説明

コンクリート面の塗装方法

【課題】特にコンクリート板の表面に対して、ヒビワレ追従性を有し、且つフクレなどの塗膜欠陥を生じることなく、良好な仕上がり外観を有する塗装方法を提供すること。
【解決手段】コンクリート面に、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する透水防止剤(A)を塗装し乾燥する工程(1);工程(1)で得られた乾燥塗膜上に、モノエポキシ化合物及び1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を含有する溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)を塗装し乾燥した後、研磨する工程(2);工程(2)で得られた研磨塗膜上に、水酸基含有アクリル樹脂、顔料、樹脂微粒子、ポリイソシアネート化合物及び硬化触媒を含有するウレタン硬化系フィラー(C)を塗装し乾燥した後、研磨する工程(3);工程(3)で得られた研磨塗膜上に、上塗り塗料(D)を塗装し乾燥する工程(4)を含んでなることを特徴とする塗装方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート面に、ヒビワレ追従性を有し且つフクレなどの塗膜欠陥を生じることなく、良好な仕上がり外観を有する塗膜を形成することができる塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
空港や駅などの高層ビルの外壁は、近年、カーテンウォール工法、石張り工法、タイル張り工法などで構築されることが多く、最近では、プレキャストコンクリート板などの大型コンクリート板に「鏡面仕上げ」と呼ばれる平滑性に優れた仕上げ塗装までを施した塗装板を工場で製造し、これを施工現場に搬入して建て込む方法が採用されるようになってきている。
【0003】
コンクリート板のように多孔質な表面を有する基材に上記のような鏡面仕上げを施すには、耐久性や防水性を確保するため、プライマーやフィラー、穴埋めのためのパテなどを塗り重ねてから、上塗り塗装又は中塗り塗装及び上塗り塗装を施すのが一般的である。しかしながら、工期の問題で十分な養生期間が取れずに塗装を開始してしまうケースがあり、含水率が高い状態での塗装を余儀なくされる。そのため、コンクリート板内に内在する水分(以下、裏面水と呼ぶことがある)の蒸発などに起因して、コンクリート板表面を覆っている塗膜にフクレ、ハガレなどの不具合を生じるという問題がある。
【0004】
上記の如き問題を解決する手段として、例えば、特許文献1には、無機多孔質基材面に、透水防止剤、エポキシ系プライマー及びウレタン硬化系フィラーを順次塗装し、さらにその上に上塗り塗料を塗装する塗装方法が開示されている。
【0005】
該塗装方法によれば、無機多孔質基材面に形成される塗膜が裏面水阻止性能に優れ且つ該基材を鏡面仕上げ(平滑仕上げ)とすることが可能であるが、近年のコンクリート板の軽量化、大型化に伴い、コンクリート板表面には微細なヒビワレが発生しやすいという問題がある。
【0006】
一方、コンクリート板などの無機基材のヒビワレに追従可能な塗膜を形成し得る塗料として、当該分野ではアクリルエマルション系の下地調整剤がよく知られている(特許文献2参照)。このような下地調整剤を上記軽量コンクリート板に塗布すると、裏面水の蒸発によって塗膜フクレが発生するという別の問題が生じる。
【0007】
しかして、当該分野では、軽量化コンクリート板に対して、ひび割れ追従性があり、フクレ等の塗膜欠陥が発生することなく、良好な仕上がり外観の塗膜を形成することができる塗装方法の開発が望まれている。
【特許文献1】特開2005−219000号公報
【特許文献2】特開2002−309160号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、特にコンクリート板に対して、ヒビワレ追従性を有し且つフクレなどの塗膜欠陥を生じることなく、良好な仕上がり外観を有する塗膜を形成することができる塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、今回、コンクリート板の表面に対して特定の透水防止剤を塗装した後、モノエポキシ化合物とエポキシ樹脂を含む特定の溶剤型エポキシ系下地調整剤及び特定のウレタン硬化系フィラーを順次塗装することによって、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明に完成するに至った。
【0010】
かくして、本発明は、
(1) コンクリート面に、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する透水防
止剤(A)を塗装し乾燥する工程、
(2) 工程(1)で得られた透水防止剤(A)の乾燥塗膜上に、モノエポキシ化合物及
び1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を含有する溶剤型エポキシ系
下地調整剤(B)を塗装し乾燥した後、研磨する工程、
(3) 工程(2)で得られた溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の研磨塗膜上に、水酸
基含有アクリル樹脂、顔料、樹脂微粒子、ポリイソシアネート化合物及び硬化触媒を
含有するウレタン硬化系フィラー(C)を塗装し乾燥した後、研磨する工程、並びに(4) 工程(3)で得られたウレタン硬化系フィラー(C)の研磨塗膜上に、上塗り塗
料(D)を塗装し乾燥する工程、
を含んでなることを特徴とするコンクリート面の塗装方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の塗装方法によれば、透水防止剤により処理されたコンクリート板の表面に対して、モノエポキシ化合物とエポキシ樹脂を含む溶剤型エポキシ系下地調整剤による塗膜を設けることによって、該塗膜がコンクリート表層に経時で生じる微細なヒビワレに追従すると共に、耐塗膜フクレ性を向上させる効果があり、また、ウレタン硬化系フィラーによる塗膜をさらに設けることによって、ヒビワレ追従性を向上させつつ、塗膜表面を平滑性仕上げ(鏡面仕上げ)とすることができる。
【0012】
本発明の塗装方法によれば、さらに、コンクリート面を鏡面仕上げとするとともに、耐久性に優れる保護塗膜を形成することができるため、コンクリート板の美観を長期にわたって維持することができ且つコンクリート板を保護することができる。
【0013】
以下、本発明のコンクリート面の塗装方法(以下、本塗装法ということがある)について、さらに詳細に説明する。
