説明

サンドイッチ構造を有するサーマルソリューション

電子デバイス用の、熱源(100)と電子デバイスの外側表面および/または電子デバイスの他の部品との間に配置されたサーマルソリューション(10)であって、サーマルソリューション(10)は、外側表面および/または第二部品を、熱源(100)により発生する熱から遮蔽しながら、熱源(100)から熱を放散させる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、熱源、例えば電子的デバイスの部品、から生じる熱を管理し、デバイスの使用者および他のデバイス部品に対する熱の影響を緩和しながら、熱源から発生する熱を放散させることができるサーマルソリューションに関する。
【背景技術】
【0002】
高い処理速度かつ高周波数で作動する能力があり、小型で、より複雑な電力条件を有する電子装置や、技術的に進歩した他の装置、例えばマイクロプロセッサーおよび電子・電気部品における集積回路、ハードドライブ等の高容量および応答メモリー部品、電磁供給源、デジタルプロジェクターにおける白熱電球や他の装置等の高出力光学装置を包含する電子装置は、益々高度なものが開発されるのに伴って、比較的極端な温度が発生することがある。しかし、マイクロプロセッサー、集積回路、その他の洗練された電子部品は、通常は特定範囲の閾温度下でのみ効率的に動作する。これらの部品の動作中に発生する過剰の熱は、それらの固有性能に有害であるのみならず、システム全体の性能および信頼性を損ない、システムの故障を引き起こすことさえある。極端な温度を含む、電子システムの作動が期待される環境条件幅が益々広くなることも、過剰熱の悪影響を助長している。
【0003】
微小電子装置から熱を消散させる必要性が増すにつれ、熱管理が、電子製品の設計で益々重要な要素になっている。電子装置の性能信頼性および期待される寿命の両方が、装置の部品温度に逆比例している。例えば、通常のシリコン半導体等のデバイスの動作温度を下げることにより、デバイスの処理速度、信頼性および期待寿命を向上させることができる。従って、部品の寿命および信頼性を最大にするには、デバイスの動作温度を、設計者により設定される限度内に制御することが、最も重要である。
【0004】
さらに、より小型で、より集積したエレクトロニクス、例えばラップトップコンピュータ、携帯電話、デジタルカメラおよびプロジェクター等が益々希求されているということは、熱源がデバイスの外側表面に近くなり、他の部品に近くなることを意味する。デバイスの外側表面が加熱されるのは、使用者には不快であり、危険でさえある。その上、デバイス中のある部品から発生する熱は、隣接する部品に悪影響を及ぼすことがある。可能性のある解決策の一つは熱源を絶縁することであるが、これは、そのように維持することにより、熱源から発生した熱が熱源に集中し、熱源を損なう危険性があるので、好ましい解決策ではない。
【0005】
例えば、ある種のラップトップコンピュータでは、大量の熱を発生することがあるハードドライブが、通常、使用者が入力時に手を載せるコンピュータのいわゆる「パームレスト」、すなわちキーボードと使用者との間の区域の下に配置される。薄いラップトップでは、ハードドライブから発生した熱がラップトップケースを通して使用者の手に伝達され、不快感、さらには痛み誘起することがある。事実、ある種のラップトップでは、40℃を超えるパームレスト温度が測定されている。同様に、発熱部品がラップトップコンピュータの底部を加熱し、そのラップトップが使用者の膝の上に置かれた場合、使用者に対する不快感または苦痛さえ引き起こすことがある。これは、デバイスをより小型にして携帯可能性を高めるために常に努力しているラップトップコンピュータおよび他の携帯デバイスの製造業者にとって重大な問題になっている。
【0006】
熱源、例えば電子部品、から発生する熱の放散に好適な、比較的軽い材料の一群は、一般的にグラファイトと呼ばれるが、特に以下に説明するような天然グラファイトおよびフレキシブルグラファイトを基材とする材料である。これらの材料は、異方性であり、選択された方向に熱を優先的に移動させるように、放熱デバイスを設計することができる。グラファイト材料は、銅やアルミニウムのような金属よりはるかに軽量であり、グラファイト材料は、金属性部品との組合せで使用しても、放熱に使用した場合、銅やアルミニウムに対して多くの優位性を与える。
【0007】
グラファイトは、炭素原子の六角形配列または網目の層平面から形成されている。これらの、六角形に配置された炭素原子の層平面は、実質的に平らであり、実質的に互いに平行で等間隔になるように配向または配列されている。実質的に平らで、平行で、等間隔の炭素原子のシートまたは層は、通常、グラフェン層または基底面と呼ばれ、一つに連結または結合されており、それらの群がクリスタライトに配置されている。高度に秩序付けられたグラファイトは、かなりの大きさのクリスタライトからなり、それらのクリスタライトは、相互に高度に整列または配向しており、十分に秩序付けられた炭素層を有する。つまり、高度に秩序付けられたグラファイトは、高度の選択的クリスタライト配向を有する。グラファイトは、異方性構造を有し、従って、方向性が高い多くの特性、例えば熱的および電気的伝導性および流体拡散性、を示すか、または有する。
【0008】
簡潔に説明すると、グラファイトは炭素のラミネート構造、すなわち弱いファンデルワールス力により一つに接合された炭素原子の重なり合った層または薄片からなる構造として特徴付けることができる。グラファイト構造を考える時、2つの軸または方向、すなわち「c」軸または方向および「a」軸または方向、を指定する。簡単にするために、「c」軸または方向は、炭素層に対して直角の方向と考えることができる。「a」軸または方向は、炭素層に対して平行の方向または「c」方向に対して直角の方向と考えることができる。たわみ性のグラファイトシートを製造するのに好適なグラファイトは、非常に高度の配向を有する。
【0009】
上記のように、炭素原子の平行な層を一つに保持している結合力は弱いファンデルワールス力だけである。天然グラファイトを処理し、重なり合った炭素層または薄片間の間隔を十分に広げ、その層に対して直角の方向、すなわち「c」方向に大きく拡張し、膨張した、または膨れあがったグラファイト構造を形成することができ、その際、炭素層の薄層特性は実質的に維持されている。
【0010】
大きく膨張した、より詳しくは、最終的な厚さ、つまり「c」方向寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイトフレークを、結合剤を使用せずに形成し、膨張したグラファイトの凝集性の、または一体化されたシート、例えばウェブ、紙、細片、テープ、ホイル、マット、等(典型的には「フレキシブルグラファイト」と呼ばれる)を製造することができる。最終的な厚さ、つまり「c」方向寸法が本来の「c」方向寸法の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を、一体化されたたわみ性のシートに、結合剤を使用せずに圧縮により形成することは、大きく膨張したグラファイト粒子間に達成される機械的なかみ合わせ力または凝集性により、可能であると考えられる。
【0011】
シート材料は、膨張グラファイト粒子およびグラファイト層が、非常に大きな圧縮、例えばロールプレス加工、により得られるシートの対向面に対して実質的に平行に配向しているために、たわみ性に加えて、上記の様に、熱的および電気的な伝導性および流体拡散性に関して、出発材料である天然グラファイトに匹敵する高度の異方性を有することも分かっている。この様にして製造されたシート材料は、たわみ性が優れ、良好な強度を有し、非常に高度に配向している。
【0012】
簡潔に説明すると、可撓性の結合剤を含まない異方性のグラファイトシート材料、例えばウェブ、紙、細片、テープ、ホイル、マット等の製造方法は、予め決められた負荷の下で、結合剤の不存在下で、「c」方向寸法が本来の粒子の約80倍以上にも膨張したグラファイト粒子を圧縮または圧迫し、実質的に平らで、たわみ性で、一体化されたグラファイトシートを形成することを含んでなる。膨張したグラファイト粒子は、一般的に外観がウォーム状である、または細長く、圧縮された後、圧縮永久ひずみを維持し、シートの対向する主表面と整列している。シート材料の密度および厚さは、圧縮の程度を制御することにより変えることができる。シート材料の密度は約0.04g/cm3〜2.0g/cm3である。フレキシブルグラファイトシート材料は、グラファイト粒子がシートの対向する平行な主表面に対して平行に配向しているために、かなりの程度の異方性を示し、異方性の程度は、シート材料をロールプレス加工し、配向性を増加することにより増加する。ロールプレス加工した異方性シート材料では、厚さ、すなわち、対向する平行なシート表面に対して直角の方向は「c」方向を含んでなり、長さおよび幅に沿った、すなわち対向する主表面に沿った、または平行な方向は、「a」方向を含んでなり、シートの熱的、電気的および流体拡散性は、「c」および「a」方向で非常に大きく、数桁異なる。
【0013】
