説明

コンバータ回路、並びにそれを備えたモータ駆動制御装置、空気調和機、冷蔵庫、及び誘導加熱調理器

【課題】コンバータ回路の小型・軽量化を図ることができ、スイッチング損失を低減することができるコンバータ回路、並びにそれを備えたモータ駆動制御装置、空気調和機、冷蔵庫、及び誘導加熱調理器を得る。
【解決手段】整流器2と、昇圧コンバータ3aと、昇圧コンバータ3aと並列に接続される昇圧コンバータ3bと、スイッチング制御手段7と、平滑コンデンサ8と、昇圧コンバータ3aの出力を開閉する開閉手段9aと、昇圧コンバータ3bの出力を開閉する開閉手段9bと、開閉手段9a、9bの開閉を制御する開閉制御手段40とを備え、開閉制御手段40は、所定の条件に基づいて、開閉手段9a及び開閉手段9bの少なくとも一方を開閉し、昇圧リアクタ4a、4bの双方、又は何れか一方を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバータ回路、並びにそれを備えたモータ駆動制御装置、空気調和機、冷蔵庫、及び誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、力率改善(PFC)回路として、昇圧コンバータの他、降圧コンバータ、昇降圧コンバータを用いたものが一般的である。
また、コンバータ回路の小型・軽量化のため、例えば、「交流電源を入力とする整流回路と、前記整流回路の出力に接続され少なくとも第1のリアクタと第1のスイッチング手段と第1のダイオードとを有する第1の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と並列に接続され、少なくとも第2のリアクタと第2のスイッチング手段と第2のダイオードとを有する第2の昇圧コンバータ回路と、前記第1の昇圧コンバータ回路と前記第2の昇圧コンバータ回路の出力に接続された平滑コンデンサと」を備えたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−86107号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
力率改善回路として、昇圧コンバータ、又は降圧コンバータや昇降圧コンバータを用いる場合、リアクタに流れる電流を連続モードとして動作する必要があるため、インダクタンス値の大きなリアクタが必要となり、回路の小型・軽量化ができない、という問題点があった。
【0005】
また、上記のようにコンバータ回路を複数系統並列に接続した構成では、スイッチング損失が大きくなる、という問題点があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、コンバータ回路の小型・軽量化を図ることができ、スイッチング損失を低減することができるコンバータ回路、並びにそれを備えたモータ駆動制御装置、空気調和機、冷蔵庫、及び誘導加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るコンバータ回路は、交流電圧を整流する整流器と、前記整流器の出力に接続され、第1のリアクタと第1のスイッチング素子と第1の逆流防止素子とを有する第1のコンバータ部と、前記整流器の出力に接続され、第2のリアクタと第2のスイッチング素子と第2の逆流防止素子とを有し、前記第1のコンバータ部と並列に接続される第2のコンバータ部と、前記第1及び第2のスイッチング素子を制御するスイッチング制御手段と、前記第1及び第2のコンバータ部の出力に設けられる平滑コンデンサと、前記第1のコンバータ部の出力を開閉する第1の開閉手段と、前記第2のコンバータ部の出力を開閉する第2の開閉手段と、前記第1及び第2の開閉手段の開閉を制御する開閉制御手段とを備え、前記開閉制御手段は、所定の条件に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉し、前記第1及び第2のコンバータ部の双方、又は何れか一方を動作させるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、第1のコンバータ部と、前記第1のコンバータ部と並列に接続される第2のコンバータ部とを備えるので、リアクタに必要とされるインダクタンス値を小さくすることができ、小型・軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係るコンバータ回路の構成図である。
【図2】コンバータ回路の連続モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図である。
【図3】コンバータ回路の不連続モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図である。
【図4】コンバータ回路の臨界モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係るコンバータ回路の構成図である。
【図6】コンバータ回路の電流波形を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態2に係る電流モードの切り換え動作を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態2に係るコンバータ回路の構成図である。
【図9】本発明の実施の形態3に係るコンバータ回路の構成図である。
【図10】本発明の実施の形態4に係るコンバータ回路の構成図である。
【図11】本発明の実施の形態4に係るコンバータ回路の構成図である。
【図12】本発明の実施の形態6に係るモータ駆動制御装置の構成図である。
【図13】本発明の実施の形態7に係る空気調和機の構成を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態8に係る冷蔵庫の構成を示す図である。
【図15】本発明の実施の形態9に係る誘導加熱調理器の構成図である。
【図16】降圧コンバータ及び昇降圧コンバータの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るコンバータ回路の構成図である。
図1において、商用電源1の交流電圧を整流する整流器2は、4個の整流ダイオード2a〜2dをブリッジ接続した構成となっている。整流器2の出力には、第1のコンバータ部である昇圧コンバータ3aと、第2のコンバータ部である昇圧コンバータ3bとが並列に接続される。
この昇圧コンバータ3aは、第1のリアクタである昇圧リアクタ4aと、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などにより構成され、第1のスイッチング素子であるスイッチング素子5aと、例えばファストリカバリダイオードなどにより構成され、第1の逆流防止手段である逆流防止素子6aとにより構成される。また昇圧コンバータ3bも同様に、第2のリアクタである昇圧リアクタ4bと、例えばIGBTなどにより構成され、第2のスイッチング素子であるスイッチング素子5bと、例えばファストリカバリダイオードなどにより構成され、第2の逆流防止素子である逆流防止素子6bとにより構成される。尚、昇圧リアクタ4a及び4bのインダクタンス値については後述する。
そして、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御され、整流器2の出力を昇圧する。
【0011】
また、スイッチング素子5a及びスイッチング素子5bには、それぞれ逆並列に接続されるダイオード、FWD(Free Wheeling Diode)を設けている。これは、スイッチング素子5がターンオフするときに発生するサージから、スイッチング素子5の破壊を防ぐものである。
【0012】
尚、本実施の形態では、第1及び第2のコンバータ部が昇圧コンバータ3a,3bの場合を説明するが、本発明はこれに限るものではなく、昇圧コンバータ、降圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の任意のスイッチングコンバータを適用することができる。
例えば、図16(a)に示すように、第1及び第2のコンバータ部に降圧コンバータを用いても良い。また、図16(b)に示すように、第1及び第2のコンバータ部に昇降圧コンバータを用いても良い。
【0013】
昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力は平滑コンデンサ8により平滑される。そして昇圧コンバータ3a及び3bの出力には負荷(図示せず)が接続され、平滑された昇圧コンバータ3a及び3bの出力が印加される。
【0014】
次に、昇圧リアクタ4a及び4b(以下、区別しない場合は単に「昇圧リアクタ4」という。)のインダクタンス値について説明する。
上記のように構成された昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、下記の数式1のように定まる。
【0015】
【数1】

【0016】
