説明

ゴムローラの製造方法及びゴムローラ

【課題】発泡ゴム弾性層を有するゴムローラの製造方法において、3倍以上の発泡倍率の発泡ゴム弾性層の製造を、製造条件の変更により可能とする。
【解決手段】発泡剤を含むゴム組成物を加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡して製造する、発泡倍率((加硫発泡前のゴム密度)/(加硫発泡後のゴム密度))が3倍以上の発泡ゴム弾性層を有し、以下の条件を満たすゴムローラの製造方法。
(1)ゴム組成物のゴム成分100質量部に対し、カルボンアミド系発泡剤を15〜25質量部含有する。
(2)前記ゴム組成物の加硫進行度50%の時刻と発泡進行度50%の時刻との差の絶対値及び各々が90%の時刻の差の絶対値が、共に3分以下を満足する温度をT1とするとき、前記ゴム組成物を前記温度T1で1〜25分密閉容器内で加熱保持する工程を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式を利用した複写機やプリンター、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に使用されるゴムローラの製造方法に関する。特に、電子写真感光体に接触して用いられる帯電ローラ、転写ローラ等のゴムローラの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真に用いる帯電ローラ、転写ローラ等のゴムローラは、装置の高速化、良画質化に応えるために、感光体との当接により一様なニップ幅を保つことが要求されている。そのため、芯金の外周上の弾性体に発泡ゴム弾性層を用いたゴムローラが使用されている。近年では、製品機種毎に感光体へのニップ幅を適正化するため、ゴムローラの硬度が細かく設定される。つまり、ゴムローラの硬度は、機種毎のピンポイントの硬度設定に対応する必要性があり、当然、硬度バラツキも極力小さいものが要求されている。
【0003】
一般に、発泡ゴム弾性層を有しているゴムローラを所望の硬度に調整するには、発泡ゴム弾性層の発泡倍率を調整して対応することが広く行われている。発泡倍率とは、(加硫発泡前のゴム密度)/(加硫発泡後のゴム密度)の値である。発泡倍率の調整方法としては、ゴム組成物の配合を調整して対応する方法がある。例えば、発泡剤の種類、添加量、粒子径等を調整して対応する方法、発泡助剤の添加量を調整し発泡剤の分解速度や発泡量を調整して対応する方法、加硫剤の種類、添加量による加硫速度を調整して対応する方法、カーボンブラックやフィラー類の添加量を調整して対応する方法、主ゴム成分の種類や分子量を調整して対応する方法等が挙げられる。しかしながら、所望の発泡倍率にするためは、毎回、ゴム組成物の配合を変更しなければならない。このため、機種毎のピンポイントの硬度設定に対応するには、配合処方を検討する工数が多く発生するばかりか、配合処方によっては硬度バラツキが発生する場合がある。
【0004】
ゴム組成物の配合を調整しないで、製造面から発泡倍率を調整する方法は、配合処方を検討する工数を大幅に削減できるため、発泡倍率の制御が可能となれば機種毎のピンポイントな硬度にも対応が容易になる。製造面の変更による対応とは、例えば、加硫発泡する工程を変更することや加硫発泡の温度、時間を調整して対応する方法等が挙げられる。しかしながら、上記の方法では高発泡ゴム弾性層を得ることは困難であるばかりか、硬度のバラツキを小さくすることと併せて両立することは困難である。ここで言う高発泡とは、発泡倍率が3倍以上であることを示すこととし、以下同様とする。
【0005】
一般的に加硫発泡前のゴム密度は、ゴム−密度測定(JIS K 6268、ISO 2781)で測定した場合、0.90〜1.50g/cm3の範疇にあることが多い。したがって、発泡倍率が3倍以上とは、加硫発泡前のゴム密度が0.90g/cm3ときは、加硫発泡後のゴム密度が0.30g/cm3以下のことである。また、加硫発泡前のゴム密度が1.50g/cm3のときは、加硫発泡後のゴム密度が0.50g/cm3以下を示すことと同じである。
【0006】
特許文献1では、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を以下の方法で得ることを提案している。少なくとも発泡剤、加硫剤、加硫促進剤を添加したゴム組成物を加硫発泡させて製造する発泡組成物からなる発泡ゴムロールであって、前記ゴム組成物を、発泡進行度が50%の時刻(t1)における加硫進行度が5%以下となる条件で加硫発泡させる。かつ、発泡進行度が80%の時刻(t2)と加硫進行度が80%の時刻(t3)との差である(t3−t2)が2.5分以下となる条件で加硫発泡させる。これにより、発泡倍率4.1倍から5.0倍の高発泡ゴム弾性層が得られることを示している。
