説明

コーティング装置

【課題】高粘度のコーティング液を原料表面にムラなくコーティングでき、その上、原料同士が結着するのを防ぎ、乾燥時に原料表面を滑らかに加工することが可能なコーティング装置を提供することを技術的課題とする。
【解決手段】横設された円筒型のコーティング用撹拌室と、通気性のある円筒型のスクリーンから構成される横設された乾燥用撹拌室と、前記乾燥用撹拌室内に前記乾燥用撹拌室の長手方向に沿って回転自在に配設された主軸と、前記乾燥用撹拌室内に搬送された原料を撹拌しながら前記乾燥用撹拌室の長手方向に搬送するように前記主軸に軸着され、前記主軸の軸心周りで回転駆動する撹拌手段と、から構成されるコーティング装置であって、前記乾燥部における前記撹拌手段により、原料搬送方向に対して下手側ほど原料を搬送する速度を遅くする、という技術的手段を講じた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高粘度のコーティング液を連続的に原料に被覆するためのコーティング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、栄養富化等を目的として穀粒の表面にコーティング液をコーティングすることが行われている。例えば、特許文献1には、穀粒表面に該穀粒の重量比0.5〜3.0%のコーティング液をコーティングすることが記載されている。また、穀粒が含有する一粒当たり栄養成分を増加させるために、穀粒表面に多量のコーティング液を添加することが望まれている。
【0003】
多量のコーティング液を穀粒表面に添加する手段として、コーティング工程を複数回繰り返して行うことが考えられる。しかし、製造工程の短縮又は設備の小型化のためには、一度のコーティング工程で多量のコーティング液を添加させることが望ましい。そのためには、コーティング液に占める母材の量を増やすことが考えられるが、コーティング液に占める母材の量を増やすと、コーティング液の粘度が高くなり穀粒表面に均一にコーティングすることがそれだけ難しくなり、特にコーティング工程後の乾燥工程において、穀粒同士が結着してしまう可能性や穀粒が装置内に付着しその箇所が詰まりを起こす可能性が高くなる。
【0004】
穀粒同士の結着を防止するために、特許文献2に記載されているような振動式の乾燥装置や特許文献3に記載されているような載置式の乾燥装置が、コーティング工程後の乾燥工程で使用されている。しかし、振動式の乾燥装置では、振動により逆に結着が促進されることもあり、また、載置式の乾燥装置では、穀粒表面を十分に滑らかにすることが困難と思われ、その上、原料を載置するスペースを確保する必要があり装置の小型化が難しいと考えられる。
【0005】
このため、高粘度のコーティング液によるコーティングにおいても穀粒同士の結着や装置内での詰まりを完全に防ぎ、かつ、コーティング加工後の穀粒表面を滑らかにする作用をもち、その上、小型化することが可能なコーティング装置の出現が強く望まれていた。
【0006】
【特許文献1】特開2003−169611
【特許文献2】特開平8−322486
【特許文献3】特開2007−110971
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題点にかんがみて、1度のコーティング工程で高粘度のコーティング液を原料表面にムラなくコーティングでき、その上、原料同士が結着するのを防ぎ、乾燥時に原料表面を滑らかに加工することが可能なコーティング装置を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1の発明は、横設された円筒型のコーティング用撹拌室と、前記コーティング用撹拌室内に供給された原料を撹拌しながら前記コーティング撹拌室の長手方向に搬送するように、前記コーティング用撹拌室の長手方向に沿って回転自在に配設された撹拌搬送手段と、前記コーティング用撹拌室内を搬送されている原料にコーティング液を添加するためのノズルとが設けられた被覆部と、通気性のある円筒型のスクリーンから構成される横設された乾燥用撹拌室と、前記乾燥用撹拌室内に前記乾燥用撹拌室の長手方向に沿って回転自在に配設された主軸と、前記被覆部から前記乾燥用撹拌室内に搬送された原料を撹拌しながら前記乾燥用撹拌室の長手方向に搬送するように前記主軸に軸着され、前記主軸の軸心周りで回転駆動する撹拌手段と、前記乾燥用撹拌室内に熱風を供給するための熱風送風路と、前記熱風を排出するための熱風排風路とが設けられた乾燥部と、から構成されるコーティング装置であって、前記乾燥部における前記撹拌手段により、原料搬送方向に対して下手側ほど原料を搬送する速度を遅くするという技術的手段を講じた。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記乾燥部における前記撹拌手段を、前記主軸の長手方向に沿って複数配設し、原料搬送方向に対して下手側の前記撹拌手段ほど原料を搬送する速度を遅くするという技術的手段を講じた。
