説明

コンバイン

【課題】縦筒、横筒、伸縮筒及び排出筒からなる排出オーガ付きのコンバインにおいて、ユニバーサルデザインの観点から排出オーガに対する操作手段の操作性を向上させる。
【解決手段】無線式リモートコントロール装置101はL字状又は湾曲状の操作レバー103を備える。操作レバー103における横レバー部105の先端部には、その軸心r方向に沿ってのスライド操作と軸心r回りの首振り回動操作との2種類の操作が可能なグリップ部106を設ける。このように、リモートコントロール装置101における1本の操作レバー103に対して、排出オーガ8に対する水平旋回操作機能、起伏揺動操作機能、伸縮操作機能及び首振り回動操作機能という4種類の操作機能を集約することにより、排出オーガ8に対する4種類の操作を片手で実行できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、走行機体に搭載された穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えているコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、コンバインの走行機体には、穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガが搭載されている。一般的な排出オーガは、走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、この縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に連結された横筒とを備えている。排出オーガの旋回及び起伏揺動操作は、例えば走行機体の運転部に設けられた操作レバー等にて行われる。
【0003】
排出オーガにおける横筒の先端部の構造としては、例えば、伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能な伸縮筒を備えたもの(特許文献1参照)、回動用アクチュエータにて横筒の軸心回りに首振り回動可能な排出筒を備えたもの(特許文献2参照)、及び伸縮筒と排出筒との双方を備えたもの(特許文献3参照)等が知られている。これら伸縮筒や排出筒等のような補助筒の操作は、運転部のうち縦筒及び横筒用の操作レバーとは別の箇所(例えば操作盤のうち操作レバーの近傍箇所)に設けられたスイッチ等にて行われる。
【特許文献1】特開2004−187583号公報
【特許文献2】実開平4−9541号公報
【特許文献3】特開2004−8088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記従来の構成において、縦筒及び横筒用の操作レバーと補助筒用のスイッチとは、運転部内にそれぞれ別々(ばらばら)に設けられていたから、互いに操作上の関連性が高いにも拘らず、相互の位置関係が把握し易いとはいい難く、操作性の点や、昨今提唱されているユニバーサルデザイン(できるだけ多くの人が簡単且つスムーズに使用できるように設計すること)の点から見ると、まだまだ改善の余地があった。
【0005】
ところで、特許文献1に記載の排出オーガでは、横筒の外周面のうち左旋回方向(平面視で反時計方向)に向いた側面が青色で塗られている一方、右旋回方向(平面視で時計方向)に向いた側面が赤色で塗られている。すなわち横筒における外周面の左右が異なる2色で塗り分けられている。
【0006】
一方、操作レバーは、運転部における運転座席の左方に配置された操作盤の箇所に設けられている。この操作レバーは、前後左右(十字方向)に傾動可能に構成されたいわゆる十字レバーである。十字レバーを手動にて前方に傾動させると、起伏用アクチュエータの駆動にて横筒が上向き揺動し、後方に傾動させると、起伏用アクチュエータの駆動にて横筒が下向き揺動する。十字レバーを手動にて左方に傾動させると、旋回用アクチュエータの駆動にて縦筒ひいては横筒が平面視で反時計方向に旋回(左旋回)し、右方に傾動させると、旋回用アクチュエータの駆動にて縦筒ひいては横筒が平面視で時計方向に旋回(右旋回)する。十字レバーから手を離せば、該十字レバーは中立位置に自動復帰して排出オーガ(縦筒及び横筒)の駆動が停止する。
【0007】
また、操作盤のうち十字レバーより左側箇所には、横筒における左旋回方向に向いた側面の色と同じ青色の指示標識が付されており、十字レバーより右側箇所には、横筒における右旋回方向に向いた側面の色と同じ赤色の指示標識が付されている。
【0008】
かかる構成によると、排出オーガを旋回させるに際してオペレータは、横筒のうち旋回させたい方向に向いた側面の色を目視にて確認してから、該確認した色と同じ色の指示標識のある方に十字レバーを傾動させることになる。すなわち、排出オーガの旋回方向と十字レバーの左右傾動操作方向との対応関係を視覚的に把握できるという利点がある。
【0009】
しかし、特許文献1の構成では、横筒における外周面の色分けと操作盤上の指示標識とにより、排出オーガの旋回方向と十字レバーの左右傾動操作方向との対応関係が分かり易くはなっているものの、オペレータは排出オーガの旋回操作のたびに、横筒の外周面の色と操作盤上の指示標識とを一々確認し照合しなければならない。このため、排出オーガの旋回操作をオペレータの感覚に合わせた形で直感的且つ的確に行うのは難しいという問題があった。
【0010】
本願発明は、以上のような現状に鑑みてなされたものであり、ユニバーサルデザインを考慮して、排出オーガに対する操作手段の操作性を向上させること(オペレータの感覚に合った直感的な操作を可能にすること)を技術的課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この技術的課題を達成するため、請求項1の発明は、走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒とを有しているコンバインであって、前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、前記横レバー部には、その長手方向に沿ってスライド操作可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部のスライド操作により、前記伸縮筒が前記伸縮用アクチュエータにて前記横レバー部に対するスライド操作の方向と同じ方向に伸縮移動するように構成されているというものである。
