説明

サーボドライブシステム

【課題】 サーボ制御の制御応答性を高め、制御装置の各軸の特性に応じて、制御演算部をサーボアンプ又はサーボコントローラに分配可能なサーボドライブシステムを提供する。
【解決手段】 本発明のサーボドライブシステムは、軸毎にサーボモータを制御するサーボ制御部が、サーボモータの指令を生成するプロファイル生成部と、サーボモータの位置を制御する位置制御部と、サーボモータの速度を制御する速度制御部と、サーボモータのモータ電流を制御する電流制御部と、を有し、プロファイル生成部、位置制御部、速度制御部及び電流制御部は、軸毎にサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置における制御演算部の構成及びその配置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
制御装置の制御演算部をカスタマイズ可能とするサーボドライブシステムの一例として、例えば、特許文献1及び2に挙げられる発明が知られている。特許文献1に記載の発明は、制御演算部の処理が行列計算で実現できることに着目して、予め全ての行列計算で使用する各行列の各要素を制御パラメータとして与えている。そして、制御パラメータを変更することにより、任意の制御則に変更可能としている。
【0003】
特許文献2に記載の発明は、ホストコンピュータにより各数値制御装置のCPUに作用する過大な負荷を検出し、一部のサーボモータの駆動制御を処理能力に余裕のある他の数値制御装置に移し替えることにより、過負荷状態の数値制御装置の負荷の低減を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−312003号公報
【特許文献2】特開平9−305212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の発明は、サーボアンプを制御するいわゆるサーボコントローラにおいて、制御演算部をカスタマイズ可能とするものである。サーボコントローラの制御周期は、一般にサーボアンプの制御周期と比べて長いので、サーボ制御の制御応答性が必ずしも高いとは言えない。また、特許文献2に記載の発明は、制御装置毎の負荷分散を図るものであり、各制御装置の各軸における負荷分散及び機能分散までは考慮されていない。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、サーボ制御の制御応答性を高め、制御装置の各軸の特性に応じて、制御演算部をサーボアンプ又はサーボコントローラに分配可能なサーボドライブシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係るサーボドライブシステムは、軸毎に設けられたサーボモータを駆動するサーボアンプと、複数のサーボアンプを制御するサーボコントローラと、を備え、軸毎にサーボモータを制御するサーボ制御部を有するサーボドライブシステムであって、サーボ制御部は、サーボモータの指令を生成するプロファイル生成部と、サーボモータの位置を制御する位置制御部と、サーボモータの速度を制御する速度制御部と、サーボモータのモータ電流を制御する電流制御部と、を有し、プロファイル生成部、位置制御部、速度制御部及び電流制御部は、軸毎にサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に係るサーボドライブシステムは、請求項1において、サーボ制御部は、さらに、サーボモータの制御と協働する付加制御部を有し、プロファイル生成部、位置制御部、速度制御部、電流制御部及び付加制御部は、付加制御部の入力先及び出力先に基づいて軸毎にサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配されている。
【0009】
請求項3に係るサーボドライブシステムは、請求項1又は2において、制御装置の種類、軸の種類及び制御装置に設けられる動作ユニットの種類のうちの少なくとも1つの情報に基づいてサーボ制御部の分配先が選択されて、サーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれダウンロードされている。
【0010】
請求項4に係るサーボドライブシステムは、請求項3において、制御装置の起動の際に、選択及びダウンロードが可能である。
【0011】
請求項5に係るサーボドライブシステムは、請求項3又は4において、サーボアンプとサーボコントローラとの間は、サーボ制御部をダウンロード可能にネットワークを介して接続されている。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係るサーボドライブシステムによれば、軸毎にサーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配されているので、制御装置の各軸の特性に応じて、サーボ制御部を適切に配置することができ、軸毎にサーボ制御部の機能分散を図ることができる。