【0014】
工程(1):
本塗装法を適用することができるコンクリート面としては、例えば、プレキャストコンクリート板(PC板)、押し出し成形コンクリート板、軽量気泡コンクリート板(ALC板)などの土木建築用のコンクリート板の表面を挙げることができる。
【0015】
本塗装法において使用される透水防止剤(A)は、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を必須として含有するものである。
【0016】
加水分解性の官能基を有するシラン化合物としては、例えば、下記式

−Si−(R4−n

式中、
nは1,2又は3の整数、好ましくは1であり、
は安定な疎水性基、例えば、アルキル基、フェニル基等の炭化水素系の置換基で
あり、中でも、飽和アルキル基が疎水性の点で好ましく、
は加水分解性の基、例えば、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、ヒドロ
キシル基、ハロゲン原子、アセトキシ基、カルボキシル基、イソシアネート基等を表し
、貯蔵安定性、取扱いの容易さなどの観点から、特にアルコキシ基が好ましい、
なお、R及びRがそれぞれ複数個存在する場合には、それら複数個R及び/又
はRは同一でも異なっていてもよい、
で示される化合物の単量体、二量体、三量体又はそのオリゴマーが挙げられる。
【0017】
上記シラン化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジトリエトキシシラン、エチルトリ−n−プロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルジメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリイソプロポキシシラン、2−エチルヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメチキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、テトラデシルトリエトキシシラン等、又はこれらの二量体、三量体及びこれらの混合物等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらのうち、アルキルトリアルコキシシランが好ましく、特に、アルキルトリメトキシシランが好適である。
【0018】
透水防止剤(A)は、必要に応じて、上記シラン化合物のアルコキシシリル基が加水分解することによって生じるシラノール基の縮合反応を促進する触媒をさらに含有することができる。かかる触媒としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート等の有機チタネート化合物;ジオクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート及びジブチル錫マレート等の有機錫化合物;パラトルエンスルフォン酸等の有機酸などが挙げられる。
【0019】
透水防止剤(A)には、さらに、必要に応じて、乳化剤、pH(水素イオン濃度)調整剤などの添加剤を配合して、上記シラン化合物を、固形分濃度が通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように水性媒体中に溶解、分散又は乳化して水性組成物とすることができ、或いは上記シラン化合物を、固形分濃度が通常5〜40質量%、好ましくは10〜30質量%となるように有機溶剤中に希釈・溶解して有機溶剤型組成物とすることもできる。
【0020】
透水防止剤(A)のコンクリート面への塗装は、それ自体既知の方法にしたがい、例えば、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り塗装等により行うことができる。
【0021】
透水防止剤(A)の塗布量は、厳密に制限されるものではなく、適用するコンクリート板の状態や目的などに応じて適宜設定することができるが、固形分換算で、一般には50〜400g/m、特に100〜300g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。形成される透水防止剤(A)のウエット塗膜は、通常、常温で放置するか風乾し、或いは約40〜80℃の温度に加熱することにより乾燥することができる。
【0022】
本塗装法に従い、上記コンクリート面に対して透水防止剤(A)を塗装することにより、透水防止剤(A)中のシラン化合物が浸透して、コンクリート板の表面を補強すると共に、コンクリート面への後述する溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の塗膜の密着性を向上させ、且つ裏面水の蒸発を抑制する等の効果が得られる。
【0023】
工程(2):
本塗装法によれば、工程(1)で形成された透水防止剤(A)の乾燥塗膜上に、次いで、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)が塗装される。
【0024】
なお、本明細書において、「塗膜上」なる語は、当該塗膜の直上及び該塗膜表面に必要に応じて形成される他の塗膜を介したその上の両者を包含するものである。
【0025】
溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)は、コンクリート板表面に存在する多数の巣穴を隠蔽するとともに、後述のウレタン硬化系フィラー(C)の塗膜又はエポキシ系下塗り材(E)の塗膜と、上記透水防止剤(A)により処理されたコンクリート面との密着性を確保しつつ、コンクリート面に発生する微細なヒビワレにも追従できる塗膜を形成させることを目的として塗装されるものであり、モノエポキシ化合物(B−1)及び1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(B−2)を含有する。
【0026】
