説明

サービス状態管理サーバおよび無線通信システム

【課題】ネットワーク側でサービスの状態を管理し、複数の無線システムから1システムの選択をする場合において、端末が受けるサービスの状態を確率的に管理し、最適な無線システムを通知する。
【解決手段】移動局装置または基地局装置から、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態を示す数値を取得し、収納するサービス状態数値収納部211と、いずれかの単位領域および単位時間において、状態確率および遷移確率の双方を確率過程に基づいて算出し、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態確率および遷移確率に基づいて、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出するサービス状態計算部213と、算出されたサービス状態を格納するサービス状態管理データベース215と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の異種無線システムのうち少なくとも一つの無線システムを選択して移動局装置と基地局装置とが無線通信を行なう無線通信システムに適用されるサービス状態管理サーバおよびこれを用いる無線通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、単一の無線システム内においては、それぞれのシステム固有な伝送品質パラメータを測定し、システム内での時間や周波数スロット切替を行ない、そのシステムの利用効率を向上させている。例えば、WI−LANでのRSSI値や、WiMAXでのCINR値が、これら伝送品質パラメータに該当する。また、従来の管理方式としては、例えば、CDMA2000等の単一の携帯電話システムについて提案されている。
【0003】
上記のようなサービスエリアの通信品質を維持・改善する方法として、例えば特開2002−271833号公報、または特開平10−262007号公報に提案されている。これらの方法は、単一の移動体通信システムにおいて、ユーザが使用している移動通信端末装置から位置情報と共に品質情報を管理サーバに送付したり、移動通信基地局が送信する電波の受信電界強度を示すエリア測定データと位置データを管理したりする方式で、複数の通信システムを対象とするものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−271833号公報
【特許文献2】特開平10−262007号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】辻川他、マルコフ移動モデルの移動位置の解析(電子情報通信学会論文誌、Vol.J80-B-II、No.12、1997年12月)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
移動無線に対する需要はさらに大きくなり、またより高い品質が求められるものと予想される。このような状況に対応可能な次世代の有力な候補として、異なる複数の既存の通信システムを有効に利活用し、さらに高度化させるシステムが考えられる。上記のような異種無線システムが採用された場合、無線端末に対して、ユーザにとって最適な通信システムをアドバイスすることが重要となる。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ネットワーク側で、サービスの状態を管理し、複数の無線システムから1システムを選択、あるいは複数システムを束ねる場合において、端末が受けるサービスの状態を確率的に管理し、最適な無線システムを通知できるサービス状態管理サーバおよび無線通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明のサービス状態管理サーバは、複数の異種無線システムのうち少なくとも一つの無線システムを選択して移動局装置と基地局装置とが無線通信を行なう無線通信システムに適用され、サービス提供領域および提供時間を、通信に関する移動局装置の状態が定常とみなし得る複数の単位領域および単位時間に分割して、単位領域および単位時間毎にサービス状態を管理するサービス状態管理サーバであって、移動局装置または基地局装置から、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態を示す数値を取得し、取得した数値を収納するサービス状態数値収納部と、移動局装置の状態を示す数値に基づいて、いずれかの単位領域および単位時間において、移動局装置が特定の通信に関する状態となる確率を示す状態確率、および移動局装置が特定の通信に関する状態から他の通信に関する状態となる確率を示す遷移確率の双方を確率過程に基づいて算出し、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態確率および遷移確率に基づいて、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出するサービス状態計算部と、算出されたサービス状態を格納するサービス状態管理データベースと、を備えることを特徴とする。
