説明

コーティング装置および方法

本発明は、基体をコーティングする新規なアセンブリに関する。液体コーティング媒体によって担体を完全にまたは部分的にコーティングする装置であって、前記担体が各々、円筒軸、2つの端面、周面および軸方向長さLを有し、多数の流路が前記第1端面から前記第2端面まで横切り、前記担体が、その前記円筒軸を垂直に位置合わせし、前記コーティング媒体を前記担体の前記端面の少なくとも一方から前記流路内に導入することによって、所望の量の前記コーティング媒体でコーティングされ、前記担体がコーティング装置に配置され、前記コーティング装置の液体収容部が、弁によって上昇管に接続され、前記弁が、前記上昇管において前記担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にし、したがって前記上昇管が、前記担体内の前記コーティング媒体の充填レベル(FH)を監視するのを可能にすることを特徴とする装置。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
液体コーティング媒体による、以下基体とも呼ぶセラミックまたは金属のハニカム体/フィルタのコーティング中、さまざまな問題が発生する。
【0002】
基体をコーティングする1つの可能性は、その一方の側の開口部を、利用可能となったコーティング媒体と接触させることと、基体の反対側を真空にすることにより、液体コーティング媒体を基体の流路内に引き込むこととである。本発明が、流路の長さの一部のみをコーティングすることである場合、種々の長さにわたって種々の流路がコーティングされることは、不可避の流れプロファイルが発生するために、不都合である。
【0003】
コーティング媒体が、圧力により重力に抗して流路内に押し込まれる場合、流路の完全コーティングの場合に液体が最上部に現れる時を検査する必要がある。流路の長さの一部のみをコーティングする場合、流路内のコーティング媒体の液柱の高さは、センサによって確定される。この種の方法は、たとえば欧州特許出願公開第1273344A1号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この方法は、基体が、金属または炭化ケイ素等の導体材料または半導体材料から構成される場合には作用しない。
【0005】
本発明の目的は、担体をコーティングする単純な装置であって、担体内のコーティング媒体の充填レベルを、その材料とは無関係に容易に追跡することができる装置を提供することである。この目的は、コーティング装置(122)の液体収容(liquid−carrying)部が弁(125)によって上昇管(127)に接続され、弁(125)が、上昇管(127)において担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にし、したがって、上昇管(127)が、担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベルを監視するのを可能にする、装置を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の所定の実施形態は、特に、以下に関する。
【0007】
1.液体コーティング媒体(124)によって担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする装置であって、担体(121)が各々、円筒軸、2つの端面、周面および軸方向長さLを有し、多数の流路が第1端面から第2端面まで横切り、担体(121)が、その円筒軸を垂直に位置合わせし、コーティング媒体(124)を担体の端面の少なくとも一方から流路内に導入することによって、所望の量のコーティング媒体(124)でコーティングされ、
担体(121)がコーティング装置(122)に配置され、前記コーティング装置の液体収容部が、弁(125)によって上昇管(127)に接続され、弁(125)が、上昇管(127)において担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にし、したがって上昇管(127)が、担体(121)内のコーティング媒体(124)の充填レベルを監視するのを可能にすることを特徴とする装置。
【0008】
2.充填レベルが、担体の前記軸方向長さLより低い、項目1に記載の装置。
【0009】
3.担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベルの監視が、上昇管(127)における少なくとも1つのセンサ(126)によって行われる、項目1または2に記載の装置。
【0010】
4.センサが、伝導度センサ、超音波センサ、光電遮断検知器(photoelectric barrier)およびそれらの組合せを含む群から選択される、項目3に記載の装置。