モノエポキシ化合物(B−1)としては、1分子中にエポキシ基を1個有する化合物であって、その具体例としては、例えば、ピバル酸グリシジルエステル、ヘキサン酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、2−エチルヘキサン酸グリシジルエステル、イソノナン酸グリシジルエステル、デカン酸グリシジルエステル、ウンデカン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、ミリスチン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、カージュラーE10(ジャパンエポキシレジン社製、商品名、ネオデカン酸モノグリシジルエステル)、グリデックスN10(エクソン社製、商品名、ネオデカン酸モノグリシジルエステル)などのカルボン酸グリシジルエステル;ブチルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、デシルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル;スチレンオキシド、AOEX24(ダイセル化学工業製、商品名、α−オレフィンモノエポキシド混合物)などのα−オレフィンモノエポキシド等を挙げることができ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組合せて使用することができる。上記モノエポキシ化合物(B−1)の中でも、特に、炭素数4以上、好ましくは炭素数6〜20の鎖状もしくは環状の炭化水素基を有するモノエポキシ化合物が好適である。
【0027】
上記モノエポキシ化合物(B−1)を使用することにより、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)により形成される塗膜が適度に柔軟性を有するようになり、本発明の塗装方法により形成される塗膜は、コンクリート面に発生するヒビワレに対して追従することが可能となり、耐フクレ性にも優れたものとなる。
【0028】
上記1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂(B−2)としては、例えば、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、これらのエポキシ樹脂をアルキルフェノール及び/又は脂肪酸によって変性してなる変性エポキシ樹脂;アルキルジフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂とエピクロルヒドリンとを反応させてなるエポキシ基導入アルキルフェノール又はアルキルフェノールノボラック型樹脂、これらエポキシ樹脂を変性してなる変性エポキシ樹脂などを挙げることができる。
【0029】
上記エポキシ樹脂(B−2)としては、得られる塗膜の被塗面に対する密着性、造膜性、強靭性などの観点から、液状のもの、特に液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂が好適である。
【0030】
上記溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)において、上記モノエポキシ化合物(B−1)及びエポキシ樹脂(B−2)の使用割合は、コンクリート面に発生する微細なヒビワレに対する追従性や形成塗膜の耐フクレ性などの観点から、モノエポキシ化合物/エポキシ樹
脂質量比で、通常1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、さらに好ましくは10/90〜45/55の範囲内とすることが適している。
【0031】
上記溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)には、必要に応じて、着色顔料、体質顔料、防錆顔料などの顔料類を適宜配合することができる。溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)中の顔料全体の顔料体積濃度が20〜80%、好ましくは60%を超えて80%以下の範囲内とすることが望ましく、それによって、該下地調整剤(B)による塗膜の研磨性が良好となり、また、本塗装法により得られる塗膜の最終的な仕上がり外観を鏡面仕上げとすることができる。
【0032】
本明細書において、「顔料体積濃度」は、塗料中の全樹脂分と全顔料との合計固形分に占める当該顔料分の体積割合である。
【0033】
本明細書において、顔料の体積を算出する際のもとになる顔料の比重は、「塗料原料便覧第6版」(社団法人日本塗料工業会)によるものであり、また、樹脂固形分の比重は1と近似するものとする。
【0034】
上記溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)は、さらに、必要に応じて、キシレン樹脂、トルエン樹脂、ケトン樹脂、クマロン樹脂、石油樹脂などから選ばれる樹脂;有機溶剤、反応性希釈剤、脱水剤、増粘剤、樹脂微粒子、可塑剤、分散剤、脱水剤などの添加剤を含有することができる。
【0035】
本発明において上記溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)は、その使用直前に、アミン系硬化剤を添加配合することができる。
【0036】
上記アミン硬化剤としては、それ自体既知のもの、例えば、ポリアミン化合物を使用することができ、好適には常温で液状であるものが望ましい。
【0037】
上記ポリアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ペンタエチレンヘキサミンなどの脂肪族ポリアミン類;メタキシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、フェニレンジアミンなどの芳香族ポリアミン類;1,3―ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミンなどの脂環族ポリアミン類、上記ポリアミン類とダイマー酸とを反応させてなるポリアミドアミン類等が挙げられる。
【0038】
上記アミン系硬化剤としては特に制限されるものではないが、その成分の一部としてポリアミドアミン類を含むものが好適である。
【0039】
上記アミン系硬化剤の配合割合は、エポキシ樹脂(B−2)中のエポキシ基1当量に対して、アミン系硬化剤中の活性水素が0.5〜3.0当量、好ましくは0.8〜1.5当量の範囲内になるような割合で用いることが、塗膜の硬化性、ひび割れ追従性などの観点から望ましい。
【0040】
溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の塗装は、コテ塗り、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、各種コーター塗装などの一般的な方法を用いて塗装することができる。その塗布量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、通常300〜600g/m、好ましくは400〜580g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。形成される溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)のウエット塗膜は、通常、常温で放置するか風乾し、或いは約40〜80℃の温度に加熱することにより乾燥することができる。
