説明

コンクリート目地板および該目地板を用いたコンクリート目地の設置方法

【課題】
コンクリート目地板自体が耐乾燥収縮性に優れ、コンクリート構造体母体が所定量膨張しても、その弾性力により膨張圧を緩和することができ、型枠に所定間隔でコンクリート目地板を設置した後に、コンクリート母体を打設しても、折曲がり等の変形がない、コンクリート目地板及びその設置方法を提供する。
【解決手段】
本発明のコンクリート目地板は、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタルからなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であり、好ましくは、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートを内在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はコンクリート目地板および該目地板を用いたコンクリート目地の設置方法に関し、特にコンクリート製の土木構造物や建築構造物において使用されるコンクリート目地板および該目地板を用いたコンクリート目地板の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート舗装道路、埠頭、空港、ヤード、ダム、高架体、護岸擁壁等の平面的又は立体的なコンクリート製の土木構造物や建築構造物において、コンクリート体間に目地板を挿入しコンクリート構造物のひび割れ等を抑制している。
【0003】
目地板はコンクリートが温度膨張してもその膨張による移動量を吸収する役目を果たしており、コンクリートよりも柔らかい材料で、圧縮されても復元しやすい材料で作られている。そのような目地板として、木質繊維を互いに絡ませた板状物にアスファルトを浸漬させた瀝青質目地板(商品名:ケントタイト)、樹脂を発泡させた発泡目地板、ゴムを発泡させた発泡目地板、アスファルトと木質繊維等を混合した目地板で表面に被覆材を設けた瀝青繊維質目地板(商品名:エラストタイト)等が例示される。このような目地板はコンクリート構造物を作る際に予め目地を形成させようとする位置に設置しておいてから、生コンクリートを打設したり、あるいは舗装道路のように先に打設し硬化したコンクリート舗装版の端面に目地板を貼り付けてから、後の舗装版の生コンクリートを打設するなどの方法によって用いられている。
【0004】
しかし、上記瀝青質目地板や瀝青繊維質目地板は、コンクリート版の膨張や収縮による加圧−圧解除の繰り返しにより、目地板がコンクリート版表面よりはみ出すことがあり、また季節変化に対する物性の変化が大きいという欠点があり、またゴムや樹脂の発泡体目地板は、剛性が十分ではなく、圧縮強度が小さく、設置作業性が悪く、コンクリート構造物の押圧で目地板の厚みが圧縮されてしまうという欠点があった。目地板の機能は緩衝性であり、コンクリートの膨張収縮による歪み量を目地の位置で吸収することが唯一の機能であった。その機能を満たすために圧縮強度、復元率、施工性(曲げ剛性)、はみ出し、その他の諸性能が付随してきた。しかしながら緩衝材という性質上、その長い使用期間中、常に圧縮、解放が繰り返されるため目地板は経年後に厚み方向の圧縮歪みを生じ、その結果コンクリートと目地板表面との間に離脱が見られ、隙間が生じるようになる。目地板は目地の止水性を期待するものではなく、目地の止水は目地シール材に依存していた。
【0005】
これらを改善する方法として、特開2004−092186号公報には、生コンクリートに接触したときに生コンクリートが目地板表面をグリップして硬化するように、深さ0.5mm以上の凹凸状エンボス面を両面に有する、瀝青繊維質目地板、樹脂発泡体目地板、ゴム発泡体目地板または瀝青質目地板で、コンクリートの硬化後にコンクリート面と密着する特性を有する、目地板が記載されている。
【0006】
しかし、コンクリート面との密着性を向上させたとしても、昼夜の温度変化や季節による環境の変化により、コンクリート構造体が繰り返し伸縮挙動を受ける場合には、コンクリート構造体の方がその挙動が大きく、また、瀝青維質目地板、樹脂発泡体目地板、ゴム発泡体目地板または瀝青質目地板は、温度挙動が大きく、温度が高くなると軟化し、はみ出しが大きくなってしまうという問題が改善されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−092186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記問題点を解決し、コンクリート目地板自体が弾性を有し、コンクリート構造体母体が所定量膨張しても、その弾性力により膨張圧を緩和することができ、コンクリート目地板自体が耐乾燥収縮性に優れ、さらに止水性も有し、型枠に所定間隔でコンクリート目地板を設置した後に、コンクリート母体を打設しても、折曲がり等の変形がない、コンクリート目地板を提供することである。