【0011】
5.液体コーティング媒体(124)によって担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする方法であって、担体(121)が各々、円筒軸、2つの端面、周面および軸方向長さLを有し、多数の流路が第1端面から第2端面まで横切り、担体(121)が、コーティング装置(122)に配置され、コーティング装置(122)の液体収容部が弁(125)により上昇管(127)に接続され、
−弁(125)が、上昇管(127)において担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にするように設定され、したがって、上昇管(127)により、担体(121)内のコーティング媒体(124)の充填レベルを監視することが可能になり、
−担体(121)が、その円筒軸を垂直に位置合わせし、コーティング媒体(124)を担体の端面の少なくとも一方から流路内に導入することによって、所望の量のコーティング媒体(124)でコーティングされ、
−充填レベルの上昇が、上昇管(127)において監視され、所望の充填レベルに達すると、液体のさらなる上昇が防止されることを特徴とする方法。
【0012】
6.充填レベルのさらなる上昇が、担体(121)からコーティング媒体(124)を除去することによって防止される、項目5に記載の方法。
【0013】
7.除去が、ポンピング、吸引による抽出または吹き飛ばしによって達成される、項目6に記載の方法。
【0014】
8.コーティング操作が繰り返される、項目5に記載の方法。
【0015】
9.コーティング操作が繰り返される前に、担体(121)が180°回転し、その後コーティングされ、その結果、担体(121)の反対側の端面からコーティングが開始する、項目8に記載の方法。
【0016】
10.コーティング媒体(124)が、コーティング操作が繰り返される場合、先行するコーティング操作におけるコーティング媒体と同じであるかまたは異なる、項目8または9に記載の方法。
【0017】
11.担体(121)が、後続するステップにおいて少なくとも1つの熱処理に晒される、項目5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【0018】
12.担体(121)が、熱処理の前に乾燥状態となる、項目11に記載の方法。
【0019】
13.担体が、コーティング装置(122)に配置される前に湿潤状態となる、項目5〜11のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
14.コーティングされた担体(121)を収容する排気系を製造する方法であって、少なくとも1つの担体(121)が項目5〜12のいずれか一項に記載の方法によってコーティングされ、このようにコーティングされた少なくとも1つの担体(121)が排気系に接続される、方法。
【0021】
15.排気系が、自動車の排気系である、項目14に記載の方法。
【0022】
16.排気ガスを清浄化するコーティングされた担体を製造する、項目1〜4のいずれか一項に記載の装置の使用。
【0023】
本発明は、液体コーティング媒体(124)により担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする構成に関する。
【0024】
例示的な実施形態は、図1〜図11に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】コーティング装置(122)と、コーティング媒体(124)用のタンク(144)と、真空貯蔵器(141)とからなり、供給ライン(120)と、流出ライン(140)と、コーティング媒体(124)用の再循環ポンプ(143)を含む戻りライン(142)とが設けられている、コーティングシステムを示す。
【図2】細部II−IVに従って、コーティング装置(122)を詳細な図で示す。
【図3】図1および図2に示すコーティング装置(122)に対する動作オプションを示す。
【図4】図1〜図3に示すコーティング装置(122)に対する別の動作オプションを示す。
【図5】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図6】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図7】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図8】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図9】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図10】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【図11】請求項5〜請求項11による本発明の方法手順の例をブロック図の形態で示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
