説明

ゴルフカートおよびゴルフカート走行制御システム

【課題】円滑な移動が可能なゴルフカートおよびゴルフカート走行制御システムを提供することである。
【解決手段】電磁誘導線81上を2台のゴルフカート1A,1Baが同じ方向に順に走行する場合、ゴルフカート1Aは、1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報を受信しかつ追突防止信号を受信する。その場合、ゴルフカート1Aは徐行または停止する。ゴルフカート1A,1Bbが電磁誘導線82,83上を互いに逆方向に走行する場合、ゴルフカート1Aが、1つ前以外のゴルフカート1Bbからのカート情報を受信し、かつ追突防止信号を受信する。その場合、ゴルフカート1A,1Bbは走行を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴルフカートおよびゴルフカート走行制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゴルフ場において、プレイヤーの移動およびゴルフクラブ等の搬送のために、予め定められた経路を移動するゴルフカートが用いられる。各ゴルフカートには、他のゴルフカートに追突することを防止するための追突防止装置が設けられる(例えば特許文献1参照)。
【0003】
具体的には、各ゴルフカートが、後方に向けて一定の強度の電波を送信する。順に走行する2台のゴルフカートの距離が縮まると、その2台のゴルフカートのうち後方のゴルフカートが前方のゴルフカートからの電波を受信する。その場合、後方のゴルフカートが徐行または停止する。それにより、後方のゴルフカートが前方のゴルフカートに追突することが防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−134030号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、各ゴルフカートが、前方のゴルフカートからの電波ではなく、例えばすれ違うだけの他のゴルフカートからの電波を受信することがある。このような場合も、各ゴルフカートが徐行または停止する。すなわち、追突の可能性がないにもかかわらず、ゴルフカートが徐行または停止することがある。それにより、各ゴルフカートの移動効率が低くなる。
【0006】
本発明の目的は、円滑な移動が可能なゴルフカートおよびゴルフカート走行制御システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)第1の発明に係るゴルフカートは、電磁誘導を利用することにより他のゴルフカートとともに共通の経路を走行可能なゴルフカートであって、本体部と、本体部を移動させる移動機構と、ゴルフカート固有の第1の識別情報を送信する第1の送信部と、他のゴルフカートからの第1の識別情報を受信可能に構成された第1の受信部と、追突防止信号を送信する第2の送信部と、他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能に構成された第2の受信部と、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートを判別し、その判別結果および第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて移動機構による本体部の移動を制御する制御部とを備えるものである。なお、移動機構による本体部の移動を制御するとは、ゴルフカートを走行および停止させることを意味する。
【0008】
そのゴルフカートにおいては、各ゴルフカート固有の第1の識別情報が第1の送信部により送信され、追突防止信号が第2の送信部により送信される。また、当ゴルフカートが他のゴルフカートからの第1の識別情報を受信可能な位置にある場合、他のゴルフカートからの第1の識別情報が第1の受信部により受信される。当ゴルフカートが他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能な位置にある場合、他のゴルフカートからの追突防止信号が第2の受信部により受信される。
【0009】
そして、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが判別され、その判別結果および第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて移動機構による本体部の移動が制御される。この場合、第2の受信部による追突防止信号の受信の有無に基づいて、他のゴルフカートが当ゴルフカートの近くに位置するか否かを判定することができる。また、第1の受信部により受信される第1の識別情報に基づいて、当ゴルフカートの近くに位置する他のゴルフカートが、当ゴルフカートが追突する可能性があるゴルフカートであるか否かを判定することができる。
【0010】
それにより、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突する可能性がある場合には、当ゴルフカートが徐行または停止して他のゴルフカートに追突することを防止することができる。また、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突する可能性がない場合には、当ゴルフカートが不必要に停止することを防止することができる。その結果、ゴルフカートの円滑な移動を実現することができる。
【0011】
(2)制御部は、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かを判定し、その判定結果に基づいて移動機構による本体部の移動を制御してもよい。なお、前方とは、共通の経路におけるゴルフカートの進行方向を意味する。
【0012】
この場合、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートが、当ゴルフカートが追突する可能性があるゴルフカートである。そのため、判定結果に基づいて移動機構による本体部の移動を制御することにより、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突すること、および当ゴルフカートが不必要に停止することを確実に防止することができる。その結果、ゴルフカートの円滑な移動を実現することができる。
【0013】
(3)第1の送信部から送信される第1の識別情報の受信可能距離は、第2の送信部から送信される追突防止信号の受信可能距離よりも長く、制御部は、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが最も近いゴルフカートである場合、第2の受信部による追突防止信号の受信の有無に基づいて移動機構による本体部の移動を制御してもよい。
【0014】
この場合、当ゴルフカートと他のゴルフカートとの距離が短くなると、まず他のゴルフカートからの第1の識別情報が第1の受信部により受信される。受信された第1の識別情報が、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートに対応する場合、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突する可能性がある。
【0015】
