説明

コンタクト

【課題】弾性接触部の周囲において四方に障壁部を設けることで、弾性接触部の可動域に異物が入り込んでしまうのを抑制でき、その障壁部を折り曲げ加工で形成した際、はんだ接合面の平面度を低下させてしまうこともない構造とされたコンタクトを提供すること。
【解決手段】コンタクト1は、弾性接触部5の前後左右に設けられて、弾性接触部5の周囲を四方から取り囲む障壁部7を備える。障壁部7は、はんだ接合部3の前端から延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、弾性接触部の前側に形成された前壁部11などを備え、さらに前壁部11の後方に形成された前側立設部25を備える。前側立設部25は、はんだ接合部3の剛性を高め、しかも、前壁部11と前側立設部25は、それぞれを上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成されているため、それぞれの折り曲げ加工時にはんだ接合部3に生じる歪みが相殺される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板の取付対象面に表面実装されて、プリント配線板とプリント配線板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、プリント配線板が備える導体パターンと導電性部材とを電気的に接続するコンタクトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンタクトとして、本願出願人は、既に下記特許文献1に記載の導電部材を提案している。
【0003】
この特許文献1に記載の導電部材は、自動実装機を利用してプリント配線板の取付対象面に表面実装可能なものであり、このような導電部材を利用すれば、例えば、プリント配線板側のアースパターンとグランド電位を持つ筐体の一部とを電気的に接続することで、ノイズ対策などを図ることができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許3452546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電子機器が長期にわたって使用された場合、電子機器の内部には、ゴミやホコリなどの異物が溜まっていることがある。そのため、そのような電子機器を修理する際に、電子機器本体からプリント配線板を取り外したり、取り外したプリント配線板を再び電子機器本体に取り付けたりする作業を行うと、細かな異物がコンタクトの隙間に入り込むことがある。そして、最悪の場合、このような異物が障害物となって、弾性変形を伴って接点として機能する部分(以下、弾性接触部と称する。)が、当初の設計通りに変位しなくなるおそれがある。
【0006】
この点、上記特許文献1に記載の導電部材は、弾性接触部の周囲のうち、三方が障壁で囲まれた構造になっているので、少なくとも障壁のある三方については、その内側に異物が入り込むことは抑制され、弾性接触部の機能を設計通りに維持するのに役立っている。
【0007】
ただし、弾性接触部の周囲のうち、残る一方だけは障壁のない構造になっているため(特許文献1:図1(c)参照)、この方向からだけは、他の方向よりも異物が入り込みやすい状況になっている。したがって、このような問題をも解決するには、さらに、残る一方にも障壁を設けることが一案として考えられる。
【0008】
しかしながら、弾性接触部の周囲において、四方すべてに障壁を設けると、障壁のない開放面が無くなってしまうため、金属の薄板に対する折り曲げ加工を行う際に、障壁で囲まれた内側(谷折りとなる側)に治具を挿し込むことはできなくなる。
【0009】
そのため、障壁で囲まれた内側には治具を当てないまま、障壁となる部分の外側にのみ治具を当てて折り曲げ加工を行うことになる。その結果、はんだ接合部となる底部の前後端から延出した部分をそれぞれ上方へ折り曲げると、内側に治具を当てて加工する場合に比べ、底部が外側へ膨出した形態(例えば、底部が僅かに断面U字状に膨らんだ形態)になりやすく、はんだ接合面の平面度が低下してしまう、という別の問題を招くおそれがあった。
【0010】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、弾性接触部の周囲において四方に障壁部を設けることで、弾性接触部の可動域に異物が入り込んでしまうのを従来以上に抑制でき、しかも、そのような障壁部を折り曲げ加工で形成した際に、はんだ接合面の平面度を低下させてしまうこともない構造とされたコンタクトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以下、本発明において採用した構成について説明する。
【0012】
請求項1に記載のコンタクトは、
