説明

コンタクトピン用付着物除去具

【課題】コンタクトピン用付着物除去具の粘着層に適度な柔軟性を耐久性とを付与し、コンタクトピンからの付着物の除去性が良好であると共に繰り返し使用に耐えることができるコンタクトピン用付着物除去具を提供する。
【解決手段】基材2の表面に粘着層3が設けられている。この粘着層3とコンタクトピン4を接触させることによりコンタクトピン4の付着物8を除去する。前記粘着層3が、基材2の表面に直接接触された第一の粘着層3aと、前記第一の粘着層3aに積層して設けられた第二の粘着層3bとから形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導通検査機器のコンタクトピンに付着した付着物を除去するためのコンタクトピン用付着物除去具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種電子部品が搭載された配線板や半導体装置等の電子機器の導通性検査のためには、各種テスター等の導通検査機器が用いられている。このような導通検査機器としては、配線板等における複数の電極にそれぞれコンタクトピン(プローブピン)を接触させて電極間の導通を検査するものがある。
【0003】
このような導通検査機器を用いて配線板等の導通検査を繰り返し行うと、コンタクトピンの表面にゴミや異物等が付着していき、コンタクトピンの導通性が低下して正確な導通検査ができなくなってくる。
【0004】
そこで、このような導通検査機器におけるコンタクトピンを定期的に粘着性の樹脂層(粘着層)等に押しつけるなどして、コンタクトピンに付着した付着物を除去することが行われている(特許文献1,2参照)。
【0005】
このような粘着層にてコンタクトピンの付着物の除去を行うにあたっては、粘着層を適宜の基材の上に設けたコンタクトピン用付着物除去具(以下、除去具という)が用いられる。
【特許文献1】特開2002−214271号公報
【特許文献2】特開2005−091213号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
実際に上記のような除去具を用いてコンタクトピンの付着物の除去を繰り返し行う場合には、粘着層にコンタクトピンを押し付けた際に粘着層がある程度変形してコンタクトピンの少なくとも先端部分が埋まることよりその表面の付着物を粘着層と接触させる必要があり、そのため適度な柔軟性を有する必要がある。また、除去具を用いて付着物の除去を繰り返し行うためには、粘着層に繰り返しコンタクトピンが押し付けられても損傷が生じないように、適度な耐久性が求められる。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みて為されたものであり、コンタクトピン用付着物除去具の粘着層に適度な柔軟性と耐久性とを付与し、コンタクトピンからの付着物の除去性が良好であると共に繰り返し使用に耐えることができるコンタクトピン用付着物除去具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係るコンタクトピン用付着物除去具は、基材2の表面に粘着層3が設けられ、この粘着層3とコンタクトピン4を接触させることによりコンタクトピン4の付着物8を除去する付着物除去具1であって、前記粘着層3が、基材2の表面に直接接触された第一の粘着層3aと、前記第一の粘着層3aに積層して設けられた第二の粘着層3bとから形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1において、上記第一の粘着層3aが、上記第二の粘着層3bよりも粘着性及び柔軟性が高いものであることを特徴とする。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1において、上記第二の粘着層3bが、上記第一の粘着層3aよりも粘着性及び柔軟性が高いものであることを特徴とする。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、上記第二の粘着層3bの厚みが、上記第一の粘着層3aの厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0012】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか一項において、上記第一の粘着層3aの厚みが、上記第二の粘着層3bの厚みよりも厚いことを特徴とする。