当ゴルフカートと他のゴルフカートとの距離がさらに短くなると、他のゴルフカートからの追突防止信号が第2の受信部により受信される。したがって、第2の受信部による追突防止信号の受信の有無に基づいて移動機構による本体部の移動が制御されることにより、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突すること、および当ゴルフカートが不必要に停止することをより効率良く確実に防止することができる。
【0016】
(4)制御部は、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートに対応する第1の識別情報が第1の受信部により受信されていない場合、第2の受信部による追突防止信号の受信を誤受信と判定してもよい。
【0017】
共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートに対応する第1の識別情報が第1の受信部により受信されていない場合には、当ゴルフカートが、追突する可能性があるゴルフカートからの第1の識別情報の受信可能距離内に存在しないことになる。その状態で第2の受信部により追突防止信号が受信された場合には、その追突防止信号は追突する可能性がないゴルフカートからの追突防止信号またはノイズである可能性が高い。そのため、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートに対応する第1の識別情報が第1の受信部により受信されていない場合、第2の受信部による追突防止信号の受信が誤受信と判定されることにより、当ゴルフカートの不必要な停止がより確実に防止される。
【0018】
(5)共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートを特定するための特定情報が管理装置から送信され、特定情報は、第1の識別情報と異なる第2の識別情報を含み、第1の受信部は、管理装置からの特定情報をさらに受信可能に構成され、制御部は、第1の受信部により受信された特定情報に基づいて、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが最も近いゴルフカートであるか否かを判定してもよい。
【0019】
この場合、管理装置から送信された特定情報が第1の受信部により受信されることにより、ゴルフカートは、容易にかつ確実に、共通の経路において前方に位置する他のゴルフカートのうち最も近いゴルフカートを特定することができる。
【0020】
また、特定情報が第1の識別情報と異なる第2の識別情報を有するので、共通の第1の受信部により受信される第1の識別情報と特定情報とを容易に判別することができる。
【0021】
(6)第1の識別情報および特定情報は、共通の周波数帯の電波として第1の送信部および管理装置からそれぞれ送信されてもよい。
【0022】
この場合、法令によって使用可能な電波の周波数帯が制限されていても、第1の識別情報および特定情報をそれぞれ共通の周波数帯の電波として容易に送受信することができる。また、特定情報が第1の識別情報と異なる第2の識別情報を有するので、第1の識別情報と特定情報とを容易に判別することができる。
【0023】
(7)ゴルフカートは、第2の送信部の異常を検出する異常検出部をさらに備え、第1の送信部は、異常検出部による異常の検出の有無を示す異常検出情報を第1の識別情報とともに送信し、第1の受信部は、他のゴルフカートからの異常検出情報を第1の識別情報とともに受信可能に構成され、制御部は、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが最も近いゴルフカートである場合に、第1の受信部により受信される異常検出情報に基づいて移動機構による本体部の移動を制御してもよい。
【0024】
それにより、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突することをより確実に防止することができる。
【0025】
(8)ゴルフカートは、操作者による操作に対応する操作情報を送信する遠隔操作装置をさらに備え、操作情報は、第1の識別情報と異なるゴルフカート固有の第3の識別情報を有し、第1の受信部は、遠隔操作装置からの操作情報をさらに受信可能に構成され、制御部は、第1の受信部により受信された操作情報に基づいて移動機構による本体部の移動を制御してもよい。
【0026】
この場合、当ゴルフカートの遠隔操作装置からの操作情報が第1の受信部により受信されることにより、当ゴルフカートの遠隔操作装置の操作に応じて当ゴルフカートのみが走行または停止する。また、操作情報が第1の識別情報と異なる各ゴルフカート固有の第3の識別情報を有するので、共通の第1の受信部により受信される第1の識別情報と操作情報とを容易に判別することができるとともに、当ゴルフカートの遠隔操作装置からの操作情報と他のゴルフカートの遠隔操作装置からの操作情報とを容易に判別することができる。
【0027】
(9)第1の識別情報および操作情報は、共通の周波数帯の電波として第1の送信部および遠隔操作装置からそれぞれ送信されてもよい。
【0028】
この場合、法令によって使用可能な電波の周波数帯が制限されていても、第1の識別情報および操作情報をそれぞれ共通の周波数帯の電波として容易に送受信することができる。そして、操作情報が第1の識別情報と異なる第3の識別情報を有するので、第1の識別情報と操作情報とを容易に判別することができる。
【0029】
(10)第2の発明に係るゴルフカート走行制御システムは、電磁誘導を利用することにより共通の経路を走行可能な複数のゴルフカートと、共通の経路において各ゴルフカートの前方に位置する他のゴルフカートのうち各ゴルフカートに最も近いゴルフカートを特定するための特定情報を送信する管理装置とを備え、複数のゴルフカートの各々は、本体部と、本体部を移動させる移動機構と、当ゴルフカート固有の第1の識別情報を送信する第1の送信部と、当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの第1の識別情報および管理装置からの特定情報を受信可能に構成された第1の受信部と、追突防止信号を送信する第2の送信部と、当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能に構成された第2の受信部と、移動機構による本体部の移動を制御する制御部とを含み、特定情報は、第1の識別情報と異なる第2の識別情報を含み、制御部は、第1の受信部により受信された特定情報に基づいて、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かを判定し、その判定結果および第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて移動機構による本体部の移動を制御するものである。
【0030】
そのゴルフカート走行制御システムにおいては、管理装置から共通の経路において各ゴルフカートの前方に位置する他のゴルフカートのうち各ゴルフカートに最も近いゴルフカートを特定するための特定情報が送信される。送信された特定情報が、各ゴルフカートの第1の受信部により受信される。
【0031】
各ゴルフカートにおいては、当ゴルフカート固有の第1の識別情報が第1の送信部により送信され、追突防止信号が第2の送信部により送信される。また、当ゴルフカートが当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの第1の識別情報を受信可能な位置にある場合、当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの第1の識別情報が第1の受信部により受信される。当ゴルフカートが当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能な位置にある場合、当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの追突防止信号が第2の受信部により受信される。