【0009】
このように、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率をサービス状態管理データベースに格納することにより、この情報を利用して、移動局装置の使用場所や使用時間帯に応じて、サービス品質並びに通信回線容量が最適となるよう、選択あるいは束ねる通信システムを選定し、移動局装置に対して通知することが可能となる。また、サービス状態管理データベースが、移動局装置または基地局装置から、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態を示す数値を取得し、サービス状態管理サーバ内部で、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出することにより、移動局装置にて統計処理を行なう場合に比べて、小ゾーンの構成を柔軟に変更できるというメリットがある。
【0010】
(2)また、本発明のサービス状態管理サーバは、複数の異種無線システムのうち少なくとも一つの無線システムを選択して移動局装置と基地局装置とが無線通信を行なう無線通信システムに適用され、サービス提供領域および提供時間を、通信に関する移動局装置の状態が定常とみなし得る複数の単位領域および単位時間に分割して、単位領域および単位時間毎にサービス状態を管理するサービス状態管理サーバであって、いずれかの単位領域および単位時間において、移動局装置が特定の通信に関する状態となる確率を示す状態確率、および移動局装置が特定の通信に関する状態から他の通信に関する状態となる確率を示す遷移確率の双方を移動局装置または基地局装置から取得し、取得した状態確率および遷移確率を収納するサービス状態数値収納部と、いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態確率および遷移確率に基づいて、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出するサービス状態計算部と、算出された各単位領域における定常的な状態確率および遷移確率を格納するサービス状態管理データベースと、を備えることを特徴とする。
【0011】
このように、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率をサービス状態管理データベースに格納することにより、この情報を利用して、移動局装置の使用場所や使用時間帯に応じて、サービス品質並びに通信回線容量が最適となるよう、選択あるいは束ねる通信システムを選定し、移動局装置に対して通知することが可能となる。また、サービス状態管理データベースが、いずれかの単位領域および単位時間において、移動局装置が特定の通信に関する状態となる確率を示す状態確率、および移動局装置が特定の通信に関する状態から他の通信に関する状態となる確率を示す遷移確率の双方を移動局装置または基地局装置から取得することにより、統計処理をしない分、サービス状態管理データベースの記憶容量、処理量を小さくできる。
【0012】
(3)また、本発明のサービス状態管理サーバにおいて、サービス状態計算部は、単位時間毎に単位領域間での遷移確率を算出し、サービス状態管理データベースは、算出された単位領域間での遷移確率を格納することを特徴とする。
【0013】
このように、サービス状態管理データベースが単位領域間での遷移確率を格納することにより、例えば移動局装置が単位領域間を跨ぐような場合においても、移動局装置の使用場所や使用時間帯に応じて、サービス品質並びに通信回線容量が最適となるよう、選択あるいは束ねる通信システムを選定し、移動局装置に対して通知することが可能となる。
【0014】
(4)また、本発明のサービス状態管理サーバにおいて、サービス状態計算部は、一定の期間を単位(単位時間の集合と考えることも可能)として、サービス提供領域を構成する単位領域における定常的な状態確率および遷移確率を算出することを特徴とする。
【0015】
このように、サービス状態管理データベースが、一定の期間を単位として、サービス提供領域を構成する単位領域における定常的な状態確率および遷移確率を格納することにより、時間帯、曜日、平日/祝日によって通信状況が変化する場合において、使用場所や時間帯のみならず、曜日、平日/祝日に応じて、サービス品質並びに通信回線容量が最適となるよう、選択あるいは束ねる通信システムを選定し、移動局装置に対して通知することが可能となる。
【0016】
(5)また、本発明の無線通信システムは、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のサービス状態管理サーバと、移動局装置と、基地局装置と、から構成されることを特徴とする。
【0017】