剥離されたグラファイトの圧縮粒子のシート(すなわちフレキシブルグラファイト)を、熱源から発生する熱を放散させるための放熱体、熱的界面および吸熱源の構成部品として使用することが提案されている(例えば米国特許第6,245,400号、第6,482,520号、第6,503,626号、および第6,538,892号参照)が、「接触時の温度」、すなわち電子的デバイスの外側表面が、使用者が不快感を感じるか、または危険にさらされる程度に発熱すること、および隣接する部品の加熱という問題は、十分には対処されていない。
【0014】
その上、グラファイト材料の可撓性のために、複雑な構造または形状をグラファイト材料で形成するのは困難である。そのような複雑な形状は、材料を、例えばデバイス部品の周りに、あるいは不規則な空間中に適合させるか、またはグラファイトもしくは金属製吸熱源ベースに取り付けるフィンとして使用する場合に望ましい。さらに、グラファイトは、金属製フィンのようには所定の位置にはんだ付けできないので、グラファイトフィンを金属製ベースに取り付けることも問題である。
【0015】
グラファイトを電子部品に使用する際のもう一つの問題は、個々のグラファイト粒子またはフレークがグラファイト放熱部品から剥離するかも知れないという、理由の無い恐れである。グラファイトの導電性を仮定すると、この剥離は、グラファイト材料が配置されている部品の作動を妨害する可能性があろう。
【0016】
従って、グラファイト部品の重量および熱的な優位性、成形性、および他の、金属製部品に対する優位性を与える、電子デバイス用サーマルソリューションの改良された設計が常に必要とされている。
【発明の開示】
【0017】
本発明は、電子部品から熱を放散させながら、同時に、使用者または隣接する部品を、部品から発生する熱の影響から遮蔽することができるサーマルソリューションを提供する。本発明のサーマルソリューションは、非グラファイト系材料、特にアルミニウムまたは銅のような金属系材料、の間にサンドイッチ状に挟まれた、剥離されたグラファイトの圧縮粒子からなる異方性シート(この分野では「フレキシブルグラファイト」と呼ばれることがある)を含んでなる。ここで使用する用語「フレキシブルグラファイト」は、熱分解グラファイトの、単独またはラミネートとしてのシートも含む。本発明のサーマルソリューションとして使用するフレキシブルグラファイトシートは、面内熱伝導率が、その面貫通熱伝導率よりも実質的に高い。つまり、本発明のサーマルソリューションは、比較的高い(10以上のオーダーの)熱的異方性比を有する。この熱的異方性比は、面内熱伝導率と面貫通熱伝導率の比である。
【0018】
別の材料間にフレキシブルグラファイト材料をサンドイッチ状に挟むことにより、グラファイトの熱的特性を維持しながら、他の利点、例えば成形性または形成性およびグラファイトカプセル封入特性が得られる。例えば、非グラファイト外側層がプラスチック材料を含んでなる場合、グラファイトの剥離が阻止される。非グラファイト外側層として使用できる他の材料としては、窒化チタン、窒化ホウ素および炭化ケイ素がある。しかし、最も好ましくは、非グラファイト外側層は、金属系材料、例えば銅、アルミニウム、マグネシウム、チタン等、特にアルミニウムを含んでなる。アルミニウムは、銅ほど伝熱性ではないが、銅と比較して軽量であるために好ましい。
【0019】
金属系外側層を使用することにより、得られる構造を、特殊な空間的要求に適合する複雑な形状に成形および/または形成し、金属の等方性を利用し、熱をグラファイトコア中により効率的に分散させながら、グラファイトの剥離を抑制できる。実際、当業者には明らかなように、サンドイッチ状に挟む外側層が同じ材料からなる必要は無く、異なった材料を使用して最適性能を最大限にすることができる。
【0020】
しかし、サンドイッチ状のサーマルソリューションを形成する際、外側層に選択する材料の性質および3層の厚さは、サーマルソリューションの熱的性能に重大な影響を及ぼすことがある。例えば、熱伝導率(W/m°Kとして測定)および熱拡散率、すなわち熱が物体中を拡散する速度(mm/secとして測定)の両方が、これらの層の性質および厚さにより重大な影響を受けることがある。従って、非グラファイト外側層に使用される材料および本発明のサンドイッチ状構造を構成する個々の層の厚さは、好ましくはグラファイト系コアと組み合わせた外側層のそれぞれに対する、Fxとして表す熱関数が、約−10〜約+7になるように選択すべきである。
【0021】
外側層/グラファイト系コアの組合せの熱関数は、下記式:
【数1】

で表され、ここで、Yは、外側層の一方に対するヤング率であり、Yは、グラファイト系コアに対するヤング率であり、Thickは、ミリメートル(mm)で表した外側層の厚さであり、Thickは、グラファイト系コアの厚さであり、Tcは、外側層の熱伝導率であり、Tcは、グラファイト系コアの熱伝導率であり、dは、外側層の密度であり、dは、グラファイト系コアの密度である。
【0022】
両方の外側層およびフレキシブルグラファイトコアの熱関数が約−10〜約+7である場合、本発明のサンドイッチ構造の熱伝導率および熱拡散率の両方を最適化し、効果的なサーマルソリューションを与えることができる。すなわち、サーマルソリューション上のある位置から別の位置への、Δtで表される温度勾配が最少に抑えられる。Fxが好ましい範囲から外れた時、比較的低いΔtが得られる場合があるが、そのような現象は、約−10〜約+7のFx範囲が維持される場合のように設計されているのではなく、単なる偶然であると思われる。
【0023】
本発明のサンドイッチ構造は、種々の方法により形成することができる。例えば、グラファイトシートまたはシートのラミネートを外側層間に配置し、外側層の縁部を一緒に融解させる(例えばプラスチック材料の場合)か、または一つに溶接またははんだ付けする(例えば金属の場合)ことができる。あるいは、外側層の縁部を一緒に折り曲げてサンドイッチ構造を形成するか、または外側層および/またはグラファイト層の表面に接着剤を塗布し、外側層を一つに、および/またはグラファイトに接着させることができる。
【0024】
本発明のサンドイッチサーマルソリューションは、2つの主表面を含んでなり、その一方は、熱源、例えばハードドライブまたはデジタルプロジェクターにおける光源のケーシングの表面と接触して作動させる。サーマルソリューションの面内熱伝導率により熱源から熱が放散されるように、サーマルソリューションの面積は、熱源上のサーマルソリューションの接触面積よりも大きくする。主表面の一方(熱源と接触している表面と同じ主表面である必要はない)も、放熱装置、例えば吸熱源、と接触して作動し、熱源から発生する熱が、サーマルソリューションの比較的高い面内熱伝導率により、サーマルソリューションを通って発散し、吸熱源に導かれ、そこで放熱されるのが最も有利である。
【0025】
グラファイトの厚さを通る熱伝導率は比較的低い(言い換えれば、熱的異方性比が高い)ので、熱源から発生する熱は、サーマルソリューションを通しては容易に移動しない。従って、熱源と、熱源が中に位置するデバイスの外側表面との間に、あるいは熱源と、熱源が中に位置するデバイス中の別の部品との間に、サーマルソリューションを配置する場合、そのサーマルソリューションは、熱源から外側表面または他の部品への熱流を低減させるか、または排除する。本発明のサーマルソリューションは成形可能であるので、空間が限られているか、あるいはサーマルソリューションをデバイス中の構造の周りに、または近くに適合させる必要がある用途でも、使用できる。
【0026】
さらに、本発明のサーマルソリューションにフレキシブルグラファイト/金属サンドイッチ構造を使用することのもう一つの利点は、本発明の製品に、電磁および無線周波数(EMI/RF)干渉を遮断する可能性があることである。本発明のサーマルソリューションは、その主目的である放熱/遮蔽機能に加えて、本サーマルソリューションが中に配置されているデバイスの部品をEMI/RF干渉から遮蔽すると考えられる。
【0027】
本発明の別の実施態様では、本サーマルソリューションは、熱的界面材料、例えばサーマルグリース、を有することができるか、または国際特許出願第PCT/US02/40238号に記載されている、および/またはLakewood, OhioのAdvanced Energy Technology Inc. からeGraf Hi-Therm(商品名)製品として市販されているグラファイト系熱的界面をサーマルソリューションと熱源との間に挿入し、熱源と本発明のサーマルソリューションとの間の熱移動を促進することができる。さらに、圧縮可能な材料、例えばゴムまたはポリウレタンフォームパッド、を、熱源の、本発明のサーマルソリューションと反対側に配置し、熱源をサーマルソリューションに対して偏らせ、熱源から本発明のサーマルソリューションへの熱移動を促進することができる。
【0028】
さらに、サーマルソリューションの機械的堅牢性を改良し、熱源からデバイスの外側表面への、または他のデバイス部品への熱移動をさらに遮断または遮蔽する可能性を与えるために、熱伝導性が比較的低い材料、例えばMylar(登録商標)のようなプラスチック材料または他の樹脂もしくは類似の材料をサーマルソリューションの上に配置することができる。