金属の薄板を折り曲げて形成されており、使用時にはプリント配線板の取付対象面に表面実装されて、前記プリント配線板と前記プリント配線板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、前記プリント配線板が備える導体パターンと前記導電性部材とを電気的に接続するコンタクトであって、
下面が前記導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面となっているはんだ接合部と、
前記はんだ接合部の上方に構成され、前記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って前記導電性部材に圧接する状態になる弾性接触部と、
前記弾性接触部の前後左右に設けられて、前記弾性接触部の周囲を四方から取り囲む状態にあり、当該取り囲んだ範囲の内側に異物が入り込むのを抑制する障壁部と
を備え、
前記障壁部として、
前記はんだ接合部の前端から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記弾性接触部の前側に形成された前壁部と、
前記はんだ接合部の後端から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記弾性接触部の後側に形成された後壁部と、
前記前壁部の左端部から延出した前記薄板の一部を後方へと折り曲げること、および前記後壁部の左端部から延出した前記薄板の一部を前方へと折り曲げることのうち、いずれか一方または両方により、前記弾性接触部の左側に形成された左壁部と、
前記前壁部の右端部から延出した前記薄板の一部を後方へと折り曲げること、および前記後壁部の右端部から延出した前記薄板の一部を前方へと折り曲げることのうち、いずれか一方または両方により、前記弾性接触部の右側に形成された右壁部と
を備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ接合面を上下方向に貫通する開口が形成されることにより、前記開口をなす内縁部を有する形状とされ、
さらに、「前記内縁部の前方側から後方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記前壁部の後方に形成された前側立設部」、「前記内縁部の後方側から前方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記後壁部の前方に形成された後側立設部」、「前記内縁部の左方側から右方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記左壁部の右方に形成された左側立設部」、および「前記内縁部の右方側から左方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記右壁部の左方に形成された右側立設部」、以上4つの立設部のうち、少なくとも1つの立設部が設けられている
ことを特徴とする。
【0013】
なお、上記本発明の構成においては、各部の相対的な位置関係を簡潔に説明するため、前後左右上下の方向を規定しているが、これらの方向は、あくまでも各部の相対的な位置関係を示すための定義にすぎず、本発明のコンタクトを使用する際の取り付け方向などを規定するものではない。例えば、上記本発明の構成中、はんだ接合部は、下面がはんだ接合面となっている旨を定義してあるが、これは、はんだ接合面が下面となる事例を代表例として挙げて、他の各部との相対位置を規定しているのであり、本発明のコンタクトを使用するに当たって、はんだ接合面が常に下方に向けられるという主旨の規定をするものではない。
【0014】
以上のような前提のもと、説明を続けると、本発明のコンタクトによれば、上述のごとき前壁部、後壁部、左壁部、および右壁部によって、弾性接触部を四方から取り囲んだ構造としてあるので、少なくとも一方以上が開放された構造となっているコンタクトに比べ、弾性接触部の可動域に異物が入り込むのを抑制する効果は格段に高くなる。
【0015】
ただし、前壁部となる部分、および後壁部となる部分を、上方へと折り曲げる際には、左壁部となる部分、および右壁部となる部分が存在するため、これらの内側に治具を挿し込んで折り曲げ加工を行うことは、右壁部や左壁部のない構造となっている場合に比べて困難になる。そのため、内側に治具を当てることなく、前壁部となる部分、および後壁部となる部分を折り曲げざるを得ず、このとき、はんだ接合面が膨出する方向へはんだ接合部を変形させようとする力がはんだ接合部には作用する。したがって、何ら対策が講じられていなければ、はんだ接合部の平面度が低下する原因となるおそれがある。
【0016】
この点、本発明のコンタクトにおいては、第1の対策として、はんだ接合部に開口が形成してあるので、少なくとも開口となっている範囲は膨出することが無い。しかも、第2の対策として、内縁部から延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、上述した「少なくとも1つの立設部」を形成してある。そのため、このような立設部が、はんだ接合部の剛性を高めるリブとして機能し、はんだ接合面の平面度を低下させるような変形・膨出が抑制されることになる。