【0041】
乾燥された溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の塗面は研磨される。この研磨は、エポキシ系下地調整剤(B)による塗面に生じている凹凸を隠蔽し、本塗装方法により得られる最終的な塗膜の仕上がり外観が鏡面仕上げとなるように予め行うものであり、例えば、サンドペーパーなどを用いて手動で又は連続回転式、リバース運動式、振動式などの機械で行うことができる。サンドペーパーとしては、耐水型及びドライ型のいずれも使用可能であり、耐水型のサンドペーパーを使用する場合には、サンドペーパーに必要に応じて水などをつけて研磨してもよい。サンドペーパーの目の細かさは特に制限されないが、通常♯80〜120番手のものを使用することができる。なお、サンドペーパーの目の細かさを示す「番手」は、そのサンドペーパーに使用されている研磨粒子を選別するために使用された篩の目が1インチ四方に有する穴の数であり、数が小さい程サンドペーパーの目が粗いことを意味する。
【0042】
研磨に用いる研磨剤及び研磨時間は、塗膜面の状態などに応じて、それ自体既知の手段を適宜選択して使用することができる。
【0043】
本塗装法では、前記溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)を塗装した後、後述するウレタン硬化系フィラー(C)を塗装する前に、必要に応じて、エポキシ系下塗り材(E)を塗装することができる。
【0044】
上記エポキシ系下塗り材(E)としては、溶剤型エポキシ系下地調整材(B)以外のそれ自体既知のエポキシ樹脂系塗料を使用することができ、例えば、エポキシ系プライマー(E−1)、エポキシ系パテ(E−2)などを挙げることができる。
【0045】
エポキシ系プライマー(E−1)は、層間付着性向上を目的として塗装されるものであり、通常、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含んでなるものが使用される。
【0046】
エポキシ系パテ(E−2)は、下地塗膜にできている小さなピンホールに充填され、塗面に平滑性をもたせるために塗装されるものであり、エポキシ樹脂及びアミン系硬化剤を含んでなるものが使用される。
【0047】
エポキシ系プライマー(E−1)及びエポキシ系パテ(E−2)は、一般に、厳密に区別されるものではないが、例えば、エポキシ系プライマー(E−1)は、顔料体積濃度が45%未満のものであり、エポキシ系パテ(E−2)は、顔料体積濃度が45%以上のものとすることができる。
【0048】
本塗装法において、上記エポキシ系下塗り材(E)による下塗り層は、エポキシ系プライマー(E−1)及びエポキシ系パテ(E−2)の両者からなるものであることが望ましく、具体的には、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)による研磨塗膜面上に、エポキシ系プライマー(E−1)を塗装し、乾燥した後、エポキシ系パテ(E−2)を塗装し、乾燥した後、研磨することにより形成せしめることができる。
【0049】
上記エポキシ系プライマー(E−1)の塗装は、例えば、コテ塗り、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、各種コーター塗装などの一般的な塗装方法を用いて行うことができる。その塗布量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、通常50〜250g/m、好ましくは70〜150g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。
【0050】
上記エポキシ系パテ(E−2)の塗装は、例えば、コテ、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装、各種コーター塗装などの一般的な塗装方法を用いて行うことができる。その
塗布量は、特に限定されるものではないが、固形分換算で、通常150〜300g/m、好ましくは170〜270g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。
【0051】
本発明において、エポキシ系パテ(E−2)による層を設けた場合、該塗面は乾燥した後、必要に応じて研磨される。この研磨の目的は、上記エポキシ系パテ(E2)により形成された塗面に生じている凹凸を隠蔽し、後述のウレタン硬化系フィラー(C)による塗膜が鏡面仕上げとなるようにすることである。その研磨方法としては、上記エポキシ系パテ(E−2)による塗面の状態に応じて前述のものから適宜選択することができるが、通常、♯120〜240番手のサンドペーパーを使用することが好ましい。
【0052】
工程(3):
本塗装法によれば、工程(2)で形成された溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の研磨塗膜上或いはエポキシ系下塗り材(E)の乾燥塗膜又は研磨塗膜上に、ウレタン硬化系フィラー(C)が塗装される。
【0053】
ウレタン硬化系フィラー(C)は、下地塗膜の研磨傷等を隠蔽し鏡面仕上げとするため、さらには本塗装法により形成される塗膜がコンクリート板の表面に発生する微細なひび割れに追従することができるように塗装されるものであり、基体樹脂としての水酸基含有樹脂(C−1)と硬化剤としてのポリイソシアネート化合物(C−2)を含有するものである。
【0054】
上記水酸基含有樹脂(C−1)としては、水酸基含有アクリル樹脂が好ましく、特に30〜85mgKOH/g、好ましくは40〜70mgKOH/gの範囲内の水酸基価、1,000〜50,000、好ましくは3,000〜20,000の範囲内の重量平均分子量を有するアクリル樹脂が塗膜性能等の点から好適である。また、該アクリル樹脂は20〜70℃、特に30〜65℃の範囲内のガラス転移温度(Tg)を有することが研磨作業性等の点から望ましい。
【0055】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した試料の重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。
【0056】
また、本明細書において、アクリル樹脂のガラス転移温度(℃)は、下記式によって算出することができる。
【0057】