ここで、fcはスイッチング周波数、Vinは入力電圧、Voは出力電圧、Pinは入力電力リプル率、Kは電流リプル率である。
【0017】
数式1に示すように、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流リプル率Kが大きいほどインダクタンス値Lは小さくなる。したがって、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モード又は不連続モード(後述)とすることによって電流平均値に対して電流ピーク値が大きくなり、電流リプル率Kが大きくなるため、昇圧リアクタ4に必要とされるインダクタンス値Lを小さくすることができる。そこで、昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モード又は不連続モードとした場合に上記数式1により定まる値を用いる。
【0018】
上記のように構成されたコンバータ回路の動作及び作用について、以下に説明する。
図1に示すように、商用電源1の交流電圧は、整流器2により整流される。整流器2の出力は、並列に接続される昇圧コンバータ3a及び3bにより2つの電流経路に分岐される。分岐された電流は昇圧リアクタ4a及び4bに流れ、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御されて、整流器2の出力は昇圧される。また、スイッチング制御手段7は、スイッチング素子5a、5bのスイッチングを制御し、昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の電流モード及び位相差を制御する。このスイッチング動作については後述する。
【0019】
図2はコンバータ回路の連続モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図、図3はコンバータ回路の不連続モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図、図4はコンバータ回路の臨界モード動作時における各部の信号及び電流波形を示す図である。
次に、昇圧コンバータ3a及び3bのスイッチング動作について説明する。
昇圧コンバータ3aにおいて、スイッチング素子5aがオンした場合は、逆流防止素子6aは導通が阻止され、昇圧リアクタ4aには整流器2によって整流された電圧が印加される。一方、スイッチング素子5aがオフした場合は、逆流防止素子6aは導通され、昇圧リアクタ4aには、スイッチング素子5aオン時と逆向きの電圧が誘導される。
このため、昇圧リアクタ4aに流れる電流は、スイッチング素子5aオン時に直線的に増加し、スイッチング素子5aオフ時に直線的に減少する。
昇圧コンバータ3bにおいても同様に、昇圧リアクタ4bに流れる電流は、スイッチング素子5bオン時に直線的に増加し、スイッチング素子5bオフ時に直線的に減少する。
【0020】
このようなスイッチング素子5a及び5b(以下、区別しないときは単に「スイッチング素子5」という。)のスイッチング動作において、図2に示すように、昇圧リアクタ4に流れる電流が減少しても0(ゼロ)にならない動作状態を連続モードと呼ぶ。一方、図3に示すように、昇圧リアクタ4に流れる電流が減少して0(ゼロ)となる区間が存在する動作状態を不連続モードと呼ぶ。そして、図4に示すように、スイッチング素子5オフ時に昇圧リアクタ4に流れる電流が減少して0(ゼロ)となった瞬間に、スイッチング素子5がオンする動作状態を、連続モードと不連続モードとの境界という意味で臨界モードと呼ぶ。
【0021】
上述したように、昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モード又は不連続モードとした場合に定まる値を用いている。そして、図4、図3に示すように、スイッチング制御手段7により、昇圧リアクタ4aに流れる電流、及び昇圧リアクタ4bに流れる電流が臨界モード又は不連続モードとなるように、スイッチング素子5a及び5bのスイッチングを制御する。
さらに、スイッチング制御手段7は、図3、図4に示すように、昇圧リアクタ4a及び4bに流れる電流に、それぞれ所定の位相差が生じるように(例えば180度一定の位相差)、位相シフトして制御する。
これにより、昇圧リアクタ4a、及び昇圧リアクタ4bの個々においては臨界モード又は不連続モードとして動作し、昇圧コンバータ3a及び3bにより2つの電流経路に分岐される前の入力電流は、その加算となり、連続モードで動作することとなる。
【0022】
以上のように本実施の形態においては、昇圧コンバータ3を2系統とし、各昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モード又は不連続モードとなるように動作させるので、昇圧コンバータ3を構成する部品が2つずつ必要となるが、昇圧リアクタ4に流れる電流は、電流平均値に対して電流リプルが大きくなるため、昇圧リアクタ4に必要とされるインダクタンス値Lを小さくすることができ、昇圧リアクタ4の小型・軽量化を図ることができる。
【0023】
これにより、昇圧リアクタ4自体の直材低減、昇圧リアクタ4のオンボード化による配線低減、及びノイズ耐力の向上を図ることが可能となる。
また、昇圧コンバータ3が1系統の場合と比較して、小型の昇圧リアクタ4を2つに分けて設けることができるため、回路上の部品配置の自由度向上や、組み立て時の効率の向上やミス低減を狙った設計が可能となる。
【0024】
さらに、回路容積の多くを占める昇圧リアクタ4の小型・軽量化を図ることにより、製品自体の小型・軽量化といったメリットアップを図ることが可能となる。
【0025】
また、製品自体の小型化を図ることにより、当該製品の包装の軽量化・小型化、包装容積の減縮を図ることができる。
【0026】
また、昇圧コンバータ3は、スイッチング素子5a、5bと逆並列にFWDを設けている。このため、スイッチング素子5がターンオフするときに、昇圧リアクタ4の一端とスイッチング素子5の一端と逆流防止素子6の一端とが接続される部分の配線インピーダンスにより発生するサージから、スイッチング素子5の破壊を防ぐことができる。
【0027】
また、昇圧リアクタ4に流れる電流は、位相シフトして制御されるため、昇圧リアクタ4の個々においては臨界モード又は不連続モードとして動作するにも関わらず、入力電流は連続モードで動作することができる。このため、入力電流の高調波電流を抑制することが可能となる。
さらに、昇圧コンバータ3が1系統で臨界モード又は不連続モードとした場合と比較して、昇圧コンバータ3の各素子に流れる電流はほぼ半分となるため、昇圧リアクタ4、スイッチング素子5、及び逆流防止素子6には、容量の小さな素子を選定することが可能となる。
【0028】
前述したように、入力電流は昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の加算となる。このとき、スイッチング制御手段7において、昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の位相差を180度(逆位相)で制御したとすると、入力電流の電流リプルは、レベルが最小となり、入力電流の高調波成分を低減できる。このとき入力電流の電流リプルの周波数はスイッチング周波数の2倍となる。
【0029】
尚、位相差を180度(逆位相)で制御したとき、入力電流の電流リプルが起因となり、スイッチング周波数の2倍の周波数で騒音又は振動が発生する場合が考えられる。この場合、昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の位相差を180度一定でなく、180度の前後のランダム値とするなど、所定範囲内でランダムに変化するように制御することで、スイッチング周波数の2倍の成分を低減し、騒音を抑制することが可能となる。
【0030】
位相差のランダム値の生成法として一例を説明する。スイッチング制御手段7の内部において、乱数生成部(図示せず)から、例えば−1〜1までの範囲の乱数を取得し、位相差180度からの差分を算出する位相差差分算出部(図示せず)にて、位相差差分の最大値180度と乱数の掛け合わせにより位相差差分を算出する。ここで、位相差180度に差分を足し合わせることで、昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の位相差として、180度を中心としたランダム値を得る。
【0031】
このようにすることで、スイッチング素子5a、5bそれぞれのスイッチング周波数を違えることなく、スイッチング周波数に依存した電流リプル、騒音又は振動を抑制することが可能となる。
【0032】
また、位相差にランダム値を用いると、騒音の音色が、ピークが立った音から全体的に音のレベルが上がったように感じられる場合が考えられる。この場合、乱数生成部から取得する乱数の範囲を、例えば、−0.5〜0.5又は−0.3〜0.3というように狭めることで、騒音のレベルや音色を調整することが可能となる。
【0033】
実施の形態2.
