説明

コーティング方法及びコーティング装置

【課題】回転ドラム内面へのコーティング基材の付着を防止しつつ、効率の良いコーティング処理を行い得るコーティング方法及び装置を提供する。
【解決手段】回転ドラムを回転させつつ、回転ドラム内に収容した錠剤等の被処理物に糖衣液を供給して錠剤等の糖衣コーティング処理を行うコーティング方法にて、糖衣液の供給(S)を行いながら乾燥(D)をも併せて行う第1工程(S+D)と、糖衣液の供給過程(S)と乾燥過程(D)とを別個に行い、糖衣液供給過程(S)と乾燥過程(D)との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程(P1)と、気体を供給させつつ実施する第2休止工程(P2)とを設けた第2工程とを繰り返し実施する。第1工程中は常に冷風を供給し、第1工程と、第2工程における第2休止工程及び乾燥過程の間、回転ドラムを冷却する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラム状の回転容器を用いたコーティング方法及び装置に関し、特に、錠剤等の糖衣コーティング処理に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、錠剤や菓子等の糖衣コーティング製品の多くは、特許文献1のような、ドラム状の回転容器(回転ドラム)を備えたコーティング装置を用いて製造されている。このようなコーティング装置では、糖衣コーティング処理に際し、まず、錠剤等の核となる被処理物を回転ドラム内に収容する。その後、回転ドラムを回転させつつドラム内にコーティング液(糖衣液)を供給し、被処理物の外周にコーティング基材を付着させる。コーティング処理中は、被処理物に対し50〜80°C程度の温風を適宜送給し、この温風により、コーティング基材を被処理物表面にて蒸発乾固させコーティング層を形成する。そして、コーティング液を添加しては乾燥する操作を反復し、錠剤外周にコーティング層を何層も積み重ね、糖衣層を形成する。
【0003】
ところが、コーティング処理中は、回転ドラム自体も温風によって加温されるため、回転ドラム内面には、コーティング基材物質が固化して付着する。この固化物質がドラム内面から剥離し、製品に付着すると、ボッチや突起といった不良品の原因となる。従って、コーティング処理に際しては、回転ドラム内部を適宜清掃する必要があり、例えば、糖衣コーティングでは、ドラム内面への糖衣カス付着量が多くなった時点で回転ドラムを止め、付着したカスをドラム外へ排出している。
【0004】
そこで、回転ドラム内面へのコーティング基材の固化・付着を抑えるため、特許文献1では、回転ドラム内に送風ダクトを2個を設け、一方のダクトから回転ドラムに冷風を供給してドラムを冷却している。これにより、回転ドラムは被処理物よりも若干低い温度となり、ドラム内面への糖衣カスの付着が抑えられる。
【0005】
特許文献2には、前述のような糖衣処理におけるコーティング液の供給工程や乾燥工程を最適化し、処理時間の短縮化を図ったコーティング方法が記載されている。前述のように、糖衣処理では糖衣液の添加・乾燥を反復させるが、その際、コーティング液の注加、粉剤散布、休止、乾燥の4つの単位操作を順次繰り返すのが一般的である。ところが、処理時間を短縮すべく、処理中にコーティング液の注加と乾燥を同時に行うと、コーティング用物質が被処理物表面に十分に拡がらない状態で乾燥が為され、コーティング表面が肌荒れするおそれがある。従って、糖衣処理では、コーティング液の展延のため、注加処理後に休止時間を設ける必要があり、その分、処理時間が長くならざるを得ない。
【0006】
これに対し、特許文献2では、処理時間の短縮化を図るため、糖衣液の添加と乾燥を別個に行う第1工程と、それらを同時に行う第2工程を繰り返す処理方法を提示している。この場合、糖衣処理の最終工程を第1工程とすれば、途中の第2工程にて生じた肌荒れも最終工程にて被覆・修復され、最終的には表面に肌荒れのない糖衣製品が形成される。また、添加と乾燥を同時に行う第2工程の時間は、それらを別々に行う第1工程よりも短いため、第2工程を入れることにより、その分、全体の処理時間は短縮される。つまり、特許文献2の方法では、最終製品の仕様は満足しつつ、糖衣コーティング処理時間を短縮することが可能となる。
【特許文献1】特開2000-189059号公報