1/Tg(゜K)=(W1/T1)+(W2/T2)+・・
Tg(℃)=Tg(゜K)−273
各式中、
W1、W2、・・は共重合に使用されたモノマーのそれぞれの質量%を表し、
T1、T2、・・はそれぞれのモノマーのホモポリマ−のTg(゜K)を表わす。なお
、T1、T2、・・はPolymer Hand Book(Second Edition, J. Brandup・E. H. Immer
gut 編)III-139〜179頁による値である。
【0058】
アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、水酸基を有するアクリルモノマーを必須とし、他のアクリルモノマー及び/又はビニルモノマーを用い、これらのモノマーを通常のラジカル重合法、例えば溶液重合法等によって重合させることにより得ることができる。
【0059】
水酸基を有するアクリルモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロ
キシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルにε−カプロラクトン、γ−ブチロラクトン等のラクトン類が1〜10モル付加したラクトン変性α、β−エチレン性不飽和モノマーなどを挙げることができる。
【0060】
また、他のアクリルモノマー及び又はビニルモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0061】
上記ポリイソシアネート化合物(C−2)は、上記水酸基含有樹脂(C−1)に対する硬化剤として作用するものであり、イソシアネート基を1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個有するポリイソシアネート化合物である。その具体例としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メタ−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、リジンジイソシアネ−ト等のポリイソシアネート化合物;またはこれらポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物;あるいは上記の如きポリイソシアネート同志の環化重合体;更にはイソシアネート・ビウレット体等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上組み合わせて使用することができる。
【0062】
ウレタン硬化系フィラー(C)において、水酸基含有樹脂(C−1)とポリイソシアネート化合物(C−2)とは、水酸基含有樹脂(C−1)中の水酸基1当量に対し、ポリイソシアネート化合物(C−2)中のイソシアネート基が通常2〜4当量、好ましくは2.2〜3.5当量の範囲内となるように配合するのが塗膜の硬化性や乾燥性などの点から好適である。
【0063】
ウレタン硬化系フィラー(C)は顔料を含むことができ、該顔料としては、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム、カオリン、炭酸カルシウム、クレー、シリカ、石英、ガラスなどの体質顔料;チタン白、ベンガラ、カーボンブラック、鉄黒などの着色顔料挙げることができる。顔料の含有量は、フィラー(C)中の樹脂固形分100質量部あたり、通常100〜500質量部、好ましくは150〜350質量部の範囲内が研磨作業性や上塗り塗装後の仕上り性などの点から好適である。
【0064】
また、ウレタン硬化系フィラー(C)は樹脂微粒子を含有することができる。かかる樹脂微粒子としては、それ自体既知のポリマービーズなどの樹脂粒子や前記モノマー類の重合物を微細に粉砕したもの、さらにゲル化重合体微粒子(例えば、特開昭51−126287号公報、特開昭53−133233号公報、特開昭53−133236号公報、特開昭56−76447号公報、特開昭58−129065号公報などの文献に記載のもの)などが挙げられ、特に、ジビニルモノマーとその他のモノマーとのモノマー混合物をアリル基含有反応性乳化剤の存在下で乳化重合して得られるゲル化重合体微粒子(例えば、特開平3−66770号公報参照)が、上記樹脂及び顔料に対する分散性に優れるので好適である。
【0065】
該ゲル化重合体微粒子の製造に用いられるジビニルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートなどが挙げられ、その他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、水酸基含有モノマー、スチレンなどのそれ自体既知の重合性不飽和モノマーが挙げられる
。また、乳化重合時の重合開始剤としては水溶性アゾアミド化合物などを用いることができる。
【0066】
上記樹脂微粒子の平均粒子径は、特に制限なく適宜選択することができるが、通常30μm以下、好ましくは0.05〜10μmの範囲内が適当である。平均粒子径の調整は、それ自体既知の方法で行うことができ、例えば、上記ゲル化重合体微粒子の場合には、反応性乳化剤の種類や量を調整することにより行うことができる。
【0067】
本明細書において、平均粒子径は、ベックマン・コールター社製のサブミクロン粒子アナライザーを用いて光散乱法により測定することができる。
【0068】
上記樹脂微粒子は、上記顔料の質量に対して固形分で、通常0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%の範囲内となるように配合することが塗料の粘度や貯蔵安定性などの点から好適である。
【0069】
また、ウレタン硬化系フィラー(C)は硬化触媒を含有することができる。該硬化触媒としては、それ自体既知のウレタン化触媒が特に制限なく適用でき、例えば、硝酸ビスマス、オレイン酸鉛、オクチル酸錫、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ビス(アセチルアセトネート)、四塩化チタン、二塩化ジブチルチタン、テトラブチルチタネート、三塩化鉄、オクチル酸亜鉛などの金属化合物や第3級アミンなどが挙げられる。該硬化触媒の含有量は、フィラー(C)中の樹脂固形分に対して、通常0.1〜10質量%、好ましくは0.2〜5質量%の範囲内が硬化性や塗装粘度などの点から適当である。
【0070】
ウレタン硬化系フィラー(C)には、さらに必要に応じて、有機溶剤、繊維素誘導体、非水分散樹脂、またジメチルポリシロキサン共重合物等のレベリング剤などの塗料用添加剤を適宜配合することができる。
【0071】