このように、サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率をサービス状態管理データベースに格納することにより、移動局装置の使用場所や使用時間帯に応じて、サービス品質並びに通信回線容量が最適となるよう、選択あるいは束ねる通信システムを選定し、移動局装置に対して通知することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、位置情報と時刻をキーとして、端末が受けるサービスの状態を、確率的に管理することができる。この情報を用いることにより、周波数の有効利用や、回線の品質向上を目的として、へテロジーニアス無線(複数の異種無線)の制御を行なうことができ、ユーザあるいはサービス提供者にとって適していると思われる通信システムを、ユーザに提供することができる。例えば、(1)端末の電源ON時に、最も有効な通信サービスをアドバイスする、(2)複数のメディアが利用可能な時に、一部のメディアの電源をOFFする(例えば、3つ利用できる場合に、1つをOFFする等)こと等が、可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】移動体通信におけるサービス状態管理方式を示す図である。
【図2】サービス状態の概念を示す図(ベン図)である。
【図3】S0〜S3間、S1〜S2間の遷移が無いと仮定した場合の状態遷移図である。
【図4】異種無線システムで圏内を弱電界と強電界の2段階に分けた場合の状態図(ベン図)である。
【図5】圏内を2段階に分けた場合(図4)に対応する状態遷移図である。
【図6】小ゾーン7内の状態遷移と小ゾーン7間の状態遷移の両方を加味した場合の状態遷移図である。
【図7】第1の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図8】第2の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図9】第3の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。
【図10】異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3が生情報データをサービス状態管理サーバ5に送信する場合における、移動体通信におけるサービス状態管理方式のデータベース構造の概念図である。
【図11】異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3でサービス状態を統計処理してサービス状態管理サーバ5に送信する場合における、移動体通信におけるサービス状態管理方式のデータベース構造の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態は、複数の異なる移動体無線システムが同時に稼動するヘテロジーニアス無線環境下において、これらを有効に協調させるための、無線システムのサービス状態の管理方式に係る。本サービス状態管理方式は、周波数の有効利用を図りさらには信頼性を高める為に、複数の無線システムから1システムを選択、あるいは複数システムを束ねる場合において、最適な方式の為の基本情報となる。具体的には、移動体無線通信システムのエリアを単位領域に分け、それぞれの単位領域において、端末の利用できる通信のサービス品質状態を確率過程に基づいて、遷移確率並びに状態確率で管理する方式に関する。なお、上記単位領域とは、サービス提供領域を、通信に関する移動局装置の状態が定常とみなし得る程度に分割された領域をいい、以下、これを小ゾーンと表す。
【0021】
図1は、移動体通信におけるサービス状態管理方式を示す図である。異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3からのサービス状態の情報をサービス状態管理サーバ5にて、小ゾーン7毎に管理する。通信システムによっては、アクセスポイント9を中継して異種無線対応端末1からの情報をサービス状態管理サーバ5に送る場合もある。無線装置用基地局3とサービス状態管理サーバ5とはネットワーク11で接続されている。ここで、小ゾーン7とは、地図上の範囲のことで、サービス状態が定常とみなせる範囲をいう。異種無線対応端末1もしくは無線装置用基地局3から送られるサービス状態情報には、位置、時刻、利用可能なシステムや、詳細なパラメータ、即ち圏内/圏外、RSSI、CINR、BER、遅延量、ジッタ量、スループット、パケットロス率、パケット誤り率等がある。図1では、説明の為、複数の異なる移動体無線システムが同時に稼働している状態を表わしている。通信システムの具体例として、携帯電話(EVDO)13、Wi―Fi15、PHS17、WiMAX19がある。
【0022】
サービス状態管理サーバ5では、上記のサービス状態の遷移確率と状態確率を記録する。遷移確率と状態確率との間には、一定の関係があるので、もし測定できない要素があれば、既知の情報から計算により、導出可能な場合もある。
【0023】