【0012】
請求項2の発明は、走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを有しているコンバインであって、前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、前記横レバー部には、その軸心回りに首振り回動操作可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部の首振り回動操作により、前記排出筒が前記回動用アクチュエータにて前記横レバー部に対する首振り回動操作の方向と同じ方向に首振り回動するように構成されているというものである。
【0013】
請求項3の発明は、走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒と、前記伸縮筒に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを有しているコンバインであって、前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、前記横レバー部には、その長手方向に沿ってのスライド操作と前記横レバー部の軸心回りの首振り回動操作との2種類の操作が可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部のスライド操作により、前記伸縮筒が前記伸縮用アクチュエータにて前記横レバー部に対するスライド操作の方向と同じ方向に伸縮移動し、前記補助操作部の首振り回動操作により、前記排出筒が前記回動用アクチュエータにて前記横レバー部に対する首振り回動操作の方向と同じ方向に首振り回動するように構成されているというものである。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1〜3のうちいずれかに記載したコンバインにおいて、前記オーガ操作手段の前記筐体には、前記操作レバーのある側面に前記走行機体全体の略図が表されており、前記略図に対する前記操作レバーの平面視での位置関係を、前記走行機体に対する前記排出オーガのそれと対応させているというものである。
【0015】
請求項5の発明は、請求項1〜4のうちいずれかに記載したコンバインにおいて、前記オーガ操作手段は無線によるリモートコントロール装置であり、前記リモートコントロール装置は、前記走行機体に対して着脱可能に装着されているというものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明に係るコンバインでは、排出オーガは、走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒とを備えている。前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記横レバー部には、その長手方向に沿ってスライド操作可能な補助操作部が設けられている。
【0017】
そして、前記操作レバーを縦レバー部の軸心回りに旋回操作したときは、前記横レバー部の向きに合わせて前記縦筒が縦軸心回りに水平旋回し、前記縦レバー部の根元部を支点として前記操作レバーを上下傾動操作したときは、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に合わせて前記横筒が起伏揺動し、また、前記操作レバーの前記グリップ部を前記横レバー部の軸心方向にスライド操作したときは、このスライド操作の方向と同じ方向に向けて、前記伸縮筒が前記横筒の長手方向に沿って伸縮移動するように設定されている。
【0018】
つまり、前記オーガ操作手段における1本の前記操作レバーに、前記排出オーガに対する水平旋回操作機能、起伏揺動操作機能、及び伸縮操作機能という3種類の操作機能を集約しているから、オペレータは前記排出オーガに対する3種類の操作を片手で実行でき、操作性がよいという効果を奏する。
【0019】
請求項2の発明に係るコンバインでは、排出オーガは、前記排出オーガは、走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを備えている。前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記横レバー部には、その軸心回りに首振り回動操作可能な補助操作部が設けられている。
【0020】
そして、前記操作レバーを縦レバー部の軸心回りに旋回操作したときは、前記横レバー部の向きに合わせて前記縦筒が縦軸心回りに水平旋回し、前記縦レバー部の根元部を支点として前記操作レバーを上下傾動操作したときは、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に合わせて前記横筒が起伏揺動し、また、前記操作レバーの前記グリップ部を前記横レバー部の軸心回りに首振り回動操作したときは、この首振り回動操作の方向と同じ方向に向けて、前記排出筒が前記横筒の軸心回りに首振り回動するように設定されている。
【0021】
つまり、この場合も、前記オーガ操作手段における1本の前記操作レバーに、前記排出オーガに対する水平旋回操作機能、起伏揺動操作機能、及び首振り回動操作機能という3種類の操作機能を集約しているから、この場合も、オペレータは前記排出オーガに対する3種類の操作を片手で実行でき、操作性がよいという効果を奏する。
【0022】