基体と呼ばれることも多い担体(121)は、一般に中空基体であって、金属またはセラミックから構成され、少なくとも1つの内部流路、一般には多数の内部流路(133)を有している。担体は、一般に、実質的に円筒状担体であり、各々が、円筒軸(A)と、2つの端面(131、132)と、周面(130)と、軸方向長さLとを有し、多数の流路が第1端面から第2端面まで横切っている。こうした担体は、ハニカム体と呼ばれることも多い。特に、担体を、貫通流ハニカム体、または別法として壁面流フィルタとすることができ、それは、約10cm−2から250cm−2の高いセル密度(断面の面積辺りの内部流路の数)を有することができる。担体を、たとえば、菫青石、ムライト、チタン酸アルミニウム、炭化ケイ素、またはたとえば鋼あるいはステンレス鋼等の金属から構成することができる。担体は、有利には、モノリシックの、円筒状に成形された触媒担体であり、内燃機関からの排気ガスのために多数の流路(133)が円筒軸(A)に平行に横切っている。こうしたモノリシック触媒担体は、自動車排気ガス触媒の製造に大規模に使用されている。触媒担体の断面形状は、自動車に対する取付要件によって決まる。円形断面、楕円形、長円形または三角形断面の触媒体が広く使用されている。流路は、概して、正方形断面を有し、触媒体の全断面にわたって間隔の狭いパターンで配置されている。流路の流路密度またはセル密度は、概して、用途に応じて10cm−2と250cm−2との間で変化する。自動車における排気ガス浄化の場合、セル密度が約62cm−2である触媒担体が、今日では、依然として頻繁に使用されている。
【0027】
担体(121)が、炭化ケイ素または鋼あるいはステンレス鋼等の金属から構成される場合、充填レベルを検出することはより困難であり、本発明は、この問題を解決する新たな手続きを提供する。しかしながら、この手続きを、菫青石、ムライトまたは他の物質から作製される担体をコーティングするために使用することも可能である。
【0028】
担体(121)は、各々、円筒軸(A)、2つの端面(131、132)、周面(130)および軸方向長さLを有し、多数の流路(133)が、第1端面から第2端面まで横切っている。担体(121)は、その円筒軸(A)を垂直に位置合わせして、担体(121)の端面の少なくとも一方からコーティング媒体(124)を導入することにより、所望の量のコーティング媒体(124)によってコーティングされる。この目的で、担体(121)は、コーティング装置(122)に、有利には液密に配置され、これを、少なくとも1つの封止材(146)によって達成することができる。封止材を、中空とすることができ、コーティング装置に取り付けるかまたは挿入する際に気体または液体で充填することができ、封止材は、耐漏れ(leaktight)閉鎖を形成することができる。接合部の耐漏れ性を、圧力センサまたは流量センサを用いて監視することができる。
【0029】
そして、図1〜図3に示すように、コーティング媒体(124)は、重力に抗して担体(121)内に導入され、これを、コーティング媒体(124)に過剰圧力を加え、したがって、担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベル(FH)の上昇をもたらすことによって達成することができる。このプロセス中、一定量のコーティング媒体(124)が吐出ポンプ(135)によって利用可能となる。液体レベルが担体(121)の第1端面(131)に近づくと、センサ(123)によって信号を中央コンピュータ(150)に送信することができ、中央コンピュータ(150)は、本発明の実施形態に応じて、吐出ポンプ(135)用のカットオフ信号を放出するか、またはコーティング媒体のさらなる流入を遮断するために弁を作動させることができる。同様の手続きを、コーティング媒体(124)の供給を可能にするように計量計(dosimeter)(136)によって制御される過剰量を用いることによって、達成することができる(図3)。
【0030】
コーティング媒体(124)を、担体(121)の頂部を真空にすることによって導入することも可能である。この目的で、図4に示すように、コーティング媒体(124)は、たとえば吸引ファン(145)または真空貯蔵器を用いて、真空引きするかまたは真空をかけることにより、担体(121)内に引き込まれる。この目的で、当然ながら、上昇管(127)を同様に同じ真空状態にすることが必要であり、本発明の1つの所定の実施形態では、抽出フード(148)と担体(121)との間に封止材(147)が設けられる。
【0031】