【0032】
そして、第1の受信部により受信された特定情報に基づいて、第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かが判定され、その判定結果および第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて移動機構による本体部の移動が制御される。
【0033】
この場合、第2の受信部による追突防止信号の受信の有無に基づいて、他のゴルフカートが当ゴルフカートの近くに位置するか否かを判定することができる。また、第1の受信部により受信された第1の識別情報および特定情報に基づいて、当ゴルフカートの近くに位置する他のゴルフカートが、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かを判定することができる。
【0034】
当ゴルフカートが追突する可能性があるゴルフカートは、共通の経路において当ゴルフカートの前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートである。それにより、当ゴルフカートの近くに位置する他のゴルフカートが、当ゴルフカートが追突する可能性があるゴルフカートであるか否かを判定することができる。
【0035】
それにより、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突する可能性がある場合には、当ゴルフカートが徐行または停止して他のゴルフカートに追突することを防止することができる。また、当ゴルフカートが他のゴルフカートに追突する可能性がない場合には、当ゴルフカートが不必要に停止することを防止することができる。その結果、ゴルフカートの円滑な移動を実現することができる。
【0036】
また、特定情報が第1の識別情報と異なる第2の識別情報を有するので、共通の第1の受信部により受信される第1の識別情報と特定情報とを容易に判別することができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、各ゴルフカートが不必要に停止することを防止することができ、ゴルフカートの円滑な移動が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施の形態に係るゴルフカートの外観側面図である。
【図2】ゴルフカート1の内部構成を示すブロック図である。
【図3】制御部、追突防止ユニットおよび通信ユニットの詳細を示すブロック図である。
【図4】2台のゴルフカート1が互いに近づく状態を示す模式図である。
【図5】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図6】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図7】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図8】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図9】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図10】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【図11】CPUによる制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の一実施の形態に係るゴルフカートおよびゴルフカート走行制御システムについて図面を参照しながら説明する。
【0040】
(1)ゴルフカートの構成
図1は、本実施の形態に係るゴルフカートの外観側面図である。図1に示すように、ゴルフカート1は、車体10、一対の前輪11および一対の後輪12を有する。車体10は、下部車体10a、支持枠10bおよび屋根部10cを有する。下部車体10aの四隅から上方に延びるように支持枠10bが設けられ、支持枠10bの上端部に屋根部10cが取り付けられる。一対の前輪11および一対の後輪12は、車体10を支持するように下部車体10aのそれぞれ前端部および後端部に可動可能に取り付けられる。
【0041】
下部車体10a上の略中央部には前部シート13が設けられ、下部車体10a上の後部には後部シート14が設けられる。前部シート13の前方にはハンドル15が設けられる。前部シート13に着座する搭乗者がハンドル15を操作することにより、前輪11の向きが調整され、ゴルフカート1の操舵が行われる。下部車体10aの後部上方には、外部との通信を行うための通信ユニット57が設けられる。通信ユニット57の詳細については後述する。下部車体10aの後端部には、ゴルフバッグ等を載置するためのキャリア16が設けられる。
【0042】
本実施の形態に係るゴルフカート1は、搭乗者の任意の選択により、自動走行モードおよび手動走行モードのいずれかで動作を行う。自動走行モードでは、基本的に後述のリモコンの操作のみが行われる。手動走行モードでは、搭乗者によりハンドル15ならびに後述のアクセルペダルおよびブレーキペダルが操作される。
【0043】
また、ゴルフ場においては、複数のゴルフカート1が予め定められた経路を予め定められた順序で走行する。
【0044】
図2は、ゴルフカート1の内部構成を示すブロック図である。図2に示すように、ゴルフカート1は、主として制御部50、バッテリ51、駆動モータ21、トランスミッション22、電磁ブレーキ23、アクセルペダル24、ブレーキペダル25およびブレーキ駆動部26を備える。
【0045】
制御部50は、バッテリ51の充放電制御を行うとともに、バッテリ51の電力を用いて後述の各部の動作を制御する。制御部50の詳細については後述する。
【0046】
駆動モータ21、トランスミッション22および電磁ブレーキ23は、ゴルフカート1の後部に設けられる。後輪12の車軸12aにトランスミッション22が接続され、駆動モータ21および電磁ブレーキ23がトランスミッション22に取り付けられる。駆動モータ21の回転力は、トランスミッション22を介して後輪12の車軸12aに伝達される。それにより、後輪12が駆動される。ゴルフカート1の停止動作時には、電磁ブレーキ23が作動して駆動モータ21の回転を制止する。
【0047】
アクセルペダル24およびブレーキペダル25は、ゴルフカート1の前部に設けられ、前部シート13(図1)に着座する搭乗者により操作される。アクセルペダル24にはアクセルセンサ24aが接続される。アクセルペダル24の踏み込み量がアクセルセンサ24aにより検出され、その検出値が制御部50に与えられる。制御部50は、アクセルセンサ24aの検出値に基づいて駆動モータ21を制御する。
【0048】
ブレーキペダル25はブレーキ駆動部26に接続される。一対の前輪11および一対の後輪12の各々には、ディスクブレーキ等のブレーキ機構BMが取り付けられる。ブレーキ駆動部26はこれらのブレーキ機構BMに接続される。搭乗者によってブレーキペダル25が踏み込まれると、ブレーキ駆動部26が各ブレーキ機構BMを駆動して前輪11および後輪12を制動する。また、ブレーキ駆動部26は制御部50により制御される。