【0010】
さらに、請求項3の発明は、前記撹拌手段が、前記主軸の長手方向に沿って平行に取り付けられた撹拌プレートから構成され、該撹拌プレートに複数のパドル部を設け、搬送方向に対して該パドル部の先端部の角度を調節することで、前記撹拌手段が原料を搬送させる速度を制御するという技術的手段を講じた。
【発明の効果】
【0011】
本発明のコーティング装置は、表面にコーティング液をコーティングされた原料を撹拌しながら搬送して熱風により乾燥させることを特徴とし、原料表面のコーティングを連続的に行うことが可能である。
【0012】
原料の乾燥時には、原料を搬送する速度を、複数の区間に分けて配設された撹拌手段により調節することができるので、搬送方向上流側における原料の搬送速度を速くすることで、被覆部から連続的に供給される乾燥初期の未乾燥の原料を、結着することや詰まりを起こすことなくスムーズに搬送方向下流側に搬送することができ、結着や付着による詰まりを防止することができる。このため、結着や詰まりの原因となっていた高粘度のコーティング液を原料にコーティングするとこが可能となる。
【0013】
また、乾燥部の搬送方向下流側を搬送されている原料は、該原料表面にコーティングされたコーティング液がほぼ乾燥しており、結着や付着による詰まりを起こす心配がないので、搬送方向下流側に配設されている撹拌手段により原料の搬送速度を遅くすることで、搬送する距離を長くすることなく熱風による乾燥時間を多く確保することができるようになる。このため、乾燥部における搬送距離を短縮することが可能となるため、装置の小型化が図れる。
【0014】
さらに、乾燥時に撹拌室内で十分に原料の撹拌を行うので、撹拌時に原料同士が擦れ合ったり、撹拌室を形成する乾燥用撹拌室に接触するなどしてコーティング後の原料の表面は滑らかに加工される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明のコーティング装置1に係る概略平面図であり、図2は同装置における内部構造を示すための概略部分断面図である。コーティング装置1は、穀粒表面にコーティング液を被覆(コーティング)する被覆部Aと、穀粒表面を乾燥する乾燥部Bとから構成され、これらは本体フレーム6に取り付けられている。符号2は、原料を投入する供給口であり、ホッパ3の上部に設けられている。符号4はロータリーバルブであって、モータ5により駆動し、ホッパ3内の原料を供給管7より被腹部Aに供給する。
【0016】
本実施例では、原料が白米の無洗米である場合について説明するが、前記原料としては、前記無洗米以外の米やその他の穀物、又は種子等も考えられ、該米には玄米、分搗き米、胚芽米及び無洗米等の既に洗米済みのものを用いることができる。洗米していない原料であっても原料の表面をコーティングし、家畜の試料に利用することができるが、食用には適さない。また、造粒米等のように粒状に成型したものであれば本発明のコーティング装置1によりその表面を被覆することが可能である。
【0017】
被腹部Aは、横設された円筒型のコーティング用撹拌室8、軸受け部11、カップリング12及びモータ9から構成されている。符号13はモータ9の出力軸であって、カップリング12によりシャフト10に連絡しており、また、該シャフト10は、軸受け部11の内部に配設されたベアリング14により、コーティング用撹拌室8の内部に回転自在に横設されている。
【0018】
図3は、被腹部Aのコーティング用撹拌室8内部を説明するための図である。図3で示すように、シャフト10には、供給管7から供給された原料を搬送するための一条ねじロール60を形成する羽根15が、供給管7の下方に設けられており、先端側には原料を撹拌するために撹拌翼16が複数配設されている。一条ねじロール60及び撹拌翼16によって被覆部Aにおける撹拌搬送手段が構成される
【0019】
前記撹拌翼16は、コーティング用撹拌室8内を搬送されている原料を撹拌することで該原料表面に液供給口20から供給されたコーティング液を均一に被覆させるために設けられている。図3で示すように、撹拌翼16はシャフト10の長手方向に平行して立設しており、その断面はシャフト10との接合面から先端になるほど細くなる楔形(又は三角形)となっている。該断面を楔形としたのは、高粘度のコーティング液を添加された原料を撹拌する時に受ける力により撹拌翼16が破損しないようにするためであり、また、掃除をしやすいようにするためでもある。
