説明

コンパレータ回路、エンコーダ、燃焼解析システム、及び、コンパレータ回路の制御方法

【課題】うねりに影響されることなく正確に正弦波入力信号を矩形波に変換することができるコンパレータ回路、エンコーダ、燃焼解析システム、及び、コンパレータ回路の制御方法を提供する。
【解決手段】コンパレータ回路部110は、検出部100からの検出信号R1が入力される信号入力部111Aと、信号入力部111Aに入力された検出信号R1のピーク値を算出するピーク値算出部113と、信号入力部111Aに入力された検出信号R1のボトム値を算出するボトム値算出部114と、ピーク値算出部113が算出したピーク値とボトム値算出部114が算出したボトム値との中間の閾値M1を算出する閾値算出部117と、検出信号R1と、閾値算出部117が算出した閾値M1との大小を比較して、その大小に応じてパルス信号P1へと変換するパルス信号変換部118とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動する測定対象の回転角信号を処理するコンパレータ回路、エンコーダ、燃焼解析システム、及び、コンパレータ回路の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来のエンコーダの検出信号と、検出信号から変換されるパルス信号とを示す図である。図5は、従来のエンコーダの検出信号からパルス信号への変換の問題点を説明する図である。ここで、図4及び図5は、横軸を時間軸とし、縦軸を振幅(受光量)としている。
エンジンの燃焼解析などに実施されるクランク軸の回転角の測定は、クランク軸に透過式のスリット円盤を固定し、そのスリット円盤に対して光を透過させる投受光方式のエンコーダを用いている(例えば、特許文献1参照)。このエンコーダは、投光部から照射されスリット円盤を透過した光を受光部によって検出し、検出した正弦波の検出信号(正弦波入力信号)をパルス信号(矩形波)に変換して、燃焼解析器などの外部機器に出力している。
このエンコーダには、図4に示すように、検出信号R2をパルス信号P2に変換するための閾値M2が設けられており、この閾値M2と検出信号R2との大小を比較することによってパルス信号P2へと変換している。具体的には、エンコーダは、検出信号R2が閾値M2よりも大きい場合に、パルス信号P2をONの状態(論理値1)として変換し、検出信号R2が閾値M2よりも小さい場合には、パルス信号P2をOFFの状態(論理値0)として変換する。
【0003】
しかし、このようなエンコーダは、上述したように投受光方式であるので、クランク軸に取り付けたスリット円盤の偏心、歪や、投光部及び受光部の取り付け角度の誤差などによって、検出時における受光部の受光量がクランク軸の回転以外の要因で変化してしまう場合がある。この受光量の変化は、図5に示すように、検出信号R2のうねりの原因となっており、このうねりによって、検出信号R2が適正な回転情報であるにもかかわらず、閾値M2から外れた部分のみパルス信号P2に変換されないといった問題を生じることがあった。
また、閾値を手動で設定する機能を設けるなどの対策を設けることも考えられるが、測定対象の変更などの測定環境の変化に対して、その都度、閾値を設定する必要があり、測定準備の手間が大きくなるという問題もあった。
【特許文献1】特開平7−83701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、うねりに影響されることなく正確に正弦波入力信号を矩形波に変換することができるコンパレータ回路、エンコーダ、燃焼解析システム、及び、コンパレータ回路の制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を括弧内に付して説明するが、これに限定されるものではない。
【0006】
請求項1の発明は、検出部(100)からの正弦波入力信号(R1)が入力される入力部(111A)と、前記入力部(111)に入力された前記正弦波入力信号(R1)のピーク値を算出するピーク値算出部(113)と、前記入力部(111)に入力された前記正弦波入力信号(R1)のボトム値を算出するボトム値算出部(114)と、前記ピーク値算出部(113)が算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出部(114)が算出した前記ボトム値との間の範囲で閾値(M1)を算出する閾値算出部(117)と、前記正弦波入力信号(R1)と、前記閾値算出部が算出した前記閾値に基づいて、前記略正弦波入力信号を矩形波信号(P1)に変換するための閾値を設定する閾値設定部(118)と、を備えるコンパレータ回路(110)である。