【0013】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれかにおいて、上記粘着層3の上層に溶剤が貯留された溶剤層5が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘着層を第一の粘着層と第二の粘着層にて形成することにより粘着層全体の柔軟性を向上して粘着層によるコンタクトピンからの付着物の除去性能を向上することができると共にコンタクトピンを粘着層に押し付ける際に粘着層に加わる衝撃を緩和してコンタクトピン用付着物除去具の耐久性を向上することができるものである。
【0015】
特に、第一の粘着層が第二の粘着層よりも柔軟性及び接着性が高いものであると、第一の粘着層が第二の粘着層と基材との間に介在することによりこの第一の粘着層を介して第二の粘着層と基材とが高い接合強度で接合されて、基材と粘着層との間の高い密着性が確保され、粘着層の剥離を防止して耐久性を向上することができる。また、柔軟性の高い第一の粘着層によって粘着層全体の柔軟性が確保され、コンタクトピンを粘着層に押し付けた場合に粘着層がコンタクトピンの形状に追随して容易に変形し、このコンタクトピンを粘着層から引き離すことによりコンタクトピンの付着物を容易に除去することができる。また、粘着層の表層は柔軟性の低い第二の粘着層にて形成されていることから、コンタクトピンを粘着層の表面に繰り返し押し付けた場合の衝撃が基材まで伝わりにくくなって基材の破損が防止されると共に、このようなコンタクトピンの押し付けを行う場合や粘着層の表面を洗浄したりする場合における粘着層の表面の破損の発生が抑制され、この点でも高い耐久性が発揮されることとなる。
【0016】
また、第二の粘着層が第一の粘着層よりも柔軟性及び接着性が高いものである場合も、粘着層全体の柔軟性が確保され、コンタクトピンを粘着層に押し付けた場合に粘着層がコンタクトピンの形状に追随して容易に変形し、このコンタクトピンを粘着層から引き離すことによりコンタクトピンの付着物を容易に除去することができるものであり、また、柔軟性の低い第一の粘着層によって、コンタクトピンを粘着層の表面に繰り返し押し付けた場合の衝撃が基材まで伝わりにくくなって基材の破損が防止されるものである。
【0017】
また、第一の粘着層の厚みが第二の粘着層の厚みよりも厚い場合には、主として厚みの厚い第一の粘着層によって粘着層全体の柔軟性を調整することができると共に第二の粘着層によって粘着層の表面の粘着性を調整することができるものである。
【0018】
また、第二の粘着層の厚みが第一の粘着層の厚みよりも厚い場合には、主として厚みの厚い第二の粘着層によって粘着層全体の柔軟性を調整することができると共にこの第二の粘着層によって粘着層の表面の粘着性を調整することができるものである。
【0019】
また、溶液層を設けると、粘着層にコンタクトピンを接触させることでこのコンタクトピンの表面の付着物を粘着部に付着させて除去することができ、且つコンタクトピンにフラックスの膜が付着している場合もこのコンタクトピンが予め溶剤層5に触れることから前記フラックスを溶剤層5に溶解させて除去し、或いはフラックスを前記溶剤層5の溶剤により膨潤させてコンタクトピンから除去しやすい状態にしてから粘着層にて除去することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0021】
まず、第一の実施形態の例について説明する。
【0022】
コンタクトピン用付着物除去具1(以下、「除去具1」と略称する)は、図1に示すように、平板状の基材2の一面に、粘着性の樹脂からなる粘着層3を形成したものである。
【0023】
上記基材2としては種々の材質にて形成されたものを用いることができるが、塑性変形しにくい材質にて形成されたものを用いることが好ましい。例えばソーダライムガラス、ホウケイ酸系ガラス、石英ガラスなどの無機ガラス類;インバー合金、ステンレススチール、チタン、アルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属;アルミナ、ジルコニア、窒化シリコンなどのセラミックス;ポリカーボネートのような(硬質)プラスチック;ガラス繊維補強樹脂のような繊維強化プラスチック(FRP)等の材質から形成された基材2が好適に用いられる。この基材2としては、表面が平坦な平板状のものを用いることができる。
【0024】
また、粘着層3は、適宜の接着剤形成用の樹脂組成物にて形成することができる。粘着層3を形成するための樹脂組成物としては、特に限定されないが、例えば適宜の熱硬化性や活性エネルギー線硬化性(紫外線硬化性、電子線硬化性等)の樹脂組成物を成形することで形成することができる。このとき、例えばウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルファイド樹脂、シリコーン樹脂等を含む樹脂組成物を用いて粘着層3を形成することができる。これらの樹脂組成物のうち、特にシリコーン樹脂系の樹脂組成物を用いる場合には、粘着層3の耐熱性を向上することができる。