コーティング媒体(124)は、液体であり、たとえば、自動車用に排気ガスフィルタをコーティングする懸濁液または分散液(「ウォッシュコート」)であり、触媒活性成分またはその前駆体と、酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウムまたはそれらの組合せ等の無機酸化物とを含み、酸化物を、たとえばシリコンまたはランタンでドープすることができる。触媒活性成分として、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、ニッケル、またはランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウムまたはそれらの組合せ等の希土類金属の酸化物を使用することも可能である。触媒活性成分として、白金、パラジウム、金、ロジウム、イリジウム、オスミウム、ルテニウムおよびそれらの組合せ等の貴金属を使用することも可能である。これらの金属は、互いとのあるいは他の金属との合金としてまたは酸化物として存在することも可能である。硝酸塩、亜硫酸塩または前記貴金属のオルガニルおよびそれらの混合物等の金属もまた、前駆体として存在することができ、特に、硝酸パラジウム、亜硫酸パラジウム、硝酸白金、亜硫酸白金またはPt(NH(NOを、液体コーティング媒体において使用することができる。そして、約400℃から約700℃のか焼により、前駆体から触媒活性成分を得ることができる。自動車排気ガス触媒の製造用の担体をコーティングするために、コーティングのために、最初に無機酸化物の懸濁液または分散液を使用することができ、その後、後続するコーティングステップで、1種または複数種の触媒活性成分を含む懸濁液または分散液を施すことができる。しかしながら、液体コーティング媒体がこれらの成分をともに含むことも可能である。液体コーティング媒体は、固体含有量が35%と52%との間であり、粘度が15cpsと300cpsとの間であることが多い。
【0032】
本発明の構成におけるコーティング中、担体(121)は、コーティング装置(122)に配置され、コーティング装置(122)の液体収容部は、弁(125)によって上昇管(127)に接続されており、そこでは、弁(125)は、上昇管(127)において担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にし、したがって、上昇管(127)により、担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベル(FH)を監視することが可能になる。本発明は、充填レベル(FH)が担体(121)の軸方向長さLより低い場合に特に有利である。そうでない場合、液体が担体の上部端面に現れると充填レベルを検出し、コーティング操作を終了することも可能である。本発明の構成により、担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベル(FH)を、上昇管(127)における少なくとも1つのセンサ(126)によって監視することができる。
【0033】
本発明の1つの所定の実施形態では、担体(121)をコーティングするためのコーティング装置(122)内のコーティング媒体(124)の十分な充填レベル(FH)を確実にするために、コーティング装置(122)に追加のセンサ(123)を取り付けることができる。ここで、上昇管(127)におけるかつ/または担体(121)における充填レベル(128a、128b)を確定し、中央コンピュータ(150)を用いて、互いにかつ所定充填レベル(FH)と比較することを可能にする、センサ(126a、126b、126c、126d)を設けることができる。中央コンピュータ(150)は、アクチュエータ(A1)によって弁(125)を再調整することができる。原則的に、センサ(123)および(126)に対していかなる好適なセンサも使用することも可能であり、これらは、好ましくは、伝導度センサ、超音波センサ、光電遮断検知器、屈折率センサ、容量センサおよびそれらの組合せを含む群から選択される。上昇管(127)において充填レベル(FH)を検出するために、たとえば、光電遮断検知器または伝導度センサの場合のように、液体フロントと交差した時にコーティング操作の終了をトリガする信号を放出するセンサ(126a)を横方向に配置することができる。レベルの変化が検出されると、横方向に配置されたセンサを、機械的に再配置する、すなわち、たとえば上昇管(127)に沿ってシフトさせることができる。上昇管(127)の上方に、センサ、すなわちたとえば、音響測深の原理に基づいて動作する超音波センサ(126b)が配置される場合、コーティング操作の過程における測定によって充填レベルを追跡することができる。この場合、所望の充填レベルの変化がある場合にセンサの配置の変更は不要である。
【0034】