【0029】
従って、本発明の目的は、電子的デバイスの部品から熱を放散させ、同時に隣接する構造を熱から遮蔽するための改良されたサーマルソリューションを提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、隣接する構造への熱移動を回避しながら、効果的に放熱させるための十分に高い熱的異方性比を有するサーマルソリューションを提供することである。
【0031】
本発明の別の目的は、熱関数が約−10〜約+7であるサーマルソリューションを提供することである。
【0032】
本発明のさらに別の目的は、使用できる空間が限られている環境で放熱および熱遮断の両方を行うことができる、成形可能なサーマルソリューションを提供することである。
【0033】
下記の説明を読むことにより当業者には明らかな、これらの、および他の目的は、電子デバイス(例えばラップトップコンピュータ)用の熱を放散および遮蔽するシステムであって、該システムが、電子デバイスおよびサーマルソリューションを包含し、該電子デバイスが、第一部品(例えばハードドライブ)を有し、該第一部品が、該電子部品の外側表面(例えばラップトップケース)に、および/または該デバイスの第二部品(例えばラップトップチップセット)に熱を伝達する熱源を含んでなり、該サーマルソリューションが2つの主表面を有し、該サーマルソリューションが、主表面の一方が第一部品と接触して作動するように配置され、該サーマルソリューションが、該第一部品と、該第一部品が熱を伝達する該電子部品の該外側表面および/または第二部品との間に挿入され、該サーマルソリューションが、外側層、特に金属、例えばアルミニウム、同士の間にサンドイッチ状に挟まれた少なくとも一個のフレキシブルグラファイトのシートを含んでなる、システムにより達成することができる。前記サーマルソリューションは、好ましくは面内熱伝導率が少なくとも約140W/m°K、より好ましくは少なくとも約200W/m°Kであり、面貫通熱伝導率が約12W/m°K以下、より好ましくは約10W/m°K以下である。
【0034】
本発明の好ましい実施態様では、非グラファイト外側層に使用する材料および本発明のサンドイッチ構造を構成する個別層の厚さを、好ましくはグラファイト系コアと組み合わせた外側層のそれぞれに対して、下記式:
【数2】

により求められる、Fxで表される熱関数が約−10〜約+7になるように選択され、式中、Yは、外側層の一方に対するヤング率であり、Yは、グラファイト系コアに対するヤング率であり、Thickは、ミリメートル(mm)で表した外側層の厚さであり、Thickは、グラファイト系コアの厚さであり、Tcは、外側層の熱伝導率であり、Tcは、グラファイト系コアの熱伝導率であり、dは、外側層の密度であり、dは、グラファイト系コアの密度である。
【0035】
本発明のシステムは、第一部品に直接隣接していない所に配置された放熱デバイス、例えば吸熱源、ヒートパイプ、ヒートプレートまたはそれらの組合せ、をさらに包含し、さらに該サーマルソリューションの該主表面の一方が該放熱デバイスと接触して作動するのが有利である。
【0036】
本発明の別の実施態様では、サーマルソリューションは、その上に保護被覆、例えばプラスチック、を有することができる。最も好ましくは、保護被覆の熱伝導率が、フレキシブルグラファイトの少なくとも一つのシートの面貫通熱伝導率未満である。熱伝達材料、例えば熱界面材料、をサーマルソリューションと第一部品との間に配置することもできる。さらに、偏位材料、例えば圧縮可能なパッド、を配置し、サーマルソリューション部品およびサーマルソリューションを一緒に偏らせることができる。
【0037】
上記の一般的な説明および下記の詳細な説明の両方が、本発明の実施態様を提供し、特許権請求する本発明の性格および特徴を理解するための全体図および骨格を提供することを理解すべきである。添付の図面は、本発明をさらに理解するためにここに包含し、本明細書の一部を構成する。これらの図面は、本発明の様々実施態様を例示し、説明と共に、本発明の原理および操作を開示するのに役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
上記のように、本発明のサーマルソリューションは、サンドイッチ構造であり、その内側コアは、剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から構成されたシートから形成されている。グラファイトは、平らな層状平面で共有結合した原子を含んでなり、平面間で弱く結合した結晶形態の炭素である。グラファイトの粒子、例えば天然グラファイトフレーク、を、例えば硫酸および硝酸の溶液のインターカレートで処理することにより、グラファイトの結晶構造が反応し、グラファイトとインターカレートの化合物を形成する。処理したグラファイト粒子を、以下、「インターカレーション処理されたグラファイトの粒子」と呼ぶ。高温にさらすことにより、グラファイト中のインターカレートが分解して揮発し、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子を、「c」方向で、すなわちグラファイトの結晶平面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80倍以上もの寸法で膨張させる。剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧縮し、たわみ性のシートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および切断することができる。
【0039】
本発明で使用するのに好適なグラファイト出発材料は、有機および無機酸ならびにハロゲンでインターカレーション処理し、次いで加熱した時に膨脹することができるグラファイト化度の高い炭素質材料である。これらのグラファイト化度の高い炭素質材料は、最も好ましくは約1.0のグラファイト化度を有する。本発明で使用する用語「グラファイト化度」は、下記式:
【数3】

に従う値を意味する。ここでd(002)は、オングストローム単位で測定した結晶構造中にある炭素のグラファイト層間における間隔である。グラファイト層間の間隔dは標準的なX線回折技術により測定される。(002)、(004)および(006)ミラー指数に対応する回折ピークの位置を測定し、標準的な最小二乗技術を使用し、これらのピークすべてに対する総誤差を最小にする間隔を導く。グラファイト化度の高い炭素質材料の例としては、様々な供給源から得られる天然グラファイト、ならびに他の炭素質材料、例えば化学蒸着、重合体の高温熱分解、または溶融した金属溶液からの結晶化、等により製造されたグラファイト、がある。天然グラファイトが最も好ましい。
【0040】
本発明で使用するたわみ性シート用のグラファイト出発材料は、出発材料の結晶構造が必要なグラファイト化度を維持し、剥離可能である限り、非グラファイト成分を含むことができる。一般的に、結晶構造が必要なグラファイト化度を有し、剥離可能である炭素含有材料はすべて、本発明で使用するのに好適である。その様なグラファイトは、好ましくは純度が少なくとも80重量%である。より好ましくは、本発明で使用するグラファイトは、純度が少なくとも約94%である。最も好ましい実施態様では、使用するグラファイトの純度が少なくとも約98%である。
【0041】
グラファイトシートの一般的な製造方法は、ここにその開示を参考として含めるシェーンらの米国特許第3,404,061号に記載されている。シェーンらの方法の典型的な実施では、例えば硝酸および硫酸の混合物を、好ましくはグラファイトフレーク100重量部あたりインターカレート溶液約20〜約300重量部(pph)のレベルで含む溶液中にフレークを分散させることにより、天然グラファイトフレークをインターカレーション処理する。インターカレーション溶液は、この分野で公知の酸化剤および他のインターカレーション剤を含む。例としては、酸化剤および酸化性混合物を含む溶液、例えば硝酸、塩素酸カリウム、クロム酸、過マンガン酸カリウム、クロム酸カリウム、二クロム酸カリウム、過塩素酸等、または混合物、例えば、濃硝酸と塩素酸塩、クロム酸とリン酸、硫酸と硝酸、または強有機酸の混合物、例えばトリフルオロ酢酸、および有機酸に可溶な強酸化剤、を含む溶液が挙げられる。あるいは、電位を利用してグラファイトの酸化を引き起こすこともできる。電解酸化を利用してグラファイト結晶中に導入することができる化学種としては、硫酸ならびに他の酸がある。
【0042】
好ましい実施態様では、インターカレーション剤は、硫酸、または硫酸およびリン酸、と酸化剤、すなわち硝酸、過塩素酸酸、クロム酸、過マンガン酸カリウム、過酸化水素、ヨウ素酸または過ヨウ素酸、等、との混合物の溶液である。あまり好ましくはないが、インターカレーション溶液は、金属ハロゲン化物、例えば塩化第二鉄、および硫酸と混合した塩化第二鉄、またはハロゲン化物、例えば臭素と硫酸の溶液として、または臭素の有機溶剤溶液として、臭素を含むこともできる。
【0043】