請求項3の発明に係るコンバインでは、排出オーガは、走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒と、前記伸縮筒に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを備えている。前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、前記横レバー部には、その長手方向に沿ってのスライド操作と前記横レバー部の軸心回りの首振り回動操作との2種類の操作が可能な補助操作部が設けられている。
【0023】
そして、前記操作レバーを縦レバー部の軸心回りに旋回操作したときは、前記横レバー部の向きに合わせて前記縦筒が縦軸心回りに水平旋回し、前記縦レバー部の根元部を支点として前記操作レバーを上下傾動操作したときは、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に合わせて前記横筒が起伏揺動するように設定されている。また、前記操作レバーの前記グリップ部を前記横レバー部の軸心方向にスライド操作したときは、このスライド操作の方向と同じ方向に向けて、前記伸縮筒が前記横筒の長手方向に沿って伸縮移動し、前記グリップ部を前記横レバー部の軸心回りに首振り回動操作したときは、この首振り回動操作の方向と同じ方向に向けて、前記排出筒が前記横筒の軸心回りに首振り回動するように設定されている。
【0024】
つまり、前記オーガ操作手段における1本の前記操作レバーに、前記排出オーガに対する水平旋回操作機能、起伏揺動操作機能、伸縮操作機能、及び首振り回動操作機能という4種類の操作機能を集約しているから、オペレータは前記排出オーガに対する4種類の操作を片手で実行でき、操作性がよいという効果を奏する。
【0025】
また、請求項1〜3のいずれの構成においても、前記操作レバーの操作をオペレータの感覚に合わせた形で直感的に実行すれば、前記排出オーガをオペレータの意図する駆動方向に的確に駆動させることができ、前記排出オーガを駆動させる際に前記横筒、前記伸縮筒又は前記排出筒の位置を前記従来のように目視で一々チェックしたりする必要がない。このため、オペレータにとって前記操作レバーの操作性が格段に向上するばかりか、前記排出オーガを駆動させたい方向と逆向きに駆動させるような誤操作を防止でき、前記排出オーガ駆動時の安全性が向上する。
【0026】
請求項4の発明によると、前記オーガ操作手段の前記筐体には、前記操作レバーのある側面に前記走行機体全体の略図が表されており、前記略図に対する前記操作レバーの平面視での位置関係を、前記走行機体に対する前記排出オーガのそれと対応させているから、前記操作レバーの操作と前記排出オーガの駆動との関係(前記操作レバーをどのように操作すれば前記排出オーガがどう駆動するか)が極めて分かり易く、多くの人が上記関係を直感的に把握できる。このため、前記オーガ操作手段は、多くの人が簡単且つスムーズに操作でき、ユニバーサルデザインの観点からもユーザーフレンドリーなものとなるのである。
【0027】
請求項5の発明によると、前記オーガ操作手段は無線によるリモートコントロール装置であり、前記リモートコントロール装置は前記走行機体に対して着脱可能に装着されているから、オペレータは前記走行機体から遠く離れていても前記排出オーガに対する操作を実行でき、穀粒の排出作業を行えるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図10)に基づいて説明する。図1は本実施形態におけるコンバインの側面図、図2はコンバインの平面図、図3はコンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図、図4は排出オーガの作動態様を示す側面図、図5は伸縮筒の作動態様を示す側断面図、図6は排出コンベヤの要部拡大側断面図、図7は排出筒の作動態様を示す正面図、図8はリモートコントロール装置の概略斜視図、図9は(a)(b)共にリモートコントロール装置の操作態様を説明する平面図、図10はコントローラの機能ブロック図である。
【0029】
(1).コンバインの全体構造
まず、図1及び図2を参照しながら、コンバインの全体構造について説明する。
【0030】
本実施形態における4条刈り用のコンバインは、左右一対の走行クローラ2,2にて支持された走行機体1を備えている。走行機体1の前部には、穀稈を刈り取りながら取り込む刈取前処理装置3が単動式の油圧シリンダ(図示せず)にて昇降調節可能に装着されている。走行機体1には、フィードチェーン6付きの脱穀装置5と、脱穀後の穀粒を貯留するための穀粒タンク7とが横並び状に搭載されている。本実施形態では、脱穀装置5が走行機体1の進行方向左側に、穀粒タンク7が走行機体1の進行方向右側に配置されている。刈取前処理装置3と穀粒タンク7との間には、走行機体1の向き及び速度を変更操作するための操向丸ハンドル98や運転座席99等を有する運転部10が設けられている。運転部10の下方にはエンジン11(図2及び図3参照)が配置されている。
【0031】
刈取前処理装置3は、バリカン式の刈刃装置12、4条分の穀稈引起装置13、穀稈搬送装置14及び分草体15を備えている。刈刃装置12は、刈取前処理装置3を構成する刈取フレーム19の下方に設けられている。穀稈引起装置13は刈取フレーム19の上方に配置されている。穀稈搬送装置14は穀稈引起装置13とフィードチェーン6の前端部との間に配置されている。分草体15は穀稈引起装置13の下部前方に突設されている。刈取前処理装置3にて刈り取りられた刈取穀稈はフィードチェーン6に受け継ぎ搬送され、脱穀装置5にて脱穀処理される。
【0032】