【0017】
したがって、本発明のコンタクトによれば、弾性接触部の周囲において四方に障壁部を設けることで、弾性接触部の可動域に異物が入り込んでしまうのを従来以上に抑制でき、しかも、そのような障壁部を折り曲げ加工で形成した際に、はんだ接合面の平面度を低下させてしまうこともない構造となる。
【0018】
次に、請求項2に記載のコンタクトは、請求項1に記載のコンタクトにおいて、
前記少なくとも1つの立設部として、少なくとも前記前側立設部および前記後側立設部が設けられており、
前記前壁部と前記前側立設部は、それぞれを前記上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成され、前記後壁部と前記後側立設部は、それぞれを前記上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成されている
ことを特徴とする。
【0019】
このように構成されたコンタクトによれば、はんだ接合部の開口の周囲において、前壁部となる部分、および後壁部となる部分を折り曲げた際に膨出しやすい部分は、前側立設部、および後側立設部を設ける際に、前壁部、および後壁部を設けるときとは逆向きに捻られて、膨出する方向への歪みが相殺される。したがって、立設部として、右側立設部のみを設けた場合や、左側立設部のみを設けた場合に比べ、はんだ接合面の平面度を低下させるような変形・膨出を抑制する効果を高めることができる。
【0020】
次に、請求項3に記載のコンタクトは、請求項1または請求項2に記載のコンタクトにおいて、
前記内縁部から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることによって前記少なくとも1つの立設部を形成してから、前記はんだ接合部の前端および後端それぞれから延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることによって前記前壁部、および前記後壁部が形成されている
ことを特徴とする。
【0021】
このように構成されたコンタクトであれば、上記のような立設部が、前壁部および後壁部よりも先に形成された構造になっているので、立設部を形成する際には、前壁部および後壁部が邪魔になることがなく、前壁部および後壁部が先に形成されたものに比べ、立設部の加工精度を向上させることができ、ひいては、より加工精度の高いコンタクトとすることができる。
【0022】
次に、請求項4に記載のコンタクトは、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンタクトにおいて、
前記弾性接触部は、前記はんだ接合部の左端に連接された箇所を基端として、当該基端から湾曲して左斜め上方へと延び、前記左壁部の内側を通って、さらに湾曲して右斜め上方へと延び、さらに湾曲して右方へと延び、さらに湾曲して左斜め下方へと延び、さらに湾曲して左方へと延びて先端に至る形態となっていて、
前記前壁部および前記後壁部のうち、少なくとも一方には、前記弾性接触部の前記先端が引っ掛けられるばね先引っ掛け部が形成され、当該ばね先引っ掛け部によって前記弾性接触部の上方への変位が規制されている
ことを特徴とする。
【0023】
このように構成されたコンタクトによれば、弾性接触部の先端は、右方へと延びた部分の右端よりも左方且つ下方にあり、そのような位置にある先端が、ばね先引っ掛け部に引っ掛けられているので、ばね先引っ掛け部も、弾性接触部の前記右方へと延びた部分の下方に配置されることになる。
【0024】
したがって、ばね先引っ掛け部は、弾性接触部に囲まれた位置に配置された状態となり、コンタクトに接触した物体がばね先引っ掛け部に引っ掛かりにくい構造となるので、ばね先引っ掛け部を破損するようなことがない。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態として例示するコンタクトを示し、(a)はその平面図、(b)はその左側面図、(c)はその正面図、(d)はその右側面図、(e)はその底面図。
【図2】図1と同じコンタクトを示し、(a)はその左前上方から見た斜視図、(b)はその右後上方から見た斜視図、(c)はその左前下方から見た斜視図、(d)はその右後下方から見た斜視図。
【図3】コンタクトの使用状態を示し、(a)はプリント配線板上に実装された状態を示す縦断面図、(b)はプリント配線板と部材との間に挟み込まれた状態を示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、本発明の実施形態について一例を挙げて説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施形態として例示するコンタクトを示し、(a)はその平面図、(b)はその左側面図、(c)はその正面図、(d)はその右側面図、(e)はその底面図である。また、図2も、図1と同じコンタクトを示し、(a)はその左前上方から見た斜視図、(b)はその右後上方から見た斜視図、(c)はその左前下方から見た斜視図、(b)はその右後下方から見た斜視図である。図3は、コンタクトの使用状態を示し、(a)はプリント配線板上に実装された状態を示す縦断面図、(b)はプリント配線板と部材との間に挟み込まれた状態を示す縦断面図である。