【0020】
符号17は、羽根15の作用により排出部29の方向へ搬送された原料にコーティング液を噴霧するためのノズルである。図4(a)は、ノズル17の拡大図であり、図4(b)はノズル17の断面図である。ノズル17は、空気を噴出する空気噴出口18と、コーティング液を噴出する液噴出口19と、霧状化したコーティング液をコーティング用撹拌室8内に供給する液供給口20とから構成される。
【0021】
液噴出口19には、別途設けられているタンク24からポンプ22によりコーティング液が供給される。なお、タンク24とポンプ22との間にはバルブ23が設けられており、ポンプ22と液噴出口19との間には流量調整弁21が設けられている。
【0022】
空気噴出口18には、別途設けられているエアーコンプレッサ26から空気が圧送される。なお、空気噴出口18とエアーコンプレッサ26との間には圧力調整弁25が設けられており、この圧力調整弁25によって空気噴出口18に圧送される空気の圧力を調整する。該圧力は試験等により求めた適切な値に調整するようにすればよい。
【0023】
液噴出口19と空気噴出口18とは、液噴出口19から噴出されるコーティング液が空気噴出口18から噴出される圧縮空気により霧状化するように、夫々の噴出方向が交差する状態で液供給口20に形成されている。つまり、空気噴出口18から噴出される圧縮空気と液噴出口19から噴出されるコーティング液とを混合させ且つ該コーティング液を霧状化させて、その霧状化させたコーティング液を被覆部Aのコーティング用撹拌室8内を搬送されている原料に対して供給するように構成されている。
【0024】
符号27は、被覆部Aから排出された原料を乾燥部Bに送るための搬送路である。搬送路27の上端には、図示していない熱風発生源(熱交換器等)から送られてくる熱風の熱風供給口28が配設されている。熱風供給口28に送られてきた熱風は、搬送路27を通り、乾燥部Bに至る。前記熱風を搬送路27に通風させることで、被覆部Aの排出部29から排出された原料の表面を迅速に乾燥させ、かつ前記原料が搬送路27内を拡散した状態で搬送されるようにし、乾燥部Bの三条ねじロール30に到着する前に原料同士で結着するのを防止する。
【0025】
乾燥部Bは、外枠31、カップリング32、モータ33、送風路34及び排風路35から構成されている。符号36はモータ33の出力軸であって、カップリング32により主軸37に連絡しており、該主軸37は、軸受け38a及び38bに配設されたベアリング39a及び39bにより、外枠31内部の乾燥用撹拌室40内に回転自在に横設されている。主軸37には、搬送された原料を乾燥用撹拌室40内で撹拌させながら乾燥するために、三条ねじロール30と複数の撹拌プレート41を連結したホルダ42が取り付けられている。
【0026】
三条ねじロール30は、乾燥部Bの排出部29から熱風により搬送された原料を激しく撹拌するために、搬送路27の下方に設けられている。図5は三条ねじロール30の構造を説明するための図である。図5に示すように、三条ねじロールは、主軸37に捲回されている3枚のプレート43a、43b及び43cから構成されている。プレート43a、43b及び43cは、それぞれ主軸37に立設する支持体44a、44b及び44cの上方に取り付けられている。このため、プレート43a、43b及び43cと主軸37とは直接接続されておらず、主軸37とプレート43a、43b及び43cとの間に空間がある。
【0027】
また、プレート43a、43b及び43cは、連結体45a、45b及び45cにより一体に連結している。これは、主軸37に直接接続されていないプレート43a、43b及び43cが、主軸37の回転駆動時にブレないように補強するためである。なお、連結体45bは図示されていない。
【0028】
図6は、乾燥用撹拌室40の内部を説明するための図である。符号45は、三条ねじロール30に原料が結着するのを防止するための撹拌棒である。撹拌棒45は、外枠31の側面から主軸37の長手方向に平行に立設させており、主軸37とプレート43a、43b及び43cとの間に固定して設ける。この位置に撹拌棒45を配置することで、三条ねじロール30の回転駆動の作用により、原料の結着と原料が三条ねじロール30に付着することとを防ぐことができる。
【0029】