【0025】
上記粘着層3は、基材2の表面に直接接触された第一の粘着層3aと、前記第一の粘着層3aに積層して設けられた第二の粘着層3bとから形成する。第一の粘着層3aは、第二の粘着層3bよりも粘着性及び柔軟性が高くなるように形成することができるが、第二の粘着層3bを第一の粘着層3aよりも粘着性及び柔軟性が高くなるように形成しても良い。このとき粘着層3の表面では第一の粘着層3aは第二の粘着層3bに隠蔽されて、第二の粘着層3bのみが露出するようになっている。
【0026】
このように粘着層3を第一の粘着層3a及び第二の粘着層3で形成すると、粘着層3全体の柔軟性を向上して粘着層3によるコンタクトピン4からの付着物8の除去性能を向上することができると共にコンタクトピン4を粘着層3に押し付ける際に粘着層3に加わる衝撃を緩和して除去具1の耐久性を向上することができる。
【0027】
ここで、粘着層3によるコンタクトピン4からの付着物8の除去性能は、粘着層3の全体の厚みも関わってくるが、粘着層3の全体の厚みが同一であれば、粘着層3を単一の層で形成する場合と比べ、粘着層3を第一の粘着層3a及び第二の粘着層3で形成する場合の方が、付着物8の除去性能が向上することとなる。このため、粘着層3を形成するために要する資源を削減しつつ、この粘着層3に優れた付着物8の除去性能を付与することができる。
【0028】
このような粘着層3の形成方法は特に制限されず、例えば第一の粘着層3aを形成するための樹脂組成物を予めフィルム状に成形した後に、これを基材2の表面に貼着し、必要に応じて硬化成形して第一の粘着層3aを形成することができる。また第一の粘着層3aを形成するための樹脂組成物を液状又はペースト状の状態で基材2の表面に塗布し、必要に応じて硬化成形して第一の粘着層3aを形成するようにしても良い。特に後者の方法を採用すると、第一の粘着層3aと基材2との間の密着性を向上することができる。更に、例えば第二の粘着層3bを形成するための樹脂組成物を予めフィルム状に成形した後に、これを第一の粘着層3aの表面に貼着し、必要に応じて硬化成形することで第二の粘着層3bを形成することができる。また第二の粘着層3bを形成するための樹脂組成物を液状又はペースト状の状態で第一の粘着層3aの表面に塗布し、必要に応じて硬化成形して第二の粘着層3bを形成するようにしても良い。特に後者の方法を採用すると、第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとの間の密着性を向上することができる。
【0029】
このとき第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとしては、柔軟性及び粘着性が異なるものを設けることが好ましい。この場合、柔軟性が高い層によって粘着層3の全体の柔軟性を向上することができ、この粘着層3にコンタクトピン4が押し付けられた場合にそれに追随して粘着層3が容易に変形することができるようになる。また、柔軟性の低い層を併用することで、粘着層3にコンタクトピン4を押し付けた際の衝撃が基材2に伝わることを緩和することができて基材2の破損を防止することができる。
【0030】
また、同一の組成物にて第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとを形成した場合にも、同一の組成物にて一層の粘着層を形成する場合と比べて、粘着層によるコンタクトピンからの付着物の除去性能を向上することができる。その理由は不分明な部分があるが、第一の粘着層3aを加熱成形した後、第二の粘着層3bを加熱成形した際に生じる第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとの間の熱履歴の相違によりこの第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとの間に性状の相違が生じること、或いは同一の組成であっても二回に分けて粘着層を形成することで第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとの間に不均一な界面が形成されることが、影響していると考えられる。
【0031】
第二の粘着層3bの粘着性と第一の粘着層3aの粘着性及び柔軟性は、コンタクトピンの付着物8が除去可能なように適宜調整されるが、剥離強度が0.001〜1N/cmの範囲で適宜調整することが好ましい。特に粘着性がより高い層においては剥離強度が0.1〜0.5N/cmとなる範囲で調整し、また剥離強度がより低い層では0.1〜0.001N/cmの範囲で調整することが好ましい。ここで、前記剥離強度は、測定対象となる層の表面に、幅25mm、長さ30cm、厚み25μmのポリイミドフィルムを軽く押し付けて貼着させた場合に測定される180°ピール強度(線剥離強度)を意味するものとする。