【0028】
なお、以下の説明においては、前後左右上下の方向として、図1〜図3に矢印で示した方向を規定して、コンタクト1各部の相対的な位置関係を説明する。ただし、既に言及したとおり、これらの方向は、あくまでもコンタクト1各部の相対的な位置関係を示すための定義にすぎず、コンタクト1を実際に使用する際の取り付け方向などを規定するものではない。
【0029】
このコンタクト1は、プリント配線板Pの取付対象面に表面実装される部品で(図3(a)参照)、プリント配線板Pとプリント配線板Pとは別の導電性部材Qとの間に挟み込まれることにより(図3(b)参照)、プリント配線板Pが備える導体パターンと導電性部材Qとを電気的に接続するものである。
【0030】
また、このコンタクト1は、金属の薄板(本実施形態の場合、ばね用りん青銅の表面にめっきを施したもの;板厚0.1mm)を、プレス加工で打ち抜いて、その打ち抜かれた所定形状のものの各部を、所定箇所で折り曲げることによって形成されている。
【0031】
本実施形態において、コンタクト1の左右方向寸法は6.2mm、前後方向寸法は3mm、上下方向寸法は最大5mmとされており、上下方向寸法については、プリント配線板Pと導電性部材Qとの間に挟み込まれた際に、可動部分の変位に伴って変化する。
【0032】
次に、コンタクト1の形態について、より具体的に説明する。
【0033】
コンタクト1は、図1および図2に示すように、はんだ接合部3と、弾性接触部5と、障壁部7とを備えている。
【0034】
はんだ接合部3は、下面がプリント配線板Pの導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面9となっている。
【0035】
弾性接触部5は、はんだ接合部3の上方に構成された部分で、この弾性接触部5で導電性部材に接触し、その際、弾性接触部5は、弾性変形を伴って導電性部材に圧接する状態になるものである。
【0036】
障壁部7は、弾性接触部5の前後左右に設けられて、弾性接触部5の周囲を四方から取り囲む状態にあり、これにより、障壁部7で取り囲んだ範囲の内側に異物が入り込むのを抑制している。このような障壁部7として、本実施形態においては、前壁部11,後壁部12,左壁部13A,13B,右壁部14A,14Bを設けてある。
【0037】
前壁部11は、はんだ接合部3の前端から延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の前側に形成されている。また、後壁部12は、はんだ接合部の後端から延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の後側に形成されている。
【0038】
左壁部13Aは、前壁部11の左端から延出した薄板の一部を後方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の左側に形成され、左壁部13Bは、後壁部12の左端から延出した薄板の一部を前方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の左側に形成されている。
【0039】
右壁部14Aは、前壁部11の右端から延出した薄板の一部を後方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の右側に形成され、右壁部14Bは、後壁部12の右端から延出した薄板の一部を前方へと折り曲げることにより、弾性接触部5の右側に形成されている。
【0040】
また、はんだ接合部3は、はんだ接合面9を上下方向に貫通する開口21が形成されることにより、開口21をなす内縁部23を有する形状とされている。そして、その内縁部23の前方側から後方へと延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前壁部11の後方には前側立設部25が設けられ、内縁部23の後方側から前方へと延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、後壁部12の前方に形成された後側立設部27が設けられている。
【0041】
こうして形成された前壁部11と前側立設部25は、それぞれを上方へと折り曲げる際に谷折りされた側(=折り曲げ箇所の両側にある面が180度より小さい角度をなす側)が対向する位置に形成されている。また、後壁部12と後側立設部27は、それぞれを上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成されている。