図2は、サービス状態の概念を示す図(ベン図)である。まず、簡単に説明するため、複数の異なる通信システムとして、広域系と狭域系の2つを対象とする。また、サービス状態としては、圏外と圏内の2通りを考える(後に、少し複雑な状態として、圏内時に、弱電界と強電界の例を示す)。なお、端末の電源は、常にON状態であることを前提とする。図2は、小ゾーン7の中の状態を表しており、実際の地図上のサービスエリアを示すのではないことに注意する必要がある。図2では、状態は4通りであり、圏外S、広域系のみ通信可能S、狭域系のみ通信可能S、広域系と狭域系両方で通信可能Sで表される。
【0024】
式(1)は、小ゾーン7内での、これらの状態の遷移確率Pと状態確率Sの関係を示したものであり、情報理論の教科書に記述されている(例えば、今井著「情報理論」昭晃堂、第3章、1984年)。遷移確率Pの成分Pxyは、状態SからSへの遷移確率である。
【0025】
【数1】

となる。サービス状態の情報全てが得られる場合は、式(1)の全ての要素が管理できるが、もし測定不能あるいは不確かさが大きな要素については、上記の関係から計算できる。但し、未知数が多い場合(例えば、上式では5以上)には、計算できないこともある。
【0026】
実際の通信を想定すると、移動端末が広域系サービスと狭域系サービス両方の通信機能を有するとした場合、図2に示す状態で、比較的信頼のある情報としては、圏外が係らない数値、すなわち、
・状態確率:S、S、S
・遷移確率:PX0、P0X以外の成分
である。従って、行列Pの第1行と第1列の7つの成分が、未知となる。さらに、各行列の成分の和は1であるので、第1列は第1行を除いて計算可能となる。また、対角成分(例えば、P10とP01)が等しいとすると、結局遷移行列全てが計算できることになる。
【0027】
以上のように、式(1)を用いて、異種無線システム環境において、実測可能な確率、さらにこれらの数値から計算できる確率を用いて、小ゾーン7内の状態を管理することが可能となる。これらの確率は、定常とみなせる時間範囲内で測定する必要があり、例えば、夜中と日中のように通信トラヒックが大きく異なる場合は、それぞれに区別して扱う必要がある。
【0028】
通常の場合、図2において、圏外Sと広域系と狭域系両方で通信可能Sとの間、並びにSとSとの間の状態遷移確率は、極めて小さいと考えてよく、その場合、式(1)は式(4)のように簡単化される。これは、図2のベン図では、線ではなく点で接している遷移に該当する。
【0029】
【数2】

図3は、S〜S間、S〜S間の遷移が無いと仮定した場合の状態遷移図である。ここで、右肩のインデックス(0,0等)は、後に述べる小ゾーン7の遷移を考慮した、小ゾーン7を識別する為のものである。
【0030】
また、式(1)は一般的な表現式であり、SがSに含まれ、S=Sとなる場合でも問題なく、その場合の遷移確率Pは以下となる。
【0031】
【数3】

図4は、異種無線システムで圏内を弱電界101と強電界103の2段階に分けた場合の状態図(ベン図)である。この図において遷移確率が極めて小さくゼロとみなせることを考慮した場合の遷移確率Pと状態確率Sは、以下となる。
【0032】
【数4】

図5は、圏内を2段階に分けた場合(図4)に対応する状態遷移図である。このように、状態を増やすと、複雑になってくる。
【0033】
以上では小ゾーン7内での遷移を対象としたが、以下に、小ゾーン7間の遷移も考慮した場合について述べる。小ゾーン7内での状態遷移は、図2に示すような簡単な場合を想定して述べる。
【0034】
図6は、小ゾーン7内の状態遷移と小ゾーン7間の状態遷移の両方を加味した場合の状態遷移図である。この状態遷移図の例では、真ん中の小ゾーンR0,0を中心に考えている。簡単に説明する為、小ゾーン間の遷移は、隣接する水平方向の小ゾーンの4つとしている。なお、この個数は、地図上で考えて水平/垂直両方で考えると、最大(3×3×3)−1=26通りとなる。
【0035】
図6の場合の遷移確率と状態確率は、以下の式で表すことができる。この式の前提としては、小ゾーンを跨る瞬間の境界条件は、
(直前小ゾーンの最終状態)=(直後小ゾーンの初期状態)
と仮定している。この仮定は、現実的には妥当と考えられる。
【0036】
【数5】

ここで、
Q(l,m),(l’,m’):小ゾーンR(l,m)から R(l’,m’)への遷移確率
T:小ゾーンの遷移を考慮した場合の遷移確率
P (l,m):小ゾーンR(l,m) 内での遷移確率
S (l,m):小ゾーンR(l,m) 内での状態確率
であり、S (l,m) ・P (l,m) = S(l,m)
が成り立つ。
【0037】
この状態遷移は、R0,0のみに適用できる状態遷移であり、異なる小ゾーン7ではそのゾーンを中心にした遷移確率を考慮する必要がある。
【0038】
以上のように、状態確率や状態遷移確率を数値で表すことにより、異種無線システムを併用する移動体通信システムのサービス状態を、数学的に管理できることになる。この場合においても、定常とみなせる時間範囲内での確率を測定する必要がある。また、小ゾーン7内での状態遷移の項でも述べたとおり、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3から得られる情報において、測定不可能なあるいは信頼性が低いと思われる要素については、式(7)を用いて計算し、全状態を管理することが可能となる(測定個数が少ない為に、計算できない場合もある)。