【0007】
特許文献2では加硫発泡させた円筒状ゴム組成物を導電性芯金上に有する導電性ローラの製造方法において、前記円筒状ゴム組成物を加硫発泡する加硫発泡工程は前記円筒状ゴム組成物を内包する保熱兼保持手段により加硫発泡温度まで昇温する工程を有する。前記昇温工程は、(i)少なくとも第一の昇温工程と、(ii)(i)の昇温工程より昇温速度の低い低速昇温工程と、をこの順で有し、前記加硫発泡温度に到達させる。これにより、加硫発泡した円筒状ゴム組成物の形状バラツキを少なくし、優れた内径精度を有し、さらに硬度のムラの少ない導電性ゴムローラを製造する方法が述べられている。
【0008】
【特許文献1】特開2007−90820号公報([0052]、[0053])
【特許文献2】特開2006−21379号公報([要約]、[0050]から[0057])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では、発泡が半分進行している状態では、加硫はほとんど進行していない。また、発泡と加硫が共に80%進行している状態では、発砲と加硫の速度が比較的近いこと(発泡と加硫の速度が同期していること)で高発泡ゴム弾性層が得られることを示している。しかしながら、発泡進行度が50%で、かつ加硫進行度が5%以下の時刻(t1)におけるゴム組成部は、架橋による発泡ガス抜けを抑制することがほとんどできないため、発泡ガスが抜けるガス抜けが発生する場合がある。発泡ガスが抜けると、個々の発泡セルがつながるため、発泡セルの大きさ(以下、発泡セル径と示す場合がある)が大きくなり、発泡セル径が大きいと硬度バラツキを生じる場合があるため、好ましくない。なお、特許文献1においては、硬度測定の結果が示されていないため、硬度バラツキについては不明である。
【0010】
また、特許文献2では、加硫発泡時の昇温を調整することで、硬度バラツキを抑えることは可能である。しかし、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を製造した場合に、硬度バラツキを満足できるかは確認しておらず、電子写真用途で要求される均一な硬度を有する高発泡ゴム弾性層の製造方法が望まれる。
【0011】
即ち、本発明の目的は、発泡ゴム弾性層を有するゴムローラの製造方法において、所望する発泡倍率の前記発泡ゴム弾性層の製造を、3倍以上の発泡倍率においても、ゴム組成物の配合を調整することなく、製造条件の変更により可能とすることである。また、これにより前記発泡ゴム弾性層を有する前記ゴムローラの硬度を自在に調整することを可能とし、かつ、硬度バラツキの小さいゴムローラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発泡剤を含むゴム組成物を、加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡して製造する、(加硫発泡前のゴム密度)/(加硫発泡後のゴム密度)で示される発泡倍率が3倍以上の発泡ゴム弾性層を有するゴムローラの製造方法において、以下の(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とするゴムローラの製造方法。
(1)ゴム組成物のゴム成分を100質量部としたとき、カルボンアミド系発泡剤を15質量部以上、25質量部以下含有すること。
(2)前記ゴム組成物の加硫進行度が50%の時刻(tc50)と発泡進行度が50%の時刻(tp50)の差(tc50−tp50)の絶対値、及び、前記ゴム組成物の加硫進行度が90%の時刻(tc90)と発泡進行度が90%の時刻(tp90)の差(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下を満足する温度をT1とするとき、前記ゴム組成物を前記温度T1で1分以上、25分以下密閉容器内で加熱保持する加熱保持工程を含むこと。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、発泡ゴム弾性層を有するゴムローラの製造方法において、所望する発泡倍率の前記発泡ゴム弾性層の製造を、3倍以上の発泡倍率においても、ゴム組成物の配合を調整することなく、製造条件の変更により行うことができる。また、前記発泡ゴム弾性層を有する前記ゴムローラの硬度を自在に調整することを可能とし、かつ、硬度バラツキが小さいゴムローラを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明者らは鋭意検討した結果、前記ゴム組成物の加硫と発泡が半分程度進行した状態から、加硫と発泡がほぼ終了するまでの加硫速度と発泡速度が比較的近い速度で進行する状態を満足する温度をT1とする。このとき、前記ゴム組成物を前記温度T1で加熱保持すると、前記加熱保持時間の長さに比例して発泡倍率が高くなることを見出した。