また本発明の目的は、上記課題に加えて、内在させたメッシュにより、該目地板の収縮や膨張をより緩和することができ、運搬や設置の際に、割れや破損等を生ぜず、目地板自体の曲げ耐力が強化された、コンクリート目地板を提供することである。
また本発明の他の目的は、本発明のコンクリート目地板を用いて、接着するコンクリート構造体母体との縁切れを抑制し、良好な付着強度を保持することができ、優良な止水効果を有する、コンクリート目地の設置方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、特定のポリマーセメントモルタルにより、更には特定のメッシュを内在させたポリマーセメントモルタルにより達成されたものである。
【0010】
具体的には、本発明のコンクリート目地板は、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタルからなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であることを特徴とする、コンクリート目地板である。
【0011】
また、本発明の他のコンクリート目地板は、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃の再ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタル中に、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートを内在させてなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であることを特徴とする、コンクリート目地板である。
好適には、上記メッシュ繊維シートは、ビニロンメッシュ繊維シートであることを特徴とする。
【0012】
本発明のコンクリート目地板の設置方法は、上記本発明のコンクリート目地板を、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が50〜150%で含んで成形されるポリマーセメントモルタルにより、コンクリート構造物に接着させることを特徴とする設置方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のコンクリート用目地板は、該目地板自体の収縮が少なく、水分が供給されると所定量膨張し、接着するコンクリート母体との縁切れを抑制し、良好な付着強度を保持することができる。
また、コンクリート母体が所定量膨張しても、本発明の目地板はその弾性力により膨張圧を緩和することができ、型枠に所定間隔で本発明の目地板を設置した後に、コンクリート母体を打設しても、折曲がり等の変形がない。
さらに目地板にメッシュシートを内在させ、内在されるメッシュの空隙率を所定量とすることで、目地板の材料間の接着粋を大きくし、内在させたメッシュにより、該目地板の収縮や膨張を緩和することができ、目地板自体の曲げ耐力が強化される。
また、本発明の目地板を高弾性材料で接着させることにより、優良な止水効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のコンクリート目地板を製造する一例の工程を模式的に説明するフローチャート図である。
【図2】本発明のコンクリート目地板を設置する一例の工程を模式的に説明するフローチャート図である。
【図3】本発明のコンクリート目地板を設置する他の一例の工程を模式的に説明するフローチャート図である。
【図4】本発明のコンクリート目地板を設置する他の一例の工程を模式的に説明するフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目地板を、以下の好適例に基づき説明するが、これらに限定されるものではない。
本発明の目地板は、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタルからなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4である、コンクリート目地板である。
【0016】
本発明のコンクリート目地板に用いられるポリマーセメントモルタルは、ポリマーを含み、適量の水が混入されてセメントモルタルとして使用されるものである。
該ポリマーセメントモルタルに使用されるセメント無機粉体には、セメントと膨張材が配合されてなるものである。
セメントとしては、特に限定されず、例えば普通、早強、中庸熱及び超早強等の各種ポルトランドセメント、これらの各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグなどを混合した高炉セメント等の各種混合セメント、速硬セメント等を、単独または2種以上で用いることができる。
特に安価で早期強度を発現することから、早強セメントを用いることが好ましい。
【0017】
また、該セメントには、膨張材として、二水石膏、半水石膏、無水石膏、生石灰系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材、エトリンガイト系膨張材、石灰―エトリンガイト系膨張材等の膨張材が例示でき、本発明の効果を損なわない範囲で添加することができる。