【0049】
制御部50には、誘導線センサS1、定点センサS2、車速センサS3、音声ユニット55、追突防止ユニット56および通信ユニット57がそれぞれ電気的に接続される。
【0050】
ゴルフ場には、ゴルフカート1が予め定められた経路を1方向(予め決められた方向)に走行するようにゴルフカート1を誘導するための電磁誘導線(後述の図4参照)が埋設されている。その電磁誘導線が誘導線センサS1によって磁気的に検出され、誘導線センサS1から制御部50に検出信号が与えられる。自動走行モードでは、制御部50が誘導線センサS1からの検出信号に基づいて図示しない操舵機構を制御する。それにより、ゴルフカート1が予め定められた経路から逸脱することなく走行する。
【0051】
また、ゴルフカート1の走行経路における所定位置には、各種の定点が設けられる。各定点は、走行、停止または減速等を指示する指示信号を発信する。各ゴルフカートが定点上を通過する際に、定点からの指示信号が定点センサS2によって検出されると、定点センサS2から制御部50に検出信号が与えられる。制御部50は、定点センサS2からの検出信号に応じて、ゴルフカート1の走行を制御する。
【0052】
車速センサS3はトランスミッション22に設けられる。車速センサS3によりゴルフカート1の走行速度が検出され、その検出値が制御部50に与えられる。
【0053】
音声ユニット55は例えばスピーカを含み、ゴルフカート1の搭乗者に対して、走行状況および異常の発生等の種々の情報を音声により通知する。追突防止ユニット56は、後方に向けて追突防止信号を送信するとともに、他のゴルフカート1から送信される追突防止信号を受信する。追突防止ユニット56の詳細については後述する。
【0054】
通信ユニット57は、制御部50との通信を行うとともに、リモコンRC(後述の図3参照)、マスタコンピュータ60(後述の図3参照)、および他のゴルフカート1との通信を行う。通信ユニット57の詳細については後述する。
【0055】
以下の説明では、共通の経路を走行する複数のゴルフカート1のうち当ゴルフカートに符号1Aを付し、当ゴルフカート1A以外の他のゴルフカートに符号1Bを付す。
【0056】
図3は、制御部50、追突防止ユニット56および通信ユニット57の詳細を示すブロック図である。
【0057】
図3に示すように、制御部50は、CPU(中央演算処理装置)501、AC/DC(交流/直流)変換部502、充電部503、走行駆動部504、データ送受信部505および記憶部507を含む。
【0058】
CPU501は、充電部503、走行駆動部504、記憶部507および音声ユニット55を制御する。また、CPU501は、データ送受信部505を介して通信ユニット57との通信を行う。
【0059】
AC/DC変換部502は、商用電源からの電力をAC/DC(交流/直流)変換する。充電部503は、AC/DC変換部502により直流に変換された電力をバッテリ51に供給する。これにより、バッテリ51が充電される。走行駆動部504は、バッテリ51の電力により図2の駆動モータ21、電磁ブレーキ23およびブレーキ駆動部26等を作動させる。
【0060】
記憶部507は、後述の追突防止処理を行うための追突防止処理プログラム、および当ゴルフカート1Aに関する種々の情報を記憶する。また、記憶部507は、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Bとの位置関係に応じて設定されるカート状態を記憶する。カート状態は、走行許可状態および停止準備状態を含む。当ゴルフカート1Aが他のゴルフカート1Bに追突する可能性がない場合、カート状態が走行許可状態に設定される。一方、当ゴルフカート1Aが他のゴルフカート1Bに追突する可能性がある場合、カート状態が停止準備状態に設定される。本実施の形態では、記憶部507に記憶されたカート状態に応じて当ゴルフカート1Aの移動が制御される。カート状態に応じた制御の詳細については後述する。
【0061】
追突防止ユニット56は、信号送受信部562および異常検出部563を含む。信号送受信部562は例えばアンプおよびアンテナ等を含み、追突防止信号を後方に向けて送信するとともに、他のゴルフカート1Bから送信される追突防止信号を受信する。なお、追突防止信号を送信する送信部と他のゴルフカート1Bからの追突防止信号を受信する受信部とが別個に設けられてもよい。
【0062】
追突防止信号の受信可能距離は一定である。ここで、追突防止信号の受信可能距離とは、当ゴルフカート1Aの信号送受信部562が他のゴルフカート1Bから送信される追突防止信号を受信することが可能な当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Bとの距離の最大値をいう。具体的には、当ゴルフカート1Aが他のゴルフカート1Bの後方に位置する場合には、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Bとの距離が所定の値T1(例えば6m)以下になると、当ゴルフカート1Aの信号送受信部562が他のゴルフカート1Bからの追突防止信号を受信する。他のゴルフカート1Bからの追突防止信号が受信された場合、信号送受信部562は、制御部50のCPU501に受信信号を与える。
【0063】
異常検出部563は、信号送受信部562の異常を検出する。信号送受信部562の異常が検出された場合、異常検出部563は、異常検出信号を制御部50のCPU501に与える。なお、信号送受信部562の異常が検出された時点で、CPU501により当ゴルフカート1Aの走行が停止されてもよい。すなわち、CPU501が、異常検出部563からの異常検出信号に応答して走行駆動部504により電磁ブレーキ23およびブレーキ駆動部26を作動させてもよい。
【0064】
通信ユニット57は、CPU571、RF(高周波)処理部572、データ送受信部573および記憶部574を含む。
【0065】
CPU571は、RF処理部572、データ送受信部573および記憶部574を制御する。また、CPU571は、データ送受信部573を介して制御部50との通信を行う。
【0066】
また、各ゴルフカート1A,1Bには、リモコンRCが設けられる。リモコンRCが操作されると、その操作に応じた操作情報がリモコンRCから送信される。一方、ゴルフ場のマスタ室MRには、マスタコンピュータ60が設けられる。例えば各ゴルフカート1A,1Bの出庫前に、マスタコンピュータ60からマスタ室MRのアンテナ60aを介して全てのゴルフカート1A,1Bの走行順序を含む管理情報が送信される。マスタコンピュータ60およびゴルフカート1A,1Bにより、ゴルフカート走行制御システムが構成される。
【0067】
RF処理部572は例えばアンプ、チューナおよびアンテナ等を含み、リモコンRCからの操作情報およびマスタコンピュータ60からの管理情報を受信および復号し、CPU571に与える。また、RF処理部572は、当ゴルフカート1Aの異常発生状況等を示すカート情報を他のゴルフカート1Bに送信するとともに、他のゴルフカート1Bからのカート情報を受信し、CPU571に与える。なお、カート情報を送信する送信部と、リモコンRCからの操作情報、マスタコンピュータ60からの管理情報および他のゴルフカート1Bからのカート情報を受信する受信部とが別個に設けられてもよい。
【0068】
