説明

コンデンサ

【課題】コンデンサ素子からの放熱効果を上げて発熱を低くすることにより信頼性の高いコンデンサを提供することを目的とする。
【解決手段】巻芯11上に誘電体フィルムに金属蒸着電極を形成した両面金属化フィルム12aを巻回してその両端面に取出電極13a、13bを設けたコンデンサ素子14と、このコンデンサ素子14を収納する外装ケース15と、外装ケース蓋16とを有するコンデンサであって、前記巻芯11は一端に開口端を有する有底の円筒で外表面が絶縁されており、前記巻芯の開口端が前記外装ケース蓋に固着されるとともに前記巻芯の内側面を外装ケースの外部に連通させて放熱性を高めたコンデンサとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電気機器、産業機器等に使用され、良好な放熱効果を有するコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種電気機器や産業用機器等において使用されるフィルムコンデンサなどでは、コンデンサに大電流が流れる場合、コンデンサが高温になり、許容温度範囲を超えることがあり、このような高温化を防ぐために放熱性を向上させたコンデンサの検討が種々行われている。
【0003】
図3はこのような放熱効果を高めた従来のコンデンサの断面図であり、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のケース34の内部にコンデンサ素子31を収納し、充填樹脂として下側にエポキシ樹脂35が充填されるとともに、その上側に放熱グリス等の熱伝導性樹脂36が充填されている。
【0004】
このコンデンサ素子31は図4に示すように、巻芯32に絶縁フィルム33を挟んで金属化フィルムを巻回し、端面に金属溶射してメタリコン電極37、38を形成したもので、巻芯32の上方端部はメタリコン電極37から上方へ突出して突出部32aを構成している。
【0005】
そしてコンデンサ素子31の熱が、この突出部32aの周囲に配置された熱伝導性樹脂36に伝わることにより放熱効果を高めたものである。
【0006】
なお、本出願の発明に関する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2006−59890号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の放熱構造では熱伝導性樹脂36の熱伝導率などの放熱に関係する特性により放熱効果が左右されるが、熱伝導性樹脂36の熱伝導率は1〜5W/(m・K)程度が限界であり、したがってコンデンサ素子31に印加される電圧がますます高くなり、コンデンサ素子31の発熱がより増加しつつある近年の電気機器、産業機器等に適用するには不十分なものであった。
【0008】
放熱が不十分で、常時コンデンサ素子31が高温の状態のまま連続して使用された場合、コンデンサの信頼性低下につながりやすい。
【0009】
また、電気機器や産業機器の電気回路に異常電圧が印加された時などに、コンデンサ素子31の温度が急激に上昇することにより、故障する確率も高くなるため、さらに効果的な放熱を行うことが求められている。
【0010】
一般にコンデンサ素子31の温度が100℃を超えると、故障率が急激に増大するため、発熱しても90℃以下とすることが求められる。
【0011】
そこで本発明は、コンデンサ素子からの放熱効果をさらに向上させて発熱を低く抑えることにより、信頼性の高いコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
そしてこの目的を達成するために、本発明のコンデンサは、巻芯と、前記巻芯上に誘電体フィルムに金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回してその両端面に取出電極を設けたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する外装ケースと、外装ケース蓋とを有するコンデンサであって、前記巻芯は一端に開口端を有する有底の円筒で外表面が絶縁されており、前記巻芯の開口端が前記外装ケース蓋に固着されるとともに前記巻芯の内側面を外装ケースの外部に連通させて放熱性を高めたコンデンサである。
【発明の効果】
【0013】
コンデンサ素子に設けた円筒形状の巻芯の開口端を外装ケース外に連通させることにより、コンデンサ素子内部の発熱が巻芯を通じて効率的に外装ケース外の外気に放散され、コンデンサ素子の放熱効果を向上することができる。
【0014】
また巻芯の開口端と反対側の他端を外装ケースの底面に固定することにより、外装ケース底面からも放熱が効率よく行われることになり、より放熱効果を向上することができる。
【0015】
さらに、必要に応じてこの巻芯の円筒内部に冷却用の気体や、絶縁油などの冷媒を循環させることにより、さらにコンデンサ素子内部の発熱を効率よく放熱することができるため、より信頼性の高いコンデンサを提供することができるという優れた効果も有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明のコンデンサについて、一実施の形態および図面を用いて説明する。
【0017】
(実施の形態1)
図1は本実施の形態1によるコンデンサの内部構造を示す断面図であり、巻芯11上に6μmのポリプロピレンフィルム(図示せず)の両面に亜鉛合金を蒸着して金属蒸着電極(図示せず)を形成した両面金属化フィルム12aと、金属蒸着電極を形成していない合わせフィルム12bとが交互になるように重ね合わせて巻回し、その両端面に取出電極13a、13bを設けたコンデンサ素子14がアルミニウムなどの金属製の外装ケース15に収納されている。