請求項2の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコンパレータ回路において、前記閾値算出部(117)は、前記閾値として、前記ピーク値算出部(113)が算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出部(114)が算出した前記ボトム値との中間値を算出すること、を特徴とするコンパレータ回路(110)である。
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコンパレータ回路(110)において、前記正弦波入力信号(R1)の周期を判定する周期判定部(115)と、前記周期判定部(115)が判定した周期に応じて、前記ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する制御部(116)とを備えること、を特徴とするコンパレータ回路(110)である。
請求項4の発明は、請求項1又は請求項2に記載のコンパレータ回路(110)において、前記スリット円盤(101)が燃焼機関の回転軸(2)に取り付けられ、前記回転軸の回転周期を判定する周期判定部(115)と、前記周期判定部(115)が判定した周期に応じて、前記ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する制御部(116)とを備えること、を特徴とするコンパレータ回路である。
【0007】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のコンパレータ回路(110)と、前記検出部(100)とを備え、前記検出部(100)は、被検出部である回転軸(2)に着脱可能に装着され、複数のスリット(S1、S2)が円周状に設けられたスリット円盤(101)と、前記スリット円盤(101)に向けて光線を照射する照射部(102)と、前記スリット(S1、S2)を通過した前記光線を受光し、受光した前記光線の光量を前記正弦波入力信号(R1)として、前記コンパレータ回路(110)へと入力する受光部(103)とを備えること、を特徴とするエンコーダ(10)である。
【0008】
請求項6の発明は、請求項5に記載のエンコーダ(10)を備え、前記エンコーダ(10)は、前記スリット円盤(101)が燃焼機関の回転軸(2)に取り付けられ、前記回転軸(2)の回転に応じて前記正弦波入力信号(R1)を前記コンパレータ回路(110)へと入力すること、を特徴とする燃焼解析システム(1)である。
【0009】
請求項7の発明は、検出部からの正弦波入力信号が入力される入力工程と、前記入力工程において入力された前記正弦波入力信号のピーク値を算出するピーク値算出工程と、前記入力部において入力された前記正弦波入力信号のボトム値を算出するボトム値算出工程と、前記ピーク値算出工程において算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出工程において算出した前記ボトム値との間の範囲で閾値を算出する閾値算出工程と、前記閾値算出工程において算出した前記閾値に基づいて、前記略正弦波入力信号を矩形波信号に変換するための閾値を設定する閾値設定工程と、を備えるコンパレータ回路の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、以下のような効果がある。
(1)本発明は、正弦波入力信号のピーク値及びボトム値の間の範囲に閾値を設定して、正弦波入力信号を矩形波信号へと変換する。つまり、この閾値を自動的に設定するので、測定者による閾値の調整が不要であるため、測定時の煩雑さを防止することができる。また、正弦波入力信号に歪みが生じるような測定であっても、正弦波入力信号から矩形波信号への変換をすることができる。
(2)本発明は、正弦波入力信号のピーク値及びボトム値の中間値を閾値にするため、正弦波入力信号の出力の中心を閾値にできるので、より正確な矩形波信号を得ることができる。
(3)本発明は、正弦波入力信号の周期を判定して、周期に応じて、ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する。つまり、被検出物の回転周期等が変化した場合であっても、ピーク値及びボトム値を保持する時間を自動的に調整するため、正弦波信号の周期に適切な保持時間に設定できるので測定精度が低下するような事態を回避することができる。