記憶部574は、後述の追突防止処理を行うための追突防止処理プログラム、当ゴルフカート1Aのカート情報およびRF処理部572により受信された管理情報を記憶する。例えば追突防止ユニット56の異常検出部563によって異常が検出された場合、異常検出部563からの異常検出信号に基づいて制御部50のCPU501から通信ユニット57のCPU571に異常発生情報が与えられる。その異常発生情報がカート情報として記憶部574に記憶される。
【0069】
ここで、リモコンRCからの操作情報、マスタコンピュータ60からの管理情報および他のゴルフカート1Bからのカート情報は、それぞれ共通の周波数帯(例えば400MHz帯)の電波として送信される。
【0070】
本実施の形態では、操作情報に対応する電波、管理情報に対応する電波およびカート情報に対応する電波に、それぞれ異なるID情報(識別情報)が含まれる。さらに、操作情報に対応する電波およびカート情報に対応する電波には、ゴルフカート1A,1B毎に異なるID情報が含まれる。これにより、通信ユニット57のCPU571は、RF処理部572により受信された上記共通の周波数帯の電波が、操作情報、管理情報およびカート情報のいずれに対応するかを容易に判別することができる。また、操作情報に対応する電波がRF処理部572によって受信された場合、CPU571は、その操作情報がいずれのゴルフカート1A,1Bからの操作情報であるかを容易に判別することができる。また、カート情報に対応する電波がRF処理部572によって受信された場合、CPU571は、そのカート情報がいずれのゴルフカート1Bからのカート情報であるかを容易に判別することができる。
【0071】
以下の説明では、操作情報に対応する電波に含まれるID情報をリモコンIDと呼び、管理情報に対応する電波に含まれるID情報を管理IDと呼ぶ。また、カート情報に対応する電波に含まれるID情報をカートIDと総称する。
【0072】
なお、追突防止信号に対応する電波は、上記の操作情報、管理情報およびカート情報に対応する電波と異なる周波数帯(例えば100kHz帯)に設定される。そのため、追突防止信号に対応する電波は、操作情報、管理情報およびカート情報に対応する電波と容易に区別可能である。
【0073】
また、本実施の形態では、カート情報の受信可能距離が、追突防止信号の受信可能距離よりも大きい値に設定される。ここで、カート情報の受信可能距離とは、当ゴルフカート1AのRF処理部572が他のゴルフカート1Bから送信されるカート情報を受信することが可能な当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Bとの距離の最大値をいう。具体的には、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Bとの距離が上記の値T1よりも大きい所定の値T2(例えば10m)以下になった場合に、他のゴルフカート1Bからのカート情報が当ゴルフカート1AのRF処理部572により受信される。
【0074】
(2)2台のゴルフカートが互いに近づく場合の動作
上記のように、各ゴルフカート1A,1Bから送信されるカート情報の受信可能距離は、各ゴルフカート1A,1Bから送信される追突防止信号の受信可能距離よりも長い。そのため、2台のゴルフカート1A,1Bが互いに近づく場合、当ゴルフカート1Aは、他のゴルフカート1Bからの追突防止信号を受信する前に、他のゴルフカート1Bからのカート情報を受信する。
【0075】
本実施の形態に係るゴルフカート1においては、追突防止信号が受信されたときに、先に受信されたカート情報が当ゴルフカート1Aよりも走行順序が1つ前のゴルフカート1Bからのカート情報であるか否かに応じて、異なる動作を行う。以下、図4を参照しながら具体的に説明する。以下の説明では、他のゴルフカート1Bのうち、当ゴルフカート1Aよりも走行順序が1つ前のゴルフカート(以下、1つ前のゴルフカートと呼ぶ)に符号1Baを付し、それ以外のゴルフカート(以下、1つ前以外のゴルフカートと呼ぶ)に符号1Bbを付す。
【0076】
図4は、ゴルフカート1A,1Baが互いに近づく状態およびゴルフカート1A,1Bbが互いに近づく状態を示す模式図である。なお、図4においては、ゴルフカート1Aから送信されるカート情報を受信可能な範囲を点線DA1で表し、ゴルフカート1Ba,1Bbから送信されるカート情報を受信可能な範囲を点線DB1で表す。さらに、ゴルフカート1Aから送信される追突防止信号を受信可能な範囲を点線DA2で表し、ゴルフカート1Ba,1Bbから送信される追突防止信号を受信可能な範囲を点線DB2で表す。
【0077】
図4(a)および図4(b)の例では、電磁誘導線81上を2台のゴルフカート1A,1Baが同じ方向に順に走行する。この場合、図4(a)に示すように、ゴルフカート1A,1Ba間の距離が値T2以下になると、ゴルフカート1Aから送信されるカート情報がゴルフカート1Baにより受信され、ゴルフカート1Baから送信されるカート情報がゴルフカート1Aにより受信される。
【0078】
さらに、図4(b)に示すように、ゴルフカート1A,1Ba間の距離が値T1以下になると、前方のゴルフカート1Baから送信される追突防止信号が後方のゴルフカート1Aにより受信される。
【0079】
本例では、当ゴルフカート1Aが、1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報を受信した後に、追突防止信号を受信する。この場合、当ゴルフカート1Aが追突防止信号の受信後にも走行を継続すると、1つ前のゴルフカート1Baに追突する可能性がある。そこで、当ゴルフカート1Aは、追突防止信号を受信したときに徐行または停止する。それにより、当ゴルフカート1Aが1つ前のゴルフカート1Baに追突することが防止される。
【0080】
図4(c)および図4(d)の例では、電磁誘導線82,83が互いに近接するように設けられ、ゴルフカート1A,1Bbが電磁誘導線82,83上を互いに逆方向に走行する。ゴルフカート1A,1Bbの走行順序は互いに連続していない。なお、実際には電磁誘導線82,83は図示しない別の場所で互いに連続している。
【0081】
この場合、図4(c)に示すように、ゴルフカート1A,1Bb間の距離が値T2以下になると、ゴルフカート1Aから送信されるカート情報がゴルフカート1Bbにより受信され、ゴルフカート1Bbから送信されるカート情報がゴルフカート1Aにより受信される。
【0082】
さらに、図4(d)に示すように、ゴルフカート1Aの斜め後方にゴルフカート1Bbが位置し、ゴルフカート1Bbの斜め後方にゴルフカート1Aが位置する状態になると、ゴルフカート1Aから送信される追突防止信号が後方のゴルフカート1Bbにより受信され、ゴルフカート1Bbから送信される追突防止信号がゴルフカート1Aにより受信される。
【0083】
本例では、当ゴルフカート1Aが、1つ前以外のゴルフカート1Bbからのカート情報を受信した後に、追突防止信号を受信する。この場合、当ゴルフカート1Aが追突防止信号の受信後に走行を継続しても、1つ前以外のゴルフカート1Bbに追突する可能性がない。同様に、1つ前以外のゴルフカート1Bbが追突防止信号の受信後に走行を継続しても、当ゴルフカート1Aに追突する可能性がない。そこで、ゴルフカート1A,1Bbは、追突防止信号を受信しても走行を継続する。それにより、ゴルフカート1A,1Bbが互いにすれ違う場合にそれぞれ徐行または停止することがないので、ゴルフカート1A,1Bbの移動効率の低下が防止される。
【0084】
(3)制御処理