上記実施の形態1では、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを、臨界モード又は不連続モードとなるように動作させた。本実施の形態2では、運転中に電流モードを切り換えることで、それぞれの電流モードの特徴を活かした動作を可能とする。
【0034】
ここで、各電流モードの特徴について説明する。
連続モードで制御した場合は、臨界モード及び不連続モードに比べ電流リプル率が小さく、入力電流の高調波成分の発生を抑制することが可能となる。一方、臨界モード及び不連続モードに比べスイッチング周波数が高くなることから、スイッチング素子5及び逆流防止素子6におけるスイッチング損失が大きくなる。
【0035】
臨界モードで動作させた場合は、不連続モードに比べ電流リプル率が小さく、入力電流の高調波成分の発生を抑制することが可能となる。一方、不連続モードに比べスイッチング周波数が高くなることから、スイッチング素子5及び逆流防止素子6におけるスイッチング損失が大きくなる。
【0036】
不連続モードで動作させた場合は、連続モード及び臨界モードに比べ入力電流における電流リプルが大きいことから、入力電流の高調波成分抑制の効果は小さい。一方、連続モード及び臨界モードに比べスイッチング周波数が低くなることから、スイッチング素子5及び逆流防止素子6におけるスイッチング損失が小さくなる。
【0037】
このようなことから、本実施の形態2におけるスイッチング制御手段7は、所定の条件に基づいて、昇圧リアクタ4a及び昇圧リアクタ4bに流れる電流の電流モードを、連続モード、臨界モード、又は不連続モードの何れに切り換える。
以下、電流モードを切り換える所定の条件、及びその具体例について説明する。
【0038】
まず、電流モードを切り換える所定の条件として、入力電流に基づく動作について説明する。
【0039】
図5は本発明の実施の形態2に係るコンバータ回路の構成図である。
図5において、コンバータ回路は、上記実施の形態1の構成に加え、昇圧コンバータ3a及び3bに入力される入力電流を検出する電流検出手段20をさらに備えている。
尚、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同様の構成には同じ符号を付する。
【0040】
尚、昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モードとした場合に上記数式1により定まる値を用いる。後述するように、臨界モードと不連続モードとを切り換える。このため電流リプル率がより小さい臨界モードで動作させるためである。
【0041】
このような構成により、スイッチング制御手段7は、電流検出手段20により検出された入力電流の大きさ(レベル)に基づいて、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換える。
スイッチング制御手段7は、例えば入力電流ピーク値の30%等を閾値として設定される。そして、検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値以上の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。一方、検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値未満の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0042】
図6はコンバータ回路の電流波形を説明する図、図7は本発明の実施の形態2に係る電流モードの切り換え動作を説明する図である。
図6及び図7においては、図4で示した昇圧リアクタ4aの電流波形及びスイッチング波形について、時間軸を広げた様子を示している。尚、図6及び図7に示す波形は、スイッチング動作を示すために波形を模式的に示したものであり、実際の計測波形ではない。スイッチング素子5のスイッチング周期は、商用電源1(入力電圧波形)の周期より十分短いものである。
【0043】
図6に示すように、臨界モードでの電流は、昇圧コンバータ3aに入力される入力電圧に比例して変位する。そして、スイッチング周波数は、電流のピーク付近では低く、ゼロクロス付近では高くなる。
図7は、上記の動作により電流モードを切り換えた場合の電流波形、及びスイッチング波形を示している。図7に示すように、電流のピーク付近では臨界モードとして動作し、ゼロクロス付近では不連続モードとして動作する。
【0044】
以上のような動作により、入力電流が大きいピーク付近の領域では、臨界モードとすることで、不連続モードと比べスイッチング周波数は高いが、臨界電流モードにおける入力電流の高調波成分抑制への寄与度が大きいため、高調波成分抑制の効果を維持することができる。
また、入力電流の小さいゼロクロス付近の領域では、不連続モードとすることで、臨界モードに比べて高調波成分抑制の効果は小さくなるが、臨界モードと比較してスイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0045】
尚、上記説明では閾値が入力電流ピーク値の30%の場合を説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、閾値を入力電流ピーク値の50%等、大きく設定することで不連続モードの範囲を広げ、よりスイッチング損失を低減することができる。
また、例えば、閾値を入力電流ピーク値の10%等、小さく設定することで臨界モードの範囲を広げ、入力電流の高調波成分を低減することが可能である。
【0046】
次に、電流モードを切り換える所定の条件として、スイッチング周波数に基づく動作について説明する。
【0047】
上記図6に示したように、臨界モードでの運転時、スイッチング周波数を一定にはできず、スイッチング周波数は、入力電流のピーク付近では低く、ゼロクロス付近では高い。このことから、スイッチング制御手段7は、スイッチング素子5のスイッチング周波数に基づいて、昇圧リアクタ4a及び昇圧リアクタ4bに流れる電流の電流モードを切り換える。
スイッチング制御手段7は、予め所定の周波数が閾値として設定される。そして、スイッチング素子5のスイッチング制御において、スイッチング周波数が閾値未満の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを臨界モードに切り換える。一方、スイッチング周波数が閾値以上の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを不連続モードに切り換える。
【0048】
以上のような動作により、スイッチング周波数の低いピーク付近の領域では、臨界モードとすることで、不連続モードと比べスイッチング周波数は高いが、臨界電流モードにおける入力電流の高調波成分抑制への寄与度が大きいため、高調波成分抑制の効果を維持することができる。
また、スイッチング周波数の高いゼロクロス付近の領域では、不連続モードとすることで、臨界モードに比べて高調波成分抑制の効果は小さくなるが、臨界モードと比較してスイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0049】
尚、スイッチング制御手段7に設定されるスイッチング周波数の閾値を、例えば、スイッチング素子5のスペックに合わせて設定すれば、スイッチング素子5の破壊防止やよりよい環境での使用も可能となる。
【0050】
次に、電流モードを切り換える所定の条件として、出力電力に基づく動作について説明する。
【0051】
臨界モードでの運転時、出力電力に対しては、高負荷になるほどスイッチング周波数が低くなる。このことから、スイッチング制御手段7は、出力電力に基づいて昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換える。
【0052】
図8は本発明の実施の形態2に係るコンバータ回路の構成図である。
図8において、コンバータ回路は、上記実施の形態1の構成に加え、昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力電力を検出する出力電力検出手段30をさらに備えている。尚、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同様の構成には同じ符号を付する。
【0053】