【0013】
請求項2に係るサーボドライブシステムによれば、サーボ制御部は、付加制御部の入力先及び出力先に基づいて軸毎にサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配されているので、付加制御部が必要とする制御応答性に応じてサーボ制御部を適切に配置することができる。
【0014】
請求項3に係るサーボドライブシステムによれば、制御装置の種類、軸の種類及び制御装置に設けられる動作ユニットの種類のうちの少なくとも1つの情報に基づいてサーボ制御部の分配先が選択され、ダウンロードされているので、これらの種類に応じてサーボ制御部を適切に配置することができる。
【0015】
請求項4に係るサーボドライブシステムによれば、制御装置の起動の際に、サーボ制御部の分配先の選択及びサーボ制御部のダウンロードが可能であるので、制御装置の起動に合わせてサーボ制御部6の分配を行うことができ、制御装置の立上げ作業を自動化できる。
【0016】
請求項5に係るサーボドライブシステムによれば、サーボアンプとサーボコントローラとの間は、サーボ制御部をダウンロード可能にネットワークを介して接続されているので、複数のサーボアンプにサーボ制御部を効率良くダウンロードすることができる。そのため、サーボ制御部を個別にダウンロードする場合と比べて作業効率が向上し、作業工程の削減により低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態に係るサーボドライブシステムの構成図である。
【図2】図1において、サーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配された状態の一例を示す模式図である。
【図3】図2に示す軸1の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【図4】図2に示す軸2の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【図5】図2に示す軸3の制御ブロックの一例を示すブロック図である。
【図6】第2実施形態に係り、サーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配された状態の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態について共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、図面は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0019】
(1)第1実施形態
(1−1)サーボドライブシステムの構成
図1は、本実施形態に係るサーボドライブシステムの構成図である。サーボドライブシステム100は、軸毎に設けられたサーボモータ1を駆動するサーボアンプ2と、複数(同図では3つ)のサーボアンプ2、2、2を制御するサーボコントローラ3と、サーボコントローラ3に制御対象の移動指令を付与する上位コントローラ4と、を備えている。
【0020】
サーボモータ1には、サーボモータ1の位置を検出する位置検出器11が設けられており、位置検出器11は、サーボモータ1の回転に同期してサーボモータ1の位置情報を出力することができる。サーボモータ1及び位置検出器11は、数値制御機において採用される公知のサーボモータ及び位置検出器を用いることができる。例えば、ACサーボモータやエンコーダ等が挙げられる。インクリメンタルエンコーダを用いる場合は、位置情報は、サーボモータ1の回転変位量に応じたパルス列をカウントした計数値である。アブソリュートエンコーダを用いる場合は、位置情報は、サーボモータ1の回転変位量に応じた出力コードである。位置情報は、サーボモータ1のエラー情報などの種々のデータを含めることができ、所定の周期毎に情報伝送路5を介してサーボアンプ2に送信される。
【0021】
サーボアンプ2は、CPU20、メモリ21、入出力インターフェース22及び通信インターフェース23を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス25で接続されている。位置検出器11から送信された位置情報は、入出力インターフェース22、バス25を介してメモリ21に送信される。CPU20は、バス25、通信インターフェース23を介して、サーボモータ1の位置情報をサーボコントローラ3に送信することができる。
【0022】