セメント無機粉体中に前記膨張材を配合することで、得られるコンクリート目地板のJIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4とすることができる。
【0018】
上記ポリマーセメントモルタルに用いられるポリマーディスパージョン及び/又は再乳化形粉末樹脂としては、JIS A 6203に規定されたものを使用することができ、例えば、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン、エチレン酢酸ビニル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル等の樹脂が挙げられ、これらの中から適宜、選択して単独、または混合して使用することができる。
好適には、耐久性の点から、アクリル系の使用が好ましく、特に、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどの軟質成分アクリルモノマーが50質量%以上の含有割合を占めるホモポリマーまたはコポリマー濃度が30〜65質量%程度のポリマーディスパージョン、酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステル等のアクリル系再乳化型粉末樹脂の使用が好ましい。
【0019】
ポリマーディスパージョンとは、上記ポリマーの微粒子が水中に分散し、浮遊している状態のものであり、本発明においてのポリマーセメントモルタルを構成するポリマーディスパージョンとしてそのまま使用することができる。再乳化形粉末樹脂は、ポリマーディスパージョンを噴霧乾燥した粉末樹脂で、水を添加すると再度乳化するものをいう。
ポリマーを安定化する方法としては、例えば、アクリル酸を共重合するカルボキシル方式(アニオン化方式)、水溶性ポリマー、例えばポリビニルアルコール等の水溶液中で重合する保護コロイド方式、重合反応性界面活性剤等を共重合する方式、非重合反応性界面活性剤による安定化方式がある。
【0020】
かかる再乳化形粉末樹脂の製造方法は特に限定されることなく、これらのポリマーディスパージョンを粉末化方法やブロッキング防止法等の公知かつ任意の方法を用いて調製することができる。
再乳化形粉末樹脂の再乳化液としては、最低造膜温度が0℃以上であることが望ましい。
最低造膜温度が0℃以上であることにより、コンクリートとの付着性および早期強度発現性に優れることとなる。
【0021】
該ポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂中に含まれるポリマーのガラス転移温度は、−50℃〜−25℃である。ガラス転移温度が−25℃より高いものを用いたものは、長期にわたる所定の弾性が維持されず、また、ガラス転移温度が−50℃より低いものを用いたものは部材強度が低くなり、折曲がり等の変形を生じてしまう。
【0022】
上記ポリマーセメントモルタルには必要に応じて、細骨材を配合することも可能である。使用する細骨材としては、川砂、海砂、山砂、砕砂、3〜8号珪砂、石灰石、及びスラグ細骨材等を使用することができ、微細な粉や粗い骨材を含まない粒度調整した珪砂や石灰石等の細骨材を用いることが好ましい。
更に、必要に応じて、上記材料のほかに、凝結遅延剤、硬化促進剤、増粘剤、消泡剤、発泡剤、防錆剤、防凍剤、着色剤、保水剤等の添加剤を、本発明の目的を実質的に阻害しない範囲で使用することができる。
【0023】
本発明に用いる前記ポリマーセメントモルタルにおいて、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体(前記セメントや膨張材、更には必要に応じて含まれる細骨材や混和材の無機粉体)の質量比は、5質量%以上、30質量%未満である。
上記ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比を5質量%より少なくすると、長期にわたる所定の弾性が維持されず、一方、固形分にして30質量%以上とすると、部材強度が低くなり、折曲がり等の変形を生じてしまう。
【0024】
本発明のポリマーセメントモルタルは、それぞれの材料を施工時に混合しても、予め一部を混合してもかまわないが、予め粉末成分を混合した材料と水とを混合することが、施工現場での計量手間や計量ミスをなくす点で好ましい。
混合は汎用モルタルミキサー等で、プレミックスの粉体に所定量の水および/又はポリマーディスパージョンを投入するだけで製造が可能である。
【0025】
更に、本発明のモルタルの練り混ぜ水量は、特に限定されず、通常、ポリマーセメントモルタル材料100質量部に対し、通常、ポリマーディスパージョンの水も含めて、水を12〜30質量部混合、好ましくは15〜25質量部混合される。
【0026】
また、本発明のポリマーセメントモルタルは、適量な水を添加して混練するが、水は、セメント等の硬化に悪影響を及ぼす成分を含有していなければ、水道水や地下水、河川水等の水を用いることができ、例えば、「JIS A 5308 付属書9 レディーミクストコンクリートの練混ぜに用いる水」に適合するものが好ましい。