【0039】
(第1の実施形態)
図7は、第1の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。図7では、異種無線対応端末1の無線通信部分がサービス状態を把握し、サービス状態管理サーバ5に報知することを想定した場合のシステム構成を示している。複数の無線装置201を有する異種無線対応端末1は、各無線装置におけるサービス状態をサービス状態測定部203に通知する。無線セレクタ205では、疎通の確認がとれている通信システムを選び、ユーザデータ端末207で発生した情報データと共に、サービス状態をその無線装置に対応した無線装置用基地局3に送信する。ここで、異種無線対応端末1(図7の破線で囲まれた部分)にユーザデータ端末207を含めているが、例えば、ユーザデータ端末207は、ノートパソコンのようなもので無線通信部分と一体となっていなくても良い。その場合、無線装置201、無線セレクタ205はモデムとして機能する。サービス状態の情報は、さらにインターネット等のネットワーク11を通じて、サービス状態管理サーバ5に通知する。
【0040】
サービス状態管理サーバ5では、サービス状態数値収納部211は、多数のユーザデータ端末207から送られてきた情報をそのまま記録する。サービス状態計算部213は、ユーザデータ端末207からの情報を統計処理すると共に、上述の行列式で得られる関係から、遷移確率や状態確率を計算し、その結果をゾーン毎にサービス状態管理データベース215に記録する。この実施形態では、測定できる品質パラメータは、低レイヤーの情報、即ち、圏内/圏外、RSSI、CINR、BER等となる。
【0041】
(第2の実施形態)
図8は、第2の実施形態に係る無線通信システムの概略構成を示すブロック図である。図8では、異種無線対応端末1の無線通信部分と無線装置用基地局3の両方がサービス状態を把握し、サービス状態管理サーバ5に報知することを想定した場合のシステム構成を示している。図7のシステムの無線装置用基地局3の所にサービス状態測定部301が追加されている。この実施形態においても、測定できる品質パラメータは、低レイヤーの情報、即ち、圏内/圏外、RSSI、CINR、BERとなる。
【0042】
(第3の実施形態)
図9は、異種無線対応端末1の無線通信部分や無線装置用基地局3に加えてユーザデータ端末207でもサービス状態を把握し、サービス状態管理サーバ5に報知することを想定した時の、移動体通信におけるサービス状態管理方式を説明するシステム図である。図8のシステムのユーザデータ端末207の所にサービス状態測定部401が追加されている。この実施形態では、測定できる品質パラメータは、低レイヤーの情報に加えて、高レイヤーの情報、例えばスループットやアプリケーションにおける伝送遅延等となる。
【0043】
なお、無線セレクタ205が無線装置201を選択する際には、サービス状態管理サーバ側から無線セレクタ205に対して一方的に指示を出しても良いし、ユーザデータ端末207においてユーザが無線セレクタ205を操作して無線装置201を選択するようにしても良い。
【0044】
(第4の実施形態)
図10は、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3が生情報データをサービス状態管理サーバ5に送信する場合における、移動体通信におけるサービス状態管理方式のデータベース構造の概念図である。この図では、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3はサービス状態の生情報データを、時刻や位置信号と共にサービス状態数値収納部211に送り、サービス状態計算部213で統計処理し、サービス状態管理データベース215でサービス状態を確率過程に基づいた管理を行なう。この場合には、小ゾーン7の構成を柔軟に変更できるというメリットがあるが、サービス状態数値収納部211の記憶容量、サービス状態計算部213の処理量が大きくなる。なお、本発明における管理方式は確率過程に基づいて行なうので、サービス状態の測定は例えば1秒くらいと短くしても、生データを送る間隔は、例えば1分程度と長くなってもかまわない。
【0045】
(第5の実施形態)
図11は、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3でサービス状態を統計処理してサービス状態管理サーバ5に送信する場合における、移動体通信におけるサービス状態管理方式のデータベース構造の概念図である。異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3でサービス状態を統計処理してサービス状態管理サーバ5に送信する場合を想定しており、サービス状態数値収納部211は、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3から遷移確率や状態確率を受信し、それらの多数のデータを処理して、定常的な遷移確率と状態確率を作成することになる。この場合、異種無線対応端末1あるいは無線装置用基地局3は、小ゾーン7の識別番号を知る必要があるので、サービス状態管理サーバ5から情報通知しなくてはならない。