尚、図5と同様に、昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モードとした場合に上記数式1により定まる値を用いる。
【0054】
このような構成により、スイッチング制御手段7は、出力電力検出手段30により検出された出力電力に基づいて、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換える。
スイッチング制御手段7は、予め所定の出力電力値が閾値として設定される。そして、検出された出力電力の大きさが閾値以上の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。一方、検出された出力電力の大きさが閾値未満の場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0055】
以上のような動作により、高負荷の場合は臨界モードとすることで、不連続モードと比べスイッチング周波数は高いが、臨界電流モードにおける入力電流の高調波成分抑制への寄与度が大きいため、高調波成分抑制の効果を維持することができる。
また、低負荷の場合は不連続モードとすることで、臨界モードに比べて高調波成分抑制の効果は小さくなるが、臨界モードと比較してスイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
【0056】
また、前述の入力電流やスイッチング周波数に閾値を設けた場合、電源周期内で何度も電流モードを切り換えるのに対し、上記のような出力電力に基づき電流モードを切り換える場合、電流モードの切り換えが少ないため、比較的簡単なプログラムで制御を実行できる。
【0057】
次に、電流モードを切り換える所定の条件として、回路効率に基づく動作について説明する。
【0058】
低負荷域では出力電力の増加に伴い、回路効率は上昇するが、高負荷域では回路効率が減少することがある。このことから、スイッチング制御手段7は、回路効率に基づいて、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換える。
【0059】
コンバータ回路は、上記図5に示した電流検出手段20と、上記図8に示した出力電力検出手段30とを備える。尚、その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0060】
このような構成により、スイッチング制御手段7は、予め所定の回路効率の値が閾値として設定される。
スイッチング制御手段7は、検出された入力電流と出力電力とに基づき回路効率を求める。そして、求めた回路効率の値が閾値未満の場合、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モードのときは不連続モードへ切り換え、連続モードのときは臨界モード又は不連続モードへ切り換える。
【0061】
以上のような動作により、回路効率が減少した場合にスイッチング周波数を低減させてスイッチング損失の低減を図り、回路効率の改善を図ることができる。
【0062】
次に、電流モードを切り換える所定の条件として、出力電圧、出力電圧指令、又は出力電圧指令の変化値に基づく動作について説明する。
【0063】
昇圧コンバータ3に対する出力電圧指令を変化させた場合、入力電流の電流リプルも変化する。このことから、スイッチング制御手段7は、出力電圧、出力電圧指令、又は出力電圧指令の変化値に基づいて昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換える。
【0064】
スイッチング制御手段7は、昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する出力電圧指令に関する情報が入力される。そして、スイッチング制御手段7は、入力された出力電圧指令に応じて、スイッチング素子5を制御して、昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する。
また、スイッチング制御手段7には、出力電圧値、出力電圧指令値、又は出力電圧指令の変化値に対し、電流リプルが多くなる所定の値又は範囲が閾値として、予め設定される。尚、その他の構成は上記実施の形態1と同様である。
【0065】
尚、昇圧リアクタ4のインダクタンス値Lは、昇圧リアクタ4に流れる電流を連続モードとした場合に上記数式1により定まる値を用いる。後述するように、電流リプル率がより小さい連続モードで動作させるためである。
【0066】
このような構成により、スイッチング制御手段7は、出力電圧値、出力電圧指令値、又は出力電圧指令の変化値が、電流リプルが多くなる所定の値又は範囲である場合には、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを連続モードに切り換える。
【0067】
このような動作により、出力電圧指令が変化して電流リプルが多くなる場合、電流リプルがより小さい連続モードに切り換えることができ、高調波成分の抑制を図ることができる。
【0068】
実施の形態3.
上記実施の形態1又は2では、昇圧コンバータを2系統とした場合を説明したが、本実施の形態3では、3系統又は3系統以上の昇圧コンバータを用いる。
【0069】
図9は本発明の実施の形態3に係るコンバータ回路の構成図である。
図9に示すように、本実施の形態3におけるコンバータ回路は、上記実施の形態1の構成に加え、昇圧コンバータ3a及び3bと並列に接続される昇圧コンバータ3cを備える。
昇圧コンバータ3cも同様に、本発明におけるリアクタである昇圧リアクタ4cと、例えばIGBTなどにより構成され、本発明におけるスイッチング素子であるスイッチング素子5cと、例えばファストリカバリダイオードなどにより構成され、本発明における逆流防止素子である逆流防止素子6cとにより構成される。
尚、その他の構成は上記実施の形態1と同様であり、同様の構成には同じ符号を付する。
【0070】
このような構成により、各昇圧リアクタ4に流れる電流の加算である入力電流は、電流リプルをさらに小さくすることができ、高調波電流抑制の効果をさらに向上させることができる。
また、各昇圧コンバータ3の昇圧リアクタ4、スイッチング素子5、逆流防止素子6に流れる電流もさらに少なくなり、さらに容量の小さな素子を選定することも可能となる。
【0071】
尚、図9では昇圧コンバータ3が3系統の場合を示すが、本発明はこれに限らず、3系統以上の任意の数(N)だけ昇圧コンバータ3を並列接続するようにしても良い。
【0072】
上記実施の形態1で説明したように、入力電流は各昇圧リアクタ4に流れる電流の加算となる。例えば昇圧コンバータをN系統並列接続したとすると、入力電流の電流リプルが最小となるのは、360/N度のときとなる。このとき、入力電流の電流リプルの周波数はスイッチング周波数のN倍となる。
【0073】
このとき、入力電流の電流リプルが起因となり、スイッチング周波数のN倍の周波数で騒音が発生する場合が考えられる。この場合、それぞれの昇圧リアクタに流れる電流の位相差を360/Nの前後で数度だけ変化させるように制御することで、スイッチング周波数のN倍の成分を低減し、騒音を抑制することが可能となる。
この位相差の変化は、上記実施の形態1と同様に、例えば位相差差分算出部などにより位相差を所定範囲内でランダム変化させることができる。
【0074】
また、昇圧コンバータ3の系統数(N)が大きいほど、入力電流の電流リプルは小さくなるため、昇圧コンバータ3を多くすることで、入力電流の高調波成分抑制の効果を向上することができる。また、ノイズフィルタの小型化も可能となる。
【0075】
また、昇圧リアクタ4、スイッチング素子5、逆流防止素子6に流れる電流もさらに少なくなり、さらに容量の小さな素子を選定することも可能となる。
【0076】
また、昇圧コンバータ3の系統数(N)と電流モードとのトレードオフにより、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを、連続モード、臨界モード、又は不連続モードの何れに切り換えるようにしても良い。例えば、高調波成分の抑制効果に主眼を置き、連続モードで動作する構成や、小型・軽量化に主眼を置き、臨界モードで動作する構成や、低損失化に主眼を置き、不連続モードで動作する構成といった様々な構成が可能となる。
【0077】
実施の形態4.