【特許文献2】特開昭61-204032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、特許文献1の装置では、2個の送風ダクトへの温・冷風の供給により、ドラム内面への糖衣カスの付着を低減させ得ることが開示されているが、回転ドラムへの供給気体によって、被処理物の表面乾燥が進み、コーティング液の展延が不十分となり、表面状態が荒れるおそれもある。すなわち、特許文献1の装置では、容器壁面への付着抑制の方法は示唆しているものの、具体的なプロセスには改善の余地があり、その対策が求められていた。
【0008】
本発明の目的は、回転ドラム内面へのコーティング基材の付着を防止しつつ、効率の良いコーティング処理を行い得るコーティング方法及びコーティング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のコーティング方法は、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器に被処理物を収容し、前記処理容器内にコーティング用物質を供給して前記処理容器を回転させることにより前記被処理物に対しコーティング処理を行うコーティング方法であって、前記処理容器を冷却しつつ、前記コーティング用物質の供給を行いながら乾燥をも併せて行う第1工程と、前記コーティング用物質の供給過程と、前記処理容器を冷却しつつ実施する乾燥過程とを別個に行い、前記供給過程と乾燥過程との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程と、気体を供給し前記処理容器を冷却しつつ実施する第2休止工程とを有する第2工程とを設け、前記第1工程と前記第2工程を繰り返し実施することを特徴とする。
【0010】
本発明にあっては、コーティング用物質の供給過程と乾燥過程とを別個に行う第2工程の供給過程と乾燥過程との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程と、気体を供給させつつ実施する第2休止工程とを設けることにより、第1休止工程にて、被処理物上にコーティング用物質が展延し、乾燥工程に入る前にコーティング用物質が被処理物表面に十分に拡がるため、コーティング表面の肌荒れを抑えられる。また、第1工程と、第2工程における第2休止工程及び乾燥過程の間、処理容器を冷却するので、前記各工程において、処理容器が冷却され、処理容器への糖衣液の付着が抑えられる。特に、第2休止工程における冷却では、次の乾燥工程に入る前に処理容器が冷却され、乾燥工程中における処理容器への糖衣液の付着がより効果的に抑えられる。
【0011】
前記コーティング方法において、前記コーティング用物質として糖衣液を使用し、前記気体として0〜25°Cの冷風を使用しても良い。これにより、処理容器が冷却され、処理容器への糖衣液の付着が抑えられる。さらに、好ましくは、前記第1工程の後に前記第2工程を実施して前記被処理物のコーティング処理を終了させても良い。
【0012】
一方、前記処理容器内の前記被処理物の転動流中に中空構造のバッフル装置を配置すると共に、前記バッフル装置内部に冷媒を流通させて該バッフル装置を冷却するようにしても良い。
【0013】
本発明のコーティング装置は、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、前記処理容器内に収容された被処理物に対しコーティング用物質を供給するコーティング用物質供給手段と、前記処理容器内の前記被処理物の転動流中に配置されたバッフル装置とを備えてなるコーティング装置であって、前記バッフル装置は中空構造に形成され、その内部に、冷媒が流通する冷媒通路を有することを特徴とする。
【0014】
本発明にあっては、被処理物の転動流中に中空構造のバッフル装置を配置し、その内部に設けた冷媒通路に冷媒を流通させることにより、転動流中にてバッフル装置自身が冷却されるため、バッフル装置にコーティング用物質が付着しにくくなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のコーティング方法によれば、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器に被処理物を収容し、処理容器内にコーティング用物質を供給して処理容器を回転させることにより被処理物に対しコーティング処理を行うコーティング方法にて、コーティング用物質の供給を行いながら乾燥をも併せて行う第1工程と、コーティング用物質の供給過程と乾燥過程とを別個に行い、供給過程と乾燥過程との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程と、気体を供給させつつ実施する第2休止工程とを有する第2工程と、を繰り返し実施することにより、第1休止工程にて、被処理物上にコーティング用物質が展延し、乾燥工程に入る前にコーティング用物質が被処理物表面に十分に拡がるため、コーティング表面の肌荒れを抑えられる。その後、第2休止工程にて、次の乾燥工程に入る前に処理容器が冷却されるため、乾燥工程中における処理容器への糖衣液の付着が抑えられ、不良品の発生率を低減させることが可能となる。また、バッフル装置の付着物が少ないことから、コーティング装置の清掃回数や清掃工数を減らすことができ、コーティング処理の生産性向上を図ることが可能となる。