サーボコントローラ3は、CPU30、メモリ31及び通信インターフェース32〜35を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス36で接続されている。3つのサーボアンプ2、2、2からそれぞれ送信された位置情報は、通信インターフェース32〜34、バス36を介してメモリ31に送信される。CPU30は、バス36、通信インターフェース35を介して、サーボモータ1の位置情報を上位コントローラ4に送信することができる。
【0023】
上位コントローラ4は、CPU40、メモリ41及び通信インターフェース42を有しており、各種データ及び制御信号を送受信可能にバス43で接続されている。CPU40で演算された制御対象の移動指令は、バス43、通信インターフェース42、35、バス36を介してサーボコントローラ3のメモリ31に送信される。サーボコントローラ3及びサーボアンプ2、2、2では、CPU20、30及びメモリ21、31によって、後述するサーボ制御の各種演算を行うことができる。インバータ等の電力変換器24は、各種演算結果に基づくモータ電流を電力伝送路5Mを介してサーボモータ1に供給することにより、サーボモータ1を駆動することができる。
【0024】
通信インターフェース42、35の間、通信インターフェース32、23の間、通信インターフェース33、23の間及び通信インターフェース34、23の間は、各種データ及び制御信号を送受信可能に情報伝送路5でそれぞれ接続されてネットワークが構成されている。各種データには、サーボモータ1の位置情報及び上記の各種演算結果が含まれる。情報伝送路5における通信手段、プロトコル等は特に限定されない。ネットワークは、例えば、後述するサーボネットワークを用いることができる。なお、ネットワークを構成しないで、例えば、公知のシリアル通信(RS−232C)等によって各種データ及び制御信号を個別に送受信することもできる。
【0025】
なお、サーボモータ1の位置情報などの入出力データは、ダイレクト・メモリ・アクセス(DMA)によって送信することもできる。DMAは、CPU20、30、40を介さないで、入出力装置とメモリ21、31、41との間で種々のデータを送受信することができる。例えば、位置検出器11とメモリ21、31、41との間でサーボモータ1の位置情報を直接送信することができる。
【0026】
(1−2)サーボドライブシステムの制御
サーボドライブシステム100は、サーボ制御の制御ブロックとして捉えると、軸1〜軸3毎にサーボモータ1を制御するサーボ制御部6、6、6を有している。サーボ制御部6は、サーボモータ1の指令を生成するプロファイル生成部61と、サーボモータ1の位置を制御する位置制御部62と、サーボモータ1の速度を制御する速度制御部63と、サーボモータ1のモータ電流を制御する電流制御部64と、サーボモータ1の制御と協働する付加制御部65と、を有している。図2は、図1において、サーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配された状態の一例を示す模式図である。
【0027】
同図に示すように、軸1において、プロファイル生成部61はサーボコントローラ3に配されており、位置制御部62、速度制御部63、電流制御部64及び付加制御部65は、サーボアンプ2に配されている。軸2において、プロファイル生成部61、位置制御部62及び速度制御部63は、サーボコントローラ3に配されており、電流制御部64及び付加制御部65は、サーボアンプ2に配されている。軸3において、プロファイル生成部61、位置制御部62、速度制御部63及び付加制御部65は、サーボコントローラ3に配されており、電流制御部64はサーボアンプ2に配されている。
【0028】
プロファイル生成部61は、上位コントローラ4からの移動指令に基づいて各軸のサーボモータ1の位置指令を演算する。位置制御部62は、プロファイル生成部61からの位置指令と位置検出器11からの位置情報との偏差から速度指令を生成する。速度制御部63は、位置制御部62からの速度指令とサーボモータ1の速度情報との偏差から電流指令(トルク指令)を生成する。サーボモータ1の速度情報は、位置情報の周波数から算出することができる。また、サーボモータ1の速度情報は、サーボモータ1の速度を検出する速度検出器の検出結果を用いることもできる。位置制御及び速度制御の方法は特に限定されない。例えば、PID制御などの公知のフィードバック制御を用いることができる。
【0029】
電流制御部64は、速度制御部63からの電流指令(トルク指令)とサーボモータ1のモータ電流との偏差から電力変換器24の駆動信号を生成する。サーボモータ1のモータ電流は、サーボアンプ2に内蔵される図示しない電流検出器の検出結果を用いることができる。位置検出器11からの位置情報は、力率を調整するために用いることができる。電力変換器24の駆動信号は、例えば、PWM制御におけるパルスのON幅とOFF幅の比であるデューティ比で表すことができる。PWM制御においては、スイッチング素子がONのときに対応する相にモータ電流が流れ、スイッチング素子がONしている時間(ON幅)に応じてモータ電流が変化する。つまり、ON幅が長くなるとモータ電流は大きくなり、ON幅が短くなるとモータ電流は小さくなる。電力変換器24は、電流制御部64が生成する駆動信号に基づくモータ電流を電力伝送路5Mを介してサーボモータ1に供給することにより、サーボモータ1を駆動することができる。