【0027】
このようにして得られたポリマーセメントモルタルを硬化させて所望する形状のコンクリート目地板を得ることができる。
得られたコンクリート目地板は、JIS A 1129による水中長さ変化率(1年後)が10×10−4〜200×10−4である。
かかる範囲の水中長さ変化率を有することで、コンクリート目地板自体が耐乾燥収縮性に優れ、さらに止水性も有し、また、水中環境下においても遅れ膨張によるひび割れが生じることがない。
【0028】
このようなポリマーセメントモルタルは、例えば、以下の表1に示す材料を配合することにより得られる。
【0029】
【表1】

【0030】
このようにして得られたポリマーセメントモルタルにより製造されたコンクリート目地板の、JIS A 1129による水中長さ変化率は、105×10−4である。
【0031】
また、本発明の他のコンクリート目地板は、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョンおよび/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタル中に、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートを内在させてなる、コンクリート目地板である。
即ち、上記したポリマーセメントモルタル中に、特定のメッシュ繊維シートを内在させてなるコンクリート目地板である。
【0032】
本発明のコンクリート目地板に内在させるメッシュ繊維シートは、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートであり、目地板を型作る上記セメントモルタル中に内在させる。
【0033】
即ち、本発明においては、上記特定のモルタルの間に、メッシュ繊維シートを挟持し、該メッシュ繊維シートのメッシュの目開きを小さくし、また、空隙率を大きくしたメッシュ繊維シートを用いているものである。
このように、セメントモルタル中に特定のメッシュ繊維シートを内在させることで、目地板の収縮や膨張を緩和することができ、目地板自体の曲げ耐力が強化される。
【0034】
メッシュ繊維シートを構成する繊維としては、炭素繊維、アラミド繊維、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール繊維(PBO)、ガラス繊維、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の公知の繊維を用いることができ、ビニロン繊維を好適に使用する。
またその形状は、特に限定されず、例えば三軸組布、二軸組布等、任意のメッシュ繊維シートを用いることができる。
【0035】
設置する該メッシュ繊維シートの目開きの一辺は2mm以下とする。これは目開きを2mm以下とすることで、シートを内在させるポリマーセメントモルタルの打ち継ぎの際に、先に塗布したポリマーセメントモルタルの層を貼り付けシート面に過剰露出するのを抑制し、ポリマーセメントモルタル間の接着強度を保つことができる。
【0036】
また、該メッシュの空隙率(メッシュの目の大きさ)は50〜80%であるものを用いる。このように空隙率を前記範囲のように大きくすることで、ポリマーセメントモルタル間の接着域を大きくし、付着強度の低いメッシュ面との接着面積を小さくすることができる。好ましくは、該空隙率は60〜75%である。
【0037】
メッシュ繊維シートをポリマーセメントモルタルに内在させたコンクリート目地板を製造する方法としては、メッシュ繊維シートがセメントモルタル中に内在させることができれば、如何なる方法によって製造されてもよい。例えば一例として、図1に示すように、例えば、目地板の型枠(図示せず)に、上記ポリマーセメントモルタル1を打設し、該セメントモルタル1が硬化しない間に、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シート2を設置し、更に該メッシュ繊維シートの上を更にモルタル1で被覆することで、メッシュ繊維シートを内在させたコンクリート目地板を製造することができる。
または、例えば、目地板の型枠に、上記ポリマーセメントモルタルを打設し、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートを該打設したポリマーセメントモルタルに埋め込むように設置することでも、該メッシュ繊維シートを内在させたコンクリート目地板を製造することができる。
【0038】
即ち、モルタルを打設し、前記メッシュ繊維シートを設置した後に、再び該モルタルを打設して、硬化させることにより内在させても、あるいは、該モルタルを打設して該モルタルが硬化する前に該モルタル内に該メッシュ繊維シートを押し込むように設置して硬化させることにより固定しても、メッシュ繊維シートを固定して内在させることができれば、いずれの方法を用いてもよい。
【0039】