図10は本発明の実施の形態4に係るコンバータ回路の構成図である。
図10において、商用電源1の交流電圧を整流する整流器2は、4個の整流ダイオード2a〜2dをブリッジ接続した構成となっている。整流器2の出力には、昇圧コンバータ3aと昇圧コンバータ3bとが並列に接続される。
この昇圧コンバータ3aは、昇圧リアクタ4aと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5aと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6aとにより構成される。
また昇圧コンバータ3bも同様に、昇圧リアクタ4bと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5bと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6bとにより構成される。
そして、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御され、整流器2の出力を昇圧する。尚、昇圧リアクタ4a及び4bのインダクタンス値は、上述した実施の形態1と同様に、昇圧リアクタ4に流れる電流を臨界モード又は不連続モードとした場合において、数式1により定まる値を用いる。
【0078】
また、スイッチング素子5a及びスイッチング素子5bに、それぞれ逆並列に接続されるFWDを設けている。これは、スイッチング素子5がターンオフするときに発生するサージから、スイッチング素子5の破壊を防ぐものである。
【0079】
尚、本実施の形態においても、昇圧コンバータ3に限るものではなく、昇圧コンバータ、降圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の任意のスイッチングコンバータを適用することができる。
【0080】
昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力は平滑コンデンサ8により平滑される。そして昇圧コンバータ3a及び3bの出力には負荷(図示せず)が接続され、平滑された昇圧コンバータ3a及び3bの出力が印加される。
【0081】
昇圧コンバータ3aの出力側には、昇圧コンバータ3aの出力を開閉(オンオフ)するスイッチ素子からなる開閉手段9aが設けられ、昇圧コンバータ3bの出力側には、昇圧コンバータ3bの出力を開閉(オンオフ)するスイッチ素子からなる開閉手段9bが設けられている。また、開閉手段9a及び9bの開閉を制御する開閉制御手段40が設けられている。
【0082】
上記のように構成されたコンバータ回路の動作及び作用について、以下に説明する。
【0083】
開閉手段9a及び9bが共にオン状態においては、上記実施の形態1と同様の回路構成である。上記実施の形態1と同様に、商用電源1の交流電圧は、整流器2により整流される。整流器2の出力は、並列に接続される昇圧コンバータ3a及び3bにより2つの電流経路に分岐される。分岐された電流は昇圧リアクタ4a及び4bに流れ、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御されて、整流器2の出力は昇圧される。また、スイッチング制御手段7は、スイッチング素子5a、5bのスイッチングを制御し、昇圧リアクタ4a、4bに流れる電流の電流モード及び位相差を制御する。尚、このスイッチング動作については、上記実施の形態1の動作と同様である。
【0084】
このように開閉手段9a及び9bが共にオン状態においては、上記実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0085】
次に、開閉手段9a、9bによる昇圧コンバータ3a、3bの使用状態の切り換え動作について説明する。
【0086】
図10に示したように、本実施の形態におけるコンバータ回路は、開閉制御手段40により制御される開閉手段9a及び9bを設けている。
開閉制御手段40は、所定の条件に基づいて、開閉手段9a及び開閉手段9bの少なくとも一方を開閉し、昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの双方、又は何れか一方を動作させる。つまり、開閉手段9aをオン、開閉手段9bをオフとした場合、昇圧コンバータ3aは使用状態、昇圧コンバータ3bは休止状態とすることができる。また、開閉手段9aをオフ、開閉手段9bをオンとした場合、昇圧コンバータ3aは休止状態、昇圧コンバータ3bは使用状態とすることができる。
【0087】
このような開閉手段9a、9bによる昇圧コンバータ3a、3bの使用状態(以下、単に「使用状態」ともいう。)の切り換えは、入力電流のレベル、スイッチング周波数、回路効率、出力電力等に閾値を設けることで行う。以下、使用状態を切り換える所定の条件、及びその具体例について説明する。
【0088】
まず、使用状態を切り換える所定の条件として、入力電流に基づく動作について説明する。
【0089】
上述した図10の構成に加え、上記実施の形態2(図5)と同様に、昇圧コンバータ3a及び3bに入力される入力電流を検出する電流検出手段20を設ける。
そして、開閉制御手段40は、電流検出手段20により検出された入力電流の大きさ(レベル)に基づいて、開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
開閉制御手段40は、例えば入力電流ピーク値の30%等を閾値として設定される。そして、検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値以上の場合には、開閉手段9a及び9bを双方ともオンにし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。
一方、検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値未満の場合には、開閉手段9a、9bの何れか一方をオン、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。
【0090】
以上のような動作により、入力電流が大きいピーク付近の領域では、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とすることで、入力電流は昇圧コンバータ3aの経路と3bの経路とに分割されるため、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制できる。
また、入力電流の小さいゼロクロス付近の領域では、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できる。
【0091】
次に、使用状態を切り換える所定の条件として、スイッチング周波数に基づく動作について説明する。
【0092】
上記実施の形態2(図6)に示したように、臨界モードでの運転時、スイッチング周波数を一定にはできず、スイッチング周波数は、入力電流のピーク付近では低く、ゼロクロス付近では高い。このことから、開閉制御手段40は、スイッチング素子5のスイッチング周波数に基づいて、開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
開閉制御手段40は、予め所定の周波数が閾値として設定される。また、開閉制御手段40にはスイッチング制御手段7からスイッチング周波数に関する情報が入力される。そして、スイッチング周波数が閾値未満の場合には、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。
一方、スイッチング周波数が閾値以上の場合には、開閉手段9a、9bの何れか一方をオンとし、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。
【0093】
以上のような動作により、スイッチング周波数が低い領域では、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とすることで、入力電流は昇圧コンバータ3aの経路と3bの経路とに分割されるため、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制できる。
また、スイッチング周波数が高い領域では、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できる。
【0094】
尚、開閉制御手段40に設定されるスイッチング周波数の閾値を、例えば、スイッチング素子5のスペックに合わせて設定すれば、スイッチング素子5の破壊防止やよりよい環境での使用も可能となる。
【0095】
次に、使用状態を切り換える所定の条件として、出力電力に基づく動作について説明する。
【0096】
臨界モードでの運転時、出力電力に対しては、高負荷になるほどスイッチング周波数が低くなる。このことから、開閉制御手段40は、出力電力に基づいて開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
【0097】
上述した図10の構成に加え、上記実施の形態2(図8)と同様に、昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力電力を検出する出力電力検出手段30を設ける。
そして、開閉制御手段40は、出力電力検出手段30により検出された出力電力に基づいて、開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
開閉制御手段40は、予め所定の出力電力値が閾値として設定される。そして、検出された出力電力の大きさが閾値以上の場合には、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。
一方、検出された出力電力の大きさが閾値未満の場合には、開閉手段9a、9bの何れか一方をオンとし、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。
【0098】
以上のような動作により、高負荷の場合は昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とすることで、入力電流は昇圧コンバータ3aの経路と3bの経路とに分割されるため、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制できる。
また、低負荷の場合は昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できる。
【0099】
また、前述の入力電流やスイッチング周波数に閾値を設けた場合、電源周期内で何度も電流モードを切り換えるのに対し、上記のような出力電力に基づき電流モードを切り換える場合、開閉手段9a及び9bのオンオフの切り換えが少ないため、比較的簡単なプログラムで制御を実行できる。
【0100】
次に、使用状態を切り換える所定の条件として、回路効率に基づく動作について説明する。
【0101】
低負荷域では出力電力の増加に伴い、回路効率は上昇するが、高負荷域では回路効率が減少することがある。このことから、開閉制御手段40は、回路効率に基づいて、開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
【0102】
上述した図10の構成に加え、上述した電流検出手段20と出力電力検出手段30とを設ける。開閉制御手段40は、予め所定の回路効率の値が閾値として設定される。
そして、開閉制御手段40は、検出された入力電流と出力電力とに基づき回路効率を求める。そして、求めた回路効率の値が閾値未満の場合、開閉手段9a、9bの何れか一方をオン、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。一方、回路効率の値が閾値以上の場合には、開閉手段9a及び9bを双方ともオンにし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。
【0103】
以上のような動作により、回路効率が減少した場合に昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路効率の改善を図ることができる。
【0104】
次に、使用状態を切り換える所定の条件として、出力電圧、出力電圧指令、又は出力電圧指令の変化値に基づく動作について説明する。
【0105】
昇圧コンバータ3に対する出力電圧指令を変化させた場合、入力電流の電流リプルも変化する。このことから、開閉制御手段40は、出力電圧、出力電圧指令、又は出力電圧指令の変化値に基づいて開閉手段9a及び9bのオンオフを切り換える。
【0106】
スイッチング制御手段7には昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する出力電圧指令が入力され、この出力電圧指令に応じてスイッチング素子5を制御して昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する。
開閉制御手段40には、出力電圧指令に関する情報が入力される。開閉制御手段40には、出力電圧値、出力電圧指令値、又は出力電圧指令の変化値に対し、電流リプルが多くなる所定の値又は範囲が閾値として、予め設定される。
【0107】
そして開閉制御手段40は、出力電圧値、出力電圧指令値、又は出力電圧指令の変化値が、電流リプルが多くなる所定の値又は範囲である場合には、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。