【0015】
加硫速度と発泡速度が比較的近い速度とは、言い換えれば、加硫速度と発泡速度が同期していることでもあり、加硫が先行してゴムが硬くなり発泡し難くなる現象や、発泡が先行して発泡ガスが抜け、発泡倍率が低下する現象を効率良く回避できる。したがって、加硫速度と発泡速度が比較的近い速度となる温度で前記ゴム組成物を加熱保持すれば、発泡倍率の高い条件でも、所望の発泡倍率で硬度バラツキの小さい発泡ゴム弾性層を得ることができる。例えば、前記温度で加熱保持する時間を長くすれば、その長さに比例して発泡がより進行するため、発泡倍率が高くなり、前記加熱保持時間を短くすれば、発泡が進行せず発泡倍率が低くなる。その際、前記ゴム組成物の加硫と発泡が半分程度進行した状態から加硫と発泡がほぼ終了するまでの加硫速度と発泡速度が同期していることが必要である。
【0016】
より具体的には、前記ゴム組成物の加硫進行度が50%の時刻(tc50)と発泡進行度が50%の時刻(tp50)の差(tc50−tp50)の絶対値、及び、前記ゴム組成物の加硫進行度が90%の時刻(tc90)と発泡進行度が90%の時刻(tp90)の差(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下を満足する加硫発泡温度をT1とするとき、前記温度T1で前記ゴム組成物を密閉容器内で加熱保持する加熱保持工程を行う。これにより、加熱保持時間に比例して所望の発泡倍率に変化させることができ、3倍以上の発泡倍率においても硬度バラツキの小さい発泡ゴム弾性層を得ることができる。
【0017】
前記ゴム組成物の加硫進行度が50%の時刻(tc50)、また90%の時刻(tc90)とは、後述する加硫速度測定により、ゴム組成物の加硫がそれぞれ50%、90%進行したときの加硫時間を示す。また、前記ゴム組成物の発泡進行度が50%の時刻(tp50)、また90%の時刻(tp90)とは、後述する発泡速度測定により、ゴム組成物の発泡がそれぞれ50%、90%進行したときの発泡時間を示す。
【0018】
前記ゴム組成物の加硫進行度と発泡進行度が50%の時刻の差(tc50−tp50)の絶対値が3分以下でないと、加硫速度と発泡速度の同期が充分でなく、前記加熱保持時間と発泡倍率が比例しない。このため、所望の発泡倍率で硬度バラツキの小さい発泡倍率が3倍以上の発泡ゴム弾性層を得ることができず、好ましくない。
【0019】
前記ゴム組成物の加硫進行度と発泡進行度が50%の時刻の差(tc50−tp50)で判断するのは、50%未満では発泡、加硫共に十分進行していないため、この段階では加硫速度と発泡速度が同期する必要はない。しかし50%以上になるとその影響が大きくなるためである。
【0020】
また、前記ゴム組成物の加硫進行度と発泡進行度が90%の時刻の差(tc90−tp90)の絶対値が3分以下でないと加硫発泡終了付近において加硫速度と発泡速度の同期が充分でなく、前記同様加熱保持時間と発泡倍率が比例しないため、好ましくない。
【0021】
また、加硫進行度と発泡進行度が90%の時刻の差(tc90−tp90)で判断するのは、加硫も発泡もほぼ終了している状態まで加硫速度と発泡速度が同期していないと、加熱保持時間の発泡倍率への関与が小さくなり好ましくない。また、加硫進行度と発泡進行度が90%まで同期していないと、硬度バラツキが大きくなり好ましくない。なお、本来は加硫進行度と発泡進行度は、加硫発泡が終了まで同期していることが好ましいが、発泡倍率と硬度バラツキのバランスを上手く取るためには、加硫進行度と発泡進行度が90%まで同期していればよい。
【0022】
前記加熱保持工程において、温度T1で加熱保持する加熱保持時間は、1分以上、25分以下とする。前記加熱保持時間が1分未満であると、加熱保持時間が短すぎるため発泡倍率の調整が困難となり好ましくない。また、前記加熱保持時間が25分を超えると、発泡剤の分解反応がほぼ終了するため、加熱保持を継続しても発泡倍率に変化がなくなるためである。温度T1で加熱保持する加熱保持時間は、好ましくは、5.0分以上、10.0分以下である。