【0042】
これら前側立設部25、および後側立設部27は、はんだフィレットを形成する部分として機能し、コンタクト1を、図3(a)に示すように、プリント配線板Pに表面実装した際には、前側立設部25、および後側立設部27が設けられていない場合に比べ、コンタクト1をプリント配線板Pに強固に接合することができる。
【0043】
さらに、弾性接触部5は、はんだ接合部3の左端に連接された箇所を基端30として、基端30から湾曲して左斜め上方へと延びる第1部分31、左壁部13A,13Bの内側を通って、さらに第1部分31から湾曲して右斜め上方へと延びる第2部分32、さらに第2部分32から湾曲して右方へと延びる第3部分33、さらに湾曲して第3部分33から左斜め下方へと延びる第4部分34、さらに第4部分34から湾曲して左方へと延びる第5部分35を有し、その第5部分35が弾性接触部5の先端となっている。
【0044】
そして、弾性接触部5の先端(第5部分35)が、前壁部11および後壁部12に形成されたばね先引っ掛け部37A,37Bに引っ掛けられることにより、弾性接触部5の上方への変位が規制されている。
【0045】
ばね先引っ掛け部37Aは、前壁部11の上端から上方へと延出した薄板の一部を後方へと折り曲げることによって形成されたものである。また、ばね先引っ掛け部37Bは、後壁部12の上端から上方へと延出した薄板の一部を前方へと折り曲げることによって形成されたものである。
【0046】
このような形態とされた弾性接触部5は、図3に示すように、導電性部材Qとの接触に伴って弾性変形して導電性部材Qに圧接することにより、プリント配線板Pが備える導体パターンと導電性部材Qとを電気的に接続する。
【0047】
また、前壁部11および後壁部12の上端には、ばね先引っ掛け部37A,37Bよりも上方へ突出するストッパー39A,39Bが形成されている。このストッパー39A,39Bは、図3(b)に示すように、導電性部材Qに当接することにより、導電性部材Qが過剰にプリント配線板P側へ押し付けられないように導電性部材Qの変位を規制する。すなわち、このストッパー39A,39Bを設けた部分は、プリント配線板Pと導電性部材Qとの距離が所定の最小間隔を下回らないように維持するスペーサとしての役割を果たしている。
【0048】
加えて、はんだ接合部3の右端には、右方へと突出するキャリアつなぎ部41が形成されている。このキャリアつなぎ部41は、フープ材のキャリア部(図示略)との連結部分である。すなわち、本実施形態のコンタクト1は、フープ材上に形成可能な構造を持つ部品となっている。
【0049】
以上のような構造とされた本実施形態のコンタクト1によれば、上述のごとき前壁部11、後壁部12、左壁部13A,13B、右壁部14A,14Bによって、弾性接触部5を四方から取り囲んだ構造としてあるので、少なくとも一方以上が開放された構造となっているコンタクトに比べ、弾性接触部5の可動域に異物が入り込むのを抑制することができる。
【0050】
なお、図3(b)を見ると明らかなように、導電性部材Qが圧接した状態にあるときには、弾性接触部5は、四方を障壁部7に囲まれるのに加え、下方にはプリント配線板Pがあり、上方には導電性部材Qがあるため、前後左右上下すべてが囲まれることになる。したがって、このような状態になっていれば、何らかの事情で弾性接触部5が破断してはんだ接合部3側から分離したとしても、その分離した破片は前後左右上下が囲まれた空間内に閉じ込められる。よって、本実施形態のコンタクト1によれば、障壁部7の内側へ異物が入り込むのを抑制できる他、万一の時には、障壁部7の外側へ異物が出て行ってしまうのも防止できる。
【0051】
また、このコンタクト1においては、はんだ接合部3に開口21が形成されるとともに、前側立設部25、および後側立設部27を設けてあり、これら前壁部11と前側立設部25は、それぞれを上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成され、後壁部12と後側立設部27も、それぞれを上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成されている。
【0052】
そのため、障壁部7の内側となる部分に治具を差し入れることなく、前壁部11および後壁部12の曲げ加工を行っても、少なくとも開口21となっている範囲は膨出することが無い。また、これら前側立設部25、および後側立設部27は、はんだ接合部3の剛性を高めるリブとして機能し、これにより、はんだ接合面9の平面度を低下させるような変形・膨出が抑制されることになる。さらに、開口21の周囲において、前壁部11となる部分、および後壁部12となる部分を折り曲げた際に膨出しやすい部分は、事前に前側立設部25、および後側立設部27を設けることで、前壁部11、および後壁部12を設けるときとは逆向きに捻られている。そのため、前壁部11および後壁部12の曲げ加工を行う際には、前側立設部25、および後側立設部27を折り曲げ加工で形成したときの歪みと、前壁部11、および後壁部12を折り曲げ加工で形成したときの歪みが相殺され、それらの結果、はんだ接合面9の膨出が抑制されることになる。