このようにして、メッシュ繊維シートが内在しているセメントモルタルにより製造されたコンクリート目地板は、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であることは、上記と同様である。
【0040】
次に、本発明の目地板を、コンクリート構造物に設置する方法としては、例えば、上記本発明のコンクリート目地板を、高弾性材料、例えば、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が50〜150%で含んで成形されるポリマーセメントモルタルにより、コンクリート硬化体母体に接着させて設置することができる。
【0041】
具体的には、本発明の目地板表面及び/又はコンクリート構造物母体側表面に、高弾性材料である、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が50〜150%で含んで成形されるポリマーセメントモルタルを塗布して、目地板とコンクリート構造物母体とを接着させて、目地板を設置する。
【0042】
塗布する高弾性材料として、本発明の目地板を構成する上記ポリマーセメントモルタルを適用することで、本発明の目地板との接着性が極めて良好となり、コンクリート母体との密着性も優れ、止水効果も良好となる。
【0043】
高弾性材料を介在させて、本発明のコンクリート目地板を、コンクリート構造物母体へ設置する工程としては、従来より適用されている、コンクリート目地板を設置する任意の工程を使用することができる。
【0044】
例えば、図2に模式的に示すように、型枠(図示せず)にコンクリート構造物Bを構成するコンクリート3を打設して硬化させ、得られたコンクリート構造物Bに、別途製造された本件発明の目地板Aを、上記高弾性材料4、例えば上記ポリマーセメントモルタルを介在させて貼り付けて設置し、次いで再びコンクリート構造物Bを構成するコンクリート3を打設して、コンクリート構造物間に目地板を設置することができる。
【0045】
また例えば、図3に模式的に示すように、コンクリート3を打設して硬化させて得られたコンクリート構造物Bを一定間隔で切り崩して目地切りし、切削したコンクリート構造物目地部5に、別途製造された本発明の目地板Aを、上記高弾性材料4、例えば上記ポリマーセメントモルタルを介在させて貼り付けて設置し、コンクリート構造物に目地板を設置することができる。
【0046】
また例えば、図4に示すように、プレキャストコンクリート構造物CとCの間隙6に、別途製造された本発明の目地板Aを、上記高弾性材料4、例えば上記ポリマーセメントモルタルを介在させて貼り付けて設置し、プレキャストコンクリート構造物間に目地板を設置することができる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のコンクリート目地板は、道路、滑走路、工場、歩道、広場、用水路、護岸、水源地、擁壁、ダム、屋上等の、コンクリート建造物の目地部分に適用することができる。
【符号の説明】
【0048】
1 ポリマーセメントモルタル
2 メッシュ繊維シート
3 コンクリート
4 高弾性材料
5 目地部
6 間隙
A 目地板
B コンクリート構造物
C プレキャストコンクリート構造物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタルからなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であることを特徴とする、コンクリート目地板。
【請求項2】
ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が5%以上30%未満で含んで成形されるポリマーセメントモルタル中に、メッシュの空隙率が50〜80%でかつ目開きの大きさが2mm以下であるメッシュ繊維シートを内在させてなり、JIS A 1129による水中長さ変化率が10×10−4〜200×10−4であることを特徴とする、コンクリート目地板。
【請求項3】
請求項2記載のコンクリート目地板において、メッシュ繊維シートは、ビニロンメッシュ繊維シートであることを特徴とする、コンクリート目地板。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかの項記載のコンクリート目地板を、ガラス転移温度が−50℃〜−20℃のポリマーディスパージョン及び/又は再乳化型粉末樹脂を、ポリマー固形分/セメントモルタル無機粉体質量比が50〜150%で含んで成形されるポリマーセメントモルタルで、コンクリート構造物に接着させることを特徴とする、コンクリート目地の設置方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−179291(P2011−179291A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−47279(P2010−47279)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】