【0023】
本発明における加硫速度測定及び発泡速度測定には、発泡圧測定機能付き加硫試験機「MDR−200P」(商品名、アルファーテクノロジーズ社製)を用いる。前記測定は、JIS K6300−2(未加硫ゴム 物理特性 振動式加硫試験機による加硫特性の求め方)に準じ、各温度別に60分間測定したものである。なお、測定機に関しては、JIS K6300−2に準じる測定機であればとくに限定されない。
【0024】
加硫速度を示す加硫進行率50%の時刻(tc50)とは、JIS−K6300−2に準じ、前記発泡圧測定機能付き加硫試験機を用い、所定温度で60分間測定する。このとき、加硫最大圧力(加硫最大トルク)MHと加硫最小圧力(加硫最小トルク)MLの差であるMEを100とした時、ME値が50%の時の加硫時間を示すものである。同様に、加硫進行率90%の時刻(tc90)とは、ME値が90%の時の加硫時間を示すものである。
【0025】
加硫速度と同様に、発泡速度を示す発泡進行率50%の時刻(tp50)とは、JIS−K6300−2に準じ、前記発泡圧測定機能付き加硫試験機を用い、所定温度で60分間測定する。このとき、発泡最大圧力(発泡最大トルク)PHと発泡最小圧力(発泡最小トルク)PLの差であるPEを100とした時、PE値が50%の時の発泡時間を示すものである。同様に、発泡進行率90%の時刻(tp90)とは、PE値が90%の時の発泡時間を示すものである。
【0026】
発泡ゴム弾性層を加硫発泡する方法は、無加圧下で加硫発泡する方法と加圧下で加硫発泡する方法に分けられる。無加圧下で加硫発泡する方法は、例えば、熱風槽、マイクロ波を用いたUHF(マイクロ波連続加硫装置)等が挙げられる。しかしながら、無加圧下の加硫発泡方法は、発泡セルの膨張が抑制されないため、発泡セル径にバラツキが生じる傾向にある。発泡セル径が不均一であると硬度バラツキの要因になり好ましくない。
【0027】
一方、加圧下で加硫発泡する方法は、適度な加圧により発泡セルの膨張を抑制できるため、発泡セル径は均一になり、また硬度バラツキも小さくなり好ましく用いられる。
【0028】
加圧下の加硫方法は、金型を用いるもの、加圧水蒸気を導入した密閉容器を用いるものが一般的である。しかしながら、金型を用いると多量生産の場合は、多量の金型が必要となり、運用コスト面で不利になること、また連続生産性に劣る欠点があり好ましくない。
【0029】
本発明は、加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡を行う。加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡を行う方法は、密閉容器の大きさにより生産量を調整できるだけでなく、水蒸気を用いる効果として、加硫発泡時の分解で生成される各種の不純物を水分により効率良く除去できる。特に、本発明に使用するゴム組成物はカルボンアミド系発泡剤を含有する。カルボンアミド系発泡剤は発泡時にアンモニアを発生し、前記アンモニアが少しでも残留すると画像不良を発生する可能性があるため、加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡を行う。導入する加圧水蒸気の圧力の好ましい範囲としては、加硫発泡が進行し、アンモニアが十分除去できる範囲であれば特に限定されないが、0.3MPa以上、0.8MPa以下であることが好ましい。
【0030】
前記密閉容器としては、耐圧、耐熱性の観点から加硫缶が好ましい。また、密閉容器内に導入する加圧水蒸気の圧力は、加硫発泡が進行し、アンモニアが十分除去できる範囲であれば特に限定されないが、0.2MPa以上、0.80MPa以下であることが好ましい。
【0031】
本発明に使用するゴム組成物は、前記ゴム組成物中のゴム成分を100質量部としたとき、カルボンアミド系発泡剤を15質量部以上、25質量部以下含有し、前記(tc50−tp50)の絶対値及び(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下を満足することができれば、特に限定されるものではない。
【0032】
例えば、前記ゴム成分としては、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、エピクロルヒドリン系ゴム(CO、ECO、GECO)等が使用できる。これらは、1種又は2種以上を併用して用いてもよい。
【0033】