【0030】
付加制御部65は、サーボモータ1の制御と協働する任意の制御部である。付加制御部65は、サーボモータ1の制御と協働する制御であれば特に限定されない。付加制御部65の一例として、例えば、コギング補償器が挙げられる。コギング補償器は、サーボモータ1の位置情報に基づいてコギングトルクを相殺する電流指令(トルク指令)を付与するものである。付加制御部65は、この他にもサーボ制御系のモデル化誤差、摩擦、外乱等を補償することができる。また、付加制御部65は、制御装置のユーザによって独自の制御仕様にすることもできる。例えば、制御装置の経年劣化によってサーボモータ1の出力が低下した場合には、付加制御部65は、その低下分を電流指令(トルク指令)に上乗せしてサーボモータ1の出力を補償する(トルク補償器)こともできる。
【0031】
付加制御部65の入力は、プロファイル生成部61が生成する位置指令、位置制御部62が生成する速度指令、速度制御部63が生成する電流指令(トルク指令)及び位置検出器11からの位置情報のうちの少なくとも1つから付加制御部65の制御内容によって任意に選択することができる。付加制御部65の出力は、付加制御部65の制御内容に応じて、プロファイル生成部61が生成する位置指令、位置制御部62が生成する速度指令又は速度制御部63が生成する電流指令(トルク指令)に加算若しくは減算することができる。なお、付加制御部6は、フィードバック制御、フィードフォワード制御のいずれであっても良い。また、付加制御部65は、1つのサーボアンプ2又は1つのサーボコントローラ3において、複数設けることもできる。
【0032】
図3は、図2に示す軸1の制御ブロックの一例を示すブロック図である。付加制御部65には、位置検出器11からの位置情報が入力され、付加制御部65の出力は、プロファイル生成部61の出力であるサーボモータ1の位置指令に加算される。軸1においては、付加制御部65における制御が高速な応答を必要とする場合を想定している。ここで、「高速な応答が必要である」とは、サーボコントローラ3の制御周期よりも短いサーボアンプ2の制御周期と同じ制御周期で付加制御部65を制御する必要がある場合をいう。逆に、「高速な応答が必要でない」とは、サーボコントローラ3の制御周期と同じ制御周期で付加制御部65を制御すれば十分な場合をいう。よって、軸1においては、付加制御部65はサーボアンプ2に配される必要がある。
【0033】
軸1の付加制御部65の出力先は位置制御部62である。付加制御部65における制御をサーボアンプ2の制御周期と同じ制御周期で行うためには、位置制御部62は、サーボアンプ2に配される必要がある。既述のとおり、位置制御部62の出力は速度制御部63に入力され、速度制御部63の出力は電流制御部64に入力されるので、速度制御部63及び電流制御部64もサーボアンプ2に配される必要がある。この場合、プロファイル生成部61は、サーボアンプ2又はサーボコントローラ3のいずれに配しても良い。図2及び図3は、プロファイル生成部61がサーボコントローラ3に配されている場合を示している。また、軸1の付加制御部65の入力先は位置検出器11であるので、位置制御部62、速度制御部63、電流制御部64及び付加制御部65をサーボアンプ2に配することにより、これらの制御部は、位置検出器11からの位置情報を同じ制御周期で用いることができる。
【0034】
図4は、図2に示す軸2の制御ブロックの一例を示すブロック図である。この制御ブロックは、例えば、付加制御部65が既述のコギング補償器である場合を示している。この場合、付加制御部65には、位置検出器11からの位置情報が入力され、付加制御部65の出力は、速度制御部63の出力であるサーボモータ1の電流指令(トルク指令)に加算される。軸1の場合と同様に、軸2の付加制御部65における制御は高速な応答が必要であるものとする。よって、軸2においては、付加制御部65はサーボアンプ2に配される必要がある。
【0035】
軸2の付加制御部65の出力先は電流制御部64である。付加制御部65における制御をサーボアンプ2の制御周期と同じ制御周期で行うためには、電流制御部64は、サーボアンプ2に配される必要がある。この場合、プロファイル生成部61、位置制御部62及び速度制御部63は、サーボアンプ2又はサーボコントローラ3のいずれに配しても良い。図2及び図4は、プロファイル生成部61、位置制御部62及び速度制御部63がサーボコントローラ3に配されている場合を示している。また、軸2の付加制御部65の入力先は位置検出器11であるので、電流制御部64及び付加制御部65をサーボアンプ2に配することにより、これらの制御部は、位置検出器11からの位置情報を同じ制御周期で用いることができる。