【0108】
このような動作により、出力電圧指令が変化して電流リプルが多くなる場合、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とすることで、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
【0109】
次に、使用状態を切り換える所定の条件として、任意の周期により切り換える動作について説明する。
【0110】
昇圧コンバータ3a及び3bの両方又は何れか一方の使用状態を継続すると、昇圧コンバータ3を構成する各素子の温度が上昇する。このことから、開閉制御手段40は、開閉手段9a及び9bのオンオフを任意の周期で切り換えて、昇圧コンバータ3a及び3bの使用状態と休止状態とを任意の周期で切り換える。
【0111】
このような動作により、昇圧コンバータ3を構成する昇圧リアクタ4、スイッチング素子5、逆流防止素子6の温度上昇を抑制でき、より効率よくコンバータ回路を動作させることができる。
また、各素子の温度上昇を抑制することにより、動作温度超過による素子破壊を防ぐことができ、長期使用が可能となる。
【0112】
尚、本実施の形態4においても、上記実施の形態1と同様に、昇圧リアクタ4a及び4bに流れる電流の位相差を180度、又は180度を中心とするランダム値に調整することにより、入力電流の高調波の抑制、及び電流リプルに起因する騒音振動を抑制することができる。
【0113】
尚、本実施の形態4では、昇圧コンバータ3が2系統の場合を説明したが、本発明はこれに限らず、例えば図11に示すように、昇圧コンバータ3を複数系統並列に接続するようにしても良い。このような構成によっても上記実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0114】
実施の形態5.
上記実施の形態2では、所定の条件に基づいて、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを切り換えた。また、上記実施の形態4では、所定の条件に基づいて、昇圧コンバータ3a及び3bの使用状態を切り換えた。本実施の形態5においては、所定の条件に基づいて、昇圧コンバータ3a及び3bの使用状態の切り換えと、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードの切り換えとを同時に行う。
以下、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件、及びその具体例について説明する。尚、本実施の形態5におけるコンバータ回路の構成は上記実施の形態4と同様である。
【0115】
まず、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件として、入力電流に基づく動作について説明する。
【0116】
上記実施の形態4と同様に、電流検出手段20により検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値以上の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a及び9bを双方ともオンにし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モード又は不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0117】
一方、検出された入力電流の大きさ(レベル)が閾値未満の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bの何れか一方をオン、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0118】
以上のような動作により、入力電流が大きいピーク付近の領域では、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とし、電流モードを臨界モード又は不連続モードとすることで、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制するとともに、昇圧リアクタ4に流れる電流のリプルを大きくでき、スイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
また、入力電流の小さいゼロクロス付近の領域では、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とし、電流モードを連続モードとすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できるとともに、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
【0119】
次に、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件として、スイッチング周波数に基づく動作について説明する。
【0120】
上記実施の形態4と同様に、スイッチング周波数が閾値未満の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モード又は不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
一方、スイッチング周波数が閾値以上の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bの何れか一方をオンとし、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0121】
以上のような動作により、スイッチング周波数が低い領域では、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とし、電流モードを臨界モード又は不連続モードとすることで、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制するとともに、昇圧リアクタ4に流れる電流のリプルを大きくすることができ、スイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
また、スイッチング周波数が高い領域では、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とし、電流モードを連続モードとすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できるとともに、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
【0122】
次に、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件として、出力電力に基づく動作について説明する。
【0123】
上記実施の形態4と同様に、出力電力検出手段30によりされた出力電力の大きさが閾値以上の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モード又は不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
一方、検出された出力電力の大きさが閾値未満の場合には、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bの何れか一方をオンとし、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モード又は不連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0124】
以上のような動作により、高負荷の場合は昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とすることで、各昇圧コンバータ3における部品に流れる電流を抑制できるとともに、臨界モード又は不連続モードとすることで、スイッチング周波数低減によるスイッチング損失の低減を図ることができる。
また、低負荷の場合は昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とし、電流モードを連続モードとすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できるとともに、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
【0125】
次に、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件として、回路効率に基づく動作について説明する。
【0126】
上記実施の形態4と同様に、回路効率の値が閾値未満の場合、開閉制御手段40は、開閉手段9a、9bの何れか一方をオン、他方をオフとして、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが臨界モードのときは不連続モードへ切り換え、連続モードのときは臨界モード又は不連続モードへ切り換える。
【0127】
以上のような動作により、回路効率が減少した場合に昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路効率の改善を図ることができる。また、回路効率が減少した場合にスイッチング周波数を低減させてスイッチング損失の低減を図り、回路効率の改善を図ることができる。
【0128】
次に、使用状態及び電流モードを切り換える所定の条件として、出力電圧、出力電圧指令、又は出力電圧指令の変化値に基づく動作について説明する。
【0129】
上記実施の形態4と同様に、スイッチング制御手段7には昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する出力電圧指令が入力され、この出力電圧指令に応じてスイッチング素子5を制御して昇圧コンバータ3の出力電圧を設定する。
開閉制御手段40は、出力電圧値、出力電圧指令値、又は出力電圧指令の変化値が、電流リプルが多くなる所定の値又は範囲である場合には、開閉手段9a、9bを双方ともオンし、昇圧コンバータ3a、3bの双方を使用状態とする。また、スイッチング制御手段7は、昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードが連続モードとなるように、スイッチング素子5のスイッチングを制御する。
【0130】
このような動作により、出力電圧指令が変化して電流リプルが多くなる場合、昇圧コンバータ3a及び3bの双方を使用状態とし、電流モードを連続モードすることで、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分の抑制を図ることができる。
【0131】
尚、上記説明では、入力電流のレベル、スイッチング周波数、回路効率、又は出力電力等の所定の条件に応じて、使用状態の切り換えと電流モードの切り換えとを行ったが、開閉手段9a及び9bの開閉状態に応じて、電流モードを切り換えるようにしても良い。
つまり、スイッチング制御手段7は、開閉手段9a及び9bの開閉状態に基づいて、昇圧リアクタ4a及び4bに流れる電流の電流モードを、連続モード、臨界モード、又は不連続モードの何れに切り換えるようにしても良い。
【0132】
例えば、開閉手段9a及び9bを双方ともオン状態で、昇圧コンバータ3a及び3bの双方が使用状態である場合、昇圧リアクタ4a及び4bに流れる電流の電流モードを臨界モード又は不連続モードとする。一方、開閉手段9a、9bの何れか一方がオン、他方がオフ状態で、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方が使用状態である場合、使用状態の昇圧リアクタ4に流れる電流の電流モードを連続モードとする。
【0133】
このような動作により、昇圧コンバータ3a及び3bの双方が使用状態のとき、臨界モード又は不連続モードとすることで、スイッチング損失を低減することができるとともに、入力電流は、昇圧コンバータ3a及び3bにより2つの電流経路の加算となり、連続モードで動作するので、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
また、昇圧コンバータ3a、3bの何れか一方を使用状態とし、電流モードを連続モードとすることで、休止状態の昇圧コンバータ3では動作損失が発生せず、回路の損失を低減できるとともに、使用状態の昇圧コンバータ3は、連続モードとして動作するので、入力電流の電流リプルを小さくし、高調波成分抑制を図ることができる。
【0134】
尚、本実施の形態5においても、上記実施の形態1と同様に、昇圧リアクタ4a及び4bに流れる電流の位相差を180度、又は180度を中心とするランダム値に調整することにより、入力電流の高調波の抑制、及び電流リプルに起因する騒音又は振動を抑制することができる。
【0135】
尚、本実施の形態5では、昇圧コンバータ3が2系統の場合を説明したが、本発明はこれに限らず、上記実施の形態3と同様に、昇圧コンバータ3を複数系統並列に接続するようにしても良い。このような構成によっても上記実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0136】
実施の形態6.