脱穀装置5における扱室の下方には、扱網やチャフシーブ等による揺動選別を行う揺動選別機構と、唐箕ファン16(図3参照)による風選別を行う風選別機構が配置されている。これら両選別機構にて選別されて一番受け樋(図示せず)に集められた穀粒は、一番コンベヤ33及び揚穀コンベヤ34(図3参照)を介して穀粒タンク7に集積される。藁屑は、脱穀装置5の後部に配置された吸引ファン17(図3参照)に吸い込まれたのち、排出口(図示せず)から機外へ排出される。穀粒タンク7内の穀粒は排出オーガ8を介して機外に搬出される。
【0033】
なお、フィードチェーン6の後端から排稈チェーン18(図2及び図3参照)に受け継がれた排稈は、長い状態で走行機体1の後方に排出されるか、又は排稈カッタ(図示せず)にて適宜長さに短く切断されたのち、走行機体1の後方に排出される。
【0034】
(2).コンバインの動力伝達系統
次に、図3を参照しながら、コンバインの動力伝達系統について説明する。
【0035】
エンジン11の動力は、当該エンジン11に対して左右外向きに突設された出力軸21の一方から、走行クローラ2,2を駆動させる走行ミッション装置(図示せず)及び刈取前処理装置3と、脱穀装置5との2方向に分岐して伝達される。エンジン11の他の動力は、出力軸21の他方から排出オーガ8にも伝達される。
【0036】
出力軸21の一方から脱穀装置5に向けての分岐動力は、脱穀クラッチ27を介して唐箕ファン16の唐箕軸28に伝達される。唐箕軸28に伝達された動力の一部は、ベルト29及びプーリ伝動により、一番コンベヤ33及び揚穀コンベヤ34と、二番コンベヤ35及び還元コンベヤ36と、揺動選別機構の揺動軸42と、吸引ファン17の吸引軸37とに伝達される。また、唐箕軸28からは、FCクラッチ44及びフィードチェーン軸43を経て、フィードチェーン6の前端にも動力伝達される。更に、唐箕軸28からの動力は、扱胴入力軸38にも伝達される。
【0037】
唐箕軸28から扱胴入力軸38に伝達された動力は、扱室内の扱胴39及び再脱穀のための二番処理胴40という2方向に分岐して伝達される。扱胴入力軸38から扱胴39への分岐動力は、扱胴39の回転軸47及び排稈チェーン18に伝達される。扱胴入力軸38から二番処理胴40への分岐動力は、処理胴入力軸48を経由して二番処理胴40の回転軸49に伝達される。処理動入力軸48からは二番ロータの回転軸50にも分岐動力が伝達される。
【0038】
出力軸21から排出オーガ8に向けての分岐動力は、グレン入力ギヤ機構51及び動力継断用のオーガクラッチ52を介して、穀粒タンク7内の底コンベヤ53及び排出オーガ8における縦筒61(詳細は後述する)内の縦コンベヤ54に動力伝達され、次いで、受継スクリュー55を介して排出オーガ8における横筒62(詳細は後述する)内の排出コンベヤ56に動力伝達される。
【0039】
(3).排出オーガの詳細構造
次に、図4〜図7を参照しながら、排出オーガの詳細構造について説明する。
【0040】
穀粒タンク7内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガ8は、走行機体1の後部に縦軸心Y回りに旋回可能に立設された縦筒61と、この縦筒61の上端に連設された受継ケース63と、この受継ケース63の継手部に起伏揺動可能に連結された横筒62と、当該横筒62の先端部に対して伸縮移動可能に被嵌された伸縮筒64と、この伸縮筒64の先端部に対して横筒62及び伸縮筒64共通の長手軸心R回りに首振り回動可能に取り付けられた下向き開口状の排出筒65とを備えている。縦筒61には縦コンベヤ54が内蔵されており、横筒62(伸縮筒64及び排出筒65を含む)には排出コンベヤ56が内蔵されている。受継ケース63内には、縦コンベヤ54から排出コンベヤ56に穀粒の受け渡しをする受継スクリュー55が設けられている。
【0041】
縦筒61は、その長手中途部の外周側に配置された縦筒用ギヤ機構66と、旋回用アクチュエータとして正逆回転可能に構成された駆動モータ67とにより、縦軸心Y回りに旋回(水平旋回)するように構成されている。この場合、縦筒61の上端にある受継ケース63及び横筒62も縦筒61と共に水平旋回する。
【0042】
本実施形態の縦筒用ギヤ機構66は、駆動モータ67の軸(図示せず)に取り付けられた駆動ギヤ68と、縦筒61の外周に固着された従動ギヤ69とからなっており、駆動ギヤ68を従動ギヤ69に噛み合わせることによって、駆動モータ67の動力を縦筒61に伝達するように構成されている。旋回用アクチュエータとしての駆動モータ67は、減速用ギヤボックス70と、ロータリエンコーダやロータリポテンショメータ等の旋回角センサ71とを備えている。旋回角センサ71は、縦筒61の水平旋回角度θ(図2参照)ひいては横筒62の水平旋回位置を検出するためのものであり、駆動モータ67の軸に関連させて設けられている。なお、減速用ギヤボックス70内には、縦筒61の水平旋回を停止させて位置決めするための電磁ブレーキ(図示せず)が設けられている。
【0043】
横筒62は、縦筒61との間に装架された起伏用アクチュエータとしてのオーガ用油圧シリンダ72により、受継ケース63回りに起伏揺動して上下傾斜角度φ(図4参照)を変更し得るように構成されている。本実施形態では、オーガ用油圧シリンダ72の一端が縦筒61の外面に固着されたブラケット73に対してピン74で回動可能に枢着されている一方、他端が横筒62の外面に対してピン75で回動可能に枢着されている。そして、ポテンショメータ等の上下回動角センサ76が、オーガ用油圧シリンダ72における一端のピン74に関連させて設けられている。この上下回動角センサ76は、横筒62の上下傾斜角度φひいては横筒62の最先端に位置する排出筒65の高さ位置を検出するためのものである。オーガ用油圧シリンダ72と油圧ポンプ(図示せず)とを繋ぐ油圧回路には、圧油の供給又は停止を選択してオーガ用油圧シリンダ72の駆動を制御する電磁制御弁77が設けられている。
【0044】