(4)本発明は、スリット円盤が被検出部である回転軸に着脱可能に装着され、スリットを通過した光線の光量を正弦波入力信号とする。このような構成のエンコーダの場合、回転盤や回転軸が偏心していたり、照射部や受光部がずれて取り付けられた等の理由によって、光線の通過状態がスリット間でばらつきが生じ、正弦波入力信号に歪みが生じるようなときがある。このように正弦波入力信号に歪みが生じるような測定であっても、上記(1)に説明したように、正弦波入力信号のピーク値及びボトム値の中間値を閾値とするので、正弦波から矩形波への変換をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、うねりに影響されることなく正確に正弦波入力信号を矩形波に変換することができるコンパレータ回路、エンコーダ、燃焼解析システム、及び、コンパレータ回路の制御方法を提供するという目的を、入力信号のピーク値及びボトム値の中間値を算出して、入力信号とその中間値との大小を比較することにより実現する。
【0012】
(実施形態)
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態をあげて、さらに詳しく説明する。
図1は、本発明による燃焼解析システムの実施形態を示す図である。図2は、本発明のエンコーダの検出部の詳細を示す図である。
【0013】
燃焼解析システム1は、図1に示すように、クランク軸(回転軸)2にエンコーダ10が接続され、また、エンコーダ10に燃焼解析器20が接続された構成を有している。燃焼解析システム1は、クランク軸2の回転角をエンコーダ10で測定し、その測定結果に基づいて燃焼解析器20によってクランク軸2に接続された不図示のエンジンの燃焼効率を解析するシステムである。
クランク軸2は、不図示のエンジンの回転を伝達する軸部材であり、その先端に後述のエンコーダ10のスリット円盤101が着脱自在に固定されている。
エンコーダ10は、検出部100及びコンパレータ回路部110を有しており、クランク軸2の回転角を計測して、回転データをパルス信号として燃焼解析器20へ出力する角度検出器である。
【0014】
検出部100は、図2に示すように、スリット円盤101、レーザ投光部(照射部)102及びレーザ受光部(受光部)103を有している。
スリット円盤101は、クランク軸2と共に回転するように、クランク軸2の先端に円盤面が垂直になるように着脱可能に固定されている円盤であり、円盤面に複数のスリットSが設けられている。本実施形態では、スリット円盤101の円盤面には、スリットS1、スリットS2の2種類が設けられており、スリットS1は、スリット円盤101の1回転に対して1個のスリットで構成され、主にスリット円盤101の回転数の検出に使用される。また、スリットS2は、円盤面に円周上に設けられており、スリット円盤101の1回転に対して360個のスリットで構成され、スリット円盤101の回転角度の検出に使用される。
なお、要求される解像度等に応じて、スリット円盤101は、異なる構成のものに交換してもよい。例えば、スリットS1が1回転に対して1個のスリットで構成され、スリットS2が1回転に対して720個等のスリットで構成されるスリット円盤に交換してもよい。このように、スリット円盤101を変更することにより、スリット円盤101が正位置よりも傾いて装着されてしまった場合でも、後述するように、本実施形態の燃焼解析システム1は、検出信号R1をパルス信号P1へと正確に変換することができる。
【0015】
レーザ投光部102は、レーザ光を照射する部分であり、スリット円盤101に設けられたスリットS1及びスリットS2にレーザ光を照射できるようにスリット円盤101の表面に配置される。
レーザ受光部103は、レーザ投光部102から照射されたレーザ光を受光する部分である。レーザ受光部103は、レーザ投光部102から照射され、スリット円盤101のスリットS1及びスリットS2を通過したレーザ光を受光できるように、スリット円盤101の裏面のレーザ投光部101に対応する位置に配置される。レーザ受光部103には、スリットS1及びスリットS2に対応する2つの受光素子が設けられている。また、レーザ受光部103は、各スリットから受光したレーザ光から、光量に応じた正弦波の検出信号(正弦波入力信号)をスリット毎に生成し、各検出信号をコンパレータ回路部110へ出力する(図1参照)。
【0016】
以上の構成により、検出部100は、クランク軸2と共に回転するスリット円盤101のスリットS1及びスリットS2を通過するレーザ投光部102のレーザ光をそれぞれレーザ受光部103によって受光することで、回転するクランク軸2の回転角を検出する。
【0017】
コンパレータ回路部110は、図1に示すように、信号入力部(入力部)111A,111B、AC結合部112、ピーク値算出部113、ボトム値算出部114、周期判定部115、時定数制御部(制御部)116、閾値演算部117、パルス信号変換部(矩形波変換部)118、信号処理部119を有している。コンパレータ回路部110は、検出部100から入力した正弦波の検出信号に基づいて回転角度に起因するパルス信号(矩形波)を燃焼解析器20に出力する回路である。