インターカレーション溶液の量は、約20〜約350pph、より典型的には約40〜約160pphである。フレークをインターカレーション処理した後、過剰の溶液はすべてフレークから排出し、フレークを水洗する。あるいは、インターカレーション溶液の量を約10〜約40pphに制限することができ、これによって、ここにその開示を参考として含める米国特許第4,895,713号に開示されている様に、洗浄工程を無くすことができる。
【0044】
インターカレーション溶液で処理したグラファイトフレークの粒子は、所望により、例えば混合により、アルコール、糖、アルデヒドおよびエステルから選択された、温度25℃〜125℃で酸化性インターカレーション溶液の表面被膜と反応し得る還元剤と接触させることができる。好適な、具体的な有機試剤としては、ヘキサデカノール、オクタデカノール、1−オクタノール、2−オクタノール、デシルアルコール、1,10デカンジオール、デシルアルデヒド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、デキストロース、フルクトース、ラクトース、スクロース、ジャガイモデンプン、エチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコール、ジベンゾエート、プロピレングリコールモノステアレート、グリセロールモノステアレート、ジメチルオキシレート、ジエチルオキシレート、メチルホルメート、エチルホルメート、アスコルビン酸およびリグニンに由来する化合物、例えばリグノ硫酸ナトリウムがある。有機還元剤の量は、グラファイトフレーク粒子の約0.5〜4重量%であるのが好適である。
【0045】
インターカレーションの前、最中または直後に膨脹助剤を塗布することによっても改良することができる。これらの改良には、剥離温度の低下および膨脹体積(「ウォーム体積」とも呼ばれる)の増加が含まれる。本明細書における膨脹助剤は、膨脹の改良を達成できるように、インターカレーション溶液に十分に可溶な有機材料が有利である。より詳しくは、好ましくは炭素、水素および酸素だけを含む、この種の有機材料を使用するとよい。カルボン酸が特に効果的であることが分かっている。膨脹助剤として有用な、好適なカルボン酸は、少なくとも一個の炭素原子、好ましくは約15個までの炭素原子を有し、インターカレーション溶液中に、剥離の一つ以上の特徴を大きく改善するのに有効な量で溶解し得る、芳香族、脂肪族または環状脂肪族、直鎖状または分岐鎖状の、飽和および不飽和モノカルボン酸、ジカルボン酸およびポリカルボン酸から選択される。有機膨脹助剤のインターカレーション溶液に対する溶解度を改良するために、好適な有機溶剤を使用することができる。
【0046】
飽和脂肪族カルボン酸の代表例は、例えば式H(CHCOOHを有し、nが0〜約5の数である酸であり、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、等を包含する。カルボン酸の代わりに、酸無水物または反応性カルボン酸誘導体、例えばアルキルエステル、も使用できる。アルキルエステルの代表例は、ギ酸メチルおよびギ酸エチルである。硫酸、硝酸および他の公知の水性インターカレートは、ギ酸を最終的に水および二酸化炭素に分解する能力を有する。このため、ギ酸および他の敏感な膨脹助剤をグラファイトフレークと接触させた後で、水性インターカレートにフレークを浸漬するのが有利である。ジカルボン酸の代表例は、2〜12個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸、特にシュウ酸、フマル酸、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、1,5−ペンタンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、1,10−デカンジカルボン酸、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸および芳香族ジカルボン酸、例えばフタル酸またはテレフタル酸である。アルキルエステルの代表例は、シュウ酸ジメチルおよびシュウ酸ジエチルである。環状脂肪族酸の代表例は、シクロヘキサンカルボン酸であり、芳香族カルボン酸の代表例は、安息香酸、ナフトエ酸、アントラニル酸、p−アミノ安息香酸、サリチル酸、o−、m−およびp−トリル酸、メトキシおよびエトキシ安息香酸、アセトアセタミド安息香酸およびアセトアミド安息香酸、フェニル酢酸およびナフトエ酸である。ヒドロキシ芳香族酸の代表例は、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、4−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−1−ナフトエ酸、5−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸および7−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸である。ポリカルボン酸の中ではクエン酸が特に好ましい。
【0047】
インターカレーション溶液は、水性であり、剥離を強化するのに有効な量、好ましくは約1〜10%の膨脹助剤を含む。膨脹助剤をグラファイトフレークと、インターカレーション水溶液中に浸漬する前または後に接触させる実施態様では、膨脹助剤をグラファイトと、典型的にはグラファイトフレークの約0.2〜約10重量%の量で、好適な手段、例えばV−ブレンダー、により混合することができる。
【0048】
グラファイトフレークをインターカレーション処理し、インターカレーション処理したグラファイトフレークを有機還元剤と混合した後、その混合物を温度25〜125℃にさらし、還元剤とインターカレート被覆の反応を促進する。加熱期間は約20時間までであり、上記範囲中の高い温度では、より短く、例えば少なくとも約10分間である。高い温度では、半時間以下、例えば10〜25分間のオーダーの時間でよい。
【0049】
この様に処理したグラファイトの粒子は、「インターカレーション処理したグラファイトの粒子」と呼ばれることがある。高温、例えば少なくとも約160℃、特に約700℃〜1000℃以上の温度、にさらすことにより、インターカレーション処理されたグラファイトの粒子は、c−方向で、すなわち構成するグラファイト粒子の結晶面に対して直角の方向で、アコーディオン状に、その本来の体積の約80〜1000倍以上にも膨張する。膨脹した、すなわち剥離されたグラファイト粒子は、細長い外観を呈するので、一般的にウォームと呼ばれる。これらのウォームを一緒に圧縮し、たわみ性シートを形成することができるが、これらのシートは、本来のグラファイトフレークと異なり、様々な形状に成形および裁断することができる。
【0050】
フレキシブルグラファイトシートおよびホイルは、凝集性であり、良好な取扱強度を有し、例えばロールプレス加工により、厚さ約0.075mm〜3.75mm、典型的な密度約0.1〜1.5グラム/立方センチメートル(g/cm)に効果的に圧縮される。米国特許第5,902,762号(ここに参考として含める)に開示されているように、約1.5〜30重量%のセラミック添加剤をインターカレーション加工したグラファイトフレークと混合し、最終的なフレキシブルグラファイト製品の樹脂含浸性を高めることができる。これらの添加剤は、長さ約0.15〜1.5ミリメートルのセラミック繊維粒子を含む。粒子の幅は約0.04〜0.004mmが好適である。セラミック繊維粒子は、グラファイトに対して非反応性で非粘着性であり、約1100℃までの、好ましくは約1400℃以上の温度で安定している。好適なセラミック繊維粒子は、細断した石英ガラス繊維、炭素およびグラファイト繊維、ジルコニア、窒化ホウ素、炭化ケイ素およびマグネシア繊維、天然鉱物繊維、例えばメタケイ酸カルシウム繊維、ケイ酸カルシウムアルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、等から形成される。
【0051】
グラファイトフレークをインターカレーション処理し、剥離させるための上記の方法は、国際特許出願第PCT/US02/39749号に記載されているように、グラファイトフレークをグラファイト化温度、すなわち約3000℃以上の温度で前処理し、潤滑性添加剤のインターカレート中に包含することにより、有利に増強することができる。
【0052】
グラファイトフレークの前処理、つまりアニーリング、により、続いてフレークをインターカレーション処理および剥離にかけた時に、膨脹が大幅に増大する(すなわち、膨脹体積が300%以上増加する)。実際、膨脹の増加は、アニーリング工程を含まない類似の処理と比較して、少なくとも約50%である。アニーリング工程に使用する温度は、100℃低い温度でも膨脹はかなり小さくなるので、3000℃を大きく下回るべきではない。
【0053】