主軸37には所定の間隔でホルダ42が取り付けられており、該ホルダ42の端部には撹拌プレート41が取り付けてある。図7はホルダ42に撹拌プレート41を取り付ける構造を説明するための図であって、図6で示すCの方向から見た図である。
【0030】
ホルダ42はS字の形状をしており、中心部には主軸37を嵌挿するための軸穴57が設けられ、ホルダ42の両端部には、撹拌プレート41をネジ58で止めるため取り付け部51が設けられている。なお、ホルダ42を主軸37に溶接して立設させるようにしてもよい。
【0031】
撹拌プレート41は、断面がL字状のプレートであり、片側には複数のパドル部55が設けられている。本実施例では各撹拌プレート41に6個のパドル部55が設けられているが、6個に限定されるわけではなく、パドル部55の個数は適宜変更すればよい。撹拌プレート41は、ホルダ42の取り付け部51にネジ止めされて、主軸37の長手方向に対して平行になるように取り付けられるが、パドル部55はそれぞれ主軸37に対して角度を調節することが可能である。本実施例では主軸37に対して、撹拌プレート41(a)のパドル部55は45°の角度、撹拌プレート41(b)のパドル部55は30°の角度、そして撹拌プレート41(c)のパドル部55は15°の角度に設定している。
【0032】
図8は、撹拌プレート41(a)、撹拌プレート41(b)及び撹拌プレート41(c)の平面図(上から見た図)である。パドル部55は、撹拌プレート41の一部分から形成されており、図示されているラインDより先端側をパドル部55としている。このため、パドル部55の先端部分を該パドル部55の中心点(図8中の点X)を中心に捻ることで前記角度を設定している。したがって、ラインDの位置のパドル部55は、撹拌プレート41と同様に主軸37の長手方向と平行な状態であって、先端部部分に近づくほど設定する角度に近い角度となる。
【0033】
なお、パドル部55の角度は、15°、30°及び45°に限定されるものでなく、複数種類のパドル部55の角度を設定した撹拌プレート41を用意することで適宜変更することが可能である。
【0034】
符号46は、乾燥部Bの最も排出口47に近い位置に取り付けられる撹拌プレートであって、主軸37に対して角度を付けることなく平行(0°)に取り付けられている。撹拌プレート46には、撹拌プレート41と異なりパドル部55は設けられていない。なお、撹拌プレート46にも撹拌プレート41と同様にパドル部55を設けてもよいが、前記角度を0°とすることになるので、パドル部55を設ける必要性がない。
【0035】
三条ねじロール30やホルダ42に取り付けられた撹拌プレート41及び撹拌プレート46は、主軸37の回転により乾燥用撹拌室40内にて主軸37の軸心周りに回転する構造となっている。図9は乾燥用撹拌室40の構造を説明するための図である。図9で示すように、乾燥用撹拌室40は、円筒型のスクリーン64と該スクリーン64を装置内に固定するためのフレーム48とから構成されている。図9中で点線で囲んだBの範囲の詳細を別途表示しているが、スクリーン64の全面には無数の孔56が設けられている。なお、該孔56の大きさは、原料の粒径よりも小さくする必要がある。また、外枠31内に横設した状態の乾燥用撹拌室40の上方には開口部59が設けられている。該開口部59は送風路34に接続されており、供給口49から供給された熱風は送風路34を経由して該開口部59から乾燥用撹拌室40内に入る構造となっている。
【0036】
前記送風路34は外枠31の上部に設けられており、乾燥用撹拌室40内で撹拌されながら搬送されている原料に熱風を供給する。送風路34には、図示していない熱風発生源(熱交換器等)から送られてくる熱風の供給口49が配設されている。また、乾燥部Bの下方には排風路35が設けられており、該排風路35の熱風排出口50は、図示していない排風用ファンに接続されている。該排風用ファンの吸引作用により、供給口49から供給された熱風は、開口部59から乾燥用撹拌室40内に入り、乾燥用撹拌室40内で撹拌されながら搬送されている原料の堆積層を通過し、孔56、排風路35を経由して熱風排出口50から排出されるようになっている。
【0037】
符号47は乾燥用撹拌室40内で撹拌されながら搬送された原料の排出口である。また、符号52は排風路35の下端に設けられた排出蓋である。排出蓋52は、レバー53を案内板54に沿って回動させることで開閉する。コーティング装置1を掃除するときに、該装置1内部のゴミ等を排出するために使用する。
【0038】