本発明においてカルボンアミド系発泡剤を発泡剤として用いる理由は、カルボンアミド系発泡剤の粒子径や添加量で加硫速度と発泡速度の調整を容易に行えるためである。カルボンアミド系発泡剤以外の発泡剤を用いた場合、前記(tc50−tp50)の絶対値及び(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下の条件を満足させることが困難になり好ましくない。
【0034】
前記カルボンアミド系発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(以下ADCAと示す場合がある)、ヒドラゾジカルボンアミド(HDCA)等が挙げられる。その中でも、ADCAは、安価で発生ガス量も多く、容易に高発泡化することができるため好ましい。
【0035】
前記ゴム組成物中のゴム成分を100質量部としたとき、前記カルボンアミド系発泡剤の含有量が15質量部未満であると、温度T1で前記ゴム組成物を加熱保持するとき、加熱保持時間と発泡倍率が比例しない。このため、所望の発泡倍率で硬度バラツキの小さい発泡倍率が3倍以上の発泡ゴム弾性層を得ることができず、好ましくない。
【0036】
また、前記カルボンアミド系発泡剤の含有量が25質量部を超えると、温度T1で前記ゴム組成物を加熱保持するとき、一定の前記加熱保持時間を超えると急激に発泡が促進し、発泡倍率が不安定になる傾向があり好ましくない。好ましくは、前記ゴム組成物中のゴム成分を100質量部としたとき、カルボンアミド系発泡剤を17質量部以上、23質量部以下含有することである。
【0037】
また、カルボンアミド系発泡剤は分解温度が200℃以上と高いため、発泡助剤として尿素を併用して分解温度を低下させて使用することが好ましい。
【0038】
尿素の添加量は、ゴム組成物中のゴム成分を100質量部としたとき、0.3質量部以上、2質量部以下が好ましい。前記範囲では、カルボンアミド系発泡剤の分解温度を十分低下させることができ、また尿素の分解により発生するアンモニアによる不具合が生じることがないため好ましい。より好ましくは、0.5質量部以上、1.8質量部以下である。
【0039】
前記ゴム組成物は、ケッチェンブラック等の導電性カーボンブラック、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等の種類に分類される各種ゴム用カーボンブラック、クレー類、炭酸マグネシウム、シリカ、珪酸マグネシウム、タルク等の各種フィラー類、亜鉛華、ステアリン酸等の加硫促進助剤、スコーチ防止剤、粘着付与剤、加硫剤、その他ゴム用添加剤を含んでもよい。
【0040】
本発明の特徴は、前記ゴム組成物を前記温度T1で1分以上、25分以下密閉容器内で加熱保持するとき、加熱保持時間により発泡倍率を調整できることである。
【0041】
前記加熱保持の温度は、前記温度T1である必要があるが、発泡剤が十分に分解し、かつ適度な速度で前記ゴム組成物を発泡させることが可能な温度範囲であることが好ましく、具体的には、130℃以上、150℃以下が好ましい。前記温度範囲では、前記(tc50−tp50)の絶対値及び(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下の条件を満足することができる。より好ましくは、135℃以上、150℃以下である。
【0042】
前記ゴム組成物を前記温度T1で1分以上、25分以下密閉容器内で加熱保持する加熱保持工程を最初の工程として経た後は、前記温度T1より高い温度でさらに加硫発泡する高温加硫発泡工程を行うことが好ましい。前記温度T1より高い温度とは、前記温度T1より高い温度であれば特には限定されないが、発泡剤が急激に分解する温度で一気に発泡剤の分解を促進させて発泡反応を終結させることが好ましい。その理由は、発泡剤を一気に分解させ発泡反応を終結させることで、発泡セル径が小さく、かつ、均一になるためである。前記高温加硫発泡工程の好ましい温度は、155℃以上、170℃以下である。155℃以上であれば、発泡剤の分解が急激に進行するのに十分な温度であり、また、170℃以下であれば、耐熱性の低いゴム成分を用いた場合にも、ゴムの劣化が生じないため好ましい。
【0043】
本発明におけるゴムローラの製造方法は、本発明の要件を満たしていれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択することができる。例えば、以下のようにして作製することができる。まず、表面に接着剤を塗布した芯金を用意する。一方、前記ゴム組成物を押出機でチューブ状に押し出し、本発明における条件にて加硫発泡を行う。これにより中心部に孔を有するチューブを作製する。その後、前記表面に接着剤を塗布した芯金上に前記チューブを被覆し、加熱によりチューブと芯金を接着する。不要なチューブ端部をカットして除き、研磨することにより所定の直径の発泡ゴム弾性層を有するゴムローラを得ることができる。