なお、脱穀装置5の上面前部には上向き開放状のオーガレスト78が設けられており(図1及び図2参照)、排出オーガ8を使用しない状態では、横筒62の長手中途部がオーガレスト78に載置(収納)される。以下、オーガレスト78に載置されたときの横筒62の位置を収納位置と称する。オーガレスト78には、横筒62の有無を検出するための接触センサ等のレスト検出器79(図10参照)が取り付けられている。
【0045】
図5(a)(b)に示すように、横筒62の長手軸心Rに沿って伸縮移動可能な伸縮筒64は、横軸62の先端部に対して長手軸心R回りに回転のみ可能に被嵌された内筒80と、この内筒80に対して長手軸心Rに沿って移動可能に被嵌された外筒81と、内筒80の基端外周側に配置された伸縮用ギヤ機構82と、伸縮用アクチュエータとしての伸縮用電動モータ83とを備えている。
【0046】
内筒80の外周面には螺旋状の転動溝84が形成されている一方、外筒81における内周面の基端側には、多数個のボール85が内筒80の転動溝84内を転動可能な状態で装着されている。伸縮用ギヤ機構82は、伸縮用電動モータ83の軸(図示せず)に取り付けられた横長のウォーム86と、内筒80の外周に固着されたウォームホイール87とからなるウォームギヤ機構であり、ウォーム86をウォームホイール87に噛み合わせることによって、伸縮用電動モータ83の動力を内筒80に伝達するように構成されている。
【0047】
伸縮用電動モータ83の駆動にて伸縮用ギヤ機構82を介して内筒80を長手軸心R回りに回転させると、外筒81側のボール85が内筒80側の転動溝84を転動する。その結果、外筒81は内筒80に対して長手軸心R方向に往復移動する。かかる外筒81の往復移動により、排出オーガ8における長手軸心R方向の長さが伸縮調節される。伸縮筒64(具体的には外筒81)の先端部にある排出筒65も、外筒81と共に長手軸心R方向に往復移動する。
【0048】
伸縮用電動モータ83には、ロータリエンコーダやロータリポテンショメータ等の伸縮用回転角センサ83a(図10参照)が備えられている。伸縮用回転角センサ83aは、内筒80の長手軸心R回りの回転角度(回転量)から外筒81のスライド位置を検出するためのものであり、伸縮用電動モータ83の軸に関連させて設けられている。
【0049】
横筒62(伸縮筒64及び排出筒65を含む)に内蔵された排出コンベヤ56の先端部は、長手軸心Rと直交する方向に複数本のスパイラ体88に分割されている(本実施形態では3本)。隣り合ったスパイラ体88の軸管89には、当該軸管89より小径で円筒状の接続管90がその長手方向に沿ってスライド可能に差し込まれている。これにより、隣り合ったスパイラ体88同士は接続管90を介して連結され、複数本のスパイラ体88が横筒62(伸縮筒64及び排出筒65を含む)内において連続して延びる1本の排出コンベヤ56に構成されている。
【0050】
本実施形態では、一方のスパイラ体88の軸管89と接続管90の一端とがねじ91にて固定されている。他方のスパイラ体88の軸管89にはその長手方向に沿って延びる長溝穴92が形成されている。この長溝穴92を介して、摺動ピン93が接続管90の他端に固着されている(図6参照)。そして、最先端にあるスパイラ体88の軸管89は排出筒65の内面に回転可能に軸支されている。外筒81と共に排出筒65を長手軸心R方向に往復移動させると、この往復移動に連動して長溝穴92を有するスパイラ体88が長手軸心R方向にスライド移動する。従って、排出コンベヤ56全体の長さも外筒81及び排出筒65と共に伸縮調節される。
【0051】
図5(a)(b)及び図7に示すように、伸縮筒64の先端部にある下向き開口状の排出筒65は、当該排出筒65のうち外筒81との接続部65aの外周側に配置された首振り用ギヤ機構94と、回動用アクチュエータとして正逆回転可能に構成された首振り用電動モータ95とにより、長手軸心R回りに首振り回動するように構成されている。首振り用ギヤ機構94は、首振り用電動モータ95の軸(図示せず)に取り付けられた横長のウォーム96と、排出筒65における接続部65aの外周に固着されたウォームホイール97とからなるウォームギヤ機構であり、ウォーム96をウォームホイール97に噛み合わせることによって、首振り用電動モータ95の動力を排出筒65の接続部65aに伝達するように構成されている。
【0052】
首振り用電動モータ95にも、ロータリエンコーダやロータリポテンショメータ等の首振り用回転角センサ95a(図10参照)が備えられている。首振り用回転角センサ95aは、排出筒65における接続部65aの首振り回動角度(回動量)を検出するためのものであり、首振り用電動モータ95aの軸に関連させて設けられている。
【0053】
(4).オーガ操作手段の構成
次に、図8及び図9(a)(b)を参照しながら、オーガ操作手段の構成について説明する。
【0054】
運転部10における運転座席99の左方には、前後に長いサイドコラム100が配置されている。このサイドコラム100に形成された凹所100aには、排出オーガ8を作動操作するためのオーガ操作手段の一環として、リモートコントロール装置101が着脱可能に取り付けられている。リモートコントロール装置101は、電池等が内蔵された筐体102と、この筐体102から外向きに突出した縦レバー部104及びこれに交差して延びる横レバー部105とからなる側面視逆L字状又は湾曲状の操作レバー103とを備えている。
【0055】
操作レバー103は、縦レバー部104の軸心y回りに旋回可能(矢印A方向参照)で、且つ縦レバー部104の根元部を支点として横レバー部105を起伏揺動させるような方向に上下傾動可能に構成されている(矢印B方向参照)。横レバー部105の先端部には、補助操作部としてのグリップ部106が設けられている。このグリップ部106は、横レバー部104の長手方向に沿ってスライド操作可能(矢印C方向参照)で、且つ横レバー部104の軸心r回りに首振り回動操作可能に構成されている(矢印D方向参照)。すなわち、グリップ部106は、それ1つでスライド操作と首振り回動操作との2種類の操作が可能なものになっている。
【0056】