上記ウレタン硬化系フィラー(C)の塗装方法としては、それ自体既知の方法を特に制限なく採用することができ、具体的には、例えば、コテ塗り、スプレー塗装、ローラー塗装、刷毛塗り等が挙げられる。ウレタン硬化系フィラー(C)の塗布量は、コンクリート板の状態や下地塗膜、塗装環境などによって適宜設定することができ、固形分換算で、通常100〜600g/m、特に180〜400g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。形成されるウレタン硬化系フィラー(C)のウエット塗膜は、通常、常温で放置するか風乾し、或いは約40〜80℃の温度に加熱することにより乾燥することができる。
【0072】
ウレタン硬化系フィラー(C)の乾燥塗膜は、下地の研磨傷による微小な凹凸を隠蔽するために研磨を行い、ほぼ塗面を平滑化してから、上塗り塗料(D)が塗装される。
【0073】
その研磨方法としては、例えば、エポキシ系下地調整剤(B)の塗面の研磨について前述のものから適宜選択することができるが、通常、♯320〜400番手のサンドペーパーを使用することが好ましい。
【0074】
研磨に用いる研磨剤及び研磨時間は、塗膜面の状態などに応じて、それ自体既知の手段を適宜選択して使用することができる。
【0075】
工程(4):
工程(3)で形成されたウレタン硬化系フィラー(C)の研磨塗膜上に塗装される上塗り塗料(D)としては、特に制限はなく、それ自体既知の有機溶剤型或いはは水性の上塗り塗料を使用することができ、例えば、フッ素樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系
、シリコン樹脂系の塗料が挙げられ、特に、高耐久性や仕上り性、耐汚染性の観点から、フッ素樹脂系の上塗り塗料が好適である。
【0076】
上塗り塗料(D)には、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、表面調整剤、低汚染化剤、防藻剤、防黴剤などを適宜配合することができる。
【0077】
上塗り塗料(D)の塗装は、それ自体既知の方法を用いて行うことができ、具体的には、例えば、刷毛塗り、スプレー塗り、ローラー塗り、コテ塗り、各種コーター塗装などの一般的な塗装方法により行うことができる。その塗布量は、特に限定されるものではなく、使用する塗料によって適宜選択することができるが、固形分換算で、通常50〜400g/m、特に100〜300g/mの範囲内が適当であり、1回もしくは数回に分けて塗装することができる。形成される上塗り塗料(D)のウエット塗膜は、通常、常温で放置するか風乾し、或いは約40〜80℃の温度に加熱することにより乾燥することができる。
【実施例】
【0078】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、下記例中の「部」及び「%」はそれぞれ「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0079】
透水防止剤(A)
「アクアプリズム下塗り」(関西ペイント社製、商品名、固形分20質量%、塗装粘度3cp/25℃、アルキルトリアルコキシシラン系化合物のキシレン溶液)を透水防止剤(A−1)とし、また、透水防止剤(A−2)として、ヘキシルトリメトキシシラン30部、乳化剤0.2部及び有機錫触媒0.05部を水中に溶解した固形分30%の水分散液を用いた。
【0080】
溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の製造
製造例1
エポキシ樹脂組成物(EP-28P(注1)/カージュラーE10(注2)=84/16)19部にチタン白1.7部、炭酸カルシウム62.5部、硫酸バリウム10.5部、エチレングリコールブチルエーテル1.1部及びトルエン2.1部を順次配合し、混合・攪拌し、20分間分散処理をおこない主剤を得た。該主剤100部に、硬化剤として「VERSAMID 125」(コグニス ジャパン社製、商品名、ポリアミドアミン)16.6部を使用直前に混合し、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)を得た。該下地調整剤(B−1)の顔料体積濃度は67.5%であった。
【0081】
(注1) EP−28P: ジャパンエポキシレジン社製、商品名、液状ビスフェノール
型エポキシ樹脂。
(注2) カージュラーE10: ジャパンエポキシレジン社製、商品名、ネオデカン酸
モノグリシジルエステル。
【0082】
製造例2
上記製造例1で得られた主剤100部に、硬化剤として「VERSAMID125」50部及び「フジキュアー5250」(富士化成工業社製、商品名、変性脂肪族ポリアミン)50部を混合・攪拌したもの16.6部を使用直前に混合し、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−2)を得た。
【0083】
製造例3
上記製造例1において、エポキシ樹脂組成物(EP-28P/カージュラーE10=84
/16)19部をエポキシ樹脂組成物(EP-28P/カージュラーE10=100/0)19部とする以外は、製造例1と同様にして、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−3)を得た。
【0084】
ウレタン硬化系フィラー(C)のためのアクリル樹脂溶液の製造
製造例4
反応器に温度計、サ−モスタット、攪拌機、還流冷却器及び滴下ポンプを備え付け、それにキシレン42部及び酢酸ブチル10部を仕込み、攪拌しながら110℃まで昇温し、スチレン10部、メチルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート5部、i−ブチルメタクリレート60部、メタクリル酸1部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート14部及びアゾビスイソブチロニトリル2.3部からなるモノマーと重合開始剤の混合物を110℃以下で滴下用ポンプを利用して3時間かけて一定速度で滴下した。滴下終了後60分間110℃に保ち、攪拌を続けた。その後、追加触媒としてアゾビスイソブチロニトリル0.5部を酢酸ブチル7部に溶解させたものを60分間かけて一定速度で滴下した。そして滴下終了後60分間110℃に保持し、反応を終了した。得られた水酸基含有アクリル樹脂溶液は、不揮発分55%、ガードナー粘度Xの均一な透明溶液であった。また、得られたアクリル樹脂の重量平均分子量は18000、水酸基価は60mgKOH/g、Tgは60℃であった。
【0085】
ウレタン硬化系フィラー(C)のための樹脂微粒子の製造
製造例5