【0053】
したがって、このコンタクト1によれば、弾性接触部5の周囲において四方に障壁部7を設けることで、弾性接触部5の可動域に異物が入り込んでしまうのを従来以上に抑制でき、しかも、そのような障壁部7を折り曲げ加工で形成した際に、はんだ接合面9の平面度を低下させてしまうこともない構造となる。
【0054】
また、このコンタクト1において、弾性接触部5の先端は、右方へと延びた部分の右端よりも左方且つ下方にあり、そのような位置にある先端が、ばね先引っ掛け部37A,37Bに引っ掛けられているので、ばね先引っ掛け部37A,37Bも、弾性接触部5の右方へと延びた部分(第3部分33)の下方に配置されることになる。
【0055】
したがって、ばね先引っ掛け部37A,37Bは、弾性接触部5に囲まれた位置に配置された状態となり、コンタクト1に接触した物体がばね先引っ掛け部37A,37Bに引っ掛かりにくい構造となるので、ばね先引っ掛け部37A,37Bを破損するようなことがない。
【0056】
さらに、このコンタクト1において、左壁部13Aと13Bの間、右壁部14Aと14Bの間、ばね先引っ掛け部37Aと37Bの間には、それぞれ間隙が形成されている。そのため、何らかの事情で前壁部11に荷重が作用した場合には、前壁部11が僅かに弾性変形をして後方へと変位することでクッションの役割を果たし、はんだ接合面9に過大な力が作用するのを抑制することができる。
【0057】
しかも、万一、前壁部11が大きく変位するようなことがあれば、左壁部13Aと13Bの間、右壁部14Aと14Bの間、ばね先引っ掛け部37Aと37Bの間にある間隙が完全に潰れる時点で、前壁部11が受けた荷重は、後壁部12にも伝わる状態になる。したがって、これ以降は、前壁部11および後壁部12の双方がクッションの役割を果たし、はんだ接合面9に過大な力が作用するのを抑制する効果は更に向上する。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の具体的な一実施形態に限定されず、この他にも種々の形態で実施することができる。
【0059】
例えば、上記実施形態では、特定の形状および寸法の開口21を例示したが、はんだ接合面9の膨出しやすい箇所が、より広い範囲に存在する場合には、その範囲を開口として、はんだ接合部3の外縁部のみではんだ接合を行うようにしてもよい。また、その際には、前側立設部25、および後側立設部27を設ける範囲を拡大してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、障壁部7の内側に設けられる立設部として、前側立設部25、および後側立設部27が設けられる事例を説明したが、この他、左側立設部や右側立設部を設けてもよい。具体的には、左側立設部であれば、内縁部23の左方側から右方へと薄板の一部を延出し、その延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、左壁部13A,13Bの右方に左側立設部を形成すればよい。また、右側立設部であれば、内縁部23の右方側から左方へと薄板の一部を延出し、その延出した薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、右壁部14A,14Bの左方に右側立設部を形成すればよい。
【0061】
これら前側立設部25、後側立設部27、左側立設部、右側立設部は、いずれか1つを形成するだけでも、相応にはんだ接合部3の剛性を高めることができるので、はんだ接合面9の平面度を低下させるような変形・膨出を抑制することができる。
【0062】
さらに、上記実施形態では、ばね先引っ掛け部37A,37Bが、前壁部11および後壁部12の双方に形成されていたが、前壁部11および後壁部12のうち、いずれか一方だけにばね先引っ掛け部を形成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1・・・コンタクト、3・・・はんだ接合部、5・・・弾性接触部、7・・・障壁部、9・・・はんだ接合面、11・・・前壁部、12・・・後壁部、13A,13B・・・左壁部、14A,14B・・・右壁部、21・・・開口、23・・・内縁部、25・・・前側立設部、27・・・後側立設部、30・・・基端、31・・・第1部分、32・・・第2部分、33・・・第3部分、34・・・第4部分、35・・・第5部分、37A,37B・・・ばね先引っ掛け部、39A,39B・・・ストッパー、41・・・キャリアつなぎ部、P・・・プリント配線板、Q・・・導電性部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の薄板を折り曲げて形成されており、使用時にはプリント配線板の取付対象面に表面実装されて、前記プリント配線板と前記プリント配線板とは別の導電性部材との間に挟み込まれることにより、前記プリント配線板が備える導体パターンと前記導電性部材とを電気的に接続するコンタクトであって、