【0018】
信号入力部111Aは、レーザ受光部103及びAC結合部112接続されている。信号入力部111Aは、レーザ受光部103のうちスリットS2に対応した受光素子から入力した正弦波の検出信号をAC結合部112及びパルス信号変換部118に出力する。
信号入力部111Bは、レーザ受光部103及び周期判定部115に接続されている。信号入力部111Bは、レーザ受光部103のうちスリットS1に対応した受光素子から入力した正弦波の検出信号を周期判定部115に出力する。
AC結合部112は、ピーク値算出部113、ボトム値算出部114及びパルス信号変換部118に接続され、信号入力部111Aから入力した検出信号のACカップリングの信号処理を行う部分である。AC結合部112は、処理した検出信号をピーク値算出部113、ボトム値算出部114及びパルス信号変換部118に出力する。
【0019】
ピーク値算出部113は、AC結合部112から入力した正弦波の検出信号のピーク値を算出する部分であり、算出したピーク値を閾値演算部117へ出力する。
ボトム値算出部114は、AC結合部112から入力した正弦波の検出信号のボトム値を算出する部分であり、算出したボトム値を閾値演算部117へ出力する。
周期判定部115は、信号入力部111Bから入力した検出信号に基づいてクランク軸2の回転周期を演算する部分であり、その演算結果を時定数制御部116へ出力する。周期判定部115は、信号入力部111Bの出力に基づいて、スリットS1を通過したレーザ光を受光に対応する出力信号を解析することによってスリット円盤101の回転周期(回転数)を判定する。
時定数制御部116は、ピーク値算出部113及びボトム値算出部114に接続され、適正な閾値を演算するために、周期判定部115の演算したクランク軸2の回転周期の情報に基づいてピーク値及びボトム値の検出間隔を制御する部分である。
本実施形態では、ピーク値及びボトム値に対応する電荷をコンデンサに保持させて、アナログ回路(図示せず)がその保持電圧に基づいて、ピーク値及びボトム値の中間値を算出する。時定数制御部116は、回転周期つまり検出間隔に応じて、このコンデンサの電荷保持時間を調整するため、複数の抵抗のなかから適正な抵抗を選択する。
【0020】
閾値演算部117は、ピーク値算出部113、ボトム値算出部114及びパルス信号変換部118に接続されており、ピーク値算出部113及びボトム値算出部114から入力したピーク値及びボトム値から閾値(中間値)を算出する部分である。閾値演算部117で算出した閾値は、パルス信号変換部118へ出力される。本実施形態では、閾値は、ピーク値とボトム値との中間の値としている。
【0021】
パルス信号変換部118は、信号入力部111Aから入力した検出信号と、閾値演算部117から入力した閾値との大小を比較して、検出信号をパルス信号へと変換する部分である。具体的には、パルス信号変換部118は、検出信号が閾値よりも大きい場合に、パルス信号をONの状態(論理値1)として変換し、検出信号が閾値よりも小さい場合には、パルス信号をOFFの状態(論理値0)として変換する。ここで、本実施形態では、パルス信号変換部118は、時定数変換部116で制御された検出間隔で検出されたピーク値及びボトム値から演算された閾値を、その閾値を演算した次の周期の検出信号と比較してパルス信号へと変換している。パルス信号変換部118によって変換されたパルス信号は、信号処理部119へと出力される。
【0022】
信号処理部119は、パルス信号変換部118に接続され、パルス信号変換部118から入力したパルス信号を解析目的に合わせて分周や、逓倍などの信号処理を行う部分と、信号処理したパルス信号をエンコーダ10の外部に出力するインターフェースとを有している。
燃焼解析器20は、エンコーダ10の信号処理部119のインターフェースに接続され、信号処理部119から入力したパルス信号と、不図示のエンジンの運転状態などの情報などを入力し、エンジンの燃焼効率を解析する装置である。
【0023】
次に、燃焼解析システム1の動作について説明する。図3は、本発明のエンコーダ10の検出部100によって検出された検出信号と、コンパレータ回路部110の出力であるパルス信号とを示す図である。ここで、図3は、横軸を時間軸とし、縦軸を振幅(受光量)としている。なお、本実施形態では、スリット円盤101のスリットS2を通過したレーザ光に基づいた信号処理について説明し、また、図3も、スリットS2に基づく検出信号及びパルス信号として扱うが、スリットS1についても同様である。
【0024】