以下、制御部50のCPU501および通信ユニット57のCPU571による追突防止処理について説明する。図5〜図8は、CPU571による制御処理を示すフローチャートであり、図9〜図11は、CPU501による制御処理を示すフローチャートである。追突防止処理は、CPU501,571が記憶部507,574に記憶される追突防止プログラムをそれぞれ実行することにより行われる。
【0085】
まず、通信ユニット57のCPU571による制御処理について図5〜図8を参照しながら説明する。図5に示すように、CPU571は、リモコンIDを含む電波がRF処理部572により受信されたか否かを判定する(ステップS1)。リモコンIDを含む電波が受信されていない場合、CPU571は、管理IDを含む電波がRF処理部572により受信されたか否かを判定する(ステップS2)。管理IDを含む電波が受信されていない場合、CPU571は、カートIDを含む電波がRF処理部572により受信されたか否かを判定する(ステップS3)。
【0086】
カートIDを含む電波が受信されていない場合、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba,1Bbとの距離が値T2より大きい。この場合、CPU571は、データ送受信部573を介して制御部50に走行許可信号を送信し(ステップS4)、ステップS1の処理に戻る。
【0087】
ステップS1においてリモコンIDを含む電波が受信された場合、図6に示すように、CPU571は、そのリモコンIDが当ゴルフカート1Aに対応するか否かを判定する(ステップS11)。リモコンIDが当ゴルフカート1Aに対応する場合、CPU571は、RF処理部572を操作情報受信状態に設定する(ステップS12)。具体的には、RF処理部572をリモコンRCからの操作情報を復号可能な状態に設定する。
【0088】
次に、CPU571は、RF処理部572によって受信された操作情報を取得する(ステップS13)。そして、CPU571は、取得した操作情報をデータ送受信部573を介して制御部50に送信し(ステップS14)、図5のステップS1の処理に戻る。
【0089】
一方、ステップS11においてリモコンIDが当ゴルフカート1Aに対応しない場合、CPU571は、そのまま図5のステップS1に戻る。これにより、他のゴルフカート1Ba,1BbのリモコンRCの操作によって当ゴルフカート1Aが誤動作することが防止される。
【0090】
図5のステップS2において管理IDを含む電波が受信された場合、図7に示すように、CPU571は、RF処理部572を管理情報受信状態に設定する(ステップS21)。具体的には、RF処理部572をマスタコンピュータ60からの管理情報を復号可能な状態に設定する。
【0091】
次に、CPU571は、RF処理部572によって受信された管理情報を取得する(ステップS22)。そして、CPU571は、取得した管理情報を記憶部574に記憶し(ステップS23)、図5のステップS1の処理に戻る。
【0092】
図5のステップS3においてカートIDを含む電波が受信された場合、図8に示すように、CPU571は、記憶部574に記憶される管理情報に基づいて、そのカートIDが1つ前のゴルフカート1Baに対応するか否かを判定する(ステップS31)。この場合、管理情報に基づいて1つ前のゴルフカート1Baが特定される。
【0093】
カートIDが1つ前のゴルフカート1Baに対応する場合、当ゴルフカート1Aと1つ前のゴルフカート1Baとの距離が値T2以下になっている(図4(a)参照)。この場合、CPU571は、RF処理部572をカート情報受信状態に設定する(ステップS32)。具体的には、RF処理部572を1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報を復号可能な状態に設定する。
【0094】
次に、CPU571は、RF処理部572によって受信されたカート情報を取得する(ステップS33)。そして、CPU571は、取得したカート情報をデータ送受信部573を介して制御部50に送信し(ステップS34)、図5のステップS1の処理に戻る。
【0095】
一方、ステップS31においてカートIDが1つ前のゴルフカート1Baに対応しない場合、当ゴルフカート1Aと、1つ前以外のゴルフカート1Bb(すれ違いになるゴルフカート1Bb等)との距離が値T2以下になっている(図4(c)参照)。この場合、CPU571は、そのまま図5のステップS1の処理に戻る。
【0096】
次に、制御部50のCPU501による制御処理について図9〜図11を参照しながら説明する。図9に示すように、CPU501は、通信ユニット57からの操作情報がデータ送受信部505により受信されたか否かを判定する(ステップS41)。なお、通信ユニット57からの操作情報は、当ゴルフカート1AのリモコンRCからの操作情報である。
【0097】
通信ユニット57からの操作情報がデータ送受信部505により受信されていない場合、CPU501は、通信ユニット57からの走行許可信号がデータ送受信部505により受信されたか否かを判定する(ステップS42)。走行許可信号が受信されていない場合、CPU501は、通信ユニット57からのカート情報がデータ送受信部505により受信されたか否かを判定する(ステップS43)。なお、通信ユニット57からのカート情報は、1つ前のゴルフカート1Baのカート情報である。
【0098】
通信ユニット57からのカート情報が受信されていない場合、CPU501は、追突防止ユニット56からの受信信号が受信されたか否かを判定する(ステップS44)。受信信号が受信されていない場合、CPU501は、ステップS41〜S44の処理を繰り返す。
【0099】
ステップS41において操作情報が受信された場合、CPU501は、その操作情報に応じて走行駆動部504により駆動モータ21、電磁ブレーキ23およびブレーキ駆動部26等の動作を制御する(ステップS45)。それにより、当ゴルフカート1AのリモコンRCの操作に応じて、当ゴルフカート1Aが動作する。その後、CPU501は、ステップS41の処理に戻る。
【0100】
また、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba,1Bbとの距離が値T2より大きい場合、ステップS42において走行許可信号が受信される。その場合、CPU501は、記憶部507に記憶されるカート状態を走行許可状態に更新し(ステップS46)、ステップS41の処理に戻る。なお、初期状態では、記憶部507に記憶されるカート状態が走行許可状態に設定される。
【0101】
また、当ゴルフカート1Aと1つ前のゴルフカート1Ba(前方のゴルフカート1Ba)との距離が値T2以下になると(図4(a)参照)、ステップS43においてカート情報が受信される。その場合、図10に示すように、CPU501は、受信されたカート情報に基づいて、1つ前のゴルフカート1Baに異常があるか否かを判定する(ステップS51)。1つ前のゴルフカート1Baに異常がない場合、CPU501は、記憶部507に記憶されるカート状態を停止準備状態に更新し(ステップS52)、図9のステップS44の処理に進む。
【0102】
一方、1つ前のゴルフカート1Baに異常がある場合、CPU501は、1つ前のゴルフカート1Baに異常があることを音声ユニット55により搭乗者に通知するとともに(ステップS53)、走行駆動部504により電磁ブレーキ23およびブレーキ駆動部26を作動させて当ゴルフカート1Aを徐行または停止させる(ステップS54)。その後、CPU501は、ステップS41の処理に戻る。
【0103】