【0032】
この第一の粘着層3aと第二の粘着層3bの粘着性や柔軟性の調整は、これらを形成するための樹脂組成物の組成を変更するなどして行うことができるが、例えば同系統の樹脂組成物であってその硬化物の柔軟性及び接着性が異なるものがあれば、この樹脂組成物を適宜の割合で混合することで柔軟性及び接着性を容易に調整することができる。
【0033】
この粘着層3の厚みは、対象となるコンタクトピン4の寸法にもよるが、厚みが大きいほど、コンタクトピン4に付着している付着物8の除去性が高くなる。但し、コンタクトピン4には主としてその先端部分の長さ1mm以下程度の部分に付着物8が付着するものであり、また特に導通性に影響するのは最先端部分から数十μm程度の部分であるため、この部分について効率よく付着物8が除去できるように、粘着層3の厚みは数十μmから数百μm程度であることが好ましい。このとき、第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとに厚みの差を持たせる場合には、例えば厚みの大きい方の層の厚みを好ましくは50〜1000μm、更に好ましくは50〜500μmの範囲とし、厚みの小さい方の層の厚みを好ましくは1〜500μm、更に好ましくは10〜300μmの範囲とすることができる。
【0034】
ここで、特に第一の粘着層3aが第二の粘着層3bよりも柔軟性及び接着性が高いものであると、第二の粘着層3bと基材2とが粘着性の高い第一の粘着層3aを介して接合された状態となり、基材2に対する粘着層3の密着性が向上して粘着層3の剥離が生じにくくなる。また、第一の粘着層3aは粘着性が高いことから、第二の粘着層3bよりも高い柔軟性を有し、この第一の粘着層3aにて粘着層3全体の柔軟性を高く保つことができて、コンタクトピンに対する追随性を高く保つことができる。また上層部分の第二の粘着層3bは第一の粘着層3aよりも柔軟性が低く、硬度が高くなることから、破損が生じにくく、粘着層3の表面における破損の発生を抑制して耐久性を向上することができる。
【0035】
この場合、特に第一の粘着層3aの厚みが第二の粘着層3bの厚みよりも厚くなるようにすると、粘着層3全体に占める柔軟性の高い第一の粘着層3aの割合を大きくすると共に、柔軟性の低い第二の粘着層3bの厚みを薄くすることから、この第二の粘着層3bも変形しやすくして、粘着層3全体の柔軟性をより高くすることができ、コンタクトピンに対する追随性を更に向上することができる。
【0036】
このような除去具1を用いた、導通検査機器のコンタクトピン4からの付着物8の除去の一例について説明する。
【0037】
導通検査機器としては、コンタクトピン4を備える検査用治具を具備し、このコンタクトピン4に電圧を印加すると共にコンタクトピン4の間に生じる電流を計測するものを挙げることができる。検査用治具としては、例えば平坦な下面を有すると共にこの下面に複数のコンタクトピン4が突設されているものを挙げることができる。コンタクトピン4の数及び位置は検査対象であるプリント配線板等における端子の数及び位置と合致するように設けられる。
【0038】
このような検査用治具をプリント配線板等の検査対象に対して各コンタクトピン4が前記検査対象における端子と接触するように配置した状態で導通検査が行われる。
【0039】
導通検査機器を用いた導通検査を繰り返し行い、コンタクトピン4に付着物8が付着したら、このコンタクトピン4の付着物8を除去具1によって除去する。
【0040】
このとき、まずコンタクトピン4を図2(a)に示すように除去具1の上方に配置し、この状態で図2(b)に示すようにコンタクトピン4を除去具1に近づける。これによりコンタクトピン4が粘着層3に接触して押し付けられる。このとき、第一の粘着層3aが第二の粘着層3bよりも粘着性及び柔軟性が高いものであれば、既述のように粘着層3全体は第一の粘着層3aによって高い柔軟性が付与され、また第二の粘着層3bが第一の粘着層3aよりも粘着性及び柔軟性が高いものであっても、粘着層3全体は柔軟性が向上されるために、粘着層3はコンタクトピン4に追随して容易に変形し、コンタクトピン4が粘着層3に埋め込まれるようになる。その後、図2(c)に示すようにコンタクトピン4を除去具1から離す。
【0041】