本発明のアニーリングは、インターカレーションおよびそれに続く剥離により高い膨脹度を有するフレークを得るのに十分な時間行う。典型的には、必要な時間は1時間以上、好ましくは1〜3時間であり、不活性環境中で行うのが最も有利である。最大限の有利な結果を得るには、アニーリング処理したグラファイトフレークを、この分野で公知の他の処理、すなわち有機還元剤、インターカレーション助剤、例えば有機酸、の存在下でのインターカレーション処理、およびインターカレーション処理に続く界面活性剤洗浄、にもかけ、膨脹度を増大させる。その上、最大限の有利な結果を得るには、インターカレーション処理工程を繰り返すとよい。
【0054】
本発明で使用する、3000℃の範囲内にある温度はグラファイト化製法で見られる範囲の上限にあるので、本発明のアニーリング工程は、誘導炉または他の、この分野でグラファイト化に公知であり、認められているそのような装置中で行うことができる。
【0055】
インターカレーション前のアニーリングにかけたグラファイトを使用して製造されたウォームは、一つに「固まる」場合があり、坪量(area weight)の均質性に悪影響を及ぼすことが観察されているので、「自由流動性」ウォームの形成を助ける添加剤が非常に好ましい。インターカレーション溶液に潤滑性添加剤を加えることにより、圧縮装置の床(例えばグラファイトウォームをフレキシブルグラファイトシートに圧縮(または「カレンダー加工」)するのに従来から使用されているカレンダー加工区域の床を横切ってウォームをより一様に配分することができる。従って、得られるシートは、坪量の均質性が高くなり、引張強度が大きくなる。潤滑性添加剤は、好ましくは長鎖炭化水素、より好ましくは少なくとも約10個の炭素を有する炭化水素である。長鎖炭化水素基を有する他の有機化合物も、他の官能基が存在していても、使用できる。
【0056】
より好ましくは、潤滑性添加剤は油であり、特に鉱油は不快臭や臭気を発し難いことを考えると、鉱油が最も好ましいが、これは長期間の貯蔵には重要なことである。上に詳細に説明した特定の膨脹助剤も潤滑性添加剤の定義に適合することが分かる。これらの材料を膨脹助剤として使用すると、インターカレートに別の潤滑性添加剤を含まなくてもよい場合がある。
【0057】
潤滑性添加剤は、インターカレート中に少なくとも約1.4pph、より好ましくは少なくとも約1.8pphの量で存在する。潤滑性添加剤を含む上限は、下限ほど重要ではないが、約4pphを超えるレベルで潤滑性添加剤を含んでも、それに見合う程の利点は見られない。
【0058】
フレキシブルグラファイトシートは、場合により、樹脂で処理するのが有利であり、吸収された樹脂は、硬化後、フレキシブルグラファイトシートの耐湿性および取扱強度、すなわち剛性、を高めると共に、シートの形状を「固定する」。好適な樹脂含有量は、好ましくは少なくとも約5重量%、より好ましくは約10〜35重量%、好適には約60重量%までである。本発明の実施に特に有用であることが分かっている樹脂としては、アクリル、エポキシおよびフェノールを基剤とする樹脂系、フルオロ系重合体、またはそれらの混合物がある。好適なエポキシ樹脂系には、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DGEBA)を基剤とする系、および他の多官能性樹脂系があり、使用できるフェノール系樹脂としては、レゾールおよびノボラックフェノール系がある。所望により、フレキシブルグラファイトは、樹脂に加えて、または樹脂の代わりに、線維および/または塩を含浸させることができる。さらに、反応性または非反応性添加剤を樹脂系と併用し、特性(例えば粘着性、材料流動性、疎水性、等)を変えることができる。樹脂含浸した材料の熱伝導率を最大にするために、樹脂を高い温度および圧力で硬化させることができる。より詳しくは、少なくとも約90℃の温度および少なくとも約7メガパスカル(MPa)の圧力で硬化させることにより、優れた熱伝導率(実際、銅で観察される面内熱伝導率よりも高い面内熱伝導率を達成できる)を有するグラファイト材料が製造される。
【0059】
あるいは、本発明のフレキシブルグラファイトシートは、国際特許出願第PCT/US02/16730号に記載されているように、新しく膨脹させたウォームではなく、再粉砕したフレキシブルグラファイトシートの粒子を利用することもできる。シートは、新しく形成されたシート材料、循環使用された材料、スクラップシート、あるいは他のいずれかの好適な供給源でもよい。
【0060】
また、本発明の方法は、未使用材料と循環使用材料の混合物も使用できる。
【0061】
循環使用材料用の供給源材料は、上記のように圧縮成形されたシートまたはシートの切り取り部分、または例えば予備カレンダー加工ロールで圧縮してあるが、樹脂含浸していないシートでよい。さらに、供給源材料は、樹脂含浸してあるが、まだ硬化させていないシートまたはシートの切り取り部分、または樹脂含浸し、硬化させたシートまたはシートの切り取り部分でもよい。供給源材料は、循環使用するフレキシブルグラファイトプロトン交換メンブラン(PEM)燃料電池部品、例えばフローフィールドプレートまたは電極、でもよい。グラファイトの各種供給源のそれぞれは、そのまま、または天然グラファイトフレークと混合して使用することができる。
【0062】
フレキシブルグラファイトシートの供給源材料を入手した後、粒子を製造するための公知の処理または装置、例えばジェットミル、エアミル、ブレンダー、等により粉砕することができる。好ましくは、粒子の大部分は、20USメッシュを通過し、より好ましくは主要部分(約20%を超える、最も好ましくは約50%を超える)が80USメッシュを通過しないような直径を有する。最も好ましくは、粒子は、約20メッシュ以下の粒子径を有する。フレキシブルグラファイトが樹脂含浸されている場合、粉砕工程の際に樹脂系に対する熱損傷を避けるために、粉砕する時に冷却するのが好ましい場合がある。
【0063】
粉砕した粒子のサイズは、グラファイト製品の機械加工性および成形性と、所望の熱的特性が釣り合うように、選択することができる。例えば、小さな粒子は、容易に機械加工および/または成形できるグラファイト製品を与えるのに対し、大きな粒子は、異方性が高く、従って、面内の電気的および熱的伝導性が高いグラファイト製品を与える。
【0064】
供給源材料が樹脂含浸されている場合、樹脂を粒子から除去するのが好ましい。樹脂除去に関しては、以下に詳細に説明する。
【0065】
供給源材料を粉砕し、すべての樹脂を除去した後、その材料を再度膨脹させる。再膨脹は、上記のインターカレーションおよび剥離工程、およびShane et al.への米国特許第3,404,061号およびゲレインらの米国特許第4,895,713号に記載されている方法を使用して行うことができる。
【0066】
典型的には、インターカレーションの後、インターカレーション処理した粒子を炉中で加熱することにより、粒子を剥離させる。この剥離工程の際、インターカレーション処理された天然グラファイトフレークを、循環使用されるインターカレーション処理された粒子に加えることができる。好ましくは、再膨脹工程の際、粒子は、約100cc/g〜約350cc/g以上の範囲内の比体積を有するように膨脹させる。最後に、再膨脹工程の後、再膨脹した粒子を、上記のようにたわみ性シートに圧縮することができる。
【0067】
出発材料が樹脂含浸されている場合、好ましくは樹脂を粒子から少なくとも部分的に除去すべきである。この除去工程は、粉砕工程と再膨脹工程との間に行うべきである。
【0068】
一実施態様では、除去工程は、樹脂を含む再粉砕粒子を、例えば空気中の火炎の上で加熱することを含む。より詳しくは、含浸された樹脂を少なくとも約250℃の温度に加熱し、樹脂を除去する。この加熱工程の際、樹脂の分解生成物が急激な発火を避けるように注意すべきであり、これは、空気中で慎重に加熱するか、または不活性雰囲気中で加熱することにより、行うことができる。好ましくは、加熱は、約400℃〜約800℃の範囲内で、少なくとも約10〜約150分間以上行うべきである。
【0069】
さらに、樹脂除去工程により、樹脂を除去しない類似の方法と比較して、成形方法で製造される製品の引張強度が増加することがある。膨脹工程(すなわちインターカレーションおよび剥離)の際に、樹脂をインターカレーション薬剤と混合した時に、場合によって毒性副生成物が生じることがあるので、樹脂除去工程は有利である。
【0070】
このように、膨脹工程の前に樹脂を除去することにより、上記の強度特性増加のように、より優れた製品が得られる。強度特性増加は、一部、膨脹増加の結果である。粒子中に樹脂が存在する場合、膨脹は制限される。
【0071】
強度特性および環境上の問題に加えて、樹脂が場合により酸と暴走発熱反応を引き起こす恐れがあるために、インターカレーションの前に樹脂を除去するとよい。
【0072】
上記のことから、大部分の樹脂を除去するのが好ましい。より好ましくは、約75%を超える樹脂を除去する。最も好ましくは、99%を超える樹脂を除去する。
【0073】
フレキシブルグラファイトシートを粉砕した後、所望の形状に成形し、好ましい実施態様では硬化させる(樹脂含浸してある場合)。あるいは、シートを粉砕の前に硬化させることもできるが、粉砕後の硬化が好ましい。
【0074】