エンジンのクランク軸2に、適正にエンコーダ10のスリット円盤101、レーザ投光部102及びレーザ受光部103を配置したら、エンジンを始動しクランク軸2を回転させる。クランク軸2を回転させると、エンコーダ10の検出部100は、図3に示すように、スリット円盤101に設けられたスリットS2の間隔に応じた検出信号R1が検出される(入力工程)。検出された検出信号R1は、コンパレータ回路部110の信号入力部111Aへ出力される。
【0025】
正弦波の検出信号R1が検出部100から信号入力部111Aへ入力されると、コンパレータ回路部110は、AC結合部112で検出信号R1のACカップリングの信号処理を行う。それから、コンパレータ回路部110は、ピーク値算出部102及びボトム値算出部103で信号処理された検出信号R1からピーク値及びボトム値を算出し(ピーク値算出工程、ボトム値算出工程)、閾値演算部117で閾値M1を演算する(中間値算出工程)。そして、コンパレータ回路部110は、検出信号R1が閾値M1よりも大きい場合に、パルス信号P1をONの状態(論理値1)として変換し、検出信号R1が閾値M1よりも小さい場合には、パルス信号P1をOFFの状態(論理値0)として変換し、変換結果を信号処理部118へと出力する。仮に、スリット円盤101の偏心、歪や、レーザ投光部102、レーザ受光部103の取り付けの誤差等で、検出信号R1に図3に示すようなうねりが発生したとしても、検出信号R1に基づいた閾値M1によって適正なパルス信号を自動的に演算することができる。
【0026】
コンパレータ回路部110は、信号処理部118がパルス信号P1を入力したら、解析目的に応じてパルス信号P1に対して分周などの処理をして、燃焼解析器20へと出力する。
最後に、燃焼解析器20は、信号処理部118から入力したパルス信号と、エンジン運転状態などの情報などによってエンジンの燃焼効率などを解析する。
【0027】
以上より、実施形態の燃焼解析システムには以下のような効果がある。
(1)燃焼解析システム1は、検出信号R1のピーク値及びボトム値の閾値M1を算出して、検出信号R1とその閾値M1との大小を比較してパルス信号P1へと変換する。つまり、閾値M1を自動的に設定するので、測定者による閾値M1の調整が不要であるため、測定時の煩雑さを防止することができる。検出信号R1にうねりが生じるよう測定であっても、パルス信号P1への変換をすることができる。
(2)燃焼解析システム1は、検出信号R1の周期を判定して、周期に応じて、ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する。つまり、クランク軸2の回転周期等が変化した場合であっても、ピーク値及びボトム値を保持する時間を自動的に調整するため、正弦波信号の周期に適切な保持時間に設定できるので、測定精度が低下するような事態を回避することができる。
(3)燃焼解析システム1は、スリット円盤101がクランク軸2に着脱可能に装着され、スリットS1、S2を通過したレーザ光の光量を検出信号R1とする。このような構成のエンコーダ10の場合、スリット円盤101やクランク軸2が偏心していたり、レーザ投光部102やレーザ受光部103がずれて取り付けられたり等の理由によって、レーザ光の通過状態がスリットS1、S2間でばらつきが生じ、検出信号R1に歪みが生じるようなときがある。このように検出信号R1に歪みが生じるような測定であっても、上記(1)に説明したように、検出信号R1のピーク値及びボトム値の中間の値を閾値M1とするので、パルス信号P1への変換をすることができる。その結果、図3に示すように、検出信号R1の各ピーク値を結んだ包絡線L1と、各ボトム値を結んだ包絡線L2との中心線を閾値として、パルス信号P1に変換することができる。
【0028】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であり、それらの発明も均等の範囲内である。
(1)本実施形態では、スリット円盤103にスリット1及びスリット2の2種類のスリットを設けたが、1種類又は3種類以上のスリットを設けることも可能である。
(2)本実施形態では、ピーク値及びボトム値の中間の値を閾値M1としたが、中間の値に限らず、例えば、ピーク値とボトム値との間を6:4に分割する値を閾値としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明による燃焼解析システムの実施形態を示す図である。
【図2】本発明のエンコーダの検出部の詳細を示す図である。
【図3】本発明のエンコーダの検出部によって検出された検出信号と、コンパレータ回路部の出力であるパルス信号とを示す図である。
【図4】従来のエンコーダの検出信号と、検出信号から変換されるパルス信号とを示す図である。