本実施の形態6においては、上記実施の形態1〜5のコンバータ回路について、モータ駆動制御装置を対象負荷とした場合の構成の一例を示す。
図12は本発明の実施の形態6に係るモータ駆動制御装置の構成図である。
図12において、商用電源1の交流電圧を整流する整流器2は、4個の整流ダイオード2a〜2dをブリッジ接続した構成となっている。整流器2の出力には、昇圧コンバータ3aと昇圧コンバータ3bとが並列に接続される。
この昇圧コンバータ3aは、昇圧リアクタ4aと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5aと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6aとにより構成される。また昇圧コンバータ3bも同様に、昇圧リアクタ4bと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5bと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6bとにより構成される。
そして、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御され、整流器2の出力を昇圧する。
【0137】
また、スイッチング素子5a及びスイッチング素子5bに、それぞれ逆並列に接続されるFWDを設けている。これは、スイッチング素子5がターンオフするときに発生するサージから、スイッチング素子5の破壊を防ぐものである。
【0138】
尚、本実施の形態においても、昇圧コンバータ3に限るものではなく、昇圧コンバータ、降圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の任意のスイッチングコンバータを適用することができる。
【0139】
昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力は平滑コンデンサ8により平滑される。そして昇圧コンバータ3a及び3bの出力には負荷10が接続され、平滑された昇圧コンバータ3a及び3bの出力が印加される。
【0140】
負荷10は、昇圧コンバータ3a及び3bの出力を交流電圧に変換するインバータ回路11と、このインバータ回路11に接続されるモータ12とによって構成される。
インバータ回路11は、スイッチング素子11a〜11fをブリッジ接続して構成される。また、各々のスイッチング素子11a〜11fには逆並列に高速ダイオードが内蔵されている。この内蔵されている高速ダイオードはスイッチング素子11a〜11fがオフしたとき還流電流を流す働きをする。このインバータ回路11は、インバータ駆動手段50により、例えばPWM制御される。そして、入力された直流電圧を任意電圧、任意周波数の交流に変換して、モータ12を駆動する。
尚、コンバータ回路と、インバータ回路11と、インバータ駆動手段50とにより、モータ駆動制御装置を構成する。
【0141】
尚、図12においては、上記実施の形態1のコンバータ回路の構成に、インバータ回路11及びモータ12からなる負荷10を設けた場合を示したが、本発明はこれに限るものではなく、上記実施の形態1〜5の何れの構成においても、インバータ回路11及びモータ12からなる負荷10を設けるようにしても良い。
【0142】
このような構成によりモータ12を運転させることにより、上記実施の形態1〜5と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0143】
実施の形態7.
図13は本発明の実施の形態7に係る空気調和機の構成を示す図である。
図13において、本実施の形態における空気調和機は、室外機310、室内機320を備え、室外機310には、図示しない冷媒回路に接続され冷凍サイクルを構成する冷媒圧縮機311、図示しない熱交換機を送風する室外機用の送風機312を備えている。そして、この冷媒圧縮機311、室外機用の送風機312は、上述した実施の形態6のモータ駆動制御装置により制御されるモータ12により駆動される。このような構成によりモータ12を運転させても、上記実施の形態1〜6と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0144】
実施の形態8.
図14は本発明の実施の形態8に係る冷蔵庫の構成を示す図である。図14に示すように、冷蔵庫400は、図示しない冷媒回路に接続され冷凍サイクルを構成する冷媒圧縮機401、冷却室402内に設けられた冷却器403で生成された冷気を、冷蔵室、冷凍室等に送るための冷気循環用の送風機404を備えている。そして、この冷媒圧縮機401、冷気循環用の送風機404は、上述した実施の形態6のモータ駆動制御装置により制御されるモータ12により駆動される。このような構成によりモータ12を運転させても、上記実施の形態1〜6と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0145】
実施の形態9.