例えば1つ前のゴルフカート1Baの信号送受信部562に異常が発生した場合、当ゴルフカート1Aは徐行または停止する。なお、ステップS53において、CPU501は、図示しない表示パネルに1つ前のゴルフカート1Baに異常があることを表示してもよい。
【0104】
追突防止ユニット56により追突防止信号が受信されると、図9のステップS44において受信信号が受信される。その場合、図11に示すように、CPU501は、記憶部507に記憶されるカート状態が停止準備状態であるか否かを判定する(ステップS61)。記憶部507に記憶されるカート状態が停止準備状態である場合、当ゴルフカート1Aと1つ前のゴルフカート1Baとの距離が値T1以下になっている(図4(b)参照)。そこで、CPU501は、電磁ブレーキ23およびブレーキ駆動部26を作動させて当ゴルフカート1Aを徐行または停止させる(ステップS62)。それにより、当ゴルフカート1Aが1つ前のゴルフカート1Baに追突することが防止される。そして、CPU501は、図9のステップS41の処理に戻る。
【0105】
一方、記憶部507に記憶されるカート状態が停止準備状態でない場合、記憶部507に記憶されるカート状態は走行許可状態である。この場合、CPU501は、そのまま図9のステップS41の処理に戻る。
【0106】
当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba,1Bbとの距離が値T2より大きい場合、および当ゴルフカート1Aと1つ前以外のゴルフカート1Bb(すれ違いになるゴルフカート1Bb等)との距離が値T2以下である場合、カート状態は走行許可状態に維持される。
【0107】
当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba,1Bbとの距離が値T2より大きい場合に、追突防止信号が受信されることはない。そのため、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba,1Bbとの距離が値T2より大きい場合に追突防止ユニット56からの受信信号が受信された場合には、ノイズ等により追突防止ユニット56が追突防止信号を誤受信したと考えられる。
【0108】
また、図4に示したように、当ゴルフカート1Aが1つ前以外のゴルフカート1Bbに近づいていても、当ゴルフカート1Aがその近づいている1つ前以外のゴルフカート1Bbに追突する可能性はない。
【0109】
すなわち、ステップS61において、カート状態が走行許可状態である場合には、当ゴルフカート1Aが他のゴルフカート1Ba,1Bbに追突する可能性がない。したがって、当ゴルフカート1Aが徐行または停止する必要がない。
【0110】
そのため、当ゴルフカート1Aと他のゴルフカート1Ba、1Bbとの距離が値T2より大きい場合、および当ゴルフカート1Aと1つ前以外のゴルフカート1Bbとの距離が値T2以下である場合、追突防止ユニット56が追突防止信号を誤受信したと判定される。
【0111】
(5)本実施の形態の効果
本実施の形態に係るゴルフカート1Aにおいては、1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報が受信された後に追突防止信号が受信された場合、自動的に徐行または停止する。また、当ゴルフカート1Aにおいては、1つ前以外のゴルフカート1Bbからのカート情報が受信された後に追突防止信号が受信された場合、そのままの走行が継続される。それにより、当ゴルフカート1Aが不必要に停止することが防止される。その結果、各ゴルフカート1A,1Ba,1Bbの移動効率が低下することが防止され、各ゴルフカート1A,1Ba,1Bbの円滑な移動が実現される。
【0112】
また、本実施の形態に係るゴルフカート1Aにおいては、1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報が受信されていない状態で追突防止信号が受信された場合、そのまま走行が維持される。それにより、ノイズによって追突防止信号が誤受信された場合、当ゴルフカート1Aが不必要に停止することが防止される。
【0113】
また、本実施の形態では、リモコンRCからの操作情報、マスタコンピュータ60からの管理情報および各ゴルフカート1A,1Ba,1Bbからのカート情報が共通の周波数帯の電波として送受信される。そのため、法令によって使用可能な電波の周波数帯が制限されていても、操作情報、管理情報およびカート情報をそれぞれ容易に送受信することができる。
【0114】
また、操作情報、管理情報およびカート情報にはそれぞれ異なるID情報が含まれるので、受信された操作情報、管理情報およびカート情報を容易に判別することができ、それぞれの情報を適正に取得することができる。
【0115】
(6)他の実施の形態
(6−1)
上記実施の形態に係るゴルフカート1においては、マスタコンピュータ60から送信される管理情報が、RF処理部572により受信されて記憶部574に記憶されるが、これに限らず、管理情報を入力するための入力手段が別途設けられ、オペレータにより入力手段を介して入力された管理情報が記憶部574に記憶されてもよい。
【0116】
(6−2)
上記実施の形態に係るゴルフカート1においては、全てのゴルフカート1の走行順序を示す管理情報が記憶部574に記憶され、その管理情報に基づいて1つ前のゴルフカート1Baが特定されるが、これに限らず、他の情報に基づいて1つ前のゴルフカート1Baが特定されてもよい。例えば、1つ前のゴルフカート1BaのID情報が記憶部574に記憶され、そのID情報に基づいて1つ前のゴルフカート1Baが特定されてもよい。
【0117】
(6−3)
上記実施の形態に係るゴルフカート1では、バッテリ51の電力で作動する駆動モータ21が動力源として用いられるが、これに限らず、内燃機関が動力源として用いられてもよく、内燃機関および電気モータ等の2種以上の動力源が併用されてもよい。
【0118】
(6−4)
上記実施の形態に係るゴルフカート1では、1つ前のゴルフカート1Baからの追突防止信号を受信したときに徐行または停止するが、これに限らず、1つ前のゴルフカート1Baからのカート情報を受信したときに徐行し、追突防止信号を受信したときに停止してもよい。
【0119】
(7)請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応関係
以下、請求項の各構成要素と実施の形態の各部との対応の例について説明するが、本発明は下記の例に限定されない。
【0120】
上記実施の形態においては、車体10が本体部の例であり、前輪11、後輪12、ブレーキ機構BM、ブレーキ駆動部26、電磁ブレーキ23および駆動モータ21が移動機構の例であり、RF処理部572が第1の送信部および第1の受信部の例であり、信号送受信部562が第2の送信部および第2の受信部の例であり、CPU501が制御部の例であり、マスタコンピュータ60が管理装置の例であり、リモコンRCが遠隔操作装置の例である。
【0121】
また、カートIDが第1の識別情報の例であり、管理IDが第2の識別情報の例であり、リモコンIDが第3の識別情報の例であり、管理情報が特定情報の例である。
【0122】
さらに、当ゴルフカート1Aよりも走行順序が1つ前のゴルフカート1が、共通の経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートの例である。
【0123】