【0016】
本発明のコーティング装置によれば、回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、処理容器内に収容された被処理物に対しコーティング用物質を供給するコーティング用物質供給手段と、処理容器内の前記被処理物の転動流中に配置されたバッフル装置とを備えてなるコーティング装置にて、バッフル装置を中空構造に形成し、その内部に冷媒が流通する冷媒通路を設けたので、バッフル装置内部に冷媒を流通させることにより、転動流中のバッフル装置自身が冷却され、バッフル装置にコーティング用物質が付着しにくくなる。このため、バッフル装置に付着したコーティング用物質が剥離し、ボッチや突起等の発生も抑えられ、不良品の発生率を低減させることが可能となる。また、バッフル装置の付着物が少ないことから、コーティング装置の清掃回数や清掃工数を減らすことができ、コーティング処理の生産性向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。図1〜3は、本発明によるコーティング方法が実施されるコーティング装置の構成を示す説明図であり、図1は当該コーティング装置を側面方向から見た状態、図2は正面方向から見た状態、図3は背面方向から見た状態をそれぞれ示している。また、図4,5は、図1のコーティング装置における回転ドラム内の構成を示す説明図である。
【0018】
図1に示したコーティング装置1は、一般にパンコーティング装置と呼ばれる装置であり、回転ドラムの回転とそれを通過する処理気体及びコーティング用物質により、被処理物の造粒、コーティング、乾燥、混合等の所望の処理を行う。本実施例では、コーティング装置1として、例えば錠剤や菓子等の被処理物2に対して、白糖を水に溶解したシロップを主体に構成した糖衣液等をコーティング処理する装置を想定している。コーティング装置1には、被処理物2を収容する横型ドラム状の処理容器である回転ドラム(コーティングパン)3が設けられている。回転ドラム3は、多角筒形または円筒形の横断面形状を有する中空の主胴部4と、この主胴部4の軸方向両端側に設けられた端壁部5とから構成されている。
【0019】
主胴部4の周囲数カ所または全周には、熱風や冷風等の処理気体が流通する通気部6が設けられている。また、主胴部4の外周側には、給排気ダクト11が各通気部6を覆うように配設されている。一方、回転ドラム3内には、給気手段として、第1送風ダクト8及び第2送風ダクト10が設けられている。第1送風ダクト8と第2送風ダクト10は、図4に示すように、回転ドラム3のほぼ中央上方に並んで配設されている。第1送風ダクト8や第2送風ダクト10から回転ドラム3内に導入された処理気体は、通気部6を介して給排気ダクト11へと排出される。
【0020】
第1送風ダクト8は、冷風(例えば、約0〜25°C、好ましくは、約10〜20°C)を回転ドラム3に付与する。第1送風ダクト8の送風口は、回転ドラム3内において被処理物2とは反対の方向(図4の矢示A方向)に向けられている。第1送風ダクト8から吹き出される冷風は、回転ドラム3の通気部6から給排気ダクト11へと排出される。これにより、回転ドラム3の温度が制御され、処理中も回転ドラム3の温度が低い温度に維持される。
【0021】
第2送風ダクト10は、温風(例えば、約40〜90°C、好ましくは、約50〜80°C)を回転ドラム3内の被処理物2に送給する。第2送風ダクト10は、回転ドラム3内の被処理物2に向けられている(同矢示B方向)。第2送風ダクト10から吹き出される温風は、被処理物2の層を通って通気部6から給排気ダクト11へと排出される。これにより、被処理物2の温度が制御され、糖衣液の乾燥・固化が図られる。
【0022】
給排気ダクト11はさらに、第1給気口12及び第2排気口13を備えた給排気ジャケット23に接続されている。これらの第1給気口12や第2排気口13は、回転ドラム3の回転に伴って給排気ダクト11と所定のタイミングで連通する。通常、給排気ダクト11は第2排気口13に、回転ドラム3が特定の回転位置に来たときに連通するように設けられている。
【0023】