【図5】従来のエンコーダの検出信号からパルス信号への変換の問題点を説明する図である。
【符号の説明】
【0030】
1 燃焼解析システム
2 クランク軸
10 エンコーダ
100 検出部
101 スリット円盤
102 レーザ投光部
103 レーザ受光部
110 コンパレータ回路部
111A,111B 信号入力部
112 AC結合部
113 ピーク値算出部
114 ボトム値算出部
115 周期判定部
116 時定数制御部
117 閾値演算部
118 パルス信号変換部
119 信号処理部
20 燃焼解析器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出部からの略正弦波入力信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力された前記略正弦波入力信号のピーク値を算出するピーク値算出部と、
前記入力部に入力された前記略正弦波入力信号のボトム値を算出するボトム値算出部と、
前記ピーク値算出部が算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出部が算出した前記ボトム値との間の範囲で閾値を算出する閾値算出部と、
前記閾値算出部が算出した前記閾値に基づいて、前記略正弦波入力信号を矩形波信号に変換するための閾値を設定する閾値設定部と、
を備えるコンパレータ回路。
【請求項2】
請求項1に記載のコンパレータ回路において、
前記閾値算出部は、前記閾値として、前記ピーク値算出部が算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出部が算出した前記ボトム値との中間値を算出すること、
を特徴とするコンパレータ回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のコンパレータ回路において、
前記略正弦波入力信号の周期を判定する周期判定部と、
前記周期判定部が判定した周期に応じて、前記ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する制御部とを備えること、
を特徴とするコンパレータ回路。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載のコンパレータ回路において、
前記スリット円盤が燃焼機関の回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転周期を判定する周期判定部と、
前記周期判定部が判定した周期に応じて、前記ピーク値及びボトム値を保持する時間を変更する制御部とを備えること、
を特徴とするコンパレータ回路。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のコンパレータ回路と、前記検出部とを備え、
前記検出部は、
被検出部である回転軸に着脱可能に装着され、複数のスリットが円周状に設けられたスリット円盤と、
前記スリット円盤に向けて光線を照射する照射部と、
前記スリットを通過した前記光線を受光し、受光した前記光線の光量を前記略正弦波入力信号として、前記コンパレータ回路へと入力する受光部とを備えること、
を特徴とするエンコーダ。
【請求項6】
請求項5に記載のエンコーダを備え、
前記エンコーダは、前記スリット円盤が燃焼機関の回転軸に取り付けられ、前記回転軸の回転に応じて前記略正弦波入力信号を前記コンパレータ回路へと入力すること、
を特徴とする燃焼解析システム。
【請求項7】
検出部からの略正弦波入力信号が入力される入力工程と、
前記入力工程において入力された前記略正弦波入力信号のピーク値を算出するピーク値算出工程と、
前記入力部において入力された前記略正弦波入力信号のボトム値を算出するボトム値算出工程と、
前記ピーク値算出工程において算出した前記ピーク値と前記ボトム値算出工程において算出した前記ボトム値との間の範囲で閾値を算出する閾値算出工程と、
前記閾値算出工程において算出した前記閾値に基づいて、前記略正弦波入力信号を矩形波信号に変換するための閾値を設定する閾値設定工程と、
を備えるコンパレータ回路の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−19676(P2010−19676A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180251(P2008−180251)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000145806)株式会社小野測器 (230)
【Fターム(参考)】