次にコーティング装置1の作用について説明する。供給口2からホッパ3に投入された原料は、ロータリーバルブ4により所定量の原料が連続的に被覆部Aの一条ねじロール60に供給される。前記原料は一条ねじロール60の搬送作用により排出部29の方向へコーティング用撹拌室8内を搬送される。排出部29の手前側にはノズル17が設けられているので、前記原料にはノズル17の液供給口20から供給される霧状化したコーティング液が添加される。
【0039】
本件発明のコーティング装置1により原料の表面を被覆する場合は、コーティング液に高粘度のものを用いることができ、6000CP(センチポアズ)程度の粘度のコーティング液であっても使用することができる。また、原料に添加するコーティング液の量は、原料に対して10%程度まで可能であり、例えば、100kgの原料に対して10kgのコーティング液を添加することが可能である。
【0040】
コーティング液が添加された原料は、シャフト10の回転駆動により回転する撹拌翼16の作用により撹拌され、表面に均一にムラなく前記コーティング液がコーティングされる。表面をコーティング液によりコーティングされた前記原料は、排出部29から排出される。
【0041】
排出部29から排出された原料は、排出部29の上方に設けられた熱風供給口28から供給される熱風に曝されて、表面を乾燥されながら、搬送路27内に拡散して該搬送路27の下方に設けられた三条ねじロール30に達する。前記熱風には、原料表面にコーティングされたコーティング液を迅速に乾燥させる効果と、排出部29から排出された原料搬送路27内に均一に拡散される効果とがある。また、前記熱風の温度や風量は、原料やコーティング液の種類により適宜変更すればよい。本実施例では、原料を白米として、1時間当たり250kgのコーティング米を製造するにあたり、前記温度を約50℃、前記風量を約10m/minとした。
【0042】
原料が三条ねじロール30に達した時点では、該原料の表面はコーティング液でコーティングされているので、図10に示すように、原料表面61はコーティング液で覆われており、原料の最外層には、該コーティング液によるコーティング層62が形成されている。このコーティング層62の最外面63は、前記熱風の作用によりほぼ乾燥しているが、最外面63の内側のコーティング層62に位置するコーティング液は、この時点ではまだ完全には乾燥していない。このため、乾燥部Bにて、原料が排出口47から排出されるまでに、コーティング層62を形成するコーティング液を完全に乾燥させる必要がある。
【0043】
三条ねじロール30では、原料を激しく撹拌させ、この時点で結着している原料がある場合には結着している原料同士を完全に分離させる。そして、三条ねじロール30の回転駆動による作用により、排出口47の方向へ原料を搬送する。図11に示すように、三条ねじロール30と排出口47の間には、主軸37の回転駆動により回転する撹拌プレート41(a)、撹拌プレート41(b)、撹拌プレート41(c)及び撹拌プレート46によってそれぞれ撹拌・搬送される区間1、区間2、区間3及び区間4が設けられている。この区間1、区間2、区間3及び区間4に設けられている撹拌プレート41(a)、撹拌プレート41(b)、撹拌プレート41(c)及び撹拌プレート46の撹拌手段のうち、原料の搬送速度を調節できる撹拌手段は、撹拌プレート41(a)、撹拌プレート41(b)、撹拌プレート41(c)である。
【0044】
三条ねじロール30の作用により搬送された原料は、まず、区間1にて回転している撹拌プレート41(a)の作用により撹拌されながら乾燥される。区間1の撹拌プレート41(a)のパドル部55は、本実施例では主軸37の長手方向に対して45°の角度が付けられているので、原料は撹拌されながら区間2に搬送される。区間1には、乾燥初期の未乾燥の原料が三条ねじロール30から連続的に搬送されるので、該原料が区間1で結着又は付着による詰まりが生じないように、スムーズに区間2に搬送する必要がある。このため、区間1の原料の搬送速度が区間1〜区間4の中で一番早くなるように撹拌プレート41(a)のパドル部55の角度を調節する必要がある。
【0045】
区間2に搬送された原料は、回転する撹拌プレート41(b)の作用により撹拌されながら乾燥される。撹拌プレート41(a)のパドル部55は、本実施例では主軸37の長手方向に対して30°の角度が付けられているので、原料は撹拌されながら区間3に搬送される。ただし、区間2でのパドル部55による搬送作用は、区間1でのパドル部55による搬送作用ほど強くなく、よって、区間2における原料の搬送速度は区間1よりも遅い。区間2では、区間1よりも原料表面に添加されたコーティング液の乾燥が進んでいるので、区間2では区間1よりも結着や付着による詰まりが起こりにくい。このため、区間1よりも原料の搬送速度を遅くすることができ、区間2を搬送される間の原料の乾燥時間を多く確保することができる。