【0036】
図5は、図2に示す軸3の制御ブロックの一例を示すブロック図である。この制御ブロックは、例えば、付加制御部65が既述の制御装置の経年劣化に対するトルク補償器である場合を示している。この場合、付加制御部65には、プロファイル生成部61からの位置指令が入力され、付加制御部65の出力は、速度制御部63の出力であるサーボモータ1の電流指令(トルク指令)に加算される。軸3の付加制御部65における制御は、高速な応答が必要でないものとする。
【0037】
軸3の付加制御部65における制御は高速な応答が必要とされないので、付加制御部65は、サーボコントローラ3に配されている。また、付加制御部65の入力先はプロファイル生成部61であり、付加制御部65の出力は速度制御部63の出力に加算される。そのため、付加制御部65における制御をサーボコントローラ3の制御周期と同じ制御周期で行うためには、プロファイル生成部61、位置制御部62及び速度制御部63は、サーボコントローラ3に配される必要がある。この場合、電流制御部64は、サーボアンプ2又はサーボコントローラ3のいずれに配しても良いが、高速な応答が必要な電流制御の特性を考慮して、電流制御部64はサーボアンプ2に配されている。
【0038】
本実施形態では、軸毎にサーボ制御部6がサーボアンプ2又はサーボコントローラ3にそれぞれ分配されているので、制御装置の各軸の特性に応じて、サーボ制御部6を適切に配置することができ、軸毎にサーボ制御部6の機能分散を図ることができる。また、サーボ制御部6は、付加制御部65の入力先及び出力先に基づいて軸毎にサーボアンプ2又はサーボコントローラ3にそれぞれ分配されているので、付加制御部65が必要とする制御応答性に応じてサーボ制御部6を適切に配置することができる。
【0039】
(変形形態)
第1実施形態では、制御装置の軸の数が3つの場合を例に説明しているが、軸の数はこれに限定されるものではない。また、サーボ制御部6の分配も上記の実施形態に限定されるものではない。表1は、上記の実施形態とは異なるサーボ制御部6の分配の一例を示している。
【0040】
【表1】

【0041】
同表のNo.1及びNo.2に示すように、これまでサーボコントローラ3において演算処理していたサーボ制御部6の一部をサーボアンプ2に分配することによって、サーボアンプ2及びサーボコントローラ3の間でサーボ制御部6の機能分散を図ることができる。これにより、サーボアンプ2及びサーボコントローラ3のハードウエア資源を効率良く使用することができる。また、同表のNo.3及び図2に示す軸1のように、サーボ制御部6の大部分をサーボアンプ2に分配すると、サーボコントローラ3の制御周期よりも短いサーボアンプ2の制御周期でサーボ制御を行うことができる。そのため、サーボコントローラ3でサーボ制御の大部分を行う場合と比べて、サーボ制御の応答性が向上する。
【0042】
(1−3)サーボ制御部の分配
各制御部に分割されたサーボ制御部6及びその再構築情報を含む制御プログラム(以下、単に制御プログラムという。)は、上位コントローラ4のメモリ41から情報伝送路5を介してサーボコントローラ3のメモリ31、サーボアンプ2のメモリ21、21、21にそれぞれ転送されダウンロードされる。メモリ31、21、21、21は、それぞれRAM及びROMを有しており、制御プログラムは、ROMに格納される。ROMは、電源遮断後も情報を保持することができる不揮発性メモリであり、例えば、CPLDやFPGA等のプログラム可能なロジックデバイスを用いることができる。また、制御プログラムの一部又は全部をRAMに格納することもできる。この場合は、制御装置が起動される度に制御プログラムの転送及びダウンロードが必要となるが、例えば、メモリ容量等に応じて制御プログラムを配分することにより、ハードウエア資源を効率良く使用することができる。
【0043】
本実施形態では、上位コントローラ4とサーボコントローラ3の間及びサーボコントローラ3とサーボアンプ2、2、2の間は、情報伝送路5を介してネットワーク接続されているので、制御プログラムを上位コントローラ4からサーボコントローラ3及びサーボアンプ2、2、2に効率良くダウンロードすることができる。そのため、制御プログラムを個別にダウンロードする場合と比べて作業効率が向上し、作業工程の削減により低コスト化が可能となる。制御プログラムの更新が頻繁に行われる場合は、その効果は顕著である。
【0044】
本実施形態では、制御装置の種類、軸の種類及び制御装置に設けられる動作ユニットの種類に基づいてサーボ制御部6の分配先が選択されて、サーボ制御部6がサーボアンプ2又はサーボコントローラ3にそれぞれダウンロードされる。表2は、制御装置の種類、軸の種類及び動作ユニットの種類に対するサーボ制御部6の分配パターンの一例を示している。同表に示すサーボ制御部6の分配パターンa〜cは、説明の都合上、表1のNo.1〜3に対応させている。また、同表は、サーボ制御部6の分配パターンの一例を示すものであり、これらに限定されるものではない。