請求項の各構成要素として、上記実施の形態に記載された構成要素の他、請求項に記載されている構成または機能を有する他の種々の構成要素を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、ゴルフ場におけるプレイヤーの移動およびゴルフクラブの搬送等のために有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0125】
1,1A,1B,1Ba,1Bb ゴルフカート
10 車体
11 前輪
12 後輪
21 駆動モータ
22 トランスミッション
23 電磁ブレーキ
26 ブレーキ駆動部
50 制御部
51 バッテリ
55 音声ユニット
56 追突防止ユニット
57 通信ユニット
60 マスタコンピュータ
501 CPU
502 AC/DC変換部
503 充電部
504 走行駆動部
505 データ送受信部
507 記憶部
562 信号送受信部
563 異常検出部
571 CPU
572 RF処理部
573 データ送受信部
574 記憶部
RC リモコン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁誘導を利用することにより他のゴルフカートとともに共通の経路を走行可能なゴルフカートであって、
本体部と、
前記本体部を移動させる移動機構と、
前記ゴルフカート固有の第1の識別情報を送信する第1の送信部と、
前記他のゴルフカートからの第1の識別情報を受信可能に構成された第1の受信部と、
追突防止信号を送信する第2の送信部と、
前記他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能に構成された第2の受信部と、
前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートを判別し、その判別結果および前記第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御する制御部とを備えることを特徴とするゴルフカート。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが、前記経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かを判定し、その判定結果に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御することを特徴とする請求項1記載のゴルフカート。
【請求項3】
前記第1の送信部から送信される第1の識別情報の受信可能距離は前記第2の送信部から送信される追突防止信号の受信可能距離よりも長く、
前記制御部は、前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが前記最も近いゴルフカートである場合、前記第2の受信部による追突防止信号の受信の有無に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御することを特徴とする請求項2記載のゴルフカート。
【請求項4】
前記制御部は、前記最も近いゴルフカートに対応する第1の識別情報が前記第1の受信部により受信されていない場合、前記第2の受信部による追突防止信号の受信を誤受信と判定することを特徴とする請求項3記載のゴルフカート。
【請求項5】
前記最も近いゴルフカートを特定するための特定情報が管理装置から送信され、
前記特定情報は、第1の識別情報と異なる第2の識別情報を含み、
前記第1の受信部は、前記管理装置からの前記特定情報をさらに受信可能に構成され、
前記制御部は、前記第1の受信部により受信された前記特定情報に基づいて、前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが前記最も近いゴルフカートであるか否かを判定することを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項6】
第1の識別情報および前記特定情報は、共通の周波数帯の電波として前記第1の送信部および前記管理装置からそれぞれ送信されることを特徴とする請求項5記載のゴルフカート。
【請求項7】
前記第2の送信部の異常を検出する異常検出部をさらに備え、
前記第1の送信部は、前記異常検出部による異常の検出の有無を示す異常検出情報を第1の識別情報とともに送信し、
前記第1の受信部は、前記他のゴルフカートからの異常検出情報を第1の識別情報とともに受信可能に構成され、
前記制御部は、前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが前記最も近いゴルフカートである場合に、前記第1の受信部により受信される異常検出情報に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御することを特徴とする請求項2〜6のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項8】
操作者による操作に対応する操作情報を送信する遠隔操作装置をさらに備え、
操作情報は、第1の識別情報と異なる前記ゴルフカート固有の第3の識別情報を有し、
前記第1の受信部は、前記遠隔操作装置からの操作情報をさらに受信可能に構成され、
前記制御部は、前記第1の受信部により受信された操作情報に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のゴルフカート。
【請求項9】
第1の識別情報および操作情報は、共通の周波数帯の電波として前記第1の送信部および前記遠隔操作装置からそれぞれ送信されることを特徴とする請求項8記載のゴルフカート。
【請求項10】
電磁誘導を利用することにより共通の経路を走行可能な複数のゴルフカートと、
前記経路において各ゴルフカートの前方に位置する他のゴルフカートのうち前記各ゴルフカートに最も近いゴルフカートを特定するための特定情報を送信する管理装置とを備え、
前記複数のゴルフカートの各々は、
本体部と、
前記本体部を移動させる移動機構と、
当ゴルフカート固有の第1の識別情報を送信する第1の送信部と、
当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの第1の識別情報および前記管理装置からの特定情報を受信可能に構成された第1の受信部と、
追突防止信号を送信する第2の送信部と、
当ゴルフカート以外の他のゴルフカートからの追突防止信号を受信可能に構成された第2の受信部と、
前記移動機構による前記本体部の移動を制御する制御部とを含み、
前記特定情報は、第1の識別情報と異なる第2の識別情報を含み、
前記制御部は、前記第1の受信部により受信された前記特定情報に基づいて、前記第1の受信部により受信される第1の識別情報に対応する他のゴルフカートが、前記経路において前方に位置するゴルフカートのうち最も近いゴルフカートであるか否かを判定し、その判定結果および前記第2の受信部により受信される追突防止信号に基づいて前記移動機構による前記本体部の移動を制御することを特徴とするゴルフカート走行制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−204117(P2011−204117A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72351(P2010−72351)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(000201766)ヤマハモーターパワープロダクツ株式会社 (39)
【Fターム(参考)】