【0046】
区間3に搬送された原料は、回転する撹拌プレート41(c)の作用により撹拌されながら乾燥される。撹拌プレート41(c)のパドル部55は、本実施例では主軸37の長手方向に対して15°の角度が付けられているので、原料は撹拌されながら区間4に搬送される。ただし、区間3でのパドル部55による搬送作用は、区間2でのパドル部55による搬送作用ほど強くはない。よって、区間3における原料の搬送速度は区間2よりも遅い。区間3では、区間2よりも原料表面に添加されたコーティング液の乾燥がさらに進んでいるので、区間3では区間2よりも結着や付着による詰まりが起こりにくい。このため、区間2よりも原料の搬送速度を遅くすることができ、区間3を搬送される間の原料の乾燥時間を多く確保することができる。
【0047】
区間4に搬送された原料は、回転する撹拌プレート46の作用により撹拌されながら乾燥される。撹拌プレート46にはパドル部55が設けられておらず、また、主軸37の長手方向と平行になるようにホルダ42に取り付けてあるため、区間4では原料を排出口47の方向へ搬送する作用はない。このため、区間3よりもさらに原料の搬送速度は遅い。しかし、区間4まで搬送されている間に原料に添加されたコーティング液はほぼ乾燥が完了しているので、区間4では結着や付着による詰まりが起こりにくい。このため、区間3よりも原料の搬送速度を遅くし、区間4での原料の乾燥時間を多く確保することができる。
【0048】
なお、区間4の撹拌プレート46には、原料を排出口47の方向へ搬送する作用はないが、区間3から連続的に原料が搬送されてくるので、原料は区間4に滞留することなく、排出口47から連続的に排出される。
【0049】
原料は区間1〜区間4を搬送される間に、回転する各撹拌プレート41及び撹拌プレート46の作用により乾燥用撹拌室40内で撹拌され、その上、乾燥用撹拌室40の上方に設けた開口部59から熱風が常時供給されるので、原料のコーティング層62のコーティング液は完全に乾燥してから排出口47から排出され、製品として出荷される。
【0050】
前記熱風の温度や風量は、原料やコーティング液の種類により適宜変更すればよい。例えば、原料を白米として、1時間当たり250kgのコーティング米を製造する場合には、前記温度を約50℃、前記風量を約20m/minとした。
【0051】
また、原料が区間1〜区間4を搬送される間に、回転する各撹拌プレート41及び撹拌プレート46の作用により乾燥用撹拌室40内で撹拌されるので、原料の最外面63は、原料同士が擦れ合ったり、乾燥用撹拌室40のスクリーン64に接触するなどして滑らかに加工される。
【0052】
本発明では、前記区間1〜区間4において、原料の搬送作用の強さに差を生じさせている。区間1から区間4にかけて段階的に搬送作用が弱くなるように、区間1が搬送作用が一番強く、排出口に近い区間ほど搬送作用が弱くなるように構成している。
【0053】
前記区間1に、主軸37に対するパドル部55の角度が45°の撹拌プレート41(a)を配設したのは、三条ねじロール30から搬送されてくる原料を詰まらせることなく撹拌させながら区間2に搬送させるためである。例えば、区間1に撹拌プレート46を配設すると、撹拌プレート46には搬送作用がないために、大量の原料が三条ねじロール30から搬送された場合には、原料が区間1内に付着していき、付着した箇所での原料の流れが滞り、詰まりが発生するおそれがある。
【0054】
そして、前記区間2及び区間3において段階的に搬送作用を弱くしたのは、スムーズに原料を区間4に搬送させるためである。本実施例では、区間1から区間4まで4段階に搬送作用の異なる区間を設けているが、これに限定されることなく、例えば、コーティングする原料が少量である等、乾燥部Bで詰まりにくい条件で原料をコーティングする場合には、搬送作用の異なる区間を2段階に減少させることができる。逆に、コーティング液が乾燥しにくい等、乾燥部Bで詰まりしやすい条件でコーティングする場合には、搬送作用の異なる区間を増加させることが望ましい。
【0055】