回転ドラム3内部には、スプレーガン15(コーティング用物質供給手段)が複数個設置されている。スプレーガン15からは、糖衣液(コーティング用物質)が霧状に噴霧され被処理物2に供給される。被処理物2は糖衣液をかけられた後、練られつつ擦れ合いながら転動し、糖衣液が展延してある程度広がったところで温風が供給される。また、回転ドラム3内には、図4に示すようにバッフル(バッフル装置)22が設置されており、回転ドラム3内における被処理物2の混合・撹拌を促進している。図6は、バッフル22の構成を示す説明図であり、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【0024】
バッフル22は中空構造に形成され、その内部は、冷媒(例えば、5°C程度の冷水や冷風)が流通する空間部(冷媒通路)33となっている。バッフル22は、被処理物2の転動流内に配置されるウイング部31a,31bと、ウイング部31a,31bを支持し回転ドラム3内の図示しない固定アームに取り付けられる支持棒32とを備えている。ウイング部31a,31b内は中空状に形成されており、内部には空間部33が形成されている。ウイング部31a,31bの上縁部には、空間部33と連通したパイプ状のソケット34a,34bがそれぞれ設けられている。ソケット34a,34bには、冷媒供給源と接続された図示しないチューブが取り付けられる。バッフル22に対しては、ポンプや熱交換器を備えた冷媒供給源から冷媒が供給される。ここでは、ソケット34aから冷風が供給され、暖められた冷風がソケット34bから排出される。このような冷却機構により、バッフル22は、被処理物2の転動流内においても低温にて維持される。
【0025】
回転ドラム3の両端には、軸受16a,16bによって支持された回転軸17a,17bが同軸上に取り付けられている。回転ドラム3は、この回転軸17a,17bを中心に回転可能に設置されている。回転軸17bは、モータ18によりチェーン19を介して駆動される。第1送風ダクト8と第2送風ダクト10及び第2排気管14は固定されており、回転ドラム3と給排気ダクト11がモータ18により回転される。また、図1において左側の端壁部5のほぼ中央部には、粉粒体原料の投入及び製品の排出などに用いられる開口部20が設けられている。開口部20の外側には、開閉可能な点検蓋21が設置されている。
【0026】
次に、本発明によるコーティング処理について、糖衣錠の製造を例にとって説明する。ここではまず、回転ドラム3内に被処理物2として乳糖錠などの錠剤(例えば、直径8mm,200mg/T、以下、数値例に関しては例示である旨の表示は省略する)を投入し、モータ18を駆動してチェーン19及び回転軸17bを介して回転ドラム3を矢印X方向(正転方向、図4参照)に回転させる(8rpm程度)。図4に示すように、回転ドラム3の回転に伴い、錠剤は主胴部4や端壁部5に沿って回転方向に持ち上げられて内側に落下し、回転ドラム3内にて転動運動を行う。被処理物2に対しては、回転ドラム3を回転させつつ、スプレーガン15から糖衣液を噴霧する。この際、第1,2送風ダクト8,10から適宜冷風や温風を送給し、錠剤上に糖衣被膜を固化形成する。
【0027】
ここで、本発明によるコーティング方法では、糖衣処理に際し、糖衣液の供給を行いながら乾燥をも併せて行う第1工程と、糖衣液の供給過程と乾燥過程とを別個に行う第2工程があり、それらを繰り返すことにより錠剤上に糖衣層を形成する。この場合、前述の特許文献2のコーティング処理と異なり、本発明によるコーティング処理では、第2工程における休止工程として、2種類の工程が設定されている。すなわち、供給過程と乾燥過程との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程と、気体を供給させつつ実施する第2休止工程とが設けられている。
【0028】
また、各工程においては、各送風ダクト8,10からの気体の供給も細かく制御される。図7は、本発明によるコーティング方法における処理工程と、各処理工程での気体供給状態を示す表、図8は、処理時間と糖衣液の累積供給量との関係を示すグラフである。なお、図7,8において、Sは糖衣液の供給(噴霧)、Pは休止、Dは乾燥をそれぞれ示しており、S+Dは糖衣液の供給と乾燥とを同時に行う処理を示している。また、ダクトAは第1送風ダクト8、ダクトBは第2送風ダクト10を示している。当該処理では、第1工程(3分間)を実施し、次に第2工程(10〜15分間)を実施する工程が1ユニットとなっており、このユニットを複数回(20〜30回程度)繰り返して糖衣コーティング処理を実施する。
【0029】