【0045】
【表2】

【0046】
例えば、表2のNo.1は、制御装置が装置A、軸が軸1及び動作ユニットがユニット1の場合には、サーボ制御部6の分配パターンはパターンaが選択されることを示している。No.2〜10も同様である。制御装置の種類、軸の種類及び動作ユニットの種類は、制御装置の起動の際にサーボアンプ2、2、2からサーボコントローラ3及び上位コントローラ4に情報伝送路5を介して送信される。分配パターンは、これらの種類に応じたサーボ制御部6の最適な分配方法を示すものである。分配パターンは、予めシミュレーションや制御装置の試運転等によって定められ、データベース化されて制御プログラムと共に収められている。
【0047】
上位コントローラ4のCPU40は、サーボ制御部6の分配パターンに基づいて、制御プログラムをサーボコントローラ3のメモリ31、サーボアンプ2のメモリ21、21、21に転送する。例えば、サーボ制御部6の分配パターンとしてパターンaが選択されたときは、CPU40は、プロファイル生成部61、位置制御部62及び付加制御部65をメモリ31に転送し、速度制御部63及び電流制御部64をメモリ21に転送する。CPU20、30は、サーボ制御部6の再構築情報に基づいて、それぞれサーボ制御部6を再構築する。再構築情報は、分配されたサーボ制御部6をサーボアンプ2及びサーボコントローラ3において再構築するための情報であり、例えば、各制御部の入出力先に関する情報や、その在処を示すアドレスなどが含まれる。
【0048】
本実施形態では、制御装置の種類、軸の種類及び制御装置に設けられる動作ユニットの種類に基づいてサーボ制御部6の分配先が選択され、ダウンロードされるので、これらの種類に応じてサーボ制御部6を適切に配置することができる。特に、制御装置の起動の際にサーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードが行われると、制御装置の起動に合わせてサーボ制御部6の分配を行うことができるので、制御装置の立上げ作業を自動化でき、作業効率が向上する。
【0049】
例えば、電子部品をプリント基板に実装する部品実装装置では、電子部品を吸着してプリント基板に装着する部品装着ヘッド等の動作ユニットの種類が多い。そのため、動作ユニットを交換する際に個別にサーボ制御部6の分配作業を行うと作業が煩雑になる。本実施形態では、制御装置の起動の際に、制御装置の種類、軸の種類及び動作ユニットの種類に応じてサーボ制御部6の分配を行うことができるので、個別にサーボ制御部6の分配作業を行う場合と比べて作業効率が向上する。なお、例えば、部品実装装置において、制御装置は、部品供給装置、基板搬送装置、部品移載装置などが挙げられる。また、軸は、直動軸や回転軸などが挙げられる。
【0050】
(変形形態)
サーボ制御部6の分配先の選択は、制御装置の種類、軸の種類及び制御装置に設けられる動作ユニットの種類のうちの少なくとも1つの情報に基づいて行うことができ、これらの他にも生産に関わる種々の情報を用いてサーボ制御部6の分配先の選択を行うことができる。また、サーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードは、制御装置の起動の際に限定されるものではなく、制御装置の操作者によって任意に行うこともできる。この場合は、制御装置の表示部等にサーボ制御部6の分配先の選択画面を表示させて、サーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードを行うことができる。
【0051】
また、サーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードは、サーボコントローラ3によって行うこともできる。この場合は、サーボコントローラ3のCPU30がサーボ制御部6の分配パターンに基づいて、制御プログラムをサーボアンプ2のメモリ21、21、21に転送する。CPU20、30は、サーボ制御部6の再構築情報に基づいて、それぞれサーボ制御部6を再構築する。なお、サーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードは、サーボコントローラ3及びサーボアンプ2、2、2において、それぞれ個別に行うこともできる。
【0052】
(2)第2実施形態
図6は、サーボ制御部がサーボアンプ又はサーボコントローラにそれぞれ分配された状態の一例を示す模式図である。本実施形態は、第1実施形態と基本的には同様の構成、作用効果を有する。共通する部位には共通の符号を付し、異なる部分を中心に説明する。本実施形態では、サーボアンプ2、2、2及びサーボコントローラ3が、情報伝送路5、5、5、5によってリング状にネットワーク接続されていることに特徴がある。