所望により、本発明のサーマルソリューションの形成に使用するフレキシブルグラファイトシートは、ラミネート層間に接着剤を含むか、または含まないラミネートとして使用することができる。そのラミネート積重構造には、非グラファイト層を含むこともできるが、これには接着剤の使用が必要であり、これは、ラミネート積重構造の平面を横切る放熱を遅らせることがあるので、不利である。そのような非グラファイト層は、金属、プラスチックまたは他の非金属材料、例えば線維ガラスまたはセラミック、を含むことができる。
【0075】
上記のように、このようにして形成された、剥離されたグラファイトの圧縮粒子のシートは、本来異方性である、すなわちシートの熱伝導率が、シートを貫通する方向、つまり「c」方向に対して、面内方向、つまり「a」方向で、より大きい。このようにして、グラファイトシートの異方性は、熱を本サーマルソリューションの平面方向に(すなわちグラファイトシートに沿った「a」方向に)向ける。そのようなシートは、一般的に面内方向で少なくとも140W/m°K、より好ましくは少なくとも約200W/m°K、最も好ましくは少なくとも約250W/m°K、面貫通方向で約12W/m°K以下、より好ましくは約10W/m°K以下、最も好ましくは約6W/m°K以下の熱伝導率を有する。従って、本サーマルソリューションは、熱的異方性比(すなわち、面内熱伝導率と面貫通熱伝導率の比)が約10以上である。
【0076】
ラミネートの面内および面貫通方向における熱伝導率の値は、ラミネートの形成に使用される場合を含めて、本サーマルソリューションの形成に使用するフレキシブルグラファイトシートのグラフェン層の方向的整列を変えることにより、あるいはラミネートが形成された後の、ラミネート自体のグラフェン層の方向的整列を変えることにより、操作できる。このようにして、本サーマルソリューションの面内熱伝導率は増加し、一方、本サーマルソリューションの面貫通熱伝導率は低下し、これによって熱的異方性比が増加する。
【0077】
このグラフェン層の方向的整列を達成できる方法の一つは、構成フレキシブルグラファイトシートに圧力を、シートをカレンダー加工すること(すなわちせん断力を作用させることにより)、またはダイプレス加工または往復プラテンプレス加工すること(すなわち圧縮作用により)であるが、方向的整列にはカレンダー加工がより効果的である。例えば、シートを密度1.1g/ccに対して1.7g/ccにカレンダー加工することにより、面内熱伝導率は約240W/m°Kから約450W/m°K以上に増加し、面貫通熱伝導率は比例して低下し、従って、個々のシートおよびさらに、そこから形成されるすべてのラミネートの熱的異方性比が増加する。
【0078】
あるいは、ラミネートを形成する場合、例えば圧力をかけることにより、ラミネートを形成するグラフェン層の方向的整列が全体で増加し、ラミネートを構成するフレキシブルグラファイトシートの出発密度より大きい密度になる。実際、この様式で、ラミネート化された製品に、少なくとも約1.4g/ cc、より好ましくは少なくとも約1.6g/ccで、約2.0g/ccまでの最終密度が得られる。圧力は、通常の手段、例えばプレス加工またはカレンダー加工により、作用させることができる。少なくとも約60メガパスカル(MPa)の圧力が好ましく、2.0g/ccまでの密度を達成するには、少なくとも約550MPa、より好ましくは少なくとも約700MPaの圧力が必要である。
【0079】
驚くべきことに、グラフェン層の方向的整列を増加することにより、密度は純粋な銅の密度よりはるかに小さいままで、グラファイトラミネートの面内熱伝導率を、純粋な銅の伝導率と等しいか、またはそれ以上の伝導率に増加させることができる。さらに、得られる整列したラミネートは、強度が「整列していない」ラミネートより増加している。
【0080】
単一シートまたはラミネートとして、フレキシブルグラファイト材料を形成した後、次いでそれを2個の外側層の間にサンドイッチ状に挟む。最も好ましくは、サンドイッチ構造のグラファイトコアは、厚さが約0.05〜約2mmである。
【0081】
上記のように、外側層は、プラスチック材料またはセラミックを含んでなることができるが、金属がより好ましく、最も好ましくはアルミニウムである。アルミニウムに加えて、選択する外側層は、銅、マグネシウム、チタン、窒化チタン、窒化ホウ素および炭化ケイ素を含んでなることができる。これらの外側層は、それぞれ、厚さを約10mm以下、より好ましくは厚さを約7.5mm以下にし、本発明のサンドイッチ構造を実用的にできるだけ薄くすべきである。実際、外側層の厚さは約0.02mm〜約4mmであるのが最も好ましい。
【0082】
上記のように、サンドイッチ構造は、グラファイトコアの周りに外側層を一つに融解/溶接/はんだ付けするか、あるいは接着剤を使用するか、または外側層をそれらの周りで折り曲げるか、もしくは波形にし、それによってグラファイト材料を外側層間にカプセル封入することにより、形成することができる。最も好ましい実施態様では、外側層を、2個の外側層が互いに接する所にのみ塗布した接着剤で互いに接着させ、外側層とグラファイトコアとの間における熱移動の低下をすべて回避する。
【0083】
上記のように、サンドイッチ構造のサーマルソリューションは、外側層用の材料および3層の厚さを、グラファイト系コアと組み合わせた外側層のそれぞれに対して、下記式:
【数4】

により求められる、Fxで表される熱関数が約−10〜約+7になるように選択して形成され、式中、Yは、外側層の一方に対するヤング率であり、Yは、グラファイト系コアに対するヤング率であり、Thickは、ミリメートル(mm)で表した外側層の厚さであり、Thickは、グラファイト系コアの厚さであり、Tcは、外側層の熱伝導率であり、Tcは、グラファイト系コアの熱伝導率であり、dは、外側層の密度であり、dは、グラファイト系コアの密度である。
【0084】
このようにして、本発明のサンドイッチ構造の熱伝導率および熱拡散率の両方を、Δtが最少に抑えられ、効果的なサーマルソリューションが得られるように最適化することができる。
【0085】
ここで、図面、特に図1および3に関して、本発明のサーマルソリューションの一実施態様を、全体番号10で示す。図3に示すように、サーマルソリューション10は、主表面10aおよび10bを有するサンドイッチ構造を含んでなり、外側層30および40の間に挟まれた、剥離されたグラファイトの圧縮された粒子から構成されたシート20を含んでなる。サーマルソリューション10の主表面10aまたは10bの一方は、100で示す熱源、例えばラップトップコンピュータのハードドライブまたは携帯電話のチップセット、と接触して作動するように配置されるサイズを有し、熱源100から発生した熱をサーマルソリューション10の中に放散させる。熱源100と接触する主表面10aまたは10bの面積は、熱源100と接触している面積よりも大きいので、サーマルソリューション10は熱を熱源100から放散させる。
【0086】
さらに、サーマルソリューション10の主表面10aまたは10bの一方は、放熱デバイス110、例えば吸熱源、ヒートパイプ、等、と接触して作動することができる。放熱デバイス110は、熱源100と同じ主表面10aまたは10b上で、サーマルソリューション10と接触することができる。サーマルソリューション10のグラファイトコア20の異方性のために、熱源100から来る熱は放熱デバイス110に広がり、それによって、発生した熱は放散する。このようにして、サーマルソリューションは、熱源100から発生した熱を放散させる放熱体として作用し、熱を放熱デバイス110に放散させることを含む。
【0087】
しかし、サーマルソリューション10の熱的異方性比が比較的高いために、熱は、熱源100と接触して作動する主表面10aまたは10bの一方から他方へ、サーマルソリューション10の面を貫通して効果的に伝達されない。従って、熱源10が中に配置されているデバイス(例えばラップトップコンピュータまたは携帯電話)の外側表面には熱が効果的に伝達されないので、サーマルソリューション10が熱源10と外側表面との間に配置されていれば、そのような外側表面の温度が下がる(場合により、10℃以上も下がる)。
【0088】
同様に、熱源10が中に配置されているデバイス(例えばラップトップコンピュータまたは携帯電話)の中でも、熱は別の部品に効果的に伝達されないので、サーマルソリューション10が熱源10と他の部品との間に配置されていれば、そのような他の部品がさらされる温度が下がる。
【0089】
図2aおよび2bは、サーマルソリューション10をラップトップコンピュータ120の中に配置し、本発明の設計の有利な態様を達成する例を示す。図2aから分かるように、ラップトップコンピュータ120は、その保護ケースの下に、122で示す一個以上の発熱部品を包含する、多くの部品を有する。さらに、ラップトップコンピュータ120は、放熱デバイス、例えば吸熱源124、を有することができる。空間が限られているために、吸熱源124を常に発熱部品122に隣接して配置できる訳ではない。
【0090】