【0044】
また、本発明におけるゴムローラは、表面特性を変化させるため、必要に応じて発泡ゴム弾性層上に1層又は複数層からなる表面層を有してもよい。
【0045】
本発明のゴムローラは、電子写真方式を利用した複写機やプリンター、ファクシミリ等の電子写真方式の画像形成装置に使用されるゴムローラに用いることができる。特に、電子写真装置における、帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ及び現像剤規制ローラ等に使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、これらの実施例によりなんら限定されるものではない。なお、各実施例で得られたゴムローラの特性は、以下の方法に従って測定した。
【0047】
〔加硫速度、発泡速度〕
加硫速度、発泡速度共に発泡圧測定機能付き加硫試験機「MDR−200P」(商品名、アルファーテクノロジーズ製)を用い、JIS K6300−2(未加硫ゴム 物理特性 振動式加硫試験機による加硫特性の求め方)に準じ140℃、60分間測定した。
【0048】
〔発泡ゴム弾性層の密度〕
JIS K 6268(ゴム−密度測定)、ISO 2781に準じて、発泡ゴム弾性層の密度を測定した。
【0049】
〔発泡倍率〕
(加硫発泡前のゴム密度)/(加硫発泡後のゴム密度)で算出した値を発泡倍率とした。各ゴム密度の測定は前記JIS K 6268(ゴム−密度測定)、ISO 2781に準じて行った。
【0050】
〔硬度〕
ゴムローラの硬度は、JIS S 6050に準じたスポンジ用スプリング式硬度計(商品名:「アスカーC型硬度計」、高分子計器(株)製、測定荷重500g)を用いて測定した。測定は、発泡ゴム弾性層の端部から長手方向に60mm間隔で3箇所行い、その平均値を算出する。前記測定をゴムローラ5本に対して行い、5本の平均値をゴムローラの硬度とした。
【0051】
〔硬度バラツキ〕
硬度バラツキは、JIS S 6050に準じたスポンジ用スプリング式硬度計(商品名:「アスカーC型硬度計」、高分子計器(株)製、測定荷重500g)を用いて測定した。1本のゴムローラの硬度を発泡ゴム弾性層の端部から長手方向に40mm間隔で5箇所測定し、その全測定値の(最大値−最小値)を硬度バラツキとした。
【0052】
〔実施例1〕
[A練り用原材料]
・エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム(EPDM) 100質量部
(商品名:「EPT4070」、三井化学(株)製)
・酸化亜鉛 5質量部
(商品名:「亜鉛華2種」、白水テック(株)製)
・ステアリン酸 1質量部
(商品名:「ルナックS−20」、花王(株)製)
・FT級カーボンブラック 10質量部
(商品名:「旭#15」、旭カーボン(株)社製)
・導電性カーボンブラック 10質量部
(商品名:「ケッチェンブラック600JD」、ケッチェンブラックインターナショナル(株)社製)
・パラフィンオイル 60質量部
(商品名:「ダイアナプロセスオイルPW−380」、出光興産(株)製)。
【0053】
[B練り用原材料]
・モルホリノジチオ化合物(MDB) 2質量部
(商品名:「ノクセラーMDB」、大内振興化学工業(株)製)
・2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT) 2質量部
(商品名:「ノクセラーM」、大内振興化学工業(株)製)
・ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT) 2質量部
(商品名:「ノクセラーTRA」、大内振興化学工業(株)製)
・硫黄 2質量部
・アゾジカルボンアミド(ADCA) 15質量部
(商品名:「ビニホールAC#R」、永和化成工業(株)製)
・尿素 1質量部
(商品名:「セルペースト101」、永和化成工業(株)製)。
【0054】
前記A練り用原材料を閉型ゴム用混練り機のニーダー(7L)を用いて、温度130℃になるまで混練し、A練りゴムを得た。前記A練りゴムを60℃まで冷却後、A練りゴムに前記B練り用原材料をオープンロールにて10分間ロールで練り込み、ゴム組成物を作製した。
【0055】