本発明の装置を用いて、液体コーティング媒体(124)により担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする方法が実施され、1つまたは複数の担体(121)はコーティング装置(122)に配置され、コーティング装置(122)の液体収容部は、弁(125)によって上昇管(127)に接続されている。弁(125)は、本発明の1つの所定実施形態では、上昇管(127)において担体(121)におけるものと同じ圧力状態が、したがって実質的に同じ液体の上昇が確実になるような、固定値に設定され(図1)、したがって、上昇管(127)により、担体(121)におけるコーティング媒体(124)の充填レベルを監視することが可能になる。
【0035】
この目的で、コーティング装置(122)に、たとえば、弁(125)の較正が行われるべきタイプの担体(121)を配置することができる。同時に、上昇管(127)および担体(121)における充填レベル(128aおよび128b)を互いに比較しまたは相関させることができるように、担体(121)における充填レベル(FH)もまた検査される。この目的で、担体(121)に、たとえば、充填レベル(FH)を確定するセンサ(126d)を設けることができ、炭化ケイ素または金属製の担体の場合、センサ(126c)を担体の上部端面の上方に配置することができ、それは、コーティング媒体(124)の出現を検出することができる。充填レベル(FH)が担体(121)または上昇管(127)のいずれにおいてより迅速に上昇するかに応じて、上昇管(127)における充填レベルの上昇を担体(121)における充填レベル(FH、128b)の上昇に適合させるために、弁(125)を調整することができる。この目的で、弁(125)の適切な調整を行うために、複数の設定試験が必要な場合がある。担体(121)およびコーティング媒体(124)の特性に応じて、担体(121)を新たなコーティングされていない担体と置き換える必要がある場合があり、それは、担体とコーティング媒体の組成との一定の組合せの場合に、担体内の充填レベルの上昇が、すでに存在している先に施されたコーティング媒体(124)によって変更される可能性があるためである。特定のタイプの担体に対して、弁(125)のこうした調整を、コーティング媒体(124)の種々の組成に対して行わなければならない。得られるデータ(時間、充填レベル、コーティング媒体の組成および/または粘度、加えられる過剰圧力または真空、担体のタイプ等)は、相互に相関して表に入力される。ここでは、さらに、担体のタイプのみでなくコーティング中の圧力状態を決定する担体の特性、たとえばセル密度、長さ、セルサイズもまた同様に入力される場合、特に有利であり、それにより、使用される新たなタイプの担体およびコーティング懸濁液の既知のデータおよび特性に基づいて、種々のコーティング媒体および担体を含む後続する弁調整中に、弁(125)の粗い事前調整を行うことが可能になり、正確な調整をより迅速に行うことが可能になる。弁調整が自動的に、たとえばコンピュータ制御下で行われる場合、特に有利である。この場合、再調整は、オペレータにより、または中央コンピュータ(150)により開始されるか、またはコーティング媒体の特性(導電性または粘度等)の変化または担体のタイプの変化(たとえばバーコードを用いて自動的に検出することができる)に基づいて自動的にトリガされる。そして、弁(125)は、アクチュエータ(A1)、たとえばサーボによって調整される。担体(121)および上昇管(127)の充填レベルは、センサを用いて確定され、所定充填レベルを達成するのに必要な充填レベルは、中央コンピュータ(150)によって比較され、その場合、コンピュータは、その後、弁(125)の調整と、必要な場合は、アクチュエータ(A1)を用いて表に入力されている事前に確定された値の調整を行い、適切な場合は、所定の精度が達成されるまで調整を繰り返す。弁(125)の調整の後、担体(121)の円筒軸(A)を垂直に位置合わせし、コーティング媒体(124)を、担体の端面(131、132)の少なくとも一方から流路(133)内に導入することにより、担体(121)を、所望の量のコーティング媒体(124)でコーティングすることができる。上述したように、これを、ポンピング、過剰圧力の印可または真空の付与等のさまざまな方法で達成することができる。真空にされる場合、上昇管も同様にこの同じ真空状態にしなければならない。個々の担体(121)のコーティング中、充填レベル(FH)の上昇は、上昇管(127)において監視され、所望の充填レベルに達すると、液体のそれ以上の上昇が防止される。液体のさらなる上昇は、内方ポンピング操作を停止することにより、または周囲圧力に関して過剰圧力または真空を低減することによって防止される。これにより、概して、担体(121)からのコーティング媒体(124)の除去がもたらされ、これは、特に、ポンピング、吸引または吹込みによって達成される。すなわち、たとえば欧州特許出願公開第941763A1号明細書におけるように、コーティング装置(122)を、たとえば供給ライン(120)を介して真空にすることにより、コーティング媒体(124)がもたらされる場合、周囲の標準圧力により、担体(121)の流路に気体の流れがもたらされ、それは、流路を充填するコーティング媒体を除去するだけでなく、担体(121)内の流路の側壁に付着する可能性があるあらゆる過剰な量のコーティング媒体(124)を除去するように使用されることも可能である。