【0018】
巻芯11は、少なくともその外側の表面が絶縁処理されたアルミニウムや銅などの金属製の円筒であり、その上端側は開口端11aとなっており、この開口端11aが外装ケース蓋16にその上面から突出するように固定されている。
【0019】
巻芯11の他端側は閉じた底面11bであり、この底面11bは外装ケース15の底面15aに接している。
【0020】
コンデンサ素子14の取出電極13a、13bはおのおのリード線17a、17bにより外装ケース蓋16に設けられた端子18a、18bと接続されている。
【0021】
リード線17a、17bは図示していないが、絶縁確保のために必要部分が絶縁スリーブなどにより覆われている。
【0022】
また、コンデンサ素子14は図示しない絶縁ケースにより外装ケース15から絶縁されている。
【0023】
そして外装ケース15の内部には、コンデンサ素子の絶縁確保のため、ポリブテンオイルや菜種油、鉱油などの絶縁油19が満たされ、外装ケース蓋16が嫌気性接着剤により外装ケース15の上面に固定されることにより、密閉されている。
【0024】
同時に、巻芯11の開口端11a付近も嫌気性接着剤により外装ケース蓋16に接着固定されている。
【0025】
このように構成されたコンデンサにおいて、端子18a、18b間に電圧が印加された時のコンデンサ素子14は、左右方向が巻芯11に近い中央部で上下方向が取出電極13a、13b間のほぼ中央部の位置が最も発熱温度が高くなる。
【0026】
そして巻芯11に伝わった熱は、上方へ運ばれて外気と接する開口端11aから放散されるとともに、下方へ伝わった熱は巻芯11の底面11bから外装ケース底面15aに伝わり、外部に放散されることになる。
【0027】
このように、本実施の形態のコンデンサは、底面からの放熱のみならず、上方の開口端からも熱放散が行えるため、効率の良い放熱効果を上げることができる。
【0028】
次に、本実施の形態における実施例および比較例のコンデンサを試作し、放熱効果の比較試験を行った結果について説明する。
【0029】
まず本実施の形態における実施例として、厚み6μmの両面金属化フィルム12aと金属蒸着電極を形成していない合わせフィルム12bとが交互になるように、巻芯11上に巻回してコンデンサ素子14を作製し、巻芯11の上端側の開口端11aが外装ケース蓋16から突出するように外装ケース15に収納し、ポリブテン油を充填し、定格電圧440Vで静電容量が65μFのコンデンサを作製して試料1とした。
【0030】
これとは別に、本実施の形態である試料1と比較するための従来品の試料3として、巻回した後に巻芯11を除去した以外は試料1と同様のコンデンサを作製した。
【0031】
これらの試料1、3の各3個について、70℃の高温下で、定格電圧440Vの1.25倍(550V)の電圧を印加し、コンデンサ素子の中央部の温度を測定した。
【0032】
その結果を(表1)に示す。(表1)で温度上昇は周囲温度70℃のもとでコンデンサ素子の温度がどの程度上昇するかを示したものであり、コンデンサ素子の中央部の測定温度から70を引いた温度(℃)で表される。
【0033】
【表1】

【0034】
(表1)の結果より、従来品の試料3ではコンデンサ素子中央部の温度が3個の平均で85.6℃となり、使用温度上限の90℃に近くなったのに対して、本実施の形態による試料1では83.2℃と低く抑えられ、使用温度上限に対して約7℃の余裕があった。
【0035】
一般にコンデンサ等の故障率は温度により指数関数的に増大する傾向があり、使用温度上限近くにおいては、数度でも下げられるのであればその効果は大きいものである。
【0036】
(実施の形態2)
実施の形態2のコンデンサが実施の形態1のコンデンサと異なる点は、巻芯11の底面11bが外装ケース底面15aに設けた保持部21に固定されている点であり、実施の形態1と同じ要素には同じ符号を付けて説明を簡略化する。
【0037】
図2は実施の形態2によるコンデンサの外装ケース底面15a付近の要部拡大断面図である。
【0038】
図2において、巻芯11の底面11bは外装ケース15に設けられた保持部21により保持されている。
【0039】
そして巻芯11の開口端11aが外装ケース蓋16に固定され、底面11bが外装ケース15に設けられた保持部21に固定されることにより、コンデンサ素子14が外装ケース15内で確実に固定されるとともに、巻芯11の底面11bが保持部21に嵌合する構造となっているため、外装ケース底面15aからの放熱がより効果的に行われるものである。
【0040】
さらに、図示していないが、巻芯11の開口端11aから、巻芯11の内面に冷却された空気やフッ素系不活性液体(商品名フロリナート)や低粘度の絶縁油などの冷媒を入れることにより、さらに効果的な放熱を行うことができ、より高電圧に耐えうるコンデンサとすることもできる。
【0041】
この実施の形態2における実施例として、実施の形態1の試料1と同様に、厚み6μmの両面金属化フィルム12aと金属蒸着電極を形成していない合わせフィルム12bとが交互になるように、巻芯11上に巻回してコンデンサ素子14を作製し、巻芯11の上端側の開口端11aが外装ケース蓋16から突出するとともに巻芯11の開口端11aとは反対側の他端11b(巻芯11の底面)を外装ケース15に設けた保持部21に嵌合させて外装ケース15に収納し、ポリブテン油を充填して定格電圧440Vで静電容量が65μFのコンデンサを作製して試料2とした。
【0042】
この試料2について、実施の形態1と同様に70℃の高温下で、定格電圧440Vの1.25倍(550V)の電圧を印加し、コンデンサ素子14の中央部の温度を測定し、(表1)にその結果を併せて示した。
【0043】