【0053】
ネットワークを構成する通信手段、プロトコルは特に限定されないが、例えば、サーボネットワークを用いてネットワークを構成することができる。サーボネットワークは、同期通信機能により、予め設定した周期毎に所定数のデータを送受信することができる。本実施形態では、サーボアンプ2、2、2及びサーボコントローラ3は、一定周期毎に同一タイミングで各種データ及び制御信号を送受信することができる。また、サーボネットワークは、ネットワークに接続された各ノードに対して周期的に起動割り込みを発生させる起動割り込み機能により、同期運転が容易になる。本実施形態では、サーボアンプ2、2、2及びサーボコントローラ3におけるサーボ制御を周期的に同一タイミングで実行させることができ、複数(同図では3つ)のサーボモータ1間の同期運転が容易になる。
【0054】
本実施形態では、サーボアンプ2、2、2及びサーボコントローラ3が、リング状にネットワーク接続されているので、サーボアンプ2、2、2を識別するアドレスを用いて、サーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードが行われる。例えば、図6において、軸1に設けられるサーボアンプ2のアドレスをA1、軸2に設けられるサーボアンプ2のアドレスをA2、軸3に設けられるサーボアンプ2のアドレスをA3とする。情報伝送路5、5、5、5には、アドレスA1〜A3によって識別されるサーボアンプ2、2、2の制御プログラムが送信される。軸1に設けられるサーボアンプ2のCPU20は、アドレスA1の制御プログラムを受信する。軸2に設けられるサーボアンプ2のCPU20は、アドレスA2の制御プログラムを受信する。同様に、軸3に設けられるサーボアンプ2のCPU20は、アドレスA3の制御プログラムを受信する。そして、各CPU20は、サーボ制御部6の再構築情報に基づいて、それぞれサーボ制御部6を再構築する。なお、サーボコントローラ3におけるサーボ制御部6の分配先の選択及びダウンロードは、第1実施形態と同様である。
【0055】
(3)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施可能である。
【符号の説明】
【0056】
1:サーボモータ
2:サーボアンプ
3:サーボコントローラ
4:上位コントローラ
5:情報伝送路
6:サーボ制御部
61:プロファイル生成部 62:位置制御部 63:速度制御部
64:電流制御部 65:付加制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸毎に設けられたサーボモータを駆動するサーボアンプと、複数の前記サーボアンプを制御するサーボコントローラと、を備え、前記軸毎に前記サーボモータを制御するサーボ制御部を有するサーボドライブシステムであって、
前記サーボ制御部は、前記サーボモータの指令を生成するプロファイル生成部と、前記サーボモータの位置を制御する位置制御部と、前記サーボモータの速度を制御する速度制御部と、前記サーボモータのモータ電流を制御する電流制御部と、を有し、
前記プロファイル生成部、前記位置制御部、前記速度制御部及び前記電流制御部は、前記軸毎に前記サーボアンプ又は前記サーボコントローラにそれぞれ分配されていることを特徴とするサーボドライブシステム。
【請求項2】
前記サーボ制御部は、さらに、前記サーボモータの制御と協働する付加制御部を有し、
前記プロファイル生成部、前記位置制御部、前記速度制御部、前記電流制御部及び前記付加制御部は、前記付加制御部の入力先及び出力先に基づいて前記軸毎に前記サーボアンプ又は前記サーボコントローラにそれぞれ分配されている請求項1に記載のサーボドライブシステム。
【請求項3】
制御装置の種類、軸の種類及び前記制御装置に設けられる動作ユニットの種類のうちの少なくとも1つの情報に基づいて前記サーボ制御部の分配先が選択されて、前記サーボ制御部が前記サーボアンプ又は前記サーボコントローラにそれぞれダウンロードされている請求項1又は2に記載のサーボドライブシステム。
【請求項4】
前記制御装置の起動の際に、前記選択及び前記ダウンロードが可能である請求項3に記載のサーボドライブシステム。
【請求項5】
前記サーボアンプと前記サーボコントローラとの間は、前記サーボ制御部をダウンロード可能にネットワークを介して接続されている請求項3又は4に記載のサーボドライブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−73351(P2013−73351A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210923(P2011−210923)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】