【0036】
コーティング媒体(124)を除去するために、たとえば流出ライン(140)を介して、たとえば排気された真空貯蔵器(141)(図1)に至る抽出弁(137)を開放することにより、下部端面(131)を真空にすることができる。同時に、空気、または窒素等、コーティングされた担体およびコーティング懸濁液に対して不活性の他の何らかの気体を、担体の上部端面(132)から下部端面に、加圧することなく供給することができる。真空貯蔵器の圧力が低下するため、したがって、担体の流路内の気体の流量もまた低減する。この種の手続きは、参照される、たとえば欧州特許出願公開第941763A1号明細書、第4頁第56行から第5頁第36行に記載されている。
【0037】
しかしながら、手続きを反転させることも可能であり、担体の上部端面を真空にし、気体を担体の下部端面に供給することができる。この供給を、1回または複数回切り換えるかまたは反転させることも同様に可能であり、それにより、米国特許第7094728号明細書に従って担体の流路のより一様のコーティングがもたらされる。
【0038】
真空にする(「吸引により担体を空にするかまたは解放する」)代りに、過剰圧力を印加する(担体を「吹き飛ばす」)ことも可能である。この目的で、空気、または窒素等の、コーティングされた担体およびコーティング懸濁液に関して不活性である他の何らかの気体が、圧力下で上部端面または下部端面に供給される。この手続きの間に、気体圧力に晒される端面の反対側に位置する端面は、十分な量の気体が流れ出ることができることを確実にしなければならない。この目的で、真空にすることができるが、これは絶対的に必須ではない。しかしながら、気体または液体の圧力はまた、担体の流路から過剰のコーティング懸濁液を除去するために十分な気体流量を確実にするように、反対側から印加されるべきではない。この場合もまた、上に簡単に概説した米国特許第7094728号明細書による方法におけるように、過剰圧力を、上部端面および下部端面から交互に供給することができる。
【0039】
2つの部分コーティングステップにより担体の完全なコーティングをもたらすか、または別法として重ねてまたは担体の異なる部分に異なるコーティングを施すように、本発明のコーティング操作を繰り返すことも可能である。これらの手続きは、原則的に本技術分野において既知である。したがって、手続きに応じて、コーティング操作を繰り返す際に使用されるコーティング媒体(124)は、先行するコーティング操作におけるコーティング媒体と同じであることも異なっていることも可能である。
【0040】
コーティング操作を繰り返す前に、担体(121)を、有利には、180°回転させ、その後にコーティングすることができ、それにより、コーティングが、担体(121)の、先行するコーティング操作でコーティングが開始した端面(131)とは反対側の反対側の端面(132)から開始することになる。
【0041】
コーティング媒体(124)の除去後、担体(121)は、適切な場合、乾燥状態にされ熱処理に晒される(か焼される)。熱処理の前に、担体を乾燥させることができる。この方法は任意であり、それは、担体は、いずれの場合も後続する熱処理中乾燥するためである。
【0042】
乾燥させるために、コーティング装置から除去する前に、20℃と150℃との間の温度であって5秒間から20秒間、4m/秒を超える、好ましくは7m/秒〜10m/秒の速度で流れる予熱空気の流れを、担体の(121)の流路(133)を通して、たとえば重力に抗して下方から流すことができる。熱処理の前のこの種の予備乾燥により、非常に高い充填速度で観察されることが多い、担体の下端部における流路の閉塞または流路の狭隘化を回避することができる。この追加の手段により、乾燥およびか焼プロセス中に流路が閉鎖するかまたは狭隘化することなく、通常より大量のコーティングを担体に充填することが可能になる。したがって、この手段により、担体上のコーティング分散液の濃度を増大させることができる。
【0043】