このようにしてコンタクトピン4の表面からの付着物8の除去を行うと、コンタクトピン4の表面が粘着層3と接触し、更にこのコンタクトピン4が粘着層3から引き離される際に、主として粘着層3の表面の第二の粘着層3bによる粘着力と、粘着層3に埋め込まれた状態のコンタクトピン4が粘着層3から引き離される際に両者の間に働く摩擦力とによって、コンタクトピン4の表面に付着していた付着物8が粘着層3に付着して除去される。
【0042】
次に、第二の実施形態の例について説明する。
【0043】
本実施形態では、除去具1には粘着層3の上層に溶剤が貯留された溶剤層5を設けている。
【0044】
例えば図3に示す例では、基材2における粘着層3を形成する部位に凹部6を設けている。この凹部6の深さは粘着層3の厚みよりも深くなるように形成するものであり、例えば0.1mm以上、好ましくは0.1〜2mmの範囲とすることができる。
【0045】
この凹部6の内側に、既述のような手法にて第一の粘着層3aと第二の粘着層3bとからなる粘着層3を形成する。
【0046】
次いで、凹部6内にはこの粘着層3の上方に溶剤を貯留して溶剤層5を形成する。前記溶剤としては例えばフラックスを溶解し得るものを用いることができ、このときロジン系フラックスや合成樹脂系フラックス等のうち導通検査の対象に塗布されているものを溶解し得る適宜の溶剤を用いることができる。またこの溶剤としては粘着層3と接触した状態でこの粘着層3を短時間では侵さないものを用いることが好ましく、また付着物8除去後のコンタクトピン4から前記溶剤が速やかに乾燥除去されるように揮発性の高いものであることが好ましい。具体的な溶剤としては、例えばイソプロピルアルコール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、アセトン等のケトン類、トルエン等の芳香族類等の適宜の有機溶剤を挙げることができ、これらは一種単独で用いるほか、二種以上を混合した混合溶剤として用いることもできる。更に、前記のような有機溶剤に水を加えたものを用いることもできる。特に、フラックスの溶剤として用いられることが多く、且つ粘着層3を侵すおそれの少ないイソプロピルアルコールを単独で用い、或いはこのイソプロピルアルコールを含む溶剤を用いることが好ましい。
【0047】
上記溶剤層5の厚み、すなわち粘着層3の上方に貯留されている溶剤の深さは適宜設定されるが、コンタクトピン4を溶剤層5と接触させた場合にコンタクトピン4の先端が溶剤で濡れる程度であれば充分であり、またコンタクトピン4の構造や寸法にもよるがコンタクトピン4の基端部側のバネ等の部材には溶剤が接触しない程度であることが好ましい。例えばこの厚みを、粘着層3の表面が溶剤で湿っている程度から3mmまでの範囲、好ましくは0.1〜3mm程度の範囲、更に好ましくは0.1〜1mmの範囲とすることができる。
【0048】
このような溶剤層5を有する除去具1を用いると、コンタクトピン4の表面に付着物8としてフラックスが付着している場合にこのフラックスを容易に除去することができる。ここでフラックスは導体配線の酸化を防止する等の目的のために導体配線の表面に塗布されているものであり、このような導体配線の導通検査を行うことにより、コンタクトピン4の表面にフラックスが付着してしまうことがある。このフラックスの付着はコンタクトピンの導通性の低下を招き、またこの付着したフラックスに更に他の異物が付着し易くなって更なる導電性の低下を招くが、溶剤層5を有する除去具1を用いてコンタクトピンの付着物8の除去を行うことにより、このようなフラックスを含む異物の除去を、溶剤を使用しない場合よりも容易に行うことができるものである。
【0049】
このような除去具1を用いた、導通検査機器のコンタクトピン4からの付着物8の除去について説明する。
【0050】
まずコンタクトピン4を図4(a)に示すように除去具1の上方に配置し、この状態で図4(b)に示すようにコンタクトピン4を除去具1に近づける。これによりコンタクトピン4が溶剤層5に浸漬され、次いで図5(a)に示すようにコンタクトピン4は粘着層3に接触する。その後、図5(b)に示すようにコンタクトピン4を除去具1から離す。
【0051】
このようにしてコンタクトピン4の表面からの付着物8の除去を行うと、コンタクトピン4の表面が粘着層3と接触した際にこのコンタクトピン4の表面に付着していた付着物8が第一の実施形態の場合と同様に粘着層3に付着して除去される。また、コンタクトピン4の表面に付着物8としてフラックスが付着している場合には、このフラックスはコンタクトピン4が溶剤層5に浸漬された際に溶剤層5に溶解し、或いは、このフラックスがコンタクトピン4に付着した状態で溶剤により膨潤する。このようにフラックスが溶剤層5に溶解することによりフラックスを除去することができるものであり、またこのフラックスがコンタクトピン4に付着したまま膨潤しても、このように膨潤することによりコンタクトピン4から除去されやすくなっているため、コンタクトピン4の表面が粘着層3と接触する際に前記膨潤したフラックスが粘着層3に付着して容易に除去される。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