筐体102の内部には、操作レバー103の旋回角度(水平旋回位置)を検出するための水平旋回センサ107と、操作レバー103の上下傾動角度を検出するための上下傾動センサ108とが、縦レバー部104に関連させて設けられている。また、筐体102内には、グリップ部106のスライド操作位置を検出するためのスライドセンサ109、グリップ部106の首振り回動角度(首振り回動位置)を検出するための首振り回動センサ110、及びこれら各センサ107〜110の検出信号(指令信号)を走行機体1に配置された受信器112に向けて送信する送信器111も設けられている(図10参照)。本実施形態の水平旋回センサ107、上下傾動センサ108及び首振り回動センサ110はロータリエンコーダ式又はロータリポテンショメータ式等のものであり、スライドセンサ109はリニアエンコーダ式等のものである。なお、リモートコントロール装置101における送信器111からの指令信号を受信する受信器112は、指令信号を受信しやすいように例えば受継ケース63のような高所に配置されている。
【0057】
オペレータが操作レバー103を縦レバー部104の軸心y回り(矢印A方向)に旋回操作すると、水平旋回センサ107の検出信号が送信器111から受信器112を経て後述する電子式制御装置120に入力される。そして、この検出信号に基づいて電子式制御装置120が駆動モータ67の駆動を制御することによって、操作レバー103における横レバー部105と横筒62との水平向きが対応するように、縦筒61が縦軸心Y回りに水平旋回する。縦レバー部104の根元部を支点として操作レバー103を矢印B方向に上下傾動操作すると、上下傾動センサ108の検出信号が送信器111から受信器112を経て電子式制御装置120に入力される。そして、この検出信号に基づいて電子式制御装置120がオーガ用油圧シリンダ72の伸縮駆動を制御することによって、操作レバー103における横レバー部105の上下傾斜姿勢に合うように横筒62が受継ケース63回りに起伏揺動する。
【0058】
また、オペレータが操作レバー103のグリップ部106を横レバー部105の軸心r方向(矢印C方向)にスライド操作すると、スライドセンサ109の検出信号が送信器111から受信器112を経て電子式制御装置120に入力される。そして、この検出信号に基づいて電子式制御装置120が伸縮用電動モータ83の駆動を制御することにより、横レバー部105に対するグリップ部106のスライド操作の方向と同じ方向に向けて、伸縮筒64の外筒81が横筒62の長手軸心Rに沿って伸縮移動する。グリップ部106を横レバー部105の軸心r回り(矢印D方向)に首振り回動操作すると、首振り回動センサ110の検出信号が送信器111から受信器112を経て電子式制御装置120に入力される。そして、この検出信号に基づいて電子式制御装置120が首振り用電動モータ95の駆動を制御することにより、横レバー部105に対するグリップ部106の首振り回動操作の方向と同じ方向に向けて、排出筒65が横筒22の長手軸心R回りに首振り回動するのである。
【0059】
オペレータが操作レバー103(グリップ部106を含む)の操作を止めると、操作レバー103をそのときの操作位置に保持した状態で、各種モータ67,83,95や油圧シリンダ72、ひいては排出オーガ8の駆動が停止する。
【0060】
筐体102のうち操作レバー103側の広幅面には、走行機体1全体の略図113が図示されている。図8に示すように、操作レバー103の縦レバー部104は、略図113中で排出オーガ8の縦筒61に相当する箇所から外向きに突出しており、略図113に対する操作レバー103の平面視での位置関係が走行機体1に対する排出オーガ8の平面視での位置関係と対応するように設定されている。換言すると、走行機体1に対する排出オーガ8の平面視での位置関係は、略図113に対する操作レバー103の平面視での位置関係により模型化して表されている。
【0061】
この場合、例えば排出オーガ8の横筒62が収納位置にある状態(図2の実線状態参照)では、操作レバー103の横レバー部105を、図9(a)の平面視で略図113と重なり且つ左斜め前方に向けて延びる初期位置(図8の実線状態も参照)に位置させている。そして、図9(a)に一点鎖線で示す操作位置に操作レバー103を旋回操作すれば、排出オーガ8の縦筒61が縦軸心Y回りに水平旋回して、略図113に対する操作レバー103の位置(図9(a)の一点鎖線状態参照)と同じように、横筒62が図2の一点鎖線で示す旋回位置まで移動するのである。
【0062】
なお、操作レバー103のグリップ部106には上向きに開口した凹み114が形成されている。この凹み114に親指を沿わせてグリップ部106及び横レバー部105を握るようにすれば、グリップ部106のスライド操作や首振り回動操作がスムーズに行え、非常に操作性がよい。
【0063】
(5).排出オーガの制御を実行するための構成
次に、図10を参照しながら、排出オーガの制御を実行するための構成について説明する。
【0064】
制御手段としての電子式制御装置120は、各種演算処理や制御を実行する中央処理装置(CPU)、制御プログラムや各種データを記憶させるための読み出し専用メモリ(ROM)、制御プログラムや各種データを一時的に記憶させるための随時読み書き可能メモリ(RAM)、各入出力系機器(センサやアクチュエータ等)にデータを伝送する入出力インターフェイス(いずれも図示せず)等を備えている。
【0065】
電子式制御装置120の入力インターフェイスには、リモートコントロール装置101内の送信器111からの指令信号を受信する受信器112、縦筒61の水平旋回角度θ(図2参照)を検出するための旋回角センサ71、横筒62の上下傾斜角度φ(図4参照)を検出するための上下回動角センサ76、内筒80の長手軸心R回りの回転角度(回転量)から外筒81のスライド位置を検出するための伸縮用回転角センサ83a、排出筒65における接続部65aの首振り回動角度(回動量)を検出するための首振り用回転角センサ95a、横筒62の有無を検出するためのレスト検出器79等がそれぞれ接続されている。