攪拌装置、温度計、冷却管及び加熱マントルを備えた1リットルフラスコに、脱イオン水3547.5部と「ラテムルS−120A」(花王社製、商品名、スルホコハク酸系アリル基含有アニオン性反応性乳化剤、50%水溶液)40部を加えて攪拌しながら90℃まで昇温した。次いで、この中に「VA−086」(和光純薬工業社製、商品名、水溶性アゾアミド重合開始剤)12.5部を脱イオン水500部に溶解した水溶液の20%を加えた。15分後にスチレン300部、メチルメタクリレ−ト400部、n−ブチルアクリレ−ト200部及び1,6−ヘキサンジオールジアクリレ−ト100部からなるモノマー混合物の5%を加え、30分間攪拌した。その後、さらに残りのモノマー混合物及び重合開始剤水溶液の滴下を開始し、モノマー混合物の滴下は3時間で、重合開始剤水溶液の滴下は3.5時間かけてそれぞれ行い、その間90℃に保持した。重合開始剤水溶液の滴下終了後、さらに30分間90℃に保持してから室温に冷却し、濾布を用いて取り出し、固形分20%の水性ゲル化微粒子重合体水分散液を得た。その平均粒子径は72nmであった。これをステンレスパット上で乾燥させ樹脂微粒子Gを得た。
【0086】
ウレタン硬化系フィラー(C)の製造
製造例6
上記にて製造した固形分55%のアクリル樹脂溶液25部に、上記樹脂微粒子G 0.3部、キシレン22部、第3級アミノ基含有顔料分散剤2.6部、チタン白10部、タルク15部、硫酸バリウム10部、炭酸カルシウム15部及びジブチル錫ジラウレート0.1部を順次添加し混合・攪拌し、30分間分散処理して主剤を得た。該主剤100部に、硬化剤として「デュラネートTPA90EK」(旭化成社製、商品名、ポリイソシアネート化合物)40部を使用直前に混合し、ウレタン硬化系フィラー(C)を得た。
【0087】
上塗り塗料(D)
関西ペイント社製「セラフッソ上塗り」(商品名、2液型セラミック変性フッ素樹脂系塗料)を使用した。
【0088】
エポキシ系プライマー(E1)
関西ペイント社製「エポマリンGX」(商品名、顔料体積濃度41%、固形分濃度67
%のエポキシ樹脂塗料、ベース/硬化剤質量比=9/1)を使用した。
【0089】
エポキシ系パテ(E2)
関西ペイント社製「アレスエポパテ」(商品名顔料体積濃度58%、固形分濃度79%のエポキシ樹脂塗料、ベース/硬化剤質量比=2/1)を使用した。
【0090】
塗装
実施例1
コンクリート平板上に、透水防止剤(A−1)を塗布量が約0.16kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)で16時間乾燥させた。得られた塗膜上に、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)を塗布量が約0.56kg/m(固形分換算)となるようにコテで塗装し、室温(23℃)にて18時間乾燥後、#80サンドペーパーを用いて研磨した。その塗膜上に、エポキシ系プライマー(E1)をシンナーで適宜希釈して塗布量が約0.10kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)にて16時間乾燥後、#120サンドペーパーを用いて研磨した後、さらに、得られた塗膜上に、エポキシ系パテ(E2)を塗布量が約0.25kg/m(固形分換算)となるようにコテで塗装し、室温(23℃)にて16時間乾燥後に#120サンドペーパーを用いて研磨した。さらに、得られた塗膜上に、ウレタン硬化系フィラー(C)をシンナーで適宜希釈して塗布量が約0.20kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)にて6時間乾燥後に、該ウレタン硬化系フィラー(C)を用いて同一塗布量となるよう2回目の塗装を行い、室温(23℃)にて6時間乾燥させ、#320サンドペーパーを用いて研磨し、平滑な塗膜面にした。
【0091】
得られた平滑塗膜上に、上塗り塗料(D)をシンナーで適宜希釈して塗布量約0.13kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(20℃)にて24時間乾燥後に、同上塗り塗料を用いて同一塗布量となるよう2回目の塗装を行い、室温(23℃)にて7日間乾燥させて試験塗板を作製した。
【0092】
実施例2
実施例1において、透水防止剤(A−1)の代わりに透水防止剤(A−2)を用いる以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0093】
実施例3
コンクリート平板上に、透水防止剤(A−1)を塗布量が約0.16kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)で16時間乾燥させた。得られた塗膜上に、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−2)を塗布量が約0.56kg/m(固形分換算)となるようにコテで塗装し、室温(23℃)にて18時間乾燥後、#80サンドペーパーを用いて研磨し、その塗膜上に、エポキシ系プライマー(E1)をシンナーで適宜希釈して塗布量が約0.07kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)にて16時間乾燥後、#120サンドペーパーを用いて研磨した後、さらに、得られた塗膜上に、エポキシ系パテ(E2)を塗布量が約0.25kg/m(固形分換算)となるようにコテで塗装し、室温(23℃)にて16時間乾燥後に#120サンドペーパーを用いて研磨した。さらに、得られた塗膜上に、ウレタン硬化系フィラー(C)をシンナーで適宜希釈して塗布量約0.25kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(23℃)にて6時間乾燥させ、#320サンドペーパーを用いて研磨し、平滑な塗膜面にした。
【0094】
得られた平滑塗膜上に、上塗り塗料(D)をシンナーで適宜希釈して塗布量が約0.13kg/m(固形分換算)となるようにエアスプレー塗装し、室温(20℃)にて24時間乾燥後、同上塗り塗料を用いて同一塗布量となるよう2回目の塗装を行い、室温(2
3℃)にて7日間乾燥させて試験塗板を作製した。
【0095】
実施例4
実施例3において、透水防止剤(A−1)の代わりに透水防止剤(A−2)を用いる以外は、実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0096】
実施例5
実施例1において、エポキシ系パテ(E2)による塗装工程を除く以外は、上記実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0097】