しかし、図2bでは、サーマルソリューション10をラップトップコンピュータ120中で、発熱部品122と吸熱源124の両方を覆うように配置する。これによって、熱を発熱部品122から吸熱源124に流し、放散させることができる。その上、サーマルソリューション10の面貫通熱伝導率は比較的低いので、熱はサーマルソリューション10を通しては効果的に流れず、サーマルソリューション10により遮蔽された環境の過熱を防止する。これは、より等方性の材料、例えば銅または白金、をグラファイト系コア無しに使用した場合には、不可能であろう。
【0091】
さらに、サーマルソリューション10の金属系外側層30および40は成形可能であるので、図2bに示すように、サーマルソリューション10をラップトップコンピュータ120中にある部品の輪郭に従うように成形することができ、従って、追加の空間をあまり必要としない。
【0092】
所望により、サーマルソリューション10に保護被覆を施し、サーマルソリューション10の熱遮蔽効果を高めることができる。好適な保護被覆としては、上記の目的に十分な、好適な材料、例えば熱可塑性材料、例えばポリエチレン、ポリエステルまたはポリイミド、を含むことができる。
【0093】
保護被覆はサーマルソリューション10に、幾つかの異なった方法で施すことができる。例えば、サーマルソリューション10を形成した後、保護被覆が形成される材料を個々のサーマルソリューション10の上に塗布することができる。この目的には、当業者には良く知られている様々な被覆方法、例えばスプレー被覆、ローラー被覆および熱ラミネートプレス加工、により、保護被覆を施すことができる。保護被覆は、機械的マッピングおよび張り合わせによっても施すことができる。
【0094】
一般的に、被覆方法は、保護被覆をサーマルソリューション10にほとんどの用途に十分な強度で接着させる。しかし、所望により、あるいは接着性が比較的低い保護被覆、例えばマイラー(登録商標)ポリエステル材料およびカプトンポリイミド材料(両方共、E.I. du Pont de Nemours and Company of Wilmington, Delawareから市販されている)で被覆を行うには、接着剤の層をサーマルソリューション10と保護被覆との間に塗布することができる。好適な接着剤は、保護被覆をサーマルソリューション10に十分に接着させることができる接着剤、例えばアクリル樹脂またはラテックス接着剤、である。
【実施例】
【0095】
例1
本発明のサンドイッチ構造の幾つかの実施態様の熱的特性を、電子装置用のサーマルソリューションとして使用されることが多い幾つかの材料の特性と、W/m°Kとして表す熱伝導率(Tc)、およびmm/secとして表す熱拡散率(Td)を測定することにより、比較した。試験した各試料は、総厚が1.3mmであり、
(1)フレキシブルグラファイト、
(2)銅、
(3)アルミニウム、
(4)窒化アルミニウム、
(5)銅0.5mm、材料(1)のフレキシブルグラファイト1.2mm、および銅0.5mmから形成されたサンドイッチ構造、
(6)アルミニウム0.5mm、材料(1)のフレキシブルグラファイト1.2mm、およびアルミニウム0.5mmから形成されたサンドイッチ構造、および
(7)窒化アルミニウム0.5mm、材料(1)のフレキシブルグラファイト1.2mm、および窒化アルミニウム0.5mmから形成されたサンドイッチ構造
からなる。
結果を表Iに示す。
【0096】
表I
試料 熱伝導率 熱拡散率
グラファイト 240 230
Cu 368 108
Al 210 98
窒化アルミニウム 35 12
Cu−グラファイト−Cu 345 278
Al−グラファイト−Al 383 324
窒化アルミニウム− 100 145
グラファイト−窒化アルミニウム
【0097】
例2
本発明のサンドイッチ構造の様々な実施態様の熱的特性を、電子装置用のサーマルソリューションとして使用されることが多い幾つかの材料の特性と、W/m°Kとして表す熱伝導率(Tc)、およびmm2/secとして表す熱拡散率(Td)を測定することにより、比較した。試験した各試料は、総厚が1.5mmであり、
(1)アルミニウム、
(2)ケイ素、
(3)フレキシブルグラファイト、
(4)アルミニウム0.1mm、ケイ素1.3mm、およびアルミニウム0.1mmから形成されたサンドイッチ構造、
(5)ケイ素0.1mm、アルミニウム1.3mm、およびケイ素0.1mmから形成されたサンドイッチ構造、
(6)アルミニウム0.1mm、材料(3)のフレキシブルグラファイト1.3mm、およびアルミニウム0.1mmから形成されたサンドイッチ構造、および
(7)材料(3)のフレキシブルグラファイト0.1mm、アルミニウム1.3mm、および材料(3)のフレキシブルグラファイト0.1mmから形成されたサンドイッチ構造
からなる。
結果を表Iに示す。
【0098】
表II
試料 熱伝導率 熱拡散率
Al 210 98
ケイ素 0.6 0.04
グラファイト 240 230
Al−ケイ素−Al 1.8 0.23
ケイ素−Al−ケイ素 0.8 0.05
Al−グラファイト−Al 383 324
グラファイト−Al−グラファイト 260 245
【0099】
例3
様々な熱伝導率を有するグラファイト材料を使用し、一連のサンドイッチ状サーマルソリューションを製造した。それぞれの場合、サンドイッチ構造は、厚さが1.55mm、幅が15mm、長さが400mmであった。これらのサンドイッチ構造に200トンの圧力をかけ、層間の空気を排除した。10ワットの熱源をサンドイッチ構造の縁部の一方から20mmに配置し、第一熱電対をサンドイッチ構造の熱源と反対側の縁部の一方から20mmに配置し、第二熱電対を第一熱電対から200mmに配置した。次いで、各試料の熱伝導率および熱拡散率を計算した。試験した試料は、
(1)アルミニウム0.05mm、熱伝導率200W/m°Kのグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.05mmから形成されたサンドイッチ構造、
(2)アルミニウム0.05mm、熱伝導率400W/m°Kのグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.05mmから形成されたサンドイッチ構造、
(3)アルミニウム0.05mm、熱伝導率500W/m°Kのグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.05mmから形成されたサンドイッチ構造、
(4)アルミニウム0.05mm、熱伝導率800W/m°Kのグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.05mmから形成されたサンドイッチ構造、
(5)アルミニウム0.05mm、熱伝導率1000W/m°Kのグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.05mmから形成されたサンドイッチ構造
である。結果を表IIIに示す。
【0100】
表III
試料 コアTc 外側層Tc サンドイッチ構造 サンドイッチ構造
Tc Td
1 200 240 360 312
2 400 240 550 355
3 500 240 600 380
4 800 240 760 400
5 1000 240 940 410
【0101】
例4
外側層の厚さが熱的特性にどのような影響を及ぼすかを立証するために、様々な厚さのアルミニウムを使用し、一連のサンドイッチ状サーマルソリューションを製造した。それぞれの場合、サンドイッチ構造は、幅が15mm、長さが400mmであった。これらのサンドイッチ構造に200トンの圧力をかけ、層間の空気を排除した。10ワットの熱源をサンドイッチ構造の縁部の一方から20mmに配置し、第一熱電対をサンドイッチ構造の熱源と反対側の縁部の一方から20mmに配置し、第二熱電対を第一熱電対から200mmに配置した。次いで、各試料の熱伝導率および熱拡散率を計算した。試験した試料は、
(1)アルミニウム0.1mm、熱伝導率200W/m°Kのフレキシブルグラファイト1.45mm、およびアルミニウム0.1mmから形成されたサンドイッチ構造、
(2)アルミニウム1mm、熱伝導率200W/m°Kのフレキシブルグラファイト1.45mm、およびアルミニウム1mmから形成されたサンドイッチ構造、
(3)アルミニウム3mm、熱伝導率200W/m°Kのフレキシブルグラファイト1.45mm、およびアルミニウム3mmから形成されたサンドイッチ構造
である。結果を表IVに示す。
【0102】
表IV
アルミニウムの厚さ 熱伝導率 熱拡散率
0.1mm 380 312
1mm 300 280
3mm 260 220
【0103】
例5
熱関数のΔtに対する影響を立証するために、外側層の一方が様々な厚さを有する、一連のサンドイッチ状サーマルソリューションを製造した。それぞれの場合、サンドイッチ構造は、幅が15mm、長さが400mmであった。これらのサンドイッチ構造に200トンの圧力をかけ、層間の空気を排除した。10ワットの熱源をサンドイッチ構造の縁部の一方から20mmに配置し、第一熱電対をサンドイッチ構造の熱源と反対側の縁部の一方から20mmに配置し、第二熱電対を第一熱電対から200mmに配置した。次いで、各試料の熱伝導率および熱拡散率を計算した。試料は、アルミニウム層の間に挟んだ、熱伝導率200W/m°Kのフレキシブルグラファイト1.45mmを使用して試験した。結果を表Vに示す。