本実施の形態9においては、上記実施の形態1〜5のコンバータ回路について、誘導加熱調理器を対象負荷とした場合の構成の一例を示す。
図15は本発明の実施の形態9に係る誘導加熱調理器の構成図である。
図15において、商用電源1の交流電圧を整流する整流器2は、4個の整流ダイオード2a〜2dをブリッジ接続した構成となっている。整流器2の出力には、昇圧コンバータ3aと昇圧コンバータ3bとが並列に接続される。
この昇圧コンバータ3aは、昇圧リアクタ4aと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5aと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6aとにより構成される。また昇圧コンバータ3bも同様に、昇圧リアクタ4bと、例えばIGBTのようなスイッチング素子5bと、例えばファストリカバリダイオードのような逆流防止素子6bとにより構成される。
そして、スイッチング制御手段7によりスイッチング素子5a及び5bのスイッチングが制御され、整流器2の出力を昇圧する。
【0146】
また、スイッチング素子5a及びスイッチング素子5bに、それぞれ逆並列に接続されるFWDを設けている。これは、スイッチング素子5がターンオフするときに発生するサージから、スイッチング素子5の破壊を防ぐものである。
【0147】
尚、本実施の形態においても、昇圧コンバータ3に限るものではなく、昇圧コンバータ、降圧コンバータ、昇降圧コンバータ等の任意のスイッチングコンバータを適用することができる。
【0148】
昇圧コンバータ3a及び昇圧コンバータ3bの出力は平滑コンデンサ8により平滑される。そして昇圧コンバータ3a及び3bの出力には負荷10が接続され、平滑された昇圧コンバータ3a及び3bの出力が印加される。
【0149】
負荷10は、昇圧コンバータ3a及び3bの出力を交流電圧に変換するインバータ回路11と、このインバータ回路11に接続される負荷回路13とによって構成される。
インバータ回路11は、スイッチング素子11a〜11fをブリッジ接続して構成される。このインバータ回路11は、インバータ駆動手段50により駆動され、平滑コンデンサ8により平滑された直流電圧を高周波電圧に変換する。
インバータ回路11の出力点には、誘導加熱コイル14及び共振コンデンサ15からなる負荷回路13が接続される。そしてインバータ回路11によって変換された高周波電圧が負荷回路13に印加される。そして、これにより、誘導加熱調理器に載置された被加熱物(図示せず)を誘導加熱する。
【0150】
尚、図15においては、上記実施の形態1のコンバータ回路の構成に、インバータ回路11及び負荷回路13からなる負荷10を設けた場合を示したが、本発明はこれに限るものではなく、上記実施の形態1〜5の何れの構成においても、インバータ回路11及び負荷回路13からなる負荷10を設けるようにしても良い。
【0151】
このような誘導加熱調理器により負荷回路13を運転させることにより、上記実施の形態1〜5と同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0152】
尚、例えば、上記図12又は図15に示すように、負荷としてインバータ回路11が接続された場合、通常、スイッチングコンバータで用いられるスイッチング素子は大容量のものが必要であり、インバータ回路で用いられるスイッチング素子との共用化は難しい。
上記実施の形態1〜9によれば、コンバータ回路で用いられるスイッチング素子5と、インバータ回路11で用いられるスイッチング素子11a〜11fとが同容量で構成可能となるような、昇圧コンバータ数を選択することで、スイッチング素子の共用化、ひいてはコスト低減が可能となる。
【0153】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明は実施の形態で具体的に説明したものに限定されるものではなく、例えば、商用電源1として単相電源でなく3相電源を用いる等、実施の形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0154】
1 商用電源、2 整流器、2a〜2d 整流ダイオード、3a〜3c 昇圧コンバータ、4a〜4c 昇圧リアクタ、5a〜5c スイッチング素子、6a〜6c 逆流防止素子、7 スイッチング制御手段、8 平滑コンデンサ、9a 開閉手段、9b 開閉手段、10 負荷、11 インバータ回路、11a〜11f スイッチング素子、12 モータ、13 負荷回路、14 誘導加熱コイル、15 共振コンデンサ、20 電流検出手段、30 出力電力検出手段、40 開閉制御手段、50 インバータ駆動手段、310 室外機、311 冷媒圧縮機、312 送風機、320 室内機、400 冷蔵庫、401 冷媒圧縮機、402 冷却室、403 冷却器、404 送風機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を整流する整流器と、
前記整流器の出力に接続され、第1のリアクタと第1のスイッチング素子と第1の逆流防止素子とを有する第1のコンバータ部と、
前記整流器の出力に接続され、第2のリアクタと第2のスイッチング素子と第2の逆流防止素子とを有し、前記第1のコンバータ部と並列に接続される第2のコンバータ部と、
前記第1及び第2のスイッチング素子を制御するスイッチング制御手段と、
前記第1及び第2のコンバータ部の出力に設けられる平滑コンデンサと、
前記第1のコンバータ部の出力を開閉する第1の開閉手段と、
前記第2のコンバータ部の出力を開閉する第2の開閉手段と、
前記第1及び第2の開閉手段の開閉を制御する開閉制御手段と
を備え、
前記開閉制御手段は、
所定の条件に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉し、前記第1及び第2のコンバータ部の双方、又は何れか一方を動作させることを特徴とするコンバータ回路。
【請求項2】
前記第1及び第2のコンバータ部に入力される入力電流を検出する電流検出手段を更に備え、
前記開閉制御手段は、
前記入力電流の大きさに基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉することを特徴とする請求項1記載のコンバータ回路。
【請求項3】
前記開閉制御手段は、
前記第1及び第2のスイッチング素子のスイッチング周波数に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉することを特徴とする請求項1記載のコンバータ回路。
【請求項4】
前記第1及び第2のコンバータ部の出力電力を検出する出力電力検出手段を更に備え、
前記開閉制御手段は、
前記出力電力に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉することを特徴とする請求項1記載のコンバータ回路。
【請求項5】
前記第1及び第2のコンバータ部に入力される入力電流を検出する電流検出手段と、
前記第1及び第2のコンバータ部の出力電力を検出する出力電力検出手段と
を更に備え、
前記開閉制御手段は、
前記入力電流と前記出力電力とに基づき回路効率を求め、該回路効率に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉することを特徴とする請求項1記載のコンバータ回路。
【請求項6】
前記開閉制御手段は、
前記第1及び第2のコンバータ部の出力電圧を設定する出力電圧指令に関する情報が入力され、
前記出力電圧、前記出力電圧指令、又は前記出力電圧指令の変化値に基づいて、前記第1の開閉手段及び第2の開閉手段の少なくとも一方を開閉することを特徴とする請求項1記載のコンバータ回路。
【請求項7】
前記スイッチング制御手段は、
所定の条件に基づいて、前記第1及び第2のリアクタに流れる電流の電流モードを、連続モード、臨界モード、又は不連続モードの何れかに切り換えることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載のコンバータ回路。
【請求項8】
前記スイッチング制御手段は、
前記第1のリアクタと第2のリアクタとに流れる電流に所定の位相差が生じるように、前記第1及び第2のスイッチング素子のスイッチングを制御することを特徴とする請求項1〜7の何れかに1項に記載のコンバータ回路。
【請求項9】
前記スイッチング制御手段は、
前記第1のリアクタと第2のリアクタとに流れる電流の位相差が、所定範囲内でランダムに変化するように、前記第1及び第2のスイッチング素子のスイッチングを制御することを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項10】
前記整流器の出力に接続され、リアクタとスイッチング素子と逆流防止素子とを有し、前記第1及び第2のコンバータ部と並列に接続される1又は複数のコンバータ部と
を更に備えたことを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載のコンバータ回路。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか1項に記載のコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流電圧出力を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を駆動するインバータ駆動手段と
を備えたことを特徴とするモータ駆動制御装置。
【請求項12】
請求項11記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータ駆動制御装置により駆動されるモータと
を備えたことを特徴とする空気調和機。
【請求項13】
請求項11記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータ駆動制御装置により駆動されるモータと
を備えたことを特徴とする冷蔵庫。
【請求項14】
請求項1〜10の何れかに記載のコンバータ回路と、
前記コンバータ回路の直流電圧出力を交流電圧に変換するインバータ回路と、
前記インバータ回路を駆動するインバータ駆動手段と、
前記インバータ回路の出力点に接続され、少なくとも誘導加熱コイル及び共振コンデンサを有する負荷回路と
を備えたことを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−70614(P2013−70614A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−273668(P2012−273668)
【出願日】平成24年12月14日(2012.12.14)
【分割の表示】特願2010−526585(P2010−526585)の分割
【原出願日】平成21年3月17日(2009.3.17)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】