実施例6
実施例1において、エポキシ系プライマー(E1)による塗装工程とエポキシ系パテ(E2)による塗装工程を除く以外は、上記実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0098】
実施例7
実施例3において、エポキシ系パテ(E2)による塗装工程を除く以外は、上記実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0099】
実施例8
実施例3において、エポキシ系プライマー(E1)による塗装工程とエポキシ系パテ(E2)による塗装工程を除く以外は、上記実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0100】
比較例1
実施例1において、透水防止剤(A−1)による塗装工程を除く以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0101】
比較例2
実施例1において、ウレタン硬化系フィラー(C)による塗装工程を除く以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0102】
比較例3
実施例3において、透水防止剤(A−1)による塗装工程を除く以外は、実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0103】
比較例4
実施例3において、ウレタン硬化系フィラー(C)による塗装工程を除く以外は、実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0104】
比較例5
実施例1において、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)による塗装工程を除く以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0105】
比較例6
実施例1において、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)に代えて溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−3)を用いる以外は、実施例1と同様にして試験塗板を作製した。
【0106】
比較例7
実施例3において、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)による塗装工程を除く以外は、実施例3と同様にして試験塗板を作製した。
【0107】
比較例8
実施例3において、溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−1)に代えて溶剤型エポキシ系下地調整剤(B−3)を用いる以外は、実施例3と同様にして試験塗板を作成した。
【0108】
試験方法
(*1) 仕上り性: 各試験塗板の塗膜面を観察し、次の基準にて評価した。
○:鏡面状に良好な平滑性を有する、
△:鏡面状の平滑性を有するが若干肌不良、
×:平滑性にかなり劣る。
【0109】
(*2) 温冷サイクル試験: 各試験塗板をJIS A―6909「温冷繰り返し作用による抵抗性」の試験方法に準じて、塗装仕上げ板を23±2℃の水中に18時間浸漬後、直ちに−20±2℃の恒温槽で3時間冷却し、次いで50±2℃の恒温槽で3時間加熱する操作を1サイクルとして10サイクル試験に供し、その後の塗面状態を目視にて評価した。
○:ハガレ、フクレが全くなく、初期と比較して付着力の低下が無い、
△:ハガレ、フクレは全くないが、初期と比較して付着力がやや低い、
×:ハガレ、フクレが発生し、初期と比較して付着力が低い。
【0110】
(*3) ゼロスパン伸び試験
上記実施例及び比較例において、被塗面をフレキシブル板の裏面の中央部に幅が1mm、深さ3mmの溝をつけた板とする以外は、上記実施例及び比較例と同様の手順にて試験板を作製した。その後、フレキシブル板の裏面の中央部の溝を塗膜を傷つけないように指で加圧し、フレキシブル板のみを割ったものを試験体とし、この試験体をオートグラフAG−1型(島津製作所)に取り付け、23℃雰囲気で引張速度5mm/分の条件で引張試験を行い、次の基準で評価した。
○:伸び0.2mm以上
△:伸び0.1mm以上0.2mm未満
×:伸び0.1mm未満。
【0111】
試験結果を下記表1に示す。
【0112】
【表1】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) コンクリート面に、加水分解性の官能基を有するシラン化合物を含有する透水防
止剤(A)を塗装し乾燥する工程、
(2) 工程(1)で得られた透水防止剤(A)の乾燥塗膜上に、モノエポキシ化合物及
び1分子中にエポキシ基を2個以上有するエポキシ樹脂を含有する溶剤型エポキシ系
下地調整剤(B)を塗装し乾燥した後、研磨する工程、
(3) 工程(2)で得られた溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の研磨塗膜上に、水酸
基含有アクリル樹脂、顔料、樹脂微粒子、ポリイソシアネート化合物及び硬化触媒を
含有するウレタン硬化系フィラー(C)を塗装し乾燥した後、研磨する工程、並びに(4) 工程(3)で得られたウレタン硬化系フィラー(C)の研磨塗膜上に、上塗り塗
料(D)を塗装し乾燥する工程、
を含んでなることを特徴とするコンクリート面の塗装方法。
【請求項2】
工程(2)で得られた溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の研磨塗膜上に、エポキシ系下塗り材(E)を塗装し乾燥する工程をさらに含んでなる請求項1に記載の塗装方法。
【請求項3】
溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)の顔料体積濃度が20〜80%の範囲内にある請求項1または2に記載の塗装方法。
【請求項4】
溶剤型エポキシ系下地調整剤(B)がアミン系硬化剤を含有するものであり、該アミン系硬化剤がその成分の一部としてポリアミドアミン類を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法によって得られる塗装物品。

【公開番号】特開2008−88018(P2008−88018A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271094(P2006−271094)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】