熱処理は、概して、約150℃から約800℃、特に約200℃から700℃、有利には約250℃から約600℃の温度で行われる。熱処理の時間は、約10℃/分から約50℃/分、特に約20℃/分から約40℃/分、有利には約35℃/分から約45℃/分の加熱速度で、約1時間〜5時間、有利には2時間〜3時間であり、加熱速度は、炉の温度に関連する。バッチ式の熱処理の場合、加熱速度を、炉の適切な制御された温度により、または連続プロセスでは、定義された温度プロファイルで操作されるトンネル炉を通る担体の供給速度を制御することにより、達成することができる。
【0044】
本発明の方法の1つの所定の実施形態では、担体は、コーティング装置に配置される前に湿潤状態にされる。乾燥状態では、担体は、液体に対して著しい吸収能力を有している。セル密度が120cm−2以上であるセル密度の高い担体をコーティングする場合、これにより、充填プロセス中であっても、コーティング媒体の固化および流路の閉塞がもたらされる可能性がある。したがって、コーティングする前に担体を湿潤させることが有利である。これは、酸溶液、塩基溶液または塩溶液での予備含浸の問題であり得る。予備含浸により、ゾル−ゲル法による流路壁のコーティングの形成が容易になる。コーティング分散液と予備含浸された流路壁との接触により、分散液のpHがシフトし、それにより、コーティング媒体として使用される好適な分散液がゲルに転換される。
【0045】
本発明はまた、コーティングされた担体(121)を収容する排気システムを製造する方法に関し、そこでは、本発明の方法により少なくとも1つの担体(121)がコーティングされ、このようにしてコーティングされた少なくとも1つの担体(121)が排気系に接続され、すなわち、排気ガス流が完全にコーティングされた担体内を流れ、排気ガスの汚染物質含有量が低減されるように、コーティングされた担体が排気系に挿入されるかまたは取り付けられる。排気系は、特に、自動車の排気系である。したがって、本発明の装置を使用して、排気ガスを清浄化するコーティングされた担体を製造することができる。
【符号の説明】
【0046】
120 コーティング媒体124の供給ライン
121 担体
122 コーティング装置
123 122におけるレベルのセンサ
124 コーティング媒体
125 上昇管入口の弁
126a、126b 上昇管127における液体レベルのセンサ
126c、126d 担体121における液体レベルのセンサ
127 上昇管
128a 上昇管127における充填レベル
128b 担体121における充填レベル
130 担体121の周面
131 担体121の第1端面
132 担体121の第2端面
133 担体121の流路
135 コーティング媒体124の吐出ポンプ
136 計量計
137 抽出弁
140 コーティング媒体124用の122からの流出ライン
141 真空貯蔵器
142 コーティング媒体124用の戻りライン
143 再循環ポンプ
144 コーティング媒体用のタンク
145 コーティング媒体用の吸引ファン(図4)
146 底部封止材
147 頂部封止材
148 抽出フード
150 中央コンピュータ
201 方法特徴:上昇管127との弁125を介する122における121の配置
202 方法特徴:弁125の設定
203 方法特徴:担体の部分コーティング
204 方法特徴:充填レベル128の監視
205 方法特徴:上昇の防止
210 方法特徴:124の除去による防止
211 方法特徴:ポンピング停止による防止
212 方法特徴:コーティングの繰返し
213 方法特徴:担体の回転およびコーティングの繰返し
215 方法特徴:異なるコーティング媒体によるコーティングの繰返し
216 方法特徴:熱処理
A 円筒軸
A1 弁125の起動部
A2 抽出弁137の起動部
A3 抽出ファン145の起動部
A4 吐出ポンプ135の起動部
D 担体121の直径
L 担体121の長さ
FH 担体121の充填レベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体コーティング媒体(124)によって担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする装置であって、前記担体(121)が各々、円筒軸、2つの端面、周面および軸方向長さLを有し、多数の流路が前記第1端面から前記第2端面まで横切り、前記担体(121)が、その前記円筒軸を垂直に位置合わせし、前記コーティング媒体(124)を前記担体の前記端面の少なくとも一方から前記流路内に導入することによって、所望の量の前記コーティング媒体(124)でコーティングされ、