【0066】
他方、電子式制御装置120の出力インターフェイスには、縦筒61に対する駆動モータ67のモータ駆動回路115、横筒62に対するオーガ用油圧シリンダ72の駆動を制御する電磁制御弁77の制御弁駆動回路116、伸縮筒64に対する伸縮用電動モータ83のモータ駆動回路117、排出筒65に対する首振り用電動モータ95のモータ駆動回路118等がそれぞれ接続されている。
【0067】
(6).作用及び効果
以上の構成によると、排出オーガ8を作動操作するためのリモートコントロール装置101の操作レバー103は、筐体102から外向きに突出した縦レバー部104とこれに交差して延びる横レバー部105とにより側面視逆L字状又は湾曲状に形成されていて、横レバー部105の先端部には、その軸心r方向に沿ってのスライド操作と軸心r回りの首振り回動操作との2種類の操作が可能なグリップ部106が設けられている。
【0068】
そして、操作レバー103を縦レバー部104の軸心y回りに旋回操作したときは、横レバー部105の向きに合わせて縦筒61が縦軸心Y回りに水平旋回し、縦レバー部104の根元部を支点として操作レバー103を上下傾動操作したときは、横レバー部105の上下傾斜姿勢に合わせて横筒62が受継ケース63回りに起伏揺動するように設定されている。また、グリップ部106を横レバー部105の軸心r方向にスライド操作したときは、このスライド操作の方向と同じ方向に向けて、伸縮筒64が横筒62の長手軸心Rに沿って伸縮移動し、グリップ部106を軸心r回りに首振り回動操作したときは、この首振り回動操作の方向と同じ方向に向けて、排出筒65が横筒22の長手軸心R回りに首振り回動するように設定されている。
【0069】
つまり、リモートコントロール装置101における1本の操作レバー103に、排出オーガ8に対する水平旋回操作機能、起伏揺動操作機能、伸縮操作機能及び首振り回動操作機能という4種類の操作機能を集約しているから、オペレータは排出オーガ8に対する4種類の操作を片手で実行でき、操作性がよい。
【0070】
特に、横レバー部105の先端部に設けられたグリップ部106を、それ1つでスライド操作と首振り回動操作との2種類の操作が可能なものに構成しているから、オペレータは手を操作レバー103の横レバー部105から離さずに例えば親指等でグリップ部106を簡単に操作でき、操作性がより一層向上するのである。排出オーガ8関連の操作手段の集約化は、運転部10周りの省スペース化にも寄与する。
【0071】
また、本実施形態によると、排出オーガ8を縦軸心Y回りに水平旋回させたい場合は、操作レバー103を縦レバー部104の軸心y回りに旋回操作すればよく、横筒62を起伏揺動させたい場合は、縦レバー部104の根元部を支点として操作レバー103を上下傾動操作すればよい。そして、伸縮筒64を横筒62の長手軸心Rに沿って伸縮移動させたい場合は、操作レバー103のグリップ部106を横レバー部105の軸心r方向にスライド操作すればよいし、排出筒65を横筒22の長手軸心R回りに首振り回動させたい場合は、グリップ部106を横レバー部105の軸心r回りに首振り回動操作すればよい。
【0072】
すなわち、排出オーガ8を駆動させる際に横筒62、伸縮筒64及び排出筒65の位置を目視で一々チェックしたりしなくても、操作レバー103(グリップ部106を含む)の操作をオペレータの感覚に合わせた形で直感的に実行すれば、排出オーガ8をオペレータの意図する駆動方向に的確に駆動させることができる。このため、オペレータにとって操作レバー103の操作性が格段に向上するばかりか、排出オーガ8を駆動させたい方向と逆向きに駆動させるような誤操作を防止でき、排出オーガ8駆動時の安全性が向上する。
【0073】
しかも、リモートコントロール装置101の筐体102のうち操作レバー103側の広幅面に、走行機体1全体の略図113を図示していて、この略図113に対する操作レバー103の平面視での位置関係を、走行機体1に対する排出オーガ8の平面視での位置関係と対応させているから、操作レバー103の操作と排出オーガ8の駆動との関係(操作レバー103をどのように操作すれば排出オーガ8がどう駆動するか)が極めて分かり易く、多くの人が上記関係を直感的に把握できる。このため、本実施形態のリモートコントロール装置101の構成を採用すると、多くの人が簡単且つスムーズに操作でき、ユニバーサルデザインの観点からもユーザーフレンドリーな操作手段となるのである。
【0074】
更に、オーガ操作手段としてのリモートコントロール装置101は、無線式のものであって、走行機体1の運転部10に着脱可能に装着されているから、オペレータは運転部10から離れていても排出オーガ8に対する操作を実行でき、穀粒の排出作業を行える。
【0075】
(7).その他
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば本願発明を適用するコンバインの排出オーガは、縦筒及び横筒以外の構成として、伸縮筒と排出筒とのうち少なくとも一方を備えていればよい。従って、操作レバーにおける横レバー部の補助操作部の機能は、排出オーガの構成に対応してスライド操作と首振り回動操作とのうち少なくとも一方あればよい。オーガ操作手段は、有線によるリモートコントロール装置であってもよいし、運転部等に固定式に設けられていてもよい。オーガ操作手段としてのリモートコントロール装置が無線式である場合、リモートコントロール装置の取り付け箇所は走行機体としたが、これはコンバインの特定箇所に限定する意味ではなく、例えば運転部以外にも排出オーガにおける横筒の先端部等に着脱可能に装着してもよい。その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】コンバインの側面図である。
【図2】コンバインの平面図である。