また、試料2において、巻芯11内部に室温の絶縁油(ポリブテン油)を循環させて温度を測定した結果を(表1)に併せて示す。
【0044】
(表1)の結果より明らかなように、試料2ではコンデンサ素子14中央部の温度は82.0℃で実施の形態1による試料1よりさらに1℃低下している。
【0045】
これは試料2では巻芯11に伝えられた熱が保持部21を経由して外装ケース底面15aから放熱されることにより、さらに放熱効果が上がったものである。
【0046】
また、試料2で巻芯11に絶縁油を循環させた場合の温度は79.9℃となり、従来品の試料3に比べて温度上昇は約2/3となっており、絶縁油の循環によりさらに放熱効果を高められることが確認できた。
【0047】
以上実施の形態1、2により詳述したように、本発明のコンデンサによれば、極めて平易で製造が容易な構造により、コンデンサ素子14からの放熱効果を向上させ、より高電圧にも耐えうる信頼性の高いコンデンサとすることができる。
【0048】
なお、実施の形態1、2ではコンデンサ素子14の放電を防ぎ、絶縁性を確保するために絶縁油19を充填したが、これに限定されるものではなく、絶縁油19のかわりとして、エポキシ樹脂などの充填樹脂を用いることもできる。
【0049】
コンデンサ素子14としては、両面金属化フィルム12aと金属蒸着していない合わせフィルム12bとを交互に重ねて巻回したものを用いたが、これに限定されるものではなく、片面に金属蒸着した金属化フィルムを少なくとも2枚巻回したものであっても良い。
【0050】
また、金属蒸着電極としては、今回の試料では交流電流用途におけるコロナ放電の影響を低減するため、亜鉛合金を用いたが、これに限定されるものではなく、アルミニウムによる金属蒸着電極であってもよい。
【0051】
巻芯11としては、プラスチック樹脂のものも使用することはできるが、熱伝導の点から金属製のものを用いるのが好ましい。
【0052】
また、外装ケース15が直方体形状である場合、コンデンサ素子14を加圧し、偏平形状にして外装ケース15への収納効率を上げ、形状を小型化することが行われるが、この際にも巻芯11が金属製であれば偏平形状に変形しやすいため、この点からも巻芯11としては金属製のものを用いるのが好ましい。
【0053】
外装ケース15としては、これも内部のコンデンサ素子14からの放熱のためにはアルミニウムなどの金属製のものが好ましいが、樹脂製のケースであってもよい。
【0054】
なお、外装ケース15として樹脂製のケースを用いた場合には、絶縁ケースを省略することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明のコンデンサは、巻芯と、前記巻芯上に誘電体フィルムに金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回してその両端面に取出電極を設けたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する外装ケースと、外装ケース蓋とを有するコンデンサであって、前記巻芯は一端に開口端を有する有底の円筒で外表面が絶縁されており、前記巻芯の開口端が前記外装ケース蓋に固着されるとともに前記巻芯の内側面を外装ケースの外部に連通させた構成であり、コンデンサ素子内部の熱を効率よく外部に伝えることができ、コンデンサ素子の発熱を抑制し、信頼性の高いコンデンサを提供することができるため、各種電子機器、産業機器等に使用されるコンデンサに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態1におけるコンデンサの内部構造を示す断面図
【図2】同実施の形態2におけるコンデンサの要部断面図
【図3】従来のコンデンサの内部構造を示す断面図
【図4】同コンデンサ素子を説明するための斜視図
【符号の説明】
【0057】
11 巻芯
11a 開口端
11b 底面
12a 両面金属化フィルム
12b 合わせフィルム
13a、13b 取出電極
14 コンデンサ素子
15 外装ケース
15a 外装ケース底面
16 外装ケース蓋
17a、17b リード線
18a、18b 端子
19 絶縁油
21 保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯と、前記巻芯上に誘電体フィルムに金属蒸着電極を形成した金属化フィルムを巻回してその両端面に取出電極を設けたコンデンサ素子と、このコンデンサ素子を収納する外装ケースと、外装ケース蓋とを有するコンデンサであって、前記巻芯は一端に開口端を有する有底の円筒で外表面が絶縁されており、前記巻芯の開口端が前記外装ケース蓋に固着されるとともに前記巻芯の内側面が外装ケースの外部に連通していることを特徴とするコンデンサ。
【請求項2】
前記巻芯の開口端と反対側の他端が前記外装ケースの底面に固定されている請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記外装ケース内部に絶縁油または充填樹脂が満たされている請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記巻芯内部に液体または気体を満たして冷却を行う請求項1〜3のいずれか一つに記載のコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−277827(P2009−277827A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126766(P2008−126766)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】