【0104】
表V
外側層−1 外側層−2 Δt
厚さ Fx 厚さ Fx
0.05 4.51 0.05 4.51 4
0.05 4.51 4 8.90 9
0.05 4.51 0.15 5.61 6
【0105】
このように、本発明を使用することにより、電子デバイスの部品から発生する熱を遮蔽し、発散させ、デバイスの熱を放散させると共に、「触れた時の温度」および隣接する部品への熱移動を低減させることができる。これらの機能は、銅またはアルミニウムのような伝統的な放熱材料では達成できず、これらの材料では、等方性のために、触れた時の温度および隣接する部品への熱移動はほとんど低下しない。触れた時の温度および隣接する部品への熱移動を低減させるために使用できる絶縁材料は、熱を放散させず、熱源部品の周囲で熱の蓄積を引き起こす。
【0106】
本明細書中で引用する特許、特許出願および出版物は、参考として本明細書に包含される。
【0107】
上に説明した本発明を、多くの様式で変形できることは明らかである。そのような変形は、本発明の精神および範囲から離れていると見なすべきではなく、当業者には明らかなように、そのような修正のすべては、特許請求の範囲に規定する範囲内に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】熱源と吸熱源をブリッジするように配置された、本発明のサーマルソリューションの第一実施態様を示す透視図である。
【図2】図2Aはラップトップコンピュータの、その上部プレートを取り外した状態を示す透視図であり、図2Bは、図2aのラップトップコンピュータ中にその場で配置した、図1に示すサーマルソリューションの実施態様を示す透視図である。。
【図3】は、図1に示すサーマルソリューションの末端断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子デバイス用の熱を放散および遮蔽するシステムであって、
外側表面、および熱源を含んでなる第一部品を含んでなる電子デバイスと、
2つの主表面を含んでなるサーマルソリューションと、を含んでなり、
前記サーマルソリューションが、前記主表面の一方が前記第一部品と接触して作動するように配置され、前記第一部品と前記電子部品の外側表面との間に挿入されてなり、
前記サーマルソリューションが、2つの外側層の間に挟まれた少なくとも一個のフレキシブルグラファイトのシートを含んでなる、システム。
【請求項2】
前記外側層が、プラスチック、金属、および複合材料、またはそれらの組合せからなる群から選択された材料を含んでなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記外側層の少なくとも一方がアルミニウムを含んでなる、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記グラファイト系コアと組み合わせた前記外側層のそれぞれに対して、下記式:
【数1】

(式中、Yは、前記外側層の一方に対するヤング率であり、Yは、前記グラファイト系コアに対するヤング率であり、Thickは、ミリメートル(mm)で表した前記外側層の厚さであり、Thickは、前記グラファイト系コアの厚さであり、Tcは、前記外側層の熱伝導率であり、Tcは、前記グラファイト系コアの熱伝導率であり、dは、前記外側層の密度であり、dは、前記グラファイト系コアの密度である)
により求められる、Fxで表される熱関数が約−10〜約+7である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記電子デバイスが、前記第一部品に直接隣接していない場所に配置された放熱デバイスをさらに含んでなり、さらに前記サーマルソリューションの主表面の一方が前記放熱デバイスと接触して作動する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記放熱デバイスが、吸熱源、ヒートパイプ、ヒートプレートまたはそれらのいずれかの組合せを含んでなる、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記サーマルソリューションが、少なくとも約140W/m°Kの面内熱伝導率を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記サーマルソリューションが、約12W/m°K以下の面貫通熱伝導率を有する、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記サーマルソリューションが、前記サーマルソリューションの上に保護被覆をさらに含んでなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記保護被覆の熱伝導率が、前記フレキシブルグラファイトの少なくとも一つのシートの面貫通熱伝導率未満である、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
熱伝達材料が、前記サーマルソリューションと前記第一部品との間に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記電子デバイスがラップトップコンピュータであり、前記外側表面が、前記ラップトップコンピュータのケースの一部を含んでなる、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
電子デバイス用の熱を放散および遮蔽するシステムであって、
2つの主表面を含んでなるサーマルソリューションを含んでなり、
前記サーマルソリューションが、2つの外側層の間に挟まれた少なくとも一個のフレキシブルグラファイトのシートを含んでなる、システム。
【請求項14】
前記外側層が、プラスチック、金属、および複合材料、またはそれらの組合せからなる群から選択された材料を含んでなる、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記外側層の少なくとも一方がアルミニウムを含んでなる、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記グラファイト系コアと組み合わせた前記外側層のそれぞれに対して、下記式:
【数2】

(式中、Yは、前記外側層の一方に対するヤング率であり、Yは、前記グラファイト系コアに対するヤング率であり、Thickは、ミリメートル(mm)で表した前記外側層の厚さであり、Thickは、前記グラファイト系コアの厚さであり、Tcは、前記外側層の熱伝導率であり、Tcは、前記グラファイト系コアの熱伝導率であり、dは、前記外側層の密度であり、dは、前記グラファイト系コアの密度である)
により求められる、Fxで表される熱関数が約−10〜約+7である、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記サーマルソリューションが、少なくとも約140W/m°Kの面内熱伝導率を有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項18】
前記サーマルソリューションが、約12W/m°K以下の面貫通熱伝導率を有する、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記サーマルソリューションが、前記サーマルソリューションの上に保護被覆をさらに含んでなる、請求項13に記載のシステム。
【請求項20】
前記保護被覆の熱伝導率が、前記フレキシブルグラファイトの少なくとも一つのシートの面貫通熱伝導率未満である、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
熱伝達材料が、前記サーマルソリューションと前記第一部品との間に配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項22】
前記熱伝達材料が、金属または熱界面を含んでなる、請求項21に記載のシステム。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【公表番号】特表2008−516413(P2008−516413A)
【公表日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538017(P2006−538017)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/032803
【国際公開番号】WO2005/048298
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(505003241)アドバンスド、エナジー、テクノロジー、インコーポレーテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】ADVANCED ENERGY TECHNOLOGY INC.
【Fターム(参考)】