【図3】コンバインの動力伝達系統を示すスケルトン図である。
【図4】排出オーガの作動態様を示す側面図である。
【図5】伸縮筒の作動態様を示す側断面図であり、(a)は短縮状態、(b)は伸長状態の図である。
【図6】排出コンベヤの要部拡大側断面図である。
【図7】排出筒の作動態様を示す正面図である。
【図8】リモートコントロール装置の概略斜視図である。
【図9】(a)(b)共にリモートコントロール装置の操作態様を説明する平面図である。
【図10】コントローラの機能ブロック図である。
【符号の説明】
【0077】
1 走行機体
8 排出オーガ
10 運転部
56 排出コンベヤ
61 縦筒
62 横筒
63 受継ケース
64 伸縮筒
65 排出筒
65a 接続部
66 縦筒用ギヤ機構
67 駆動モータ
71 旋回角センサ
72 オーガ用油圧シリンダ
76 上下回動角センサ
77 電磁制御弁
80 内筒
81 外筒
82 伸縮用ギヤ機構
83 伸縮用電動モータ
83a 伸縮用回転角センサ
94 首振り用ギヤ機構
95 首振り用電動モータ
95a 首振り用回転角センサ
101 リモートコントロール装置
102 筐体
103 操作レバー
104 縦レバー部
105 横レバー部
106 グリップ部
107 水平旋回センサ
108 上下傾動センサ
109 スライドセンサ
110 首振り回動センサ
111 送信器
112 受信器
113 略図
120 電子式制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒とを有しているコンバインであって、
前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、
前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、
前記横レバー部には、その長手方向に沿ってスライド操作可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部のスライド操作により、前記伸縮筒が前記伸縮用アクチュエータにて前記横レバー部に対するスライド操作の方向と同じ方向に伸縮移動するように構成されている、
コンバイン。
【請求項2】
走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを有しているコンバインであって、
前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は、筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、
前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、
前記横レバー部には、その軸心回りに首振り回動操作可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部の首振り回動操作により、前記排出筒が前記回動用アクチュエータにて前記横レバー部に対する首振り回動操作の方向と同じ方向に首振り回動するように構成されている、
コンバイン。
【請求項3】
走行機体に搭載した穀粒タンク内の穀粒を機外へ排出するための排出オーガを備えており、前記排出オーガは、前記走行機体に対して旋回用アクチュエータにて縦軸心回りに旋回可能に立設された縦筒と、前記縦筒の上端に対して起伏用アクチュエータにて起伏揺動可能に設けられた横筒と、前記横筒の先端部に対して伸縮用アクチュエータにて伸縮移動可能に設けられた伸縮筒と、前記伸縮筒に対して回動用アクチュエータにて前記横筒の軸心回りに首振り回動可能に設けられた排出筒とを有しているコンバインであって、
前記排出オーガを作動操作するためのオーガ操作手段を更に備えており、前記オーガ操作手段は筐体から外向きに突出した縦レバー部とこれに交差して延びる横レバー部とからなるL字状又は湾曲状の操作レバーを有しており、
前記操作レバーは、前記縦レバー部の軸心回りに旋回可能で、且つ前記縦レバー部の根元部を支点として上下傾動可能に構成されており、前記操作レバーの旋回操作により、前記横レバー部の向きに応じて前記縦筒が前記旋回用アクチュエータにて旋回し、前記操作レバーの上下傾動操作により、前記横レバー部の上下傾斜姿勢に応じて前記横筒が前記起伏用アクチュエータにて起伏揺動するように構成されている一方、
前記横レバー部には、その長手方向に沿ってのスライド操作と前記横レバー部の軸心回りの首振り回動操作との2種類の操作が可能な補助操作部が設けられており、前記補助操作部のスライド操作により、前記伸縮筒が前記伸縮用アクチュエータにて前記横レバー部に対するスライド操作の方向と同じ方向に伸縮移動し、前記補助操作部の首振り回動操作により、前記排出筒が前記回動用アクチュエータにて前記横レバー部に対する首振り回動操作の方向と同じ方向に首振り回動するように構成されている、
コンバイン。
【請求項4】
前記オーガ操作手段の前記筐体には、前記操作レバーのある側面に前記走行機体全体の略図が表されており、前記略図に対する前記操作レバーの平面視での位置関係を、前記走行機体に対する前記排出オーガのそれと対応させている、
請求項1〜3のうちいずれかに記載したコンバイン。
【請求項5】
前記オーガ操作手段は無線によるリモートコントロール装置であり、前記リモートコントロール装置は前記走行機体に対して着脱可能に装着されている、
請求項1〜4のうちいずれかに記載したコンバイン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−209277(P2007−209277A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33788(P2006−33788)
【出願日】平成18年2月10日(2006.2.10)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】