図7に示すように、第1工程では、糖衣液の供給と乾燥が同時に行われる。例えば、糖衣錠の処理量が100L程度の場合、スプレーガン15から糖衣液(60°C,340〜900mL/回)を噴霧しつつ、同時に第2送風ダクト10から温風を供給する(70°C,12m/min)。また、第1工程では、第1送風ダクト8からも冷風を供給する(10〜15°C,12m/min)。この第1工程により、錠剤上には糖衣層が形成されるが、前述のように、注加と乾燥を同時に行うためコーティング層表面が肌荒れする可能性がある。一方、回転ドラム3には冷風が供給されドラム内面が冷却されるため、糖衣液の付着が抑えられる。従って、肌荒れの可能性はあるものの、ドラム内面付着物の剥離によるボッチや突起といった不良品の発生は抑えられる。
【0030】
次に、第2工程では、まず、糖衣液の噴霧(S)が行われる(2分間)。このとき、第1,第2送風ダクト8,10からは気体供給は行わない。従って、噴霧された糖衣液は乾燥されることなく錠剤表面に付着し、乾燥粉によるボッチ等の発生も抑えられる。噴霧工程の後、第1休止工程(P1)を実施する(3.5〜4分間)。この場合も、第1,第2送風ダクト8,10からは気体供給は行わない。この第1休止工程にて、錠剤上に糖衣液が展延し、乾燥工程に入る前に糖衣液が錠剤表面に十分に拡がり、コーティング表面の肌荒れが抑えられる。その後、第2休止工程(P2)に移り、第1送風ダクト8から冷風を供給する(0.5分間)。これにより、次の乾燥工程に入る前に回転ドラム内面が冷却される。なお、第2休止工程は、第1送風ダクト8からの冷風供給と排気が基本ではあるが、乾燥工程の予備として、第2送風ダクト10から若干温風を供給しても良い。
【0031】
休止工程終了後、乾燥工程(D)を実施する(4.5分間)。乾燥工程では、第1,第2送風ダクト8,10の双方からは気体供給を行う。すなわち、第1送風ダクト8から冷風を供給して回転ドラム3を冷却しつつ、第2送風ダクト10から温風を供給して被処理物2を加温し糖衣液を乾燥固化させる。この場合、錠剤上の糖衣液は先の休止工程にて十分に展延しており、それが第2送風ダクト10からの温風によって乾燥され、肌荒れのないコーティング層が形成される。このコーティング層は、第1工程のコーティング層上に形成されるため、第2工程をコーティング処理の最終段階に配すれば、たとえ第1工程にて肌荒れが生じても、それを被覆・修復してきれいな糖衣層を形成できる。そして、このような第1,2工程を繰り返し実行することにより、錠剤外周に糖衣コーティング層が形成される。
【0032】
一方、乾燥工程中に回転ドラム3が暖められると、ドラム内面に糖衣液が付着し、付着物の剥落により不良品が発生するおそれがある。これに対し、当該コーティング処理では、回転ドラム3が第2休止工程段階から冷却され、さらに、乾燥工程にて第1送風ダクト8からの冷風によって冷却されるため、ドラム温度が低く維持され、ドラム内面への糖衣液の付着が抑えられる。従って、ドラム内面付着物の剥離によるボッチ等の発生も抑えられ、不良品の発生率を低減させることが可能となる。また、ドラム内面の付着物が少ないことから、回転ドラム3の清掃回数や清掃工数を減らすことができ、その分、効率良くコーティング処理を実施することが可能となる。
【0033】
さらに、このようなコーティング処理中、回転ドラム3内にて転動する被処理物2は、バッフル22にて混合・撹拌される。図6と同様の外形の従来のバッフル(スタティックバッフル)では、糖衣処理に使用すると、ウイング部31a,31bの内側面に錠剤や糖衣液が付着し易い傾向がある。これに対し、当該コーティング装置では、バッフル22が中空構造となっており、その内部に冷水を流通させ、バッフル自身が冷却されているため、糖衣液が付着しにくく、付着物の剥離による不良品発生が抑えられる。
【0034】
本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施例では、特許文献1と同様の装置を用いて回転ドラム3の冷却を行いつつコーティング処理を行う形態を説明したが、回転ドラム3の冷却方法は、第1送風ダクト8からの冷風供給には限定されず、回転ドラム3の外周に冷風を吹き掛けたり、冷水を噴霧したりするなど、種々の方法を採用し得る。例えば、第1送風ダクト8を採用する代わりに、第1給気口12から給排気ダクト11に冷風を供給し、給排気ダクト11が回転ドラム3の上方の回転位置に来たとき、給排気ダクト11から回転ドラム3に冷風を供給しても良い。また、コーティング装置自身も前述の形態には限られず、回転ドラム3の外側に給排気ダクト11を有さない所謂ジャケットレスタイプのコーティング装置にも本発明の方法は適用可能である。さらに、回転ドラム3も水平軸線を中心に回転する水平回転ドラムには限定されず、回転軸線が接地面と傾斜した傾斜回転ドラムであっても良い。