下面が前記導体パターンにはんだ接合されるはんだ接合面となっているはんだ接合部と、
前記はんだ接合部の上方に構成され、前記導電性部材に接触した際に弾性変形を伴って前記導電性部材に圧接する状態になる弾性接触部と、
前記弾性接触部の前後左右に設けられて、前記弾性接触部の周囲を四方から取り囲む状態にあり、当該取り囲んだ範囲の内側に異物が入り込むのを抑制する障壁部と
を備え、
前記障壁部として、
前記はんだ接合部の前端から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記弾性接触部の前側に形成された前壁部と、
前記はんだ接合部の後端から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記弾性接触部の後側に形成された後壁部と、
前記前壁部の左端部から延出した前記薄板の一部を後方へと折り曲げること、および前記後壁部の左端部から延出した前記薄板の一部を前方へと折り曲げることのうち、いずれか一方または両方により、前記弾性接触部の左側に形成された左壁部と、
前記前壁部の右端部から延出した前記薄板の一部を後方へと折り曲げること、および前記後壁部の右端部から延出した前記薄板の一部を前方へと折り曲げることのうち、いずれか一方または両方により、前記弾性接触部の右側に形成された右壁部と
を備え、
前記はんだ接合部は、前記はんだ接合面を上下方向に貫通する開口が形成されることにより、前記開口をなす内縁部を有する形状とされ、
さらに、「前記内縁部の前方側から後方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記前壁部の後方に形成された前側立設部」、「前記内縁部の後方側から前方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記後壁部の前方に形成された後側立設部」、「前記内縁部の左方側から右方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記左壁部の右方に形成された左側立設部」、および「前記内縁部の右方側から左方へと延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることにより、前記右壁部の左方に形成された右側立設部」、以上4つの立設部のうち、少なくとも1つの立設部が設けられている
ことを特徴とするコンタクト。
【請求項2】
前記少なくとも1つの立設部として、少なくとも前記前側立設部および前記後側立設部が設けられており、
前記前壁部と前記前側立設部は、それぞれを前記上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成され、前記後壁部と前記後側立設部は、それぞれを前記上方へと折り曲げる際に谷折りされた側が対向する位置に形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のコンタクト。
【請求項3】
前記内縁部から延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることによって前記少なくとも1つの立設部を形成してから、前記はんだ接合部の前端および後端それぞれから延出した前記薄板の一部を上方へと折り曲げることによって前記前壁部、および前記後壁部が形成されている
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンタクト。
【請求項4】
前記弾性接触部は、前記はんだ接合部の左端に連接された箇所を基端として、当該基端から湾曲して左斜め上方へと延び、前記左壁部の内側を通って、さらに湾曲して右斜め上方へと延び、さらに湾曲して右方へと延び、さらに湾曲して左斜め下方へと延び、さらに湾曲して左方へと延びて先端に至る形態となっていて、
前記前壁部および前記後壁部のうち、少なくとも一方には、前記弾性接触部の前記先端が引っ掛けられるばね先引っ掛け部が形成され、当該ばね先引っ掛け部によって前記弾性接触部の上方への変位が規制されている
ことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のコンタクト。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−161010(P2010−161010A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−3564(P2009−3564)
【出願日】平成21年1月9日(2009.1.9)
【出願人】(000242231)北川工業株式会社 (268)
【Fターム(参考)】