前記担体(121)がコーティング装置(122)に配置され、前記コーティング装置の液体収容部が、弁(125)によって上昇管(127)に接続され、前記弁(125)が、前記上昇管(127)において前記担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にし、したがって前記上昇管(127)が、前記担体(121)内の前記コーティング媒体(124)の充填レベル(FH)を監視するのを可能にすることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記充填レベル(FH)が、前記担体の前記軸方向長さLより低い、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記担体(121)における前記コーティング媒体(124)の前記充填レベル(FH)の監視が、前記上昇管(127)における少なくとも1つのセンサ(126)によって行われる、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記センサが、伝導度センサ、超音波センサ、光電遮断検知器およびそれらの組合せを含む群から選択される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
液体コーティング媒体(124)によって担体(121)を完全にまたは部分的にコーティングする方法であって、前記担体(121)が各々、円筒軸(A)、2つの端面(131、132)、周面(130)および軸方向長さLを有し、多数の流路(133)が第1端面(131)から第2端面(132)まで横切り、前記担体(121)が、コーティング装置(122)に配置され、前記コーティング装置(122)の液体収容部が弁(125)により上昇管(127)に接続され、
−前記弁(125)が、前記上昇管(127)において前記担体におけるものと同じ圧力状態を、したがって実質的に同じ液体の上昇を確実にするように設定され、したがって、前記上昇管(127)により、前記担体(121)内の前記コーティング媒体(124)の充填レベルを監視することが可能になり、
−前記担体(121)が、その前記円筒軸(A)を垂直に位置合わせし、前記コーティング媒体(124)を前記担体の前記端面(131、132)の少なくとも一方から前記流路(133)内に導入することによって、所望の量の前記コーティング媒体(124)でコーティングされ、
−前記充填レベル(FH)の上昇が、前記上昇管(127)において監視され、所望の充填レベル(FH)に達すると、前記液体のさらなる上昇が防止されることを特徴とする方法。
【請求項6】
前記充填レベル(FH)の前記さらなる上昇が、前記担体(121)から前記コーティング媒体(124)を除去することによって防止される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
除去が、ポンピング、吸引による抽出または吹き飛ばしによって達成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティング操作が繰り返される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティング操作が繰り返される前に、前記担体(121)が180°回転し、その後コーティングされ、その結果、前記担体(121)の反対側の端面からコーティングが開始する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング媒体(124)が、前記コーティング操作が繰り返される場合、先行するコーティング操作におけるコーティング媒体と同じであるかまたは異なる、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記担体(121)が、後続するステップにおいて少なくとも1つの熱処理に晒される、請求項5〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コーティングされた担体(121)を収容する排気系を製造する方法であって、少なくとも1つの担体(121)が請求項5〜11のいずれか一項に記載の方法によってコーティングされ、このようにコーティングされた少なくとも1つの担体(121)が前記排気系に接続される、方法。
【請求項13】
前記排気系が、自動車の排気系である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
排気ガスを清浄化するコーティングされた担体を製造する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公表番号】特表2013−519516(P2013−519516A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553288(P2012−553288)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052197
【国際公開番号】WO2011/101337
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】