【0035】
一方、本発明における被処理物も前述の乳糖錠等の錠剤には限られず、菓子やガム等の食品や他の医薬品なども適用可能である。また、糖衣液も糖を水に溶解したシロップ以外に、それに各種薬効成分や風味、色素等を添加したものなど、種々の仕様の糖衣液が適用可能である。なお、前述の各種数値はあくまでも一例であり、その値は適宜変更し得ることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明によるコーティング方法が実施されるコーティング装置の構成を示す説明図であり、当該コーティング装置を側面方向から見た状態を示している。
【図2】図1のコーティング装置を正面方向から見た状態を示す説明図である。
【図3】図1のコーティング装置を背面方向から見た状態を示す説明図である。
【図4】図1のコーティング装置における回転ドラム内の構成を示す説明図である。
【図5】図1のコーティング装置における回転ドラム内の構成を示す説明図である。
【図6】バッフルの構成を示す説明図であり、(a)はその側面図、(b)はその平面図である。
【図7】本発明のコーティング方法における各処理工程での気体供給状態を示す表である。
【図8】処理時間と糖衣液の累積供給量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 コーティング装置
2 被処理物
3 回転ドラム(処理容器)
4 主胴部
5 端壁部
6 通気部
8 第1送風ダクト
10 第2送風ダクト
11 排気ダクト
12 第1給気口
13 第2排気口
14 第2排気管
15 スプレーガン(コーティング用物質供給手段)
16a,16b 軸受
17a,17b 回転軸
18 モータ
19 チェーン
20 開口部
21 点検蓋
22 バッフル(バッフル装置)
23 給排気ジャケット
31a,31b ウイング部
32 支持棒
33 空間部
34a,34b ソケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器に被処理物を収容し、前記処理容器内にコーティング用物質を供給して前記処理容器を回転させることにより前記被処理物に対しコーティング処理を行うコーティング方法であって、
前記処理容器を冷却しつつ、前記コーティング用物質の供給を行いながら乾燥をも併せて行う第1工程と、
前記コーティング用物質の供給過程と、前記処理容器を冷却しつつ実施する乾燥過程とを別個に行い、前記供給過程と乾燥過程との間に、気体を供給させずに実施する第1休止工程と、気体を供給し前記処理容器を冷却しつつ実施する第2休止工程とを有する第2工程とを設け、
前記第1工程と前記第2工程を繰り返し実施することを特徴とするコーティング方法。
【請求項2】
請求項1記載のコーティング方法において、前記コーティング用物質が糖衣液であり、前記気体が0〜25°Cの冷風であることを特徴とするコーティング方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載のコーティング方法において、前記第1工程の後に前記第2工程を実施して前記被処理物のコーティング処理を終了することを特徴とするコーティング方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のコーティング方法において、前記処理容器内の前記被処理物の転動流中に中空構造のバッフル装置を配置すると共に、前記バッフル装置内部に冷媒を流通させて該バッフル装置を冷却することを特徴とするコーティング方法。
【請求項5】
回転軸を中心に回転可能に配置された中空の処理容器と、前記処理容器内に収容された被処理物に対しコーティング用物質を供給するコーティング用物質供給手段と、前記処理容器内の前記被処理物の転動流中に配置されたバッフル装置とを備えてなるコーティング装置であって、
前記バッフル装置は中空構造に形成され、その内部に、冷媒が流通する冷媒通路を有することを特徴とするコーティング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−160190(P2007−160190A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−358496(P2005−358496)
【出願日】平成17年12月13日(2005.12.13)
【出願人】(000112912)フロイント産業株式会社 (55)
【Fターム(参考)】