多数の基材1を浸し、該液体樹脂4中に所定の時間浸漬してから、前記支持セット体10と共に基材1を取り出す。その浸漬により基材1の表面に液体樹脂4が層状に付着される。
【0022】
このように大気中で液体樹脂4中に多数の基材1をセットして浸漬し、該基材1の面に液体樹脂を付着するようにしているので、設備の簡素化が図れる。
【0023】
その後第2工程として、図3に示す如く両面に液体樹脂4が付着した基材1が押圧均一装置5のローラ5a、5b間を通過しながら送られ、これらローラ5a、5bの押圧により、基材1の両面に付着の液状樹脂4の一部が切り込み2内に圧入される。その後、これらローラ5a、5b後の帯板5cの個所において、基材1の両面に当接される該帯板5cの先端辺部により該基材1の両面に付着した液状樹脂4が均一な皮膜4aに形成される。
【0024】
次に第3工程として、液体樹脂4の被膜4aが形成された基材1を乾燥室6内にセットし、約50℃の温度で数時間乾燥する。この乾燥により基材1の両面において液体樹脂4の被膜4aは硬化して結着し、特に液体樹脂4は切り込み2内に圧入して硬化するので、被膜4aの型枠材1の表側の面への結着は更に強化される。
【0025】
その後基材1の側端面については例えばウレタン樹脂或いはアクリル樹脂等の硬化材をハケ等により手塗りしてから、第4工程として図5に示す如く、基材1をその裏側の面を上方にして裏面塗布装置7の上下のローラ7a、7b間を通過させ、仕上材を流出管7dより回転するローラ7aと補助ローラ7cの周接個所に流下し、該ローラ7aを介して基材1の裏側の面のみに仕上材を塗布する。この塗布により基材1の裏側の面に仕上材の皮膜12が形成される。
【0026】
次に第5工程として、図6に示す如く前記基材1を、その表側の面を上方にして、補強材塗布装置8の前後の押圧ローラ8a、8bにより押圧されながら送られ、その後方の塗布ローラ8c、8d間を通過中、補強材を流出管8fより塗布ローラ8cと補助ローラ8eの周接個所に流下し、該塗布ローラ8cを介して補強材を基材1の表側の面の液状樹脂の層4aの上面に塗布して補強材の層13を形成する。
【0027】
ここで補強材として前記の含浸用樹脂エマルジョンと同じ樹脂エマルジョンが挙げられる。この際、前記含浸されている樹脂との密着性を確保するために、前記含浸に使用したと同じ種類の樹脂エマルジョンを用いることが好ましい。
【0028】
その後第6工程として、図7に示す如く、基材1を、その表側の面を上方にして、仕上材塗布装置9の前後の押圧ローラ9a、8bにより押圧されながら送られ、その後方の塗布ローラ9c、9d間を通過中、仕上材を流出管9fより塗布ローラ9cと補助ローラ9eを介して仕上材を基材1の表側の面の補強材の層13の上面に塗布して仕上材の層14を形成する。ここで仕上材としては、前記含浸用樹脂エマルジョンと同じ樹脂エマルジョンが使用できるが、好ましくは水不溶性のウレタン樹脂と安定化ポリイソシアネート等の架橋剤とを有機溶剤に溶解した溶液を界面活性剤により水中に乳化させた硬化性ウレタン樹脂エマルジョンを用いること好ましい。上記硬化性ウレタン樹脂を用いることで耐摩耗性や耐衝撃性を有する仕上材の皮膜14が形成される。
【0029】
このように基材1の表面に液体樹脂、補強材及び仕上材を塗布してローラにより押圧するようにしたので、基材1の表面に液体樹脂等の被膜が互いに強固に結着すると共にその表面が均一に形成され、更に押圧により基材1の表面の切り込み2に液体樹脂等が圧入して結着するので被膜の基材1の表面への結着が更に強固となる。
【0030】
従ってこのように形成された皮膜が積層されている基材1からなる型枠材を用いて型枠を形成しコンクリートを打設してコンクリート構造物を形成した場合に、コンクリートに接触する型枠の基材1の表側の面には液体樹脂の皮膜と補強材の皮膜と仕上材の皮膜とが強固に結着されているので、型枠として多数の繰り返しの使用に耐えられる。
【0031】
尚、前記実施例において、補強材塗布装置8が前後の押圧ローラ8a、8bとその後方の塗布ローラ8cとローラ8dの1のローラ列の例を示したが、必要に応じてこのローラ列を2以上に並設する複数のローラ列に形成してもよく、又仕上材塗布装置9においても同様に2以上の並設する複数のローラ列に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明により得られるコンクリート型枠材はビル、橋梁、ダム等のコンクリート建造物の施工に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の1実施例の基板の平面図である。
【図2】同実施例の液槽の断面図である。
【図3】同実施例の押圧均一装置の説明図である。
【図4】同実施例の乾燥装置の断面図である。
【図5】同実施例の裏面塗布装置の説明図である。
【図6】同実施例の補強材塗布装置の説明図である。
【図7】同実施例の仕上材塗布装置の説明図である。
【図8】型枠材の横断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 基材
2 切り込み
3 液槽
4 液体樹脂
5 押圧均一装置
5a 押圧ローラ
5b 押圧ローラ
5c 帯板
6 乾燥装置
8 補強材塗布装置
8c 塗布ローラ
9 仕上材塗布装置
9c 塗布ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に多数の切り込みを形成した木製の基材を浸漬する液状樹脂を収容した液槽と、基材の表面に付着した液状樹脂の表面を押圧して均一面にする押圧均一装置と、押圧均一した液状樹脂が付着した基材を乾燥する乾燥装置と、乾燥した基材に付着の液状樹脂の表面に補強仕上材を塗布する補強仕上材塗布装置とからなるコンクリート型枠材の製造装置。
【請求項2】
前記押圧均一装置は、基材の表面に付着した液状樹脂の表面を押圧する押圧ローラと該表面を先端辺部により均一面にする帯板とを並設してなる請求項1に記載のコンクリート型枠材の製造装置。
【請求項3】
補強硬化材装置は、補強材の塗布ローラからなる補強材塗布装置と、仕上材の塗布ローラからなる仕上材塗布装置との組合せからなる請求項1又は請求項2に記載のコンクリート型枠材の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−82040(P2008−82040A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−263820(P2006−263820)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(506328479)株式会社有喜建設 (2)
【Fターム(参考)】