【0053】
(実施例1〜14、比較例1〜7)
寸法300mm×300mm×1.6mmのガラスエポキシ樹脂基板(FR−4タイプ)を基材2とし、この基材2の一面に第一の粘着層3aを形成し、或いは更に第二の粘着層3bを形成した。この第一の粘着層3aと第二の粘着層3bはそれぞれ表1〜5に示す樹脂組成物をスクリーン印刷法により塗布し、150℃で20分間熱処理を施すことで形成し、その厚みは表1〜5に示す値の±10%の範囲に収まるようにした。
【0054】
ここで、表中の樹脂組成物のうち、低粘着性接着剤とは互応化学工業株式会社製の熱硬化性シリコーン樹脂(品番「ADF−18」)を示す。また高粘着性接着剤とは、前記互応化学工業株式会社製の熱硬化性シリコーン樹脂(品番「ADF−18」)と、互応化学工業株式会社製の熱硬化性シリコーン樹脂(品番「ADF−57」)とを、前者対後者が8:2の重量比となるように混合したものを示す。
【0055】
また、ピール剥離強度は、形成された粘着層3の表面に、幅25mm、長さ30cm、厚み25μmのポリイミドフィルムを軽く押し付けて貼着させた場合に測定した180°ピール強度(線剥離強度)を示す。
【0056】
(評価試験1)
実施例1〜8及び比較例1〜5について、下記の評価試験を行った。
【0057】
(1)異物除去性及び導通性評価
電子部品を半田リフロー処理により搭載したテスト用のプリント配線板を作製し、このプリント配線板に対して、コンタクトピン4として株式会社ヨコオ製「Y−1.4HN」を、導通検査機器として日置電気株式会社製の「3540ミリオームハイテスタ」を用い、このコンタクトピン4を前記端子に荷重測定器(アイコーエンジニアリング株式会社製「MODEL−L100E1840N」)にて測定される平均荷重が1.47Nとなるように押し付けて、電圧降下法(四端子法)により導通検査を行った。
【0058】
同一のコンタクトピン4を用いて上記導通検査を連続的に行った後、コンタクトピン4への付着物8の付着に起因する測定エラーが発生したら、試験を中断して、各実施例及び比較例で得られた除去具1を用い、この除去具1の裏面を治具上に両面粘着テープにて固定した状態で、前記コンタクトピン4に付着した付着物8を除去した。
【0059】
このコンタクトピン4からの付着物8の除去前後におけるコンタクトピン4の先端部の外観を目視で観察し、コンタクトピン4からの付着物8の除去の程度を下記の基準で評価した。
◎:良好。
○:問題なし。
△:やや異物残渣あり。
×:異物残渣あり。
【0060】
尚、このとき比較例4では、コンタクトピン4と粘着層3との間の接着力により、コンタクトピン4が抜ける時に部分的に基材5を持ち上げる現象が生じた。
【0061】
また、上記のように除去具1により付着物8を除去した後、再び上記導通検査を行った場合の測定結果に基づき、コンタクトピン4の導通性を下記基準で評価した。
○:導通性良好。
△:導通性不安定。
×:導通性不良。
【0062】
(2)粘着層耐久性テスト
各実施例及び比較例で得られた除去具1の粘着層3の表面上の同一位置に、コンタクトピン4を500回連続して押しつけた後、粘着層3の表面状態を目視で観察し、耐久性を下記基準により評価した。
◎:表面に荒れ少なく良好
○:良好
△:少し荒れあり
×:荒れて部分的に剥がれている
以上の結果を表1〜3に示す。尚、表1は粘着層の総厚みが60μmのもの、表2は総厚みが150μmのもの、表3は総厚みが300μmのものについての結果を示す。
【0063】
【表1】

【0064】
【表2】

【0065】
【表3】

【0066】
(評価試験2)
実施例9〜14及び比較例6,7について、下記の評価試験を行った。
【0067】
(1)異物除去性及び導通性評価
コンタクトピン4にポストフラックスを付着させた後、自然乾燥させたものを使用した以外は評価試験1の異物除去性及び導通性評価と同様に、導通検査及び測定エラー発生後のコンタクトピン4からの付着物の除去を行い、コンタクトピン4からの付着物の除去の程度を下記基準で評価した。
◎:良好。
○:問題なし。
△:やや異物残渣あり。
×:異物残渣あり。
【0068】
また、除去具1によるポストフラックスの除去の後に上記導通検査を行い、測定される電気抵抗値の基づき、導通性を下記評価基準で評価した。
○:導通性良好。
△:導通性不安定。
×:導通性不良。
【0069】
(2)粘着層耐久性テスト