また、区間1から区間4にかけて段階的に搬送作用が弱くなるように構成しているので、コーティング装置1の連続運転中には、搬送作用が弱い区間ほど、その区間で搬送されている原料の搬送速度が遅くなり、該区間で撹拌されている原料の量が多くなる。このため、前記区間1〜区間4に取り付ける撹拌プレート41を、全て撹拌プレート41(a)にした場合よりも、搬送される距離は同じであっても原料を乾燥する時間を長くすることが可能となるので、コーティング装置の小型化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明のコーティング装置に係る斜視図である。
【図2】本発明のコーティング装置の概略部分断面図である。
【図3】コーティング装置1における被覆部Aのコーティング用撹拌室8内部を説明するための図である。
【図4】ノズルの構造を示す概略図である。
【図5】三条ねじロール30の構造を説明するための図である。
【図6】乾燥用撹拌室40の内部を説明するための図である。
【図7】撹拌プレートの取り付け構造を説明するための図である。
【図8】撹拌プレートの平面図である。
【図9】乾燥用撹拌室40の斜視図である。
【図10】原料の表面状態を説明するための図である。
【図11】原料が搬送される乾燥部の各区間を示した図である。
【符号の説明】
【0057】
1 コーティング装置
2 供給口
3 ホッパ
4 ロータリーバルブ
5 モータ
6 本体フレーム
7 供給管
8 コーティング用撹拌室
9 モータ
10 シャフト
11 軸受け部
12 カップリング
13 出力軸
14 ベアリング
15 羽根
16 撹拌翼
17 ノズル
18 空気噴出口
19 液噴出口
20 液供給口
21 流量調整弁
22 ポンプ
23 バルブ
24 タンク
25 圧力調整弁
26 エアーコンプレッサ
27 搬送路
28 熱風供給口
29 排出部
30 三条ねじロール
31 外枠
32 カップリング
33 モータ
34 送風路
35 排風路
36 出力軸
37 主軸
38a 軸受け
38b 軸受け
39a ベアリング
39b ベアリング
40 乾燥用撹拌室
41 撹拌プレート
42 ホルダ
43a プレート
43b プレート
43c プレート
44a 支持体
44b 支持体
44c 支持体
45 撹拌棒
46 撹拌プレート
47 排出口
48 フレーム
49 供給口
50 熱風排出口
51 取り付け部
52 排出蓋
53 レバー
54 案内板
55 パドル部
56 孔
57 軸孔
58 ネジ
59 開口部
60 一条ねじロール
61 原料表面
62 コーティング層
63 コーティング層の最外面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横設された円筒型のコーティング用撹拌室と、
前記コーティング用撹拌室内に供給された原料を撹拌しながら前記コーティング撹拌室の長手方向に搬送するように、前記コーティング用撹拌室の長手方向に沿って回転自在に配設された撹拌搬送手段と、
前記コーティング用撹拌室内を搬送されている原料にコーティング液を添加するためのノズルと、が設けられた被覆部と、

通気性のある円筒型のスクリーンから構成される横設された乾燥用撹拌室と、
前記乾燥用撹拌室内に前記乾燥用撹拌室の長手方向に沿って回転自在に配設された主軸と、
前記被覆部から前記乾燥用撹拌室内に搬送された原料を撹拌しながら前記乾燥用撹拌室の長手方向に搬送するように前記主軸に軸着され、前記主軸の軸心周りで回転駆動する撹拌手段と、
前記乾燥用撹拌室内に熱風を供給するための熱風送風路と、
前記熱風を排出するための熱風排風路と、が設けられた乾燥部と、

から構成されるコーティング装置であって、
前記乾燥部における前記撹拌手段により、原料搬送方向に対して下手側ほど原料を搬送する速度を遅くしたことを特徴とするコーティング装置。
【請求項2】
前記乾燥部における前記撹拌手段を、前記主軸の長手方向に沿って複数配設し、原料搬送方向に対して下手側の前記撹拌手段ほど原料を搬送する速度を遅くしたことを特徴とする請求項1に記載のコーティング装置。
【請求項3】
撹拌手段が、前記主軸の長手方向に沿って平行に取り付けられた撹拌プレートから構成され、該撹拌プレートに複数のパドル部を設け、搬送方向に対して該パドル部の先端部の角度を調節することを特徴とする請求項1又は2に記載のコーティング装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−39078(P2009−39078A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−210468(P2007−210468)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000001812)株式会社サタケ (223)
【Fターム(参考)】