【符号の説明】
【0046】
1 異種無線対応端末
3 無線装置用基地局
5 サービス状態管理サーバ
7 小ゾーン
211 サービス状態数値収納部
213 サービス状態計算部
215 サービス状態管理データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の異種無線システムのうち少なくとも一つの無線システムを選択して移動局装置と基地局装置とが無線通信を行なう無線通信システムに適用され、サービス提供領域および提供時間を、通信に関する前記移動局装置の状態が定常とみなし得る複数の単位領域および単位時間に分割して、前記単位領域および単位時間毎にサービス状態を管理するサービス状態管理サーバであって、
前記移動局装置または前記基地局装置から、いずれかの前記単位領域および単位時間における前記移動局装置の状態を示す数値を取得し、取得した数値を収納するサービス状態数値収納部と、
前記移動局装置の状態を示す数値に基づいて、前記いずれかの単位領域および単位時間において、前記移動局装置が特定の通信に関する状態となる確率を示す状態確率、および前記移動局装置が前記特定の通信に関する状態から他の通信に関する状態となる確率を示す遷移確率の双方を確率過程に基づいて算出し、前記いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態確率および遷移確率に基づいて、前記サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出するサービス状態計算部と、
前記算出されたサービス状態を格納するサービス状態管理データベースと、を備えることを特徴とするサービス状態管理サーバ。
【請求項2】
複数の異種無線システムのうち少なくとも一つの無線システムを選択して移動局装置と基地局装置とが無線通信を行なう無線通信システムに適用され、サービス提供領域および提供時間を、通信に関する前記移動局装置の状態が定常とみなし得る複数の単位領域および単位時間に分割して、前記単位領域および単位時間毎にサービス状態を管理するサービス状態管理サーバであって、
前記いずれかの単位領域および単位時間において、前記移動局装置が特定の通信に関する状態となる確率を示す状態確率、および前記移動局装置が前記特定の通信に関する状態から他の通信に関する状態となる確率を示す遷移確率の双方を前記移動局装置または前記基地局装置から取得し、取得した前記状態確率および遷移確率を収納するサービス状態数値収納部と、
前記いずれかの単位領域および単位時間における移動局装置の状態確率および遷移確率に基づいて、前記サービス提供領域および提供時間を構成する単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を算出するサービス状態計算部と、
前記算出された各単位領域および単位時間における定常的な状態確率および遷移確率を格納するサービス状態管理データベースと、を備えることを特徴とするサービス状態管理サーバ。
【請求項3】
前記サービス状態計算部は、前記単位時間毎に単位領域間での遷移確率を算出し、
前記サービス状態管理データベースは、前記算出された単位領域間での遷移確率を格納することを特徴とする請求項1または請求項2記載のサービス状態管理サーバ。
【請求項4】
前記サービス状態計算部は、一定の期間を単位として、前記サービス提供領域を構成する単位領域における定常的な状態確率および遷移確率を算出することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載のサービス状態管理サーバ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載のサービス状態管理サーバと、
移動局装置と、
基地局装置と、から構成されることを特徴とする無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−288009(P2010−288009A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−139310(P2009−139310)
【出願日】平成21年6月10日(2009.6.10)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」「異種無線システム動的利用による信頼性向上技術の研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(599108264)株式会社KDDI研究所 (233)
【Fターム(参考)】