各実施例及び比較例で得られた除去具1の粘着層3の表面上の同一位置に、コンタクトピン4を500回連続して押しつけた後、粘着層3の表面状態を目視で観察し、耐久性を下記基準により評価した。
◎:表面に荒れ少なく良好
○:良好
△:少し荒れあり
×:荒れて部分的に剥がれている
以上の試験結果を表4に併せて示す。
【0070】
【表4】

【0071】
以上の結果から、粘着層の総厚みが同程度であれば、粘着層を第一の粘着層と第二の粘着層とを積層したもので構成した各実施例のものが、各比較例のものよりも、優れた異物除去性、導通性並びに粘着層耐久性を有することが確認できた。
【0072】
(実施例15〜17)
平面視寸法300mm×300mmのアルミニウム製の平板を基材5とし、この基材5に平面視270mm×270mm、深さ1.2mmの寸法の凹部6を形成した。
【0073】
この基材5の凹部6の底面に、第一の粘着層3aと第二の粘着層3bを形成した。この第一の粘着層3aと第二の粘着層3bは表5に示す樹脂組成物をスクリーン印刷法により塗布し、150℃で20分間熱処理を施すことで形成し、その厚みは表5に示す値の±10%の範囲に収まるようにした。
【0074】
また、ピール剥離強度は、形成された粘着層3の表面に、幅25mm、長さ30cm、厚み25μmのポリイミドフィルムを軽く押し付けて貼着させた場合に測定した180°ピール強度(線剥離強度)を示す。
【0075】
次いで、上記凹部6内の粘着層3の上に溶剤としてイソプロピルアルコールを貯留し、表5に示す厚みを有する溶剤層5を形成して、付着物除去具1を得た。
【0076】
(評価試験3)
実施例15〜17について、上記評価試験1と同一の評価試験を行った。その結果を表5に示す。
【0077】
【表5】

【0078】
このように、同一厚みの粘着層3を形成した実施例15〜17のうち、溶剤層5を設けた実施例15,16では、溶剤層5を設けていない実施例17よりも優れた評価が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第一の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図2】(a)乃至(c)は同上の実施形態における動作を示す断面図である。
【図3】本発明の第二の実施の形態の一例を示す断面図である。
【図4】(a)及び(b)は同上の実施の形態における動作を示す断面図である。
【図5】(a)及び(b)は同上の実施の形態における動作を示す断面図である。
【符号の説明】
【0080】
1 コンタクトピン用付着物除去具
2 基材
3 粘着層
3a 第一の粘着層
3b 第二の粘着層
4 コンタクトピン
5 溶剤層
8 付着物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の表面に粘着層が設けられ、この粘着層とコンタクトピンを接触させることによりコンタクトピンの付着物を除去する付着物除去具であって、前記粘着層が、基材の表面に直接接触された第一の粘着層と、前記第一の粘着層に積層して設けられた第二の粘着層とから形成されていることを特徴とするコンタクトピン用付着物除去具。
【請求項2】
上記第一の粘着層が、上記第二の粘着層よりも粘着性及び柔軟性が高いものであることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトピン用付着物除去具。
【請求項3】
上記第二の粘着層が、上記第一の粘着層よりも粘着性及び柔軟性が高いものであることを特徴とする請求項1に記載のコンタクトピン用付着物除去具。
【請求項4】
上記第一の粘着層の厚みが、上記第二の粘着層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトピン用付着物除去具。
【請求項5】
上記第二の粘着層の厚みが、上記第一の粘着層の厚みよりも厚いことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のコンタクトピン用付着物除去具。
【請求項6】
上記粘着層の上層に溶剤が貯留された溶剤層が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のコンタクトピン用付着物除去具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−156796(P2009−156796A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337618(P2007−337618)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【出願人】(594000778)株式会社京写 (3)
【Fターム(参考)】