前記ゴム組成物を直径60mmの押出し機を用いて中空のチューブ形状に押出し、未加硫ゴムチューブを作製した。前記未加硫ゴムチューブを、加圧水蒸気(0.40MPa)を導入した加硫缶に投入し、140℃、5分間加熱保持した後、連続して160℃、30分間加硫発泡させてチューブ状の発泡ゴム弾性層を作製した。
【0056】
前記発泡ゴム弾性層に、ホットメルト接着剤(商品名:「スリーボンド3315E」、スリーボンド(株)製)を塗布した直径6mm、長さ250mmのSUS製芯金を圧入した。その後、160℃、30分電気炉に投入して前記発泡ゴム弾性層と前記芯金を接着させて未研削のゴムローラを作製した。そして、前記発泡ゴム弾性層の長さが240mmになるように両端部分をカットした。この未研削のゴムローラを、研磨砥石「GC80」(商品名、ツガミ(株)製)を取り付けた研削機にセットし、研削条件として回転速度2000rpm、送り速度10mm/分で発泡ゴム弾性層の外径がφ10mmになるように研削した。これにより、前記発泡ゴム弾性層を有するゴムローラを作製した。結果を表1に示す。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1に対し、ゴム組成物のアゾジカルボンアミドの添加量を20質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0058】
〔実施例3〕
実施例1に対し、ゴム組成物のアゾジカルボンアミドの添加量を25質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0059】
〔実施例4〕
実施例2に対し、加硫缶における140℃での加熱保持時間を1分に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0060】
〔実施例5〕
実施例2に対し、加硫缶における140℃での加熱保持時間を7分に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0061】
〔実施例6〕
実施例2に対し、加硫缶における140℃での加熱保持時間を10分に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0062】
〔実施例7〕
実施例2に対し、加硫缶における140℃での加熱保持時間を20分に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0063】
〔実施例8〕
実施例2に対し、ゴム組成物のEPDMをアクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)(商品名:「Nipol DN401LL」、日本ゼオン(株)製)に変更した。さらに、導電性カーボンブラックの添加量を5質量部に変更し、パラフィンオイルを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0064】
〔実施例9〕
実施例2に対し、加硫缶における140℃での加熱保持時間を25分に変更した以外は実施例2と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0065】
〔実施例10〕
実施例2に対し、加硫速度、発泡速度の測定温度を135℃に変更し、かつ、加硫缶における加熱保持温度を135℃に変更した以外は実施例2と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0066】
〔実施例11〕
実施例2に対し、加硫速度、発泡速度の測定温度を150℃に変更し、かつ、加硫缶における加熱保持温度を150℃に変更した以外は実施例2と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表1に示す。
【0067】
実施例1から11に関しては、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層が得られ、かつ、高発泡にも関わらず得られたゴムローラの硬度バラツキは小さかった。そして、実施例2、実施例4から7及び実施例9に関しては、140℃での加熱保持時間の変更のみで発泡倍率を制御でき、処方変更することなく所望の硬度のゴムローラを得ることが可能であった。
【0068】
〔比較例1〕
実施例1に対し、ゴム組成物のアゾジカルボンアミドの添加量を13質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表2に示す。しかし、アゾジカルボンアミドの添加量が少ないため、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を得ることはできなかった。
【0069】
〔比較例2〕
実施例1に対し、ゴム組成物のアゾジカルボンアミドの添加量を13質量部に変更し、140℃での加熱保持時間を20分に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表2に示す。しかし、アゾジカルボンアミドの添加量が少ないため、140℃での加熱保持時間を長くしても発泡ゴム弾性層の発泡倍率に変動は無く、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を得ることはできなかった。
【0070】
〔比較例3〕
実施例1に対し、ゴム組成物のアゾジカルボンアミドの添加量を28質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表2に示す。しかし、アゾジカルボンアミドの添加量が多いため、発泡剤の分解が急激に生じることにより発泡セル径がばらつき、硬度バラツキのあるゴムローラしか得ることができなかった。
【0071】
〔比較例4〕
実施例2に対し、ゴム組成物の尿素の添加量を5質量部に変更した以外は実施例1と同様にしてゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表2に示す。しかし、140℃において、(tc50−tp50)の絶対値及び(tc90−tp90)の絶対値が共に3分以下の条件を満足できず、その結果として、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を得られなかった。また、(tc50−tp50)の絶対値が3.9分と大きいため、発泡ガス抜けによる発泡セル径のバラツキが原因と考えられる硬度バラツキのあるゴムローラが得られた。
【0072】
〔比較例5〕
実施例2に対し、ゴム組成物のDPTTを添加しない以外は実施例1と同様にして発泡ゴムローラを作製した。ゴムローラの製造条件及び評価結果を表2に示す。しかし、(tc90−tp90)の絶対値が3分以下の条件を満足できず、その結果として、発泡倍率が3倍以上の高発泡ゴム弾性層を有するゴムローラを得ることはできなかった。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡剤を含むゴム組成物を、加圧水蒸気を導入した密閉容器内で加硫発泡して製造する、(加硫発泡前のゴム密度)/(加硫発泡後のゴム密度)で示される発泡倍率が3倍以上の発泡ゴム弾性層を有するゴムローラの製造方法において、
以下の(1)及び(2)の条件を満たすことを特徴とするゴムローラの製造方法。
(1)前記ゴム組成物のゴム成分を100質量部としたとき、カルボンアミド系発泡剤を15質量部以上、25質量部以下含有すること。
(2)前記ゴム組成物の加硫進行度が50%の時刻(tc50)と発泡進行度が50%の時刻(tp50)との差(tc50−tp50)の絶対値、及び、前記ゴム組成物の加硫進行度が90%の時刻(tc90)と発泡進行度が90%の時刻(tp90)との差(tc90−tp90)の絶対値が、共に3分以下を満足する温度をT1とするとき、前記ゴム組成物を前記温度T1で1分以上、25分以下密閉容器内で加熱保持する加熱保持工程を含むこと。
【請求項2】
前記加熱保持工程の温度T1が、130℃以上、150℃以下であることを特徴とする請求項1に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項3】
前記ゴム組成物が尿素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項4】
チューブ状の前記ゴム組成物に対して前記加熱保持工程を行い、その後、前記温度T1より高い温度で加硫発泡する高温加硫発泡工程を行い、芯金上に前記加硫発泡後のチューブ状のゴム組成物を被覆し、接着することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のゴムローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のゴムローラの製造方法により製造されたゴムローラ。

【公開番号】特開2009−202353(P2009−202353A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−44404(P2008−44404)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】